説明

画像形成装置および画像形成装置の記憶部制御方法

【課題】画像形成装置の大容量記憶部へ加わる振動ストレスを小さく抑え、大容量記憶部の故障や不具合の発生時期を遅らせる。
【解決手段】画像入力部は画像データを入力する。画像形成部21は、入力された画像データに基づき画像形成する。大容量記憶部9、11は、画像データを記憶蓄積するとともに記憶蓄積動作に伴う動作検査情報を出力する。動作制御部37は、動作検査情報を所定タイミング毎に取得して検査基準情報と比較する。動作制御部37は、予測故障時期が早いと判別されたとき、大容量記憶部9、11の振動を低減するよう装置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置および画像形成装置の記憶部制御方法に係り、ハードディスク(HDD)等の大容量記憶部を搭載した複写機、ファクシミリ機又はこれらの複合機(MFP:Multi Function Peripheral)等の画像形成装置およびこれに用いる記憶部制御方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置においては、大量の画像データを読み込んだり画像形成する一方、それら大量の画像データの蓄積やソーティング処理等の実行のために、ハードディスク等の大容量記憶部を搭載している。
【0003】
ところが、ハードディスク等の大容量記憶部は、スピンドルモータ等によって磁気ディスクを回転させながら記憶や読み出しを行うので、回転中に外部から加えられた衝撃に対して構造上弱く、例えば磁気ディスク上に不良セクタ等が発生し易く、突然故障して不具合が発生すると交換等に時間と手間がかかるので、種々の工夫がなされている。
【0004】
例えば、特開平9−284517号公報(特許文献1)のディジタル画像形成装置が提案されている。
【0005】
この特許文献1は、原稿画像を読み込む画像入力手段と、読み込んだ原稿画像をディジタル信号に変換するディジタル変換手段と、変換されたディジタル画像データを順次蓄積し、ソーティングや並べ換え等の処理を行うための大容量記憶手段と、この大容量記憶手段の不良箇所を検出する不良ブロック検出手段と、この不良ブロック検出手段で検出された不良ブロックのアドレスを保持する管理データ記憶手段と、例えば所定日数が経過するごとに不良ブロックの個数をチェックし、その増加数が所定個数を越える場合に大容量記憶手段の故障警告を行う故障警告手段とを有し、大容量記憶手段の故障予兆を検知し、故障警告を表示することによって突然のマシンダウンを防止しようとするものである。
【0006】
また、特開平9−200413号公報(特許文献2)のディジタル複写機も提案されている。
【0007】
この特許文献2は、原稿画像を入力する画像入力手段と、読み込んだ原稿画像をディジタル信号に変換する変換手段と、変換されたディジタル信号を順次蓄積して画像のソーティングや並べ替え等を行うための大容量記憶手段と、この大容量記憶手段の不良領域箇所を検査する検査手段と、この検査手段によって検出された不良箇所情報を記憶する不揮発記憶手段と、大容量記憶手段の不良箇所数が一定の数値以上になったときに、利用者に対して警告を表示する警告手段とを有し、ハードディスク等の大容量記憶手段が故障する前にこれを予測し、完全に使えなくなる前に適切な処置が行えるようにしたものである。
【特許文献1】特開平9−284517号公報
【特許文献2】特開平9−200413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1、2は、大容量記憶部手段のアクセス時に不良セクタ数の増加数をカウントし、規定値を超えたときに警告や通報を行うものであり、衝撃等により加速度的に不良セクタが増加した場合などの予測が難しいし、仮に予測可能であっても、単に警告や通報をするのみであるため、交換が間に合わずに大容量記憶部が完全に使用できなくなるダウンタイムも想定され、必要なデータが復活できない可能性もあった。
【0009】
