説明

画像処理装置

【課題】 画像記録部又はその近傍で記録媒体のジャムが生じてもそれを容易に除去できるようにすることを目的とする。
【解決手段】 ファクシミリ装置1の本体カバー3を開くと、原稿読み取り部25や開閉カバー27などが外部に臨む状態となる。開閉カバー27は、画像記録部12を覆うと共に、原稿読み取り部25にて画像が読み取られた後の原稿をその排出方向へ適切に導くためのガイドの役目を担う。本体カバー3を開いただけの状態では開閉カバー27はまだ閉じており、外部から画像記録部12を見たり触れたりすることはできない。この状態から、開閉カバー27をその開閉カバー回動軸29を中心にして回動させると、開閉カバー27が開いて画像記録部12が外部に臨む状態となる。そのため、ユーザは、ジャム処理用空間48を介して画像記録部12で生じたジャムを容易に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ装置等の、原稿読み取り及び記録媒体への画像の記録を行うよう構成された画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、この種の画像処理装置においては、装置の小型化が進められ、小型化のための種々の工夫がなされている。例えば、原稿を読み取る原稿読み取り部と記録媒体へ画像を記録する画像記録部を備えたファクシミリ装置では、画像記録部の上側に原稿読み取り部を配置し、読み取り後の原稿および画像記録後の記録媒体がいずれも同じ方向へ排出されるよう構成することによって、装置全体の小型化を実現したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このように構成されたファクシミリ装置では、原稿読み取り部により読み取られた原稿が画像記録部と干渉することなく当該装置外部へ排出されるよう、原稿の当該装置外部への排出を適切にガイドする必要がある。また特に、記録媒体としてロール状に巻回された記録紙(感熱紙など)を用いるタイプのファクシミリ装置には、通常、画像記録部の記録媒体排出方向側に、画像記録後の記録紙を切断するための切断装置が設けられている。
【0004】
そのため、上記のように画像記録部の上側に原稿読み取り部が配置されたファクシミリ装置においては、原稿排出のガイドおよび切断装置の保護を目的としたカバー部材が、画像記録部及び切断装置を覆うように設けられているのが一般的である。
【特許文献1】特開平7−95344号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、画像記録部がカバー部材で覆われるように構成されたファクシミリ装置では、カバー部材で覆われているが故に、記録紙のジャム(紙詰まり)が生じたときにこれを除去するのが困難となる。
【0006】
仮に、画像記録部の上側に原稿読み取り部が配置されておらず、ファクシミリ装置本体側のカバーを開いたときに画像記録部が外部に臨む状態となるのであれば、記録紙のジャムが発生した場合にはその本体側のカバーを開いて画像記録部に詰まった記録紙を直接取り除く等の処置ができる。
【0007】
しかし、上記のように画像記録部が原稿読み取り部の下側に配置され、しかも画像記録部を覆うようにカバー部材が設けられているファクシミリ装置の場合は、装置本体側のカバーを開いて装置内部を見たとき、原稿読み取り部は外部から臨む(見る)ことができるものの、画像記録部は外部から臨むことはできない。よって、ユーザ自身が画像記録部を直接触れることはもちろん、工具などを用いて間接的に触れることも困難である。
【0008】
そのため、記録紙のジャムが発生した場合、ユーザ側でできることとしてはロール状に巻回された記録紙を元の方向(排出方向とは反対方向)に巻き戻すこと程度であり、それだけでジャムを除去するのは容易ではない。しかも、記録紙を巻き戻したり引っ張ったりしている際に記録紙が画像記録部又はその近傍で破れてしまうと、もはやユーザ側では対処できず、その後は製造メーカ側へジャム処理等の作業を依頼せざるを得ない状況となってしまう。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、画像記録部が原稿排出のガイド用の部材に覆われて外部に臨む状態とならない構成の画像処理装置において、画像記録部又はその近傍で記録媒体のジャムが生じてもそれを容易に除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、原稿を読み取る原稿読み取り手段と、記録媒体へ画像を記録する画像記録手段と、原稿読み取り手段により読み取られた原稿が排出される排出方向側から画像記録手段を覆うように設けられ、排出される原稿をその排出方向へガイドする排出ガイド手段とを備えた画像処理装置において、排出ガイド手段は、画像記録手段に対して開閉動作可能であって、開状態のときに画像記録手段が当該画像処理装置の外部に臨むよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された画像処理装置では、排出ガイド手段が、原稿の排出をその排出方向へガイド(案内)すると共に、画像記録手段を覆っている。そのため、通常状態(排出ガイド手段が画像記録手段を覆っている状態)では、当該画像処理装置の外部から画像記録手段を臨むことはできない。
【0012】
一方、本発明では、排出ガイド手段が開閉動作可能に構成されている。そのため、この排出ガイド手段を開くと、画像記録手段が当該画像処理装置の外部に臨むようになる。ここでいう「外部に臨む」とは、単に外部から見える状態にあるだけでなく、画像記録手段又はその近傍に対してユーザが直接(手で)又は間接的に(工具等で)アプローチできることを意味する。
【0013】
従って、請求項1に記載の画像処理装置によれば、画像記録手段において記録媒体のジャムが生じたとき、排出ガイド手段を開状態とすることで、ユーザが直接或いは工具等を用いて画像記録手段又はその近傍へアプローチできるため、ジャムを容易に除去することが可能となる。
【0014】
なお、排出ガイド手段の開閉動作は、ユーザが手動で行うものであってもよいし、専用の機構を設けて自動で行われるものであってもよく、必要に応じて排出ガイド手段を開閉できる限り、開閉動作に必要な機構は種々考えられる。また、画像記録手段により画像が記録される記録媒体としては、例えば、予め所定のサイズ(A4サイズやB5サイズなど)に形成された記録紙や、ロール状に巻回された記録紙・感熱紙などが挙げられる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像処理装置であって、排出ガイド手段が、自身が閉状態の場合において画像記録手段による画像記録後の記録媒体をその排出方向へガイドするための、記録媒体排出ガイド部を有する。
【0016】
つまり、排出ガイド手段は、画像記録手段を覆いつつ原稿の排出をガイドする機能に加え、更に、画像記録手段による画像記録後の記録媒体の排出をガイドする機能も備えているのである。
