説明

発電装置及びポンプ

【課題】回転効率が高い小型の発電装置及びポンプを提供する。
【解決手段】発電装置1は、同軸上に離間して配置された固定軸20a、20bと、チェーン35a、35bを介して固定軸20a、20bの固定軸歯車21a、21bに接続される遊星歯車31a、31bと、遊星歯車31a、31bに固定された半回転翼回転軸32a、32bと、半回転翼回転軸32a、32bに固定された半回転翼30a、30bと、半回転翼回転軸32a、32bの一方の端部が接続され固定軸20a、20bに回転可能に取り付けられる翼旋回用歯車40a、40bと、出力歯車51a、51bと、出力軸50a、50bと、エネルギー変換装置80a、80bと、を備える。半回転翼30a、30bは半回転翼回転軸32a、32bから半回転翼回転軸32a、32bに垂直な方向の端部までの長さが半回転翼回転軸32a、32bから固定軸20a、20bまでの長さよりも長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電装置及びポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの発電装置は化石燃料等を用い、電気エネルギーに変換する手法が主であった。しかし、化石燃料等の資源は有限であり、また、地球温暖化の原因となる二酸化炭素、或いは光化学スモッグや酸性雨の原因となる窒素酸化物が生じ、地球環境の悪化を招くことになる。
【0003】
このような状況の中、地球環境の保護の観点から水力や風力などの流体のエネルギーから電気エネルギーを得る手法が種々開発されている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には、複数の回転翼が回転軸の周囲に設置された風水力発電装置が開示されている。風水力を複数の回転翼が受けて、回転翼が回転軸の周りを公転する。回転翼と回転軸とは接続部材を介して接続しているため、回転軸が自転する。この回転軸の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−42976号公報
【特許文献2】特開2002−242815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2では、回転軸が中心に存在するため、各回転翼の面積が小さいものになっている。装置における風や水の流れを受ける受圧面積が小さくなってしまい、回転効率に問題があるとともに、装置が大型化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転効率が高い小型の発電装置及びポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る発電装置は、
歯車を有し、同軸上に離間して配置された第1の固定軸及び第2の固定軸と、
前記第1の固定軸の歯車に第1のチェーンを介して接続されて前記第1の固定軸の周りを旋回する第1の遊星歯車と、
前記第2の固定軸の歯車に第2のチェーンを介して接続されて前記第2の固定軸の周りを旋回する第2の遊星歯車と、
一方の端部が前記第1の遊星歯車に固定された第1の半回転翼回転軸と、
一方の端部が前記第2の遊星歯車に固定された第2の半回転翼回転軸と、
前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸にそれぞれ固定された第1の半回転翼及び第2の半回転翼と、
前記第1の半回転翼回転軸の一方の端部が摺動可能に接続されるとともに、前記第1の固定軸に取り付けられ、前記第1の固定軸を軸にして回転する第1の翼旋回用歯車と、
前記第2の半回転翼回転軸の一方の端部が摺動可能に接続されるとともに、前記第2の固定軸に取り付けられ、前記第2の固定軸を軸にして回転する第2の翼旋回用歯車と、
前記第1の翼旋回用歯車又は前記第2の翼旋回用歯車と直接或いは間接的に噛み合って回転可能な出力歯車と、
前記出力歯車に固定された出力軸と、
前記出力軸の回転により発電させるエネルギー変換装置と、を備え、
前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼はそれぞれ前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸から前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸に垂直な方向の端部までの長さが前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸から前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸までの長さよりも長く形成され、
