説明

研磨装置による研磨方法

【課題】研磨速度や研磨形状の変化に合わせて、最適な研磨条件で研磨処理を自動で実行できるようにする。
【解決手段】ステップ1で研磨前の基板の基板(ウェハ)の膜厚を測定する。次に、ステップ2で目標研磨量の半分程度を反りなし形状の研磨レシピ(Rf)で研磨する。そして、ステップ3で研磨後の基板の膜厚を測定する。このあと、ステップ4で研磨前後の基板の膜厚の測定結果により、(反りなし形状に対応する研磨後の式F)の結果の予想との誤差を(山型反り形状に対応する研磨後の式Y)、(谷型反り形状に対応する研磨後の式T)に補正し、残りの研磨量の各測定点が最小になるように、山型反り形状の研磨レシピ(Ry),谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)それぞれの追加研磨時間を求める。そして、ステップ5で、山型反り形状の研磨レシピ(Ry),谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)で追加研磨時間だけ研磨除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置による研磨方法に関し、特に、半導体の基板上に形成された膜を研磨して平坦化する研磨装置による研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に形成された膜を研磨して平坦化する場合、研磨速度が一定であるとすると、膜の研磨量は研磨時間と比例するので、研磨前の基板上に形成された膜の厚さを測定しておき、その基板を一定時間だけ研磨し、その後、基板の膜厚を測定する。これにより、単位時間当たりの研磨速度を求めることができ、研磨除去したい基板の膜厚を前記研磨速度で除算することで、研磨時間が求められる(特許文献1,2参照。更に関連先行技術として特許文献3−7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3311864号公報
【特許文献2】特開平10−106984号公報
【特許文献3】特開平7−100297号公報
【特許文献4】特開2009−302577号公報
【特許文献5】特開2005−347568号公報
【特許文献6】特開2007−331108号公報
【特許文献7】特開2008−141186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記にようにして求めた研磨時間で他の基板を研磨したい場合、研磨量のバラツキ(研磨量バラツキ)が発生し、研磨除去したい基板の膜厚の量から大きく外れることがある。研磨量バラツキの発生の要因は、研磨布のコンディションの変化及び基板の膜厚若しくは反り等により、基板の研磨速度や研磨形状が安定しない。
【0005】
近年、ウェハ等の基板の材料としては、従来のシリコンから硬いサファイアや、炭化ケイ素、石英ガラスなどの材料を使用することが多くなっている。これら基板の反りによる研磨形状への影響は、研磨量バラツキの要因のなかで特に大きい。又、硬い材料でなくとも、基板の厚さが厚くなれば、前記同様に、基板の反りによる研磨形状への影響が大きくなる。
【0006】
依って、過去に求めた研磨速度を集計して平均研磨速度を求め、研磨量のバラツキを軽減する手法(特許文献3,4参照)があるが、基板ごとに研磨量のバラツキが疎らになるため、研磨量のバラツキを軽減するにとどまる。更に、これらの作業は、オペレータが、ロット処理ごと又は定期的に手作業で実施することが多く、多大な作業時間を要している(特許文献5,6,7参照)。
【0007】
総じて、上記従来技術においては、基板の研磨速度や研磨形状が安定し難いことから、研磨速度や研磨形状の変化に合わせて、最適な研磨条件で研磨処理を行うことは容易ではない。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に鑑み、基板の研磨速度や研磨形状の変化に合わせて、最適な研磨条件で自動にて研磨処理できるようにするために解決すべき技術的課題が生じてく
るのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、基板上の膜の反りなし形状をフラットに研磨する研磨レシピ(Rf)と、山型反り形状の基板及び谷型反り形状の基板を研磨したときの研磨形状を夫々修正させる研磨レシピ(Ry)及び(Rt)を事前に作成し、反りなし形状の基板と、山型反り形状の基板及び谷型反り形状の基板を実際に研磨して、夫々の研磨形状を(反りなし形状に対応する研磨後の式)、(山型反り形状に対応する研磨後の式)及び(谷型反り形状に対応する研磨後の式)で補間して研磨する方法であって、研磨前の基板の膜厚を複数地点で測定するステップと、目標研磨量の半分程度を前記研磨レシピ(Rf)で前記基板を研磨するステップと、研磨後の前記基板の膜厚を複数地点で測定するステップと、研磨前後の前記基板の膜厚データから求められる研磨形状を(反りなし形状に対応する補間後の式)で補間するステップと、この(反りなし形状に対応する補間後の式)と前記(反りなし形状に対応する研磨後の式)との誤差を前記(山型反り形状に対応する研磨後の式)、(谷型反り形状に対応する研磨後の式)に補正するステップと、この(山型反り形状に対応する補間後の式)、(谷型反り形状に対応する補間後の式)の研磨形状から目標研磨量の残りの半分程度について、当該基板の各測定点の目標研磨量との誤差が最小となるように、研磨レシピ(Ry)、(Rt)の追加研磨時間を算出するステップと、算出した追加研磨時間だけ前記研磨レシピ(Ry)、(Rt)に従い、当該基板に対して目標研磨量の残りの半分程度を追加研磨するステップとを備えることを特徴とする研磨装置による研磨方法を提供する。
【0010】
この研磨方法は、予め、基板上の膜の反りなし形状をフラットに研磨する研磨レシピ(Rf)を作成しておき、実際に反りなし形状の基板を研磨して、得られた研磨形状について(反りなし形状に対応する研磨後の式F)で補間し、また、山型反り形状の基板及び谷型反り形状の基板を研磨したときの研磨形状を夫々修正させる研磨レシピ(Ry)及び(Rt)を作成しておき、実際に山型反り形状の基板及び谷型反り形状の基板を研磨して、得られた夫々の研磨形状について(山型反り形状に対応する研磨後の式Y)及び(谷型反り形状に対応する研磨後の式T)で補間する研磨方法であり、下記の工程を経て基板上の成膜の研磨除去を実行する。
【0011】
先ず、研磨前の基板(研磨除去したいワークW)の膜厚を複数地点で測定して、目標研磨量の半分程度を反りなし形状の研磨レシピ(Rf)に従い基板を研磨(試し研磨)する。次に、研磨後の基板の膜厚を複数地点で測定し、研磨前後の基板の膜厚データから求められる研磨形状を(反りなし形状に対応する補間後の式F’)で補間するステップと、この(反りなし形状に対応する補間後の式F’)と前記(反りなし形状に対応する研磨後の式F)の誤差を前記(山型反り形状に対応する研磨後の式Y)、(谷型反り形状に対応する研磨後の式T)に補正する。
【0012】
そして、補正した(山型反り形状に対応する補間後の式Y’)、(谷型反り形状に対応する補間後の式T’)の研磨形状から目標研磨量の残りの半分程度について、当該基板の各測定点の目標研磨量との誤差が最小になるように、研磨レシピ(Ry)、(Rt)の追加研磨時間を算出する。このあと、算出した追加研磨時間だけ研磨レシピ(Ry)、(Rt)に従い、前記基板の目標研磨量の残りの半分程度を追加研磨する。これにより、最終的に、当該研磨速度や研磨形状の変化に合わせて、最適な研磨条件で研磨処理されることとなる。
【0013】
請求項2記載の発明は、上記研磨形状に対応する一般式が、2次式:Y=aX2+b(
a,bは係数)であることを特徴とする請求項1記載の研磨装置による研磨方法を提供する。
【0014】
この研磨方法によれば、上記研磨形状の一般式として、2次式:Y=aX2+bを採用
することにより、係数a、bの2つを求めるだけで上記研磨形状、即ち、反りなし形状、山型反り形状及び谷型反り形状に対応する研磨形状の式がそれぞれ得られ、これに基づき上記追加研磨時間が容易迅速に算出される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、基板の試し研磨で得られた膜厚データに基づき、研磨レシピ(Ry)、(Rt)の追加研磨時間を算出した後に、追加研磨時間だけ研磨レシピ(Ry)、(Rt)に従い追加研磨する。従って、基板の研磨速度や研磨形状の変化に合わせて、当該基板の研磨処理を円滑・迅速に実行でき、以って、従来例に比し研磨量バラツキを効果的に抑制しつつ、平坦化の研磨処理を効率良く行うことができる。