そこで、本発明者は、画像形成装置およびこれに搭載したハードディスク等の大容量記憶部について鋭意観察および検討した結果、大容量記憶部から得られた動作検査情報に基づき、早め大容量記憶部の予測故障時期を判別し、これに基づいて当該大容量記憶部の振動を低減させれば、大容量記憶部の致命的な不具合に至る前に対応可能である点に着目し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明はそのような課題を解決するためになされたもので、搭載された大容量記憶部の故障時期を予測し、当該大容量記憶部の寿命を延ばすことが容易でダウンタイムを少なくすることも可能な画像形成装置およびこれに用いる記憶部制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのような課題を解決するために本発明の請求項1に係る画像形成装置は、画像データを入力する画像入力部と、この画像入力部で入力された前記画像データに基づき画像形成する画像形成部と、入力された前記画像データを記憶蓄積するとともにこの記憶蓄積動作に伴う動作検査情報を出力する大容量記憶部と、その動作検査情報を所定タイミング毎に取得して所定の検査基準情報と比較し、その大容量記憶部の予測故障時期が予め設定され故障基準時期より早いか否か判別し、その予測故障時期が早いと判別されたとき、その大容量記憶部の振動を低減するよう制御する動作制御部と、を具備している。
【0012】
本発明の請求項2に係る画像形成装置は、上記動作制御部が、当該装置における所定の電源投入回数毎にその動作検査情報を取得する構成を有している。
【0013】
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、上記動作制御部が、その画像形成部における所定の画像形成動作毎にその動作検査情報を取得する構成を有している。
【0014】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、上記動作制御部が、その大容量記憶部に対する所定のアクセス回数毎にその動作検査情報を取得する構成を有している。
【0015】
本発明の請求項5に係る画像形成装置は、上記動作制御部が、その画像形成部の画像形成速度を下げて大容量記憶部の振動を低減制御する構成を有している。
【0016】
本発明の請求項6に係る画像形成装置は、上記動作制御部が、当該装置の省電力モードへの移行期間を延長してその大容量記憶部の振動を低減制御する構成を有している。
【0017】
本発明の請求項7に係る画像形成装置は、上記動作制御部が、当該装置の省電力モード状態における大容量記憶部への電源供給を継続してその大容量記憶部の振動を低減制御する構成を有している。
【0018】
本発明の請求項8に係る画像形成装置は、上記動作制御部が、その大容量記憶部へのアクセスを禁止するとともにそれとは異なる半導体記憶部を使用してその画像形成動作をさせ、上記大容量記憶部の振動を低減制御する構成を有している。
【0019】
本発明の請求項9に係る画像形成装置は、上記動作制御部が、それら画像入力部又は画像形成部の動作を停止してその大容量記憶部の振動を低減制御する構成を有している。
【0020】
本発明の請求項10に係る画像形成装置は、複数の大容量記憶部を有し、上記動作制御部が、それら複数の大容量記憶部に同じ画像データをバックアップ制御する構成を有している。
【0021】
本発明の請求項11に係る記憶部制御方法は、画像データを入力する画像入力工程と、この画像入力工程で入力された画像データに基づき画像形成する画像形成工程と、入力された画像データの大容量記憶部への記憶蓄積動作に伴う動作検査情報を出力する検査情報出力工程と、その動作検査情報を所定タイミング毎に取得して所定の検査基準情報と比較し、その大容量記憶部の予測故障時期が予め設定され故障基準時期より早いか否か判別し、その予測故障時期が早いと判別されたとき、その大容量記憶部の振動を低減するよう制御する動作制御工程と、を具備している。
【0022】
本発明の請求項12に係る記憶部制御方法は、上記動作制御工程が、当該装置における所定の電源投入回数毎にその動作検査情報を取得する構成を有している。
【0023】
本発明の請求項13に係る画像形成装置の記憶部制御方法は、上記動作制御工程が、その画像形成工程における所定の画像形成動作毎にその動作検査情報を取得する構成を有している。
【0024】
本発明の請求項14に係る記憶部制御方法は、上記動作制御工程が、その大容量記憶部に対する所定のアクセス回数毎にその動作検査情報を取得する構成を有している。
