説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置などにおいて、電源周波数変動や電源ノイズ等に対して強くして、電源異常検出による機械のダウンタイムを削減する。
【解決手段】入力交流電源のゼロクロスパルスの幅が所定範囲未満の場合は電源ノイズによる異常と判断する。所定範囲以上の場合は電源瞬断による異常と判断する。非ゼロクロスパルス幅とゼロクロスパルス幅を加算し周波数を求める。電源周波数計測期間に所定回数以上電源ノイズによる異常が検出された場合は、電源ノイズの多い使用環境と判断する。所定回数以上電源瞬断による異常が検出された場合は、電源瞬断の多い使用環境と判断する。使用環境に応じて動作モードを変える。通常動作ができない場合は、表示部に「電源環境不安定のため通常動作不可」の旨のメッセージを表示し作業者に知らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、電源周波数変動や電源ノイズの多い電源環境にある画像形成装置のヒータの電源制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源制御では、電源投入後、所定時間内に入力されたゼロクロス信号をカウントして電源周波数を計測し、計測された周波数に基づいて最大通電位相角を設定してヒータ制御等を行っていた。そのため、電源周波数計測に失敗すると、機械異常で動作不可となっていた。可能な限り機械異常による動作不可状態を避けるため、計測失敗時はリトライを実行するなどの対策をしていた。
【0003】
一方、電源環境はユーザーによって異なっている。電源事情の不安定な地域のユーザーや自家発電のユーザーは、電源ノイズや周波数変動が多い環境にある。近くで工作機等を使用して電源ノイズが発生するという環境のユーザーもある。近年は、大型家電が普及したり、SOHOが設けられたりして、家庭内の電源事情も多様化している。このような状況であるので、従来の電源制御方式では、個々のユーザーの電源環境に対応できなくなってきている。そのため、電源環境の変化に対応するための方法が種々提案されている。以下に、これに関連する従来技術の例をあげる。
【0004】
特許文献1に開示された「ヒータ制御装置」は、電源投入後、短時間で所定のヒータ制御を実現できるようにし、電源周波数の正常な検出ができなかった場合でも、不具合なくヒータに通電する交流の位相制御を行える画像形成装置のヒータ制御装置である。交流電源部に入力する交流のゼロクロス信号を検知して、システム制御部のCPUの割込み信号とする。CPUは、割込み信号の立ち下りエッジでゼロクロス割込み処理を行い、所定時間内のその割込み回数をカウントして電源周波数を検出する。CPUは、検出した電源周波数に基づいて位相角タイマのタイマ値を設定し、そのタイマ値のタイミングでトリガパルスを発生してトライアックを導通させ、定着ヒータに通電する交流を位相制御する。その際、電源周波数検出前に仮の電源周波数を決定して位相制御を開始し、また、電源周波数を検出できなかった場合には、仮の電源周波数による位相制御を継続する。
【特許文献1】特開2004-146366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電源制御方法では、次のような問題がある。ソフトスタートは、電源周波数に基づいて行なわれるため、50Hz又は60Hzの交流で駆動されるプリンタでは、通常、電源周波数が正常に検出された後に、ヒータの通電が行なわれる。したがって、従来は、電源投入時に電源周波数異常が発生すると、プリント動作ができなかった。また、動作中に電源異常が発生すると、機械が誤動作を起こす可能性があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、画像形成装置などにおいて、電源周波数変動や電源ノイズ等に対して強くして、電源異常が発生した場合でも誤検知せず、停止することなく動作可能としてダウンタイムを削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では、電源制御方法を、複数の異なる周波数の交流電源で動作可能な電源装置への入力交流電源のゼロクロスパルスを所定閾値に基づいて生成し、ゼロクロスパルスの幅が所定範囲未満の場合は電源ノイズによる異常と判断する方法とした。