また、本発明は、基板の加圧制御機構付きの研磨装置を使用して、全ての研磨動作ステップを自動処理できるので、従来例の如き人手作業を無くして作業時間の短縮化を図ることができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、反りなし形状、山型反り形状及び谷型反り形状に対応する研磨形状の式を夫々求める際に、係数a、bの2つだけを算出すればよいので、研磨量の測定点の数を少なくしても、上記追加研磨時間を容易迅速に算出でき、高精度の研磨処理を一層効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係る研磨システムのレイアウトを説明する配置平面図。
【図2】本発明に係る研磨装置を示す要部斜視図。
【図3】図2の研磨ヘッドを断面して示す斜視図。
【図4】図2の研磨ヘッドの裏面側を示す斜視図。
【図5】本発明に係る研磨ヘッドの裏面を説明する解説図。
【図6】図5の研磨ヘッドのエアフロートエリアを説明する側面解説図。
【図7】本発明に係る制御装置の構成例を説明するブロック図。
【図8】図5の研磨ヘッドの静的な状態でのウェハへの圧力分布を示し、(a)、(b)及び(c)はそれぞれ研磨レシピ(Rf)、(Ry)及び(Rt)による研磨加工の圧力分布の状態を示す図。
【図9】本発明の一実施例に係る研磨レシピ(Rf)、(Ry)及び(Rt)に従って研磨して得られた研磨形状を説明するグラフ。
【図10】本発明に係る研磨方法による研磨結果を説明するグラフ。
【図11】本発明に係る研磨方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、研磨速度や研磨形状の変化に合わせて、最適な研磨条件で研磨処理を自動で実行できるようにするという目的を達成するために、基板上に形成された膜を研磨ヘッドで研磨して平坦化する研磨装置による研磨方法において、基板上の膜の反りなし形状をフラットに研磨する研磨レシピ(Rf)と、山型反り形状の基板及び谷型反り形状の基板を研磨したときの研磨形状を夫々修正させる研磨レシピ(Ry)及び(Rt)を事前に作成し、反りなし形状の基板と、山型反り形状の基板及び谷型反り形状の基板を実際に研磨して、夫々の研磨形状を(反りなし形状に対応する研磨後の式)、(山型反り形状に対応する研磨後の式)及び(谷型反り形状に対応する研磨後の式)で補間して研磨する方法であって、研磨前の基板の膜厚を複数地点で測定するステップと、目標研磨量の半分程度を前記研磨レシピ(Rf)で前記基板を研磨するステップと、研磨後の前記基板の膜厚を複数地点で測定するステップと、研磨前後の前記基板の膜厚データから求められる研磨形状を(反りなし形状に対応する補間後の式)で補間するステップと、この(反りなし形状に対応する補間後の式)と前記(反りなし形状に対応する研磨後の式)との誤差を前記(山型反り形状に対応する研磨後の式)、(谷型反り形状に対応する研磨後の式)に補正するステップと、この(山型反り形状に対応する補間後の式)、(谷型反り形状に対応する補間後の式)の研磨形状から目標研磨量の残りの半分程度について、当該基板の各測定点の目標研磨量との誤差が最小となるように、研磨レシピ(Ry)、(Rt)の追加研磨時間を算出するステップと、算出した追加研磨時間だけ前記研磨レシピ(Ry)、(Rt)に従い、当該基板に対して目標研磨量の残りの半分程度を追加研磨するステップとを備えることによって実現した。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至図11に基づいて説明する。図1は、本実施例に係る研磨システムの全体の配置を示す。同図に示すように、この研磨システムは、ウェハ(基板)Wが収容されたカセットをセットするEFEM部01と、EFEM部01からウェハWを取り出して各部に搬送する搬送ロボット02と、研磨前後のウェハW上に形成された膜の膜厚を測定する膜厚計03と、ウェハWを研磨するウェハ加圧制御機構付き研磨ヘッド等を備えた研磨部04と、研磨後のウェハWを洗浄・乾燥する洗浄部05とを備える。
【0020】
本実施例では、ウェハW上に形成された成膜の研磨加工に際して、事前に、反りの無
いウェハWをフラットに研磨する反りなし形状の研磨レシピ(Rf)を作成しておき、実際に研磨して研磨形状を(式Y):Y=aX2+bで補間する。但し、a(0でない値)