【0017】
従って、請求項2に記載の画像処理装置によれば、画像記録後の記録媒体をその排出方向へスムーズに導くことができるため、ジャムの発生自体を抑止することができる。しかも、そのジャム抑制のための機能を排出ガイド手段とは別に設ける必要がないため、ジャム発生抑止のための機能(記録媒体排出のガイド機能)を、当該画像処理装置の大型化を招くことなく安価で実現することができる。
【0018】
ここで、画像記録手段が、記録ヘッドとプラテンローラとを有する公知の構成である場合、記録媒体がプラテンローラに巻き付くことによってジャム状態となることがある。このような場合は、記録媒体を引っ張ってプラテンローラから取り除けばジャムを除去することもできる。
【0019】
ところが、ジャム状態となった後もプラテンローラがその駆動源(例えばモータ)と機械的に連結されたままだと、プラテンローラは非常に回転させにくく、回転させるためには非常に大きな力が必要となる。そのため、ジャム発生時に記録媒体を引っ張ってもプラテンローラが回らず(或いは、強く引っ張らないと回らず)、ジャム処理が困難となる。
【0020】
そこで、画像記録手段が上記のように記録ヘッドとプラテンローラとを有する構成の画像処理装置においては、例えば請求項3に記載のように、プラテンローラの駆動源とプラテンローラとの連結状態を解除できるよう構成するとよい。
【0021】
即ち、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の画像処理装置であって、画像記録手段は、記録媒体へ画像を記録する記録ヘッドと、記録媒体を記録ヘッドへ押圧しつつその記録媒体を搬送するプラテンローラとを有する。そして、プラテンローラに連結されてそのプラテンローラを回転駆動させる駆動手段と、この駆動手段とプラテンローラとの連結状態を解除する連結解除手段とを備えている。
【0022】
このように構成された画像処理装置によれば、連結解除手段が駆動手段との連結(直接又は間接的な連結)状態を解除すると、外部からプラテンローラを回転させる方向の力をプラテンローラに与えた場合(例えばプラテンローラに巻き付いた記録媒体を引っ張る等)にプラテンローラが容易に回転可能な状態となる。そのため、記録媒体がプラテンローラに巻き付いてジャム状態となっても、上記連結状態を解除してプラテンローラを自由に回転可能な状態とすることで、詰まった記録媒体を容易に引き出す(プラテンローラが回転しつつ)ことが可能となる。
【0023】
連結解除手段が上記連結状態の解除を実行する条件・タイミングは種々考えられ、例えば、請求項4〜6のいずれかに記載のように解除を実行することができる。
まず、請求項4記載の発明は、請求項3記載の画像処理装置であって、画像記録手段による記録媒体への画像記録中、その記録媒体の搬送が正常に行われない異常状態となった場合にこれを検出する異常検出手段を備え、連結解除手段は、異常検出手段にて異常状態が検出された場合に、駆動手段とプラテンローラとの連結状態を解除する。
【0024】
つまり、異常検出手段にて異常状態が検出されたということは、画像記録手段にて記録媒体のジャムが発生したことが考えられるため、その場合に上記連結状態を解除するのである。このように、記録媒体の搬送に異常が生じると上記連結状態が解除されてプラテンローラが自由に回転できる状態となるため、ユーザは上記連結状態を意識することなく容易にジャムの除去を行うことができる。
【0025】
また請求項5記載の発明は、請求項3記載の画像処理装置であって、連結解除手段による連結状態の解除動作を許可するスイッチ手段を備え、連結解除手段は、スイッチ手段が、オン又はオフのうち許可することを示すいずれか一方の許可状態となった場合に、駆動手段とプラテンローラとの連結状態を解除する。
【0026】
このように構成された画像処理装置によれば、ジャムを除去するにあたり、スイッチ手段を許可状態とすることでプラテンローラを自由に回転可能な状態とすることができるため、ジャムの除去を容易に行うことができる。
【0027】
なお、スイッチ手段は、例えば、ユーザが直接オン・オフ操作できるスイッチとして設けられるものでもよいが、例えば、当該画像処理装置本体を覆うカバーの開閉状態或いは上記排出ガイド手段の開閉状態によってオン・オフが切り換わるようなスイッチとして設けられるものであるとよい。この場合、ジャムを除去する際に、ユーザが直接スイッチ手段を操作する必要はなく、カバー等を開状態とするだけでプラテンローラが自由に回転できる状態となるため、請求項4と同様、ユーザは上記連結状態を意識することなくジャムの除去を行うことができる。
【0028】
また請求項6記載の発明は、請求項5記載の画像処理装置であって、画像記録手段による記録媒体への画像記録中、その記録媒体の搬送が正常に行われない異常状態となった場合にこれを検出する異常検出手段を備え、連結解除手段は、スイッチ手段が許可状態となった場合であって、且つ、異常検出手段にて異常状態が検出された場合に、駆動手段とプラテンローラとの連結状態を解除する。
【0029】
つまり、スイッチ手段に加えて、請求項4の画像処理装置が備える異常検出手段も備え、スイッチ手段の許可状態と記録媒体の搬送異常状態の双方が重なった場合に、上記連結状態を解除するのである。
【0030】
このように構成された画像処理装置によれば、ただ単にスイッチ手段が許可状態となっただけではなく、真に連結解除が必要な場合(つまり記録媒体の搬送が異常状態となった場合)に上記連結状態が解除されるため、当該画像処理装置における無駄な動作を省くことができる。
【0031】
次に、請求項7記載の発明は、請求項3〜6いずれかに記載の画像処理装置であって、駆動手段としてのモータと、モータの回転軸に連結されてその回転駆動力をプラテンローラに伝達するための駆動力伝達手段とを備える。そして、連結解除手段は、連結状態の解除を、モータと駆動力伝達手段との連結を解除することにより行う。
【0032】
このように構成された画像処理装置によれば、連結解除手段がモータと駆動力伝達手段との連結(直接又は間接的な連結)を解除することで、プラテンローラとモータとの連結状態が解除され、プラテンローラが自由に回転できるようになる。
【0033】
この場合、連結解除手段は、より具体的には例えば請求項8に記載のように構成することができる。即ち、請求項8記載の発明は、請求項7記載の画像処理装置であって、駆動力伝達手段は、一又は複数のギヤが噛合して構成されている。そして、連結解除手段は、モータの回転方向を制御するモータ制御手段と、モータにより回転される太陽ギヤと、この太陽ギヤに常時噛合すると共に上記駆動力伝達手段を構成するギヤのいずれかである伝達ギヤにも噛合する遊星ギヤとを有し、モータと駆動力伝達手段との連結の解除は、モータ制御手段が、モータを、遊星ギヤと伝達ギヤとが噛合してプラテンローラに回転駆動力が伝達される回転方向とは逆の方向に回転させて、遊星ギヤと伝達ギヤとの噛合を切り離すことにより行う。
【0034】
