説明

発泡樹脂成形品の成形方法

【課題】材料供給時、発泡反応時に型クリアランスを調整する成形工法を使用する発泡樹脂成形品の成形方法であって、発泡樹脂成形品における縦壁部の成形精度を高める。
【解決手段】バックドアトリム(発泡樹脂成形品)10は、製品面部11の周縁の少なくとも一部に段付き縦壁部12が形成されており、この段付き縦壁部12は、製品面側縦壁部13とパネル側縦壁部15とが段部14を介して一体化しており、段部14の内面に型保持用リブ16が設けられているとともに、パネル側縦壁部15の表面に深絞模様17が形成されていることで、可動側金型30の後退操作時、型保持用リブ16が固定側金型40に対して保持されるとともに、可動側金型30の型面にパネル側縦壁部15の製品表面が吸着されるため、段付き縦壁部12の成形精度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡樹脂材料の射出充填工程と発泡成形工程とで成形金型の型クリアランスを可変させる成形工法を採用して発泡樹脂成形品を成形する発泡樹脂成形品の成形方法に係り、特に、製品面部の周縁の少なくとも一部に段付き縦壁部を備えた発泡樹脂成形品において、段付き縦壁部端末部分の成形精度を高めることで、車体パネル等の相手部品に対する合わせ精度を向上させた発泡樹脂成形品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10はハッチバック型車両におけるバックドアの室内面側に装着するバックドアトリム1を示す斜視図であり、バックドアトリム1には、軽量で耐衝撃性に優れた発泡樹脂成形品が採用されている。そして、バックドアトリム1は、車室内側に臨むほぼフラットな製品面部2と、その周縁(両側縁及び下側縁)に一体化されている段付き縦壁部3とから構成されており、この段付き縦壁部3は、製品周縁部の剛性を強化するとともに、製品に質感を与えている。上記段付き縦壁部3は、製品面部2と連接する製品面側縦壁部3aと図示しない車体パネル側に位置するパネル側縦壁部3bが段部3cを介して一体化された構成である(図11参照)。
【0003】
次いで、上記バックドアトリム1の成形に使用する成形金型4の構成について、図12を基に説明する。成形金型4は、可動側金型5と固定側金型6とから大略構成され、可動側金型5は、駆動シリンダ5aの駆動により、固定側金型6に対して型開き、型締めが行なわれる。また、可動側金型5と固定側金型6との間に画成されるキャビティC内に発泡樹脂材料Mを供給する供給系として、射出機6aが固定側金型6に連結されている。
【0004】
従って、バックドアトリム1の成形方法としては、まず、射出機6aから発泡樹脂材料Mが固定側金型6に設けられたホットランナ6b、バルブゲート6cを通じてキャビティC内に射出充填される。そして、発泡樹脂材料Mの射出充填工程が完了すれば、図13に示すように、可動側金型5を微小ストローク後退操作して、型クリアランスを広げた後、発泡樹脂材料Mの発泡反応を行なわせることで、バックドアトリム1の成形が完了する。尚、発泡樹脂材料Mの射出充填工程と型クリアランスを確保した発泡成形工程の二つの工程を採用した発泡樹脂成形品の従来例としては、特許文献1に詳細に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−120252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来のバックドアトリム(発泡樹脂成形品)の成形方法においては、可動側金型5と固定側金型6との間の型クリアランスを調整することで精度の良い成形を行なっている。すなわち、発泡樹脂材料Mの射出充填時には型クリアランスを小さくして、発泡反応を抑えた状態で発泡樹脂材料MをキャビティC内に迅速に供給するとともに、発泡反応時には、型クリアランスを大きく設定することで、発泡スペースを確保でき、最終製品形状にバックドアトリム1を精度良く成形することができる。
【0007】
また、特に、バックドアトリム1の製品面部2の周縁に設定した段付き縦壁部3の成形においては、図14(a)に示すように、可動側金型5の後退操作時には、発泡前の半成形品Pが固定側金型6と接触して、半成形品Pと可動側金型5との間に発泡スペースSが確保されることが理想である。そうした場合、図14(b)に示す発泡成形時には、固定側金型6の形状に追随して、精度の良い成形が可能となり、車体パネル等の相手部品に対する合わせ精度を高めることができる。
【0008】
