説明

直流機器およびDC配電システム

【課題】直流機器への電力供給のオンオフ時に直流供給線路に発生する電圧変動を抑制する。
【解決手段】直流機器102は、AC/DCコンバータ112に接続された直流供給線路Wdcを介してAC/DCコンバータ112から直流電力が供給される。直流機器102には直流電力により駆動される主回路1が設けられ、直流機器102における主回路1と直流供給線路Wdcとの間には、主回路1への電力供給のオンオフ時に直流供給線路Wdcに発生する電圧変動を抑制するローパスフィルタ2が挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源に接続された直流供給線路を介して直流電源から複数台の直流機器に直流電力を供給するDC配電システムに用いられる直流機器およびDC配電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光ダイオード(LED)を光源として備える照明器具や、パーソナルコンピュータなど直流電力の供給を受けて動作する直流機器が種々提供されている。この種の直流機器のうち、商用電源等からの交流電力を供給する一般的な交流コンセントに接続して使用されるものは、整流回路を含み交流電源を直流電源に変換するAC/DC変換回路を具備(内蔵あるいは外付けのACアダプタに具備)することにより、交流コンセントからの電力供給で動作可能な構成を採用している(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
一方、本願出願人は、たとえば住宅などの分電盤内に配設したAC/DCコンバータによって商用電源等の交流電源を直流電源に変換し、各部屋に設置され正極および負極の一対の給電部を有する直流コンセント等の直流アウトレットに対して直流供給線路を介して分電盤から直流電力を配電するDC配電システムを提案している。このDC配電システムにおいて直流機器を使用する場合、直流機器は直流コンセントに接続されることにより交流電力ではなく直流電力が供給されることとなるため、直流機器に上記AC/DC変換回路が不要になる。
【特許文献1】特開2007−59156号公報(第4−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したDC配電システムにおいて、直流電源(AC/DCコンバータ)と直流機器との間に挿入されたスイッチや直流機器に設けられた電源スイッチが操作されるなどして、直流機器への電力供給がオンオフされると、直流機器への印加電圧が急変して過渡状態の印加電圧に発振電圧やサージ電圧等の過渡電圧(たとえば回路のキャパシタンス成分、インダクタンス成分等に起因する)が発生することにより、直流供給線路に前記過渡電圧が重畳され電圧変動が発生することがある(図3(b)参照)。直流供給線路に電圧変動が生じると、この直流供給線路に接続された他の直流機器の誤動作や不動作を生じることがある。また、直流供給線路は直流電力の給電路であるとともに通信路としても兼用されることがあるが、この場合には前記電圧変動が通信信号に影響して通信エラーを生じる可能性もある。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであって、直流供給線路に発生する電圧変動を抑制することができる直流機器およびDC配電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、直流電源に接続された直流供給線路を介して直流電源から複数台の直流機器に直流電力を供給するDC配電システムに用いられる直流機器であって、直流電力により駆動される主回路と、当該主回路と直流供給線路との間に挿入され、主回路への電力供給のオンオフ時に直流供給線路に発生する電圧変動を抑制するローパスフィルタとを備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、主回路と直流供給線路との間にはローパスフィルタが挿入されているから、主回路への電力供給のオンオフ時に主回路への印加電圧が急変しても、過渡状態の印加電圧に発生する発振電圧やサージ電圧等の過渡電圧はローパスフィルタで抑制され、したがって直流供給線路に発生する電圧変動を抑制することができる。