説明

田植機

【課題】株間変速機構の構造を簡素化するとともに動力伝達経路におけるギヤの数を少なくして動力損失を低減する田植機を提供する。
【解決手段】ミッションケース7から伝達された動力で駆動する植付装置3を備える田植機1において、前記ミッションケース7から前記植付装置3までの動力伝達経路に、入力軸31と、第一伝動軸32と、第二伝動軸33と、植付出力軸34と、を配置して、前記入力軸31と前記第一伝動軸32との間に第一株間変速機構50を構成し、前記第一伝動軸32と前記第二伝動軸33との間に第二株間変速機構60を構成し、前記第二伝動軸33と前記植付出力軸34との間に植付クラッチ70を構成し、前記入力軸31と前記第二伝動軸33と前記植付出力軸34とを同一軸心上に配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に関し、特に走行速度に対する植付速度を変速する株間変速機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機において、走行速度に対する植付速度を変速する株間変速機構をミッションケースから植付装置までの動力伝達経路に設け、株間変速機構によって、苗株の植付間隔を変更可能とした田植機が知られている。このような田植機においては、例えば、特許文献1に開示される技術のように、株間変速機構は二つの変速部、即ち株間主変速部及び株間副変速部によって構成されている。そして、この株間主変速部は、株間副変速部よりも動力伝達経路の上流側に設けられて、この株間副変速部と直列状に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−212121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術においては、動力を株間変速機構(株間主変速部)に入力する入力軸(PTO伝動軸)と、変速後の動力を株間変速機構(株間副変速部)から出力する出力軸(PTO出力軸)とが並設されている。そのため、これらの軸や株間変速機構の占有する空間が大きくなって、これらの設置スペースが大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、株間変速機構をコンパクトに設置することができる田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、ミッションケースから伝達された動力で駆動する植付装置を備える田植機において、前記ミッションケースから前記植付装置までの動力伝達経路に、入力軸と、第一伝動軸と、第二伝動軸と、出力軸と、を配置して、前記入力軸と前記第一伝動軸との間に第一株間変速機構を構成し、前記第一伝動軸と前記第二伝動軸との間に第二株間変速機構を構成し、前記第二伝動軸と前記出力軸との間に植付クラッチを構成し、前記入力軸と前記第二伝動軸と前記出力軸とを同一軸心上に配置したものである。
【0008】
請求項2においては、前記出力軸は、前記入力軸に軸支されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、第一株間変速機構及び第二株間変速機構をコンパクトに設置することができる。
【0011】
請求項2においては、第一株間変速機構及び第二株間変速機構をさらにコンパクトに設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る田植機の動力伝達機構を示す図。
【図3】株間変速ケースの正面図。
【図4】株間変速ケースのA−A断面図。
【図5】株間変速ケースのB−B断面図。
【図6】株間変速ケースの動力伝達機構を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の一実施形態に係る田植機1の全体構成について説明する。なお、以下において、図1における矢印U方向を上方向として田植機1の上下方向を規定して、矢印F方向を前方向として田植機1の前後方向を規定する。
【0014】
図1に示すように、田植機1は、走行機体2と植付装置3とを有し、走行機体2により走行しながら、植付装置3により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付装置3は、走行機体2の後方に配置されて、この走行機体2の後部に昇降機構4を介して昇降可能に連結される。