即ち、モータの回転駆動力によって太陽ギヤが回転し、その太陽ギヤの回転によって遊星ギヤも回転する。遊星ギヤは、モータをある一定方向に回転させたときに駆動力伝達手段を構成する伝達ギヤに噛合し、伝達ギヤを介して(ひいては駆動力伝達手段を介して)モータの回転駆動力をプラテンローラへ伝達する。一方、モータを上記方向とは逆の方向に回転させて太陽ギヤの回転方向を逆転させると、遊星ギヤと伝達ギヤの噛合は切り離される。つまり、モータとプラテンローラの機械的連結状態が解除されることになる。
【0035】
従って、請求項8記載の画像処理装置によれば、モータの回転方向を切り換えるだけの簡単な制御で、遊星ギヤと伝達ギヤとの噛合の切り離し、ひいてはモータとプラテンローラとの連結状態の解除が可能となる。
【0036】
次に、請求項9記載の発明は、請求項1〜8いずれかに記載の画像処理装置であって、画像記録手段による画像記録後の記録媒体を切断する切断手段を備え、排出ガイド手段は、画像記録手段と共に切断手段も覆うように構成されており、更に、排出ガイド手段が開状態のとき切断手段が当該画像処理装置の外部に臨まないように切断手段を保護する保護手段を備えている。
【0037】
このように構成された画像処理装置によれば、ジャム状態となった記録媒体を除去すべく、ユーザが排出ガイド手段を開いて画像記録手段へ手を近づけたときに、切断手段に手が触れるのが防止される。そのため、ジャム除去時のユーザ等による作業を安全に行うことができる。
【0038】
そして、上述した請求項1〜9いずれかに記載の発明は、例えば請求項10記載の画像処理装置のように、画像記録手段が、当該画像処理装置をその上側から見たときに少なくともその一部が原稿読み取り手段によって隠れた状態となるよう、原稿読み取り手段の下側に配置されている場合に、特に効果的である。
【0039】
このような構成の画像処理装置は、画像記録手段が原稿読み取り手段の下に隠れた状態となってしまい、ユーザが画像記録手段へアプローチするのは困難となるのであるが、上述の請求項1〜9いずれかに記載の構成をとることで、ジャム除去を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
(1)ファクシミリ装置全体の構成
図1は、本発明が適用された画像処理装置としてのファクシミリ装置1の概略構成を示す側断面図である。図1に示す如く、本実施形態のファクシミリ装置1は、本体ケース2に対して本体カバー3が開閉自在に装着された構成となっている。同図において、右側を当該ファクシミリ装置1の前側、左側を当該ファクシミリ装置1の後側とすると、本体カバー3の後側上部には原稿トレイ4が設けられている。
【0041】
本体ケース2と本体カバー3は、それぞれの後端側において本体カバー回動軸5を介して回動自在に連結されている。そして、ユーザが図示しないレバーを操作して本体カバー3を開けると、本体カバー3は本体カバー回動軸5を中心として図中反時計回りに回動する。これにより、原稿トレイ4や後述する操作パネル37、表示パネル38などの、当該ファクシミリ装置1における上側に搭載された各種構成部品も、本体カバー3と共に回動する。
【0042】
本体ケース2には、その後側に、上側が開口した半円筒状のロールトレイ9が設けられている。このロールトレイ9には、感熱紙等の記録紙7がロール状(長尺状)に巻回されてなる記録紙ロール8が収納されている。記録紙7は、ロールトレイ9から引き出された後、カール除去部11を経て画像記録部12へ搬送され、この画像記録部12にて画像が形成された後、記録紙排出経路10に沿ってファクシミリ装置1の外部(前側)へ排出される。即ち、カール除去部11を経た後、記録側プラテン13とサーマルヘッド14との間を通過し、最終的に記録紙切断部15により切断されて排出される。
【0043】
記録紙7は、ファクシミリ装置1の幅方向へライン状に配置されたサーマルヘッド14による記録可能な範囲をカバーすべく、幅広に形成されている。カール除去部11は、記録紙7が搬送される経路(記録紙搬送経路)における記録紙ロール8の下流側に設けられており、ロール状に巻回された記録紙7の巻き癖を直す機能を有する。
【0044】
記録紙搬送経路におけるカール除去部11の下流側には、記録側プラテン13及びサーマルヘッド14からなる画像記録部12が設けられている。記録側プラテン13は、後述するモータ51やギヤを介して回転駆動され、記録紙7をファクシミリ装置1の前側へ搬送・排出する。なお、記録側プラテン13は本発明のプラテンローラに相当し、サーマルヘッド14は本発明の記録ヘッドに相当する。
【0045】
記録側プラテン13に対向するように設けられているサーマルヘッド14は、多数の発熱素子がライン状に配置されたいわゆるラインサーマルヘッドによって構成されている。これにより、サーマルヘッド14は記録紙7の印字可能範囲をカバーすることができ、記録紙7へ所望の画像(外部電話回線から受信した画像など)を記録することができる。このサーマルヘッド14は、押圧バネ17によって記録側プラテン13の下側周面に向かって押圧されている。見方を変えれば、記録側プラテン13は押圧バネ17から受ける荷重の反作用によってサーマルヘッド14を押圧しているとも言える。つまり、記録側プラテン13とサーマルヘッド14の間を搬送される記録紙7は、記録側プラテン13によってサーマルヘッド14へ押圧されつつ搬送されることになる。
【0046】
画像記録部12の下流側には、画像が形成されて当該ファクシミリ装置1の前側へ排出される記録紙7を切断するための記録紙切断部15が設けられている。本実施形態のファクシミリ装置1では、記録紙7への画像記録が終了すると、記録紙切断部15が、長尺状の記録紙7のうち画像が記録された部分を切り離す。
【0047】
また、カール除去部11の下方には、記録紙7の有無を検知するために用いられる記録紙検知用押圧部材33と、この記録紙検知用押圧部材33の位置(上下動)に応じてオン・オフする記録紙有無検知スイッチ30が設けられている。記録紙検知用押圧部材33は、その上端部が、カール除去部11を構成するカール除去カバー11aを貫通してその上側へ突き出るように配置されている。
【0048】
そして、記録紙7がない場合(記録紙検知用押圧部材33の自由状態)は、図示しないバネの付勢力によって記録紙検知用押圧部材33の上端部がカール除去カバー11aから大きく(図1の状態よりも上側へ大きく)突き出た状態となる。この状態では、記録紙検知用押圧部材33の下端面は記録紙有無検知スイッチ30の可動片32から離れるため、可動片32は外部から押圧されない自由状態となる。そのため、記録紙有無検知スイッチ30はオフとなり、記録紙7が無いことが検知される。
【0049】
これに対し、記録紙7が正常にセットされると、記録紙検知用押圧部材33の上端部が記録紙7によって下方へ押圧されるため、記録紙検知用押圧部材33は図1に示す状態となる。この状態では、記録紙有無検知スイッチ30の可動片32が記録紙検知用押圧部材33の下端面によって押圧される。そのため、記録紙有無検知スイッチ30はオンし、記録紙7が有ることが検知される。