また、電源環境を判断して動作モードを変え、通常画像形成動作ができない場合は、表示部に「電源環境不安定のため通常動作不可」の旨のメッセージを表示し作業者に知らせる構成とした。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成したことにより、精度の高い電源制御ができ、電源ノイズが多かったり電源瞬断が多かったり周波数変動が大きかったりする環境においても、異常で停止することなく動作可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例は、入力交流電源のゼロクロスパルスの幅が所定範囲未満の場合は電源ノイズによる異常と判断し、所定範囲以上の場合は電源瞬断による異常と判断し、非ゼロクロスパルス幅とゼロクロスパルス幅を加算し周波数を求め、電源周波数計測期間に所定回数以上電源ノイズによる異常が検出された場合は、電源ノイズの多い使用環境と判断し、所定回数以上電源瞬断による異常が検出された場合は、電源瞬断の多い使用環境と判断し、使用環境に応じた電源制御を行う電源制御装置である。
【0011】
本発明の電源制御装置を用いる電源回路と定着ヒータとプリンタなどの基本的な構成は、特許文献1記載のものと同様である。本発明の電源制御装置は、電源環境を精度よく検出して適切なモードで動作させる点が、従来の装置と異なる。図1は、本発明の実施例における電源制御装置のブロック回路図である。電子写真方式の画像形成装置の一部として用いるものである。図2は、交流電源部に設けられるゼロクロス検知回路の一例である。
【0012】
図1に示すヒータ制御装置は、交流電源部2とシステム制御部4とから構成されている。交流電源部2は、商用電源1から50Hz又は60Hzの交流を入力して、定着装置の定着ローラ内に設けられているハロゲンヒータ等のヒータである定着ヒータ3に交流を給電して発熱させる。ヒータ制御装置の給電回路には、過電流防止のためのブレーカ接点22と、交流のスイッチング手段としてのトライアック21とが、定着ヒータ3に直列に接続されている。
【0013】
交流電源部2はさらに、図示は省略しているが、商用電源1から入力される交流を変圧および整流・平滑して、システム制御部4および画像形成装置の直流負荷に供給する24Vと5Vの直流を生成する回路、及び後述するゼロクロス検知回路等を備えている。システム制御部4は、図示しないシステムバスを介して互いに接続されたCPU41、ROM42、タイマ43、RAM44、各種の入出力回路I/O45、不揮発性メモリ(NVRAM)46等からなる。CPU41は、ROM42に格納された制御プログラムやパラメータ等を用いて、交流電源部のトライアックをトリガパルスによって位相制御して定着ヒータへの給電を制御する。また、CPU41は、図示していない感光体やその回りの帯電、露光、現像、転写の各部のシーケンス制御、転写紙の搬送制御など、この画像形成装置全体を統括制御する機能を有する。
【0014】
図2は交流電源部2に設けられるゼロクロス検知回路の一例を示す。このゼロクロス検知回路は、商用電源1から供給される交流を、ローパスフィルタと電流制限の機能をなす抵抗R1、R2とコンデンサ(キャパシタ)C1からなる回路を経由してダイオードブリッジBR1にて全波整流する。全波整流された脈流の信号は、発光ダイオード(LED)とフォトトランジスタ(PT)からなるフォトカプラPC1によって絶縁して伝達され、ヒステリシスインバータIC1に入力されることによりゼロクロス信号が生成される。抵抗R3、R4は正電圧を印加するためのプルアップ抵抗である。
【0015】
図3は、AC入力信号波形からゼロクロス信号波形を求める方法を示す概念図である。図4は、使用する電源のゼロクロス信号の一例を示す図である。図5は、電源投入時からの動作全体を示したフローチャートである。図6は、インプットキャプチャch1(ゼロクロス幅検知用)割り込み内処理を示すフローチャートである。図7は、インプットキャプチャch2(非ゼロクロス幅検知用)割り込み内処理を示すフローチャートである。図8は、周波数算出とエラー判定のフローチャートである。図9は、電源環境判断を用いた画像形成装置の動作フロー図である。
【0016】
