説明

移動体通信端末試験装置

【課題】 繰り返し行われる、移動体通信端末の擬似基地局による接続試験等において、少なくとも今後の試験回数がどのくらいの回数になるのかを把握できる技術を提供する。
【解決手段】 試験手段100の判定結果を受けて、パス判定手段10が次の所定の誤り率及びパス確率しきい値を求め、統計処理手段9が、前記誤り率が前記パス確率しきい値以下になるまでの推定の残り試験回数又は前記残り試験回数に応じた推定の残り試験時間を求める構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信端末と通信接続可能な擬似基地局機能を有し、セル(各基地局のサービスエリアの単位)間を移動するセル方式の移動体通信端末を想定し、そのセル間の移動に対応して、移動体通信端末の接続状態が適切にセル間を遷移しているかどうかを試験するための移動体通信端末試験装置及びその試験方法に係り、特に、擬似的にセル間を遷移して受信状態を切り換える試験を数多くの回数、実施し、各回の結果を基に統計的評価し、所定のパス確率(合格確率)に達するまで試験を行うにあたって、現在の試験回数から今後、パス確率に達するまでの最短の試験回数等を表示するようにした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体通信端末1を用いた通信方式には、図5のように各基地局1、2、3,4・・は、それぞれセルと呼ばれるサービスエリアである、セル1、2、3、4・・に当該移動体通信端末1が入ったときに、登録し、通信可能にしている。例えば、移動体通信端末1がセル1からセル2へ移動したとき、セル1とセル2がダブリの基地局1及び2の双方から通信サービスが得られる場合は、いずれか到来電波の電力の大きい方、或いは双方を利用することができる。
【0003】
移動体通信端末1が製造されたとき、上記のようなセル間を移動したときに移動体通信端末1が自動的に基地局1から基地局2へ接続状態を切り替える(以下、「接続状態の遷移」と言う。)が、その切り替えが正しく実施されるかどうか、そのときの品質、例えばデータの誤り率はどうかを試験する必要がある。
【0004】
そのため、試験にあたっては、移動体通信端末1は移動できず位置が固定なので、移動体通信端末試験装置側において、セル1、2、3,4・・・相当の試験信号を発生し、その通信方式に沿ったプロトコルで移動体通信端末1と擬似的に通信し、接続状態の遷移及び品質を試験する方法がなされている。つまり、擬似基地局を構成して、移動体通信端末1と通信し試験するものがある。
【0005】
このような通信方式における試験方法として、例えば、W−CDMAの通信方式における規則である、非特許文献に記載の規則にしたがったRRM(Radio Resource Manegement)試験、簡単に言い換えれば、基地局との接続試験、或いは、手順試験(Procedure Test)がある。
【0006】
図6に、その試験の従来の構成を示す。図6において、試験手段100に含まれる送受信手段3は、セル1、2、3、4・・に相当する各送受信機の機能を有するとともに、その送受信機の機能は、当然ながら基地局同様に移動体通信端末1と所定のプロトコルで必要なメッセージを交わして通信接続を行う機能を含む。受信測定手段4は、上記送受信機の機能とともに、その通信接続を通して移動体通信端末1から送られてくる信号を分析測定して、移動体通信端末1における接続状態の遷移の確認、品質を試験する。なお、送受信手段3と受信測定手段4とは、時間的に同期するようにされている。
【0007】
受信測定手段4は、時間測定等の機能を有する。移動体通信端末1は、無線の伝播信号で送受信するため、無線周波数領域で伝播信号の特性を試験するためのスペクトラム、帯域、電力測定等(これらを測定可能なスペクトラムアナライザー等を内蔵している。)を測定できるようにされている。時間測定は、移動体通信端末1からの信号を受けて、その時刻を測定する。例えば、スペクトラムアナライザーで移動体通信端末1からの受信周波数を中間周波数に変換し、その周波数にて時間掃引することにより、オシロスコープ同様の時間領域測定を行って、時間を測定する。
【0008】
上記のように、送受信手段3及び受信測定手段4は、擬似基地局機能と測定機能(試験機能)とを併せ持っている。以下、送信手段3及び受信測定手段4を併せたものを一括して、擬似基地局ということがある。
【0009】
結合手段2は、ケーブルで双方向に接続してもよいし、アンテナを介して、接続してもよい。
【0010】
試験手順制御手段5は、上記した通信方式における試験方法、例えば、W−CDMAのRRM試験手順に沿って、擬似基地局を制御する。
【0011】
