説明

直流出力回路のコンデンサ放電回路

【課題】安価で小形化が可能な電磁接触器を使用してコンデンサ放電回路を形成する。
【解決手段】直流電源部2に接続された正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に平滑用コンデンサ4を接続し、前記正極ラインの前記直流電源部2及び平滑用コンデンサ4間にスイッチを介挿した直流出力回路1のコンデンサ放電回路5であって、前記正極側ライン及び負極側ライン間に、前記平滑用コンデンサ4と並列に、放電用抵抗6と交流電磁接触器7とを直列に接続し、該交流電磁接触器7を、前記スイッチをオフ状態としたときに、前記交流電磁接触器7をオン状態とし、前記平滑用コンデンサ4の端子間電圧が当該交流電磁接触器7の遮断可能電圧以下に低下したときにオフ状態に制御する電磁接触器制御部10を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧直流回路の平滑用コンデンサを放電させる直流出力回路のコンデンサ放電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の直流出力回路のコンデンサ放電回路としては、例えば、直流電源にスイッチ6を介して接続された平滑用のコンデンサの両端に放電抵抗とスイッチとを直列に接続し、前記スイッチを閉路して前記コンデンサの充電エネルギを前記抵抗器において消費させるようにしたコンデンサの放電回路において、前記放電抵抗と前記スイッチとに対して直列に非直線性電圧-電流特性を有する磁器電流制限器を接続したコンデンサの放電回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された従来例では、スイッチの構成については詳述されていないが、通常500V以上の直流電圧を扱う場合には、直流電磁接触器を使用する。この直流電磁接触器としては、接点部を閉成した状態の直流高電圧印加時において、電流遮断時に、接点部を開成する際に、接点部にアークが発生し、このアークによって直流電流が流れ続けることになるため、アークを消弧するためにアーク消弧用の永久磁石を配置することが考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
同様に、電流遮断時に発生するアークを消弧するためにアークホーンとこのアークホーンにアーク電流を移行させる電磁力を発生する永久磁石と、アーク電流を通流させて発生する磁束が前記永久磁石の磁束に重畳される位置に配置した吹消コイルとを設けるようにした直流電磁接触器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−221866号公報
【特許文献2】特開昭59−191217号公報
【特許文献3】特開昭53−128776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したように特許文献1に記載のコンデンサ放電回路を構成するスイッチとして、通常は特許文献2や特許文献3に記載された直流電磁接触器を適用するようにしている。このような直流電磁接触器は、遮断可能な電圧が550V程度と高いものであるが、電流遮断時のアークを消弧するためのアーク消弧機構を設けるようにしているため、高価で且つ大型化してしまうという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、安価で小形化が可能な電磁接触器を使用してコンデンサ放電回路を形成することができる直流出力回路のコンデンサ放電回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る直流出力回路のコンデンサ放電回路は、直流電源部に接続された正極側ライン及び負極側ライン間に平滑用コンデンサを接続し、前記正極ラインの前記直流電源部及び平滑用コンデンサ間にスイッチを介挿した直流出力回路のコンデンサ放電回路であって、前記正極側ライン及び負極側ライン間に、前記平滑用コンデンサと並列に、放電用抵抗と交流電磁接触器とを直列に接続し、該交流電磁接触器を、前記スイッチをオフ状態としたときに、前記交流電磁接触器をオン状態とし、前記平滑用コンデンサの端子間電圧が当該交流電磁接触器の遮断可能電圧以下に低下したときにオフ状態に制御する電磁接触器制御部を備えたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の形態に係る直流出力回路のコンデンサ放電回路は、前記交流電磁接触器は、三相交流のU相接点部、V相接点部及びW相接点部が直列に接続されて直列回路が形成され、該直列回路の一端が前記放電用抵抗に接続され、他端が負極側ラインに接続されていることを特徴としている。
また、本発明の他の形態に係る直流出力回路のコンデンサ放電回路は、前記交流電磁接触器は、U相接点部、V相接点部及びW相接点部がそれぞれb接点で構成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の他の形態に係る直流出力回路のコンデンサ放電回路は、前記電磁接触器制御部は、前記平滑用コンデンサの端子間電圧を検出する電圧検出部を備え、該電圧検出部で検出した端子間電圧が前記交流電磁接触器の遮断可能電圧以下になったときに当該交流電磁接触器をオフ状態に制御するように構成されていることを特徴としている。
