説明

発光素子および粒子含有層形成用組成物

【課題】発光効率および耐久性が改善された発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子10は、基板11と、第1電極13と、発光層15と、第2電極17と、粒子含有層18を備えている。粒子含有層18は、シロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体、および、金属酸化物粒子を含有する組成物の硬化物である。粒子含有層18は、基板11と第1電極13の間に形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、および、発光素子を構成する粒子含有層の材料として用いられる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子は、透明基板の表面に、透明陽電極層、発光材料層、及び陰電極層がこの順に積層された基本構成を有する。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子は、その陽電極層から正孔を、その陰電極層から電子を、有機材料からなる発光材料層の内部に注入し、発光材料層の内部で正孔と電子を再結合させることによって、励起子(エキシトン)を生成させ、この励起子が失活する際の光の放出(蛍光、燐光)により発光する発光素子である。発光材料層で発生した光は、透明基板の側から発光素子の外部に取り出される。
特許文献1には、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などの高屈折率樹脂を用いた高屈折率層を有する発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−296438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の透明導電性基板を用いることにより、発光素子が発する光を、透明基板の側からある程度効率良く取り出すことができる。しかしながら、発光素子が発する光によって、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などの高屈折率樹脂が劣化してしまうという問題がある。
そこで本発明は、発光効率および耐久性が改善された発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の成分を含有する粒子含有層を備えた発光素子によれば、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] 基板と第1電極と発光層と第2電極と粒子含有層とを備え、前記基板と前記第1電極と前記発光層と前記第2電極とがこの順に積層されてなり、前記粒子含有層は、前記第1電極の、前記発光層が形成された側とは反対側、および、前記第2電極の、前記発光層が形成された側とは反対側の少なくともいずれか一方に形成されており、前記粒子含有層が、下記(A)成分および(B)成分を含有する粒子含有層形成用組成物の硬化物であることを特徴とする発光素子。
(A)シロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体
(B)金属酸化物粒子
[2] 発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である、前記[1]に記載の発光素子。
[3] 前記粒子含有層を前記基板と前記第1電極との間に備えてなる、前記[1]または[2]に記載の発光素子。
[4] 前記重合体が、下記の一般式(1)で示される化合物および下記の一般式(2)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が縮合してなる重合体である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の発光素子。
(RSi(X)4−p・・・(1)
[一般式(1)中、Rは炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。]
(RTi(X)4−p・・・(2)
(一般式(2)中、Rは炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。)
[5] 前記(B)成分の配合量が、上記(A)成分100質量部に対して、50〜2,000質量部である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の発光素子。
[6] 前記(B)成分は、数平均1次粒子径が1〜100nmの微粒子である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の発光素子。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかに記載の発光素子の粒子含有層を形成するための組成物であって、下記(A)成分および(B)成分を含有することを特徴とする粒子含有層形成用組成物。
(A)シロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体
(B)金属酸化物粒子
【発明の効果】
【0006】
本発明の発光素子は、特定の組成物の硬化体からなる粒子含有層を備えており、該粒子含有層の屈折率が高いため、優れた発光効率を有する。
また、本発明の発光素子は、耐久性にも優れるため、厳しい使用条件下であっても、長期に亘って性能を低下させずに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の発光素子の実施形態例1を概念的に示す断面図である。
【図2】本発明の発光素子の実施形態例2を概念的に示す断面図である。
【図3】本発明の発光素子の実施形態例3を概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の発光素子の種々の実施形態例を説明する。
図1中、発光素子10は、本発明の発光素子の実施形態例1である。発光素子10は、基板11、第1電極13、発光層15、第2電極17、及び粒子含有層18が順に積層された構造を有する。第2電極17は透過型電極であって、発光層15で生成した光は、第2電極17および粒子含有層18を通過して、発光素子10の外部に取り出されうる。
【0009】
基板11としては、一般的な発光素子で使われる基板を使用することができるが、機械的強度、熱的安定性、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性に優れるガラス基板または透明プラスチック基板が好ましい。
【0010】
第1電極13は、基板11の上面に第1電極形成用物質を蒸着法またはスパッタリング法などを用いて供給することによって形成される。第1電極13は、後述する発光層15に当接する第1面、及び、基板11に当接する第2面を有する。第1電極形成用物質としては、透明であって伝導性に優れる酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などを用いることができる。あるいは、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などを用いれば、第1電極13を反射型電極として形成することができる。
