説明

福祉用具用椅子

【課題】介護用椅子の肘掛けを長、短把持体にしたり、肘掛けなしの状態にして、移乗や快適な長時間着座を得ようとする。
【解決手段】介護用椅子1の肘掛け7を枠体10で構成して、椅子1の両側の垂直面で回動自在に枢支するため、この肘掛け7を、長把持体8と短把持体9とを直交して連結すると共に、これらの把持体8、9に対向してL字補強体17を連結する。この補強体17を枢支して回動させると、長、短把持体8、9が各水平状になるし、肘掛け7全体が座面6以下にもなるので、課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高齢者や体の不自由な人、つまり障害者が使用するポ−タブルトイレや浴室用椅子などの福祉用具に適する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、障害者や老人等のための福祉用具(介護用具ともいう)は、障害者等自身のための生活の自立を図る目的と共に、介護者の介護量の軽減を図る目的にある、とされている。
【0003】
これに加えて、障害者等の日常生活への復帰を促す福祉用具もその目的の一つとされている。
【0004】
しかしながら、これらの目的を全て満たす福祉用具の開発は、意外にも難しい。
【0005】
例えば、障害者等がベッドから離れて所用を足してから、再びベッドに戻ることにせず、腰かけながら一日を過ごすことにより、日常生活に近づける、というパタ−ンに適した椅子は意外にも発見できなかった。
【0006】
すなわち従来、一般の福祉用具のための椅子に関して例えば、次のような提案が知られている。
【0007】
特許文献1に示すように、座面の両側に設けた水平状棒状把持体からなる肘掛けのある椅子において、これらの肘掛けの一方を短くし、他方を長くして、短い肘掛けをベッド側にしてベッドから該椅子に移乗する際、この肘掛けが邪魔にならないように、また該椅子に長時間腰かける際には両方の肘掛けを長くして腰かけの快適性を得るように、両肘掛けを着脱自在にして長短変更自在にした椅子を提案している。
【特許文献1】特開2000−342488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、かかる提案の椅子では、肘掛けの着脱には、椅子本体の側板と背もたれの側部とにそれぞれ設けた複数のネジ孔に、螺入する複数の固定ネジの着脱によって行われることから、障害者等が腰かけた状態では、この肘掛けの長短変更は困難であるし、この椅子を離れた所用中でも面倒であるので、ひいては、ベッドから離れた後、長時間腰かけて過ごす連続の生活態度には好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明では、かかる不都合をなくすために創作されたもので、その要旨とするところは、1)福祉用具用椅子の棒状肘掛けを、該椅子本体の側面側に垂直面で回動するよう枢支し、該肘掛けを回動することにより、その長短を変えられることを特徴とする福祉用具用椅子にあり、また、2)前記肘掛けを回動して該椅子の座面以下に位置させる請求項1に記載の福祉用具用椅子にあり、また、3)前記長短の肘掛けを囲い状枠体で形成した請求項1または2に記載の福祉用具用椅子にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1台の椅子において、その肘掛けの棒状把持体の長短変更をワンタッチ式に、すなわち、取り外すことなしに回動するだけでできることから、ベッドから移乗を容易にするのは勿論、移乗後引き続き長肘掛けを使用して長時間快適に着座することができるので、障害者等の日常生活への復帰を促す椅子に適し、ひいては、福祉用具として好適な椅子にすることができる。しかも障害者等の障害軽重に対応できるので、殊に好都合となる。
【0011】
更に、長、短変更時に、枠体自身の分解組立がない完成された囲い状枠体の肘掛けで構成したので、強固となり障害者等に不安を与えるきしみや歪が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を添付図面に示す実施例により詳細に述べる。
【0013】
図1は本発明の実施例の側面図、図2は図1の使用例図、図3は図1の他の使用例図である。
【0014】
本発明の実施例の椅子は、障害者や老人等が使用すると好都合な福祉用具であって、特に、家具調(木製)ポ−タブルトイレに関するものである。
【0015】
本実施例の椅子1は、図1において略直方体状の椅子本体2と、該椅子本体2の下方に設けた4本の柱3、3…をもつ脚部4(該柱3の高さ調節ハンドルが側面にないもの)と、椅子本体2の背部に設けた背もたれ5と、椅子本体2の上面に着脱自在に設けた2つ割り状の座面6と、該座面6の両側に平行状に設けた、次のような肘掛け7、7と、から大略構成されている。
【0016】
