移植機
【課題】植付行程終了後に走行機体を自動旋回させるにあたり、直進走行中のスリップなどに起因する距離計測誤差を排除し、旋回開始タイミングのばらつきを可及的に小さくする。
【解決手段】ステアリングホイール24の操作に応じて走行機体1を操向するステアリング機構と、走行機体1に昇降自在に連結される植付部3と、該植付部3に対する動力供給を入切する植付クラッチとを備える乗用田植機において、ステアリング機構をアクチュエータの駆動力で作動させるステアリング作動機構27と、該ステアリング作動機構27を制御する制御装置33とを備えると共に、該制御装置33は、植付部3の上昇操作に基づいて植付けの終了を判断すると共に、植付終了判断後の経過時間に基づいて旋回開始タイミングを判断し、該旋回開始タイミング判断に応じてステアリング機構を自動的に旋回制御する。
【解決手段】ステアリングホイール24の操作に応じて走行機体1を操向するステアリング機構と、走行機体1に昇降自在に連結される植付部3と、該植付部3に対する動力供給を入切する植付クラッチとを備える乗用田植機において、ステアリング機構をアクチュエータの駆動力で作動させるステアリング作動機構27と、該ステアリング作動機構27を制御する制御装置33とを備えると共に、該制御装置33は、植付部3の上昇操作に基づいて植付けの終了を判断すると共に、植付終了判断後の経過時間に基づいて旋回開始タイミングを判断し、該旋回開始タイミング判断に応じてステアリング機構を自動的に旋回制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機などの移植機に関し、特に、植付行程終了毎の旋回操作を軽減できる移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用田植機などの移植機では、圃場を往復走行しながら植付作業を行う場合、植付行程の終端で植付クラッチの切り操作や植付部の上昇操作を行った後、ステアリングホイールの操作により機体を旋回させ、旋回が終了したら、次行程の始端で植付部の下降操作や植付クラッチの入り操作が行われるが、これらの一連操作は、オペレータの手動操作に基づいて行われているため、オペレータの操作負担が大きいだけでなく、操作タイミングのずれによって植付終了位置などにバラツキが生じやすいという問題があった。
【0003】
そこで、作業を行う圃場内で予め直進走行した条件に従って、その走行の軌跡と同じ方向で同じ距離だけ走行させる直進制御と、作業を行う圃場内で予め旋回した条件に従って、その旋回の軌跡と同じ方向で同じ位相だけ旋回させる旋回制御とを行う移植機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−337031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の移植機によれば、手動走行時の走行軌跡や走行条件を記憶する学習機能(ティーチング機構)を備え、この学習した走行軌跡や走行条件に基づいて手動走行時の走行状態を再現することが可能であるが、学習した直進走行距離に到達したか否かの判断に基づいて旋回を開始するため、直進走行中のスリップなどに起因する距離計測誤差により、旋回開始タイミングに大きなばらつきが生じるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、ステアリングホイールの操作に応じて走行機体を操向するステアリング機構と、走行機体に昇降自在に連結される植付部と、該植付部に対する動力供給を入切する植付クラッチとを備える移植機において、前記ステアリング機構をアクチュエータの駆動力で作動させるステアリング作動手段と、該ステアリング作動手段を制御する制御装置とを備えると共に、該制御装置に、植付クラッチの切り操作及び/又は植付部の上昇操作に基づいて植付けの終了を判断する植付終了判断手段と、該植付終了判断手段による植付終了判断後の経過時間及び/又は走行距離に基づいて旋回開始タイミングを判断する旋回開始タイミング判断手段と、該旋回開始タイミング判断手段による旋回開始タイミング判断に応じてステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回操作手段とを設けたことを特徴とする。このようにすると、植付行程終了時における植付クラッチの切り操作や植付部の上昇操作を基準として旋回を開始するので、直進走行中のスリップなどに起因する距離計測誤差を排除し、旋回開始タイミングのばらつきを可及的に小さくすることができる。また、オペレータは、ステアリング操作に気を取られることなく、植付行程終了時における植付クラッチの切り操作や植付部の上昇操作に集中できるので、各行程の植付終了位置を精度良く揃えることができる。
