説明

研削装置

【課題】移動基台に装着された研削手段の原点位置を検出する際に、原点位置検出センサーの脱落等に起因して移動基台に装着された研削手段が暴走するのを防止する。
【解決手段】研削手段の原点位置を検出する際には、研削送り手段のサーボモータを逆転駆動し研削手段が装着された移動基台を離反規制位置検出手段に達するまで上昇移動して離反規制位置に位置付けた後、サーボモータを正転駆動して移動基台を離反規制位置から下降移動し、原点位置検出センサーが遮光信号を出力した場合には原点位置調整工程を実施し、移動基台の下降移動時において移動量検出手段からの検出信号に基づいて移動基台の移動量が離反規制位置から原点位置までの距離に達しているにも拘わらず原点位置検出センサーが遮光信号を出力しない場合には表示手段に異常表示するとともに、研削送り手段の該サーボモータを停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を研削するための研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード、CCD等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述したようにして分割される半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハは、ストリートに沿って切断する前に研削装置によって裏面が研削され、所定の厚みに加工される。ウエーハの裏面を研削する研削装置は、ウエーハを保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面上に保持されたウエーハを研削する研削ホイールを備えた研削手段と、該研削手段が装着された移動基台と、該移動基台を該チャックテーブルの保持面に垂直な方向(研削送り方向)に移動可能に支持する案内レールを備えた支持手段と、該研削手段が装着された該移動基台を該案内レールに沿って研削送りする研削送り手段とを具備している。
【0004】
研削送り手段は、チャックテーブルの保持面から例えば10mm離反した原点位置から所定の研削送り速度で研削送りを開始する。このため研削装置は、研削手段の原点位置を検出するための原点位置検出手段を備えている。この原点位置検出手段は、研削手段が装着された移動基台の研削送り方向の位置を検出するリニアスケール等の位置検出器を備え、研削送り手段を下降作動して研削ホイールの研削面をチャックテーブルの保持面に接触させ、次に研削送り手段を上昇作動して位置検出器からの検出信号が例えば10mmに達した時点の研削手段が装着された移動基台の位置を原点位置として設定している。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
しかるに、上述した原点位置検出方法においては、研削ホイールの研削面をチャックテーブルの保持面に接触させるので、研削送り手段による研削手段が装着された移動基台の下降作動を慎重に実施しないと、研削ホイールの研削面やチャックテーブルの保持面を損傷させる虞がある。このため、研削送り手段による研削手段が装着された移動基台の下降作動速度を例えば1μm/秒程度にしなければならず、原点位置の検出作業に時間を要するという問題がある。
【0006】
上述した原点位置検出方法における問題に鑑み、研削手段が装着された移動基台を移動可能に支持する支持手段に装着され発光素子と該発光素子と対向して配設された受光素子を備えた原点位置検出センサーと、移動基台に取り付けられ移動基台が原点位置に位置付けられると原点位置検出センサーの発光素子と受光素子との間に侵入して発光素子から受光素子への光を遮光する遮光板と、原点位置検出センサーからの検出信号に基づいて移動基台に装着された研削手段の原点位置を設定する制御手段を備えた原点位置検出装置が実用化されている。この原点位置検出装置は、研削送り手段を上昇作動して研削手段が装着された移動基台をチャックテーブルから所定距離離反した離反規制位置に位置付け、次に、研削送り手段を下降作動して研削手段が装着された移動基台をチャックテーブルに近接する方向に例えば5mm/秒の移動速度で移動し、遮光板が原点位置検出センサーの光を遮光した時点を移動基台に装着された研削手段の原点位置として設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−15570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、移動基台に装着された研削手段の原点位置を検出する際に、原点位置検出センサーが故障したり、原点位置検出センサーが取り付け位置から脱落していると、移動基台に装着された研削手段が原点位置を過ぎても送り続けられ、チャックテーブルが研削手段の研削ホイールと対向する研削域に位置付けられている場合には研削ホイールがチャックテーブルに衝突して破損するという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、移動基台に装着された研削手段の原点位置を検出する際に、原点位置検出センサーの脱落等に起因して移動基台に装着された研削手段が暴走するのを防止することができる研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削するための研削ホイールを備えた研削手段と、該研削手段が装着された移動基台と、該移動基台を該チャックテーブルの保持面に垂直な方向に移動可能に支持する案内レールを備えた支持手段と、該研削手段が装着された該移動基台を該案内レールに沿って研削送りするための正転・逆転可能なサーボモータを備えた研削送り手段と、を具備する研削装置において、