その結果、直流供給線路に接続された他の直流機器の誤動作や不動作、あるいは直流供給線路を通信線として用いる場合の通信エラー等を防止することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ローパスフィルタが、直流供給線路からの直流電力を整流して平滑する整流平滑回路からなることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ローパスフィルタが整流平滑回路からなるので、比較的簡単な構成で直流供給線路に発生する電圧変動を抑制することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記直流電源の出力電圧が50V以下であることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、直流供給線路からの入力電圧が50V以下の比較的狭い範囲に制限されるため、入力電圧が50Vを超える場合に比べて、ローパスフィルタの耐圧を小さく設定することができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の直流機器を複数台備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、複数台の直流機器のうち一部の直流機器への電力供給のオンオフ時に発生する発振電圧やサージ電圧等の過渡電圧がローパスフィルタで抑制され、直流供給線路に発生する電圧変動を抑制することができる。したがって、直流供給線路に接続された他の直流機器の誤動作や不動作、あるいは直流供給線路を通信線として用いる場合の通信エラー等を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、直流供給線路に発生する電圧変動を抑制することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下の実施形態で説明する直流機器は、図2に示すように、たとえば住宅などの分電盤110内に配設したAC/DCコンバータ112によって商用電源等の交流電源ACを直流電源に変換し、各部屋に設置され正極および負極の一対の給電部を有する直流コンセント131等の直流アウトレットに対して分電盤110から直流電力を配電するDC配電システムに用いられるものである。
【0016】
ここで、DC配電システムについて以下に図2を参照して簡単に説明する。
【0017】
以下の説明では、DC配電システムを適用する建物として戸建て住宅の家屋を想定して説明するが、DC配電システムの技術思想を集合住宅に適用することを妨げるものではない。家屋Hには、図2に示すように、直流電力を出力する直流電力供給部101と、直流電力により駆動される負荷としての直流機器102とが設けられ、直流電力供給部101の出力端部に接続した直流供給線路Wdcを通して直流機器102に直流電力が供給される。直流電力供給部101と直流機器102との間には、直流供給線路Wdcに流れる電流を監視し、異常を検知したときに直流給電線路Wdc上で直流電力供給部101から直流機器102への給電を制限ないし遮断する直流ブレーカ114が設けられる。
【0018】
直流供給線路Wdcは、直流電力の給電路であるとともに通信路としても兼用されており、高周波の搬送波を用いてデータを伝送する通信信号を直流電圧に重畳することにより直流供給線路Wdcに接続された機器間での通信を可能にしている。この技術は、交流電力を供給する電力線において交流電圧に通信信号を重畳させる電力線搬送技術と類似した技術である。
【0019】
直流供給線路Wdcは、直流電力供給部101を介して宅内サーバ116に接続される。宅内サーバ116は、宅内の通信網(以下、「宅内網」という)を構築する主装置であり、宅内網において直流機器102が構築するサブシステムなどと通信を行う。
【0020】
図示例では、サブシステムとして、パーソナルコンピュータ、無線アクセスポイント、ルータ、IP電話機のような情報系の直流機器102からなる情報機器システムK101、照明器具のような照明系の直流機器102からなる照明システムK102,K105、来客対応や侵入者の監視などを行う直流機器102からなるインターホンシステムK103、火災感知器のような警報系の直流機器102からなる住警器システムK104などがある。各サブシステムは、自立分散システムを構成しており、サブシステム単独でも動作が可能になっている。
【0021】
上述した直流ブレーカ114は、サブシステムに関連付けて設けられており、図示例では、情報機器システムK101、照明システムK102およびインターホンシステムK103、住警器システムK104、照明システムK105に関連付けて4個の直流ブレーカ114を設けている。1台の直流ブレーカ114に複数個のサブシステムを関連付ける場合には、サブシステムごとに直流供給線路Wdcの系統を分割する接続ボックス121が設けられる。図示例においては、照明システムK102とインターホンシステムK103との間に接続ボックス121が設けられている。
【0022】
情報機器システムK101としては、壁コンセントあるいは床コンセントの形態で家屋Hに先行配置(家屋Hの建築時に施工)される直流コンセント131に接続される直流機器102からなる情報機器システムK101が設けられる。