しかしながら、現実問題として、実際の成形においては、可動側金型5の後退操作時には、図15(a)に示すように、半成形品Pが可動側金型5に食いつき、固定側金型6と半成形品Pとの間にも発泡スペースSが形成され、その結果、発泡成形時には、図15(b)に示すように、固定側金型6に対向する面の形状が不安定となり、車体パネル等の相手部品に対する合わせ精度を悪化させるとともに、外観性能を低下させるという問題点が指摘されているのが実情である。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、相互に型開き、型締め可能な可動側金型、固定側金型からなる成形金型を使用し、発泡樹脂材料の射出充填工程と発泡成形工程とで金型の型クリアランスを調整するようにした発泡樹脂成形品の成形方法であって、特に、製品面部の周縁の少なくとも一部に段付き縦壁部を備えた発泡樹脂成形品であって、段付き縦壁部の端末部分の精度の良い成形を可能にすることで、車体パネル等の相手部品に対する合わせ精度を著しく高めた発泡樹脂成形品の成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明は、可動側金型と固定側金型との間で画成されるキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填した後、可動側金型を後退操作することにより、発泡スペースを確保して、製品面部とその周縁の少なくとも一部に連接する段付き縦壁部とを有する発泡樹脂成形品を成形する発泡樹脂成形品の成形方法において、前記発泡樹脂成形品の段付き縦壁部は、製品面側縦壁部とパネル側縦壁部が段部を介して一体化して構成されており、上記段部の内面に型保持用リブが形成されるとともに、パネル側縦壁部の表面には、深絞模様が設定されていることにより、可動側金型の後退操作時、型保持用リブが固定側金型に保持されるとともに、可動側金型に対してパネル側縦壁部の表面に設けた深絞模様の吸着作用により、可動側金型に追従することで発泡樹脂成形品における段付き縦壁部の精度の良い形状出しを行なうようにしたことを特徴とする。
【0011】
ここで、成形金型における可動側金型は、固定側金型に対して型開き、型締めできるように、シリンダ、あるいはプレスラム等により所定ストローク可動できるとともに、特に、発泡樹脂材料の射出充填工程における可動側金型と固定側金型との狭い型クリアランスを確保する第1の金型位置と、第1の金型位置から所定ストローク可動側金型を後退させて発泡スペースを確保する第2の金型位置とが位置決めできるように、可動側金型のストロークが設定される。
【0012】
一方、固定側金型には、射出機から供給される発泡樹脂材料をキャビティ内に導入するために、ホットランナ、バルブゲート等の樹脂通路が設けられている。そして、本発明に係る発泡樹脂成形品としては、車両のフロント側、リヤ側に設けられるドアパネル及びバックドアパネルのパネル室内面側に装着される各種ドアトリム、リヤサイドトリム、ラゲージサイドトリム等、車両の各パネル室内面側に装着される内装部品に適用することができる。
【0013】
また、発泡樹脂成形品の造形状の特徴としては、車室内側に臨み、大きな占有面積をもつほぼフラットな製品面部とこの製品面部の両側縁及び下側縁等、周縁の少なくとも一部に連接形成される段付き縦壁部とから構成されている。この段付き縦壁部としては、製品面部と連接する製品面側縦壁部と、パネル側に位置するパネル側縦壁部とが段部を介して一体化された構成である。
【0014】
特に本発明においては、この段部の内面に型保持用リブが所定ピッチ間隔で多数設けられているとともに、パネル側縦壁部の表面に深絞模様が設定されていることが特徴である。この深絞模様については、パネル側縦壁部の表面のみに限定しても良いが、製品面側縦壁部を含む製品面部の表面全面に亘って設定しても良い。その場合は、パネル側縦壁部に設ける深絞模様の絞深さを製品面部の絞模様の絞深さに比べ深く設ける必要がある。また、パネル側縦壁部の表面に設けられる深絞模様としては、100μm以上のものが好ましい。
【0015】
そして、本発明に係る発泡樹脂成形品の成形方法によれば、発泡樹脂成形品は、製品面部とその周縁に連接する段付き縦壁部とを備えており、特に、段付き縦壁部における段部の内面には型保持用リブが形成されている一方、パネル側縦壁部の外表面には深絞模様が設定されているため、可動側金型の後退操作時には、段部に設けた型保持用リブにより発泡樹脂成形品は固定側金型に有効に保持されるとともに、パネル側縦壁部の外表面は深絞模様の吸着作用により可動側金型の型面に追従することから、製品内の発泡スペースを予め広げておくことになり、発泡の力で押し広げる部分が少なくなるため、表面側の形状が安定する。