説明

異物検査装置及び検査方法

【課題】透明平板基板の表裏に存在する微細な異物を光散乱方式により高感度に検出するとともに、異物が表裏のいずれに存在するかを確実に判別することができる異物検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】透明平板基板に投光系により検出光を照射し、前記透明平板基板に存在する異物による散乱光を受光系により受光して前記異物の存在を検出する異物検査装置において、前記透明平板基板の表面に前記透明平板基板の基板法線に対して所定の入射角で前記検出光を照射する投光系と、前記表面側に設けられ、前記検出光の照射点を基準として、前記投光系と略対称の位置に設けられ、前記検出光が異物に照射された際の散乱光を受光する第1の受光系と、前記表面側で、前記検出光の照射点のほぼ頭上に設けられ、前記散乱光を受光する第2の受光系とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス、透明フィルムのような透明平板基板の表面に存在する異物(基板表面に付着した微細な塵埃や、キズ・ヒビ等の欠陥)を光散乱方式で検査する技術に関し、透明な基板の表裏に存在する異物を同時に感度良く検出し、異物が基板の表裏いずれに存在するかを確実に判別することのできる異物検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC製造工程では、回路パターンが形成される基板に僅かでも異物(ゴミや欠陥)が存在すると、不良品の生成につながるおそれがあるため、基板の異物検査が不可欠になっている。かかる異物検査は、指向性の良いレーザ光を基板表面に照射し、異物から反射する散乱光を受光センサで検出する方法が一般的に用いられ、レーザ光の照射点を二次元走査して、基板表面全体の検査を行っている。
【0003】
また、近年液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)等の平面型パネルディスプレイ(FPD)が画像表示装置の主流になっているが、これらにはいずれもガラス基板が用いられ、基板に存在する異物がディスプレイの画質不良や寿命低下の原因となるため、その異物検査が必要となっている。とくに、アクティブマトリックス方式のLCDでは、透明基板の一面にTFTの微細パターンが形成されるため、基板の異物検査が不可欠である。
【0004】
透明ガラス基板や透明フィルム基板に付着している異物の検査は、ウェハ等の不透明な基板の場合と同様に、光散乱方式の異物検査方法が一般に用いられている。しかし、透明ガラス基板や透明フィルム基板は可視域の照射光や散乱光を透過するため、レーザを照射する面(以下表面という)に存在する異物のみならず、レーザを照射する面の反対側の面(以下、裏面)に存在する異物も検出してしまう。従って、異物が基板の表裏のいずれに付着しているかをどのように判別するかが大きな課題となっている。
【0005】
かかる問題を解決するには、ガラス基板の表面に付着する異物のみ検出し、裏面に付着している異物を検出しないようにする必要がある。その方法として、例えば、下記特許文献1には、ガラス基板を透過しない、又は透過率の低い波長域の光源を用いて異物検査を行う方法が提案されている。かかる光源として、紫外域のエキシマレーザや赤外域の炭酸ガスレーザが例示されている。しかし、この方法では、光学系のレンズ等の材料が検査光を透過するものに限定されるため、光学系が高価になるという問題がある。
【0006】
下記特許文献2には、受光系の光軸の傾きをガラス基板の全反射の臨界角近傍に調節し、ガラス基板内部からの散乱光がほとんど外部に出ないようにして、基板表面の異物のみを検出する表面欠陥検査装置が開示されている。
【0007】
すなわち、特許文献2の図1に示されるように、ガラス基板Gの表面S上で、レーザ検出光Lが照射される検出位置Pより前方に検出用光学系14を配置して、P点に存在する異物による散乱光を受光する。その際、検出用光学系の傾斜角(基板表面との間の角)を全反射の臨界角近傍とする。これにより、ガラス基板裏面の異物からの散乱光の大部分を基板の界面で全反射させ、基板裏面からの散乱光を受光しないようにするというものでる。
【0008】