前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼が受ける流体の力で前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼が自転することにより前記第1の遊星歯車及び前記第2の遊星歯車を旋回させるとともに前記第1の翼旋回用歯車及び前記第2の翼旋回用歯車を回転させ、
前記翼旋回用歯車の回転により前記出力歯車及び前記出力軸を回転させて前記エネルギー変換装置により発電させる、
ことを特徴とする。
【0009】
また、前記第1の固定軸と前記第2の固定軸の歯車の歯数が同数であり、
前記第1の遊星歯車及び前記第2の遊星歯車のそれぞれ歯数が前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸の歯車の歯数の2倍であり、
前記第1の遊星歯車及び前記第2の遊星歯車がそれぞれ前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸の周りを1周旋回したとき、前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼はそれぞれ半回転自転することが好ましい。
【0010】
また、前記第1の半回転翼回転軸、前記第2の半回転翼回転軸、前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸が同一平面上に配置されていることが好ましい。
【0011】
また、前記第1の半回転翼と前記第2の半回転翼のなす角度が直角であることが好ましい。
【0012】
また、前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼の回転時の最大外周軌跡に沿って形成されたカバーを備え、
前記カバーの流体が流入する流入側先端の位置が、流体が流出する流出側先端の位置よりも高いことが好ましい。
【0013】
また、前記発電装置が設置される流路と前記発電装置との隙間を塞ぐ間隙埋設部材を備えることが好ましい。
【0014】
本発明の第2の観点に係るポンプは、
歯車を有し、同軸上に離間して配置された第1の固定軸及び第2の固定軸と、
前記第1の固定軸の歯車に第1のチェーンを介して接続されて前記第1の固定軸の周りを旋回する第1の遊星歯車と、
前記第2の固定軸の歯車に第2のチェーンを介して接続されて前記第2の固定軸の周りを旋回する第2の遊星歯車と、
一方の端部が前記第1の遊星歯車に固定された第1の半回転翼回転軸と、
一方の端部が前記第2の遊星歯車に固定された第2の半回転翼回転軸と、
前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸にそれぞれ固定された第1の半回転翼及び第2の半回転翼と、
前記第1の半回転翼回転軸の一方の端部が摺動可能に接続されるとともに、前記第1の固定軸に取り付けられ、前記第1の固定軸を軸にして回転する第1の翼旋回用歯車と、
前記第2の半回転翼回転軸の一方の端部が摺動可能に接続されるとともに、前記第2の固定軸に取り付けられ、前記第2の固定軸を軸にして回転する第2の翼旋回用歯車と、
前記第1の翼旋回用歯車又は前記第2の翼旋回用歯車と直接或いは間接的に噛み合って回転可能な入力歯車と、
前記入力歯車に固定された入力軸と、
前記入力軸を回転させる回転駆動装置と、を備え、
前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼はそれぞれ前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸から前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸に垂直な方向の端部までの長さが前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸から前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸までの長さよりも長く形成され、
前記回転駆動装置により前記入力軸及び入力歯車を回転させて、
前記入力歯車の回転により前記第1の翼旋回用歯車又は前記第2の翼旋回用歯車を回転させて前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼を回転させ流体を掻き出す、
ことを特徴とする。
【0015】
また、前記第1の固定軸と前記第2の固定軸の歯車の歯数が同数であり、
前記第1の遊星歯車及び前記第2の遊星歯車の歯数がそれぞれ前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸の歯車の歯数の2倍であり、
前記第1の遊星歯車及び前記第2の遊星歯車がそれぞれ前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸の周りを1周旋回したとき、前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼はそれぞれ半回転自転することが好ましい。
【0016】