【0011】
発光層15は、電界が印加されることにより発光現象を示す物質により成膜されたものである。このような物質としては、付活酸化亜鉛ZnS:X(但し、Xは、Mn、Tb、Cu,Sm等の付活元素である。)、CaS:Eu、SrS:Ce,SrGa:Ce、CaGa:Ce、CaS:Pb、BaAl:Eu等の従来より使用されている無機EL物質、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体、芳香族アミン類、アントラセン単結晶等の低分子色素系の有機EL物質、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリビニルカルバゾールなどの共役高分子系の有機EL物質等、従来より使用されている有機EL物質を用いることができる。発光層15の厚さは、通常10〜1000nm、好ましくは30〜500nm、更に好ましくは50〜200nmである。発光層15は、蒸着やスパッタリング等の真空成膜プロセス、あるいはクロロフォルム等を溶媒とする塗布プロセスにより形成することができる。
【0012】
第2電極17は、電子注入電極であるカソードである。第2電極17の形成用の金属としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などが挙げられる。これらの金属を薄膜に形成することによって、透過型電極を得ることができる。一方、素子側から光を取り出すトップエミッション方式の発光素子を得るために、ITO、IZOを利用した透過型電極を形成することもできる。
【0013】
粒子含有層18は下記(A)成分および下記(B)成分を含有する粒子含有層形成用組成物の硬化物である。
【0014】
本発明に用いられる各成分について詳細に説明する。
[(A)成分;シロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体]
シロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体としては、例えば、下記一般式(1)で示される化合物および下記一般式(2)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が縮合してなる重合体を挙げることができる。
(RSi(X)4−p・・・(1)
(一般式(1)中、Rは炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。)
(RTi(X)4−p・・・(2)
(一般式(2)中、Rは炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。)
一般式(1)および一般式(2)中のXで表される加水分解性基は、通常、無触媒かつ過剰の水の存在下で室温(25℃)〜100℃の温度範囲内で加熱することにより、アルコキシ基などの加水分解性基が加水分解されてシラノール基またはチタノール基を生成することができる基である。なお、加水分解性基は、加水分解後にさらに縮合してシロキサン縮合物またはチタノキサン縮合物を形成することができる。
一般式(1)中の添え字pは、0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数である。
シロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体は、シラノール基またはチタノール基を含むことが好ましい。該シラノール基およびチタノール基に含まれる水酸基の数は、重合体中のケイ素原子およびチタン原子の数の総和に対して、好ましくは15〜300%、より好ましくは30〜250%、さらに好ましくは50〜200%である。シラノール基およびチタノール基に含まれる水酸基の数が重合体中のケイ素原子およびチタン原子の数の総和に対して上記範囲内であると、金属酸化物粒子の分散性に優れた粒子含有層形成用組成物が得られ、さらには屈折率が高く、透明性、耐熱性、クラック耐性および耐光性に優れた膜が得られる。
シロキサン系重合体は、一部に未加水分解の加水分解性基が残っていても良い。また、シロキサン系重合体は、一部のシラノール基または加水分解性基同士が縮合した部分縮合物でも良い。
【0015】
一般式(1)および一般式(2)中の有機基Rは、炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基である。有機基Rにおける非加水分解性とは、加水分解性基Xが加水分解される条件において、そのまま安定に存在する性質であることを意味する。
有機基Rとしては、例えば、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基などが挙げられる。有機基Rは、直鎖状、分岐状、環状あるいはこれらの組み合わせであっても良い。また、有機基Rは、ヘテロ原子を含む構造単位を有していても良い。そのような構造単位としては、エーテル結合、エステル結合、スルフィド結合などを例示することができ、このような結合を含む有機基Rとしては、例えば、オキセタニル基、オキシラニル基などのエポキシ基を有する基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基などを挙げることができる。
有機基Rにおいて炭素数1〜12の炭化水素基としては、反応性および得られる膜のクラック耐性の観点から、炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜4の炭化水素基であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環族炭化水素基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基などの芳香族炭化水素基を挙げることができ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フェニル基、メチルフェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基であることがより好ましい。
【0016】
また、有機基Rにおいてハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の炭化水素基としては、フッ素化炭化水素基、塩素化炭化水素基、臭素化炭化水素基が挙げられ、フッ素化炭化水素基であることがより好ましい。該炭化水素基の炭素数は、反応性および得られる膜のクラック耐性の観点から、好ましくは1〜4である。
具体的にはクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロイソブチル基、ペルフルオロ−t−ブチル基を挙げることができ、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−t−ブチル基であることが好ましく、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基であることがより好ましい。