【0015】
走行機体2においては、エンジン5が車体フレーム6の後部に設けられる。ミッションケース7が車体フレーム6の前部に支持される。フロントアクスルケース8が車体フレーム6の前部に支持される。前車輪9がフロントアクスルケース8の左右両側に支承される。リヤアクスルケース10が車体フレーム6の後部に支持される。後車輪11がリヤアクスルケース10の左右両側に支承される。
【0016】
走行機体2において、車体フレーム6の前後中途部であって、車体カバー12の上方に運転操作部13が設けられる。運転操作部13においては、車体カバー12の前上部にフロントカウル14が、車体カバー12の後上部に座席15がそれぞれ設けられる。フロントカウル14の後上部に、操向操作用の操作ハンドル、変速操作用の変速レバー等の各種の操作具が配置される。これらの操作具によって、走行機体2および植付装置3に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。
【0017】
走行機体2において、予備苗載台16が車体フレーム6の前部の左右両側から立設された各取付フレームに取り付けられて、フロントカウル14の左右両側方に配置される。そして、予備苗が予備苗載台16に載置されて、植付装置3への苗補給が可能とされる。
【0018】
走行機体2において、施肥装置17が車体フレーム6の後部に支柱フレーム18などを介して支持されて、運転操作部13の後方に配置される。施肥装置17は、植付条に対応する数の繰出装置19を有する。
【0019】
植付装置3において、植付ミッションケース21が植付フレーム20の下部中央付近に支持され、植付伝動軸22が植付ミッションケース21から左右両側方に延設される(図2参照)。植付伝動ケース23・23・23がそれぞれ植付伝動軸22から後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。また、後述する株間変速ケース30がミッションケース7と植付ミッションケース21との間に設けられる。
【0020】
各植付伝動ケース23の後端部左右両側には、ロータリケース24・24が回動自在に支持される。ロータリケース24は植付条数と同数、即ち本実施形態では6つ備えられる。そして、二つの植付爪25・25が、ロータリケース24の回転支点を挟むように、このロータリケース24の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0021】
苗載台26が植付伝動ケース23の上方に前高後低の傾斜状態で配置されて、植付フレーム20の後部に上下のガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台26上に苗マットが条数分載置されて、ロータリケース24の回転時に植付爪25により苗が当該苗載台26上の苗マットから取出可能とされる。
【0022】
植付装置3において、圃場面を整地するフロート27が、それぞれの前部側が後部側を回動支点として上下動自在となるように植付伝動ケース23に支持されて、植付伝動ケース23の下方に配置される。
【0023】
また、前述の昇降機構4が走行機体2と植付装置3との間に設けられる。具体的には、トップリンク28とロワリンク29の前部が走行機体2の車体フレーム6に上下回転自在に支持され、トップリンク28とロワリンク29の後部が植付装置3の植付フレーム20の前部左右中央に支持される。昇降用シリンダがロワリンク29と走行機体2との間に連結される。そして、この昇降用シリンダの伸縮動作によって、植付装置3が走行機体2に対して上下方向に回動可能、即ち昇降可能とされる。
【0024】
そして、図2に示すように、エンジン5の動力が、ミッションケース7に伝達され、このミッションケース7からフロントアクスルケース8及びリヤアクスルケース10に伝達される。そして、フロントアクスルケース8及びリヤアクスルケース10から左右の前車輪9と左右の後車輪11とにそれぞれ伝達される。これにより、前車輪9および後車輪11が回転駆動して、走行機体2が前進または後進走行することができるようになっている。
【0025】