【0050】
このように、記録紙7がなくなったり画像記録中に記録紙7のジャムが生じるなど、記録紙7が正常にセットされない状態となって、記録紙7が記録紙検知用押圧部材33の上端部に接触しなくなると、記録紙7が無くなったことが検知される。なお、記録紙有無検知スイッチ30は本発明の異常検出手段に相当するものである。
【0051】
一方、送信を行う際に原稿トレイ4上に載置された原稿(図示略)は、原稿挿入口21に挿入されると、ADF(Automatic Document Feeder )ローラ22や読み取り側プラテン23により、原稿搬送経路20に沿って搬送される。即ち、原稿挿入口21に原稿が挿入されると、原稿はまずADFローラ22によって原稿読み取り部へ搬送される。ADFローラ22の上側表面には、原稿がADFローラ22によって搬送される際に重送されないよう一枚ずつ分離するための分離片31(図1では図示略。図4参照。)が当接している。そのため、ADFローラ22は、原稿挿入口21に挿入された原稿を、分離片31と協働して原稿搬送経路20に沿って一枚ずつ搬送する。
【0052】
原稿搬送経路20におけるADFローラ22の下流側に設けられた原稿読み取り部25は、CIS(Contact Image Sensor)24と、このCIS24の上側を圧接するように設けられた読み取り側プラテン23とを備えている。CIS24は、原稿搬送経路20に沿って搬送されてきた原稿がこのCIS24と読み取り側プラテン23との間を通過する際に、原稿上の画像を順次読み取る。なお、原稿読み取り部25は本発明の原稿読み取り手段に相当する。
【0053】
CIS24の下流側には、図示しない排紙ローラ等が回転可能に配置されている。そのため、CIS24を介して画像読み取りが行われた後の原稿は、CIS24の下流側に設けられた排紙ローラ等によって当該ファクシミリ装置1の外部(前側)へ排出される。なお、CIS24によって読み取られた画像は、後述する送信部92を介して外部へ送信される。
【0054】
そして、原稿搬送経路20における原稿読み取り部25の下流側には、CIS24により画像が読み取られた後の原稿が原稿搬送経路20に沿って確実に搬送・排出されるよう、原稿をその排出方向へガイドするための原稿パス26が設けられている。
【0055】
原稿パス26は、開閉カバー27と固定カバー28とにより構成される。開閉カバー27は、画像記録部12及び記録紙切断部15を覆うように設けられ、その画像記録部12及び記録紙切断部15に対して開閉動作可能に構成されている。この開閉カバー27の開閉動作は、開閉カバー回動軸29を中心として回動することにより行われる。即ち、図1の状態から、開閉カバー回動軸29を中心として開閉カバー27を図中時計回りに回動させると、開閉カバー27が開いた状態となる(図8参照)。なお、開閉カバー27は本発明の排出ガイド手段に相当する。
【0056】
そして、開閉カバー27を開いたとき、画像記録部12が当該装置1の外部(前側)に臨む状態となる。つまり、開閉カバー27を開くとユーザは画像記録部12を直接見たり触れたりすることができるのである。そのため、記録紙7への画像記録中に記録紙7が画像記録部12に詰まり、記録紙ジャムが発生しても、開閉カバー27を開いて容易にジャム処理を行うことができる。このジャム処理については後で詳述する。
【0057】
また、開閉カバー27の端部(記録側プラテン13の下流側の位置)には、画像記録後の記録紙7を記録紙排出経路10に沿って確実に当該装置1の外部へ排出させるためのペーパーガイド46が形成されている。画像記録部12を通過した記録紙7は、このペーパーガイド46によってガイドされ、所定の記録紙排出経路10に沿って排出されることとなる。なお、このペーパーガイド46は本発明の記録媒体排出ガイド部に相当するものである。
【0058】
本実施形態のファクシミリ装置1では、原稿読み取り部25が、図示の如く画像記録部12の上側に位置するように設けられている。つまり、当該ファクシミリ装置1を上側から見たとき、画像記録部12の大部分が原稿読み取り部25によって隠れた(覆われた)状態となる。そして、原稿および記録紙7のいずれも、当該ファクシミリ装置1の前側に排出される。このような構成により、当該ファクシミリ装置1の小型化が実現されている。
【0059】
また、本体カバー3には、数字キーや各種ファンクションキー等を有する操作パネル37や、当該ファクシミリ装置1の状態や画像の送受信状態などの各種情報が表示される、LCD(Liquid Crystal Display)等からなる表示パネル38が設けられている。そして、ユーザが操作パネル37のキーを押下することにより、当該ファクシミリ装置1が実行可能な各種の動作が行われる。
【0060】
さらに、本体ケース2内におけるロールトレイ9の下部には、当該ファクシミリ装置1の動作を制御するための各種電子回路が形成されたプリント回路基板40が配置されている。
【0061】
(2)駆動機構の構成
次に、記録紙7へ画像を記録する際に記録側プラテン13へ回転駆動力を伝達し、原稿の画像を読み取る際に読み取り側プラテン23へ回転駆動力を伝達するための駆動機構の構成について、図2及び図3に基づいて説明する。図2及び図3はいずれも、モータの駆動力を記録側プラテン13又は読み取り側プラテン23へ伝達してこれら各プラテン13,23を回転させるための駆動機構50の概略構成を表す説明図であり、図2はモータの駆動力が記録側プラテン13へ伝達される状態を表し、図3はモータの駆動力がいずれのプラテンにも伝達されない状態を表している。
【0062】
図2、図3に示す如く、本実施形態の駆動機構50は、駆動源としてのモータ(本実施形態ではステッピングモータ)51、モータ51の回転軸52に同軸状に取り付けられてこの回転軸52と共に回転するモータギヤ53、モータギヤ53に常時噛合する太陽ギヤ54、太陽ギヤ54に常時噛合する遊星ギヤ55、モータ51が図中時計回り(CW:clockwise)に回転したときに遊星ギヤ55と噛合する第1従動ギヤ61、この第1従動ギヤ61を含む5つの従動ギヤ61,62,63,64,65からなる記録側従動ギヤ列56、モータ51が図中反時計回り(CCW:counterclockwise)に回転したときに遊星ギヤ55と噛合する第6従動ギヤ66、この第6従動ギヤ66を含む6つの従動ギヤ66,67,68,69,70,71からなる読み取り側従動ギヤ列57によって構成されている。
【0063】
太陽ギヤ54は、より詳細には、大径部54aと小径部54bを有し、このうち大径部54aがモータギヤ53に噛合し、小径部54bが遊星ギヤ55に噛合している。そのため、図2に示すように、モータ51が図中時計回り(CW方向)に回転すると、この回転が太陽ギヤ54を構成する小径部54bを介して遊星ギヤ55へ伝達される。これにより、遊星ギヤ55は図中時計回りに回転しつつ第1従動ギヤ61側へ公転し、第1従動ギヤ61と噛合する。逆に、図3に示すように、モータ51が図中反時計回り(CCW方向)に回転すると、遊星ギヤ55は図中反時計回りに回転しつつ第6従動ギヤ66側へ公転する。そのため、第1従動ギヤ61との噛合が切り離され、第6従動ギヤ66と噛合することになる。