【0017】
一般式(1)および一般式(2)における加水分解性基Xとしては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、炭素数2〜12のアシルオキシ基、炭素数2〜12のハロゲン化アシルオキシ基などが挙げられる。炭素数1〜12のアルコキシ基の好ましい例としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子の好ましい例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。アシルオキシ基の好ましい例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチロイルオキシ基などが挙げられる。
【0018】
一般式(1)で表される加水分解性シラン化合物(以下、シラン化合物と略すことがある。)の具体例を説明する。
4個の加水分解性基を有するシラン化合物としては、テトラクロロシラン、テトラアミノシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジロキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどが挙げられる。
【0019】
3個の加水分解性基を有するシラン化合物としては、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、d−メチルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0020】
2個の加水分解性基を有するシラン化合物としては、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジアミノシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシランなどが挙げられる。
1個の加水分解性基を有するシラン化合物としては、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリブチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリブチルエトキシシランなどが挙げられる。
【0021】
一般式(2)で表される加水分解性チタン化合物(以下、チタン化合物と略すことがある。)の具体例を説明する。
4個の加水分解性基を有するチタン化合物としては、テトラクロロチタン、テトラアミノチタン、テトラアセトキシチタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラフェノキシチタン、テトラベンジロキシチタン、トリメトキシチタン、トリエトキシチタンなどが挙げられる。
【0022】
3個の加水分解性基を有するチタン化合物としては、メチルトリクロロチタン、メチルトリメトキシチタン、メチルトリエトキシチタン、メチルトリブトキシチタン、エチルトリメトキシチタン、エチルトリイソプロポキシチタン、エチルトリブトキシチタン、ブチルトリメトキシチタン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシチタン、フェニルトリメトキシチタン、d−メチルトリメトキシチタン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシチタン、トリフルオロメチルトリメトキシチタンなどが挙げられる。
【0023】
2個の加水分解性基を有するチタン化合物としては、ジメチルジクロロチタン、ジメチルジアミノチタン、ジメチルジアセトキシチタン、ジメチルジメトキシチタン、ジフェニルジメトキシチタン、ジブチルジメトキシチタンなどが挙げられる。
1個の加水分解性基を有するチタン化合物としては、トリメチルクロロチタン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルチタン、トリブチルチタン、トリメチルメトキシチタン、トリブチルエトキシチタンなどが挙げられる。
【0024】
(A)成分であるシロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体の分子量について説明する。かかる分子量は、移動相にテトラヒドロフランを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略すことがある。)を用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量として測定することができる。
シロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体の重量平均分子量は、好ましくは500〜100,000、より好ましくは800〜30,000、さらに好ましくは1,000〜5,000である。該値が500未満では、硬化膜の形成時のクラック耐性が低下する傾向がある。該値が100,000を超えると、(B)成分である金属酸化物粒子の分散性が低下する傾向がある。
【0025】
シロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体を得る際の触媒は、金属キレート化合物、酸性化合物、および塩基性化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、酸性化合物であることがより好ましい。
(d−1)金属キレート化合物
触媒として使用可能な金属キレート化合物は、下記一般式(2)で表される。
15M(OR16f−e ・・・・・(2)
(式中、R15はキレート剤、Mは金属原子、R16はアルキル基またはアリール基を示し、fは金属Mの原子価を示し、eは1〜fの整数を示す。)
【0026】
ここで、金属Mとしては、IIIB族金属(アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム)およびIVA族金属(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)より選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましく、チタン、アルミニウム、ジルコニウムがより好ましい。
15で表されるキレート剤としては、CHCOCHCOCH、CHCOCHCOOC等を挙げることができる。
16で表されるアルキル基またはアリール基としては、上記一般式(1)におけるRで表されるアルキル基またはアリール基を挙げることができる。