また、本発明の他の形態に係る直流出力回路のコンデンサ放電回路は、前記電磁接触器制御部は、前記交流電磁接触器をオン状態とした時点からの前記平滑用コンデンサの放電時間を計測するタイマを備え、該タイマの計測時間が前記平滑用コンデンサの端子間電圧が前記交流電磁接触器の遮断可能電圧以下になる放電時間に達したときに当該交流電磁接触器をオフ状態に制御するように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンデンサ放電回路を構成するスイッチを遮断可能な電圧が低く、安価で小形な交流電磁接触器で構成することが可能であるので、コンデンサ放電回路全体を安価で小形な構成とすることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の直流出力回路のコンデンサ放電回路の第1の実施形態を示す回路図である。
【図2】交流電磁接触器及び直流電磁接触器の遮断可能電力範囲を示すグラフである。
【図3】第1の実施形態の動作を説明する電圧波形及びスイッチ開閉状態を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す回路図である。
【図5】本発明の第3の実施形態を示す回路図である。
【図6】本発明の第4の実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明によるコンデンサ放電回路の第1の実施形態を適用した直流出力回路を示す回路図である。
直流出力回路1は、例えば500V以上の高電圧の直流電源2の正極側に例えば直流電磁接触器で構成されるスイッチ3を介して接続された正極側ラインLpと、直流電源2の負極側に接続された負極側ラインLnとを有する。これら正極側ラインLp及び負極側ラインLn間には、直流電源2と並列に平滑用コンデンサ4が接続されている。
【0013】
また、正極側ラインLp及び負極側ラインLn間には、平滑用コンデンサ4は並列にコンデンサ放電回路5が接続されている。
このコンデンサ放電回路5は、正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に、平滑用コンデンサ4に充電された電荷を放電する放電用抵抗6とスイッチとしての交流電磁接触器7とが直列に接続された構成を有する。
ここで、交流電磁接触器7は、3相交流のU相接点部7u、V相接点部7v及びW相接点部7wの3つの接点部を有し、これら3つの接点部のそれぞれは、所定距離を保って対向配置された一対の固定接触子Cs1,Cs2と、これら一対の固定接触子Cs1,Cs2に接離自在に配置された可動接触子Cmとで構成されている。
【0014】
各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが操作電磁石によって可動する可動接点支えに支持されており、操作電磁石を構成するコイルLに交流電力が通電されていない非通電時に可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2から離間して各接点部7u〜7wが開成状態となり、コイルLに交流電力を通電する通電時に可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2に接触して各接点部7u〜7wが閉成状態となる。
【0015】
この交流電磁接触器7は、例えばU相接点部7uの一方の固定接触子例えばCs1が接続線7aを介して放電用抵抗6に接続され、U相接点部7uの他方の固定接触子Cs2がV相接点部7uの一方の固定接触子Cs1に接続線7b接続され、V相接点部7vの他方の固定接触子Cs2がW相接点部7wの一方の固定接触子Cs1に接続線7cで接続され、W相接点部7wの他方の固定接触子Cs2が接続線7dで負極側ラインLnに接続されている。
【0016】
一方、交流電磁接触器7のコイルLは、交流電磁接触器制御部10によって通電制御される。この交流電磁接触器制御部10は、所定電圧の交流又は直流の操作用電力が供給される電力ラインLw1及びLw2を備えており、一端が電力ラインLw2に接続されたコイルLの他端と、電力ラインLw1との間に介挿された平滑用コンデンサ4の放電時に出力されるコンデンサの放電指令によってオン状態となるスイッチ部11と、このスイッチ部11と並列に接続されたスイッチ部12とを備えている。
【0017】
スイッチ部12は、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcを監視する電圧監視部13によってオン・オフ制御される。この電圧監視部13は、スイッチ部11がオン状態となったときに動作状態となり、検出した平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能な電圧E1を超えているときにスイッチ部12をオン状態に制御し、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが遮断可能な電圧E1以下であるときに、スイッチ部12をオフ状態に制御する。
