説明

発電機構

【課題】発電機構に有する熱電変換素子モジュール低温部の冷却を効率よく行うことを目的とする。
【解決手段】車輪と共に回転するディスクローター10と、ディスクローター10に対向するように配置されるブレーキパッド20と、ブレーキパッド20をディスクローター10に押圧するキャリパー30とを備える制動装置40と、制動装置40のディスクローター10のブレーキパッド20との摩擦摺動面に取付けられ熱を電力に変換する熱電素子モジュール50とで構成される発電機構であって、熱電素子モジュール50は、熱を受熱する受熱面51と熱を放熱する放熱面52を備え、放熱面52に放熱フィン53をディスクローター10の回転中心に対して円周上に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換素子を用いた発電機構であって、自動車などの車両が制動する際に発電を行う発電機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両が制動する際に発電を行う発電機構として、例えば、特許文献1に記載する発電機構が提案されている。この発電機構は、車軸の回転に同期して回転する回転部材(ディスクローター)と、車軸の回転に同期することなくディスクローターに押し付けられる押圧部材(ブレーキパッド)との摩擦により車軸の回転に制動をかけるブレーキシステムのうち、ディスクローターに熱電変換素子を備えた構造をしている。この熱電変換素子は、ディスクローターのブレーキパッドと干渉しない車軸側の面に取付けられており、ブレーキパッドとディスクローターとの摩擦により発電を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−269469号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に記載する発電機構は、熱電変換素子をブレーキパッドと干渉しない内周側の位置に取付ける構造となっている。この際、熱電変換素子は、高温部をディスクローターのディスクに接触する部分に取付け、低温部をホイール内部空間に面する部分とすることで、高温部と低温部との間に十分な温度差を確保している。しかし、発電機構に備える熱電変換素子の低温部は、ホイール内部空間に露出した構造であるが、露出した構造だけでは低温部を低温に保つことは困難であると考える。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、発電機構に有する熱電変換素子モジュール低温部の冷却を効率よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車輪と共に回転するディスクローターと、ディスクローターに対向するように配置されるブレーキパッドと、ブレーキパッドをディスクローターに押圧するキャリパーとを備える制動装置と、制動装置によりブレーキパッドがディスクローターに押圧された際の熱を電力に変換することのできる熱電素子モジュールとで構成される発電機構であって、熱電素子モジュールは、熱を受熱する受熱面と熱を放熱する放熱面を備え、放熱面に放熱フィンをディスクローターの回転中心に対して円周上に設けることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発電機構によれば、熱電素子モジュールの放熱面にディスクローターの回転中心を中心として円周上に放熱フィンを設けることにより、熱電素子モジュールが効率よく冷却されるため、安定して発電することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の発電機構の正面図(車両内側方向から見た図)を示す。
【図2】本発明の発電機構の側面図(車両の進行方向から見た図)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
本発明の発電機構100は、図1及び図2に示すように、車輪と共に回転するディスクローター10と、このディスクローターに対向するように配置されるブレーキパッド20と、ブレーキパッド20をディスクローター10に押圧するキャリパー30を備える制動装置40と、制動装置40のディスクローター10に取付けられ熱を電力に変換する熱電素子モジュール50と、熱電素子モジュール50で発電した電力を車両に備えるバッテリー及びその他電装部品に伝達するスリップリング60で構成されている。
【0010】
先ず、制動装置40について説明する。