【0023】
照明システムK102、K105としては、家屋Hに先行配置される照明器具(直流機器102)からなる照明システムK102と、天井に先行配置される引掛シーリング132に接続する照明器具(直流機器102)からなる照明システムK105とが設けられる。引掛シーリング132には、家屋Hの内装施工時に施工業者が照明器具を取り付けるか、または家人自身が照明器具を取り付ける。
【0024】
照明システムK102を構成する直流機器102である照明器具に対する制御の指示は、赤外線リモコン装置を用いて与えるほか、直流供給線路Wdcに接続されたスイッチ141から通信信号を用いて与えることができる。すなわち、スイッチ141は直流機器102とともに通信の機能を有している。また、スイッチ141の操作によらず、宅内網の別の直流機器102あるいは宅内サーバ116から通信信号により制御の指示がなされることもある。照明器具への指示には、点灯、消灯、調光、点滅点灯などがある。
【0025】
上述した直流コンセント131、引掛シーリング132には、任意の直流機器102を接続することができ、接続された直流機器102に直流電力を出力するから、以下では直流コンセント131、引掛シーリング132を区別する必要がない場合には「直流アウトレット」と呼ぶ。
【0026】
これらの直流アウトレットは、直流機器102に直接設けた接触子(図示せず)または接続線を介して設けた接触子(図示せず)が差し込まれる差込式の接続口(給電部)が器体に開口し、接続口に差し込まれた接触子に直接接触する接触子受けが器体に保持された構造を有している。すなわち、直流アウトレットは接触式で給電を行う。直流アウトレットに接続された直流機器102が通信機能を有する場合には、直流供給線路Wdcを通して通信信号を伝送することが可能になる。直流機器102だけではなく直流アウトレットにも通信機能が設けられている。
【0027】
宅内サーバ116は、宅内網に接続されるだけではなく、インターネットを構築する広域網NTに接続される接続口を有している。宅内サーバ116が広域網NTに接続されている場合には、広域網NTに接続されたコンピュータサーバであるセンタサーバ200によるサービスを享受することができる。
【0028】
センタサーバ200が提供するサービスには、広域網NTを通して宅内網に接続された機器(主として直流機器102であるが通信機能を有した他の機器も含む)の監視や制御を可能にするサービスがある。このサービスにより、パーソナルコンピュータ、インターネットTV、移動体電話機などのブラウザ機能を備える通信端末(図示せず)を用いて宅内網に接続された機器の監視や制御が可能になる。
【0029】
宅内サーバ116は、広域網NTに接続されたセンタサーバ200との間の通信と、宅内網に接続された機器との間の通信との両方の機能を備え、宅内網の機器に関する識別情報(ここでは、IPアドレスを用いるものとする)の取得の機能を備える。
【0030】
宅内サーバ116は、センタサーバ200との通信機能を用いることにより、広域網NTに接続された通信端末からセンタサーバ200を通して宅内の機器の監視や制御を可能にする。センタサーバ200は、宅内の機器と広域網NT上の通信端末とを仲介する。
【0031】
通信端末から宅内の機器の監視や制御を行う場合は、監視や制御の要求をセンタサーバ200に記憶させ、宅内の機器は定期的に片方向のポーリング通信を行うことにより、通信端末からの監視や制御の要求を受信する。この動作により、通信端末から宅内の機器の監視や制御が可能になる。
【0032】
また、宅内の機器において火災検知など通信端末に通知すべきイベントが生じたときには、宅内の機器からセンタサーバ200に通知し、センタサーバ200から通信端末に対して電子メールによる通知を行う。
【0033】
宅内サーバ116における宅内網との通信機能のうち重要な機能は、宅内網を構成する機器の検出と管理である。宅内サーバ116では、UPnP(Universal Plug and Play)を応用して宅内網に接続された機器を自動的に検出する。宅内サーバ116はブラウザ機能を有する表示器117を備え、検出した機器の一覧を表示器117に表示する。この表示器117はタッチパネル式もしくは操作部が付設された構成を有し、表示器117の画面に表示された選択肢から所望の内容を選択する操作が可能になっている。したがって、宅内サーバ116の利用者(施工業者あるいは家人)は、表示器117の画面上で機器の監視ないし制御が可能になる。表示器117は宅内サーバ116とは分離して設けてもよい。
【0034】