該支持手段に装着され発光素子と該発光素子と対向して配設された受光素子を備えた原点位置検出センサーと、該移動基台に取り付けられ該移動基台が原点位置に位置付けられると該原点位置検出センサーの発光素子と受光素子との間に侵入して発光素子から受光素子への光を遮光する遮光板と、原点位置から上方に所定距離離反した離反規制位置に該移動基台が達したことを検出する離反規制位置検出手段と、該研削送り手段による該移動基台の移動量を検出する移動量検出手段と、該離反規制位置検出手段と原点位置検出センサーおよび該移動量検出手段からの検出信号に基づいて該研削送り手段を制御する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該サーボモータを逆転駆動し該移動基台を該離反規制位置検出手段に達するまで上昇移動して該離反規制位置に位置付けた後、該サーボモータを正転駆動して該移動基台を該離反規制位置から下降移動し、該原点位置検出センサーが遮光信号を出力した場合には原点位置調整工程を実施し、該移動基台の下降移動時において該移動量検出手段からの検出信号に基づいて該移動基台の移動量が該離反規制位置から該原点位置までの距離に達しているにも拘わらず該原点位置検出センサーが遮光信号を出力しない場合には表示手段に異常表示するとともに、該研削送り手段の該サーボモータを停止する、
ことを特徴とする研削装置が提供される。
【0011】
上記原点位置調整工程において制御手段は、サーボモータを逆転駆動して原点位置検出センサーが受光信号を出力するまで移動基台を上昇移動し、原点位置検出センサーが受光信号を出力したならばサーボモータを正転駆動して移動基台を下降移動し、原点位置検出センサーが遮光信号を出力した時点で原点位置を設定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による研削装置は以上のように構成され、制御手段は、研削送り手段のサーボモータを逆転駆動し移動基台を離反規制位置検出手段に達するまで上昇移動して離反規制位置に位置付けた後、サーボモータを正転駆動して移動基台を該離反規制位置から下降移動し、原点位置検出センサーが遮光信号を出力した場合には原点位置調整工程を実施し、移動基台の下降移動時において移動量検出手段からの検出信号に基づいて移動基台の移動量が離反規制位置から原点位置までの距離に達しているにも拘わらず原点位置検出センサーが遮光信号を出力しない場合には表示手段に異常表示するとともに、研削送り手段の該サーボモータを停止するので、原点位置検出センサーが脱落等によって正常に機能していない場合において移動基台に装着されている研削手段の暴走を防止することができるとともに、オペレータに原点位置検出センサーの異常を警報することができる。従って、研削手段の暴走により研削ホイールがチャックテーブルに衝突して両者が損傷するという問題を未然に防止することができるとともに、原点位置検出センサーの整備や交換を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従って構成された研削装置の斜視図。
【図2】図1に示す研削装置に装備される制御手段のブロック構成図。
【図3】図2に示す制御手段の原点位置検出工程の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された研削装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本発明に従って構成された研削装置の斜視図が示されている。図1に示す研削装置は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。この装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図1において右上端)に設けられ上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に垂直な方向)に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に研削手段としての研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0015】
研削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット4を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。この被案内溝312、312を一対の案内レール221、221に係合することにより、移動基台31は一対の案内レール221、221に沿って移動可能に装着される。従って、直立壁22および一対の案内レール221、221は、研削手段としての研削ユニットを後述するチャックテーブルの保持面に垂直な方向に移動可能に支持する支持手段として機能する。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には前方に突出した支持部313が設けられている。この支持部313に研削手段としてのスピンドルユニット4が取り付けられる。
【0016】
研削手段としてのスピンドルユニット4は、支持部313に装着されたスピンドルハウジング41と、該スピンドルハウジング41に回転自在に配設された回転スピンドル42と、該回転スピンドル42を回転駆動するための駆動源としてのサーボモータ43(M1)とを具備している。スピンドルハウジング41に回転可能に支持された回転スピンドル42は、一端部(図1において下端部)がスピンドルハウジング41の下端から突出して配設されており、その一端(図1において下端)にホイールマウント44が設けられている。そして、このホイールマウント44の下面に研削ホイール5が取り付けられる。この研削ホイール5は、環状の砥石基台51と、該砥石基台51の下面に装着された研削砥石52からなる複数のセグメントとによって構成されており、砥石基台51が締結ねじ53によってホイールマウント44に装着される。上記サーボモータ43(M1)は、後述する制御手段によって制御される。
【0017】