さらに、ガラス基板の表裏の異物をともに検出し、これが表裏のいずれにあるかを判別するために、レーザ光の投射方法や散乱光の受光方法に工夫を加える試みも多数提案されている(特許文献3,4)。特許文献3の図1では、一対のレーザビームL1,L2をガラス基板Gに向けて斜めに交差するように照射し、両ビームの交点が基板Gの表面に位置するようにしている。このため、基板Gの裏面では、両ビームの照射点は一致しない。異物による散乱光は、上方に垂直に配置した検出用光学系14により検出し、この状態で基板と光学系の相対位置を走査する。
【0009】
特許文献3の図2に示されるように、基板Gの表面に存在する異物(微粒子)D1からの散乱光は、Pa,Peのような単独の高いピークとなるが、裏面に存在する異物D2からの散乱光は、Pb,Pfのように波形が低く、一定の時間間隔Δtで2つずつセットになったピークとなる。Δtは走査速度vと間隔dとから求められる。従って、散乱光の波形を解析することにより、表裏いずれの異物か判定することができる。また、散乱光の強度は、異物が表面にあるか裏面にあるかで大幅に相違するから、判別の閾値のレベルを変えて異物の有無の判定をすることができる。
【0010】
また、特許文献4には、ガラス基板表面の受光領域の空間に散乱光トラップを設けて受光領域を2分割し、それぞれに受光センサを配し、異物が基板表裏のいずれにあるかによって両受光センサの受光量の比率が異なることを利用して、異物の位置判別を行う方法が提案されている。すなわち、特許文献4の図5に示されるように、レーザ照射部1からのレーザ光は、基板100表面の異物により散乱する。この散乱光を楕円ミラー2bで集光し、楕円ミラー2bの焦点付近に配置された散乱光用受光器2で検出する。その際、楕円ミラー2bの中心付近にトラップ2aを直立させて、受光領域を2分割するとともに、トラップ2aの左右に各1個の受光センサ(第1,2ディテクタ)2c,2dを配置して、それぞれの信号を記録する。異物が表面にある時は、図4(a)に示されるように、トラップ2aの左側(第1ディテクタ2c)の領域の受光量が大きく、左右のセンサの信号波形に差が生じる。―方、異物が裏面にある時は、図4(b)に示されるように、トラップ2aの左右の領域の受光量の差が小さい。これを利用して、比較判定回路5により、異物が基板表裏のいずれにあるかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平05−196579号公報
【特許文献2】特開平05−273137号公報
【特許文献3】特開平06−258232号公報
【特許文献4】特開2003−294653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
例えば、FPD用の透明平板基板の異物は、基板表裏のいずれにあってもディスプレイの画質に影響を及ぼすため、一回の異物検査で表裏両面の異物を検出できることが好ましい。また、LCD用の透明平板基板では、TFTが形成される面とその裏面とで、異物の影響度が基本的に相違するため、異物が基板の表裏いずれにあるかを確実に検出できることが望まれる。一般に、光散乱方式の異物検査では、表面の異物からの散乱光と裏面の異物からの散乱光とでは、その強度の差が大きい。そのため表面では、微細な異物まで検出できるが、裏面の微細な異物の検出が難しいという問題がある。
【0013】
本発明者らの知見によれば、前述した特許文献3における表裏の判別可能な異物検査方法では、上記の問題への対応が考慮されておらず、裏面の微細な異物の検出に難点がある。また、これらの検査方法は、受光センサの信号波形を解析して表裏いずれに異物があるかを判定するものであるが、散乱光の信号波形は異物の種類によっても相違するため、誤った判定をすることも少なくなく、検査結果の信頼性が不十分で、実用性があるとは言い難い。
【0014】
一方、特許文献4の検査方法では、装置が複雑で高価なだけでなく、測定前の光学系調整の手間が大きいという問題があり、より簡便な方法が望まれている。
【0015】
