説明

研磨液組成物

【課題】短時間に半導体基板を平坦化する研磨液組成物、これを用いて半導体基板を平坦化する研磨方法、並びにこれらを用いて半導体基板を研磨する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】水系媒体と研磨粒子を含んでなる研磨液組成物であって、該研磨粒子中における粒子径2〜200nmの研磨粒子含有量が50体積%以上であり、該研磨粒子として粒子径が2〜58nm未満の小粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中40〜75体積%含有し、粒子径が58〜75nm未満の中粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中0〜50体積%含有し、粒子径が75〜200nmの大粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中10〜60体積%含有する研磨液組成物、これを用いて、半導体基板を平坦化する研磨方法、半導体基板の平坦化方法、並びに半導体基板を研磨する工程を有する半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は研磨液組成物、該研磨液組成物を用いる研磨方法、半導体基板の平坦化方法、並びに半導体装置の製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は特に薄膜を形成した表面に凹凸を有する半導体基板を平坦化する際に有用な研磨液組成物、およびこの研磨液組成物を用いて半導体基板を平坦化する研磨方法、この研磨液組成物を用いる半導体基板の平坦化方法並びにこれらを用いて半導体基板を研磨する工程を有する半導体装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在の超々大規模集積回路では、トランジスタおよび他の半導体素子を縮小して実装密度を高める傾向にある。このため、種々の微細加工技術が開発されている。その技術の一つに化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing 、略してCMP)技術がある。この技術は、半導体装置の製造工程において、例えば埋め込み素子分離、層間絶縁膜の平坦化、埋め込み金属配線形成、プラグ形成、埋め込みキャパシタ形成等を行う上で大変重要な技術である。中でも、種々の金属、絶縁膜等を積層する際に行う、研磨表面の凹凸部の段差を低減させる平坦化は、半導体装置の微細化、高密度化の点から重要な工程であり、速やかに平坦化を実現することが求められている。
【0003】
上記製造工程で用いられるCMP用研磨液としては、一例として水に研磨粒子を分散させたものが用いられる。従来、この研磨粒子にはヒュームドシリカ、あるいはアルミナなどが使用されている。中でも安価で高純度なことからヒュームドシリカが多用されているが、製造過程で凝集粒子(二次粒子)を形成していることからスクラッチを誘発しやすい欠点がある。その一方でコロイダルシリカと称されるシリカ砥粒は、粒子の表面形状が比較的球状であり、かつ単分散に近く凝集粒子を形成し難いため、低スクラッチ化を期待できることで使用され始めているが一般に研磨速度が低いという欠点がある。
【0004】
コロイダルシリカを用いた研磨液組成物については、特定粒径分布を有するシリカ研磨液が特許文献1に開示されているが、被研磨面の表面粗さを5〜15Å程度から3Å以下に低減することを主眼としており、この特定粒径分布では半導体基板表面の100〜20000Åの凹凸段差を平坦化するには時間がかかる。
【0005】
また、特許文献2では、粒径が異なる2種のコロイダルシリカの混合物を用いた研磨用組成物により平均うねりの少ない研磨面(数Å以下)を得ることが開示されている。この平均うねりの少ない研磨面(数Å以下)を得るという課題は例えばハードディスクのいわゆる仕上げ研磨工程において生じる初期被研磨面の平均うねりが数10Åで研磨後面の平均うねりが数Å以下となるようなものにおける課題であり、従って、ここに具体的に開示されている平均うねりが数Å以下の研磨面とはハードディスクの仕上げ研磨についてのことであり、本発明が対象とする凹凸段差を有する被研磨面、例えば半導体基板等の平坦化とは本質的に異なる。
【0006】