また、前記ステアリング作動手段は、自動旋回操作手段によるステアリング機構の作動よりも、ステアリングホイールの手動操作によるステアリング機構の作動を優先させる手動優先手段を備えることを特徴とする。このようにすると、必要に応じて旋回開始タイミングを変更したり、自動旋回操作を解除することができる。
また、前記制御装置は、手動旋回操作時における植付終了後の旋回開始タイミングを学習する旋回開始タイミング学習手段を備えることを特徴とする。このようにすると、オペレータの好みに応じた旋回開始タイミングを学習させ、それを再現することができる。
また、前記制御装置は、植付終了後にステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回モードと、植付終了後にステアリング機構を手動で旋回操作する手動旋回モードとの切換えを行う旋回モード切換手段を備えることを特徴とする。このようにすると、作業条件やオペレータの好みに応じて、いずれかの旋回モードを選択することができる。
また、前記制御装置は、次行程に走行基準線を引くマーカの振り出し方向に基づいて旋回方向を判断する旋回方向判断手段を備えることを特徴とする。このようにすると、マーカの振り出し方向を利用し、次回の旋回方向を正確かつ容易に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は乗用田植機の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付部3が連結されている。植付部3は、マット苗を載置する苗載台4、苗載台4から苗を掻取って田面に植付ける植付機構5、田面を滑降するフロート6などを備えて構成され、走行機体1から伝動される植付動力によって植付作業を行う。
【0007】
走行機体1の前部には、図示しないエンジン及びトランスミッションが搭載されている。エンジンが出力する動力は、トランスミッションで変速され、植付部3、前輪7及び後輪8に伝動される。トランスミッションには、植付クラッチ(図示せず)が内装されており、該植付クラッチの入切に基づいて植付部3に対する植付動力の伝動が入切される。
【0008】
走行機体1には、植付クラッチ及び植付部3の油圧昇降機構に連繋される植付作業機操作カム(図示せず)が設けられている。この植付作業機操作カムは、「上げ」、「固定」、「下げ」、「植付」の各位置に操作され、「上げ」位置では、植付部3を上昇させ(植付クラッチは切り)、「固定」位置では、植付部3を任意の高さで固定し(植付クラッチは切り)、「下げ」位置では、植付部3を下降させ(植付クラッチは切り)、「植付」では、植付部3を下降させて、植付クラッチを入にする。
【0009】
図1及び図2に示すように、植付部3の左右両側には、次行程及び/又は前行程に走行基準線を引くためのマーカ9L、9Rが設けられている。各マーカ9L、9Rは、左右側方に振り出される線引姿勢と、植付部3の側部に沿って起立する格納姿勢とに回動変姿自在に構成されると共に、スプリング9aによって振り出し方向に付勢されている。
【0010】
一方、走行機体1には、図3及び図4に示すように、左右一対のマーカ動作アーム10L、10Rが設けられており、各マーカ動作アーム10L、10Rが、それぞれワイヤ11L、11Rを介して、マーカ9L、9Rの基端部に連結されている。そして、マーカ動作アーム10L、10Rが前方へ回動すると、ワイヤ11L、11Rが引かれてマーカ9L、9Rが格納動作し、一方、マーカ動作アーム10L、10Rが後方へ回動すると、ワイヤ11L、11Rが緩み、マーカ9L、9Rの振り出し動作が許容される。
【0011】
前記マーカ動作アーム10L、10Rを前後回動自在に支持するプレート12には、更に、ローラ13を備えるローラアーム14が前後回動自在に設けられている。このローラアーム14は、ロッド15を介して昇降リンク機構2の基端部に連結されており、昇降リンク機構2の昇降動作に応じて、前後回動するようになっている。そして、ローラアーム14は、昇降リンク機構2の上昇に伴って前方へ回動すると、ローラ13を介して左右のマーカ動作アーム10L、10Rを前方へ押す一方、昇降リンク機構2の下降に伴って後方へ回動すると、左右のマーカ動作アーム10L、10Rの後方への回動を許容する。これにより、植付部3の昇降に応じて、マーカ9L、9Rの格納動作及び振り出し動作が自動的に行われることになる。
【0012】