図示の研削装置は、上記研削ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる研削送り手段6を備えている。この研削送り手段6は、直立壁22の前側に配設され上下方向に延びるボールスクリュー61を具備している。このボールスクリュー61は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材62および63によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材62にはボールスクリュー61を回転駆動するための駆動源としての正転・逆転可能なサーボモータ64(M2)が配設されており、このサーボモータ64(M2)の出力軸がボールスクリュー61に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には上下方向に延びる貫通雌ねじ穴(図示していない)が形成されており、この雌ねじ穴に上記ボールスクリュー61が螺合せしめられている。従って、サーボモータ64(M2)が正転すると移動基台31即ち研削ユニット3が下降即ち前進せしめられ、サーボモータ64(M2)が逆転すると移動基台31即ち研削ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。なお、サーボモータ64(M2)には回転数検出手段としてのロータリーエンコーダ640(RE)が配設されており、このロータリーエンコーダ640(RE)はサーボモータ64(M2)の回転数を検出して回転信号を後述する制御手段に送る。このようにサーボモータ64(M2)に配設されたロータリーエンコーダ640(RE)は、サーボモータ64(M2)の回転数を検出することにより上記移動基台31の移動量を検出する移動量検出手段として機能する。
【0018】
上記ハウジング2の主部21にはチャックテーブル機構7が配設されている。チャックテーブル機構7は、チャックテーブル71と、該チャックテーブル71の周囲を覆うカバー部材72と、該カバー部材72の前後に配設された蛇腹手段73および74を具備している。チャックテーブル71は、図示しない回転駆動手段によって回転せしめられるようになっており、その上面(保持面)に被加工物としてのウエーハWを図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持するように構成されている。なお、ウエーハWの表面には保護部材としての保護テープTが貼着され、この保護テープT側がチャックテーブル71の上面(保持面)に保持される。また、チャックテーブル71は、図示しないチャックテーブル移動手段によって図1に示す被加工物載置域70aと上記スピンドルユニット4を構成する研削ホイール5と対向する研削域70bとの間で移動せしめられる。蛇腹手段73および74はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段73の前端は主部21の前面壁に固定され、後端はカバー部材72の前端面に固定されている。蛇腹手段74の前端はカバー部材72の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。チャックテーブル71が矢印71aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段73が伸張されて蛇腹手段74が収縮され、チャックテーブル71が矢印71bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段73が収縮されて蛇腹手段74が伸張せしめられる。
【0019】
図示の実施形態における研削装置は、研削送り手段6による研削送り開始位置となる原点位置を検出するための原点位置検出手段8を具備している。この原点位置検出手段8は、支持手段として機能する直立壁22に装着され発光素子811と該発光素子811と対向して配設された受光素子812を備えた原点位置検出センサー81(SENS)と、移動基台31に取り付けられ原点位置検出センサー81(SENS)の発光素子811と受光素子812との間に侵入する遮光板82とからなっている。遮光板82は、移動基台31が原点位置(移動基台31に装着されたスピンドルユニット4の研削ホイール5を構成する研削砥石52の研削面がチャックテーブル71の保持面から例えば10mm離反した位置)に位置付けられると原点位置検出センサー81(SENS)の発光素子811と受光素子812との間に侵入して発光素子811から受光素子812への光を遮光するようになっている。なお、原点位置検出センサー81(SENS)は、発光素子811からの光を受光素子812が受光した受光信号(ON信号)または遮光板82によって遮光された遮光信号(OFF信号)を後述する制御手段に送る。
【0020】
図示の実施形態における研削装置は、直立壁22に装着され切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31が原点位置から上方に所定距離離反した離反規制位置に達したことを検出する離反規制位置検出手段としての離反規制位置検出スイッチ9(SW)を具備している。この離反規制位置検出スイッチ9(SW)は、図示の実施形態においては原点位置から50mm上方に離反した位置に配設される。従って、離反規制位置検出スイッチ9(SW)は、図示の実施形態においては移動基台31に装着された研削ホイール5を構成する研削砥石52の研削面がチャックテーブル71の保持面から60mm離反した位置に達したとき、移動基台31の上端が接触してON信号を後述する制御手段に送る。
【0021】