さらに特許文献3には集積回路を平坦化するため、平均粒子径が2〜30nmの小研磨粒子と、その2〜10倍の平均粒子径を有する大研磨粒子から成り、小研磨粒子と大研磨粒子とが体積比5:1〜100:1であるスラリーを用いたCMP方法が開示されているが、小研磨粒子が83%以上と大部分を占めているため研磨速度が低く、平坦化完了までに要する研磨時間が長くなるため、平坦化効率という観点で不十分である。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−323254号公報
【特許文献2】
特開2002−30274号公報
【特許文献3】
米国特許第6143662号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、短時間に表面に凹凸を有する被研磨面半導体基板を平坦化することができる研磨液組成物、この研磨液組成物を用いて凹凸を有する被研磨面半導体基板を平坦化する研磨方法、半導体基板の平坦化方法、並びにこれらを用いて半導体基板を研磨する工程を有する半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 水系媒体と研磨粒子を含んでなる研磨液組成物であって、該研磨粒子中における粒子径2〜200nmの研磨粒子含有量が50体積%以上であり、該研磨粒子として粒子径が2〜58nm未満の小粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中40〜75体積%含有し、粒子径が58〜75nm未満の中粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中0〜50体積%含有し、粒子径が75〜200nmの大粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中10〜60体積%含有する研磨液組成物、
〔2〕 水系媒体と研磨粒子を含んでなる研磨液組成物であって、研磨粒子が平均粒子径が2〜50nmである研磨粒子群(A)と、平均粒子径が52〜200nmである研磨粒子群(B)とを含み、AとBの重量比(A/B)が0.5/1〜4.5/1である、研磨液組成物、
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕記載の研磨液組成物を用いて、半導体基板を平坦化する研磨方法、
〔4〕 前記〔1〕又は〔2〕記載の研磨液組成物を用いる、半導体基板の平坦化方法、
〔5〕 前記〔1〕又は〔2〕記載の研磨液組成物を用いて半導体基板を研磨する工程を有する半導体装置の製造方法
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の研磨液組成物としては、前記のように、
(態様1)水系媒体と研磨粒子を含んでなる研磨液組成物であって、該研磨粒子中における粒子径2〜200nmの研磨粒子含有量が50体積%以上であり、該研磨粒子として粒子径が2〜58nm未満の小粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中40〜75体積%含有し、粒子径が58〜75nm未満の中粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中0〜50体積%含有し、粒子径が75〜200nmの大粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中10〜60体積%含有する研磨液組成物、及び
(態様2)水系媒体と研磨粒子を含んでなる研磨液組成物であって、研磨粒子が平均粒子径が2〜50nmである研磨粒子群(A)と、平均粒子径が52〜200nmである研磨粒子群(B)とを含み、AとBの重量比(A/B)が0.5/1〜4.5/1である、研磨液組成物
の2つの態様が挙げられる。
【0011】
態様1及び2において、前記研磨粒子としては、例えば無機粒子が挙げられる。金属、金属又は半金属の炭化物、金属又は半金属の窒化物、金属又は半金属の酸化物、金属又は半金属のホウ化物、ダイヤモンド等が挙げられる。金属又は半金属元素は周期律表の3A、4A、5A、3B、4B、5B、6B、7B又は8B族に属するものが挙げられる。その例として、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、二酸化マンガン、炭化ケイ素、酸化亜鉛、ダイヤモンド及び酸化マグネシウムが挙げられる。
【0012】
これらの中でも好ましくは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウムであり、スクラッチ低減の観点から、二酸化ケイ素がより好ましい。この具体例として、二酸化ケイ素としては、コロイダルシリカ粒子、フュームドシリカ粒子、表面修飾したシリカ粒子等;酸化アルミニウムとしては、α―アルミナ粒子、γ―アルミナ粒子、δ―アルミナ粒子、θ―アルミナ粒子、η―アルミナ粒子、無定型アルミナ粒子、その他の製造法の異なるフュームドアルミナやコロイダルアルミナ等;酸化セリウムとしては、酸化数が3価又は4価のもの、結晶系が、六方晶系、等軸晶系又は面心立方晶系のもの等が挙げられる。