図5〜図9のフローチャートで使用している変数や定義名は、次の通りである。周波数計測に関する記号のC0は、計測回数カウンタである。Hdata[K0]は、計測周波数データである。Hpreは、前回正常に計測された周波数である。Hnowは、今回正常に計測された周波数である。Hmaxは、最高周波数である。Hminは、最低周波数である。Hは、平均周波数である。Tzは、ゼロクロス幅時間データである。Tnzは、非ゼロクロス幅時間データである。Fngは、計測データ無効フラグである。Cngは、計測データ無効カウンタである。環境判断用のC1は、ゼロクロス幅短いカウンタである。C2は、ゼロクロス幅長いカウンタである。C3は、非ゼロクロス幅短いカウンタである。C4は、非ゼロクロス幅長いカウンタである。C5は、周波数変動カウンタである。
【0017】
定数のK0(=50)は、電源投入時の計測回数である。K1(=10)は、通常時の計測回数である。K3(=1.4ms)は、正常ゼロクロス幅の最小値である。K4(=3.6ms)は、正常ゼロクロス幅最大値である。K5(=3.5ms)は、正常非ゼロクロス幅の最小値である。K6(=13.5ms)は、正常非ゼロクロス幅の最大値である。K7(=0.5ms)は、周波数変動範囲である。K8(初期15回、通常時5回)は、ノイズエラー判定回数である。K9(初期10回、通常時3回)は、電源瞬断エラー判定回数である。K10(初期10回、通常時3回)は、周波数変動エラー判定回数である。K11(初期5Hz、通常時5Hz)は、周波数変動エラー2判定回数である。K12(45Hz以下)は、非商用周波数動作保障外判定範囲1である。K13(65Hz以上)は、非商用周波数動作保障外判定範囲2である。
【0018】
エラーフラグのFer1は、ノイズが多い環境を示すフラグである。Fer2は、電源瞬断が多い環境を示すフラグである。Fer3は、周波数変動が多い環境を示すフラグである。FerTは、上記いずれかのエラーが存在する環境を示すフラグである。Fwrは、非商用周波数動作保障範囲外環境を示すフラグである。Fnhzは、非商用周波数フラグである。非商用周波数時に特殊動作が必要な場合に使用する。電源環境異常時の動作モードのmode0は、電源投入時のみで判断するモードである。mode1は、常時判断し、異常時はスピードダウンするモードである。Mode2は、常時判断し、異常時は一時停止するモードである。
【0019】
上記のように構成された本発明の実施例における電源制御装置の機能と動作を説明する。特に、定着ヒータ3の制御に係わる制御手段としての機能について説明する。図3に示すように、商用電源1から供給される交流による「AC入力信号」の波形がノイズやディップのないきれいな波形であれば、それをダイオードブリッジBR1によって全波整流した「整流後の信号」およびそれをヒステリシスインバータIC1によって矩形波に整形した「ゼロクロス信号」の各波形はそれぞれ正確な波形である。
【0020】
ゼロクロス検知回路で検出(生成)されたゼロクロス信号は、図1の交流電源部2からシステム制御部4のインプットキャプチャ48のch1及びch2とタイマ43の入力端子に供給される。そして、インプットキャプチャ48のch1はゼロクロス信号の立ち下がりエッジで時間計測を開始し、立ち上がりエッジで計測終了と共に割込みが発生するように動作モードを設定する。インプットキャプチャ48のch2は逆に、ゼロクロス信号の立ち上がりエッジで時間計測を開始し、立ち下がりエッジで計測終了と共に割込みが発生するように動作モードを設定する。またタイマ43はゼロクロス信号の立下りエッジから設定された所定時間経過後にトリガパルスを出力するように動作モードを設定する。これにより、インプットキャプチャ48の動作を所定回数計測し、ch1及びch2で計測した時間をRAM44に保存しておき、計測終了後に演算することによって、供給された交流の周波数(電源周波数という)を検出することができる。
【0021】
ところで、電源周波数が50Hzの場合と60Hzの場合とでは、交流の半周期の時間が異なるため、ゼロクロス点から同じ時間が経過した後にトライアックを点弧しても、印加される実効電圧は異なることになる。例えば、電源周波数が60Hzでそのゼロクロス信号が発生している場合に、50Hz用のトリガパルスでトライアックを位相制御して定着ヒータへの印加電圧(ヒータ印加電圧)を制御すると、トリガパルスがP1のようにゼロクロス点から60Hzの交流の半周期以内のタイマ値T1で発生していれば、実効電圧V1を正常に制御できる。しかし、50Hzのときに実現可能な最小実効電圧となるタイマ値T2を位相角タイマに設定したとすると、次のゼロクロス点(60Hzの交流の半周期)を過ぎたところでトリガパルスP2が発生し、大きな実効電圧をヒータに印加してしまうことになる。これでは正常な位相制御ができないこと(異常)になる。