また、エンジン5の動力が、ミッションケース7に伝達され、このミッションケース7から、株間変速ケース30を介して、植付装置3の植付ミッションケース21に伝達される。そして、植付ミッションケース21から植付伝動軸22、植付伝動ケース23・23・23を介して各ロータリケース24に伝達される。これにより、ロータリケース24が回転駆動して、二つの植付爪25・25が交互に苗を苗載台26上の苗マットから切り出して圃場に植え付けることができるようになっている。また、エンジン5の動力が株間変速ケース30から施肥装置17に伝達される。これにより、植付と同時に圃場に施肥を行うことができるようになっている。
【0026】
次に、株間変速ケース30について詳細に説明する。
【0027】
株間変速ケース30は、ミッションケース7から伝達された動力を変速して植付ミッションケース21に伝達するためのものである。また、株間変速ケース30は、ミッションケース7から伝達された動力を施肥装置17に伝達するためのものである。株間変速ケース30は、運転操作部13の右側後方であって、施肥装置17の下方に配置される(図1参照)。株間変速ケース30には、植付装置3に動力を伝達する植付動力伝達経路と、施肥装置17に動力を伝達する施肥動力伝達経路とが設けられる。
【0028】
植付動力伝達経路は、ミッションケース7から植付装置3までの動力伝達経路に含まれる。植付動力伝達経路には、図3、図4及び図6に示すように、入力軸31、第一伝動軸32、第二伝動軸33、植付出力軸34、第一株間変速機構50、第二株間変速機構60、植付クラッチ70が配置される。
【0029】
入力軸31は、その軸方向を前後方向として、一部を除き株間変速ケース30内に配置される。入力軸31は、株間変速ケース30にベアリングを介して回転自在に支持され、株間変速ケース30から前方へ突出される。入力軸31は、株間変速ケース30外において、その突出端部でミッションケース7の出力軸7aと連動連結される。こうして、エンジン5の動力が、ミッションケース7を介して、入力軸31に入力されるようになっている(図2参照)。
【0030】
第一伝動軸32は、その軸方向を前後方向として、株間変速ケース30内に入力軸31と平行に配置される。第一伝動軸32は、入力軸31の下方に設けられ、株間変速ケース30にベアリングを介して回転自在に支持される。第一伝動軸32は、株間変速ケース30内において、その前側で入力軸31と対向配置され、その後側で第二伝動軸33と対向配置される。
【0031】
第二伝動軸33は、その軸方向を前後方向として、株間変速ケース30内に第一伝動軸32と平行に配置される。第二伝動軸33は、入力軸31の後方に設けられ、この入力軸31と同一軸心上に配置される。第二伝動軸33は、筒状の軸とされ、植付出力軸34の前後中途部に外嵌されて支持される。
【0032】
植付出力軸34は、その軸方向を前後方向として、一部を除き株間変速ケース30内に第一伝動軸32と平行に配置される。植付出力軸34は、入力軸31の後方かつ第二伝動軸33の内方に設けられ、これらの入力軸31及び第二伝動軸33と同一軸心上に配置される。植付出力軸34は、株間変速ケース30内において、その前側で第二伝動軸33に挿入されて相対回転自在に支持され、その後側で株間変速ケース30にベアリングを介して回転自在に支持される。植付出力軸34は、株間変速ケース30から後方へ突出されて、その突出端部で植付ミッションケース21の入力軸と連動連結される。
【0033】
第一株間変速機構50は、走行機体2(田植機1)の走行速度に対する植付速度を変速するものであり、入力軸31の動力を変速して第一伝動軸32に出力する。第一株間変速機構50は、入力軸31と第一伝動軸32との間に構成される。本実施形態においては、第一株間変速機構50は、三段の等速変速を可能とするものであり、等速変速を行う一つのギヤ対(第一駆動ギヤ51及び第一従動ギヤ52)と、等速変速を行う二つの駆動ギヤ(第二駆動ギヤ53と第三駆動ギヤ55)及びこれら二つの駆動ギヤと選択的に噛合する第二従動ギヤ54とを有する。
【0034】
第一駆動ギヤ51、第二駆動ギヤ53及び第三駆動ギヤ55は、入力軸31に一体的に取り付けられて、前方から順に所定間隔で並置される。第一駆動ギヤ51の径は、第二駆動ギヤ53の径及び第三駆動ギヤ55の径よりも大きく設定される。第二駆動ギヤ53の径は、第三駆動ギヤ55の径と略同径に設定される。その上で、第二駆動ギヤ53の歯数が、第三駆動ギヤ55の歯数より若干多く設定される。