【0013】
さらにこれらの中でもより好ましくは、コロイダルシリカ粒子である。コロイダルシリカ粒子は形状が比較的球形であり、一次粒子の状態で安定に分散でき凝集粒子を形成し難いため被研磨表面に対してスクラッチを低減できる。コロイダルシリカ粒子は、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩を原料とする水ガラス法またはテトラエトキシシラン等を原料とするアルコキシシラン法で得ることができる。これらの研磨粒子は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
態様1において用いる研磨粒子は、粒子径2〜200nmの研磨粒子を50体積%以上含有するものである。前記粒子径2〜200nmの研磨粒子の含有量は、平坦化特性やスクラッチ低減の観点から、70体積%以上が好ましく、より好ましくは85体積%以上であり、特に好ましくは95体積%以上であり、最も好ましくは100体積%である。
【0015】
態様1において前記粒子径2〜200nmの研磨粒子は、その全量中、粒子径が2〜58nm未満の小粒径研磨粒子を40〜75体積%、粒子径が58〜75nm未満の中粒径研磨粒子を0〜50体積%、粒子径が75〜200nmの大粒径研磨粒子を10〜60体積%、それぞれ含有するものである。
【0016】
前記小粒径研磨粒子の含有量としては、平坦化特性の観点から、42〜73体積%が好ましく、43〜72体積%がより好ましい。中粒径研磨粒子の含有量としては、平坦化特性の観点から、0〜40体積%が好ましく、0〜30体積%がより好ましく、0〜25体積%が特に好ましい。大粒径研磨粒子の含有量としては、平坦化特性の観点から、13〜55体積%が好ましく、15〜50体積%がより好ましい。
【0017】
前記研磨粒子の粒径分布は、以下の方法により求めることが出来る。即ち、研磨粒子を日本電子製透過型電子顕微鏡「JEM−2000FX」(80kV、1〜5万倍)で観察した写真を、パーソナルコンピューターに接続したスキャナにて画像データとして取り込み、解析ソフト「WinROOF」(販売元、三谷商事)を用いて1個1個の研磨粒子の円相当径を求め、それを研磨粒子の直径と見なし、1000個以上の研磨粒子データを解析した後、それをもとに表計算ソフト「EXCEL」(マイクロソフト社製)にて研磨粒子直径から研磨粒子体積に換算する。まず、全研磨粒子中における2nm以上200nm以下(2〜200nm)の研磨粒子の割合(体積基準%)を計算し、さらに2nm以上200nm以下の研磨粒子の集合全体における2nm以上58nm未満(2〜58nm未満)、58nm以上75nm未満(58〜75nm未満)、75nm以上200nm以下(75〜200nm)の3つの領域の割合(体積基準%)を求める。
【0018】
態様2において用いる研磨粒子は、平坦化特性やスクラッチ低減の観点から、前記研磨粒子群(A)と前記研磨粒子群(B)との合計を少なくとも50重量%以上含有することが好ましく、より好ましくは70重量%以上であり、更に好ましくは85重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上であり、最も好ましくは100重量%である。
【0019】
態様2に用いる研磨粒子のうち、研磨粒子群(A)として混合される研磨粒子の平均粒子径は、研磨速度向上の観点から2〜50nmであり、好ましくは10〜50nmであり、特に好ましくは26〜50nmである。また研磨粒子群(B)として混合される研磨粒子の平均粒子径は、粒子の沈降・分離を防止する観点から52〜200nm以下であり、好ましくは55〜170nm以下である。
【0020】
態様2において、さらに平坦化特性の観点から、研磨粒子群(A)として混合される研磨粒子のうち平均粒子径が最小である研磨粒子(Dmin )と、研磨粒子群(B)として混合される研磨粒子のうち平均粒子径が最大である研磨粒子(Dmax )との平均粒子径比(Dmax /Dmin )は3を超えることが好ましい。なお平均粒子径D(nm)は、窒素吸着法による測定で得られた比表面積S(m2 /g)から、D=2720/Sとして算出できる。
【0021】