【0018】
ここで、前述したスイッチ3を構成する直流電磁接触器は、遮断可能な電圧及び電流の範囲が、図2に示すように、電圧の範囲が0〜550Vであり、電流の範囲が0〜130Aである。これに対して、交流電磁接触器7は、図2に示すように、電圧の範囲が0〜220Vであり、電流の範囲が0〜130Aである。
また、正極側ラインLp及び負極側ラインLnには負荷としての直流電力を交流電力に電力変換するインバータ回路8が接続され、このインバータ回路8から出力される交流電力が三相電動モータ9に供給されている。
【0019】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、平滑用コンデンサ4が放電状態にあり、スイッチ3がオフ状態にあって、直流出力回路1から直流電力が出力されておらず、平滑用コンデンサ4が放電状態にある出力停止状態にあるものとする。
この出力停止状態では、電磁接触器制御部10で、スイッチ部11がオフ状態であるとともに、電圧監視部13が動作停止状態にあり、スイッチ部12がオフ状態となっている。
【0020】
このため、交流電磁接触器7のコイルLが非通電状態となり、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接点tmが固定接点ts1,ts2より離間して、交流電磁接触器7が図1に示すように開成状態となっている。
この出力停止状態から直流出力状態とするには、スイッチ3をオン状態とすることにより、直流電源2の直流電力が平滑用コンデンサ4に供給されて、この平滑用コンデンサ4を充電する。このため、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが図3(a)に示すように、急峻に増加して、直流電源2の電源電圧Eに達する。
【0021】
この状態では、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが負荷としてのインバータ回路8に供給されることにより、このインバータ回路8で、直流電力が交流電力に電力変換されて三相電動モータ9に供給され、これにより三相電動モータが回転駆動される。
その後、直流出力回路1からの直流出力を停止させるには、時点t1でスイッチ3をオフ状態とすることにより、直流電源2から平滑用コンデンサ4及び負荷としてインバータ回路8への電力供給を遮断する。
【0022】
この状態では、図1に示すように、スイッチ部11がオフ状態であり、電圧監視部13が動作停止状態にあって、スイッチ部12もオフ状態であり、交流電磁接触器7のコイルLが通電状態となり、これによって各接点部7u〜7wの可動接点部tmが固定接触子Cs1,ts2間に接触して、交流電磁接触器7が開成状態となっている。
したがって、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcは、図3(a)に示すように、直流電源2の電源電圧Eを保持している。
【0023】
この出力停止状態で、平滑用コンデンサ4を放電させるには、電磁接触器制御部10のスイッチ部11に時点t2で図3(b)に示すコンデンサ放電指令を与えてオン状態に切り換える。これにより、電圧監視部13が動作状態となり、この状態では、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1より高い電源電圧Eを保持しているので、スイッチ部12をオン状態に制御する。
【0024】
したがって、スイッチ部11がオン状態となったときに交流電磁接触器7のコイルLが通電状態となり、これによって交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2に接触して、交流電磁接触器7が閉成状態となる。このため、平滑用コンデンサ4の正極側が放電用抵抗6、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wを通って平滑用コンデンサ4の負極側に至る放電路が形成されて、下記(1)式で表されるように平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが非線型特性で低下する。
【0025】
【数1】

【0026】
ここで、Eは電源電圧、Rは放電用抵抗6の抵抗値、Cは平滑用コンデンサの静電容量、tは経過時間である。
このとき、交流電磁接触器7が閉成状態となっても、端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1より高いので、電圧監視部13によってスイッチ部12がオン状態に制御される。