前記マーカ動作アーム10L、10Rの前側には、左右一対のストッパアーム16L、16Rが設けられている。各ストッパアーム16L、16Rは、支軸17を支点として前後回動自在に構成されると共に、スプリング18L、18Rによって後方に付勢されている。そして、各ストッパアーム16L、16Rは、マーカ動作アーム10L、10Rが前方へ回動したとき、マーカ動作アーム10L、10Rのピン10aに押されて前方へ退避回動した後、後方へ復帰回動してマーカ動作アーム10L、10Rに係合する。この状態では、マーカ動作アーム10L、10Rの回動がロックされるため、植付部3を下降させても、マーカ9L、9Rの振り出しが規制される。
【0013】
更に、ストッパアーム16L、16Rの前方には、マーカ切り換えアーム19が設けられている。マーカ切り換えアーム19は、左右方向を向き、中央部の支軸20を中心に前後揺動するシーソー状の部材であり、その両端部には、ストッパアーム16L、16Rに連結されるロッド21L、21Rが融通連結されている。つまり、マーカ切り換えアーム19が中立姿勢のときは、ストッパアーム16L、16Rの前後回動が許容されるため、ストッパアーム16L、16Rによってマーカ9L、9Rの振り出しが規制される一方、マーカ切り換えアーム19が左右いずれかに傾くと、一方のストッパアーム16L、16Rがロッド21L、21Rを介して前方に引かれ、一方のマーカ9L、9Rの振り出しが許容される。これにより、マーカ切り換えアーム19の動作によって、左右のマーカ9L、9Rを選択的に振り出したり、両マーカ9L、9Rの振り出しを規制することが可能になる。
【0014】
マーカ切り換えアーム19には、マーカ切り換えモータ22が連繋されており、その駆動に基づいてマーカ切り換えアーム19の姿勢が制御される。マーカ切り換えモータ22は、マーカ切り換えアーム19を、左右振り出し規制位置と、左マーカ振り出し位置と、右マーカ振り出し位置とに選択的に動作させるが、植付部3の下降に伴って、一方のマーカ9L、9Rが振り出された後、マーカ切り換えアーム19を他方の振り出し位置へ動作させることにより、左右のマーカ9L、9Rを振り出す両落ち状態を現出させることが可能となっている。また、マーカ切り換えアーム19には、その姿勢を検出するマーカ切り換え検出スイッチ23が連繋されており、該マーカ切り換え検出スイッチ23の検出信号に基づいて、左右マーカ9L、9Rの振り出し方向(左右振り出し規制状態(OFF)、左マーカ振り出し状態、右マーカ振り出し状態、両落ち状態)を判断することが可能になる。
【0015】
また、走行機体1には、ステアリングホイール24の操作に応じて走行機体1を操向するステアリング機構(図示せず)が設けられている。図5及び図6に示すように、ステアリングホイール24とステアリング機構の間に介在するステアリング軸25には、自動旋回クラッチ機構26を介してステアリング作動機構(ステアリング作動手段)27が連結されている。ステアリング作動機構27は、ステアリングホイール24の手動操作に代えて、ステアリング機構をアクチュエータの駆動力で作動させるものであり、本実施形態では、減速機構内蔵モータからなる旋回モータ28と、その駆動力をステアリング軸25に伝動するギヤ伝動機構29とを用いて構成されている。
【0016】
また、本実施形態のステアリング作動機構27は、旋回モータ28によるステアリング機構の作動よりも、ステアリングホイール24の手動操作によるステアリング機構の作動を優先させるトルクリミッタ(手動優先手段)30を備えている。このトルクリミッタ30は、ステアリング作動機構27のギヤ伝動機構29に介在しており、ステアリングホイール24が手動操作されると、自動旋回クラッチ機構26が入り状態であっても、ステアリングホイール24の手動操作に応じて走行機体1が操向される。なお、本実施形態の自動旋回クラッチ機構26には、電動シリンダからなる自動旋回クラッチモータ31がシフタ32を介して連繋されており、この自動旋回クラッチモータ31の駆動に応じて自動旋回クラッチ機構26が入切作動される。
【0017】
さらに、走行機体1には、マイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM、I/Oなどを含む)を用いて構成される制御装置33が設けられている。図7に示すように、制御装置33の入力側には、前述したマーカ切り換え検出スイッチ23の他に、前述した植付作業機操作カムを操作する植付作業機操作レバー34と、植付作業機操作カムの位置を検出する植付作業機操作ポテンショ35と、後述する走行モードを選択する走行モード選択スイッチ36と、ステアリング軸25の回転を検出するステアリングセンサ37と、走行機体1の走行距離を検出する走行距離センサ38とが接続されている。ちなみに、植付作業機操作レバー34や走行モード選択スイッチ36は、図8及び図9に示すように、ステアリングホイール24の近傍に配置されている。