特に、上記のように移動体通信端末1がセル間を移動したとき、移動体通信端末1は、所定の時間経過内において、受信切り替え、登録を済まして、所定の品質で受信できるように遷移することが定められているので、これらのシーケンシャル動作を満足しなければならない。したがって、試験手順制御手段5は、時間設定手段5aを有し、擬似基地局に対して、規則に沿ったシーケンシャル動作を行わせるものである。
【0012】
判定手段6は、試験手順制御手段5の時間設定手段5aで設定された通りに擬似基地局が動作しているとき、移動体通信端末1における接続状態のセル間の遷移が所定時間内に行われているかどうかを判定する。所定時間内に遷移が行われていれば良と判定し、所定時間を超えて遷移した場合、或いは遷移しなかった場合は、否と判定していた。
【0013】
パス判定手段10は、次の式で表される誤り率がパス確率しきい値より下回るかどうかを判定していた。なお、パス確率しきい値は、非特許特許文献又は特許文献において、「early pass」や「erlimbadpass」として定義されているものである。
誤り率=N/Ns
パス確率しきい値=2×N×M/qchisq(1−D,2×N)
Ns:全試験回数
N:Ns回の試験回数のうち判定手段6で否と判定された回数
D:誤判定危険率
M:係数
qchisq:カイ二乗分布。qchisq(1−D,2×N)は、DとNをパラメータとするカイ二乗分布を表す。
図3(a)に、縦軸が誤り率の対数尺、横軸が判定手段6で否と判定された回数Nの対数尺とする座標上におけるパス確率しきい値の特性を示す。
K回目の誤り率Ner/K(Nerが否の回数)が、パス確率しきい値には入れば、パス確率で定める確率(例えば、99%)で合格ということになる。
【0014】
そして、パス判定手段10は、判定結果を表示手段7に表示させるとともに、誤り率がパス確率しきい値より大きい場合は、試験手順制御手段5に対して通知し、誤り率がパス確率しきい値を下回るまで試験を行わせていた。
【0015】
【非特許文献1】「3GPP TS 34.121、V3.11.0、2002年12月、3GPP Organizational Partners(ARIB,CWTS,ETSI,T1,TTA,TTC)、フランス、P.316〜330
【特許文献1】International Publication NumberPCT WO 02/089390 A1(5p,5行〜9p,9行、FIG.1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の従来技術では、表示手段7への表示は、上記パス判定手段10の判定結果を表示するだけであり、また試験判定手段6の結果を各測定項目に応じた数値データとして表示していた。したがって、後者の例としては、1000回試験したときの予定されたセル間の接続の遷移の成功(片方のセルを離脱して、他のセルへの接続成功)、不成功(失敗。片方のセルからの離脱エラー、他のセルへの接続エラー)の割合を数値表示する。或いは不成功の前記割合が所定の許容範囲を超えたことと、その回数を数値表示する等が行われていた。
【0017】
このような数値データだけであると、後どのくらいの回数、或いは試験時間がかかるものか把握できない。したがって、操作者が、移動体通信端末試験装置に張り付いていて離れられない不便さがあった。さらに、量的に直接に、把握できないという問題があった。
【0018】
本発明の目的は、移動体通信端末の擬似基地局による接続試験等において、少なくとも今後の試験回数がどのくらいの回数になるのかを把握できるようした移動体通信端末試験装置の提供にある。また、同時に判定の良否の分布が量的に直接、視覚的に把握できるようする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、セル方式の移動体通信端末の所定動作について複数回、試験し、かつ試験回数毎にその試験の良否判定を行う試験手段と、次の式で表される誤り率及びパス確率しきい値を求め、誤り率がパス確率しきい値以下になるか判定するパス判定手段とを備え、
誤り率=Ner/K
パス確率しきい値=2×Ner×M/qchisq(1−D,2×Ner)
K:試験回数がK回
Ner:K回の試験回数のうち前記試験手段で否と判定された回数
D:誤判定危険率
M:係数
qchisq:カイ二乗分布。qchisq(1−D,2×Ner)は、DとNerをパラメータとするカイ二乗分布を表す。
前記誤り率が前記パス確率しきい値以下になるまで同じ前記試験を繰り返す移動体通信端末試験装置において、
表示手段と、 前記誤り率と前記パス確率しきい値を基に、前記誤り率が前記パス確率しきい値以下になるまでの推定の残り試験回数又は前記残り試験回数に応じた推定の残り試験時間を求める統計処理手段と、少なくとも前記残り試験回数又は前記残り試験時間を前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備えた。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記試験手段は、