、b(0より大きい値)は係数である。ここに、YはウェハWの膜厚を示し、XはウェハWの中心から半径方向に離間した地点の距離示す。
【0021】
ウェハWは、図2に示すプラテン11上で回転させながら、揺動往復可能な支持アーム12で保持されて回転する研磨ヘッド13でウェハWを押圧した状態で、ウェハWの半径方向に沿って研磨加工していくので、この研磨加工で補正できないXの1次式の項については除外する。
【0022】
前記同様に、山型反り形状のウェハW及び谷型反り形状のウェハWを研磨したときの研磨形状を夫々修正させる研磨レシピ(Ry)及び(Rt)を作成しておき、実際に山型反り形状のウェハW及び谷型反り形状のウェハWを研磨して、夫々の研磨形状を(式Y)及び(式T)で補間する。
【0023】
尚、前記プラテン11は円盤状に形成され、図示しないモータの駆動によって矢印A方向へ回転する。又、プラテン11の上面には研磨パッド14が貼着されており、該研磨パッド14上にノズル15からスラリーを供給しながら研磨加工する。
【0024】
ウェハW上の成膜を研磨する時は、先ず、EFEM部01にセットされたウェハWを、搬送ロボット02で膜厚計03に搬送し、研磨前のウェハW上の成膜の膜厚を膜厚計03で測定する。ついで、このウェハWを研磨部04に搬送し、反りの無いウェハWをフラットに研磨する反りなし形状の研磨レシピ(Rf)を使用して、研磨除去したウェハW上の成膜の膜厚の半分程度を研磨除去する。
【0025】
そして、洗浄部05にウェハWを搬送して、ウェハWの洗浄・乾燥を行う。この後、膜厚計03にウェハWを搬送し、研磨後のウェハW上の成膜の膜厚を測定する。この膜厚測定で得られた研磨前後のウェハW上の成膜の膜厚データの差を求め、この膜厚データの差から求められるウェハWの研磨形状を(式F’):Y=aX2+bで補間する。
【0026】
(式F)と(式F’)の係数aの値の差は、これを(式Y)と(式T)の係数aの値に夫々加算する。また、(式F)と(式F’)の係数bの変化の割合は、これを(式Y)と式T)の係数bの値に積算する。
補正のかかった(式Y’)と(式T’)から、残りの目標とするウェハWの研磨除去量が各測定点で最小になるように、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)と谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)の最適な追加研磨時間を計算し、計算した追加研磨時間だけ追加の研磨加工を当該ウェハWに対して行う。
【0027】
次に、本発明の研磨装置による研磨方法の具体的な適用例について詳しく説明する。先ず、前準備として、反りの無い形状のウェハWの成膜をフラットにする研磨加工と、山形状に反ったウェハWの成膜、及び谷形状に反ったウェハWの成膜を研磨したときの研磨形状をキャンセル(修正)させる研磨加工を行うために、これに適した研磨ヘッド13を用意する。
【0028】
ここで、研磨ヘッド13の構成例を図3乃至6に基づいて説明すると、研磨ヘッド13は、主としてヘッド本体17、バックプレート18、リング状のバックプレート用エアバック19、ゾーン押圧部20、リテーナリング21、リテーナ押圧部22及びリング状のリテーナリング用エアバック23から成り、研磨ヘッド13にはエア圧を制御するための加圧制御部46(図6参照)が接続されている。また、バックプレート用エアバック19及びリテーナリング用エアバック23には、それぞれエアを供給するための図示しない空気供給機構が連結されている。
【0029】
前記バックプレート18の下面には、研磨中のウェハWに直接接触して該ウェハWに対し局所的押圧を行う前記ゾーン押圧部20が固着されている。該ゾーン押圧部20は、ゴム材等の弾性部材で作製されており、研磨ヘッド13の回転中心をリング中心とする同心円状に形成された外周側ゾーン押圧部20A及び内周側ゾーン押圧部20Bで構成されている。
【0030】
前記ゾーン押圧部20には、複数の図示しないエアガイド溝が形成されていると共に、バックプレート18の底面部分には、各エアガイド溝に圧縮エアを噴射するためのそれぞれ複数のエア噴出孔(図示せず)が適宜間隔をおいて設けられている。エア噴出孔毎に各別に圧縮エア供給用の図示しないエアフロートラインが連結されている。エアフロートラインからの圧縮エアの供給は、加圧制御部46からの指令信号によって実行される。