また、前記第1の半回転翼回転軸、前記第2の半回転翼回転軸、前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸が同一平面上に配置されていることが好ましい。
【0017】
また、前記第1の半回転翼と前記第2の半回転翼のなす角度が直角であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る発電装置は、半回転翼の端部から半回転翼回転軸までの垂直方向の長さが半回転翼回転軸から固定軸までの長さよりも長く形成されているので、発電装置の流体の受圧面積における半回転翼が占める面積の割合が高いので回転効率が高い。このため、小型の発電装置を構成できるとともに、小型であっても回転効率が高く、良好な発電能力を発揮する発電装置を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1に係る発電装置の斜視図である。
【図2】図1のA−A’線で発電装置を切断して発電装置の内部構造を示した内部構造図である。
【図3】図1のA−A’線でケースを切断して発電装置の内部構造を示した内部構造図である。
【図4】図2のB−B’方向を見た場合の半回転翼、半回転翼回転軸、遊星歯車及び固定軸の配置関係を示す状態図である。
【図5】(A)及び(B)は流体の作用を受けた際の半回転翼、半回転翼回転軸、遊星歯車の動きを示す状態図である。
【図6】(A)及び(B)は流体の作用を受けた際の半回転翼、半回転翼回転軸、遊星歯車の動きを示す状態図である。
【図7】流体の作用を受けた際の半回転翼、半回転翼回転軸、遊星歯車の動きを示す状態図である。
【図8】半回転翼の外周軌跡及び半回転翼回転軸の軌跡を示す模式図である。
【図9】実施の形態2に係る発電装置の斜視図である。
【図10】実施の形態2に係る発電装置の側面図である。
【図11】図9のA−A’線でケースを切断して実施の形態2に係る発電装置の内部構造を示した内部構造図である
【図12】実施の形態2に係る発電装置をU字溝に設置した状態を示す図である。
【図13】実施の形態2に係る発電装置の半回転翼が回転する様子を示す模式図である。
【図14】実施の形態3に係るポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る発電装置について、図を参照しつつ説明する。図1〜図3に示すように、発電装置1は、ケース10内に設置された、一部に固定軸歯車21a,21bを有する固定軸20a、20bと、翼旋回用歯車40a、40bと、半回転翼30a、30bがそれぞれ固定されるとともに遊星歯車31a、31bがそれぞれ固定された半回転翼回転軸32a、32bと、固定軸歯車21aと翼旋回用歯車40a、固定軸歯車21bと翼旋回用歯車40bをそれぞれ接続するチェーン35a、35bと、出力歯車51a、51bが固定された出力軸50a、50bと、エネルギー変換装置70a、70bとから構成される。
【0021】
ケース10は2つの円盤状の側板と両側板の一部を接続する平板とから構成されている。ケース10には排水路や橋脚等に固定する取付部材11が設けられている。
【0022】
ケース10の両側板の中心部に固定軸20a、20bがそれぞれ固定されている。固定軸20a、20bは同軸上に離間して対称に配置されている。固定軸20a、20bは半月キー等の固定部材22a、22bによってケース10の側板にそれぞれ固定されている。ケース10の側板からケース10内方に突出した固定軸20a、20bは、ケース10の側板側が凹凸のない摺動面であり、ケース10の内側にはチェーン35a、35bを懸架可能な固定軸歯車21a、21bが配置されている。
【0023】
半回転翼30a、30bは矩形の平板であり、その寸法はいずれも同じである。半回転翼30a、30bの中央部に、それぞれ円柱状の半回転翼回転軸32a、32bが固定されている。なお、半回転翼30a、30bの形状は矩形の平板に限定されない。
【0024】
半回転翼30aから突出した半回転翼回転軸32aの一方の端部には、端部側から順に翼旋回用歯車40a、遊星歯車31aが配置されている。また、半回転翼回転軸32aの他方の端部には、翼旋回用歯車40bが配置されている。半回転翼回転軸32aと遊星歯車31aとは、不図示の固定部材等で固定されている。また、半回転翼回転軸32aと翼旋回用歯車40a及び翼旋回用歯車40bとは、翼旋回用歯車40a、40bにそれぞれ設けられた滑り軸受け42a、42bを介して接続されており、半回転翼回転軸32aは翼旋回用歯車40a、40bに摺動可能に軸支されている。
【0025】
半回転翼回転軸32bの一方の端にも上記と同様に、端部側から順に翼旋回用歯車40b、遊星歯車31bが配置されている。また、半回転翼回転軸32bの他方の端部には、翼旋回用歯車40aが配置されている。半回転翼回転軸32bと遊星歯車31bとは、不図示の固定部材等で固定されている。また、半回転翼回転軸32bと翼旋回用歯車40b及び翼旋回用歯車40aとは、翼旋回用歯車40b、40aにそれぞれ設けられた滑り軸受け42c、42dを介して接続されており、半回転翼回転軸32bは翼旋回用歯車40b、40aに摺動可能に軸支されている。