そこで、本発明の課題は、透明平板基板の表裏に存在する微細な異物を光散乱方式により高感度に検出するとともに、異物が表裏のいずれに存在するかを確実に判別することができる異物検査装置及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための、請求項1に記載の本発明は、透明平板基板に投光系により検出光を照射し、前記透明平板基板に存在する異物による散乱光を受光系により受光して前記異物の存在を検出する異物検査装置において、前記透明平板基板の一方の面(以下、表面)に前記透明平板基板の基板法線に対して所定の入射角で前記検出光を照射する投光系と、前記表面側に設けられ、前記検出光の照射点を基準として、前記投光系と略対称の位置に設けられ、前記検出光が異物に照射された際の散乱光を受光する第1の受光系と、前記表面側で、前記検出光の照射点のほぼ頭上に設けられ、前記散乱光を受光する第2の受光系とを備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の異物検査装置であって、前記第2の受光系が、受光する前記散乱光の範囲を制限する受光範囲制限手段を備えたことを特徴とする。受光制限手段は、例えば、第2の受光系に散乱光が入光する面に受光範囲を制限するプレートや遮光フィルターを取り付けることで行うことができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の異物検査装置であって、前記受光範囲制限手段により、第2の受光系が受光する、前記透明平板基板内を透過した検出光(以下、透過光)が前記透明平板基板の他の面(以下、裏面)側に存在する異物に照射された際の散乱光の範囲が制限されることを特徴とする。この受光範囲制限手段により、例えば、透明平板基板の表面に存在する異物から発生した散乱光は、第1、第2の受光系により受光されるが、透明平板基板の裏面に存在する異物から発生した散乱光は、第2の受光系による受光を制限される。その結果、裏面側に存在する異物による散乱光の受光強度を小さくすることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の異物検査装置であって、前記第1の受光系と前記第2の受光系から得られた散乱光強度のデータの対比から、異物が前記透明平板基板の表裏いずれに存在するかを判別する判別手段を備えたことを特徴とする。例えば、透明平板基板のレーザ光照射点において、第1の受光系で散乱光が受光され、また同時に第2の受光系においても散乱光が受光されたとする。その場合には、透明平板基板の表面に異物が存在していると判別できる。第2の受光系は、受光範囲制限手段により、裏面側に存在する異物により生じる散乱光をほとんど受光しないためである。一方、第1の受光系では散乱光が受光されるが、第2の受光系では散乱光が受光されない、又はその強度が非常に小さい場合には、透明平板基板の裏面に異物が存在していると判別することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の異物検査装置であって、前記第1の受光系と前記第2の受光系から得られた散乱光強度のデータから、前記透明平板基板における異物の位置、及び大きさを検出する異物解析手段を備えたことを特徴とする。透明平板基板に存在する異物の位置は、検出光の走査位置から求めることができる。また、異物の大きさは、散乱光の強度と異物の大きさとを関係づけた検量線を参照することにより求めることができる。これらにより、透明平板基板に存在する異物の位置、及びその大きさを容易に判別することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の異物検査装置であって、前記検出光がレーザ光であることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明は、異物検査方法であって、透明平板基板の一方の面(以下、表面)に照射される検出光を走査し、前記透明平板基板に存在する異物からの散乱光を受光して、異物を検出する異物検査方法において、前記検出光を前記透明平板基板に対して所定の入射角で照射し、前記検出光の照射点に関し、略対称の位置において、前記検出光を照射された異物からの第1の散乱光を受光し、前記検出光の照射点のほぼ頭上の位置において、前記検出光を照射された異物からの第2の散乱光を受光し、前記第1の散乱光の強度、及び前記第2の散乱光の強度から、前記透明平板基板に存在する異物を検出することを特徴とする。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の異物検査方法であって、前記透明平板基板内を透過した検出光(以下、透過光)が、前記透明平板基板の他の面(以下、裏面)側に存在する異物に照射された際に生じる散乱光を第2の受光系が受光する範囲を制限し、裏面側に存在する異物による散乱光の強度を低下させることを特徴とする。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の異物検査方法であって、前記第1の散乱光の強度と、前記第2の散乱光の強度と、あらかじめ定めた散乱光の強度の閾値とから、前記透明平板基板の表面又は裏面のいずれに異物が存在するかを判別することを特徴とする。散乱光の強度の閾値は、ガラスの厚さ、透過率、波長等により設定することができる。