【0031】
この研磨ヘッド13は、ウェハWの加圧エリアで区分けし、それらの加圧エリアの加圧量を制御できるように構成されている。図6に示すように、各ゾーン押圧部20の下面側には、研磨ヘッド13の半径方向と同方向に複数のゾーン部溝1乃至4(Zone1乃至4)が形成されている。該複数のゾーン部エア溝1乃至4は前記エアガイド溝に連通している。
【0032】
内周側のゾーン押圧部20に対応するエアフロートエリア30の区画部は、ゴム材等の弾性部材から作製され、エアフロートエリア30に形成されたゾーン部溝2,3,4(図6中において番号2,3,4で示す)は、ウェハWの中心部から外周部に向かう半径方向に沿って、ゾーン部溝4、ゾーン部溝3、ゾーン部溝2がこの順番で配設され、ウェハWの半径方向の各部位、即ち、ウェハWの中心部、中間部及び外周部を夫々独立に加圧できるように構成されている。
【0033】
要するに、エアフロートエリア30は、ウェハW各部を研磨条件のパラメータに対応して適切に加圧する領域として機能する。エアフロートエリア30の内部は、ゾーン部溝2,3,4の3つの空間部に独立して区分されているが、ゾーン部溝2,3は平面視でドーナツ状を呈している。
【0034】
エアフロートエリア30のゾーン部溝2,3,4には、個別に加圧制御部46が接続され、夫々独立に加圧制御される。依って、加圧制御部46からの指令信号により、各ゾーン部溝2,3,4の加圧力を任意に制御することで、ウェハW各部を押圧する圧力分布のバランスを自由に変更できるように構成されている。特に、ゾーン部溝1は、ウェハWの最外周領域に対応して配置されており、ゾーン部溝1の設定圧により、ウェハWの最外周領域を直接に所要の押圧力で保持することができる。
【0035】
前記研磨ヘッド13には、図7に示す制御装置41が接続されている。この制御装置41は、主に研磨前後のウェハWの成膜の厚さ、上記研磨レシピ及び補間式などを入力するための入力部(インタフェース)42と、研磨形状の近似式、最適追加研磨時間及び研磨速度などを算出するための演算部43と、演算結果を出力する出力部44と、研磨条件などに関する入出力情報を記憶する記憶部45及び前記加圧制御部46等を備えている。前記記憶部45には、本手法の研磨加工に必要な動作プログラムが全て格納され、全ての研磨工程を自動にて行えるようになっている。
【0036】
特に、前記演算部43は、研磨前後のウェハWの膜厚を膜厚計03で測定した結果のデータに基いて、研磨後の反りなし形状についての(式F’)を求め、この(式F’)と(式F)との差を(式Y)及び(式T)に補正し、この補正した(式Y)及び(式T)に基づいて、目標研磨量の残りの半分程度について、当該ウェハWの各測定点の目標研磨量との誤差が最小になるように、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)及び谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)の追加研磨時間を求める機能を有している。
【0037】
また、出力部44から研磨ヘッド13には加圧指令信号が送信されることにより、前記
追加研磨時間だけ山型反り形状の研磨レシピ(Ry)又は谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)で目標研磨量の残りの半分程度をウェハWに対し追加研磨できるように構成されている。
【0038】
次に、上記研磨ヘッド13で実際にウェハWを研磨加工し、この時に得られた膜厚データに基づいて作成した反りなし形状の研磨レシピ(Rf)、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)、谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)の詳細条件を表1に示す。但し、表1の縦の項目は、ウェハWの中心から測定地点までの距離(X軸座標の位置)を示す。
【表1】

【0039】
表1に示すように、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)では、ゾーン部溝3,4の設定圧が大きいのに対し、谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)では、ゾーン部溝1の設定圧が大きい。図8は、研磨ヘッド13とプラテン11を回転駆動させないときの静止的な状態での研磨ヘッド13のウェハWに対する圧力分布を示す。