すなわち、可動側金型の後退操作時において、発泡樹脂成形品は可動側金型並びに固定側金型に適切に保持され、型面形状に即した理想的な形状に発泡樹脂成形品を成形することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した通り、本発明に係る発泡樹脂成形品の成形方法によれば、製品面部の周縁の少なくとも一部に連接する段付き縦壁部における段部の内面に型保持用リブが設けられているとともに、パネル側縦壁部の外表面に深絞模様が設定されているため、可動側金型と固定側金型とを型締めした後、キャビティ内に発泡樹脂材料を充填し、その後発泡スペースを確保するために可動側金型を後退操作する際、段部の内面に設けられた型保持用リブにより発泡樹脂成形品は固定側金型に有効に保持されるとともに、パネル側縦壁部の外表面に設けた深絞模様により、可動側金型の型面に発泡樹脂成形品が追随するため、段付き縦壁部の端末部分における精度の良い成形が可能になることから、車体パネル等の相手部品に対して合わせ精度を高めることができるとともに、外観意匠性を向上させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明方法を適用して成形したバックドアトリムを示す斜視図である。
【図2】図1に示すバックドアトリムを裏面側から見た斜視図である。
【図3】図1に示すバックドアトリムの段付き縦壁部を裏面側から見た要部斜視図である。
【図4】図1に示すバックドアトリムにおける段付き縦壁部の構成を示す断面図である。
【図5】本発明方法に使用する成形金型の構成を示す概要図である。
【図6】本発明方法における発泡樹脂材料の射出充填工程を示す説明図である。
【図7】本発明方法における可動側金型の後退操作時の状態を示す説明図である。
【図8】図7に示す可動側金型の後退操作時における段付き縦壁部の状態を示す説明図である。
【図9】本発明方法における発泡樹脂成形品の発泡成形工程を示す説明図である。
【図10】従来のバックドアトリムを示す斜視図である。
【図11】従来のバックドアトリムの構成を示す断面図である。
【図12】従来のバックドアトリムを成形する成形金型の構成を示す説明図である。
【図13】従来のバックドアトリムの成形方法における可動側金型の後退操作時の状態を示す説明図である。
【図14】発泡樹脂成形品の理想的な成形形態を示す説明図である。
【図15】従来の発泡樹脂成形品の成形方法の不具合点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る発泡樹脂成形品の成形方法の実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0019】
図1乃至図9は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明方法を適用して成形したバックドアトリムを製品面から見た斜視図、図2は同バックドアトリムを裏面側から見た斜視図、図3はバックドアトリムの段付き縦壁部を裏面側から見た斜視図、図4はバックドアトリムの段付き縦壁部の構成を示す断面図、図5は同バックドアトリムの成形に使用する成形金型の概略構成を示す説明図、図6乃至図9は同バックドアトリムの成形方法の各工程を示す説明図である。
【0020】
図1乃至図4において、バックドアトリム10の構成について説明する。まず、このバックドアトリム10は、ハッチバック型車両等のバックドアの室内面側に取り付けられる内装部品であり、車室内スペースに臨み、ほぼフラットで大きな占有面積を備える製品面部11と、その両側縁及び下側縁に沿って連接する段付き縦壁部12とから大略構成されている。
【0021】
更に、バックドアトリム10は、軽量で適度な剛性を備えることが望ましいことから、発泡樹脂成形品が使用されており、この発泡樹脂成形品は、合成樹脂中に発泡剤が混入された素材を使用している。例えば、使用できる合成樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択される。尚、合成樹脂に対して混入される発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。更に、成形方法は後述するが射出成形工法が採用されている。
【0022】
次いで、製品面部11の周縁に連接する段付き縦壁部12の構成について更に詳細に説明する。上記段付き縦壁部12は、製品面部11と連接し、ほぼ90°パネル側に向けて折曲状に延びる製品面側縦壁部13と、この製品面側縦壁部13からほぼ90°外方に向けてフランジ状に延びる段部14と、この段部14を介して製品面側縦壁部13と略平行状にパネル側に延びるパネル側縦壁部15とから構成されている。このように、段付き縦壁部12は、製品面側縦壁部13と、パネル側縦壁部15が段部14を介して一体化された構成であり、バックドアトリム10に質感を付与するとともに、周縁部分の剛性を強化する機能を備えている。