【0025】
本発明の請求項15に係る記憶部制御方法は、上記動作制御工程が、その画像形成部の画像形成速度を下げてその大容量記憶部の振動を低減制御する構成を有している。
【0026】
本発明の請求項16に係る記憶部制御方法は、上記動作制御工程が、当該装置の省電力モードへの移行期間を延長してその大容量記憶部の振動を低減制御する構成を有している。
【0027】
本発明の請求項17に係る記憶部制御方法は、上記動作制御工程が、当該装置の省電力モード状態における大容量記憶部への電源供給を継続してその大容量記憶部の振動を低減制御する構成を有している。
【0028】
本発明の請求項18に係る記憶部制御方法は、上記動作制御工程が、その大容量記憶部へのアクセスを禁止するとともにそれとは異なる半導体記憶部を使用して画像形成動作をさせ、その大容量記憶部の振動を低減制御する構成を有している。
【0029】
本発明の請求項19に係る記憶部制御方法は、上記動作制御工程が、それら画像入力部又は画像形成部の動作を停止してその大容量記憶部の振動を低減制御する構成を有している。
【0030】
本発明の請求項20に係る記憶部制御方法は、上記動作制御工程が、複数の大容量記憶部に対して同じ画像データをバックアップ制御する構成を有している。
【発明の効果】
【0031】
このような本発明の請求項1、11に係る画像形成装置および記憶部制御方法では、入力された画像データに基づき画像形成し、その入力画像データの大容量記憶部への記憶蓄積動作に伴う動作検査情報を出力し、この動作検査情報を所定タイミング毎に取得して所定の検査基準情報と比較し、その大容量記憶部の予測故障時期が予め設定され故障基準時期より早いか否か判別し、その予測故障時期が早いと判別されたとき、その大容量記憶部の振動を低減するよう制御するから、搭載された大容量記憶部の故障時期を早期に予測し、大容量記憶部への振動を小さく抑え、大容量記憶部の交換時期まで寿命を延ばすことが容易で、ダウンタイムを少なくすることも可能になる。
【0032】
本発明の請求項2、12に係る画像形成装置および記憶部制御方法では、画像形成装置における所定の電源投入回数毎にその動作検査情報を取得するから、装置への電源投入回数の観点から、大容量記憶部への振動を小さく抑え、大容量記憶部の交換時期まで寿命を延ばすことが容易である。
【0033】
本発明の請求項3、13に係る画像形成装置および記憶部制御方法では、その画像形成工程における所定の画像形成動作毎にその動作検査情報を取得するから、画像形成回数の観点から、大容量記憶部への振動を小さく抑え、大容量記憶部の交換時期まで寿命を延ばすことが容易である。
【0034】
本発明の請求項4、14に係る画像形成装置および記憶部制御方法では、その大容量記憶部に対する所定のアクセス回数毎にその動作検査情報を取得するから、大容量記憶部へのアクセス回数の観点から、大容量記憶部への振動を小さく抑え、大容量記憶部の交換時期まで寿命を延ばすことが容易である。
【0035】
本発明の請求項5、15に係る画像形成装置および記憶部制御方法では、その画像形成部の画像形成速度を下げるから、画像形成動作に伴うモータ等の動作速度を低下させて大容量記憶部への振動を小さく抑えることが容易である。
【0036】
本発明の請求項6、16に係る画像形成装置および記憶部制御方法では、当該装置の省電力モードへの移行期間を延長するから、電源を落とさずに電源のオンオフ回数を減少し、大容量記憶部の起動や停止回数を減少させて大容量記憶部への振動を小さく抑えることが容易である。
【0037】
本発明の請求項7、17に係る画像形成装置および記憶部制御方法では、当該装置の省電力モード状態における大容量記憶部への電源供給を継続するから、大容量記憶部の電源のオンオフ回数を減少し、大容量記憶部の起動や停止回数を減少させて大容量記憶部への振動を小さく抑えることが容易である。
【0038】
本発明の請求項8、18に係る画像形成装置および記憶部制御方法では、その大容量記憶部へのアクセスを禁止するとともにそれとは異なる半導体記憶部を使用して画像形成動作させるから、単発的なコピーにおいては大容量記憶部の使用を抑え、大容量記憶部への振動を小さく抑えることが容易である。
【0039】