宅内サーバ116では、機器の接続に関する情報を管理しており、宅内網に接続された機器の種類や機能とアドレスとを把握する。したがって、宅内網の機器を連動動作させることができる。機器の接続に関する情報は上述のように自動的に検出されるが、機器を連動動作させるには、機器自身が保有する属性により自動的に関係付けを行うほか、宅内サーバ116にパーソナルコンピュータのような情報端末を接続し、情報端末のブラウザ機能を利用して機器の関係付けを行うこともできる。
【0035】
機器の連動動作の関係は各機器がそれぞれ保持する。したがって、機器は宅内サーバ116を通すことなく連動動作することができる。各機器について、連動動作の関係付けを行うことにより、たとえば、機器であるスイッチの操作により、機器である照明器具の点灯あるいは消灯の動作を行うことが可能になる。また、連動動作の関係付けはサブシステム内で行うことが多いが、サブシステムを超える関係付けも可能である。
【0036】
ところで、直流電力供給部101は、基本的には、商用電源のように宅外から供給される交流電源ACの電力変換により直流電力を生成する。図示する構成では、交流電源ACは、分電盤110に内器として取り付けられた主幹ブレーカ111を通して、スイッチング電源を含むAC/DCコンバータ112に入力される。AC/DCコンバータ112から出力される直流電力は、協調制御部113を通して各直流ブレーカ114に接続される。
【0037】
直流電力供給部101には、交流電源ACから電力が供給されない期間(たとえば、商用電源ACの停電期間)に備えて二次電池162が設けられている。また、直流電力を生成する太陽電池161や燃料電池163を併用することも可能になっている。交流電源ACから直流電力を生成するAC/DCコンバータ112を備える主電源に対して、太陽電池161や二次電池162や燃料電池163は分散電源になる。なお、図示例において、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163は出力電圧を制御する回路部を含み、二次電池162は放電だけではなく充電を制御する回路部も含んでいる。
【0038】
分散電源のうち太陽電池161や燃料電池163は必ずしも設けなくてもよいが、二次電池162は設けるのが望ましい。二次電池162は主電源や他の分散電源により適時充電され、二次電池162の放電は、交流電源ACから電力が供給されない期間だけではなく必要に応じて適時に行われる。二次電池162の充放電や主電源と分散電源との協調は、協調制御部113により行われる。すなわち、協調制御部113は、直流電力供給部101を構成する主電源および分散電源から直流機器102への電力の配分を制御する直流電力制御部として機能する。なお、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163の出力を交流電力に変換し、AC/DCコンバータ112の入力電力として用いる構成を採用してもよい。
【0039】
直流機器102の駆動電圧は機器に応じた複数種類の電圧から選択されるから、協調制御部113にDC/DCコンバータを設け、主電源および分散電源から得られる直流電圧を必要な電圧に変換するのが望ましい。通常は、1系統のサブシステム(もしくは1台の直流ブレーカ114に接続された直流機器102)に対して1種類の電圧が供給されるが、1系統のサブシステムに対して3線以上を用いて複数種類の電圧を供給するように構成してもよい。あるいはまた、直流供給線路Wdcを2線式とし、線間に印加する電圧を時間経過に伴って変化させる構成を採用することも可能である。DC/DCコンバータは、直流ブレーカと同様に複数に分散して設けてもよい。
【0040】
上述の構成例では、AC/DCコンバータ112を1個だけ図示しているが、複数個のAC/DCコンバータ112を並設することが可能であり、複数個のAC/DCコンバータ112を設けるときには、負荷の大きさに応じて運転するAC/DCコンバータ112の台数を増減させるのが望ましい。
【0041】
上述したAC/DCコンバータ112、協調制御部113、直流ブレーカ114、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163には通信機能が設けられており、主電源および分散電源や直流機器102を含む負荷の状態に対処する連携動作を行うことを可能にしている。この通信に用いる通信信号は、直流機器2に用いる通信信号と同様に直流電圧に重畳する形式で伝送する。
【0042】
上述の例では主幹ブレーカ111から出力された交流電力をAC/DCコンバータ112により直流電力に変換するために、AC/DCコンバータ112を分電盤110内に配置しているが、主幹ブレーカ111の出力側において分電盤110内に設けた分岐ブレーカ(図示せず)で交流供給線路を複数系統に分岐し、各系統の交流供給線路にAC/DCコンバータを設けて系統ごとに直流電力に変換する構成を採用してもよい。
【0043】