なお、この肘掛け7は椅子本体2の両側面にあって、正面視で同一構造の左右対称であるので、片側のみを述べる。
【0017】
この肘掛け7は、長、短の水平棒状把持体8、9を含む囲い状枠体10、すなわち、棒体で一辺として固定支点(対偶でないもの、特に回り対偶でないものをいう)で連結した、内角を不変とする多角形(略4角形)で構成している。
【0018】
したがって、肘掛け7が強固となって不安なきしみを発生させない。特に、長把持体8と短把持体9とを固定支点において直交して連結し(これを直交支点11とする)、この直交支点11に対し、略対称になった他の固定支点を枢支用固定支点12として、枠体10全体を垂直面、すなわち上下方向で回動可能にし、長把持体8および短把持体9のいずれも座面6の側方で水平状態に形成した把持体を構成できるようにして、後記第1および第2の使用目的に好都合にしている。
【0019】
更に、この状態の枠体10を約90度回動させると、この枠体10が座面6と略同一面以下の状態になって、肘掛け7のない椅子1に構成できるので、後記第3の使用目的に好都合にしている。
【0020】
そして、この枢支用固定支点12は椅子本体2の側面13に設け、囲い状枠体10を右または左に回動させて、前記3つの使用目的のいずれかに形成したとき、固定できるように、1本の固定ネジ14を前記側面13または背もたれ側部15に設けた螺入孔16、16…に螺入して固定できるようにしてる。
【0021】
更に具体的に云えば、この枠体10は長把持体8のその先端を残して下面に長把持体8より約半分程度の短把持体9を直交して突設して直交支点11を形成している。
【0022】
また、この直交状の長、短把持体8、9に対向したL字状補強体17を固定支点でもって連結し、全体の囲い状枠体10を形成している。
【0023】
そして、このL字状補強体17に枢支用固定支点12を設け、例えばピン等により回動自在に支持、つまり枢支している。
【0024】
なお、このL字状補強体17は、前記第3の使用目的にするため回動したとき、L字の直角コ−ナが突出するので、安全のためバイパス状に傾斜用補強体17aを形成している。
【0025】
また、固定ネジ14は、取扱いを容易にするためノブ付きボルトにしている。
【0026】
次に本実施例の椅子1の作用を述べる。
【0027】
ベッドから当該椅子1に障害者等が移乗する目的(前記第2の使用目的)で使用するには、肘掛け7を短把持体9に構成すると、ベッドから椅子1の側方から移乗する際に、移乗スペ−スを確保できると共に、短把持体9を把持して当該体を支えることができるので、高齢者や体の不自由な人でも安全かつ安心して移乗できる。
【0028】
次に着座後、この椅子1で長時間過ごす目的の場合(前記第1の使用目的)、看護者等がこの水平状になっている短把持体9を回動させて長把持体8を水平状にする。そのときは、予め固定ネジ14を緩め、背もたれ5の側部15の螺入孔16に螺着する。
【0029】
また、障害者等の不便さが重度の場合には、肘掛け7を隠れた状態で使用すればよいが、この使用する目的(第3の使用目的)では、すなわち、重度障害者のように一人では移乗できない場合、当該人を介助者が脇を抱えて移乗させる場合に、移乗スペ−スを最大限に広く確保できるので(邪魔になるものがないので)、容易に移乗させることができる。
【0030】
なお、本実施例の椅子1はポ−タブルトイレで説明したが、これに限らず浴室用椅子や車椅子や、スプリング等付の立上り補助椅子(したがって、金属パイプで囲い状枠体10で構成すると、更に簡素でかつ強固となって好都合である)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例の側面図である。
【図2】図1の使用例図である。
【図3】図1の他の使用例図である。
【符号の説明】
【0032】
1…椅子、2…椅子本体、5…背もたれ、7…肘掛け、8…長把持体、9…短把持体、10…枠体、12…枢支用固定支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
福祉用具用椅子の棒状肘掛けを、該椅子本体の側面側に垂直面で回動するよう枢支し、該肘掛けを回動することにより、その長短を変えられることを特徴とする福祉用具用椅子。
【請求項2】
前記肘掛けを回動して該椅子の座面以下に位置させる請求項1に記載の福祉用具用椅子。
【請求項3】
前記長短の肘掛けを囲い状枠体で形成した請求項1または2に記載の福祉用具用椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−304972(P2006−304972A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129982(P2005−129982)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】