【0026】
2つの遊星歯車31a、31bは同じ構造であり、その周面にチェーン35a、35bが懸架可能な歯車を有している。そして、チェーン35aが遊星歯車31aと固定軸歯車21aに懸架されている。また、チェーン35bが遊星歯車31bと固定軸歯車21bに懸架されている。遊星歯車31a、31bの歯数は固定軸20a、20bに形成された固定軸歯車21a、21bの歯数の2倍である。
【0027】
翼旋回用歯車40a、40bは、それぞれ中心に円形の穴が形成された円盤状の歯車であり、それらの穴にそれぞれ固定軸20a、20bの摺動面が挿入されて配置されている。そして、翼旋回用歯車40a、40bと固定軸20a、20bとはベアリング41a、41bを介して摺動可能に配置されており、翼旋回用歯車40a、40bは、それぞれ固定軸20a、20bを軸にして回転可能である。
【0028】
図4に、図3のB−B’方向に見た半回転翼30a、30b、半回転翼回転軸32a、32b、遊星歯車31a、31b及び固定軸20a、20bの配置関係を示しているが、半回転翼回転軸32a、32bは固定軸20a、20bを中心にして対向配置されている。言い換えれば、半回転翼回転軸32aと固定軸20a、20bと半回転翼回転軸32bは同一直線上に配置されている。このため、半回転翼30aと半回転翼30bも固定軸20a、20bを中心にして同一直線上に配置されている。更に言えば、半回転翼回転軸32aと固定軸20a、20bと半回転翼回転軸32bは同一平面上に位置している。そして、半回転翼30aと半回転翼30bのなす角度が略直角である。そして、この角度は、後述するように、動作時においても維持される。
【0029】
そして、半回転翼30a、30bは、半回転翼回転軸32a、32bから端部までの長さL1が半回転翼回転軸32a、32bから固定軸20a、20bまでの長さL2よりも長い。
【0030】
また、半回転翼30a、30bと遊星歯車31aとの間には回転板60aが配置され、また、半回転翼30a、30bと遊星歯車31bとの間には回転板60bが配置されている。回転板60a、60bはケース10に対して摺動可能であり、半回転翼回転軸32a、32bのそれぞれの両端部が摺動可能に挿入されている。
【0031】
なお、本実施の形態では、半回転翼回転軸32a、32bのそれぞれの両端が翼旋回用歯車40a、40bに摺動可能に取り付けられているが、回転板60a、60bが十分な強度を有しており、後述する発電装置1の作用を果たし得る場合には、半回転翼回転軸32a、32bの遊星歯車31a、31bが固定されていない側の端部が、翼旋回用歯車40a、40bに取り付けられていなくてもよい。
【0032】
なお、回転板60a、60bは、主としてケース10内部への浸水を防止し、各歯車等へのごみ詰まりによる作用不能を防ぐものであり、ごみ詰まり等の危険性がない場合では、回転板60a、60bを備えていなくてもよい。
【0033】
また、出力歯車51a、51bが翼旋回用歯車40a、40bと噛み合うように配置されている。出力歯車51a、51bの中心には、出力軸50a、50bが固定部材53a、53bによってそれぞれ固定されており、出力軸50a、50bはそれぞれベアリング52a、52bを介して摺動可能にケース10の側板に軸支されている。
【0034】
そして出力軸50a、50bの端部はそれぞれケース10の側板から突出し、エネルギー変換装置70a、70bに接続している。エネルギー変換装置70a、70bは、磁石、コイル等が組み合わせられて、磁力の作用により発電させる装置等である。
【0035】
続いて、図5〜図7を参照して、発電装置1の作用について説明する。
【0036】
まず、図5(A)の状態において、紙面上左方向へ流体の流れを受けると、主として半回転翼30aに流れの力Fが作用する。この流れの力Fを受けて半回転翼30aが紙面上左方向へ押される。
【0037】
すると、図5(B)に示すように、半回転翼30aが固定されている半回転翼回転軸32aには、遊星歯車31aが固定され、また、翼旋回用歯車40a、40bが摺動可能に接続されているため、半回転翼30aは図面上時計回りに自転する。また、遊星歯車31aはチェーン35aを介して固定軸歯車21aに接続しているため、図面上時計回りに自転しながら固定軸20a、20bの周りを旋回(公転)する。更には、翼旋回歯車40a、40bも固定軸20a、20bを支点に図面上時計回りに自転する。
【0038】
半回転翼回転軸32bも翼旋回用歯車40bに同様に接続されているため、翼旋回用歯車40bの自転にともなって、半回転翼30b、遊星歯車31bも上記と同様の動きをする。
【0039】
上記の回転が進むと、図6(A)、(B)に示すように、半回転翼30bが流れの上流側に位置する。そして、主として半回転翼30bに流れの力Fが作用する。そして、継続して上記と同様に回転が進行する。