【0023】
そして、本発明の特徴は、この段付き縦壁部12の特に端末部分の精度の良い成形を可能にすることにある。そのために、段部14の内面に図3,図4に示すように、40mmピッチ間隔で型保持用リブ16が設定されているとともに、パネル側縦壁部15の表面に深絞模様17が設けられている。この型保持用リブ16並びに深絞模様17の作用については後述する。
【0024】
尚、深絞模様17については、パネル側縦壁部15の表面に限定しても良いが、製品面側縦壁部13を含む製品面部11の表面全面に亘って設定しても良い。その場合は、パネル側縦壁部15に設ける深絞模様17の絞深さを製品面部11の絞模様の絞深さに比べ深く設ける必要がある。また、バックドアトリム10には、図示しない車体パネルに取り付けるためのクリップを保持するクリップ取付座18が所定箇所に突設形成されているとともに、バックドアトリム10の剛性を強化する補強リブ19が適宜箇所に設けられている。
【0025】
更に、段付き縦壁部12において、図4に示すように、段部14の内面に形成される型保持用リブ16のリブ高さは特に限定しないが、2〜4mm程度に設定されている。また、パネル側縦壁部15の型抜きテーパー角度αは1〜10°の間に設定されている。型抜きテーパー角度αについては、発泡樹脂成形品であるバックドアトリム10が成形後に収縮するメカニズムをもつことを見越して、小さく設定することができる。尚、バックドアトリム10の内部構造は図4では示されていないが、図9で後述するように、スキン層10a内に発泡層10bを備えた二層構造となっている。
【0026】
次いで、上記バックドアトリム10の成形に使用する成形金型20の構成及び成形金型20を使用するバックドアトリム10の成形方法について詳細に説明する。まず、成形金型20は、図5に示すように、可動側金型30と固定側金型40と射出機50とから大略構成されている。更に詳しくは、上記可動側金型30はプレスラム31の動作により、型開き位置、型締め位置に加えて、発泡成形位置の三つのポジションをとるように駆動される。
【0027】
一方、固定側金型40は、射出機50から供給される発泡樹脂材料Mの樹脂通路となるホットランナ41、バルブゲート42を通じて型面に発泡樹脂材料Mが供給されるとともに、成形後の発泡樹脂成形品であるバックドアトリム10を突き出すためのエジェクタピン43が内装されている。
【0028】
このように、可動側金型30と固定側金型40との間で画成されるキャビティC形状に沿ってバックドアトリム10が成形されるが、バックドアトリム10は、製品面部11の周縁に段付き縦壁部12が一体化されているため、キャビティC形状についても、製品面部11に対応する一般部用キャビティC1と段付き縦壁部12に対応する縦壁部用キャビティC2とが連通形成されている。
【0029】
更に、本発明方法においては、特に、バックドアトリム10における段付き縦壁部12の段部14の内面に型保持用リブ16を形成するために、固定側金型40にリブ形成用溝部44が設けられているとともに、パネル側縦壁部15の表面に深絞模様17を形成するために、可動側金型30についても、深絞模様32が刻設されている。
【0030】
次いで、図6乃至図9に基づいて、上記バックドアトリム10における段付き縦壁部12の特に端末部分を精度良く成形できる作用をもつ本発明方法について逐次説明する。まず、プレスラム31により可動側金型30は固定側金型40に対して型締めされ、成形金型20が型締め位置にある時、射出機50からホットランナ41、バルブゲート42を通じて一般部用キャビティC1及び縦壁部用キャビティC2内に発泡樹脂材料Mが射出充填される(図6参照)。
【0031】
この時、図示はしないが、外部からキャビティC1,C2内にエアを強制導入し、発泡樹脂材料Mが発泡反応を行なわないようにキャビティC1,C2内に発泡樹脂材料Mを充填するカウンタープレッシャー工法を採用することもできる。
【0032】
次いで、発泡樹脂材料Mの射出充填工程が完了すれば、図7に示すように、可動側金型30が型開き方向に微小ストローク後退動作を行なう。この可動側金型30の後退動作では、一般部用キャビティC1、縦壁部用キャビティC2内には、未発泡状態の半成形品Pが収容されており、可動側金型30の後退動作により発泡スペースSが確保される。この可動側金型30の後退動作時には、図8に示すように、段部14の内面に設けられた型保持用リブ16が固定側金型40のリブ形成用溝部44内に嵌まり込んでいるため、半成形品Pの特に端末部分は固定側金型40の型面に有効に保持されているとともに、パネル側縦壁部15の表面に設けられている深絞模様17の係着作用により、可動側金型30の型面にパネル側縦壁部15の表面部分が追随することになる。すなわち、製品内の発泡スペースを予め広げておくことになり、発泡の力で押し広げる部分が少なくなるので、表面側の形状が安定することにより、段付き縦壁部12の成形は、図14(a),(b)に示す理想的な形態で行なわれることになる。