【0018】
また、制御装置33の出力側には、前述した旋回モータ28、自動旋回クラッチモータ31及びマーカ切り換えモータ22の他に、植付作業機操作カムを作動させる植付作業機操作カムモータ39が接続されている。即ち、制御装置33は、植付作業機操作レバー34の操作に応じた植付作業機操作カムモータ39の駆動により、植付部3の昇降や植付クラッチの入切を行う植付作業機制御、マーカ切り換えモータ22の駆動により、マーカ9L、9Rの振り出しを行うマーカ制御、旋回モータ28や自動旋回クラッチモータ31の駆動により、作業行程の終端で走行機体1を自動的に旋回させる旋回始め制御などを行う。
【0019】
図10に示すように、旋回始め制御は、植付クラッチの切り操作及び/又は植付部3の上昇操作に基づいて植付けの終了を判断すると共に、植付終了判断後の経過時間T及び/又は走行距離N1に基づいて旋回開始タイミングを判断し、該旋回開始タイミング判断に応じてステアリング機構を自動的に旋回操作するように制御手順が定められる。このようにすると、植付行程終了時における植付クラッチの切り操作や植付部3の上昇操作を基準として自動旋回を開始できるので、直進走行中のスリップなどに起因する距離計測誤差を排除し、旋回開始タイミングのばらつきを可及的に小さくすることができる。また、オペレータは、ステアリング操作に気を取られることなく、植付行程終了時における植付クラッチの切り操作や植付部3の上昇操作に集中できるので、各行程の植付終了位置を精度良く揃えることができる。
【0020】
また、旋回始め制御は、手動旋回操作時における植付終了後の旋回開始タイミングを学習することが好ましい。このようにすると、オペレータの好みに応じた旋回開始タイミングを学習させ、それを再現することが可能になる。
また、選択可能な走行モードとしては、植付終了後にステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回モードと、植付終了後にステアリング機構を手動で旋回操作する手動旋回モードとを備えることが好ましい。このようにすると、作業条件やオペレータの好みに応じて、走行モードを選択することが可能になる。
【0021】
次に、上記のような旋回始め制御を実現する具体的な制御手順について、図11を参照して説明する。図11に示す旋回始め制御(第一実施形態)では、まず、植付作業機操作レバー34による植付部上昇操作を判断する(S101:植付終了判断手段)。ここで操作ありと判断した場合は、走行モード選択スイッチ36の操作位置を判断する(S102:旋回モード切換手段)。本実施形態の走行モードとしては、植付終了後にステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回モードと、植付終了後にステアリング機構を手動で旋回操作する手動旋回モードと、手動旋回操作時における植付終了後の旋回開始タイミングを学習するティーチングモードとがあり、何れかのモードが選択される。ここで、ティーチングモードが選択されている場合は、ステアリングセンサ37による手動旋回操作情報の取得が行われる(S103:旋回開始タイミング学習手段)。ここで取得される手動旋回操作情報としては、植付終了後のステアリング操作タイミング(経過時間T)、旋回方向、ステアリング最大操作量などが含まれる。そして、手動旋回操作情報を取得した後は、取得情報に基づいて、旋回タイマカウント値Tやステアリング切れ角目標値を設定すると共に、方向フラグのセットを行う(S104)。
【0022】
一方、自動旋回モードが選択されている場合は、旋回タイマのカウントを開始すると共に(S105)、自動旋回クラッチ機構26を入りとし(S106)、
旋回タイマTの経過を判断する(S107:旋回開始タイミング判断手段)。旋回タイマT時間が経過したら、方向フラグに基づいて旋回方向を判断すると共に(S108)、旋回方向が右である場合は、旋回モータ28を右旋回方向に駆動させ(S109:自動旋回操作手段)、旋回方向が左である場合は、旋回モータ28を左旋回方向に駆動させる(S110:自動旋回操作手段)。その後は、所定のステアリング切れ角に達したか否かを判断し(S111)、該判断結果がYESになった時点で旋回モータ28の駆動を停止すると共に(S112)、自動旋回クラッチ機構26を切り(S113)、さらに、方向フラグを反転させる(S114)。