【0040】
そして、図7に示すように、翼旋回用歯車40a、40bがそれぞれ半回転(180°)自転すると、図5(A)に示す状態から、二つの半回転翼30a、30bが丁度入れ替わった状態となる。半回転翼30a、30bはいずれも90°自転している。
【0041】
したがって、翼旋回用歯車40a、40bが一回転(360°)自転すると、半回転翼30a、30bはそれぞれ図5(A)に示した配置に戻る。このように、翼旋回用歯車40a、40bが一回転(360°)自転した場合、半回転翼30a、30bは半回転(180°)自転することになる。
【0042】
このようにして、半回転翼30a、30b、半回転翼回転軸32a、32b、遊星歯車31a、31b、翼旋回用歯車40a、40bは、流体の流れを受け続けている際は継続してそれぞれ動き続ける。
【0043】
以上のように、翼旋回用歯車40a、40bが回転するので、これらに噛み合っているそれぞれの出力歯車51a、51bも回転する。そして出力歯車51a、51bの回転に伴って出力軸50a、50bも回転する。
【0044】
出力軸50a、50bに接続されたエネルギー変換装置70a、70bは、出力軸50a、50bの回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、発電する。
【0045】
図8に半回転翼30a、30bの外周軌跡及び半回転翼回転軸32a、32bの軌跡を模式的に示している。遊星歯車31a、31bの歯数が固定軸20a、20の歯車の歯数の2倍であるため、二つの半回転翼30a、30bは、それぞれ固定軸20a、20bの周りを一周旋回すると半回転自転すること、また、二つの半回転翼30a、30bは相互の面のなす角度が直角を維持しつつ回転することから、半回転翼回転軸32a、32bの移動に要する占有空間が小さい。また、発電装置1の3方の寸法は、いずれも半回転翼30a、30bの幅及び長さの1.5倍程度に設計することができるので、小型の発電装置1を実現できる。
【0046】
また、図4に示したように、半回転翼30a、30bの端部から半回転翼回転軸32a、32bまでの垂直方向の長さL1が半回転翼回転軸32a、32bから固定軸20a、20bまでの長さL2よりも長く形成されているので、発電装置1に作用する流体の受圧面積中、半回転翼30a、30bが占める面積の割合が高く、また、旋回する半回転翼回転軸32a、32bの旋回中心は理論上、半回転翼30a、30bの回転芯であるので回転効率が高い。このため、小型であっても回転効率が高く、良好な発電能力を発揮する発電装置1を実現している。
【0047】
このように、発電装置1は小型で回転効率の高い特性を有するため、様々な流体の流れがある場所に設置して発電することができる。例えば、工場排水が流れる流路に設置して発電すること、暗渠や用水路などに設置して自家発電を行うこと、河川の橋脚や岸壁等に設置して発電させ、近辺に設置されている街路灯に電力を供給することが可能である。
【0048】
また、水等の液体の流れがある箇所への設置のほか、気体等の流れがある箇所に発電装置1を設置してもよい。例えば、工場の排気ダクトや廃蒸気が噴出している箇所等が挙げられる。
【0049】
また、発電装置1は小型であるため、設置の態様についても自由度が高いという利点がある。小型であるため、発電装置1を流体の流れがある箇所に複数設置することも容易である。複数の発電装置1を流体の流れのある幅の細い流路等に設置する場合では、多数の発電装置1を流体の流れ方向に直列に設置することができる。また、幅の広い流路等に設置する場合では、流れを横切るように設置してもよい。
【0050】
更には、半回転翼回転軸32a、32bが水平になるように発電装置1を設置してもよく、或いは、半回転翼回転軸32a、32bが垂直になるよう設置して用いてもよい。
【0051】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2に係る発電装置2について説明する。発電装置2は、図9〜図11に示すように、ケース10内に設置された、一部に固定軸歯車21a,21bを有する固定軸20a、20bと、翼旋回用歯車40a、40bと、半回転翼30a、30bがそれぞれ固定されるとともに遊星歯車31a、31bがそれぞれ固定された半回転翼回転軸32a、32bと、固定軸歯車21aと翼旋回用歯車40a、固定軸歯車21bと翼旋回用歯車40bをそれぞれ接続するチェーン35a、35bと、歯車54a、54bが固定された回転軸55と、出力歯車51bが固定された出力軸50bと、エネルギー変換装置70と、電源ライン71と、ランプ72と、カバー73と、間隙部材74とから構成される。
【0052】
発電装置2は、主として、カバー73及び間隙部材74を備える点で、実施の形態1の発電装置1と異なっており、その他の構成については実施の形態1に係る発電装置1と同様であるため説明を省略する。
【0053】