【0040】
同図の(a)、(b)及び(c)はそれぞれ反りなし形状の研磨レシピ(Rf)、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)及び谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)にて研磨加工したときの圧力分布状態を示す。
【0041】
同図より、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)では、ウェハWの外周部側の圧力密度が高いのに対し、谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)では、ウェハWの中心部側の圧力密度が高いことが判る。
【0042】
本実施例では、上記研磨ヘッド13を用いてウェハWの研磨加工を行うに際して、事前に、反りの無いウェハWの成膜を研磨したときの、研磨形状を補正する反りなし形状の研磨レシピ(Rf)を作成しておいた。そして、実際に、この反りなし形状の研磨レシピ(Rf)に従ってウェハWの成膜を研磨除去した。このとき研磨した研磨形状に関する膜厚データ(研磨除去量{Å/min})を、表2の列Fに示す。
【0043】
前記膜厚データに基づき、反りの無い研磨形状に対応した近似式を求めたところ、(式F):Y=0.0285X2+3960と近似された。この近似式のグラフを図9に示す
。但し、但し、X軸はウェハWの回転中心からの距離、Y軸は膜厚を示す。
【表2】

【0044】
又、山形状に反ったウェハWの成膜を研磨したときの、研磨形状を補正する山型反り形状の研磨レシピ(Ry)を作成した。実際に、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)に従ってウェハWの成膜を研磨除去した。このとき研磨した研磨形状に関する膜厚データを、表2の列Yに示す。この膜厚データに基づき、山形状に反った研磨形状に対応した近似式を求めたところ、(式Y):Y=−0.3850X2+5338と近似された。
【0045】
また、谷形状に反ったウェハWの成膜を研磨したときの、研磨形状を補正する谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)を作成した。そして、この谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)に従ってウェハWの成膜を研磨除去した。このとき研磨した研磨形状に関する膜厚データを、表2の列Tに示す。この膜厚データに基づき、谷形状に反った研磨形状に対応した近似式を求めたところ、(式T):Y=0.3322X2+3064と近似された。なお、
近似式は最小二乗法で求めたが、他の方法で求めても良い。
【0046】
次に、試し研磨加工及び追加研磨条件の算出について説明する。まず、反りなし形状の研磨レシピ(Rf)を使用して、研磨除去したいウェハW上の成膜の膜厚の半分程度を試し研磨して除去する。ここでは、研磨除去したい膜厚を8000Åとし、且つ、研磨時間を約120秒として、反りなし形状の研磨レシピ(Rf)に従い前記研磨時間の約半分の60秒だけ研磨除去した。
【0047】
次に、追加研磨条件の算出については、先ず、研磨前後のウェハW上の成膜の膜厚を膜厚計03で測定した。この膜厚測定結果を表3の列F‘に示す。この膜厚データに基づいて近似式を求めたところ、(式F’):Y=−0.0467X2+4094となった。

【表3】

【0048】
ここで、(式F)と(式F’)を比較すると、Y=aX2+bにおいて係数aの値が0.02885から−0.0467に変化し、その差0.0752だけ増加している。これは、ウェハWの成膜の反り形状の具合により変化する値である。依って、この値を(式Y)と(式T)の係数aの値に夫々加算し、ウェハWの個々の反り形状による影響を補正する。
【0049】
又、(式F)と(式F’)の係数bの値を比較すると、その値が3960から4094に変化し、1.0338倍に増加していた。これは、研磨速度のバラツキにより変化する値(割合)である。依って、この値1.0338を(式Y)と(式Y’)の係数bに夫々乗算し、研磨速度のバラツキを補正する。以上より、下記の近似式が得られる。