この場合、家屋Hの各階や各部屋を単位として直流電力供給部101を設けることができるから、直流電力供給部101を系統別に管理することができ、しかも、直流電力を利用する直流機器102との間の直流供給線路Wdcの距離が小さくなるから、直流供給線路Wdcでの電圧降下による電力損失を低減させることができる。また、主幹ブレーカ111および分岐ブレーカを分電盤110に収納し、AC/DCコンバータ112と協調制御部113と直流ブレーカ114と宅内サーバ116とを分電盤110とは別の盤に収納してもよい。
【0044】
以下では、上述したDC配電システムにおいて照明システムK102を構築する照明器具を直流機器102の一例として説明するが、本発明はこの種の直流機器102以外にも適用することができる。ここで、直流アウトレットから直流機器102に印加される直流電圧の大きさは、交流の商用電源に比較して低く(たとえば24V、50Vなど)設定されている。
【0045】
(実施形態)
本実施形態の直流機器102は、図1に示すように直流電源としてのAC/DCコンバータ112に対し直流供給線路Wdcを介して接続され、直流電源からの直流電力の供給を受けて駆動される(つまり光源を点灯させる)ものである。なお、図1では、正極および負極の一対の直流供給線路Wdcのうち正極の直流供給線路Wdcのみを示し、負極の直流供給線路Wdcの図示は省略している。
【0046】
図示例において、AC/DCコンバータ112は、交流電源ACから交流電力が供給されることによりダイオードD1を介して平滑用のコンデンサC1の両端に直流電圧を発生するものであって、コンデンサC1の両端電圧を基準電圧Vref1に維持するようにコンパレータComp1の出力を用いてフィードバック制御される。コンデンサC1の両端に生じる直流電圧は、直流供給線路Wdcを介して直流機器102に供給される。これにより、正極および負極の一対の直流供給線路Wdcの線間電圧Vdcは、定常時には基準電圧Vref1に維持される。なお、図示例では、ダイオードD1およびコンデンサC1をAC/DCコンバータ112と別に示しているが、ダイオードD1およびコンデンサC1をAC/DCコンバータ112に含めてもよい。
【0047】
ところで、図1ではそれぞれ構成の異なる3台の直流機器102a〜102c(以下、特に区別しないときは単に直流機器102という)を示している。以下、各直流機器102の構成について説明する。
【0048】
図中全ての直流機器102に共通の構成として、直流機器102は、直流電力により駆動され光源(図示せず)を点灯させる主回路1と、直流供給線路Wdcと主回路1との間に挿入されるローパスフィルタ2とを備えている。詳しくは後述するが、ローパスフィルタ2は主回路1への電力供給のオンオフ時に直流供給線路Wdcに発生する電圧変動を抑制するように、回路定数が設定されている。
【0049】
直流機器102aおよび直流機器102cはそれぞれスイッチSW1,SW3を介して直流供給線路Wdcに接続され、スイッチSW1のオン時に直流機器102aへ電力供給され、スイッチSW3のオン時には直流機器102cへ電力供給されるように構成されている。これらのスイッチSW1,SW3は、上記スイッチ141のように直流機器102と通信を行うものではなく、オン時に直流電力供給部101から直流機器102へ直流電力を供給しオフ時には前記直流電力を遮断するものである。
【0050】
一方、直流機器102bは、主回路1とローパスフィルタ2との間にスイッチSW2を具備するものであって、直流供給線路Wdcに対して直接接続され、前記スイッチSW2のオン時に主回路1へ電力供給されるように構成されている。
【0051】
しかして、上記各スイッチSW1〜SW3をオンすれば対応する各直流機器102の主回路1へ直流電源(AC/DCコンバータ112)からの直流電力が供給され(電力供給がオンし)、前記各スイッチSW1〜SW3をオフすれば対応する各直流機器102の主回路1への前記直流電力の供給が停止する(電力供給がオフする)。そのため、上記ローパスフィルタ2がない従来構成では、図3(b)に示すようにスイッチSW1がオンした時点Tonにおいて、直流機器102aへの印加電圧Vinが急峻に上昇して直流供給線路Wdcから直流機器102aへ印加される直流電圧に発振電圧やサージ電圧等の過渡電圧が重畳することにより、直流供給線路Wdcの線間電圧Vdcに前記過渡電圧が重畳されて電圧変動が発生する。同様に、スイッチSW1がオフした時点Toffにおいて、直流機器102aへの印加電圧Vinが急峻に低下して過渡状態の印加電圧Vinに前記過渡電圧(発振電圧、サージ電圧等)が重畳されることにより、直流供給線路Wdcの線間電圧Vdcに前記過渡電圧が重畳されて電圧変動が発生する。
【0052】