なお、実施の形態1とは、チェーン35a、35b等の配置が異なっている。具体的には、固定軸20a、20bの固定軸歯車21a、21bと摺動面が逆に位置し、そして、チェーン35a、35b、遊星歯車31a、31bがケース10の側板側に位置し、翼旋回用歯車40a、40bがケース10の内側に位置している。
【0054】
また、出力歯車51bは、歯車54bを介して翼旋回用歯車40bの回転により回転する構成である。そして、出力軸50bの回転によりエネルギー変換装置70が発電し、発電した電気が電源ライン71を伝導してランプ72を発光させる。
【0055】
発電装置2は、図7に示した半回転翼30a、30bの回転の最大外周軌跡に沿ったカバー73を有する。図10からわかるように、このカバー73の流体の流入側の先端は、流体の流出側の先端よりもhほど高い位置にある。カバー73は、U字溝を流れる水が少量である場合、流水はU字溝の底に薄く張り付いた状態で流れる。このように流れる水が少量の場合に、流入側の流水を堰き止めて落差を作り出し、流水圧が半回転翼30a、30bに加わるようにする機能を果たす。
【0056】
更に、発電装置2は、カバー73やケース10とU字溝との隙間を埋める間隙部材74を有している。間隙部材74は、U字溝との隙間を埋めることで、U字溝を流れる水を無駄なくカバー73内に進入させ、流水圧が半回転翼30a、30bに加わるようにする機能を果たす。
【0057】
図12に発電装置2がU字溝75に設置された状態を示している。発電装置2を構成するケース10、カバー73、半回転翼30a、30b等の寸法は、設置されるU字溝75の寸法に応じて適宜設計される。そして、ケース10やカバー73等とU字溝75との隙間が間隙部材74で埋められている。間隙部材74は、カバー73やケース10とU字溝との隙間を埋めてU字溝を流れる水がカバー73内に流入し得るものであれば、どのような形状、材質であってもよい。
【0058】
U字溝75を流れる水によって半回転翼30a、30bが連続的に回転する様子を図13に示している。水がカバー73によって堰き止められ、水嵩が増し、カバー73の流入側の先端を超えると、半回転翼30bに流水圧がかかる。水嵩が増して落差があるため、半回転翼30bには水による流れ方向の力に加え、水の重力も加わるので、半回転翼30bは効率的に回転する。
【0059】
そして、半回転翼30bがカバー73の流出側先端を抜け、半回転翼30bにかかっている流水圧が抜ける際に、半回転翼30aがカバー73の流入側先端に辿り着き、半回転翼30aには、上記と同様に流水圧がかかる。このようにして、半回転翼30a、30bが連続的に、且つ、効率的に回転し続ける。
【0060】
また、U字溝75とカバー73及びケース10との隙間は間隙部材74で埋められているので、U字溝75を流れる水が漏れなくカバー73内に流入する。このように、カバー73及び間隙部材74によって、少量の水が流れているU字溝であっても、その水を無駄なく活用して半回転翼30a、30bに作用させることができる。これにより、効率的に発電し、ランプ72を発光させることができる。
【0061】
なお、上記では、ランプ72を備えた形態について説明したが、図11に示すように、回転軸55に固定されている変換歯車56によって出力歯車51a、出力軸50aを回転させ、ケース10の蓋12を開口して上方にエネルギー変換装置70を設置して発電させる形態であってもよい。
【0062】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3に係るポンプについて説明する。図14にポンプ3の断面を示すが、構成は前述の発電装置1をそのまま応用したものである。発電装置1で説明した出力軸50a、50bを入力軸80a、80bとし、また、出力歯車51a、51bを入力歯車81a、81bとする。なお、入力軸80a、80bは出力軸50a、50bと、また、入力歯車81a、81bは出力歯車51a、51bとそれぞれ構成は同様である。
【0063】
そして、入力軸80a、80bを回転させる回転駆動装置90a、90bを配置する。回転駆動装置90a、90bとして電気エネルギーを回転力に変換するモーター等、公知の装置を用いることができる。その他の構成については、実施の形態1で説明した発電装置1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
回転駆動装置90a、90bを回転駆動させることにより、入力軸80a、80b及びこれらに固定されている入力歯車81a、81bが回転する。入力歯車81a、81bの回転により、翼旋回用歯車40a、40bが回転するので、翼旋回用歯車40a、40bに接続されている半回転翼回転軸32a、32bが固定軸20a、20bの周りを旋回する。半回転翼回転軸32a、32bには遊星歯車31a、31b及び半回転翼30a、30bが固定されているため、チェーン35a、35bを介し、遊星歯車31a、31bが固定軸20a、20bの周りを旋回するとともに、半回転翼30a、30bも自転しつつ固定軸20a、20bの周りを公転することになる。そのほか、各要素の動き等は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