【0023】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、ステアリングホイール24の操作に応じて走行機体1を操向するステアリング機構と、走行機体1に昇降自在に連結される植付部3と、該植付部3に対する動力供給を入切する植付クラッチとを備える乗用田植機において、ステアリング機構をアクチュエータの駆動力で作動させるステアリング作動機構27と、該ステアリング作動機構27を制御する制御装置33とを備えると共に、該制御装置33は、植付部3の上昇操作に基づいて植付けの終了を判断すると共に、植付終了判断後の経過時間に基づいて旋回開始タイミングを判断し、該旋回開始タイミング判断に応じてステアリング機構を自動的に旋回制御するように構成されているので、植付行程終了時における植付部3の上昇操作を基準として自動旋回を開始することができ、その結果、直進走行中のスリップなどに起因する距離計測誤差を排除し、旋回開始タイミングのばらつきを可及的に小さくすることができる。また、オペレータは、ステアリング操作に気を取られることなく、植付行程終了時における植付クラッチの切り操作や植付部の上昇操作に集中できるので、各行程の植付終了位置を精度良く揃えることができる。
【0024】
また、ステアリング作動機構27は、自動旋回制御によるステアリング機構の作動よりも、ステアリングホイール24の手動操作によるステアリング機構の作動を優先させるトルクリミッタ30を備えるので、必要に応じて旋回開始タイミングを変更したり、自動旋回操作を解除することができる。
【0025】
また、制御装置33は、手動旋回操作時における植付終了後の旋回開始タイミングを学習する旋回開始タイミング学習機能を備えるのえ、オペレータの好みに応じた旋回開始タイミングを学習させ、それを再現することができる。
【0026】
また、制御装置33は、植付終了後にステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回モードと、植付終了後にステアリング機構を手動で旋回操作する手動旋回モードとを備え、走行モード選択スイッチ36の操作に応じてモード切換を行うので、作業条件やオペレータの好みに応じて、任意の旋回モードを選択することができる。
【0027】
次に、本発明の第二実施形態に係る旋回始め制御について、図12を参照して説明する。この図に示す第二実施形態の旋回始め制御は、次行程に走行基準線を引くマーカ9L、9Rの振り出し方向に基づいて旋回方向を判断し、その方向に走行機体1を自動旋回させる点が前記実施形態と相違している。このようにすると、マーカ9L、9Rの振り出し方向を利用し、次回の旋回方向を正確かつ容易に判断することができる。
【0028】
具体的に説明すると、第二実施形態の旋回始め制御では、まず、植付作業機操作レバー34による植付クラッチ切り操作を判断する(S201)。ここで操作ありと判断した場合は、マーカ切り換え検出スイッチ23の検出信号に基づいて、左右マーカ9L、9Rの振り出し方向を判断すると共に(S202)、その判断結果に応じて方向フラグをセットする(S203〜S205)。例えば、マーカ振り出し方向が右である場合は、方向フラグに右旋回をセットし(S204)、マーカ振り出し方向が左である場合は、方向フラグに左旋回をセットし(S205)、また、規制なしの場合は、方向フラグに規制なしをセットする(S203)。
【0029】
また、旋回始め制御では、植付作業機操作レバー34による植付部上昇操作を判断する(S206:植付終了判断手段)。ここで操作ありと判断した場合は、走行モード選択スイッチ36の操作位置を判断する(S207:旋回モード切換手段)。ここで、ティーチングモードが選択されている場合は、ステアリングセンサ37による手動旋回操作情報の取得が行われる(S208:旋回開始タイミング学習手段)。ここで取得される手動旋回操作情報としては、植付終了後のステアリング操作タイミング(経過時間T)、旋回方向、ステアリング最大操作量などが含まれる。そして、手動旋回操作情報を取得した後は、取得情報に基づいて、旋回タイマカウント値Tやステアリング切れ角目標値を設定すると共に、方向フラグのセットを行う(S209)。
【0030】
一方、自動旋回モードが選択されている場合は、旋回タイマのカウントを開始すると共に(S210)、自動旋回クラッチ機構26を入りとし(S211)、