【0022】
そこで、位相角の小さい方の値(50Hzと60Hzの場合は60Hz)を位相角タイマのタイマ値を設定して位相制御を行うことによって、上述したような不具合はなくなる。しかし、実際の電源周波数が50Hzであった場合に、60Hzの場合と同じタイミング(タイマ値)でトリガパルスを発生させてトライアックをオンにすると、ヒータに印加する実効電圧は60Hzの交流の場合より大きくなり、実現できる最小実効電圧も大きくなってしまう。そのため、以下の記載するような点について注意が必要である。
【0023】
まず、定着ヒータへの通電初期時の場合について説明する。通電初期時に、定着ヒータに給電する交流を位相制御する目的は、定着ヒータに印加する実効電圧を最小実効電圧から徐々に増加させていくソフトスタートによって、定着ヒータへ流入する突入電流を低減して、トライアック21等のスイッチング素子の破損防止を図ることにある。この場合は、ソフトスタート時に印加する電圧パターンを工夫することによって、突入電流を増大させないことが可能である。したがって、電源周波数がばらついても、位相角を小さめに設定して、定着ヒータ3に給電する交流の位相制御を行っても、ヒータの温度上昇時間は遅くなるが、突入電流としては吸収できる程度の差ということになる。
【0024】
また、通常通電の場合には、通常通電時に定着ヒータに給電する交流を位相制御する目的は、定着温度制御の精度向上という意味合いもあるが、現在ではそれ以上に、同一電源に接続された他の負荷へのフリッカノイズの低減という意味合いが強い。フリッカノイズとは、大電力を要する定着ヒータ3への通電のオン・オフが、商用電源1の電源ラインの電圧変動を引き起こし、電灯のちらつきやTV画面の揺らぎなどを引き起こすことをいう。これを防止するためには、通電初期時のソフトスタートと同様なソフトスタートを行なうことが効果的である。
【0025】
しかし、通電初期時の突入電流防止とは異なり、通常通電時は、定着温度の制御との兼ね合いから、ソフトスタートのために印加する電圧パターンには、通電初期時のような自由度がない。このため、実際の電源周波数に即した印加電圧パターンで制御することが望ましい。しかしながら、ユーザーの使用する電源状態が不安定な場合、機械が異常停止するよりは、最大位相角を低めに設定して、定着温度の上昇率が落ちても動作した方が良い。そのため、動作速度を落として定着温度の追従性を確保したり、消費電力を抑えたりすることで解決する。
【0026】
図4を参照しながら、電源のゼロクロス信号について説明する。ゼロクロス信号は、ゼロクロス点より手前のどのくらい時間で検出するか規定されている。また、その幅も規定されている。ゼロクロス点の0.5msから1.5ms手前でパルスが立ち下がるように、電源電圧に応じて閾値を設定する。また、パルス幅が1.5msから3.5msとなるように、閾値を設定する。
【0027】
図5を参照しながら、電源投入時からの動作全体の流れを説明する。電源を投入すると、CPUを初期化し、全ての負荷をオフにする。インプットキャプチャch1を、ゼロクロス幅計測に設定し、インプットキャプチャch2を、非ゼロクロス幅計測に設定し、電源環境計測用変数を初期化する。電源投入時の電源環境を計測する。これは、計測回数カウンタが50回計測するまで繰り返す。電源投入時の電源環境を判断し、正常であれば、正常時の温度上昇エラー検出設定と正常時の位相角設定を行う。異常であれば、異常時の温度上昇エラー検出設定と異常時の位相角設定を行う。
【0028】
ソフトスタート用定着位相制御を行い、温度上昇エラー検出を行う。これを、所定温度に達するまで繰り返す。所定温度に達すれば、画像形成処理を開始する。それと同時に、定着立ち上がり後の電源環境計測を行う。これを、計測回数カウンタが10回計測するまで繰り返す。定着立ち上がり後の電源環境を判断し、正常であれば、正常時の温度上昇エラー検出設定と正常時の位相角設定を行う。異常であれば、異常時の温度上昇エラー検出設定と異常時の位相角設定を行う。ソフトスタート用定着位相制御を行い、温度上昇エラー検出を行う。これを、所定温度に達するまで繰り返す。これらを常に繰り返す。
【0029】