ポンプ3は実施の形態1で説明した発電装置1同様に小型であるため、設置の態様についても自由度が高く、様々な箇所へ設置することが可能である。また、ポンプ3における半回転翼30a、30bが占める面積の割合が高いため、効率的に流体等の送り出しが可能である。例えば、細い流路に留まっている廃水の排出等に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 発電装置
2 発電装置
3 ポンプ
10 ケース
11 取付部材
12 蓋
20a,20b 固定軸
21a,21b 固定軸歯車
22a,22b 固定部材
30a,30b 半回転翼
31a,31b 遊星歯車
32a,32b 半回転翼回転軸
33a,33b 固定部材
34a,34b 固定部材
35a,35b チェーン
40a,40b 翼旋回用歯車
41a,41b ベアリング
42a〜42d 滑り軸受け
50a,50b 出力軸
51a,51b 出力歯車
52a,52b ベアリング
53a,53b 固定部材
54a,54b 歯車
55 回転軸
56 変換歯車
60a,60b 回転板
70a,70b エネルギー変換装置
71 電源ライン
72 ランプ
73 カバー
74 間隙部材
75 U字溝
80a,80b 入力軸
81a,81b 入力歯車
90a,90b 回転駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車を有し、同軸上に離間して配置された第1の固定軸及び第2の固定軸と、
前記第1の固定軸の歯車に第1のチェーンを介して接続されて前記第1の固定軸の周りを旋回する第1の遊星歯車と、
前記第2の固定軸の歯車に第2のチェーンを介して接続されて前記第2の固定軸の周りを旋回する第2の遊星歯車と、
一方の端部が前記第1の遊星歯車に固定された第1の半回転翼回転軸と、
一方の端部が前記第2の遊星歯車に固定された第2の半回転翼回転軸と、
前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸にそれぞれ固定された第1の半回転翼及び第2の半回転翼と、
前記第1の半回転翼回転軸の一方の端部が摺動可能に接続されるとともに、前記第1の固定軸に取り付けられ、前記第1の固定軸を軸にして回転する第1の翼旋回用歯車と、
前記第2の半回転翼回転軸の一方の端部が摺動可能に接続されるとともに、前記第2の固定軸に取り付けられ、前記第2の固定軸を軸にして回転する第2の翼旋回用歯車と、
前記第1の翼旋回用歯車又は前記第2の翼旋回用歯車と直接或いは間接的に噛み合って回転可能な出力歯車と、
前記出力歯車に固定された出力軸と、
前記出力軸の回転により発電させるエネルギー変換装置と、を備え、
前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼はそれぞれ前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸から前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸に垂直な方向の端部までの長さが前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸から前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸までの長さよりも長く形成され、
前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼が受ける流体の力で前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼が自転することにより前記第1の遊星歯車及び前記第2の遊星歯車を旋回させるとともに前記第1の翼旋回用歯車及び前記第2の翼旋回用歯車を回転させ、
前記翼旋回用歯車の回転により前記出力歯車及び前記出力軸を回転させて前記エネルギー変換装置により発電させる、
ことを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記第1の固定軸と前記第2の固定軸の歯車の歯数が同数であり、
前記第1の遊星歯車及び前記第2の遊星歯車のそれぞれ歯数が前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸の歯車の歯数の2倍であり、