態様2において、研磨粒子群(A)と研磨粒子群(B)の重量比は、下限は平坦化特性の観点から、上限は研磨速度の観点から、AとBの重量比(A/B)は0.5/1〜4.5/1であり、好ましくは1.0/1〜4.0/1である。研磨粒子群(A)および研磨粒子群(B)として混合できる研磨粒子は、平均粒子径が規定範囲内のものであれば、それぞれ1つ以上混合可能である。
【0022】
また、本発明に使用される研磨粒子としては、スクラッチを低減し、短時間で平坦化させる効率的研磨の観点から、態様1及び2に使用される研磨粒子の条件を共に満足するもの、即ち、研磨粒子中における粒子径2〜200nmの研磨粒子含有量が50体積%以上であり、該研磨粒子として小粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中40〜75体積%含有し、中粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中0〜50体積%含有し、大粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中10〜60体積%含有し、且つ平均粒子径が2〜50nmである研磨粒子群(A)と、平均粒子径が52〜200nmである研磨粒子群(B)との重量比(A/B)が0.5/1〜4.5/1であるものを使用することができる。
【0023】
態様1及び2において、研磨液組成物中の研磨粒子の含有量は、下限は研磨速度の観点、上限は分散安定性やコストの観点から、1〜50重量%が好ましく、3〜40重量%がより好ましく、5〜30重量%が特に好ましい。
【0024】
態様1及び2において水系媒体としては、水、及びアルコール等水と混じり合う溶媒との混合媒体物を使用することができるが、水を用いることが好ましい。研磨液組成物中の水系媒体の量は、下限は分散安定性の観点から、上限は研磨速度の観点から、40〜99重量%が好ましく、50〜97重量%がより好ましく、60〜95重量%が特に好ましい。
【0025】
態様1及び2の研磨液組成物は、前記水系媒体と研磨粒子とを含有してなるものである。かかる研磨粒子を含む研磨液組成物は、例えば、以下の方法によって調製することができる。水系媒体中に配合し、例えば粉末状の研磨粒子であれば、必要に応じてさらに粉砕し、超音波、攪拌、混練等の機械力により強制的に分散する方法。無機粒子などで用いられる水系媒体中で粒子を成長させる方法。中でも、水系媒体中で無機粒子を成長させる方法は、得られる無機粒子が安定に分散しており、さらに粒径の制御も容易であり好ましい。
【0026】
態様1及び2の研磨液組成物には、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、pH調整剤、分散安定化剤、酸化剤、キレート剤、防腐剤等が挙げられる。
【0027】
pH調整剤としては、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水溶性有機アミン等の塩基性物質、酢酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸及び、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸等の酸性物質が挙げられる。なお、シュウ酸とコハク酸はキレート剤としても使用し得る。
【0028】
分散安定化剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤、あるいは、ポリアクリル酸又はその塩、アクリル酸共重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体(プルロニック類)等の高分子分散剤等が挙げられる。
【0029】
酸化剤としては、過酸化物、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、硝酸又はその塩、ペルオキソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩、金属塩類、硫酸等が挙げられる。
【0030】
キレート剤としては、シュウ酸、コハク酸、フタル酸、トリメリット酸等の多価カルボン酸;グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸;ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミン四酢酸等のポリアミノカルボン酸;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等のホスホン酸等が挙げられる。
【0031】