これに対して、本実施形態では、主回路1と直流供給線路Wdcとの間にローパスフィルタ2が介在するので、図3(a)に示すようにスイッチSW1〜SW2のオンオフに伴う主回路1への電力供給のオンオフ時(図中、時刻Ton,Toff)に、主回路1への印加電圧Vinが急変しても、このとき発生する高周波成分を含んだ前記過渡電圧はローパスフィルタ2で吸収(抑制)されることとなる。したがって、直流供給線路Wdcの線間電圧Vdcに発生する電圧変動を抑制することができる。
【0053】
以上説明した本実施形態の直流機器102によれば、直流機器102への電力供給のオン時あるいはオフ時に直流供給線路Wdcに生じる電圧変動はローパスフィルタ2により抑制されるので、前記電圧変動により直流供給線路Wdcに接続された他の直流機器102の誤動作や不動作を生じることを回避することができる。
【0054】
また、図1に示すスイッチ141のように、直流供給線路Wdcを通信路に利用して通信を行う通信回路3を有する機器が直流供給線路Wdcに接続されている場合には、本実施形態の構成によれば、直流供給線路Wdcに生じる電圧変動が抑制されるから、当該電圧変動が通信信号に影響して生じる通信エラーを防止できるという利点もある。なお、通信回路3を有する直流機器102に上記ローパスフィルタ2を設ける場合には、通信回路3が直流供給線路Wdcとローパスフィルタ2との間に挿入される構成とすることで、通信回路3においてはローパスフィルタ2の影響を受けずに通信できるようにする。
【0055】
以下に、ローパスフィルタ2の回路構成について図1を参照して説明する。
【0056】
直流機器102aおよび直流機器102bにおいては、ローパスフィルタ2は、正極の直流供給線路Wdcと主回路1との間に挿入された整流ダイオードD2と、整流ダイオードD2のカソードと回路グランド(ここでは、負極の直流供給線路Wdc)との間に接続された平滑コンデンサC2とで構成された整流平滑回路からなる。
【0057】
また、直流機器102bにおけるローパスフィルタ2は、正極の直流供給線路Wdcと主回路1との接続点と回路グランド(ここでは、負極の直流供給線路Wdc)との間に接続された、抵抗R1およびコンデンサC3の直列回路からなる。
【0058】
上述したいずれのローパスフィルタ2であっても、主回路1への電力供給のオンオフ時に直流供給線路Wdcに発生する電圧変動については吸収し、主回路1に供給される直流電力については通過させるように、回路定数の設計によりカットオフ周波数が低く設定される。なお、ここでは、直流アウトレットから直流機器102に印加される直流電圧は50V以下としており、これにより、ローパスフィルタ2の耐圧を比較的小さく設定することができる。
【0059】
上記実施形態では、直流機器102として照明器具を例示したが、本発明の構成は、照明器具に限らず直流電力により駆動される種々の直流機器102に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す概略図である。
【図2】同上の直流機器が用いられるDC配電システムを示すシステム構成図である。
【図3】(a)は同上の動作説明図、(b)は(a)と比較する従来構成の動作説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 主回路
2 ローパスフィルタ
102,102a〜102c 直流機器
112 AC/DCコンバータ(直流電源)
Wdc 直流供給線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続された直流供給線路を介して直流電源から複数台の直流機器に直流電力を供給するDC配電システムに用いられる直流機器であって、直流電力により駆動される主回路と、当該主回路と直流供給線路との間に挿入され、主回路への電力供給のオンオフ時に直流供給線路に発生する電圧変動を抑制するローパスフィルタとを備えることを特徴とする直流機器。
【請求項2】
前記ローパスフィルタは、直流供給線路からの直流電力を整流して平滑する整流平滑回路からなることを特徴とする請求項1記載の直流機器。
【請求項3】
前記直流電源の出力電圧は50V以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直流機器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の直流機器を複数台備えることを特徴とするDC配電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−159654(P2009−159654A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331459(P2007−331459)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】