そして、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1に以下となると、電圧監視部13によってスイッチ部12がオフ状態に制御される。このとき、コンデンサ放電指令によってスイッチ部11が図3(b)で実線図示のようにオン状態を長く継続していると、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcは零まで低下する。
【0027】
ところが、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1まで低下する前に、スイッチ部11がオフ状態に操作されると、このスイッチ部11を通じての交流電磁接触器7のコイルLへの通電路は遮断されるが、電圧監視部13では、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1より高いので、スイッチ部12がオン状態を継続しており、交流電磁接触器7の開成状態への移行が阻止されてインターロック状態となる。
【0028】
その後、平滑用コンデンサ4の放電が進んで、端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下に低下すると、これが電圧監視部13で検出されて、この電圧監視部13によってスイッチ部12がオフ状態に制御される。
このため、交流電磁接触器7のコイルLへの通電が遮断され、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2から離間して電流遮断状態となり、交流電磁接触器7が開成状態となる。このため、平滑用コンデンサ4の放電路が開放される。この状態で、スイッチ3をオン状態とすることにより、直流出力状態に復帰する。
【0029】
また、コンデンサ放電用指令を、図3(b)で鎖線図示のように、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下となっている時点t3でオフ状態としてスイッチ部11をオフ状態とするとともに、スイッチ3をオン状態とすると、この場合には、電圧監視部13によってスイッチ部12がオフ状態とされているので、交流電磁接触器7のコイルLへの通電が直ちに遮断され、これに応じて交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2から離間し、交流電磁接触器7が直ちに開成状態となる。
【0030】
このように、上記第1の実施形態によると、スイッチ3をオン状態からオフ状態として、直流出力回路1の直流電力の出力を停止する場合に、コンデンサ放電指令によって電磁接触器制御部10のスイッチ部11をオン状態とすると、交流電磁接触器7が閉成状態となり、平滑用コンデンサ4の放電を開始する。
このとき、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1より高い状態では、電磁接触器制御部10の電圧監視部13によって、スイッチ部12がオン状態に制御されてインターロック状態となる。
【0031】
このインターロック状態では、コンデンサ放電指令を取り消してスイッチ部11をオフ状態としてもスイッチ部12によって交流電磁接触器7の閉成状態を継続することができる。このため、交流電磁接触器7が遮断可能電圧E1より高い電圧が印加されている状態で遮断動作されることを確実に回避することができる。したがって、安価で小形な交流電磁接触器7を放電回路のスイッチとして使用した場合でも、何ら問題なく遮断動作を行うことができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態を図4について説明する。
この第2の実施形態では、交流電磁接触器のインターロック状態を電圧監視部で制御する場合に代えてタイマで制御するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図4に示すように、前述した第1の実施形態の図1の構成において、電磁接触器制御部10のスイッチ部11及び12が省略され、これらに代えて、動作電源ラインLw1及びLw2間に、交流電磁接触器7のコイルLとタイマ21の限時復帰a接点22との直列回路が介挿されているとともに、コンデンサ放電指令によってオン・オフされるスイッチ部11とタイマ21との直列回路が介挿されている。そして、スイッチ部11と並列にタイマ21の自己保持接点23が接続されている。
【0033】
ここで、タイマ21のタイムアップ時間は、前述したように、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcは前記(1)式によって変化し、電源電圧E、放電用抵抗6の抵抗値R、平滑用コンデンサ4の静電容量Cが一定であることから、前記(1)式の端子間電圧Vcを遮断可能電圧E1に置換して、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下に低下するまでの時間tを算出し、算出した時間tに余裕時間Δtを加算した時間t+Δtに設定されている。
【0034】
その他の構成は、図1と同様の構成を有し、図1との対応部分には同一の符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