防腐剤としては、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。
【0032】
態様1及び2の研磨液組成物のpHは、被研磨物の種類や要求品質等に応じて適宜決定することが好ましい。例えば、該研磨液組成物のpHは、被研磨物の洗浄性及び加工機械の腐食防止性、作業者の安全性の観点から、2〜12が好ましい。また、被研磨物が半導体ウエハや半導体素子等の研磨、特にシリコン基板、ポリシリコン基板、酸化珪素膜等の研磨に用いる場合は、研磨速度向上と表面品質の向上の観点から、7〜12がより好ましく、8〜12がさらに好ましく、9〜12が特に好ましい。該pHは、必要により、先に挙げたpH調整剤を適宜、所望量を配合することで調整することができる。
【0033】
本発明の研磨方法は、前記態様1又は2の研磨液組成物を用いて、あるいは態様1又は2の研磨液組成物の組成となるように各成分を混合して研磨液を調製したものを用いて、被研磨表面を研磨する工程を有するものを指し、これにより特に精密部品用基板を好適に製造することができる。したがって、本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【0034】
本発明の対象である被研磨物の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン等の金属又は半金属、及びこれらの金属を主成分とした合金、ガラス、ガラス状カーボン、アモルファスカーボン等のガラス状物質、アルミナ、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化タンタル、窒化チタン、ポリシリコン等のセラミック材料、ポリイミド樹脂等の樹脂などが挙げられる。特に、ガラスやTEOS膜等の被研磨面に二酸化ケイ素を有する基板や、ポリシリコンを有する基板を研磨する際に態様1又は2の研磨液組成物(以下、本発明の研磨液組成物という)を用いた場合、効率的に平坦化が実現できる。
【0035】
これらの被研磨物の形状には特に制限がなく、例えば、ディスク状、プレート状、スラブ状、プリズム状等の平面部を有する形状や、レンズ等の曲面部を有する形状が本発明の研磨液組成物を用いた研磨の対象となる。その中でも、ディスク状の被研磨物の研磨に適しており、特に凹凸を有する半導体基板を平坦化する目的で行う研磨に好適である。したがって、本発明は、半導体基板の平坦化方法に関する。
【0036】
本発明に係わる凹凸を有する被研磨面において、凹凸段差は好ましくは100〜20000Å(10〜2000nm)より好ましくは1000〜15000Å(100〜1500nm)である。ここで、凹凸段差はプロファイル測定装置(例えばKLA−Tencor社製 HRP−100)により求めることができる。
【0037】
半導体基板の研磨は、シリコンウェハ(ベアウェハ)のポリッシング工程、埋め込み素子分離膜の形成工程、層間絶縁膜の平坦化工程、埋め込み金属配線の形成工程、埋め込みキャパシタ形成工程等において行われる研磨があるが、特に埋め込み素子分離膜の形成工程、層間絶縁膜の平坦化工程に適している。
【0038】
本発明の研磨液組成物を用いる研磨方法としては、特に制限はなく、一般的な方法を用いることができる。中でも好ましくは、研磨される被研磨物を保持する治具と研磨布を備える研磨装置が用いられる。研磨布としては、有機高分子系の発泡体、無発泡体、不織布状の研磨布等を張り付けた研磨盤に、上記被研磨物を保持する治具を押しつけ、あるいは、研磨布を張り付けた研磨盤に、上記被研磨物を挟み込み、本発明の研磨液組成物を被研磨物表面に供給し、一定の圧力を加えながら研磨盤や被研磨物を動かすことにより被研磨物表面を研磨する方法が挙げられる。
【0039】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、凹凸のある半導体基板の上方に薄膜を形成する成膜工程と、該薄膜を研磨する研磨工程とを備え、上記研磨工程において水系媒体と研磨粒子とを含んでなる本発明の研磨液組成物を該薄膜表面に供給して、凹凸のある該薄膜表面をCMPにより平坦化することからなるものであり、メモリーIC、ロジックIC、あるいはシステムLSI等の半導体装置の製造に好適に用いられる。
【0040】
以上の様に、本発明の研磨液組成物およびこれを用いた研磨方法並びにこれらを用いた半導体基板を研磨する工程を有する半導体装置の製造方法によって効率的に平坦化を実現することが可能となる。
【0041】
【実施例】
実施例1〜5及び比較例1〜4
研磨粒子として、表1に記載のシリカ粒子を用いた。
【0042】
【表1】



【0043】