【0035】
第一従動ギヤ52及び第二従動ギヤ54は、第一伝動軸32に外嵌された筒体56の前後両端にそれぞれ固設されて、前後に筒体56を隔てて並置される。第一従動ギヤ52及び第二従動ギヤ54は、筒体56とともに、第一伝動軸32の前側に相対回転不能かつ軸方向相対変位可能にスプライン嵌合により取り付けられる。筒体56ひいては第一従動ギヤ52及び第二従動ギヤ54は、シフター57が操作されることによって、第一伝動軸32に沿って軸方向に摺動する(図3参照)。
【0036】
第一従動ギヤ52の径は、第一駆動ギヤ51の径よりも大きく設定される。そして、第一従動ギヤ52が第一駆動ギヤ51と噛合可能とされる。すなわち、第一駆動ギヤ51及び第一従動ギヤ52のギヤ対は、減速を行うように構成される。また、第二従動ギヤ54の径は、第二駆動ギヤ53の径及び第三駆動ギヤ55の径よりも大きく設定される。そして、第二従動ギヤ54が第二駆動ギヤ53又は第三駆動ギヤ55と選択的に噛合可能とされる。すなわち、第二従動ギヤ54及び第二駆動ギヤ53のギヤ対、又は第二従動ギヤ54及び第三駆動ギヤ55のギヤ対は、減速を行うように構成される。
【0037】
第一株間変速機構50においては、第一従動ギヤ52及び第二従動ギヤ54がシフター57の操作により筒体56を介して第一伝動軸32に沿って軸方向に摺動する場合に、動力が入力軸31から一つのギヤ対を介して第一伝動軸32に変速されて伝達される。具体的には、第一駆動ギヤ51と第一従動ギヤ52とが噛合するときは、入力軸31の回転が第一駆動ギヤ51及び第一従動ギヤ52を介して第一伝動軸32に変速されて出力される。第二駆動ギヤ53と第二従動ギヤ54とが噛合するときは、入力軸31の回転が第二駆動ギヤ53及び第二従動ギヤ54を介して第一伝動軸32に変速されて出力される。第三駆動ギヤ55と第二従動ギヤ54とが噛合するときは、入力軸31の回転が第三駆動ギヤ55及び第二従動ギヤ54を介して第一伝動軸32に変速されて出力される。
【0038】
第二株間変速機構60は、走行機体2(田植機1)の走行速度に対する植付速度を変速するものであり、第一伝動軸32の動力を変速して第二伝動軸33に出力する。第二株間変速機構60は、第一株間変速機構50よりも植付動力伝達経路の下流側に設けられ、第一伝動軸32と第二伝動軸33との間に構成される。本実施形態においては、第二株間変速機構60は、二段の等速変速と一段の不等速変速を可能とするものであり、等速変速を行う二つのギヤ対(第一駆動ギヤ61及び第一従動ギヤ62と第二駆動ギヤ63及び第二従動ギヤ64)と、不等速変速を行う一つのギヤ対(第三駆動ギヤ65及び第三従動ギヤ66)とを有する。
【0039】
第一駆動ギヤ61、第二駆動ギヤ63及び第三駆動ギヤ65は、第一伝動軸32の後側に一体的に取り付けられて、前方から所定間隔で並置される。第一駆動ギヤ61の径は、第二駆動ギヤ63の径よりも大きく設定される。第三駆動ギヤ65は偏心ギヤであり、その径は概ね第一駆動ギヤ61及び第二駆動ギヤ63よりも小さく設定される。
【0040】
第一従動ギヤ62及び第二従動ギヤ64は、第二伝動軸33に外嵌された筒体67の前後両端にそれぞれ固設されて、前後に筒体67を隔てて並置される。第一従動ギヤ62及び第二従動ギヤ64は、筒体67とともに、第二伝動軸33に相対回転不能かつ軸方向相対変位可能にスプライン嵌合により取り付けられる。筒体67ひいては第一従動ギヤ62及び第二従動ギヤ64は、シフター68が操作されることによって、第二伝動軸33に沿って軸方向に摺動する(図3参照)。
【0041】
第一従動ギヤ62の径は、第一駆動ギヤ61の径よりも小さく設定される。そして、第一従動ギヤ62が第一駆動ギヤ61と噛合可能とされる。すなわち、第一駆動ギヤ61及び第一従動ギヤ62のギヤ対は、増速を行う構成とされる。第二従動ギヤ64の径は、第二駆動ギヤ63の径よりも小さく設定される。そして、第二従動ギヤ64が第二駆動ギヤ63と噛合可能とされる。すなわち、第二駆動ギヤ63及び第二従動ギヤ64のギヤ対は、増速を行う構成とされる。
【0042】