図示の実施形態における研削装置は、図2に示す制御手段10を具備している。制御手段10は、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、制御プログラム等を格納するリードオンリーメモリ(ROM)102と、演算結果等を記憶する記憶手段としての読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、入力インターフェース104および出力インターフェース105を備えている。このように構成された制御手段10の入力インターフェース104には、上記研削送り手段6のサーボモータ64(M2)に取り付けられたロータリーエンコーダ640(RE)、原点位置検出手段8を構成する原点位置検出センサー81(SENS)、離反規制位置検出スイッチ9(SW)等からの検出信号が入力される。また、出力インターフェース105からは、上記スピンドルユニット4のサーボモータ43(M1)、研削送り手段6のサーボモータ64(M2)、表示手段110(DISP)等に制御信号を出力する。
【0022】
図示の研削装置は以上のように構成されており、以下、研削装置を用いてウエーハを所定の厚みに研削する研削方法について説明する。
研削作業を開始するに際しては、移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4の原点位置を検出する原点位置検出工程を実施する。図3は、原点位置検出工程における制御手段10の制御手順を示すフローチャートである。このフローチャートに基づいて原点位置検出工程を説明する。
【0023】
制御手段10はステップS1において、上記研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を逆転駆動して切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31を上昇せしめる。研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を逆転駆動したならば、制御手段10はステップS2に進んで離反規制位置検出スイッチ9(SW)がONしたか否か即ち移動基台31の上端が離反規制位置検出スイッチ9(SW)に接触し移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4が離反規制位置に達したか否かをチェックする。ステップS2において離反規制位置検出スイッチ9(SW)がONしなければ、制御手段は移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4がまだ離反規制位置に達していないと判断してステップS1およびステップS2を繰り返し実施する。
【0024】
上記ステップS2において離反規制位置検出スイッチ9(SW)がONしたならば、制御手段10は移動基台31の上端が離反規制位置検出スイッチ9(SW)に接触し移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4が離反規制位置に達したと判断し、ステップS3に進んで研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を停止する。そして、制御手段10はステップS4に進んで、研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を正転駆動して切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31を下降せしめる。なお、移動基台31の移動速度は、例えば5mm/秒に設定されている。
【0025】
上記ステップS4において研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を正転駆動したならば、制御手段10はステップS5に進んで研削送り手段6のサーボモータ64(M2)の回転数を検出するロータリーエンコーダ640(RE)からの信号に基づいてサーボモータ64(M2)の回転数(N)が所定の回転数(N1)に達したか否かをチェックする。なお、所定の回転数(N1)は、切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31を上記離反規制位置から50mm移動するために必要なサーボモータ64(M2)の回転数に設定されている。ステップS5においてサーボモータ64(M2)の回転数(N)が所定の回転数(N1)に達しない場合には、制御手段10は切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31が上記離反規制位置から50mm移動していないと判断し、ステップS4およびステップS5を繰り返し実施する。
【0026】
上記ステップS5においてサーボモータ64(M2)の回転数(N)が所定の回転数(N1)に達したならば、制御手段10は切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31を上記離反規制位置から50mm移動したと判断し、ステップS6に進んで原点位置検出センサー81(SENS)が遮光信号(OFF信号)を出力したか否かをチェックする。なお、原点位置検出センサー81(SENS)は、原点位置検出工程を実施する際には発光素子811が点灯されているので、発光素子811と受光素子812の間に遮光板82が侵入しない限り発光素子811から発光された光を受光素子812が受光して受光信号(ON信号)を出力している。
【0027】