本発明の請求項9、19に係る画像形成装置および記憶部制御方法では、それら画像入力部又は画像形成部の動作を停止から、大容量記憶部の使用を抑え、大容量記憶部への振動を小さく抑えることが容易である。
【0040】
本発明の請求項10、20に係る画像形成装置および記憶部制御方法では、複数の大容量記憶部に対して同じ画像データをバックアップ制御する構成を有するから、大容量記憶部に故障や不具合が発生しても、種々のデータの確保や復元が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明に係る画像形成装置および画像形成装置の記憶部制御方法の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、本発明に係る記憶部制御方法は本発明に係る画像形成装置を説明する過程で説明する。
【0042】
図1は本発明に係る画像形成装置Aの構成を示す概略ブロック図である。
【0043】
図1において、画像形成装置Aは、主制御部1を中心としてこれに接続された画像読取部3、画像処理部5、半導体画像記憶部7、大容量記憶部9、11、ROM13、RAM15、操作パネル部17、通信部19および印刷部21を有し、例えば複合機を構成している。画像形成装置Aは、これら以外にも構成要素を有するが、本発明の要部ではないので説明および図示を省略する。
【0044】
ここで、画像形成装置Aの内部構成を簡単に説明しておく。
【0045】
画像形成装置Aの内部構成には、図2に示すように、本体ケース23内に、大きさの異なるシート材25のセットされる複数の給紙段27(図中1個のみ示す。)と、後述する印刷画像イメージデータに基づきトナーカセット29aからのトナーで感光体ドラム29bにトナー現像して中間転写ベルト31に転写する転写部29と、転写された中間転写ベルト31からトナー像の転写されたシート材25の転写画像を定着する定着部33と、定着されたシート材25を排紙する排紙部35等を有する印刷部21が配置されている。
【0046】
印刷部21において、モータ回転駆動された複数のローラ29cによってシート材25が1次給紙および2次給紙されて給紙搬送され、転写部29は、モータ回転駆動されたポリゴンミラー(図示せず。)によって印刷画像イメージデータを感光体ドラム29bに潜像を形成し、これにトナー現像してシート材25に転写するようになっている。図2中の感光体ドラム29bは、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)およびブラック(K)のカラー用感光体ドラムを有している。
【0047】
なお、上述した画像処理部5、半導体画像記憶部7、大容量記憶部9、11、ROM13、RAM15、操作パネル部17および通信部19は、本体ケース23内の適当な位置に配置されている。
【0048】
図1に戻って、画像読取部3は、主制御部1の制御の下、例えば印刷された複数頁の原稿から画像を光学的に読み込み、ディジタル画像データを生成して主制御部1に出力する公知のスキャナ等であり、画像入力工程を実行する画像入力部として機能する。
【0049】
画像処理部5は、画像読取部3や通信部19からの画像データを主制御部1から取込み、例えば、シェーディング補正、γ補正、指定された変倍率に合せた拡大又は縮小等の画像処理をし、画像処理された画像データを印刷画像イメージデータに展開し、これを主制御部1を介して印刷部21に出力する機能を有している。
【0050】
なお、画像処理部5における画像処理は、作業用記憶部として例えば半導体画像記憶部7に画像データの格納と読み出しを繰り返して実行される。
【0051】
半導体画像記憶部7は、主制御部1の制御の下、画像処理部5における画像処理の作業記憶部として使用される、例えばDRAM(dynamic random access memory)等からなる1次記憶部である。
【0052】
大容量記憶部9、11は、主制御部1の制御の下、画像データ、後述する電源投入回数、画像形成数、アクセス回数等の累積カウント数を蓄積記憶する読み書き可能な例えばハードディスク(HDD1、HDD2)であり、2次記憶部としての機能を有するとともに、主制御部1による画像データのソーティングや並べ替え等を行うためにも使用される。
【0053】