図6を参照しながら、インプットキャプチャch1(ゼロクロス幅検知用)割り込み内処理の流れを説明する。最初に、計測データ無効フラグをリセットする。ゼロクロス幅をチェックし、ゼロクロス幅が正常ゼロクロス幅の最小値(1.4ms)より狭い場合は、ゼロクロス幅短いカウンタに1を加算して、計測データ無効フラグをセットする。ゼロクロス幅が正常ゼロクロス幅最大値(3.6ms)より広い場合は、ゼロクロス幅長いカウンタに1を加算して、計測データ無効フラグをセットする。
【0030】
図7を参照しながら、インプットキャプチャch2(非ゼロクロス幅検知用)割り込み内処理の流れを説明する。この割り込み処理で、電源環境情報データを生成している。非ゼロクロス幅をチェックし、非ゼロクロス幅が正常非ゼロクロス幅の最小値(3.5ms)より狭い場合は、非ゼロクロス幅短いカウンタに1を加算して、計測データ無効フラグをセットする。非ゼロクロス幅が正常非ゼロクロス幅最大値(13.5ms)より広い場合は、非ゼロクロス幅長いカウンタに1を加算して、計測データ無効フラグをセットする。周波数データを初期化し、計測データ無効フラグがセットされていれば、計測データ無効カウンタに1を加算して戻る。計測データ無効フラグがセットされていなければ、計測した時間を周波数に変換する。計測時間の最小単位は0.1msであり、計測周波数の最小単位は0.1Hzである。計測された最高最低周波数を更新する。今回計測された周波数の周期が、前回計測された周波数の周期より0.5ms以上異なっていれば、周波数変動カウンタに1を加算して戻る。
【0031】
図8を参照しながら、周波数算出とエラー判定の流れを説明する。最初に、エラーフラグを初期化し、平均周波数を計算する。ゼロクロス幅短いカウンタと非ゼロクロス幅短いカウンタの値を、ノイズエラー判定回数と比較して、電源ノイズが多い環境か否かを判断する。ゼロクロス幅長いカウンタと非ゼロクロス幅長いカウンタの値を、電源瞬断エラー判定回数と比較して、電源瞬断が多い環境か否かを判断する。電源異常がない環境であれば戻る。電源異常があると、電源周波数が商用周波数か否かを判定して戻る。
【0032】
図9を参照しながら、電源環境判断を用いた画像形成装置の動作を説明する。動作モードがmode0で、エラーが存在する環境でも、非商用周波数動作保障範囲外環境でもない場合は、通常の画像形成処理を行う。エラーが存在する環境か非商用周波数動作保障範囲外環境である場合は、エラー時の最大位相角を設定して、スピードダウンして画像形成処理を行う。動作モードがmode1かmode2であれば、電源環境をチェックする。エラーが存在する環境でなければ、通常の画像形成処理を行い、電源環境のチェックを繰り返す。エラーが存在する環境でmode1であれば、スピードダウンして画像形成処理を行い、電源環境のチェックを繰り返す。エラーが存在する環境でmode2であれば、電源状態が復帰するまで一時停止してエラー表示をし、電源環境のチェックを繰り返す。
【0033】
ヒータ制御装置が組み込まれた画像形成装置の一例として、プリンタを説明する。プリンタは、静電写真方式を用いて、記録紙にトナー像を形成する画像形成装置である。給紙トレイあるいはマルチトレイから供給された記録紙は、一連の搬送ローラにより、トナー像形成部に搬送される。トナー像形成部では、感光体ドラム上に静電潜像が形成される。静電潜像は、トナーにより現像されて、トナー像とされ、トナー像が記録紙に転写される。トナー像が転写された記録紙は、定着ユニットに搬送される。定着ユニットは、定着ローラと加圧ローラとを有する。定着ローラの内部にはヒータが組み込まれており、定着ローラを所定の温度に加熱する。記録紙が定着ローラと加圧ローラの間を通過する際に、記録紙に転写されたトナー像は、定着ローラにより加熱され、且つ、加圧ローラにより加圧されることにより、記録紙上に定着される。トナー像の定着が終了した記録紙は、一連のローラにより、プリンタの上側あるいは前面側から排出される。
【0034】
以上のような構成のプリンタにおいて、定着ローラに組み込まれたヒータの通電制御に、ヒータ制御装置が用いられる。ヒータの通電を制御する制御部は、プリンタの本体内に設けられたプリント基板よりなる制御基板に設けられる。プリンタのヒータは、定着ローラを急速に加熱するために、比較的大きな電力を必要とする。プリンタへの電源投入時等に、短時間にヒータに大電力を投入すると、電源電圧が変動し、プリンタの周囲の電気機器に影響を及ぼすおそれがある。そこで、徐々にヒータへの供給電圧を増大させるために、通常ソフトスタート法によりヒータへの通電を制御する。印刷動作中に電源環境が異常になった場合でも、本プリンタは、同一電源系統に接続された他の機械に悪影響を与えないようにするために、プリント速度を通常より遅くしたり、用紙給紙間隔を通常時よりも長くして、消費電力を抑えた動作を行ったり、更には、一時プリント動作を停止させ、電源環境が復旧した時点で再開する。