セル方式の移動体通信端末を所定回数、試験するための手順を保有し、それに沿って制御情報を出力する試験手順制御手段と、複数のセル相当の信号を発生し、それらの強度を前記制御情報にしたがって予定された時間経過に応じて変化させて送る送受信手段と、前記移動体通信端末が前記強度の変化に応じて複数のセル相当の信号を切り換えて受信するときの時間を測定する受信測定手段と、前記受信測定手段から測定結果を受けて、前記移動体通信端末の前記切り換えが所定時間内に成功したときは良と判定し、それ以外のときは否と判定する判定手段とを備え、前記統計処理手段は、さらに、前記測定結果と判定結果を受けて、測定された時間対試験回数の分布を算出し、前記表示制御手段は、前記統計処理手段が求めた前記残り試験回数又は残り試験時間の少なくともいずれかと、前記測定された時間対試験回数の分布の双方を前記表示手段に同時に表示する構成とした。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記統計処理手段は、前記残り試験回数として、前記誤り率が前記パス確率しきい値以下になるまでの最短残り試験回数=[Ner/パス確率しきい値]―Kを求める構成とした。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記統計処理手段は、前記ある回の試験手段の判定結果が否である場合は、前記誤り率とパス確率しきい値とを基に最短残り試験回数を求め、前記ある回の試験手段の判定結果が良である場合は、[前回求めた最短残り試験回数−1]を前記ある回の最短残り試験回数とする構成とした。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1、2又は3記載の発明において、前記統計処理手段は、縦軸が誤り率、前記試験手段で否と判定された回数を横軸とする座標上で、当該誤り率=Ner/Kの直線とパス確率しきい値の特性との交点を求め、前記残り試験回数として、前記交点を基にその交点に達するまでの誤率同一推移試験回数を求める構成とした。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明によれば、繰り返し試験を行っている中で、残りの試験回数又は残り試験時間が表示されるので、操作者は、残りの所要時間を把握でききる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、判定結果が成功、失敗の分布が量的に把握できる。
【0026】
請求項3又は4に記載の発明によれば、最短の残り回数が把握できるので、操作者は、少なくともその時間を他に振り向けられるので、便利である。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、回数毎に同一誤り率で推移した場合の残り試験回数が表示されるので、どのくらいの時間で試験が終わるかの見通しがたてやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施形態を、図を基に説明する。図1は本発明の機能構成を示す図である。図2は、残り回数(時間)の表示例及び測定された遷移時間と試験回数の分布を表示した例である。図3(a)は、誤り率、パス確率しきい値特性、残り回数を説明するための図である。図4は、移動体通信端末1のセル間における接続状態の遷移の例を説明する図である。
【0029】
図1を基に本実施形態の機能構成を説明する。図1において、従来技術で説明した図6と同一符号のものは、機能も同一であるので、判定手段6を除き説明を省略する。
【0030】
図1において、判定手段6は、移動体通信端末1における接続状態のセル間の遷移が所定時間内(例えば、8秒以内)に行われているかどうかを判定することによって、例えば、8秒以内であれば良(成功)、8秒を超えていれば否(失敗)と判定する。その他、擬似基地局と通話を行う試験においては、そのメッセージ内容も判断している。判断するときに基準となる時間及びメッセージは、試験手順制御手段5から予め受ける。試験及び判定の手順、動作は、実施例として後記する。
【0031】
統計処理手段9は、回数推定部9a及び分布算出部9bを含む。分布算出部9bは、判定手段6が判定した結果の分布、及び失敗・成功の回数をカウントするとともに、その統計的なデータを生成する。一つは、図2の上段に示すように、セル間の接続状態の遷移が例えば、8秒以内が成功で、8秒を超した場合が失敗とすれば、成功と失敗を色、模様、符号等で識別可能にするとともに、判定手段6が判定した結果を、受信測定手段4が測定した時間を基に遷移時間別に振り分けてカウントし、遷移時間対試験回数の分布としたデータを生成し、表示制御手段8を介して、棒グラフとして表示手段7へ表示させる。