金属キレート化合物の好適な具体例としては、(CH(CH)HCO)4−tTi(CHCOCHCOCH,(CH(CH)HCO)4−tTi(CHCOCHCOOC,(CO)4−tTi(CHCOCHCOCH,(CO)4−tTi(CHCOCHCOOC,(C(CH)CO)4−tTi(CHCOCHCOCH,(C(CH)CO)4−tTi(CHCOCHCOOC,(CH(CH)HCO)4−tZr(CHCOCHCOCH,(CH(CH)HCO)4−tZr(CHCOCHCOOC,(CO)4−tZr(CHCOCHCOCH,(CO)4−tZr(CHCOCHCOOC,(C(CH)CO)4−tZr(CHCOCHCOCH,(C(CH)CO)4−tZr(CHCOCHCOOC,(CH(CH)HCO)3−tAl(CHCOCHCOCH,(CH(CH)HCO)3−tAl(CHCOCHCOOC,(CO)3−tAl(CHCOCHCOCH,(CO)3−tAl(CHCOCHCOOC,(C(CH)CO)3−tAl(CHCOCHCOCH,(C(CH)CO)3−tAl(CHCOCHCOOC等が挙げられる。
【0027】
金属キレート化合物の量は、シラン化合物とチタン化合物(以下、シラン化合物等ともいう。)の合計量100質量部(完全加水分解縮合物換算)に対して、好ましくは0.0001〜10質量部、より好ましくは0.001〜5質量部である。該量が0.0001質量部未満では、塗膜の塗布性が劣る場合があり、10質量部を超えると、ポリマー成長を制御できず、ゲル化を起こす場合がある。
金属キレート化合物の存在下で加水分解性シラン化合物を加水分解縮合させる場合、シラン化合物等の合計量1モル当たり0.5〜20モルの水を用いることが好ましく、1〜10モルの水を用いることが特に好ましい。水の量が0.5モル未満であると、加水分解反応が十分に進行せず、塗布性および保存安定性に問題が生じる場合があり、20モルを超えると、加水分解および縮合反応中のポリマーの析出やゲル化が生じる場合がある。また、水は断続的あるいは連続的に添加されることが好ましい。
これらの金属キレート化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
(d−2)酸性化合物
触媒として使用可能な酸性化合物としては、有機酸または無機酸が例示でき、有機酸が好ましい。
有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物等を挙げることができる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができる。
中でも、加水分解縮合(加水分解及びそれに続く縮合)の反応中のポリマーの析出やゲル化のおそれが少ない点で有機酸が好ましく、このうち、カルボキシル基を有する化合物がより好ましい。
カルボキシル基を有する化合物の中でも、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、無水マレイン酸の加水分解物などの有機酸が特に好ましい。
これらの酸性化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
酸性化合物の量は、シラン化合物等の合計量100質量部(完全加水分解縮合物換算)に対して、好ましくは0.0001〜10質量部、より好ましくは0.001〜5質量部である。該量が0.0001質量部未満では、塗膜の塗布性が劣る場合があり、10質量部を超えると、急激に加水分解縮合反応が進行しゲル化を起こす場合がある。
酸性化合物の存在下でシラン化合物等を加水分解縮合させる場合、シラン化合物等の合計量1モル当たり0.5〜20モルの水を用いることが好ましく、1〜10モルの水を用いることが特に好ましい。水の量が0.5モル未満では、加水分解反応が十分に進行せず、塗布性および保存安定性に問題が生じる場合があり、20モルを超えると、加水分解縮合反応中のポリマーの析出やゲル化が生じる場合がある。また、水は断続的あるいは連続的に添加されることが好ましい。
【0030】
(d−3)塩基性化合物
触媒として使用可能な塩基性化合物としては、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアN,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピルジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)ブタノールアミン、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラプロピルエチレンジアミン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどが挙げられる。
塩基性化合物の量は、シラン化合物等の加水分解性基の合計量1モルに対して、好ましくは0.00001〜10モル、より好ましくは0.00005〜5モルである。該量が0.00001モル未満では、加水分解縮合が十分に進まない場合があり、10モルを超えると、得られた加水分解縮合物の保存安定性が劣る場合がある。
【0031】
[(B)成分;金属酸化物粒子]
本発明では、高屈折率を有する硬化体を得るために、高屈折率を有する金属酸化物粒子を使用することが好ましい。このような金属酸化物粒子は、25℃における波長400nmの光の屈折率が好ましくは1.55以上、より好ましくは1.60以上、特に好ましくは1.70以上の微粒子である。このような金属酸化物粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ニオブおよびこれらの複合体などの金属酸化物粒子が挙げられる。中でも、酸化ジルコニウム(ZrO)の微粒子が好ましい。
上記酸化チタンは、TiO構造を有するものであれば特に限定されず、例えばアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられる。
これらの金属酸化物粒子は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
(B)成分である金属酸化物粒子の数平均1次粒子径は、好ましくは1〜100nm、
より好ましくは3〜70nm、特に好ましくは5〜50nmである。数平均1次粒子径が
上記範囲内であると、透明性に優れた硬化体を得ることができる。
(B)成分である金属酸化物粒子は、(A)成分および(C)成分との混合前に、粉体
状であってもよいし、溶媒分散ゾルであってもよい。溶媒としては、例えば有機溶媒が用
いられる。有機溶媒としては、例えば、2−ブタノール、メタノール、メチルエチルケト
ン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、プロピ
レングレコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0033】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは50〜2,000質量部、より好ましくは100〜1,500質量部、さらに好ましくは150〜1,000質量部である。該量が50質量部未満では、硬化膜(組成物の硬化体)の屈折率が低下し、発光装置の発光効率が低下するおそれがあり、該量が2,000質量部を超えると、十分なクラック耐性が得られないおそれがある。
なお、(B)成分が溶媒分散ゾルである場合、(B)成分の配合量は、溶媒を含まない質量を意味する。また、(B)成分が溶媒分散ゾルである場合、(B)成分の溶媒としての有機溶媒の量は、(C)成分である有機溶媒の配合量の一部を構成するものとする。