【0033】
その後、図9に示すように、未発泡状態の半成形品Pは発泡反応が誘起され、型クリアランスを大きく設定した発泡スペースS内で所望の厚みを備えるようにスキン層10a内に発泡層10bを備えたバックドアトリム10の発泡成形が完了する。そして、この発泡反応は、特に段付き縦壁部12において可動側金型30と固定側金型40の型面形状に即した理想的な成形が行なわれるため、端末部分の外観見栄えを良好に維持し、かつ車体パネル等の相手部品に対する合わせ精度を良好に維持することができるという効果がある。尚、本願発明のように、発泡成形の場合には、冷却時に製品がミクロ単位ではあるが収縮して型から離れるために、型抜きテーパー角度αを例えば1°のように小さく設定することも可能となり、製品としての開き気味感も解消できるという付随的な利点もある。
【0034】
このように、本発明によれば、バックドアトリム10周縁の段付き縦壁部12の形状を精度良く成形でき、周縁部分の外観意匠性、並びに隣接部品に対する合わせ精度を良好に維持できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明した実施例は、発泡樹脂成形品の適用例としてバックドアに装着するバックドアトリム10に適用したが、車両のフロント側、リヤ側に設置されるドアパネルの内面に装着されるドアトリムやリヤサイドトリム、ラゲージサイドトリム等の内装部品全般に適用することができる。更に、発泡樹脂材料Mの射出充填時、キャビティC1,C2内に圧空エアを供給するカウンタープレッシャー工法を採用することもできる。
【符号の説明】
【0036】
10 バックドアトリム
11 製品面部
12 段付き縦壁部
13 製品面側縦壁部
14 段部
15 パネル側縦壁部
16 型保持用リブ
17 深絞模様
18 クリップ取付座
19 補強リブ
20 成形金型
30 可動側金型
31 プレスラム
32 深絞模様
40 固定側金型
41 ホットランナ
42 バルブゲート
43 エジェクタピン
44 リブ形成用溝部
50 射出機
C キャビティ
C1 一般部用キャビティ
C2 縦壁部用キャビティ
M 発泡樹脂材料
P 半成形品
S 発泡スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動側金型(30)と固定側金型(40)との間で画成されるキャビティ(C1,C2)内に発泡樹脂材料(M)を射出充填した後、可動側金型(30)を後退操作することにより、発泡スペース(S)を確保して、製品面部(11)とその周縁の少なくとも一部に連接する段付き縦壁部(12)とを有する発泡樹脂成形品(10)を成形する発泡樹脂成形品(10)の成形方法において、
前記発泡樹脂成形品(10)の段付き縦壁部(12)は、製品面側縦壁部(13)とパネル側縦壁部(15)が段部(14)を介して一体化して構成されており、上記段部(14)の内面に型保持用リブ(16)が形成されるとともに、パネル側縦壁部(15)の表面には、深絞模様(17)が設定されていることにより、可動側金型(30)の後退操作時、型保持用リブ(16)が固定側金型(40)に保持されるとともに、可動側金型(30)に対してパネル側縦壁部(15)の表面に設けた深絞模様(17)の吸着作用により、可動側金型(30)に追従することで発泡樹脂成形品(10)における段付き縦壁部(12)の精度の良い形状出しを行なうようにしたことを特徴とする発泡樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記発泡樹脂成形品(10)の段付き縦壁部(12)におけるパネル側縦壁部(15)の外表面には、100μm以上の深絞模様(17)が設けられているとともに、このパネル側縦壁部(15)の型抜きテーパー角度(α)が1〜10°の間に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−76266(P2012−76266A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221217(P2010−221217)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】