この第2の実施形態によると、直流出力回路1がスイッチ3をオン状態として、直流電力を負荷となるインバータ回路に出力している直流電力出力状態では、前述した第1の実施形態と同様に、コンデンサ放電指令がオフ状態であり、タイマ21もオフ状態を維持している。
【0035】
この直流出力状態から、直流出力回路1を出力停止状態とするために、スイッチ3をオフ状態とした後に、コンデンサ放電指令をオン状態として、電磁接触器制御部10のスイッチ部11がオン状態となることにより、タイマ21に動作電力が供給されて、計時動作を開始する。これと同時にタイマ21の限時復帰a接点22がオン状態となり、これによって交流電磁接触器7のコイルLに通電されて、交流電磁接触7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2に接触して閉成状態となり、平滑用コンデンサ4の放電路が形成される。
【0036】
このとき、タイマ21の自己保持接点23がオン状態となるので、インターロック状態となる。
そして、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが放電により直流電源電圧から減少して、交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下となる所定時間tが経過し、これに余裕時間Δtを加算した時間が経過して、タイマ21がタイムアップすると、自己保持接点23がオフ状態となる。
このとき、コンデンサ放電指令オン状態を継続していてスイッチ部11がオン状態であるときには、タイマ21に動作電力が供給されていることから、限時復帰a接点22はオン状態を継続し、交流電磁接触器7のコイルLへの通電を継続し、交流電磁接触器7を閉成状態に維持し、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが零となるまで放電される。
【0037】
しかしながら、平滑用コンデンサ4の端子間電圧が交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1より高くタイマ21がタイムアップする前に、スイッチ部11がオフ状態となると、この場合には、タイマ21がタイムアップしていないので、自己保持接点23がオン状態を継続し、タイマ21への動作電源の供給状態が継続し、限時復帰a接点22がオン状態を継続することから交流電磁接触器7のコイルLへの通電が継続される。このため、交流電磁接触器7は閉成状態を維持し、遮断可能電圧E1を超える電圧が印加されている状態で、遮断動作となることが確実に防止されるインターロック状態となる。
【0038】
この上記第2の実施形態においても、スイッチ部11がオン状態となったときに、タイマ21が動作状態となって交流電磁接触器7のコイルLへの通電が開始されて、交流電磁接触器7が閉成状態となり、平滑用コンデンサ4の放電路が形成されるが、平滑用コンデンサ4の端子間電圧が交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下に低下するまでの間はタイマ21がタイムアップすることはなく、交流電磁接触器7のコイルLの通電状態が継続され、タイマ21がタイムアップしたときに限時a接点22が開いて交流電磁接触器7のコイルLへの通電が遮断される。このため、交流電磁接触器7にその遮断可能電圧E1を超える電圧が印加されている状態で、交流電磁接触器7が開状態となることを確実に防止することができる。したがって、安価で且つ小形な交流電磁接触器7を使用してコンデンサ放電回路を構成することができ、このコンデンサ放電回路を安価で且つ小形な構成とすることができる。
【0039】
次に、本発明の第3の実施形態を図5について説明する。
この第3の実施形態では、前述した第1の実施形態における交流電磁接触器7の接点部7u〜7wをb接点構造としたものである。
すなわち、第3の実施形態では、図5に示すように、前述した第1の実施形態における交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wがb接点構造とされているとともに、電磁接触器制御部10でスイッチ部12がb接点構造とされてスイッチ部11と直列に接続され、さらに交流電磁接触器7のコイルLと直列に電磁リレー31が介挿され、この電磁リレー31のリレー接点32がスイッチ部12と並列に接続されていることを除いては図1と同様の構成を有し、図1との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0040】