【0025】
例えば、第2の受光系が受光する散乱光の強度の閾値を定めることにより、第2の受光系による透明平板基板の裏面に存在する異物からの散乱光の受光を制限するよう設定できる。それにより、第1の受光系及び第2の受光系で散乱光が受光された場合、透明平板基板の表面に異物が存在すると判別できる。また、第1の受光系では散乱光が受光され、第2の受光系では受光されない場合には、異物は透明平板基板の裏面に存在すると判別することができる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、請求項7から9のいずれかに記載の異物検査方法であって、前記検出光がレーザ光であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、透明平板基板の表裏に存在する微細な異物を高感度で検出することができるとともに、異物が表裏のいずれに存在するかについても確実に判別可能な異物検査装置及び検査方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例である異物検査装置の全体の構成を示す概念図である。
【図2】散乱光受光器12で受光する散乱光の範囲について示す図である。
【図3】散乱光受光器13で受光する散乱光の範囲について示す図である。
【図4】散乱光受光器12,13による散乱光の受光範囲を示す図である。
【図5】散乱光受光器12,13で受光した散乱光から発生した信号を処理する散乱光検出回路を示した図である。
【図6】レーザ光照射位置の移動による異物からの散乱光出力の強弱について示した図である。
【図7】レーザ光照射位置の移動による異物からの散乱光出力の強弱について示したグラフである。
【図8】レーザ光照射位置の移動による異物からの散乱光出力の強弱について示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態である異物検査装置の全体の概略構成を示した図である。この異物検査装置は、透明な平板基板(本実施の形態ではガラス基板20)への異物の付着を検査する装置である。この異物検査装置は、レーザ光を照射する面(表面)に設けられたレーザ光源11と散乱光受光器12及び散乱光受光器13とから構成されている。
【0030】
レーザ光源11、散乱光受光器12,13は、ともにフレ―ム1に取り付けられ、ガラス基板20に対して、X軸、Y軸の二次元で走査し得るように構成されている。もちろん、レーザ光源11、散乱光受光器12,13を走査するのではなく、ガラス基板20をレーザ光源11、散乱光受光器12,13に対して二次元的に走査し得るように構成しても良い。
【0031】
レーザ光源11は、レーザ光(標準ビーム径としては例えば1.0mmである)をガラス基板20に対して入射角(入射光の光軸と基板法線との間の角)で照射する投光系である。ガラス基板の場合には、例えば、入射角が70度から80度程度であることが好ましい。光源としては、例えば、He−Neレーザ等のガスレーザ、半導体レーザ及びYAGレーザ等の複合素子レーザ等が使用できる。
【0032】
散乱光受光器12は、レーザ光の照射点を基準として、レーザ光源11と略対称の位置に設けられ、レーザ光が異物に照射された際の散乱光を受光し、それにより発生した信号を検出する。散乱光受光器12は、表面にある異物により前方に散乱された散乱光を高感度に検出するため、比較的径の大きい集光レンズを用いることが好ましい。また、散乱光受光器12の散乱光受光角度は60度付近が好ましい。
【0033】
図1において、本発明の特徴とするところは、散乱光受光器12に加え、散乱光受光器13が照射点のほぼ頭上に設けられているところにある。散乱光受光器13は、散乱光検出部131、鏡筒132、観察用カメラ133とから構成される。
【0034】