【0064】
記録側従動ギヤ列56は、遊星ギヤ55と噛合される第1従動ギヤ61と、この第1従動ギヤ61と噛合する第2従動ギヤ62と、この第2従動ギヤ62と噛合する第3従動ギヤ63と、この第3従動ギヤ63と噛合する第4従動ギヤ64と、この第4従動ギヤ64と噛合する第5従動ギヤ65とにより構成される。そして、第5従動ギヤ65は、記録側プラテン13と同軸状に設けられ、記録側プラテン13と共に回転する。なお、太陽ギヤ54及び遊星ギヤ55を介してモータ回転軸52に連結される記録側従動ギヤ列56は、本発明の駆動力伝達手段に相当するものであり、このうち第1従動ギヤ61は、本発明の伝達ギヤに相当する。
【0065】
読み取り側従動ギヤ列57は、遊星ギヤ55と噛合される第6従動ギヤ66と、この第6従動ギヤ66と噛合する第7従動ギヤ67と、この第7従動ギヤ67と噛合する第8従動ギヤ68と、この第8従動ギヤ68と噛合する第9従動ギヤ69と、この第9従動ギヤ69と噛合する第10従動ギヤ70と、この第10従動ギヤ70と噛合する第11従動ギヤ71とにより構成される。そして、第11従動ギヤ71は、読み取り側プラテン23と同軸状に設けられ、読み取り側プラテン23と共に回転する。また、第8従動ギヤ68は、ADFローラ22と同軸状に設けられ、ADFローラ22と共に回転する。
【0066】
このように構成された駆動機構50において、記録紙7への画像記録が行われる際は、記録側プラテン13を回転させるべく、モータ51が図中時計回り(CW方向)に回転される。すると、上述のように遊星ギヤ55が第1従動ギヤ61と噛合し、遊星ギヤ55の回転が第5従動ギヤ65まで伝達されて、この第5従動ギヤ65と同軸状に設けられた記録側プラテン13が反時計回りに回転する(図2参照)。
【0067】
つまり、モータ51をCW方向に回転させることで、モータ51の回転駆動力は、モータギヤ53、太陽ギヤ54、遊星ギヤ55、記録側従動ギヤ列56を介して記録側プラテン13へ伝達されるのである。なお、このように遊星ギヤ55と第1従動ギヤ61とが噛合してモータ51と記録側プラテン13とが連結した状態のままだと、仮にモータ51の回転が停止していても、記録側プラテン13をユーザ自身で回転させるのは非常に困難である。
【0068】
一方、モータ51の回転駆動力が記録側プラテン13へ伝達される状態(図2)から、モータ51の回転方向をCW方向とは逆のCCW方向に切り換えると、上述のように遊星ギヤ55と第1従動ギヤ61との噛合が切り離される(図3参照)。この状態から更にモータ51がCCW方向へ回転を継続すると、遊星ギヤ55は、読み取り側従動ギヤ列57を構成する第6従動ギヤ66と噛合する。これにより、遊星ギヤ55の回転が第11従動ギヤ71まで伝達されて、この第11従動ギヤ71と同軸状に設けられた読み取り側プラテン23が反時計回りに回転する(図3中の破線矢印参照)。
【0069】
このように、駆動機構50では、モータ51の回転方向を切り換えることによって、遊星ギヤ55と第1従動ギヤ61との噛合の切り離し、ひいてはモータ51と記録側従動ギヤ列56側との連結(回転駆動力の伝達)の解除を実現している。
【0070】
そして、遊星ギヤ55と第1従動ギヤ61との噛合が切り離されることによってモータ51と記録側プラテン13との連結状態が解除されると、記録側プラテン13は自由に回転可能な状態となる。そのため、本実施形態のファクシミリ装置1は、記録紙7のジャムが生じた場合はモータ51を逆転(CCW方向へ回転)させて上記連結状態を解除し、記録側プラテン13が容易に回転可能な状態となるようにされている。
【0071】
図4は、駆動機構50を臨むようにファクシミリ装置1全体を見たときの状態を表す側面図である。上述した通り、読み取り側従動ギヤ列57を構成する第8従動ギヤ68は、ADFローラ22と同軸状に設けられている。そして、ADFローラ22の外周表面には、分離片31が当接している。この分離片31とADFローラ22との協働により原稿の重送を防ぐようにしているのは既に説明した通りである。
【0072】
なお、図4に示すように、プリント回路基板40上には、カバー開閉検知スイッチ41、回線接続端子43、外付電話端子44、及び受話器接続端子45が取り付けられている。このうち3つの各端子43,44,45については後で説明する。
【0073】
カバー開閉検知スイッチ41は、本体カバー3の開閉状態を検知するためのものであり、回動軸75を中心に回動可能な接触可動部76を備えた周知のスイッチである。接触可動部76は、外部から荷重を受けない自由状態においては図中破線で示した状態(位置)にある。この状態のときは、カバー開閉検知スイッチ41はオフ状態となり、本体カバー3が開いていることが検知される。
【0074】
一方、ファクシミリ装置1には、本体カバー3に固定されて本体カバー3の開閉動作に伴ってその開閉方向へ動く、長尺状の押圧部材が設けられている(図示略)。本体カバー3が開かれたとき、この押圧部材はカバー開閉検知スイッチ41の接触可動部76から離れ、接触可動部76は自由状態となる。逆に、本体カバー3を閉じたときは、押圧部材が接触可動部76に接触するようになる。これにより、接触可動部76は図中下方向に押され、回動軸75を中心として図中反時計回りに回動して図示の状態(実線)となる。
【0075】
このように本体カバー3が閉じられて接触可動部76が押されると、カバー開閉検知スイッチ41はオン状態となり、本体カバー3が閉じていることが検知される。
そして、本実施形態のファクシミリ装置1では、記録紙7の搬送動作に異常が生じた場合(詳細は後述)であって、且つ、本体カバー3を開けたとき、即ちカバー開閉検知スイッチ41がオフ状態となって本体カバー3の開状態が検知されたときに、モータ51がCCW方向に回転して、遊星ギヤ55と第1従動ギヤ61の噛合が切り離される。なお、このカバー開閉検知スイッチ41が本発明のスイッチ手段に相当するものであり、本スイッチ41のオン状態が、本発明の許可状態に相当する。
【0076】
(3)モータ制御について
次に、各プラテン13,23へ駆動力を供給するモータ51の制御について説明する。図5に、ファクシミリ装置1の各種動作を制御するためにプリント回路基板40に形成された制御回路の概略ブロック図を示す。
【0077】