この第3の実施形態によると、スイッチ3がオフ状態となって直流出力回路1が出力停止状態を継続している場合には、コンデンサ充電指令がオフ状態でスイッチ部11がオフ状態とされているので、スイッチ部12の状態にかかわらず交流電磁接触器7のコイルLの通電が遮断されている。このため、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2に接触して平滑用コンデンサ4の放電路が形成され、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが零に放電されている。この状態では、電圧監視部13で検出する平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下であるので、スイッチ部12をオン状態に制御している。
【0041】
この直流出力回路1の出力停止状態からスイッチ部11に対してコンデンサ充電指令を与えてこのスイッチ部11をオン状態とすると、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下であり、電圧監視部13によってスイッチ部12がオン状態に制御されているので、交流電磁接触器7のコイルLが通電状態となり、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子tmが固定接触子ts1,ts2から離間して交流電磁接触器7が開成状態となる。これによって、平滑用コンデンサ4の放電路が開放されて平滑用コンデンサ4が充電可能な状態となる。
【0042】
このように、交流電磁接触器7のコイルLが通電状態となると、これに直列に接続された電磁リレー31が付勢状態となり、その自己保持接点32がオン状態となり、自己保持状態となり、スイッチ部11がオフ状態となるまで、交流電磁接触器7のコイルLの通電状態が確保され、交流電磁接触器7が開成状態に維持される。
その後、スイッチ3をオン状態とすることにより、直流電源2の直流電力が平滑用コンデンサ4に供給されるので、この平滑用コンデンサ4が充電される。この平滑用コンデンサ4の充電が完了すると、その端子間電圧Vcが直流電源2の電源電圧Eと等しくなり、これがインバータ回路8に供給されるので、このインバータ回路8で直流電力を交流電力に電力変換して三相電動モータ9に供給し、この三相電動モータ9が回転駆動される。
【0043】
この直流電力出力状態で、インバータ回路8の動作を停止させるとともにスイッチ3をオフ状態とすることにより、三相電動モータの駆動を停止する直流電力出力停止状態とすることができる。この直流電力出力停止状態で、平滑用コンデンサ4を放電するには、コンデンサ充電指令をオフとしてスイッチ部11をオフ状態とする。このように、スイッチ部11がオフ状態となることにより、交流電磁接触器7のコイルL及び電磁リレー31が非通電状態となり、電磁リレー31の自己保持接点32がオフ状態となる。
【0044】
このため、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2に接触して、交流電磁接触器7が閉成状態となり、平滑用コンデンサ4の放電路が形成されて、平滑用コンデンサ4の蓄積エネルギが放電用抵抗6で消費されて放電される。
このとき、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが電圧監視部13で監視されており、端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1を超えているときには、スイッチ部12がオフ状態となり、端子間電圧Vcが遮断可能電圧E1以下であるときには、スイッチ部12がオン状態となる。
【0045】
したがって、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1を超えている状態で、再度コンデンサ充電指令をスイッチ部11に与えて、これをオン状態とすると、スイッチ部12がオフ状態であり、リレー接点32もオフ状態であるので、交流電磁接触器7のコイルL及び電磁リレー31が非通電状態となり、交流電磁接触器7は閉成状態を維持し、インターロック状態となる。
【0046】
しかしながら、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下に低下すると、電圧監視部13によってスイッチ部12がオン状態に制御されることにより、交流電磁接触器7のコイルLに通電されるとともに、電磁リレー31にも通電されて、リレー接点32が閉じてコイルLへの通電状態が自己保持される。このため、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2から離間して、交流電磁接触器7が開成状態となり、平滑用コンデンサ4の放電路が開放される。
【0047】
また、直流出力回路1が直流電力出力状態にあるときに、事故などで停電状態となると、電磁接触器制御部10でも電力供給が停止されるので、交流電磁接触器7のコイルLが非通電状態となり、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2に接触して、交流電磁接触器7が閉成状態となる。このため、平滑用コンデンサ4の放電路が自動的に形成されて、平滑用コンデンサ4に蓄積されている充電エネルギを放電用抵抗6で消費させ、平滑用コンデンサ4を放電させる。
【0048】