図2は、ガラス基板20にレーザ光110を照射したときの反射光、及び異物による散乱光の状態、及び散乱光受光器12が受光する散乱光の範囲を示した図である。レーザ光110は、レーザ光源11のレーザ出力部111から一定の入射角でガラス基板20に照射される。ガラス基板20に異物が存在しない場合、レーザ光110は照射点で正反射し反射光151として散乱光受光器12に到達する。散乱光受光器12はガラス基板20に存在する異物により発生する散乱光を受光することを目的とするので、反射光151は不要である。そこで、本実施の形態では、受光範囲制限手段の一つとして例示する遮光テープ127でマスクを行い、反射光151が散乱光検出部124に入光できないようにしている。
【0035】
ガラス基板20の表面に異物30aが存在する場合、異物30aに照射されたレーザ光110から散乱光152が生じる。散乱光152は、集光レンズ121(121a,121b)により集光され、散乱光検出部124により検出される。
【0036】
一方、ガラス基板20の裏面に異物30bが存在する場合、ガラス基板を透過したレーザ光(以下、透過光)が異物30bに照射され散乱光153が生じる。本実施の形態では、散乱光152,153はともに集光レンズ121(121a,121b)により集光され、散乱光検出部124により検出される。そのため散乱光受光器12は、ガラス基板20の表面の異物30aからの散乱光152と、裏面の異物30bからの散乱光153の両方の散乱光を受光することになる。
【0037】
図3は、ガラス基板20にレーザ光110を照射したときの反射光、及び異物による散乱光の状態、及び散乱光受光器13が受光する散乱光の状態を示した図である。本発明の特徴とするところは、散乱光受光器12に加え、散乱光受光器13が、水平に設置されたガラス基板20に対し、直交するように設けられているところにある。このように設置することにより、散乱光受光器13の受光面はガラス基板20とほぼ平行になる。
【0038】
また、本発明の特徴とするところは、散乱光受光器13の受光面に受光範囲制限プレート130が取り付けられているところにある。この受光範囲制限プレート130により、散乱光受光器13が受光する散乱光の範囲を制限することができる。
【0039】
散乱光受光器13が受光する散乱光について説明すると、ガラス基板20に異物が存在しない場合、レーザ光110は、照射点で正反射し反射光151となる。散乱光受光器13は、ガラス基板20の照射点のほぼ頭上に設置してあるため、反射光151が散乱光受光器13に入光することはほぼあり得ない。
【0040】
ガラス基板20の表面に異物30aが存在する場合、レーザ光110が異物30aに照射されることにより散乱光152が生じる。異物30aにより、上方に発生した散乱光152は、レーザ照射点のほぼ頭上に設けられた散乱光受光器13により受光される。散乱光152は、鏡筒132内を通り、反射鏡134によりほぼ直角に曲げられ、観察用カメラ133に入光し、検出される。
【0041】
ガラス基板20の裏面に異物30bがある場合、透過光が異物30bに照射される。これにより散乱光153が発生するが、散乱光検出器13は異物30bのほぼ頭上にはない。ガラス基板20の屈折率とガラス基板の厚さによって決まる距離だけ、異物30bと散乱光受光器13の中心点とはずれている。そのため、裏面側にある異物30bの上方に散乱する散乱光153を、散乱光受光器13が受光する割合は少なくなる。更に、散乱光受光器13の受光面には受光範囲制限プレート130が設けられている。これにより、異物30bにより生じた散乱光153の受光範囲は制限をうける。それらにより、散乱光受光器13は、ガラス基板20の表面の異物30aからの散乱光152は受光するが、裏面の異物30bからの散乱光153を受光する割合は極めて少なくなる。
【0042】
図4(a)は散乱光受光器12,13により受光される散乱光の受光領域を示した図である。散乱光受光器12の受光領域は受光領域140である。また、散乱光受光器13の受光領域は受光領域141である。
【0043】
ここで、ガラス基板20の表面の異物30aにレーザ光110が照射されると、散乱光受光器12の受光領域は受光領域140であるから、受光器12は散乱光を受光する。また、散乱光受光器13の受光領域は、受光領域141であるから、30aによる散乱光は散乱光受光器13でも受光される。すなわち、ガラス基板20の表面の異物30aから発生した散乱光は散乱光受光器12,13の両方で受光される。
【0044】
一方、ガラス基板20の裏面に存在する異物30bから発生した散乱光は、受光範囲制限プレート130によりその受光領域は受光領域141に制限されるため、散乱光受光器13には入光しない。一方、散乱光受光器12の受光領域は受光領域140内であるため、散乱光受光器12は散乱光を受光する。