制動装置40に有するディスクローター10は、図1及び図2に示すように、車輪と共に回転する円盤状の鉄であって、一枚板であるソリッドディスクローターである。このディスクローター10は、後述するブレーキパッド20との摩擦摺動面に後述する熱電素子モジュール50とスリップリング60を備える。この熱電素子モジュール50及びスリップリング60は、ディスクローターの車両内側(インナー側)又は車両外側(アウター側)、若しくはその両方に配設することが可能であるが、本実施例では、ディスクローター10のアウター側摩擦摺動面に設けることとする。また、本実施例においてディスクローター10は、一枚板のソリッドディスクローターを使用するが、ディスクが2枚以上としてその間にフィンを挟みこんで放熱に関与する表面積と通風性を増したベンチレーテッドディスクローターを使用しても良い。
【0011】
ブレーキパッド20は、後述するキャリパー30によってディスクローター10に押圧されるものであって、ディスクローター10に有する摩擦摺動面の外縁部に押圧されるパッド部21と、パッド部21の背面に接合される裏金22とを備え、ディスクローター10に対向して設けられる。このディスクローター10に対向して設けられるブレーキパッド20は、車両内側(インナー側)をインナー側ブレーキパッド20a、車両外側(アウター側)をアウター側ブレーキパッド20bとし、後述するキャリパー30によりブレーキパッド20の裏金22が押し出されることによりパッド部21がディスクローター10の摩擦摺動面に有する外縁部に押圧する。ここで、ブレーキパッド20のパッド部21がキャリパー30によりディスクローター10に有する摩擦摺動面の外縁部に押圧されると、摩擦が発生することからディスクローター10の回転が抑制される。そのため、ブレーキパッド20のパッド部21とディスクローター10の外縁部は、摩擦熱により発熱し高温になる。
【0012】
キャリパー30は、ブレーキパッド20のパッド部21をディスクローター10に有する摩擦摺動面の外縁部に押圧するものであって、車両に固定されるキャリパーボディ31と、キャリパーボディ31内部に備えられブレーキパッド20の裏金22に係合するピストン32と、ピストン32を駆動する駆動機構33(図示しない)とで構成されている。
【0013】
キャリパーボディ31は、キャリパー30を車両に固定するものであって、側面に後述するスリップリング60の固定部62を下方へ延出するように設ける。ここで、スリップリング60の固定部62を設ける位置は、側面に限定する必要はなく、キャリパーボディ31の下面(後述する熱電素子モジュール50に近接する面)であっても良い。
【0014】
ピストン32は、キャリパーボディ31内部に設けられる部品であって、後述する駆動機構33が駆動することで、ブレーキパッド20のパッド部21をディスクローター10に有する摩擦摺動面の外縁部に押圧する。このピストン32は、ブレーキパッド20の裏金22に1つ又は複数係合されており、キャリパーボディ31内部にディスクローター10を挟んで対向するように設けられる。
【0015】
駆動機構33は、キャリパーボディ31内部に設けられたピストン32を駆動する機構であって、ワイヤーを動作することでピストン32を駆動したり、油圧を変化させることでピストン32を駆動する機構である。
【0016】
次に熱電素子モジュール50について説明する。
熱電素子モジュール50は、温度差により電力を発生することのできる熱電変換素子であって、図1及び図2に示すように、熱を受熱する受熱面51と熱を放熱する放熱面52が形成されており、放熱面52に放熱フィン53を備える。また、受熱面51及び放熱面52は、縁部に端子51a、52aが接続材により接続されている。この熱電素子モジュール50は、ディスクローター10の摩擦摺動面のブレーキパッド20が接触する外縁部と、ディスクローター10の摩擦摺動面の回転中心を除く範囲に取付けられおり、受熱面51をディスクローター10の摩擦摺動面に接触するように設ける。ここで、熱電素子モジュール50の放熱面52は、外部に露出した構造となっているため風通しが良い状態であることから、車両が制動する際の風を利用して冷却される。
【0017】
放熱フィン53は、熱電素子モジュール50の冷却を促進するためのものであって、熱電素子モジュール50の放熱面52にディスクローター10の回転中心を中心として円周上に設置する。ここで放熱フィン53は、放熱面52から突出するように設けられるが、ディスクローター10回転時に風きり音を発生させない構造とする。
【0018】