【0035】
電源環境が異常になった場合に、操作部に「電源環境不安定のため通常動作不可」の旨のメッセージを表示してユーザーに知らせるため、ユーザーの誤操作を防止できると共に、同一電源系統に接続された他の機械の動作を一旦停止する等して、電源環境を復旧可能となる。このヒータ制御装置を組み込めば、電源異常時においても、通常動作は行えないまでも、幅広いユーザーの電源使用環境に対応できる。機械のダウンタイムを削減可能となると共に、ミスプリントを削減できる。複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置における定着装置の定着ヒータ制御装置に適用した例について説明したが、これに限るものではなく、ソフトスタートや温度制御が必要な各種のヒータの制御装置にも同様に適用することができる。
【0036】
上記のように、本発明の実施例では、電源制御装置を、入力交流電源のゼロクロスパルスの幅が所定範囲未満の場合は電源ノイズによる異常と判断し、所定範囲以上の場合は電源瞬断による異常と判断し、非ゼロクロスパルス幅とゼロクロスパルス幅を加算し周波数を求め、電源周波数計測期間に所定回数以上電源ノイズによる異常が検出された場合は、電源ノイズの多い使用環境と判断し、所定回数以上電源瞬断による異常が検出された場合は、電源瞬断の多い使用環境と判断し、使用環境に応じた電源制御を行う構成としたので、精度の高い電源制御ができ、電源ノイズが多かったり電源瞬断が多かったり周波数変動が大きかったりする環境においても、異常で停止することなく動作可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のヒータ制御装置は、ゼロクロス点を検知して交流電源を制御する画像形成装置用のヒータ制御装置として最適である。これに用いている電源制御装置は、電化製品全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例における電源制御装置のブロック回路図である。
【図2】本発明の実施例における電源制御装置の交流電源部に設けられるゼロクロス検知回路である。
【図3】本発明の実施例における電源制御装置で、AC入力信号波形からゼロクロス信号波形を求める方法を示す概念図である。
【図4】本発明の実施例における電源制御装置で使用する電源のゼロクロス信号の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施例における電源制御装置の電源投入時からの動作全体を示したフローチャートである。
【図6】本発明の実施例における電源制御装置のインプットキャプチャch1(ゼロクロス幅検知用)割り込み内処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例における電源制御装置のインプットキャプチャch2(非ゼロクロス幅検知用)割り込み内処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例における電源制御装置で、周波数算出とエラー判定を行う手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例における電源制御装置の電源環境判断を用いた画像形成装置の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1・・・商用電源、2・・・交流電源部、3・・・定着ヒータ、4・・・システム制御部、21・・・トライアック(スイッチング手段)、22・・・ブレーカ接点、41・・・CPU、42・・・ROM、43・・・タイマ、44・・・RAM、45・・・入出力回路(I/O)、46・・・NVRAM、R1,R2,R3,R4・・・抵抗、C1・・・コンデンサ、BR1・・・ダイオードブリッジ、PC1・・・フォトカプラ、IC1・・・ヒステリシスインバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる周波数の交流電源で動作可能な電源装置への入力交流電源のゼロクロスパルスを所定閾値に基づいて生成し、前記ゼロクロスパルスの幅が所定範囲未満の場合は電源ノイズによる異常と判断することを特徴とする電源制御方法。