【0045】
なお、図4(b)に、ガラス基板20の表面に存在する異物30a及び裏面に存在する異物30bの位置関係と、散乱光受光器12,13による散乱光の検出領域を断面図として示した。
【0046】
図5は、散乱光受光器12,13で受光した散乱光から発生した信号を処理する散乱光検出回路40を示した図である。散乱光受光器12、散乱光受光器13からの出力信号は、増幅器41(41a,41b)により増幅された後、データ解析回路42(42a,42b)に入力され、異物の位置、大きさが判別される。
【0047】
データ解析回路42には、散乱光の強度と異物のサイズとを関連づけたテーブルが用意されている。散乱光受光器12,13で得られた散乱光強度のデータとテーブルとして蓄積されているデータとを比較することにより、異物のサイズを解析することができる。また、レーザ光源11、散乱光受光器12,13とレーザ光110の照射位置とから、ガラス基板20に付着する異物の位置を解析する。
【0048】
データ解析回路42にはメモリーが設けられ、解析結果は当該メモリーに蓄積、記憶される。これらのデータは比較判別回路43において、あらかじめ定めた散乱光強度の閾値とデータ解析回路42の出力とが対比され、異物がガラス基板20の表裏のいずれに存在するかが判別される。
【0049】
図6及び図7は、ガラス基板20の移動に伴うレーザ光110の照射位置の移動と異物からの散乱光出力の強弱について示した図である。図6(a)は、ガラス基板20の表面に存在する異物30aにレーザ光110が照射されたときの散乱光の出力について示した図である。
【0050】
異物30aにレーザ光110が照射されると、その散乱光は図7(b)に示すように、散乱光受光器12から散乱光出力信号160として出力される。また、散乱光受光器13からは散乱光出力信号170として出力される(図7(c))。これらの散乱光出力信号(160,170)は、図5に示す散乱光検出回路40により、表裏分離出力信号180として出力される(図7(a))。その結果、異物30aはガラス基板20の表側にあると判別される。
【0051】
なお、ガラス基板20が右へ移動することにより、図6(c)に示すように、本来レーザ光110の照射点にはないはずの異物30a’が、散乱光受光器12から散乱光出力信号161として出力される(図7(b))。かかる散乱光出力信号161は弱い出力信号である。また、散乱光受光器13ではほとんど検出されない程度の非常に弱い散乱光出力信号171として検出される(図7(c))。
【0052】
このような疑似異物の検出は次のようにすることで除去できる。先ず、異物30a’の位置は、図6(c)に示すようにガラス基板20の移動距離と、ガラス厚で決まる屈折率とから決定することができる。そのため、異物30aが検出された後、一定時間後に散乱光受光器12から出力される散乱光出力信号161と散乱光受光器13から出力される散乱光出力信号171の出力信号強度、及び出力信号の比較を行う。散乱光出力信号171が散乱光出力信号161よりも極めて弱く、かつ散乱光出力信号161が散乱光出力信号160よりも小さい場合、そのときに検出された異物30a’の出力信号は疑似異物信号であると判断し、実際には存在しない異物であるとして除去すれば良い。
【0053】
図8は、図6(b)に示すような、ガラス基板20の裏面に異物がある場合の散乱光受光器12の出力(図8(b))、散乱光受光器13の出力(図8(c))、及び表裏分離出力(図8(a))を示した図である。図8(b)に示すように、ガラス基板20の裏面に異物があると、散乱光受光器12から散乱光出力信号190が出力される。一方、図8(c)に示すように、散乱光受光器13からの出力信号はない。これらから、表裏分離出力信号は、図8(a)に示すような出力信号となり、ガラス基板20の表面には異物が存在しないと判別される。
【符号の説明】
【0054】
1 フレーム
11 レーザ光源
12,13 散乱光受光器
20 ガラス基板
30a ガラス基板20の表面の異物
30b ガラス基板20の裏面の異物
40 散乱光検出回路
41(41a,41b) 増幅器
42(42a,42b) データ解析回路
43 比較判別回路
110 レーザ光
111 レーザ出力部
121(121a,121b) 集光レンズ
124 散乱光検出部
127 遮光テープ