(式Y’):Y=−0.4602X2+5520
(式T’):Y=−0.2570X2+3168
この補正された近似式が、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)、谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)で追加研磨したときの研磨形状と想定できる。残りの目標とする研磨除去量を山型反り形状の研磨レシピ(Ry)、谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)の最適研磨時間を計算すると、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)の研磨時間が17.8秒になり、また、谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)の研磨時間が42.9秒になる。この条件に従って追加研磨を当該ウェハWに対して行う。
【0050】
ウェハWの成膜に対して8000Åだけ研磨除去したときの、本手法について「適用あり」と「適用なし」とで相互比較し、その効果について検討した。ここで、「適用なし」では、反りなし形状の研磨レシピ(Rf)で8000Åを研磨除去した。また、「適用あり」では、反りなし形状の研磨レシピ(Rf)で4000Åを研磨除去した後、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)の最適研磨時間又は谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)の最適研磨時間で研磨除去した。「適用あり」、「適用なし」の結果を表4と図10のグラフに示す。
【表4】

【0051】
この比較結果より、平均研磨量に関しは、「適用あり」の方がより8000Åに近づいた。
【0052】
又、「適用あり」の場合では、研磨範囲と研磨バラツキ(1σ)が小さいので、ウェハW面内の研磨量のバラツキがより少なくなったことが判る。さらに、これらの研磨動作については、研磨装置がすべての工程を自動にて行うため、少ない動作時間でウェハWの研磨処理を円滑迅速に実行できた。
【0053】
本発明に係る補間式:Y=f(X)は、補正したい研磨形状に合わせて最適な近似式を採択でき、たとえば、グラフが左右対称となる偶関数の式であれば、4次式や6次式などの高次式を採択でき、あるいは、三角関数の式も理論上採択可能である。
補間式が2次式の場合、係数a又は係数bの値を(式Y’)、(式T’)に補正するとき、研磨形状についての膜厚データの測定結果に合わせて係数をもたせることにより、より良好な研磨結果を得ることができる。
【0054】
以上説明した本発明の研磨方法の工程例の概要を図11に示す。ステップS1では、研磨前のウェハW上の成膜の膜厚を測定する。次に、ステップS2では、目標研磨量の半分程度を反りなし形状の研磨レシピ(Rf)で試し研磨を行う。そして、ステップS3では、研磨後のウェハW上の成膜の膜厚を測定する。
【0055】
このあと、ステップS4では、研磨前後のウェハW上の成膜の膜厚の測定結果により、(補間式F)の結果の予想との誤差を(補間式Y)、(補間式Y)、(補間式T)に補正し、残りの研磨量の各測定点が最小になるように、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)又は谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)の最適追加研磨時間を算出する。最後に、ステップS5では、算出した適追加研磨時間だけ前記ウェハWに対して、山型反り形状の研磨レシピ(Ry)又は谷型反り形状の研磨レシピ(Rt)に従って追加の研磨除去を行う。
【0056】
叙上の如く本発明は、研磨ヘッドでウェハの成膜を研磨加工する際に、ウェハの試し研磨を実施して、ウェハにおける複数地点の膜厚を膜厚計で計測する。そして、この計測で得られた膜厚のデータに基づき、反り形状のウェハの追加研磨時間を求める。この算出した追加研磨時間だけ、ウェハの残りの研磨量を反り形状の研磨レシピ(Ry、Rt)で追加研磨除を行うので、下記の優れた効果を奏することができる。