図5に示す如く、本実施形態のファクシミリ装置1では、各種動作の制御全体を統括するCPU81と、CPU81により実行される各種制御プログラムが格納されたROM82と、CPU81による各種演算処理の際のワークエリアとして用いられるRAM83と、CPU81により実行されるプログラムや各種パラメータ等が格納されたEEPROM84と、CPU81の処理に基づいて各種情報を表示パネル38へ表示させると共に、操作パネル37における操作内容やカバー開閉検知スイッチ41のオン・オフ状態、記録紙有無検知スイッチ30による検知内容などの情報をCPU81へ入力するための入出力インターフェイス(I/F)85と、CIS24による原稿読み取りを制御する読み取り制御部87と、サーマルヘッド14による記録紙7への画像記録を制御する記録制御部88と、モータ51の回転(回転方向や回転速度など)を制御するためのモータ制御部89と、CIS24にて読み取った原稿の内容(画像)やサーマルヘッド14にて記録紙7へ記録すべき画像に対する各種画像処理を行うための画像処理部90と、CIS24にて読み取った内容(画像)の外部(公衆回線)への送信処理や外部から送信されてきた音声や画像の受信処理を行う通信I/F91などが、内部バス94を介して相互に接続されている。これらの各種機能ブロックは全て、プリント回路基板40上に形成されている。
【0078】
通信I/F91は、各種データの送信処理を行う送信部92と、受信した音声や画像の受信処理を行う受信部93と、切換部96とを備える。この通信I/F91は、図4で説明した3つの端子、即ち、回線接続端子43、外付電話端子44、及び受話器接続端子45も備えており、回線接続端子43に外部の公衆回線が接続される。回線接続端子43には、外部の公衆回線と接続するための接続コードが差し込まれる。外付電話端子44には、他に電話機を使用する場合にその電話機と接続するための電話機コードが差し込まれる。受話器接続端子45には受話器と接続するための電話機コードが差し込まれる。
【0079】
切換部96は、上記各端子43,44,45相互間の接続切り換えや、送信部92又は受信部93と回線接続端子43との接続切り換えなどを行う。具体的には、当該ファクシミリ装置1の受話器にて外部の通話相手と音声通話が行われる際は回線接続端子43と受話器接続端子45とを相互に接続し、当該ファクシミリ装置1に接続された他の外付電話機にて外部の通話相手と音声通話が行われる際は回線接続端子43と外付電話端子44とを相互に接続する。また、原稿読み取り部25にて読み取られた画像を外部に送信する際は送信部92からの画像が回線接続端子43から公衆回線へ送出されるようにし、公衆回線からの画像受信中或いは受信待機中は回線接続端子43から受信部93へ画像が入力されるようにする。
【0080】
このように構成されたファクシミリ装置1では、外部の公衆回線から通信I/F91にて画像が受信されると、CPU81の指令を受けつつ画像処理部90が適宜画像処理を行う。そして、画像処理後の画像が、記録制御部88を介してサーマルヘッド14により記録紙7へ記録される。サーマルヘッド14による画像記録中は、モータ制御部89が、CPU81の指令に基づいてモータ51の回転を制御し、記録側プラテン13を回転させる。なお、CPU81及びモータ制御部89により本発明のモータ制御手段が実現される。
【0081】
また、原稿の内容を外部へ送信する際は、読み取り制御部87により制御されるCIS24が原稿を読み取る。そして、読み取り後の原稿は画像処理部90により適宜処理され、その画像処理後の画像が送信部92を介して外部の公衆回線へ送出される。CIS24による原稿読み取り中も、モータ制御部89が、CPU81の指令に基づいてモータ51の回転を制御し、読み取り側プラテン23を回転させる。
【0082】
そして、記録紙7への画像記録中に、記録紙7がなくなったり記録紙7がジャム状態となるなど、画像記録を正常に行うことができないような何らかのエラーが検知された場合、CPU81は、モータ51をCCW方向(図3参照)に回転させてモータ51と記録側プラテン13との連結状態が解除されるよう、モータ制御部89に指令を与える。このようにエラーが生じた場合のモータ51の制御は、画像記録中にCPU81が実行するジャム検知処理として行われる。なお、上記エラーの検知は、記録紙有無検知スイッチ30からの検知信号に基づいて行われる。
【0083】
図6に、記録紙7への画像記録中にCPU81にて実行されるジャム検知処理のフローチャートを示す。外部の公衆回線から画像が受信され、その画像の記録紙7への記録開始と共にモータ51の回転(CW方向への回転)が開始されると、このジャム検知処理も開始される。なお、画像記録開始時は、モータ51がCW方向へ回転して遊星ギヤ55と第1従動ギヤ61とが噛合し、モータ51の回転駆動力が記録側プラテン13へ伝達される状態となる。
【0084】
ジャム検知処理が開始されると、まず、記録紙有無検知スイッチ30の検知内容に基づき、記録紙7の搬送動作について何らかのエラーが検知されたか否かが判断される(S110)。ここで、エラーがなく画像記録が正常に行われているならば(S110:NO)、画像記録が終了したか否かが判断される(S150)。このとき、終了していない場合はS110へ戻り、終了した場合は、モータ51の駆動を停止し(S160)、そのままこのジャム検知処理を終了する。
【0085】
一方、記録紙7の搬送動作についてエラーが検知された場合は(S110:YES)、モータ51の駆動を停止し(S120)、本体カバー3が開かれるまで待機する(S130)。本体カバー3が開かれたか否かの判断は、カバー開閉検知スイッチ41のオン・オフ状態に基づいて行われる。
【0086】
本体カバー3が開かれてカバー開閉検知スイッチ41がオフになると(S130:YES)、ユーザがジャム処理を容易に行えるよう、モータ51と記録側プラテン13との連結状態を解除する(S140)。具体的には、既述のように、モータ51をCCW方向へ回転させて遊星ギヤ55と第1従動ギヤ61との噛合を切り離す。これにより、記録側プラテン13は容易に回転できるようになる。
【0087】
(4)ジャム処理について
次に、記録紙7への画像記録中にジャムが発生した場合の、ジャム除去処理の具体例について、図7及び図8に基づいて概略説明する。記録紙有無検知スイッチ30によって記録紙7が正常にセット或いは搬送されていないこと、即ちエラー状態が検知されると、表示パネル38にエラー状態である旨の表示がなされる。この表示を見ることによって、ユーザは、記録紙7に関する何らかのエラーが発生したことを知ることができる。
【0088】
エラー発生後、ユーザが本体カバー3を開けることによって、ファクシミリ装置1が図7に示すような状態になると、原稿読み取り部25やADFローラ22、開閉カバー27などが外部に臨む状態となる。画像記録部12は、開閉カバー27で覆われているため、外部から見ることができない。そのため、仮に記録紙7が画像記録部12にてジャム状態となっていても、このままの状態ではジャムを除去するのは困難である。
【0089】
但し、本体カバー3を開けたことにより、モータ51と記録側プラテン13との連結状態は解除され、記録側プラテン13は外部から力を加えたときに容易に回転できる状態となっている。そのため、記録側プラテン13に記録紙7が巻き付くといったジャムに対しては、記録紙7を記録紙ロール8側から引っ張ることで、記録側プラテン13を回転させつつその巻き付いた記録紙7を取り出すことができる。
【0090】
しかし、記録紙7を引っ張ったときに記録紙7が画像記録部12近傍で破れてしまうことも予想される。その場合は、開閉カバー27を開くことによって、画像記録部12近傍に残留した記録紙7を取り除くことができる。