130 受光範囲制限プレート
131 散乱光検出部
132 鏡筒
133 観察用カメラ
134 反射鏡
140 散乱光受光器12の受光領域
141 散乱光受光器13の受光領域
142 観察用カメラ133の視野
143 ガラス基板20の表面のレーザ光照射領域
151 反射光
152,153 散乱光
160,161,170,171,190 散乱光出力信号
180 裏表分離出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明平板基板に投光系により検出光を照射し、前記透明平板基板に存在する異物による散乱光を受光系により受光して前記異物の存在を検出する異物検査装置において、
前記透明平板基板の一方の面(以下、表面)に前記透明平板基板の基板法線に対して所定の入射角で前記検出光を照射する投光系と、
前記表面側に設けられ、前記検出光の照射点を基準として、前記投光系と略対称の位置に設けられ、前記検出光が異物に照射された際の散乱光を受光する第1の受光系と、
前記表面側で、前記検出光の照射点のほぼ頭上に設けられ、前記散乱光を受光する第2の受光系とを備えたことを特徴とする異物検査装置。
【請求項2】
前記第2の受光系が、受光する前記散乱光の範囲を制限する受光範囲制限手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項3】
前記受光範囲制限手段により、第2の受光系が受光する、前記透明平板基板内を透過した検出光(以下、透過光)が前記透明平板基板の他の面(以下、裏面)側に存在する異物に照射された際の散乱光の範囲が制限されることを特徴とする請求項1又は2に記載の異物検査装置。
【請求項4】
前記第1の受光系と前記第2の受光系から得られた散乱光強度のデータの対比から、異物が前記透明平板基板の表裏いずれに存在するかを判別する判別手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の異物検査装置。
【請求項5】
前記第1の受光系と前記第2の受光系から得られた散乱光強度のデータから、前記透明平板基板における異物の位置、及び大きさを検出する異物解析手段を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の異物検査装置。
【請求項6】
前記検出光がレーザ光であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の異物検査装置。
【請求項7】
透明平板基板の一方の面(以下、表面)に照射される検出光を走査し、前記透明平板基板に存在する異物からの散乱光を受光して、異物を検出する異物検査方法において、
前記検出光を前記透明平板基板に対して所定の入射角で照射し、
前記検出光の照射点に関し、略対称の位置において、前記検出光を照射された異物からの第1の散乱光を受光し、
前記検出光の照射点のほぼ頭上の位置において、前記検出光を照射された異物からの第2の散乱光を受光し、
前記第1の散乱光の強度、及び前記第2の散乱光の強度から、前記透明平板基板に存在する異物を検出することを特徴とする異物検査方法。
【請求項8】
前記透明平板基板内を透過した検出光(以下、透過光)が前記透明平板基板の他の面(以下、裏面)側に存在する異物に照射された際に生じる散乱光を第2の受光系が受光する範囲を制限し、裏面側に存在する異物による散乱光の強度を低下させることを特徴とする請求項7に記載の異物検査方法。
【請求項9】
前記第1の散乱光の強度と、前記第2の散乱光の強度と、あらかじめ定めた散乱光の強度の閾値とから、前記透明平板基板の表面又は裏面のいずれに異物が存在するかを判別することを特徴とする請求項7又は8に記載の異物検査方法。
【請求項10】
前記検出光がレーザ光であることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の異物検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−169453(P2010−169453A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10444(P2009−10444)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(301032067)株式会社山梨技術工房 (5)
【Fターム(参考)】