第三従動ギヤ66は、第二従動ギヤ64の後方に所定間隔をとって並置される。第三従動ギヤ66は、第二伝動軸33に相対回転可能(遊転可能)かつ軸方向相対変位不能に取り付けられる。第三従動ギヤ66は、第三駆動ギヤ65と常時噛合される。第三従動ギヤ66は、第三駆動ギヤ65と略同形状の偏心ギヤとされる。すなわち、第三駆動ギヤ65及び第三従動ギヤ66のギヤ対は、一周期中の植付速度に変化を生じさせる変速(不等速変速)を行う構成とされる。
【0043】
第二従動ギヤ64の一側面(第三従動ギヤ66との対向面)には、係合部64aが形成される。また、第三従動ギヤ66の一側面(第二従動ギヤ64との対向面)には、係合部66aが形成される。そして、第一従動ギヤ62及び第二従動ギヤ64の摺動によって、この第二従動ギヤ64の係合部64aが、第三従動ギヤ66の係合部66aに係合可能とされる。
【0044】
第二株間変速機構60においては、第一従動ギヤ62及び第二従動ギヤ64がシフター68の操作により筒体67を介して第二伝動軸33に沿って軸方向に摺動する場合に、動力が第一伝動軸32から一つのギヤ対を介して第二伝動軸33に変速されて伝達される。具体的には、第一駆動ギヤ61と第一従動ギヤ62とが噛合するときは、動力が、第一伝動軸32から第一駆動ギヤ61及び第一従動ギヤ62を経由して第二伝動軸33に伝達される。第二駆動ギヤ63と第二従動ギヤ64とが噛合するときは、動力が、第一伝動軸32から第二駆動ギヤ63及び第二従動ギヤ64を経由して第二伝動軸33に伝達される。第二従動ギヤ64の係合部64aと第三従動ギヤ66の係合部66aとが嵌合するときは、動力が、第一伝動軸32から第三駆動ギヤ65及び第三従動ギヤ66、さらに第二従動ギヤ64を経由して第二伝動軸33に伝達される。そして、第二伝動軸33に伝達された動力は、植付クラッチ70を介して植付出力軸34に伝達可能となっている。
【0045】
このようにして、田植機1においては、第一株間変速機構50による三段の変速と、第二株間変速機構60による三段の変速とを組み合わせて、合計九段階の変速を行い、走行速度に対する植付速度を変速し、株間調整を行うことが可能となっている。そして、株間を大きくする場合は、第二株間変速機構60を、不等速変速段(第三駆動ギヤ65及び第三従動ギヤ66)に設定して、第一株間変速機構50を変速することで、三段の不等速変速を行うことができる。
【0046】
植付クラッチ70は、エンジン5からの動力を植付装置3に対して伝達又は遮断するものである。植付クラッチ70は、第三従動ギヤ66の後方に配置され、第二伝動軸33の後端付近に設けられる。植付クラッチ70は、第二伝動軸33と植付出力軸34との間に構成される。植付クラッチ70は、固定部材71と、可動部材72と、押圧部材73と、付勢部材74と、植付クラッチ軸75とを備える。
【0047】
固定部材71は、第二伝動軸33の後端に固設される。可動部材72は、押圧部材73と一体的に構成される。可動部材72は、固定部材71の後方に配置され植付出力軸34に軸方向相対変位可能に、スプライン嵌合によって取り付けられる。固定部材71の可動部材72と対向する対向面には、クラッチ爪71aが形成される。一方、可動部材72の固定部材71と対向する対向面には、クラッチ爪72aが形成される。可動部材72が植付出力軸34に沿って軸方向に摺動し、可動部材72のクラッチ爪72aが固定部材71のクラッチ爪71aに係合することによって、固定部材71と可動部材72とが連動連結される。付勢部材74は、可動部材72の後方に配置されて、植付出力軸34に外嵌される。可動部材72は、付勢部材74によって前方に押圧されて、クラッチ爪72aが固定部材71のクラッチ爪71aに係合するように付勢される。植付クラッチ軸75は、押圧部材73の上方に植付出力軸34に対して垂直方向に立設される。植付クラッチ軸75は、株間変速ケース30を貫通して、上下方向に摺動可能に構成される。
【0048】
植付クラッチ70においては、植付クラッチ軸75が株間変速ケース30に対して上方に摺動して、その下端部が押圧部材73と当接しないときは、可動部材72が付勢部材74により付勢されて前方に摺動する。これにより、クラッチ爪71a・72aが係合されて、入力軸31から第一株間変速機構50と第二株間変速機構60とを介して第二伝動軸33に伝達された動力が植付出力軸34に伝達される。すなわち、エンジン5からの動力がミッションケース7及び株間変速ケース30を介して植付装置3に動力が伝達される。一方、この状態で、植付クラッチ軸75が株間変速ケース30に対して下方に摺動して、その下端部が押圧部材73と当接したときは、可動部材72が付勢部材74の付勢力に抗して後方に摺動する。これにより、クラッチ爪71a・72aの係合が解除されて、入力軸31から第一株間変速機構50と第二株間変速機構60とを介して第二伝動軸33に伝達された動力が植付出力軸34に伝達されない。すなわち、エンジン5からの動力が植付装置3に動力が伝達されない。