前記第1の遊星歯車及び前記第2の遊星歯車がそれぞれ前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸の周りを1周旋回したとき、前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼はそれぞれ半回転自転する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記第1の半回転翼回転軸、前記第2の半回転翼回転軸、前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸が同一平面上に配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記第1の半回転翼と前記第2の半回転翼のなす角度が直角である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項5】
前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼の回転時の最大外周軌跡に沿って形成されたカバーを備え、
前記カバーの流体が流入する流入側先端の位置が、流体が流出する流出側先端の位置よりも高い、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項6】
前記発電装置が設置される流路と前記発電装置との隙間を塞ぐ間隙埋設部材を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項7】
歯車を有し、同軸上に離間して配置された第1の固定軸及び第2の固定軸と、
前記第1の固定軸の歯車に第1のチェーンを介して接続されて前記第1の固定軸の周りを旋回する第1の遊星歯車と、
前記第2の固定軸の歯車に第2のチェーンを介して接続されて前記第2の固定軸の周りを旋回する第2の遊星歯車と、
一方の端部が前記第1の遊星歯車に固定された第1の半回転翼回転軸と、
一方の端部が前記第2の遊星歯車に固定された第2の半回転翼回転軸と、
前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸にそれぞれ固定された第1の半回転翼及び第2の半回転翼と、
前記第1の半回転翼回転軸の一方の端部が摺動可能に接続されるとともに、前記第1の固定軸に取り付けられ、前記第1の固定軸を軸にして回転する第1の翼旋回用歯車と、
前記第2の半回転翼回転軸の一方の端部が摺動可能に接続されるとともに、前記第2の固定軸に取り付けられ、前記第2の固定軸を軸にして回転する第2の翼旋回用歯車と、
前記第1の翼旋回用歯車又は前記第2の翼旋回用歯車と直接或いは間接的に噛み合って回転可能な入力歯車と、
前記入力歯車に固定された入力軸と、
前記入力軸を回転させる回転駆動装置と、を備え、
前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼はそれぞれ前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸から前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸に垂直な方向の端部までの長さが前記第1の半回転翼回転軸及び前記第2の半回転翼回転軸から前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸までの長さよりも長く形成され、
前記回転駆動装置により前記入力軸及び入力歯車を回転させて、
前記入力歯車の回転により前記第1の翼旋回用歯車又は前記第2の翼旋回用歯車を回転させて前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼を回転させ流体を掻き出す、
ことを特徴とするポンプ。
【請求項8】
前記第1の固定軸と前記第2の固定軸の歯車の歯数が同数であり、
前記第1の遊星歯車及び前記第2の遊星歯車の歯数がそれぞれ前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸の歯車の歯数の2倍であり、
前記第1の遊星歯車及び前記第2の遊星歯車がそれぞれ前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸の周りを1周旋回したとき、前記第1の半回転翼及び前記第2の半回転翼はそれぞれ半回転自転する、
ことを特徴とする請求項7に記載のポンプ。
【請求項9】
前記第1の半回転翼回転軸、前記第2の半回転翼回転軸、前記第1の固定軸及び前記第2の固定軸が同一平面上に配置されている、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のポンプ。
【請求項10】
前記第1の半回転翼と前記第2の半回転翼のなす角度が直角である、
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−250674(P2011−250674A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62061(P2011−62061)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(309043768)テクノ環境機器株式会社 (6)
【Fターム(参考)】