(A)成分と(B)成分の合計の配合量は、特に限定されないが、有機溶媒を除く組成物の成分全量100質量%に対して、得られる粒子含有層の耐熱性の観点から、50〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、80〜100質量%であることがさらに好ましく、90〜100質量%であることが特に好ましい。
【0034】
[(C)成分;有機溶媒]
本発明では、有機溶媒を配合することによって、組成物の保存安定性を向上させ、かつ適当な粘度を付与することができる。
有機溶媒としては、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒などが挙げられる。有機溶媒としては、大気圧下(1,013hPa)での沸点が50〜250℃の範囲内であり、各成分を均一に分散させることのできる有機溶媒を用いることが、好ましい。
このような有機溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、モノアルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒、含硫黄系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0035】
有機溶媒の中では、組成物の保存安定性をより向上させる観点から、モノアルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、およびケトン系溶媒が好ましい。これらの溶媒の好ましい化合物の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メタノール、エタノール、2−ブタノールなどが挙げられる。これらの好ましい化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0036】
本発明において、有機溶媒の種類は、好ましくは、組成物の塗布方法を考慮して選択される。例えば、均一な厚さを有する硬化膜(組成物の硬化体)を容易に得るために、スピンコート法を用いる場合、有機溶媒としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;乳酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのジエチレングリコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトンなどのケトン類;γ−ブチロラクトンなどを使用することが好ましい。
特に好ましい有機溶媒は、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどである。
【0037】
(C)成分(有機溶媒)の配合量は、当該有機溶媒を除く組成物の成分の全量100質量部に対して、好ましくは50〜20,000質量部、より好ましくは100〜1,000質量部である。前記の好ましい範囲内であると、組成物の保存安定性を向上させ、かつ適当な粘度を付与することができ、均一な厚さを有する高屈折率の硬化膜を容易に形成することができる。
(C)成分の添加方法は、特に制限されるものではないが、例えば、(A)成分を製造する際に添加してもよいし、(B)成分を含む分散液を調製する際に添加してもよいし、(A)成分と(B)成分を混合する際に添加してもよい。
【0038】
[(D)成分;分散剤]
本発明の粒子含有層形成用組成物は、金属酸化物粒子の分散性を向上させるために、各種の分散剤を含むことができる。
分散剤としては、例えば、アルミニウム化合物を用いることができる。アルミニウム化合物の例としては、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムβ−ジケトナート錯体などを挙げることができる。具体的には、トリエトキシアルミニウム、トリ(n−プロポキシ)アルミニウム、トリ(i−プロポキシ)アルミニウム、トリ(n−ブトキシ)アルミニ
ウム、トリ(sec−ブトキシ)アルミニウムなどのアルコキシド化合物、アルミニウムトリス(メチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(アセトアセトナト)アルミニウム、アルミニウムモノアセチルアセトナトビス(メチルアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトナトビス(エチルアセテート)などのβ−ジケトナート錯体などを挙げることができる。
アルミニウム化合物の市販品としては、AIPD、PADM、AMD、ASBD、アルミニウムエトキサイド、ALCH、ALCH−50F、ALCH−75、ALCH−TR、ALCH−TR−20、アルミキレートM、アルミキレートD、アルミキレートA(W)、表面処理剤OL−1000、アルゴマー、アルゴマー800AF、アルゴマー1000SF(以上、川研ファインケミカル社製)などを使用することができる。
分散剤としては、ノニオン型分散剤を用いることもできる。ノニオン型分散剤を用いることによって、分散性を高めることができる。本発明に使用するノニオン型分散剤は、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキル構造を有するリン酸エステル系ノニオン型分散剤である。
分散剤の配合量は、特に限定されないが、分散剤を含む場合には、有機溶媒を除く組成物の成分全量100質量%に対して、例えば0.1〜5質量%である。
【0039】
[(E)成分;分散助剤]
本発明の粒子含有層形成用組成物は、分散性を高めるために、さらに分散助剤を含むことができる。分散助剤としては、アセチルアセトン、N,N−ジメチルアセトアセトアミドなどから選択される1種以上を好適に使用することができる。
分散助剤の配合量は、特に限定されないが、分散助剤を含む場合には、有機溶媒を除く組成物の成分全量100質量%に対して、例えば0.1〜5質量%である。
【0040】
[(F)成分;界面活性剤]
本発明の粒子含有層形成用組成物をスピンコートによって基材などに塗布する場合には、均一な厚さを有する塗膜を得る観点から、界面活性剤を配合することが好ましい。本発明で用いられる界面活性剤としては、シリコーン系の界面活性剤、フッ素系の界面活性剤などが挙げられる。中でも、シリコーン系の界面活性剤が好ましい。
【0041】