【0049】
施肥動力伝達経路には、図3、図5及び図6に示すように、入力軸31と、施肥伝動軸35と、施肥出力軸36と、施肥クラッチ80とが配置される。
【0050】
施肥伝動軸35は、その軸方向を前後方向として、株間変速ケース30内に入力軸31と平行に配置される。施肥伝動軸35は、入力軸31の右方に設けられ、株間変速ケース30にベアリングを介して回転自在に支持される。施肥伝動軸35の後部には、ベベルギヤ41が固設される。施肥出力軸36は、施肥伝動軸35の後部から上方に立設され、その中途部がベアリングを介して株間変速ケース30に支持される。施肥出力軸36の下端には、ベベルギヤ42が固設される。施肥伝動軸35のベベルギヤ41と、施肥出力軸36のベベルギヤ42とが噛合される。施肥出力軸36は、株間変速ケース30を貫通して、株間変速ケース30から上方へ突出し、動力を施肥装置17に伝達することができるように構成される。
【0051】
施肥クラッチ80は、エンジン5からの動力を施肥装置17に対して伝達又は遮断するものである。施肥クラッチ80は、施肥伝動軸35の前部に設けられる。施肥クラッチ80は、入力軸31と施肥伝動軸35との間に構成される。施肥クラッチ80は、従動ギヤ81と、筒体82と、付勢部材83と、施肥クラッチ軸84とを備える。
【0052】
従動ギヤ81は、施肥伝動軸35の前部に遊転可能に取り付けられる。従動ギヤ81は、前記入力軸31に取り付けられた第二駆動ギヤ53と常時噛合される。筒体82は、従動ギヤ81の後方に配置され、施肥伝動軸35に軸方向相対変位可能に、スプライン嵌合によって取り付けられる。筒体82の前後両端には、円形状の鍔部が形成される。
【0053】
従動ギヤ81の筒体82と対向する対向面には、クラッチ爪81aが形成される。一方、筒体82の従動ギヤ81と対向する対向面にはクラッチ爪82aが形成される。筒体82が施肥伝動軸35に沿って軸方向に摺動し、筒体82のクラッチ爪82aが従動ギヤ81のクラッチ爪81aに係合することによって、従動ギヤ81と筒体82とが連動連結される。付勢部材83は、筒体82の後方に配置されて、施肥伝動軸35に外嵌される。筒体82は、付勢部材83によって前方に押圧されて、クラッチ爪82aが従動ギヤ81のクラッチ爪81aに係合するように付勢される。施肥クラッチ軸84は、筒体82の上方に施肥伝動軸35に対して垂直方向に立設される。施肥クラッチ軸84は、株間変速ケース30を貫通して構成される。施肥クラッチ軸84の下端部には、下面視において円弧形状の切欠部84aが形成される。
【0054】
施肥クラッチ80においては、施肥クラッチ軸84が上面視において時計方向に回動して、その下端部の外周面が筒体82の鍔部82bと当接しないときは、筒体82が付勢部材83により付勢されて前方に摺動する(鍔部82bが切欠部84aの位置に移動する)。これにより、クラッチ爪81a・82aが係合されて、入力軸31から伝達された動力が施肥伝動軸35に伝達される。すなわち、エンジン5からの動力がミッションケース7を介して施肥装置17に動力が伝達される。一方、この状態で、施肥クラッチ軸84が上面視において反時計方向に回動して、その下端部の外周面が筒体82の鍔部82bと当接したときは、筒体82が付勢部材83の付勢力に抗して後方に摺動する。これにより、クラッチ爪81a・82aの係合が解除されて、入力軸31から伝達された動力が施肥伝動軸35に伝達されない。すなわち、エンジン5からの動力が植付装置3に動力が伝達されない。
【0055】