【0032】
回数推定部9aは、分布算出部9bがカウントした失敗回数及び全試験回数(失敗回数+成功回数)を基に、あるK回目の試験において、次の手順で残り回数及び時間を求める。
【0033】
(a)最短残り試験回数を求める。
回数推定部9aは、現在の試験(図3(a)のA点)における誤り率において、今後の試験が全て成功と判定された場合(その場合の誤り率は、図3(a)のB点に相当する。)の回数を求める。つまり、次の式(1)で表される最短残り試験回数X0を求める。求めた結果を表示制御手段8へ送る。また、受信測定手段4で測定した時間の1試験当たりの平均時間、或いは試験制御手段5が制御する時間で推定される1回当たりの試験時間と最短残り試験回数X0とを乗算した最短残り試験時間を推定し表示制御手段8へ送っても良い。
【0034】
式(1) 最短残り試験回数X0=[Ner/パス確率しきい値]―K
ただし、 誤り率=Ner/K
パス確率しきい値=2×Ner×M/qchisq(1−D,2×Ner)
Ner:K回の試験回数のうち判定手段6で否(失敗)と判定された回数
D:誤判定危険率
M:係数
qchisq:カイ二乗分布。qchisq(1−D,2×Ner)は、DとNerをパラメータとするカイ二乗分布を表す。
【0035】
ただし、式(1)は、試験回数が5回を超えた段階で適用するのが望ましい。つまり、確率的な問題であるので、試験回数が少ない場合は、確率の適用そのものが精度がでないからである。また、誤り率は、平均値であっても良い。
【0036】
また、上記、式(1)で一度、計算した後、次の例えば(K+1)回目の試験で、判定手段6の結果が、成功であれば、次の式(2)で求める。
式(2) 最短残り試験回数=K回目の最短残り試験回数―1
つまり、判定結果が成功であった場合は、成功した回数を引けばよい。成功が続いた場合も、続いた成功の回数だけ引けばよい。したがって、上記式(1)で求めるのは判定結果が失敗の場合だけで十分である。
【0037】
(b)今後、現在と同じ誤り率で推移した場合の残り試験回数(誤率同一推移試験回数)を求める。
現在の試験(図3(a)のA点)における誤り率が、今後の各回でもほぼ同じ誤り率で推移した場合にパス確率しきい値内に入る回数(図3(a)のC点)を求める。
【0038】
つまり、回数推定部9aは、図3(a)のように縦軸が誤り率(N/Ns)、判定手段6で失敗(否)と判定された回数(N)を横軸とする座標上で、当該誤り率=Ner/Kの直線とパス確率しきい値の特性との交点、つまりC点の座標(Ner/K、L)を求める。つまり、誤り全回数Lを求める。そうすると、Lは既知であるから、次式のように残りの誤率同一推移試験回数Y0を求める。
L/(K+Y0)=Mer/K であるから
誤率同一推移試験回数Y0=[(L/Mer)―1]×K
誤率同一推移試験回数Y0の表示、誤率同一推移残り回数Y0に対応した残り時間の表示は、上記(a)と同じようにすることができる。
【0039】
上記、回数推定部9aは、上記の誤り率及びパス確率しきい値を求める演算を行う手段を備え、誤判定危険率、M等の定数を記憶している。また、回数推定部9aは、図1では、パス判定手段10と別機能として構成したが、パス判定手段10と一緒の構成が望ましい。同じ式、同じ情報を有するためである。また、パス判定手段10は、誤り率とパス確率しきい値とを比較判定し、誤り率がパス確率しきい値より大きい場合は、試験手順制御手段5に対して通知し、誤り率がパス確率しきい値を下回るまで試験を行わせていた。これを回数推定部9aで行っても良い。
【0040】
表示制御手段8は、統計処理手段9の回数推定部9aからの最短残り試験回数、及び分布算出部9bからの遷移時間対試験回数の分布を受けて、個別に或いは同時に図2に示すように表示手段7に表示させる。表示制御手段8のグラフ生成手段8eは、予め、図2のグラフ、データ表示欄からなるフォーマットを記憶しており、都度、統計処理手段9からのデータで表示データを更新して表示している。また、表示制御手段8は、図3(b)に示すように最短残り試験回数X0及び誤率同一推移試験回数Y0を表示し、各回における点(X0/2、Y0/2)を結んで軌跡として表示してもよい。なお、データ表示制御手段8aは、表示制御部8の各要素を統括して制御している。これまでに、説明していない、表示制御部8の要素については、簡単に下記実施例の中で説明する。
【0041】
(実施例)
この実施例は、試験手段100による試験において、移動体通信端末のセル間の接続状態の遷移の試験に加え、さらにメッセージの交換を含む通話状態が遷移する試験の例を示すもので、その試験順序を含めて説明する。
【0042】