シリコーン系の界面活性剤の例としては、例えば、SH28PA(東レダウコーニング社製、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体)、ペインタッド19、54(東レダウコーニング社製、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体)、FM0411(サイラプレーン、チッソ社製)、SF8428(東レダウコーニング社製、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(側鎖OH含有))、BYKUV3510(ビックケミー・ジャパン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)、DC57(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)、DC190(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)、サイラプレーンFM−4411、FM−4421、FM−4425、FM−7711、FM−7721、FM−7725、FM−0411、FM−0421、FM−0425、FM−DA11、FM−DA21、FM−DA26、FM0711、FM0721、FM−0725、TM−0701、TM−0701T(チッソ社製)、UV3500、UV3510、UV3530(ビックケミー・ジャパン社製)、BY16−004、SF8428(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、VPS−1001(和光純薬製)などが挙げられる。特に好ましい例としては、サイラプレーンFM−7711、FM−7721、FM−7725、FM−0411、FM−0421、FM−0425、FM0711、FM0721、FM−0725、VPS−1001などを挙げることができる。また、エチレン性不飽和基を有するシリコーン化合物の市販品としては、例えば、TegoRad2300、2200N(テゴ・ケミー社製)などを挙げることができる。
【0042】
フッ素系の界面活性剤の例として、例えば、メガファックF−114、F410、F411、F450、F493、F494、F443、F444、F445、F446、F470、F471、F472SF、F474、F475、R30、F477、F478、F479、F480SF、F482、F483、F484、F486、F487、F172D、F178K、F178RM、ESM−1、MCF350SF、BL20、R08、R61、R90(DIC社製)が挙げられる。
【0043】
(F)成分の配合割合は、有機溶媒を除く組成物の成分全量100質量%に対して、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.5〜3質量%である。該量が10質量%を超えると、組成物の硬化体の屈折率が低下するおそれがある。
【0044】
[(G)成分;脱水剤]
本発明の粒子含有層形成用組成物は、脱水剤を含むこともできる。脱水剤を添加することによって、組成物の放射線硬化反応を促進させるとともに、組成物の保存安定性をより向上させることができる。
本発明で使用される脱水剤は、化学反応によって水を水以外の物質に変換する化合物、または、物理吸着または包接によって、水を放射線硬化性および保存安定性に影響を与えない物質に変換する化合物と定義される。脱水剤を含有することによって、組成物の耐光性や耐熱性を損なうことなく、保存安定性と放射線硬化性の相反する2つの特性を向上させることができる。この理由として、外部から侵入してくる水を、脱水剤が有効に吸収することによって、組成物の保存安定性が向上する一方、放射線硬化反応である縮合反応においては、生成した水を脱水剤が順次吸収することによって、組成物の放射線硬化性が向上することによると考えられる。
【0045】
[(H)成分;酸発生剤]
本発明の粒子含有層形成用組成物は、酸発生剤を含むこともできる。酸発生剤とは光照射または加熱によって酸を発生することのできる化合物と定義される。
ここで光照射とは、例えば赤外線、可視光線、紫外線、及びX線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線の照射を意味する。
また、光照射によって酸を発生することのできる光酸発生剤としては、一般式(3)で表される構造を有するオニウム塩(第1群の化合物)や、一般式(4)で表される構造を有するスルフォン酸誘導体(第2群の化合物)を挙げることができる。
【0046】
[RW]+m[MZm+n−m (3)
[一般式(3)中、カチオンはオニウムイオンであり、WはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Clまたは−N≡Nであり、R、R、RおよびRは同一または異なる有機基であり、a、b、cおよびdはそれぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d)−mはWの価数に等しい。また、Mはハロゲン化物錯体[MXm+n]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、例えばB、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、またはCoである。Zは、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン原子またはアリール基であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。]
【0047】
−〔S(=O)−R (4)
[一般式(4)中、Qは1価もしくは2価の有機基、Rは炭素数1〜12の1価の有機基、添え字sは0又は1、添え字tは1又は2である。]
【0048】
まず、第1群の化合物であるオニウム塩は、光を受けることにより酸性活性物質を放出することができる化合物である。このような第1群の化合物のうち、より有効なオニウム塩は芳香族オニウム塩であり、特に好ましくは下記一般式(5)で表されるジアリールヨードニウム塩である。
[R−Ar−I−Ar−R][Y] (5)
[一般式(5)中、RおよびRは、それぞれ1価の有機基であり、同一でも異なっていてもよく、RおよびRの少なくとも一方は炭素数が4以上のアルキル基を有しており、ArおよびArはそれぞれ芳香族基であり、同一でも異なっていてもよく、Yは1価の陰イオンであり、周期律表3族、5族のフッ化物陰イオンもしくは、ClO、CF−SOから選ばれる陰イオンである。]
【0049】
また、第2群の化合物としての一般式(4)で表されるスルフォン酸誘導体の例を示すと、ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類、1−オキシ−2−ヒドロキシ−3−プロピルアルコールのスルホネート類、ピロガロールトリスルホネート類、ベンジルスルホネート類を挙げることができる。また、一般式(4)で表されるスルフォン酸誘導体のうち、より好ましくはイミドスルホネート類であり、さらに好ましくはイミドスルホネートのうち、トリフルオロメチルスルホネート誘導体である。
【0050】
光酸発生剤の添加量(含有割合)について説明する。光酸発生剤の添加量は特に制限されるものではないが、粒子含有層形成用組成物の固形分全量を100質量部として、通常15質量部以内の値とするのが好ましい。該添加量が15質量部を超えると、得られる硬化物の耐光性や耐熱性が低下する傾向がある。
【0051】
[(I)成分;その他の添加剤]
本発明の粒子含有層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記以外の各種の添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、上記成分以外の硬化性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0052】