その後、復電したときには、電圧監視部13が動作状態となることから、停電直後で、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1より高いときには、スイッチ部12がオフ状態に制御されるので、交流電磁接触器7のコイルLは非通電状態を維持する。このため、平滑用コンデンサ4の放電状態が継続され、交流電磁接触器7は自己の遮断可能電圧E1より高い電圧が印加された状態で開成されることを確実に防止することができる。
【0049】
その後、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下となると、電圧監視部13によってスイッチ部12がオン状態に制御されることにより、交流電磁接触器7のコイルLに通電されるとともに、電磁リレー31に通電されて、リレー接点32が閉じてコイルLの通電状態が保持されるとともに、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2から離間して電流遮断状態となり、交流電磁接触器7が開成状態に復帰し、平滑用コンデンサ4の放電路が開放され、平滑用コンデンサ4に直流電源2の直流電力が供給されることにより充電状態となる。
【0050】
一方、停電状態がしばらく継続して、平滑用コンデンサ4の放電が進み、その端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下となっている状態で、復電した場合には、電圧監視部13が動作状態に復帰したときに、スイッチ部12をオン状態に制御するので、交流電磁接触器7のコイルL及び電磁リレー31に直ちに通電される。このため、交流電磁接触器7が開成状態となり、平滑用コンデンサ4の放電路が直ちに開放される。
【0051】
この第3の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様に、直流出力回路1で負荷としてのインバータ回路8に直流電力を供給している状態で、スイッチ3をオフ状態としてから、平滑用コンデンサ4を放電させるために、電磁接触器制御部10のスイッチ部11をオフ状態とした場合には、交流電磁接触器7が直ちに閉成状態に移行して、平滑用コンデンサ4の放電路が形成される。
【0052】
その後に、スイッチ部11をオン状態に復帰させた場合には、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧E1以下となったときに、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2から離間して電流遮断状態となるので、安価で小形な交流電磁接触器7を使用して、平滑用コンデンサ4の放電回路を構成することができる。
【0053】
しかも、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wをb接点構成としているので、事故等で停電状態となったときに、交流電磁接触器7を直ちに閉成状態として平滑用コンデンサ4の放電路を自動的に形成することができ、保守作業者の安全を確保することができる。その後、復電した場合には、交流電磁接触器の遮断可能電圧以下になってから交流電磁接触器7が開状態となるので、交流電磁接触器7に高い交流電圧が印加されている状態で遮断状態となることを確実に防止することができる。
【0054】
次に、本発明の第4の実施形態を図6について説明する。
この第4の実施形態では、前述した第2の実施形態において、交流電磁接触器の各接点部をb接点構成としたものである。
すなわち、第4の実施形態では、図6に示すように、前述した図4の構成において、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wがb接点構成とされているとともに、電磁接触器制御部10のスイッチ部12がコンデンサ充電指令によってオン動作されることを除いては図4と同様の構成を有し、図4との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0055】
この第4の実施形態によると、上述した第3の実施形態と同様に、スイッチ3をオン状態として、直流出力回路1で直流電源2の直流電力をインバータ回路に出力している状態で、事故などの何らかの原因で停電状態となると、交流電磁接触器7のコイルLに供給されている作動電力が遮断されることにより、交流電磁接触器7の各接点部7u〜7wの可動接触子Cmが固定接触子Cs1,Cs2に接触して、交流電磁接触器7が閉成状態となる。このため、平滑用コンデンサ4の放電路が自動的に形成されることになり、平滑用コンデンサ4が放電される。
【0056】
この停電状態がしばらく継続する場合には、平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが零まで低下する。