図1及び図4を基に実施例を説明する。図4は、個々の試験項目における試験の時系列的な動作を示す表示例である。先に、この図4の概要を説明する。横軸がセル名、縦軸が予定されている試験の時間経過を示す。この中で、2本線で示したのが擬似基地局からコントロール情報だけ送信する状態、太い黒線は通話を行う状態を示す(いずれも予定であり、予定マーカ生成手段8bで生成されるマーカで、予定マーカと総称する。)。●は、現時点での判定手段6による判定の成功、〇は、判定手段6による過去の判定の成功、×は現時点の失敗を示す(いずれも、受信マーカ生成手段8bで生成されるマーカで、受信マーカと総称する。)。図4は、現在、終了までの試験を完了したときのものである。この成功、失敗は、図4の左側に示す各時間スケジュールに沿って、個々について判定手段6が行う判定である。
【0043】
(1)試験手順制御手段5が予め所有している手順にそって、各部に対して制御を行うが、その時間経過は時間設定手段5aで設定されている。
(2)座標生成手段8d及び予定マーカ生成手段8bが、時間設定手段5aからの情報を基に、図4の受信マーカ(○又は●)が無い状態の表示を行う。そして、送受信機1が、T1から送信し始め、送受信機2は、T2から送受信機1と同じ信号強度(レベル)で送信する。
【0044】
(3)移動体通信端末1は、アイドルを始め、送受信機1から送信された信号(セル1相当の信号)の受信を開始する。そして、擬似基地局に対する位置登録、「呼」(call)を設定、測定の各項目をこなしていく。移動体通信端末1が、順次処理していく結果を、送受信手段3と受信測定手段4が受けて測定し、その測定結果を基に判定手段6が成功、失敗を判定し、判定結果を受信マーカ生成手段8cに送り、処理した時刻に●を付していく(図4は、終了の時間から見ているので成功で終了している部分は〇になっている。以下、同じ)。判定手段6の判定結果は、上記したように、パス判定手段10及び統計処理手段9へも送られている。
【0045】
(4)T2では、擬似基地局は、送受信機1を通して、移動体通信端末1に対して、移動体通信端末1が送受信機2のから送信された信号(セル2相当の信号)を認識しているかどうかについての「REPORT」を要求し、これに対するREPORTを送受信手段3が受けて判定手段6へ受信結果を送る。判定手段6は、受信結果を受けて、移動体通信端末1が、T2とT3の間(3秒間)に報告してきたか、REPORT内容が「認識」であるかどうか判断してOKであれば●、いずれかが満たさなければ×を付す。
【0046】
(5)移動体通信端末1は、T3−T4間において、送受信機1及び2双方と通話可能な状態を切り換える。判定手段6は、この状態を送受信手段3から受け、その切り替え時間がT3−T4間(2秒以内)で行われたか否かを判定し、結果を受信マーカ生成手段8cに送り、●又は×で表示させる。
【0047】
(6)試験手順制御手段5は、送受信機1及び2に対して、移動体通信端末1へ送受信機1及び送受信機2(擬似基地局1及び擬似基地局2)と通話状態かどうかの確認のメッセージを送らせる。それに対して、移動体通信端末1からのメッセージを送受信手段3を介して受けた判定手段6は、時間がT4−T5間(0.06秒)であり、メッセージが「通話状態」であれば成功と判断し、そうでなければ失敗と判断する。その結果は、受信マーカ生成手段8cにより表示手段7に表示される。
【0048】
(7)T5において、送受信機1の送信信号の強度が下げられるので、移動体通信端末1が接続状態を送受信機1及び送受信機2の双方の信号を受信していた状態から送受信機2のみの受信状態へ切り替わるとともに、送受信手段3が移動体通信端末1からの信号を受けて判定手段6で誤り率を測定する。切り替わりの時間及び誤り率が規定値以下(正常)かどうかを判定手段6が判定して、受信マーカ生成手段8bを通して、表示手段7に●又は×の印を付けさせる。
【0049】
(8)T1から終了までの試験を例えば繰り返し行い、誤り率が、パス確率しきい値以下になるまで行う。つまり、上記パス判定手段10が、誤り率が、パス確率しきい値を下回るまで、試験手順制御手段5が試験を繰り返す。
【0050】
(9)その内、図4のT1からT3までの試験(セルを遷移するまでの時間が8秒以内とされている試験)の成功、失敗の度数と遷移時間の分布、及び誤り率がパス確率しきい値を下回る最短残り試験回数(又は時間)を表示したのが図2である。当然ながら、図2におけるデータは8秒以内で判定している例であるが、図4のT6(10.56秒)を基準に判定したデータであってもよい、また、図4の各項目毎でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態における機能構成を示す図である。
【図2】図1の実施形態における表示例を示す図である。