[粒子含有層形成用組成物の製造方法]
本発明の粒子含有層形成用組成物は、上記成分(A)〜(C)、および必要に応じて配合される他の任意成分を混合することによって調製される。通常、成分(A)(シロキサン系重合体等)と成分(B)(金属酸化物粒子)ならびに任意的に添加されるその他の成分を、成分(C)(有機溶媒)中で所定の割合で混合することによって、粒子含有層形成用組成物を調製することができる。
【0053】
[硬化膜]
本発明の粒子含有層形成用組成物の硬化体である硬化膜の屈折率は、好ましくは1.6以上である。該屈折率が1.6以上であると、発光装置の発光効率が高くなる。硬化膜の膜厚は、特に限定されないが、発光素子の種類により、例えば50nm〜100μmの範囲内で適宜定めることができる。
【0054】
本発明の発光素子は、粒子含有層18を備えているので、発光層15で生成した光が第2電極17を通過して空気中に進入する時に、補強干渉の原理によって、発光素子の外部に取り出される効率を高めることができ、発光素子の発光効率の改善に大きく寄与することができる。
【0055】
図1中、粒子含有層18は、第2電極17の一面に接触して形成されたものとして図示されているが、粒子含有層18と第2電極17の間には、必要によって多様な層がさらに備わりうる。一方、図1には図示されていないが、粒子含有層18の上部には、発光素子10の密封のための公知の構造の密封層がさらに備わりうるなど、多様な変形例が可能である。
【0056】
図2中、発光素子20は、本発明の発光素子の実施形態例2である。
発光素子20は、基板21、粒子含有層28、第1電極23、発光層25及び第2電極27が順に積層された構造を有する。第1電極23は透過型電極であって、発光層25で生成された光は、第1電極23および粒子含有層28を通過して、発光素子20の外部に取り出されうる。粒子含有層28は、第1電極23の、発光層が設けられた面とは反対側の面に形成されている。発光素子20を構成する各層についての詳細な説明は、前述と同様である。前記シラン化合物等が縮合してなる重合体からなる粒子含有層28は、高い屈折率を有し、発光層25で生成した光は、補強干渉の原理によって効果的に外部に取り出されうるので、改善された光効率特性を有することができる。
【0057】
図3中、発光素子30は、本発明の発光素子の実施形態例3である。
発光素子30は、基板31、粒子含有層38、第1電極33、発光層35、第2電極37及び粒子含有層39が順に積層された構造を有する。第1電極33及び第2電極37は透過型電極であり、発光層35で生成した光は、第1電極33及び第2電極37を通過した後、それぞれ、粒子含有層38及び粒子含有層39を通過して、発光素子30の外部に取り出されうる。発光素子30を構成する各層についての詳細な説明は、前述と同様である。前記シラン化合物等が縮合してなる重合体からなる粒子含有層38及び粒子含有層39は、高い屈折率を有し、発光層35で生成された光は、補強干渉の原理によって効果的に外部に取り出されうるので、改善された光効率特性を有することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
〔(A)成分の調製〕
〔合成例1〕
撹拌機、還流管付のフラスコに、メチルトリメトキシシラン(45.7g)、テトラエトキシシラン(12.33g)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(19.56g)、およびシュウ酸(0.03g)を添加、攪拌して、溶液を得た後、この溶液を加熱して液温を60℃にした。次いで、蒸留水(22.38g)を滴下し、滴下終了後、溶液を100℃にて3時間攪拌した。その後、減圧下で濃縮を行い、最終的に固形分を30質量%に調整した(A)成分(プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)を得た。これを「A−1」とする。
【0059】
〔合成例2〕
撹拌機、還流管付のフラスコに、メチルトリメトキシシラン(17.89g)、フェニルトリメトキシシラン(35.80g)、テトラエトキシシラン(3.42g)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(24.84g)、およびシュウ酸(0.03g)を添加、攪拌して、溶液を得た後、この溶液を加熱して液温を60℃にした。次いで、蒸留水(18.02g)を滴下し、滴下終了後、溶液を100℃にて3時間攪拌した。その後、減圧下で濃縮を行い、最終的に固形分を30質量%に調整した(A)成分(プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)を得た。これを「A−2」とする。
「A−1」及び「A−2」の成分組成等を表1に示す。
【0060】
「A−3」としては、東亞合成社製のOX−SQ ME−20を用いた。
「A−4」としては、新中村化学工業社製のテトラメチロールメタントリアクリレートを用いた。
【0061】
【表1】

【0062】
[組成物の調製1]
(B)成分として酸化ジルコニウム(一次平均粒子径:15nm)を21.0g、「A−1」を29.7g(固形分8.9g)、有機溶媒の総重量が70gになるような量のプロピレングリコールモノメチルエーテルを容器に入れ、これに粒径0.1mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)350gを加えて、ビーズミルにより、1500rpm、10時間攪拌して、酸化ジルコニウムの微粒子((B)成分)を分散させた。
得られた酸化ジルコニウムの微粒子の分散液に、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体を0.10g加え、組成物「J−1」を得た。
また、表2に示す成分を用いたこと以外は組成物「J−1」と同様にして、組成物「J−2」、「J−4」、「J−6」を調製した。成分組成等を表2に示す。
【0063】
[組成物の調製2]
(B)成分として酸化ジルコニウム微粒子(数平均一次粒子径:15nm)を15.9g、PLADD ED−151(化合物名:ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)を1.9g、トリ(sec−ブトキシ)アルミニウム2.2g、アセチルアセトン0.9g、2−ブタノール2.3g、メチルエチルケトン54.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテル15.7gを容器に入れ、これに粒径0.1mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)300gを加えて、ビーズミルにより、1500rpm、10時間攪拌して、酸化ジルコニウムの微粒子((B)成分)を分散させた。