本発明の研磨液組成物を得るために、表1記載のシリカ粒子および水を用いて、表2及び表3に記載の研磨粒子濃度を有する研磨液組成物(残部は水)を調製した。また、pHが10.5〜11.5になるように水酸化カリウム水溶液で調整した。表2に記載された研磨粒子濃度は、下記研磨装置条件および研磨速度測定方法により、研磨速度が約2300(Å/min)〔230nm/min〕になるように決定した。
【0044】
<研磨装置条件>
研磨試験機:ラップマスターSFT製 LP−541(プラテン径540mm)
研磨パッド:ロデール・ニッタ製 IC−1000/Suba400
プラテン回転数:60rpm
キャリア回転数:58rpm
研磨液流量:200(g/min)
研磨荷重:300(g/cm
【0045】
<研磨速度測定方法>
被研磨材として8インチ(200mm)シリコン基板上に2μmのPE−TEOSを成膜したものを用いて、上記設定条件で2分研磨し、その研磨前後の残存膜厚差から研磨速度(nm/min)を求めた。なお残存膜厚の測定は光干渉式膜厚計(大日本スクリーン製造(株)VM−1000)を用いた。
【0046】
平坦化特性を評価するために、被研磨材としてCMP特性評価用市販ウェハ(商品名:SKW7−2、SKWアソシエーテス社(SKW Associates,Inc. )製:凹凸段差8000Å(800nm))を用いて、予め形成されたウェハ上の凹凸段差が研磨により解消されるまでの時間で評価を行った。具体的には、上記設定条件で1分研磨毎にウェハ上のGRADUAL D90 パターンの凸部と凹部の残存膜厚(測定法は上記に同じ)を測定し、既知の初期段差とから知ることのできる凹凸段差量が0になる(平坦化完了)まで繰り返し、必要な研磨時間を測定した。結果は平坦化完了までの研磨時間で表し、4分以下を良好と判断するものとする(表2)。これにより各研磨液の研磨速度をいずれも230nm/minになるように処方したにもかかわらず、実施例1〜5の平坦化特性は比較例1〜4に比べて良好であることがわかる。
【0047】
【表2】



【0048】
【表3】



【0049】
【発明の効果】
本発明の研磨液組成物は、凹凸のある被研磨面に対して効率的に平坦化を実現可能なものであり、該研磨液組成物を用いることにより、およびこの研磨液組成物を用いる研磨方法並びにこれらを用いた半導体基板を研磨する工程を有する半導体装置の製造方法を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系媒体と研磨粒子を含んでなる研磨液組成物であって、該研磨粒子中における粒子径2〜200nmの研磨粒子含有量が50体積%以上であり、該研磨粒子として粒子径が2〜58nm未満の小粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中40〜75体積%含有し、粒子径が58〜75nm未満の中粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中0〜50体積%含有し、粒子径が75〜200nmの大粒径研磨粒子を粒子径2〜200nmの研磨粒子全量中10〜60体積%含有する研磨液組成物。
【請求項2】
水系媒体と研磨粒子を含んでなる研磨液組成物であって、研磨粒子が平均粒子径が2〜50nmである研磨粒子群(A)と、平均粒子径が52〜200nmである研磨粒子群(B)とを含み、AとBの重量比(A/B)が0.5/1〜4.5/1である、研磨液組成物。
【請求項3】
被研磨面が半導体基板の面である請求項1又は2記載の研磨液組成物。
【請求項4】
研磨粒子が二酸化ケイ素である請求項1〜3いずれか記載の研磨液組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の研磨液組成物を用いて、半導体基板を平坦化する研磨方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか記載の研磨液組成物を用いる、半導体基板の平坦化方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか記載の研磨液組成物を用いて半導体基板を研磨する工程を有する半導体装置の製造方法。

【公開番号】特開2004−146780(P2004−146780A)
【公開日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−159884(P2003−159884)
【出願日】平成15年6月4日(2003.6.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】