上記ステップS6において原点位置検出センサー81(SENS)が遮光信号(OFF信号)を出力しない場合には、制御手段10は切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31が上記離反規制位置から50mm移動したにもかかわらず原点位置検出センサー81(SENS)が遮光信号(OFF信号)を出力しないということは原点位置検出センサー81(SENS)が脱落または断線等によって正常に機能していないと判断し、ステップS7に進んで表示手段110(DISP)に異常表示するとともに、研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を停止する。もし、切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31が上記離反規制位置から50mm移動したにもかかわらず原点位置検出センサー81(SENS)が遮光信号(OFF信号)を出力しないために移動基台31の下降を続けると、移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4を構成する研削ホイール5の研削砥石52がチャックテーブル機構7に衝突して両者が損傷するという問題が発生する。従って、切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31が上記離反規制位置から50mm移動したにもかかわらず原点位置検出センサー81(SENS)が遮光信号(OFF信号)を出力しない場合には、上述したように直ちに表示手段110(DISP)に異常表示して警報するとともに、研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を停止することが重要である。
【0028】
上記ステップS6において原点位置検出センサー81(SENS)が遮光信号(OFF信号)を出力したならば、制御手段10は切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31が上記離反規制位置から50mm移動し、遮光板82が発光素子811と受光素子812の間に侵入して発光素子811からの光を遮光し、これを原点位置検出センサー81(SENS)が確認したので、原点位置検出センサー81(SENS)は正常に機能していると判断し、ステップS8に進んで原点位置調整工程を実施する。この原点位置調整工程は、移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4が、下降による慣性力に起因して遮光板82が発光素子811からの光を遮光した原点位置から僅かに下方に位置するので、原点位置を正確に検出するために実施する。即ち、上記ステップS6において原点位置検出センサー81(SENS)が遮光信号(OFF信号)を出力したならば、制御手段10は研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を停止し、次にサーボモータ64(M2)を例えば1μm/秒の移動速度で逆転駆動し、原点位置検出センサー81(SENS)が受光信号(ON信号)を出力したならばサーボモータ64(M2)を停止し、更にサーボモータ64(M2)を例えば1μm/秒の移動速度で正転駆動して原点位置検出センサー81(SENS)が遮光信号(OFF信号)を出力した時点で原点位置とする。以後、制御手段10は、原点位置からサーボモータ64(M2)を正転および逆転する際に、サーボモータ64(M2)の回転数を検出するロータリーエンコーダ640(RE)からの信号に基づいて移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4を構成する研削ホイール5の研削砥石52の送り量を制御する。
【0029】
上述したように原点位置検出工程を実施したならば、ウエーハを所定の厚みに研削する研削作業を実施する。
なお、研削作業を実施するに際しては、上記原点位置調整工程によって移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4の原点位置(例えば、スピンドルユニット4を構成する研削ホイール5の研削砥石52の研削面がチャックテーブル71の上面から10mm離反した位置)を検出した状態から研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を逆転駆動して上昇させ、スピンドルユニット4を所定の待機位置(例えば、スピンドルユニット4を構成する研削ホイール5の研削砥石52の研削面がチャックテーブル71の上面から20mm離反した位置)に位置付ける。このとき、制御手段10は、サーボモータ64(M2)の回転を検出するロータリーエンコーダ640(RE)からの信号に基づいて、移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4を原点位置から10mm移動するに必要なサーボモータ64(M2)の回転数に達したらサーボモータ64(M2)の作動を停止し、スピンドルユニット4を待機位置に位置付ける。
【0030】
次に、図1に示すように表面に保護テープTが貼着されたウエーハWを、研削装置における被加工物載置域70aに位置付けられているチャックテーブル71上に保護テープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによってウエーハWは保護テープTを介してチャックテーブル71上に吸引保持される。従って、チャックテーブル71上に吸引保持されたウエーハWは、裏面が上側となる。チャックテーブル71上にウエーハ11を吸引保持したならば、制御手段10は図示しない移動手段を作動して、チャックテーブル71を図1において矢印71aで示す方向に移動して研削域70bに位置付ける。
【0031】