ここで、ソーティングとは、読み取られた原稿の画像データを大容量記憶部9、11に記憶し、1部ずつ大容量記憶部9、11から読み出して画像処理部5にて画像処理し、印刷部21に出力する電子ソート機能であり、機構的なソータ部を具備することなく連続して複数部数の大量の複写を可能にするもので、画像データを記憶するには相当大容量の記憶手段が必要であり、大容量記憶部9、11が好適する。
【0054】
大容量記憶部9、11は、ハードディスクの稼働状態を自ら分析して障害予測等の情報を主制御部1に出力するSMART(self-monitoring analysis and reporting technology:)と称される自己診断機能を有し、例えば、不良セクタ数、不良セクタ増加率、スピンアップ時間、電源オンオフ回数およびヘッドのシーク時間等の現在値やワースト値である動作検査情報を得る機能を有しており、この動作検査情報を主制御部1に出力する、検査情報出力工程を実行する検査情報出力部として機能している。後述するようにその動作検査情報を使用して大容量記憶部9、11の予想事故時期の判別が行われる。
【0055】
ROM13は、主制御部1の起動プログラムや演算動作プログラム等を格納した不揮発性メモリであり、RAM15は、主制御部1の演算動作の作業用揮発性メモリである。
【0056】
操作パネル部17は、図2の本体ケース23の上部に配置され、主制御部1の制御の下、例えば、種々の動作状態の表示が可能な表示部としての公知の例えば液晶表示パネルと、装置の動作に係る画像が表示された箇所をタッチすることにより、画像読取、ソーティングや並び替え、印刷、種々の基準値を受付ける入力部としての機能を有している。
【0057】
通信部19は、主制御部1の制御の下、ネットワークを介して例えば他の複合機(何れも図示せず。)との間で、種々の画像データ等を所定のプロトコルで送受信するインターフェース部であり、画像入力部として機能している。
【0058】
印刷部21は、上述したように、画像処理部5からの印刷画像イメージデータに基づきシート材25にトナー画像を転写定着して排紙する、画像形成工程を実行するカラー又はモノクロ印刷エンジンである。
【0059】
主制御部1は、CPUを主体に形成されており、上述した画像読取部3、画像処理部5、半導体画像記憶部7、大容量記憶部9、11、ROM13、RAM15、操作パネル部17、通信部19および印刷部21等を制御し、画像データの取込み処理、フィルタ補正加工処理、印刷処理を実行制御し、所定期間経過しても外部から操作入力がないとき、必要最小限の機能のみ動作させて画像読取部3、画像処理部5、大容量記憶部9、11、通信部19および印刷部21等への電源供給を遮断する省電力モードへの移行を制御するとともに、後述する動作制御部37としての機能を有している。
【0060】
動作制御部37は、交換時期として大容量記憶部9、11の上述した各検査項目の現在の値やワースト値等の動作検査情報と閾値との差や減少率から故障時期を算出して予測を行い、予測される大容量記憶部の故障時期が、交換予定時期より早いとき、大容量記憶部9、11の振動を低減するよう装置Aを制御する機能を有している。
【0061】
すなわち、動作制御部37は、当該装置Aにおける電源投入回数、印刷部21における画像形成数、大容量記憶部9、11に対するアクセス回数を累積カウントし、例えば大容量記憶部9、11に記憶する機能を有している。
【0062】
動作制御部37は、所定タイミング毎、すなわち予め設定された基準電源投入数毎、基準画像形成数又は基準アクセス数毎に、それら動作検査情報を取得するとともに検査基準情報と比較し、大容量記憶部9、11の予測故障時期が予め設定され故障基準時期より早いか否か判別し、動作検査情報と検査基準情報との差が所定の差異値より小さくなったり、動作検査情報の増加率が所定の基準率より大きくなったとき、予測故障時期が早いと判別する、動作制御工程を実行する機能を有している。
【0063】
検査基準情報としての上述した不良セクタ数、不良セクタ増加率、スピンアップ時間、電源オンオフ回数又はヘッドのシーク時間等は、ある差異値や基準率を超えると大容量記憶部9、11に高い頻度で故障や不具合が発生し易い故障基準時期を閾値としたものであり、実測や経験則に基づき、例えば大容量記憶部9、11に設定されたものである。
【0064】