【0057】
(1)ウェハの研磨速度や研磨形状の変化に合わせて研磨処理を実行できる。斯くして、基板が厚くて硬い場合であっても、研磨量バラツキを効果的に抑制しつつ、研磨処理を効率良く行い、以って、成膜平坦化の研磨品質を大幅に向上させることができる。
【0058】
(2)実施例では、ウェハ各部の加圧を制御する手段と、本発明の研磨方法に必要な全ての動作プログラムが組み込まれた成徐装置とを備えた研磨装置を用いたことで、本発明の研磨方法による研磨処理を自動にて全て実行でき、以って、人手作業を無くして、作業時間を大幅に短縮させることができる。
【0059】
(3)補間式として二次の式を採択した場合は、反りなし形状、山型反り形状及び谷型反り形状に対応する(式F)、(式Y)及び(式T)等の補間式を求める際に、二次の項の係数aと定数項の係数bの2つだけを求めればよいので、研磨量の測定点の個数を少なくできるとともに、上記追加研磨時間をより簡便に算出することができる。
【0060】
本発明は、上記の実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然
である。例えば、補間式:Y=f(X)はとしては、絶対値を包含する関数(例:Y=|aX2+bX+c|など)も採択できる。また、基板上に形成された成膜は、絶縁膜又は
導電性膜のいずれでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明置は、基板の研磨方法であれば、基板の種類、材質、寸法等を問わず全て適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
01 EFEM部
02 搬送ロボット
03 膜厚計
04 研磨部
05 洗浄部
11 プラテン
13 研磨ヘッド
20 ゾーン押圧部
30 エアフロートエリア
41 制御装置
42 インタフェース
43 演算部
44 出力部
45 記憶部
46 加圧制御部
W ウェハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された膜を研磨ヘッドで研磨して平坦化する研磨装置による研磨方法において、
基板上の膜の反りなし形状をフラットに研磨する研磨レシピ(Rf)と、山型反り形状の基板及び谷型反り形状の基板を研磨したときの研磨形状を夫々修正させる研磨レシピ(Ry)及び(Rt)を事前に作成し、
反りなし形状の基板と、山型反り形状の基板及び谷型反り形状の基板を実際に研磨して、夫々の研磨形状を(反りなし形状に対応する研磨後の式)、(山型反り形状に対応する研磨後の式)及び(谷型反り形状に対応する研磨後の式)で補間して研磨する方法であって、
研磨前の基板の膜厚を複数地点で測定するステップと、
目標研磨量の半分程度を前記研磨レシピ(Rf)で前記基板を研磨するステップと、
研磨後の前記基板の膜厚を複数地点で測定するステップと、
研磨前後の前記基板の膜厚データから求められる研磨形状を(反りなし形状に対応する補間後の式)で補間するステップと、
この(反りなし形状に対応する補間後の式)と前記(反りなし形状に対応する研磨後の式)との誤差を前記(山型反り形状に対応する研磨後の式)、(谷型反り形状に対応する研磨後の式)に補正するステップと、
この(山型反り形状に対応する補間後の式)、(谷型反り形状に対応する補間後の式)の研磨形状から目標研磨量の残りの半分程度について、当該基板の各測定点の目標研磨量との誤差が最小となるように、研磨レシピ(Ry)、(Rt)の追加研磨時間を算出するステップと、
算出した追加研磨時間だけ前記研磨レシピ(Ry)、(Rt)に従い、当該基板に対して目標研磨量の残りの半分程度を追加研磨するステップとを備えることを特徴とする研磨装置による研磨方法。
【請求項2】
上記研磨形状に対応する一般式が2次式:Y=aX2+b(a,bは係数)であること
を特徴とする請求項1記載の研磨装置による研磨方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−115381(P2013−115381A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262898(P2011−262898)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】