【図3】誤り率、パス確率しきい値及び残り試験回数を説明するための図である。
【図4】移動体通信端末1の試験における、接続状態及び受信状態の遷移の例を説明する図である。
【図5】セル(サービスエリア)及び擬似基地局を説明する図である。
【図6】従来技術を説明するための図である。
【符号の説明】
【0052】
1 移動体通信端末、 2 結合手段、 3 送受信手段、 4 受信測定手段、 5 試験手順制御手段、 5a 時間設定手段、 6 判定手段、
7 表示手段、 8 表示制御手段、 8a データ表示制御手段、 8b
予定マーカ生成手段、 8c 受信マーカ生成手段、 8d 座標生成手段、 8e グラフ生成手段、 9 統計処理手段、 9a 回数推定部、
9b 分布算出部、 10 パス判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル方式の移動体通信端末の所定動作について複数回、試験し、かつ試験回数毎にその試験の良否判定を行う試験手段(100)と、次の式で表される誤り率及びパス確率しきい値を求め、誤り率がパス確率しきい値以下になるか判定するパス判定手段(10)とを備え、
誤り率=Ner/K
パス確率しきい値=2×Ner×M/qchisq(1−D,2×Ner)
K:試験回数がK回
Ner:K回の試験回数のうち前記試験手段で否と判定された回数
D:誤判定危険率
M:係数
qchisq:カイ二乗分布。qchisq(1−D,2×Ner)は、DとNer をパラメータとするカイ二乗分布を表す。
前記誤り率が前記パス確率しきい値以下になるまで同じ前記試験を繰り返す移動体通信端末試験装置において、
表示手段(7)と、
前記誤り率と前記パス確率しきい値を基に、前記誤り率が前記パス確率しきい値以下になるまでの推定の残り試験回数又は前記残り試験回数に応じた推定の残り試験時間を求める統計処理手段(9)と、
少なくとも前記残り試験回数又は前記残り試験時間を前記表示手段に表示させる表示制御手段(8)とを備えたことを特徴とする移動体通信端末試験装置。
【請求項2】
前記試験手段は、
セル方式の移動体通信端末を所定回数、試験するための手順を保有し、それに沿って制御情報を出力する試験手順制御手段(5)と、
複数のセル相当の信号を発生し、それらの強度を前記制御情報にしたがって予定された時間経過に応じて変化させて送る送受信手段(3)と、
前記移動体通信端末が前記強度の変化に応じて複数のセル相当の信号を切り換えて受信するときの時間を測定する受信測定手段(4)と
前記受信測定手段から測定結果を受けて、前記移動体通信端末の前記切り換えが所定時間内に成功したときは良と判定し、それ以外のときは否と判定する判定手段(6)と、を備え、
前記統計処理手段は、さらに、前記測定結果と判定結果を受けて、測定された時間対試験回数の分布を算出し、
前記表示制御手段は、前記統計処理手段が求めた前記残り試験回数又は残り試験時間の少なくともいずれかと、前記測定された時間対試験回数の分布の双方を前記表示手段に同時に表示することを特徴とする請求項1に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項3】
前記統計処理手段は、前記残り試験回数として、前記誤り率が前記パス確率しきい値以下になるまでの最短残り試験回数=[Ner/パス確率しきい値]―Kを求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項4】
前記統計処理手段は、前記ある回の試験手段の判定結果が否である場合は、前記誤り率とパス確率しきい値とを基に最短残り試験回数を求め、前記ある回の試験手段の判定結果が良である場合は、[前回求めた最短残り試験回数−1]を前記ある回の最短残り試験回数とすることを特徴とする請求項3に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項5】
前記統計処理手段は、縦軸が誤り率、前記試験手段で否と判定された回数を横軸とする座標上で、当該誤り率=Ner/Kの直線とパス確率しきい値の特性との交点を求め、前記残り試験回数として、前記交点を基にその交点に達するまでの誤率同一推移試験回数を求めることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の移動体通信端末試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−33018(P2006−33018A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204246(P2004−204246)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】