動作制御部37は、予測故障時期が早いと判別したとき、その画像形成部21の画像形成速度を下げる制御機能、当該装置Aの省電力モードへの移行期間を延長する制御機能、その省電力モード状態における大容量記憶部9、11への電源供給を継続する制御機能、大容量記憶部9、11へのアクセスへの禁止制御、画像読取部3および印刷部21の動作を停止制御する機能を、選択的又は複数平行的に実行制御する。
【0065】
例えば、画像形成速度の低下制御は、印刷部21のローラ29cの回転速度やポリゴンミラーによる潜像形成速度を低下させる制御、省電力モードへの移行期間の延長制御は、移行期間を増加設定する制御、大容量記憶部9、11への電源供給の継続制御は、大容量記憶部9、11への電源供給を遮断しない制御、大容量記憶部9、11へのアクセスへの禁止制御は、大容量記憶部9、11の回転起動を抑える制御、画像読取部3および印刷部21の動作制御は、画像読取動作および印刷動作を停止させる制御である。
【0066】
動作制御部37による画像読取部3、大容量記憶部9、11又は印刷部21等に対するそれらの制御により、画像形成装置A全体の振動発生、特に大容量記憶部9、11への機械的ストレス発生が早い時期に小さく抑えられ、大容量記憶部9、11に伝わる振動やそれ自体で発生する振動が低減される。
【0067】
次に、上述した画像形成装置Aの動作を図3を参照して簡単に説明する。なお、図3は図1の構成から画像形成装置Aの動作に関係する主要部を抽出して図示したものである。
【0068】
画像形成装置Aの電源投入、大容量記憶部9、11へのアクセス、又は印刷部21による画像形成の都度、動作制御部37は、それらの回数を累積カウントし、電源投入数、アクセス数および画像形成数が基準電源投入数、基準画像形成数又は基準アクセス数に達したとき、大容量記憶部9、11から動作検査情報を取得し、これらと検査基準情報とを個々に比較する。
【0069】
動作制御部37は、それら動作検査情報のうち1個でも基準値に近づき、大容量記憶部9、11の予測故障時期が故障基準時期より早いと判別したとき、その画像形成部21の画像形成速度を下げる制御機能、当該装置Aの省電力モードへの移行期間を延長する制御機能、その省電力モード状態における大容量記憶部9、11への電源供給を継続する制御機能、大容量記憶部9、11へのアクセスへの禁止制御、画像読取部3および印刷部21の動作を停止する停止制御を、予め設定した優先順位に従って1個又は複数平行的に実行制御する。
【0070】
これらの工程や処理手順が、本発明に係る記憶装置制御方法に該当する。
【0071】
このように本発明に係る画像形成装置Aは、画像データを入力する画像読取部(画像入力部)3と、この画像読取部3で入力された画像データに基づき画像形成する印刷部(画像形成部)21と、入力された画像データを記憶蓄積するとともにこの記憶蓄積動作に伴う動作検査情報を出力する大容量記憶部9、11と、当該装置における所定の電源投入回数毎、画像形成動作毎又はその大容量記憶部9、11に対する所定のアクセス回数毎にその動作検査情報を取得して所定の検査基準情報と比較し、大容量記憶部9、11の予測故障時期が予め設定され故障基準時期より早いか否か判別し、予測故障時期が早いと判別されたとき、その印刷部21の画像形成速度を下げて大容量記憶部9、11の振動を低減するよう制御する動作制御部(主制御部1)37とを具備している。
【0072】
そのため、装置Aへの電源投入回数、画像形成回数、又は大容量記憶部9、11へのアクセス回数から、搭載された大容量記憶部9、11の故障時期を予測し、例えば印刷部21の画像形成速度を下げるから、装置Aにおいて振動の発生を小さくすることが容易で、大容量記憶部9、11へ加わる振動ストレスを小さく抑え、大容量記憶部9、11の故障や不具合の発生時期を遅らせ、その交換時期まで寿命を延ばすことが容易で、ダウンタイムを少なくすることも可能になる。
【0073】
さらに、予測故障時期が早いと判別されたとき、動作制御部37にて、当該装置Aの省電力モードへの移行期間を延長設定したり、当該装置の省電力モード状態における大容量記憶部9、11への電源供給を継続すれば、大容量記憶部9、11の電源のオンオフ回数を減少させて大容量記憶部9、11の起動や停止回数を減少させ、大容量記憶部9、11の振動を小さく抑えることが容易である。
【0074】