【請求項2】
前記ゼロクロスパルス幅が所定範囲以上の場合は電源瞬断による異常と判断することを特徴とする請求項1記載の電源制御方法。
【請求項3】
前記入力交流電源の非ゼロクロスパルスを前記所定閾値に基づいて生成し、前記非ゼロクロスパルス幅と直前もしくは直後のゼロクロスパルス幅を加算した値から前記入力交流電源の周波数を求めることを特徴とする請求項2記載の電源制御方法。
【請求項4】
前記ゼロクロスパルス幅が異常と判断された場合は、求めた入力交流電源の周波数を無効とすることを特徴とする請求項3記載の電源制御方法。
【請求項5】
前記入力交流電源の周波数の計測を複数回行い、有効な周波数の平均値を使用環境の電源周波数と判断することを特徴とする請求項4記載の電源制御方法。
【請求項6】
前記使用環境の電源周波数が商用周波数の仕様範囲内の場合は、商用周波数と判断することを特徴とする請求項5記載の電源制御方法。
【請求項7】
前記使用環境の電源周波数が商用周波数の仕様範囲外で、計測結果のばらつきが所定の範囲内の場合は、非商用周波数と判断することを特徴とする請求項6記載の電源制御方法。
【請求項8】
計測結果のばらつきが所定の範囲外の場合は、周波数変動の大きい使用環境と判断し、有効な測定結果のうちの最高周波数を記憶することを特徴とする請求項7記載の電源制御方法。
【請求項9】
電源周波数計測期間に、所定回数以上電源ノイズによる異常が検出された場合は、電源ノイズの多い使用環境と判断することを特徴とする請求項5記載の電源制御方法。
【請求項10】
電源周波数計測期間に、所定回数以上電源瞬断による異常が検出された場合は、電源瞬断の多い使用環境と判断することを特徴とする請求項5記載の電源制御方法。
【請求項11】
複数の異なる周波数の交流電源で動作可能な電源装置と、前記電源装置への入力交流電源のゼロクロスパルスを所定閾値に基づいて生成するゼロクロスパルス生成手段と、前記ゼロクロスパルスを基準として所定のタイミングでヒータへの通電のオン・オフを制御する制御手段とを具備するヒータ制御装置において、前記ゼロクロスパルスの幅を計測するゼロクロスパルス幅計測手段と、ゼロクロスパルス幅が所定範囲未満の場合は電源ノイズによる異常と判断する手段とを備えたことを特徴とするヒータ制御装置。
【請求項12】
ゼロクロスパルス幅が所定範囲以上の場合は電源瞬断による異常と判断する手段を備えたことを特徴とする請求項11記載のヒータ制御装置。
【請求項13】
前記入力交流電源の非ゼロクロスパルスを前記所定閾値に基づいて生成する手段と、前記非ゼロクロスパルスの幅を計測する非ゼロクロスパルス幅計測手段と、非ゼロクロスパルス幅と直前もしくは直後のゼロクロスパルス幅を加算した値から前記入力交流電源の周波数を求める手段とを備えたことを特徴とする請求項11記載のヒータ制御装置。
【請求項14】
前記ゼロクロスパルス幅が異常と判断された場合は電源周波数計測結果を無効とする手段を備えたことを特徴とする請求項13記載のヒータ制御装置。
【請求項15】
電源周波数計測を複数回行って有効な電源周波数の平均値を使用環境の電源周波数と判断する手段を備えたことを特徴とする請求項14記載のヒータ制御装置。
【請求項16】
電源周波数計測期間に所定回数以上電源瞬断による異常が検出された場合は電源瞬断の多い使用環境と判断する手段と、電源ノイズが多い使用環境または電源瞬断の多い使用環境と判断した場合であって、ヒータ温度が所定以下の場合に、ヒータへの通電位相角を所定の最大通電位相角以下に抑える手段を備えたことを特徴とする請求項9記載のヒータ制御装置。
【請求項17】
前記使用環境の電源周波数が商用周波数の仕様範囲内の場合は、商用周波数と判断し、前記使用環境の電源周波数が商用周波数の仕様範囲外で計測結果のばらつきが所定の範囲内の場合は、非商用周波数と判断する手段と、使用環境の電源周波数が非商用周波数であると判断した場合は、ヒータへの通電位相角を、所定の最大通電位相角とする手段を備えたことを特徴とする請求項13記載のヒータ制御装置。
【請求項18】
使用環境の電源周波数が非商用周波数と判断した場合で、電源周波数が50Hzより所定周波数以上下回っていた場合は、ヒータへの最大通電位相角を、周波数が50Hzの場合の最大通電位相角とし、周波数が50Hzより所定周波数以上上回っていた場合は、ヒータへの最大通電位相角を、周波数が60Hzの場合の最大通電位相角とする手段を備えたことを特徴とする請求項13記載のヒータ制御装置。