【0091】
即ち、開閉カバー27を、その開閉カバー回動軸29を中心にして回動させることにより開状態とすると、ファクシミリ装置1は図8に示す状態となる。このように開閉カバー27を開くことで、画像記録部12が外部に臨む状態となる。そのため、ユーザは、外部からジャム処理用空間48を利用して画像記録部12における記録紙ジャムを除去することができる。必要に応じて記録側プラテン13を手や工具等で回転させることもできる。
【0092】
つまり、記録紙ジャムが発生した場合に、本体カバー3を開くと記録側プラテン13を容易に回転させることが可能な状態となり、さらに開閉カバー27を開くと画像記録部12が外部に臨む状態となる。そのため、ユーザは容易にジャムを除去することができるようになるのである。
【0093】
画像記録部12の前側には、記録紙7を切断するための記録紙切断部15が設けられているが、記録紙切断部15は、開閉カバー27を開いたときにこの記録紙切断部15が外部へ露出する(外部に臨む)ことがないよう、上部が切断部カバー35によって覆われている。このように切断部カバー35で覆われていることにより、開閉カバー27を開いた状態での記録紙7のジャム処理を安全に行うことができる。なお、記録紙切断部15は本発明の切断手段に相当し、切断部カバー35は本発明の保護手段に相当する。
【0094】
(5)本実施形態の効果
以上詳述した本実施形態のファクシミリ装置1によれば、画像記録部12又はその近傍で記録紙7のジャムが生じたとき、開閉カバー27を開状態とすることで、ユーザが直接或いは工具等を用いて画像記録部12又はその近傍へアプローチでき、画像記録部12にて詰まったり破れたりするなどしている記録紙7を容易に取り除くことができる。そのため、ユーザはジャムを容易に除去することが可能となる。
【0095】
また、開閉カバー27にはペーパーガイド46が形成されている。そのため、画像記録後の記録紙7をその排出方向へ(記録紙排出経路10に沿って)適切に導くことができ、ジャムの発生自体を抑止することができる。しかも、そのジャム抑制のためのペーパーガイド46が、開閉カバー27と別体ではなく一体化して形成されている。そのため、ジャム発生抑止のための記録紙7の排出ガイド機能を、当該ファクシミリ装置1の大型化を招くことなく安価で実現することができる。
【0096】
更に、記録紙7のジャム発生が検知されたとき、本体カバー3を開くと、モータ51と記録側プラテン13との連結状態が解除される。これにより、記録側プラテン13は自由に回転できる状態となり、ユーザが直接手で回転させることも容易にできる。そのため、記録側プラテン13に記録紙7が巻き付いてしまってもこれを容易に取り除くことができる。
【0097】
しかも、モータ51と記録側プラテン13との連結状態の解除は、単に本体カバー3を開いただけでは行われず、記録紙有無検知スイッチ30にて記録紙7が無いことが検知された状態で本体カバー3を開けたときに行われる。そのため、真に連結解除が必要な場合(つまり記録紙7のジャムなど、記録紙7の搬送が異常状態となった場合)に上記連結状態が解除されることとなり、当該ファクシミリ装置1における無駄な動作(無駄な連結状態解除動作)を省くことができる。
【0098】
また、モータ51から記録側プラテン13への回転駆動力の伝達は、モータギヤ53、太陽ギヤ54、遊星ギヤ55、記録側従動ギヤ列56を介して行われる。そして、モータ51と記録側プラテン13との連結又はその連結状態の解除は、遊星ギヤと第1従動ギヤ61との噛合又はその切り離しによって行われる。さらにその噛合又はその切り離しは、モータ51の回転方向を切り換えるだけの簡単な制御によって実現される。このように、本実施形態のファクシミリ装置1では、モータ51の回転方向を制御するだけで、モータ51と記録側プラテン13との連結状態を制御できるのである。
【0099】
(6)変形例
本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0100】
例えば、上記実施形態では、記録紙有無検知スイッチ30によって記録紙7の搬送状態に何らかのエラーが生じた場合であって(S110:YES)、且つ、本体カバー3を開いた場合に(S130:YES)、モータ51をCCW方向に回転させて遊星ギヤ55と第1従動ギヤ61との噛合を切り離し、モータ51と記録側プラテン13との連結状態を解除するようにしたが、これはあくまでも一例である。
【0101】
他の方法として、例えば、本体カバー3を開けるだけで上記連結状態が解除されるようにしてもよい。この場合のジャム検知処理は、図6の処理フローからS110、S150及びS160の処理を取り除いたものとなる。また例えば、本体カバー3の開閉状態にかかわらず記録紙7の搬送エラーが検知されたときに上記連結状態が解除されるようにしてもよい。この場合のジャム検知処理は、図6の処理フローからS130の処理を取り除いたものとなる。
【0102】
また、上記連結状態を解除するための条件の一つが、本体カバー3を開状態とすることであったが、これに代えて(或いはこれに加えて更に)、開閉カバー27が開いたときに上記連結状態が解除されるようにしてもよい。
【0103】
また、上記実施形態のファクシミリ装置1では、駆動機構50が、モータ51の回転駆動力をモータギヤ53、太陽ギヤ54、遊星ギヤ55、記録側従動ギヤ列56を介して記録側プラテン13へ伝達するように構成されているが、モータ51から記録側プラテン13へ回転駆動力を伝達するための具体的構成は上記駆動機構50の構成に限定されない。記録側従動ギヤ列56の構成(ギヤの数など)も任意に決めることができる。要するに、モータ51の回転駆動力を適切な回転速度・回転トルクにて記録側プラテン13へ伝達でき、しかもモータ51と記録側プラテン13との連結状態を解除することができる限り、種々の形態の駆動機構を構成することができる。
【0104】
更に、上記実施形態では、感熱紙からなる記録紙7にサーマルヘッド14により画像の記録を行うファクシミリ装置1を例に挙げたが、本発明の適用はこのファクシミリ装置1に限らないことはいうまでもない。原稿読み取り部と画像記録部を備え、原稿の排出をガイドする部材が画像記録部を覆うように設けられたあらゆる画像処理装置(例えばコピー機や複合機など)に対して本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本実施形態のファクシミリ装置の概略構成を表す側断面図である。
【図2】本実施形態の駆動機構の概略構成(モータの駆動力が記録側プラテンへ伝達される状態)を表す説明図である。
【図3】本実施形態の駆動機構の概略構成(モータの駆動力が記録側プラテン、読み取り側プラテンのいずれにも伝達されない状態)を表す説明図である。
【図4】駆動機構を臨むようにファクシミリ装置全体を見たときの状態を表す側面図である。
【図5】ファクシミリ装置の制御回路を表す概略ブロック図である。