得られた酸化ジルコニウムの微粒子を含む分散液77.5gに、「A−1」を22.4g(固形分6.7g)、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体を0.1g添加し、組成物「J−3」を得た。成分組成等を表2に示す。
【0064】
[組成物の調製3]
(B)成分として酸化ジルコニウム微粒子(数平均一次粒子径:15nm)を15.91g、PLADD ED−151を1.91g、トリ(sec−ブトキシ)アルミニウム2.20g、アセチルアセトン0.85g、2−ブタノール2.30g、メチルエチルケトン70.00gを容器に入れ、これに粒径0.1mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)350gを加えて、ビーズミルにより、1500rpm、10時間攪拌して酸化ジルコニウム微粒子(B)を分散させた。
得られた酸化ジルコニウムの微粒子の分散液93.17gに、「A−4」を5.73g、光重合開始剤としてIrgacure184(BASF社製)を1.0g、ジメチルポリシロキサンーポリオキシアルキレン共重合体0.1gを添加し、組成物「J−5」を得た。成分組成等を表2に示す。
【0065】
[組成物の調製4]
窒素気流下で、テトラ−n−ブトキシチタン42.54g(125ミリモル)とジエチレングリコール26.53g(250ミリモル)とを、溶媒(n−ブタノール、60mL)に添加して、混合した。これと並行して、イオン交換水4.5g(250ミリモル)とヒドラジン塩酸塩0.085g(1.25ミリモル)とを、溶媒(n−ブタノール、100mL)に添加して、混合した。得られた二種類の混合溶液を合わせ、25℃に調整したインキュベータ内で2時間攪拌混合して、組成物「J−7」を得た。
【0066】
【表2】

【0067】
[実施例1〜4、比較例1〜3]
前記の組成物「J−1」〜「J−7」の各々について、以下のように評価した。
<組成物の特性の評価>
(1)分散粒径
得られた組成物中の微粒子について、25℃での体積平均粒径を堀場製作所社製の動的光散乱式粒径分布測定装置により測定した。体積平均粒径が50nm未満のものを「○」、50nm以上で100nm未満のものを「△」、100nm以上のものを「×」とした。結果を表3に示す。
【0068】
<硬化膜の作製>
・組成物「J−1」〜「J−5」、「J−7」
4インチ径の溶融石英またはシリコン基板上に、組成物をディスペンスし、厚さ約1μmになるようにスピンコート塗布し、120℃で1分間、及び150℃で60分間加熱して、硬化膜(膜厚:1μm)を作製した。
・組成物「J−6」
4インチ径の溶融石英またはシリコン基板上に、用組成物をディスペンスし、厚さ約1μmになるようにスピンコート塗布し、120℃で1分間加熱した。その後、コンタクトマスクアライナーを用いて、大気中で露光量が2000mJ/cmとなるように紫外線を照射し、次いで、150℃で60分間加熱して、硬化膜を作製した。
【0069】
<硬化膜の特性評価>
前記の硬化膜について、下記の特性を測定し評価した。結果を表3に示す。
(2)硬化性
前記の硬化膜の表面を指で触り、べとつきがないものを「○」、べとつきがあるものを「×」とした。
(3)クラック耐性
前記の硬化膜の外観を目視で観察し、クラックのないものを「○」、クラックがあるものを「×」とした。
【0070】
(4)透明性
日本分光社製の分光光度計を使用して、前記の硬化膜の波長400nmにおける透過率(%)を測定した。透過率が90%以上の場合を「○」、90%未満の場合を「×」とした。
(5)屈折率
メトリコン社製のプリズムカップラーを使用して、23℃、波長633nmにおける屈折率を測定した。屈折率が1.6以上の場合を「○」、1.6未満の場合を「×」とした。
【0071】
(6)耐熱性
オーブンを用いて、前記の硬化膜を温度300℃で5分間加熱処理した。処理前後の硬化膜の透過率の低下(透過率の減少の割合)が10%未満の場合を「○」、10%以上の場合を「×」とした。
【0072】
【表3】

【符号の説明】
【0073】
10、20、30 発光素子
11、21、31 基板
13、23、33 第1電極
15、25、35 発光層
17、27、37 第2電極
18、28、38、39 粒子含有層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と第1電極と発光層と第2電極と粒子含有層とを備え、
前記基板と前記第1電極と前記発光層と前記第2電極とがこの順に積層されてなり、
前記粒子含有層は、前記第1電極の、前記発光層が形成された側とは反対側、および、前記第2電極の、前記発光層が形成された側とは反対側の少なくともいずれか一方に形成されており、
前記粒子含有層が、下記(A)成分および(B)成分を含有する粒子含有層形成用組成物の硬化物であることを特徴とする発光素子。
(A)シロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体
(B)金属酸化物粒子
【請求項2】
発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記粒子含有層を前記基板と前記第1電極との間に備えてなる、請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記重合体が、下記の一般式(1)で示される化合物および下記の一般式(2)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が縮合してなる重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光素子。
(RSi(X)4−p・・・(1)
[一般式(1)中、Rは炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。]
(RTi(X)4−p・・・(2)
(一般式(2)中、Rは炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。)
【請求項5】
前記(B)成分の配合量が、前記(A)成分100質量部に対して、50〜2,000質量部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記(B)成分は、数平均1次粒子径が1〜100nmの微粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光素子の粒子含有層を形成するための組成物であって、下記(A)成分および(B)成分を含有することを特徴とする粒子含有層形成用組成物。
(A)シロキサン系重合体、チタノキサン系重合体およびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体
(B)金属酸化物粒子

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−22997(P2012−22997A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162317(P2010−162317)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】