以上のように、本発明の実施形態に係る田植機1においては、ミッションケース7から伝達された動力で駆動する植付装置3を備える田植機1において、前記ミッションケース7から前記植付装置3までの動力伝達経路に、入力軸31と、第一伝動軸32と、第二伝動軸33と、植付出力軸34と、を配置して、前記入力軸31と前記第一伝動軸32との間に第一株間変速機構50を構成し、前記第一伝動軸32と前記第二伝動軸33との間に第二株間変速機構60を構成し、前記第二伝動軸33と前記植付出力軸34との間に植付クラッチ70を構成し、前記入力軸31と前記第二伝動軸33と前記植付出力軸34とを同一軸心上に配置したものである。これにより、第一株間変速機構50と第二株間変速機構60とを近づけて配置することが可能となる。したがって、動力を伝達する三つの軸を同軸上に配置するので、これらの軸を並べて配置する場合と比較して、これらの軸や株間変速装置、植付クラッチを設置する設置スペース(これらを収容する株間変速ケース30)をコンパクトに構成できる。つまり、第一株間変速機構50及び第二株間変速機構60を田植機1にコンパクトに設置することができる。
【0056】
また、前記植付出力軸34は、前記入力軸31に軸支されるものである。これにより、収容する株間変速ケース30をさらにコンパクトに構成できる。つまり、第一株間変速機構50及び第二株間変速機構60を田植機1にさらにコンパクトに設置することができる。
【0057】
また、田植機1は、第一株間変速機構50及び第二株間変速機構60をミッションケース7と別体である株間変速ケース30に収容する構成とされる。これにより、第一株間変速機構50及び第二株間変速機構60のメンテナンス性が上がる。また、第一株間変速機構50及び第二株間変速機構60を他機種に流用することが容易となる。また、第一株間変速機構50及び第二株間変速機構60の配置の自由度が大きくなる。
【0058】
また、田植機1は、動力伝達経路において、トルクリミッタ90を、株間変速ケース30内ではなく、第一株間変速機構50及び第二株間変速機構60よりも下流側で、各植付伝動ケース23・23・23内にそれぞれ配置する構成とされる(図2参照)。これにより、植付伝動ケース23毎にトルクの伝達を遮断することができる。
【0059】
また、田植機1は、減速機構を株間変速ケース30内ではなく、ミッションケース7内に配置する構成とされる。しかも、田植機1は、トルクリミッタ90を、株間変速ケース30内ではなく、各植付伝動ケース23・23・23内に配置する構成とされる。これにより、株間変速ケース30をコンパクトに構成することができる。
【0060】
また、田植機1は、施肥動力取出口を株間変速ケース30に形成する構成とされる。これにより、施肥動力取出口がミッションケース7に形成される構成と比較して、ミッションケース7の大型化を防ぐことができる。
【0061】
また、田植機1は、第一株間変速機構50及び第二株間変速機構60の下流側に増減速機構91を配置する構成とされる(図2参照)。本実施形態においては、増減速機構91は、植付ミッションケース21内に配置する構成とされ、株間変速ケース30内に配置した場合と比較して、株間変速ケース30がコンパクトとなる。
【符号の説明】
【0062】
1 田植機
3 植付装置
7 ミッションケース
30 株間変速ケース
31 入力軸
32 第一伝動軸
33 第二伝動軸
34 植付出力軸(出力軸)
50 第一株間変速機構
60 第二株間変速機構
70 植付クラッチ
80 施肥クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケースから伝達された動力で駆動する植付装置を備える田植機において、
前記ミッションケースから前記植付装置までの動力伝達経路に、入力軸と、第一伝動軸と、第二伝動軸と、出力軸と、を配置して、
前記入力軸と前記第一伝動軸との間に第一株間変速機構を構成し、
前記第一伝動軸と前記第二伝動軸との間に第二株間変速機構を構成し、
前記第二伝動軸と前記出力軸との間に植付クラッチを構成し、
前記入力軸と前記第二伝動軸と前記出力軸とを同一軸心上に配置したことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記出力軸は、前記入力軸に軸支されることを特徴とする請求項1に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−217652(P2011−217652A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89055(P2010−89055)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】