スリップリング60は、熱電素子モジュール50で発生した起電力を車両に有するバッテリー又はその他電装部品に伝達するものであって、ディスクローター10の熱電素子モジュール50の受熱面51及び放熱面52に有する端子51a、52aに接続される回転部61と、キャリパー30に固定される固定部62とで構成される。
【0019】
スリップリング60の回転部61は、熱電素子モジュール50の受熱面51及び放熱面52の縁部に設けられ導電性のよいものを使用する。本実施例では、スリップリング60の回転部61を銅線とするが、銅板や銅板爪などを用いてもよい。
【0020】
スリップリング60の固定部62は、キャリパー30の側面に固定されるものであって、ブラシ状に加工されており回転部61に当接可能な構造をしている。本実施例では、固定部62をブラシ状に加工したものを使用するが、回転部61に当接可能な構造であればよい。ここで、スリップリング60の固定部62は、常に回転部61に当接した状態に限定する必要はなく、ディスクローター10が高温時にのみ当接するような構造であっても良い。
【0021】
次に本発明の発電機構100が車両制動時に発生する摩擦熱を利用して発電する手順について説明する。
車両を運転する乗員は、車両に備えるブレーキペダルを踏むことで制動装置40のキャリパー30を駆動して制動を行う。この制動装置40のキャリパー30は、乗員によりブレーキペダルが操作されると、駆動機構33によりピストン32がディスクローター10を挟み込む方向へ駆動することで、ブレーキパッド20の裏金22が押し出され、ブレーキパッド20のパッド部21をディスクローター10の摩擦摺動面の外縁部に押圧する。
【0022】
ブレーキパッド20のパッド部21がディスクローター10の外縁部に押圧されると、パッド部21とディスクローター10に有する摩擦摺動面の外縁部との間で摩擦が生じディスクローター10の回転を抑制する。この際、ブレーキパッド20のパッド部21とディスクローター10に有する摩擦摺動面の外縁部は、摩擦により発熱するため高温になる。ここで、ディスクローター10の外縁部で発熱した熱が、ディスクローター10全体に伝達することは言うまでもない。
【0023】
すると、ディスクローター10に備える熱電素子モジュール50は、ディスクローター10に接触する受熱面51が高温、放熱フィン53により冷却される放熱面52が低温となるため、受熱面51と放熱面52との間で温度差が生じることから起電力が発生する。ここで、高温となる受熱面51は、車両運転時に頻繁に行われる操作であるため、高温を維持することが可能である。また、低温となる放熱面52は、放熱フィン53をディスクローター10の回転中心を中心として円周上に備えていることから、車両が制動する際に又は走行中に効率よく熱電素子モジュール50を冷却することができるため、低温を維持することが可能である。このことから、車両制動時に安定して電力を発電することができる。
【0024】
また、熱電素子モジュール50により発生した起電力は、熱電素子モジュール50の端子51a、52aに接続されるスリップリング60の回転部61に伝達される。このスリップリング60の回転部61は、スリップリング60の固定部62と当接している構造となっていることから、スリップリング60の固定部62を介して車両に備えるバッテリー及びその他電装部品に伝達される。
【符号の説明】
【0025】
10 ディスクローター
20 ブレーキパッド
30 キャリパー
40 制動装置
50 熱電素子モジュール
60 スリップリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するディスクローターと、
該ディスクローターに対向するように配置されるブレーキパッドと、
該ブレーキパッドを前記ディスクローターに押圧するキャリパーとを備える制動装置と、
該制動装置により前記ブレーキパッドが前記ディスクローターに押圧された際の熱を電力に変換することのできる熱電素子モジュールとで構成される発電機構であって、
前記熱電素子モジュールは、熱を受熱する受熱面と熱を放熱する放熱面を備え、
該放熱面に放熱フィンを前記ディスクローターの回転中心に対して円周上に設けることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−178961(P2012−178961A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42343(P2011−42343)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000143639)株式会社今仙電機製作所 (258)
【Fターム(参考)】