【請求項19】
周波数の計測結果のばらつきが所定範囲外の場合は、周波数変動の大きい使用環境と判断し、有効な測定結果のうちの最高周波数を記憶する手段と、使用環境が周波数変動の大きい使用環境と判断した場合で、ヒータ温度が所定以下の場合は、ヒータへの最大通電位相角を、有効な最高周波数に基づいて設定する手段とを備えたことを特徴とする請求項13記載のヒータ制御装置。
【請求項20】
動作時の温度上昇エラーを、ヒータへの最大通電位相角から算出された温度上昇率で判断する手段を備えたことを特徴とする請求項11記載のヒータ制御装置。
【請求項21】
複数の異なる周波数の交流電源で動作可能な電源装置と、前記電源装置への入力交流電源のゼロクロスパルスを所定閾値に基づいて生成するゼロクロスパルス生成手段と、前記ゼロクロスパルスの幅を計測するゼロクロスパルス幅計測手段と、前記入力交流電源の非ゼロクロスパルスを前記所定閾値に基づいて生成する手段と、前記非ゼロクロスパルスの幅を計測する非ゼロクロスパルス幅計測手段と、前記ゼロクロスパルスを基準として所定のタイミングでヒータへの通電のオン・オフを制御するヒータ制御装置と、前記ゼロクロスパルスと前記非ゼロクロスパルスとに基づいて、電源環境が所定の状態にあるか否かを判断する電源環境判定手段と、電源環境が所定の状態でないと判断した場合は、通常画像形成動作時よりも消費電力を抑えた動作を行うように制御する手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項22】
前記電源環境判定手段は、前記ゼロクロスパルス幅が所定範囲未満の場合は電源ノイズによる異常と判断する手段であることを特徴とする請求項21記載の画像形成装置。
【請求項23】
前記電源環境判定手段は、前記ゼロクロスパルス幅が所定範囲以上の場合は電源瞬断による異常と判断する手段であることを特徴とする請求項21記載の画像形成装置。
【請求項24】
前記電源環境判定手段は、前記非ゼロクロスパルス幅と直前もしくは直後のゼロクロスパルス幅を加算した値から前記入力交流電源の周波数を求める手段と、前記ゼロクロスパルス幅が異常と判断された場合は電源周波数計測結果を無効とする手段と、電源周波数計測を複数回行って有効な電源周波数の平均値を使用環境の電源周波数と判断する手段と、電源周波数計測期間に所定回数以上電源瞬断による異常が検出された場合は電源瞬断の多い使用環境と判断する手段とを備えたことを特徴とする請求項21記載の画像形成装置。
【請求項25】
前記ヒータ制御装置は、電源ノイズが多い使用環境または電源瞬断の多い使用環境と判断した場合であって、ヒータ温度が所定以下の場合に、ヒータへの通電位相角を所定の角度以下に抑え、動作時の温度上昇エラー検出はヒータへの最大通電位相角から算出された温度上昇率で判断する手段を備えたことを特徴とする請求項21記載の画像形成装置。
【請求項26】
周波数計測時以外も異常判断を行い、電源ノイズの多い環境または電源瞬断の多い環境または周波数変動が多い環境に移行したと判断した場合は、通常動作時よりも消費電力を抑えた動作を行うように制御する手段を備えたことを特徴とする請求項24記載の画像形成装置。
【請求項27】
周波数計測時以外も異常判断を行い、電源ノイズの多い環境または電源瞬断の多い環境または周波数変動が多い環境に移行したと判断した場合は、画像形成動作を一時中断し、前記環境が復旧したと判断された場合に画像形成動作を継続するように制御する手段を備えたことを特徴とする請求項24記載の画像形成装置。
【請求項28】
周波数計測時以外も異常判断を行い、異常判断に従って通常画像形成動作でなくなった場合に、「電源環境不安定のため通常動作不可」の旨のメッセージを表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項24記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−64892(P2007−64892A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254034(P2005−254034)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】