【図6】本実施形態のジャム検知処理を表すフローチャートである。
【図7】本体カバーを開いた状態のファクシミリ装置を表す側断面図である。
【図8】本体カバー及び開閉カバーを共に開いた状態のファクシミリ装置を表す側断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1…ファクシミリ装置、2…本体ケース、3…本体カバー、5…本体カバー回動軸、7…記録紙、8…記録紙ロール、10…記録紙排出経路、11…カール除去部、12…画像記録部、13…記録側プラテン、14…サーマルヘッド、15…記録紙切断部、20…原稿搬送経路、23…読み取り側プラテン、25…原稿読み取り部、26…原稿パス、27…開閉カバー、28…固定カバー、29…開閉カバー回動軸、30…記録紙有無検知スイッチ、32…可動片、33…記録紙検知用押圧部材、35…切断部カバー、37…操作パネル、38…表示パネル、40…プリント回路基板、41…カバー開閉検知スイッチ、46…ペーパーガイド、48…ジャム処理用空間、50…駆動機構、51…モータ、53…モータギヤ、54…太陽ギヤ、54a…大径部、54b…小径部、55…遊星ギヤ、56…記録側従動ギヤ列、57…読み取り側従動ギヤ列、61…第1従動ギヤ、62…第2従動ギヤ、63…第3従動ギヤ、64…第4従動ギヤ、65…第5従動ギヤ、66…第6従動ギヤ、67…第7従動ギヤ、68…第8従動ギヤ、69…第9従動ギヤ、70…第10従動ギヤ、71…第11従動ギヤ、81…CPU、82…ROM、83…RAM、84…EEPROM、85…入出力I/F87…読み取り制御部、88…記録制御部、89…モータ制御部、90…画像処理部、91…通信I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取る原稿読み取り手段と、
記録媒体へ画像を記録する画像記録手段と、
前記原稿読み取り手段により読み取られた原稿が排出される排出方向側から前記画像記録手段を覆うように設けられ、前記排出される原稿をその排出方向へガイドする排出ガイド手段と、
を備えた画像処理装置において、
前記排出ガイド手段は、前記画像記録手段に対して開閉動作可能であって、開状態のときに前記画像記録手段が当該画像処理装置の外部に臨むよう構成されている
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記排出ガイド手段は、自身が閉状態の場合において前記画像記録手段による画像記録後の記録媒体をその排出方向へガイドするための、記録媒体排出ガイド部を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像処理装置であって、
前記画像記録手段は、
前記記録媒体へ画像を記録する記録ヘッドと、
前記記録媒体を前記記録ヘッドへ押圧しつつその記録媒体を搬送するプラテンローラと、
を有し、
前記プラテンローラに連結されてそのプラテンローラを回転駆動させる駆動手段と、
前記駆動手段と前記プラテンローラとの連結状態を解除する連結解除手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像処理装置であって、
前記画像記録手段による前記記録媒体への画像記録中、その記録媒体の搬送が正常に行われない異常状態となった場合にこれを検出する異常検出手段を備え、
前記連結解除手段は、前記異常検出手段にて前記異常状態が検出された場合に、前記駆動手段と前記プラテンローラとの連結状態を解除する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項3記載の画像処理装置であって、
前記連結解除手段による前記連結状態の解除動作を許可するスイッチ手段を備え、
前記連結解除手段は、前記スイッチ手段が、オン又はオフのうち前記許可することを示すいずれか一方の許可状態となった場合に、前記駆動手段と前記プラテンローラとの連結状態を解除する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像処理装置であって、
前記画像記録手段による前記記録媒体への画像記録中、その記録媒体の搬送が正常に行われない異常状態となった場合にこれを検出する異常検出手段を備え、
前記連結解除手段は、前記スイッチ手段が前記許可状態となった場合であって、且つ、前記異常検出手段にて前記異常状態が検出された場合に、前記駆動手段と前記プラテンローラとの連結状態を解除する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項3〜6いずれかに記載の画像処理装置であって、
前記駆動手段としてのモータと、
前記モータの回転軸に連結されてその回転駆動力を前記プラテンローラに伝達するための駆動力伝達手段と、
を備え、
前記連結解除手段は、前記連結状態の解除を、前記モータと前記駆動力伝達手段との連結を解除することにより行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像処理装置であって、
前記駆動力伝達手段は、一又は複数のギヤが噛合して構成され、
前記連結解除手段は、
前記モータの回転方向を制御するモータ制御手段と、
前記モータにより回転される太陽ギヤと、
前記太陽ギヤに常時噛合すると共に前記駆動力伝達手段を構成する前記ギヤのいずれかである伝達ギヤにも噛合する遊星ギヤと、
を有し、前記モータと前記駆動力伝達手段との連結の解除は、前記モータ制御手段が、前記モータを、前記遊星ギヤと前記伝達ギヤとが噛合して前記プラテンローラに前記回転駆動力が伝達される回転方向とは逆の方向に回転させて、前記遊星ギヤと前記伝達ギヤとの噛合を切り離すことにより行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8いずれかに記載の画像処理装置であって、
前記画像記録手段による画像記録後の記録媒体を切断する切断手段を備え、
前記排出ガイド手段は、前記画像記録手段と共に前記切断手段も覆うように構成されており、
更に、前記排出ガイド手段が開状態のとき前記切断手段が当該画像処理装置の外部に臨まないように前記切断手段を保護する保護手段を備えている
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1〜9いずれかに記載の画像処理装置であって、
前記画像記録手段は、当該画像処理装置をその上側から見たときに少なくともその一部が前記原稿読み取り手段によって隠れた状態となるよう、前記原稿読み取り手段の下側に配置されている
ことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−67642(P2007−67642A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249242(P2005−249242)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】