なお、画像形成速度の低下制御、省電力モードへの移行期間の延長制御、大容量記憶部9、11への電源供給の継続制御、大容量記憶部9、11へのアクセスへの禁止制御は、予測故障時期が故障基準時期より早い度合いに応じて、優先順位を決定することが可能である。
【0075】
そして、本発明の画像形成装置Aにおいて、動作検査情報を取得するタイミングは、上述した電源投入回数、画像形成数、又は大容量記憶部9、11に対するアクセス数に限定されず、種々の取得タイミングにおいて実施可能である。
【0076】
また、大容量記憶部9、11へのアクセスを禁止するとともにそれとは異なる半導体記憶部7を使用して画像形成動作させれば、1〜数枚の単発的なコピーにおいては大容量記憶部9、11の使用を抑え、大容量記憶部9、11の交換時期まで寿命を延ばすことが容易である。
【0077】
さらにまた、本発明の画像形成装置Aにおいて、動作制御部37は、その予測故障時期が早いと判別したとき、それら画像読取部(画像入力部)3又は印刷部(画像形成部)21の動作を停止する構成にすれば、大容量記憶部9、11の使用を禁止して振動を小さく抑え、大容量記憶部9、11の交換時期まで寿命を延ばすことが容易である。
【0078】
ところで、本発明の画像形成装置においては、図1および図3に示すように、複数の大容量記憶部9、11を有する構成においては、複数の大容量記憶部9、11に対して同じ画像データを少なくとも2個の大容量記憶部9、11にミラー状に蓄積記憶してデータのバックアップすることも可能であり、万一、一部の大容量記憶部9又は11が故障した場合でも、種々のデータの確保や復元が容易である。
【0079】
また、本発明に係る画像形成装置Aに搭載された記憶部制御方法においても、画像形成装置Aと同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る画像形成装置の実施の形態を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の内部構成を説明する図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の主要部の構成を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0081】
1 主制御部
3 画像読取部(画像入力部)
5 画像処理部
7 半導体画像記憶部
9、11 大容量記憶部
13 ROM
15 RAM
17 操作パネル部
19 通信部(画像入力部)
21 印刷部(画像形成部)
23 本体ケース
25 シート材
27 給紙段
29 転写部
29a トナーカセット
29b 感光体ドラム
29c ローラ
31 中間転写ベルト
33 定着部
35 排紙部
37 動作制御部(主制御部)
A 画像形成装置(複合機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを入力する画像入力部と、
この画像入力部で入力された前記画像データに基づき画像形成する画像形成部と、
入力された前記画像データを記憶蓄積するとともにこの記憶蓄積動作に伴う動作検査情報を出力する大容量記憶部と、
前記動作検査情報を所定タイミング毎に取得して所定の検査基準情報と比較し、前記大容量記憶部の予測故障時期が予め設定され故障基準時期より早いか否か判別し、前記予測故障時期が早いと判別されたとき、前記大容量記憶部の振動を低減するよう制御する動作制御部と、
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記動作制御部は、当該装置における所定の電源投入回数毎に前記動作検査情報を取得する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記動作制御部は、前記画像形成部における所定の画像形成動作毎に前記動作検査情報を取得する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記動作制御部は、前記大容量記憶部に対する所定のアクセス回数毎に前記動作検査情報を取得する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記動作制御部は、前記画像形成部の画像形成速度を下げて前記