そして、停電状態から復電すると、タイマ21に動作電源が投入されるので、タイマ21のコイルに通電開始された時点から自己保持接点23が閉じ、タイマ21がタイムアップした時点で限時a接点22が閉じて交流電磁接触器7のコイルLに通電される。このため、復電時に平滑用コンデンサ4の端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧より高い場合であっても、タイマ21がタイムアップするまで交流電磁接触器7が閉状態を維持して平滑用コンデンサCを放電させて、その端子間電圧Vcが交流電磁接触器7の遮断可能電圧より低下してから交流電磁接触器7が開かれる。
【0057】
このように、上記第4の実施形態でも、前述した第3の実施形態と同様に、事故等で停電状態となったときに、交流電磁接触器7を直ちに閉成状態として平滑用コンデンサ4の放電路を自動的に形成することができ、保守作業者の安全を確保することができる。その後、復電した場合には、交流電磁接触器の遮断可能電圧以下になってから交流電磁接触器7が開状態となるので、交流電磁接触器7に高い交流電圧が印加されている状態で遮断状態となることを確実に防止することができる。
【0058】
なお、上記実施形態においては、直流源として直流電源2を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、直流電源2として低い電圧の直流電源を適用し、この直流電源の直流電力をチョッパ回路で昇圧するようにしてもよく、さらには交流電力を直流電力に電力変換するコンバータ回路を適用するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、負荷としてインバータ回路を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、直流電力を必要とする任意の負荷を適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…直流出力回路、2…直流電源、3…スイッチ、4…平滑用コンデンサ、5…コンデンサ放電回路、6…放電用抵抗、7…交流電磁接触器、7u…U相接点部、7v…V相接点部、7w…W相接点部、7a〜7d…接続線、8…インバータ回路、9…三相電動モータ、10…電磁接触器制御部、11,12…スイッチ部、13…電圧監視部、21…タイマ、22…限時a接点、23…自己保持接点、31…電磁リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源部に接続された正極側ライン及び負極側ライン間に平滑用コンデンサを接続し、前記正極ラインの前記直流電源部及び平滑用コンデンサ間にスイッチを介挿した直流出力回路のコンデンサ放電回路であって、
前記正極側ライン及び負極側ライン間に、前記平滑用コンデンサと並列に、放電用抵抗と交流電磁接触器とを直列に接続し、該交流電磁接触器を、前記スイッチをオフ状態としたときに、前記交流電磁接触器をオン状態とし、前記平滑用コンデンサの端子間電圧が当該交流電磁接触器の遮断可能な電圧以下に低下したときにオフ状態に制御する電磁接触器制御部を備えたことを特徴とする直流出力回路のコンデンサ放電回路。
【請求項2】
前記交流電磁接触器は、三相交流のU相接点部、V相接点部及びW相接点部が直列に接続されて直列回路が形成され、該直列回路の一端が前記放電用抵抗に接続され、他端が負極側ラインに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の直流出力回路のコンデンサ放電回路。
【請求項3】
前記交流電磁接触器は、U相接点部、V相接点部及びW相接点部がそれぞれb接点で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の直流出力回路のコンデンサ放電回路。
【請求項4】
前記電磁接触器制御部は、前記平滑用コンデンサの端子間電圧を検出する電圧検出部を備え、該電圧検出部で検出した端子間電圧が前記交流電磁接触器の遮断可能電圧以下になったときに当該交流電磁接触器をオフ状態に制御するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の直流出力回路のコンデンサ放電回路。
【請求項5】
前記電磁接触器制御部は、前記交流電磁接触器をオン状態とした時点からの前記平滑用コンデンサの放電時間を計測するタイマを備え、該タイマの計測時間が前記平滑用コンデンサの端子間電圧が前記交流電磁接触器の遮断可能電圧以下になる放電時間に達したときに当該交流電磁接触器をオフ状態に制御するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の直流出力回路のコンデンサ放電回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−191716(P2012−191716A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51858(P2011−51858)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(508296738)富士電機機器制御株式会社 (299)
【Fターム(参考)】