ウエーハ11を吸引保持したチャックテーブル71を研削域70bに位置付けたならば、制御手段10は図示しない回転駆動手段を駆動してチャックテーブル71を矢印71cで示す方向に例えば300rpmの回転速度で回転するとともに、上記サーボモータ43(M1)を駆動して研削ホイール5を矢印5aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転する。次に、制御手段10は、研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を正転駆動し、切削手段としてのスピンドルユニット4が装着された移動基台31を例えば5mm/秒の移動速度で下降せしめる。そして、制御手段10は、サーボモータ64(M2)の回転数を検出するロータリーエンコーダ640(RE)からの信号に基づいて、移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4が待機位置から原点位置までの10mm移動するに必要なサーボモータ64(M2)の回転数に達したらサーボモータ64(M2)の回転速度を1mm/秒に減速し、移動基台31を原点位置から9mmの位置まで下降せしめる。そして制御手段10は、移動基台31を原点位置から9mmの位置まで達したらサーボモータ64(M2)の回転速度を研削送り速度(例えば1μm/秒)に変更する。この結果、移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4は、待機位置から19mm下方に達した時点から例えば1μm/秒の研削送り速度で研削送りされることになる。このようにして研削送りを開始することにより、移動基台31に装着されたスピンドルユニット4を構成する研削ホイール5の研削砥石52の下面である研削面がウエーハWの上面に所定の圧力で押圧する。この結果、ウエーハWの上面(裏面)である被研削面が研削される。そして、移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4を所定量研削送りすることにより、ウエーハWを所定の厚みに研削することができる(研削工程)。このようにして、研削工程を実施したならば、制御手段10は研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を逆転駆動して、移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4を上昇させ、スピンドルユニット4を上記待機位置に位置付ける。
【0032】
なお、切削装置がチャックテーブル71に保持されたウエーハWの厚みを計測するための厚み計測手段(例えば特開2009−170694号公報参照)が配設されている場合には、上記研削工程において厚み計測手段によってウエーハWの厚みを計測し、ウエーハWの厚みが所定の厚みに達したならば、制御手段10は研削送り手段6のサーボモータ64(M2)を逆転駆動して、移動基台31に装着された切削手段としてのスピンドルユニット4を上昇させ、スピンドルユニット4を上記待機位置に位置付ける。なお、上述した実施形態においては待機位置を原点位置から10mm上方の位置に設定した例を示したが、待機位置を原点位置に設定してもよい。
【符号の説明】
【0033】
2:装置ハウジング
3:研削ユニット
31:移動基台
4:スピンドルユニット
41:スピンドルハウジング
42:回転スピンドル
43:サーボモータ(M1)
44:ホイールマウント
5:研削ホイール
51:砥石基台
52:研削砥石
6:研削送り手段
64:サーボモータ(M2)
640:ロータリーエンコーダ(RE)
7:チャックテーブル機構
71:チャックテーブル
8:原点位置検出手段
81:原点位置検出センサー(SENS)
9:離反規制位置検出スイッチ(SW)
10:制御手段
W:ウエーハ
T:保護テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削するための研削ホイールを備えた研削手段と、該研削手段が装着された移動基台と、該移動基台を該チャックテーブルの保持面に垂直な方向に移動可能に支持する案内レールを備えた支持手段と、該研削手段が装着された該移動基台を該案内レールに沿って研削送りするための正転・逆転可能なサーボモータを備えた研削送り手段と、を具備する研削装置において、
該支持手段に装着され発光素子と該発光素子と対向して配設された受光素子を備えた原点位置検出センサーと、該移動基台に取り付けられ該移動基台が原点位置に位置付けられると該原点位置検出センサーの発光素子と受光素子との間に侵入して発光素子から受光素子への光を遮光する遮光板と、原点位置から上方に所定距離離反した離反規制位置に該移動基台が達したことを検出する離反規制位置検出手段と、該研削送り手段による該移動基台の移動量を検出する移動量検出手段と、該離反規制位置検出手段と原点位置検出センサーおよび該移動量検出手段からの検出信号に基づいて該研削送り手段を制御する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該サーボモータを逆転駆動し該移動基台を該離反規制位置検出手段に達するまで上昇移動して該離反規制位置に位置付けた後、該サーボモータを正転駆動して該移動基台を該離反規制位置から下降移動し、該原点位置検出センサーが遮光信号を出力した場合には原点位置調整工程を実施し、該移動基台の下降移動時において該移動量検出手段からの検出信号に基づいて該移動基台の移動量が該離反規制位置から該原点位置までの距離に達しているにも拘わらず該原点位置検出センサーが遮光信号を出力しない場合には表示手段に異常表示するとともに、該研削送り手段の該サーボモータを停止する、
ことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該原点位置調整工程において制御手段は、該サーボモータを逆転駆動して該原点位置検出センサーが受光信号を出力するまで該移動基台を上昇移動し、該原点位置検出センサーが受光信号を出力したならば該サーボモータを正転駆動して該移動基台を下降移動し、該原点位置検出センサーが遮光信号を出力した時点で原点位置を設定する、請求項1記載の研削装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−40618(P2012−40618A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181069(P2010−181069)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】