大容量記憶部の振動を低減制御する請求項1〜4いずれか1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記動作制御部は、当該装置の省電力モードへの移行期間を延長して前記大容量記憶部の振動を低減制御する請求項1〜4いずれか1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記動作制御部は、当該装置の省電力モード状態における前記大容量記憶部への電源供給を継続して前記大容量記憶部の振動を低減制御する請求項1〜4いずれか1記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記動作制御部は、前記大容量記憶部へのアクセスを禁止するとともにそれとは異なる半導体記憶部を使用して前記画像形成動作をさせ、前記大容量記憶部の振動を低減制御する請求項1〜4いずれか1記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記動作制御部は、前記画像入力部又は前記画像形成部の動作を停止して前記大容量記憶部の振動を低減制御する請求項1〜4いずれか1記載の画像形成装置。
【請求項10】
複数の前記大容量記憶部を有し、前記動作制御部は、複数の前記大容量記憶部に同じ前記画像データをバックアップ制御する請求項1〜9いずれか1記載の画像形成装置。
【請求項11】
画像データを入力する画像入力工程と、
入力された前記画像データに基づき画像形成する画像形成工程と、
入力された前記画像データの大容量記憶部への記憶蓄積動作に伴う動作検査情報を出力する検査情報出力工程と、
前記動作検査情報を所定タイミング毎に取得して所定の検査基準情報と比較し、前記大容量記憶部の予測故障時期が予め設定され故障基準時期より早いか否か判別し、前記予測故障時期が早いと判別されたとき、前記大容量記憶部の振動を低減するよう制御する動作制御工程と、
を具備することを特徴とする画像形成装置の記憶部制御方法。
【請求項12】
前記動作制御工程は、当該装置における所定の電源投入回数毎に前記動作検査情報を取得する請求項11記載の画像形成装置の記憶部制御方法。
【請求項13】
前記動作制御工程は、前記画像形成工程における所定の画像形成動作毎に前記動作検査情報を取得する請求項11記載の画像形成装置の記憶部制御方法。
【請求項14】
前記動作制御工程は、前記大容量記憶部に対する所定のアクセス回数毎に前記動作検査情報を取得する請求項11記載の画像形成装置の記憶部制御方法。
【請求項15】
前記動作制御工程は、前記画像形成部の画像形成速度を下げて前記大容量記憶部の振動を低減制御する請求項11〜14いずれか1記載の画像形成装置の記憶部制御方法。
【請求項16】
前記動作制御工程は、当該装置の省電力モードへの移行期間を延長して前記大容量記憶部の振動を低減制御する請求項11〜14いずれか1記載の画像形成装置の記憶部制御方法。
【請求項17】
前記動作制御工程は、当該装置の省電力モード状態における前記大容量記憶部への電源供給を継続して前記大容量記憶部の振動を低減制御する請求項11〜14いずれか1記載の画像形成装置の記憶部制御方法。
【請求項18】
前記動作制御工程は、前記大容量記憶部へのアクセスを禁止するとともにそれとは異なる半導体記憶部を使用して前記画像形成動作をさせ、前記大容量記憶部の振動を低減制御する請求項11〜14いずれか1記載の画像形成装置の記憶部制御方法。
【請求項19】
前記動作制御工程は、前記画像入力部又は前記画像形成部の動作を停止して前記大容量記憶部の振動を低減制御する請求項11〜14いずれか1記載の画像形成装置の記憶部制御方法。
【請求項20】
前記動作制御工程は、複数の前記大容量記憶部に対して同じ前記画像データをバックアップ制御する請求項11〜19いずれか1記載の画像形成装置の記憶部制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−161444(P2010−161444A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−627(P2009−627)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】