旋回タイマTの経過を判断する(S212:旋回開始タイミング判断手段)。旋回タイマT時間が経過したら、方向フラグに基づいて旋回方向を判断すると共に(S213:旋回方向判断手段)、旋回方向が右である場合は、旋回モータ28を右旋回方向に駆動させ(S214:自動旋回操作手段)、旋回方向が左である場合は、旋回モータ28を左旋回方向に駆動させる(S215:自動旋回操作手段)。その後は、所定のステアリング切れ角に達したか否かを判断し(S216)、該判断結果がYESになった時点で旋回モータ28の駆動を停止すると共に(S217)、自動旋回クラッチ機構26を切りとする(S218)。
【0031】
次に、本発明の第三実施形態に係る旋回始め制御について、図13を参照して説明する。この図に示す第三実施形態の旋回始め制御は、植付終了判断後の走行距離N1に基づいて旋回開始タイミングを判断する点が前記実施形態と相違している。具体的に説明すると、第三実施形態の旋回始め制御では、まず、植付作業機操作レバー34による植付部上昇操作を判断する(S301:植付終了判断手段)。ここで操作ありと判断した場合は、走行モード選択スイッチ36の操作位置を判断する(S302:旋回モード切換手段)。ここで、ティーチングモードが選択されている場合は、ステアリングセンサ37及び走行距離センサ38による手動旋回操作情報の取得が行われる(S303:旋回開始タイミング学習手段)。ここで取得される手動旋回操作情報としては、植付終了後のステアリング操作タイミング(走行距離N1)、ステアリング戻しタイミング(走行距離N2)、旋回方向、ステアリング最大操作量などが含まれる。そして、手動旋回操作情報を取得した後は、取得情報に基づいて、走行距離センサ目標値N1、N2やステアリング切れ角目標値を設定すると共に、方向フラグのセットを行う(S304)。
【0032】
一方、自動旋回モードが選択されている場合は、走行距離センサ38による走行距離の検出を開始すると共に(S305)、自動旋回クラッチ機構26を入りとし(S306)、走行距離を判断する(S307:旋回開始タイミング判断手段)。走行距離が目標値N1に達したら、方向フラグに基づいて旋回方向を判断すると共に(S308)、旋回方向が右である場合は、旋回モータ28を右旋回方向に駆動させ(S309:自動旋回操作手段)、旋回方向が左である場合は、旋回モータ28を左旋回方向に駆動させる(S310:自動旋回操作手段)。その後は、所定のステアリング切れ角に達したか否かを判断し(S311)、該判断結果がYESになった時点で旋回モータ28の駆動を停止する(S312)。その後、走行距離を再度判断し(S313)、走行距離が目標値N2に達したら、自動旋回クラッチ機構26を切ると共に(S314)、方向フラグを反転させる(S315)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】乗用田植機の側面図である。
【図2】マーカを示す平面図である。
【図3】マーカ切換部を示す側面図である。
【図4】マーカ切換部を示す平面図である。
【図5】ステアリング作動機構を示す側面図である。
【図6】ステアリング作動機構を示す断面図である。
【図7】制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図8】ステアリングホイールの近傍を示す正面図である。
【図9】ステアリングホイールの近傍を示す斜視図である。
【図10】旋回始め制御の作用説明図である。
【図11】第一実施形態に係る旋回始め制御のフローチャートである。
【図12】第二実施形態に係る旋回始め制御のフローチャートである。
【図13】第三実施形態に係る旋回始め制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1 走行機体
3 植付部
9 マーカ
24 ステアリングホイール
26 自動旋回クラッチ機構
27 ステアリング作動機構
28 旋回モータ
30 トルクリミッタ
31 自動旋回クラッチモータ
33 制御装置
34 植付作業機操作レバー
36 走行モード選択スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機などの移植機に関し、特に、植付行程終了毎の旋回操作を軽減できる移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用田植機などの移植機では、圃場を往復走行しながら植付作業を行う場合、植付行程の終端で植付クラッチの切り操作や植付部の上昇操作を行った後、ステアリングホイールの操作により機体を旋回させ、旋回が終了したら、次行程の始端で植付部の下降操作や植付クラッチの入り操作が行われるが、これらの一連操作は、オペレータの手動操作に基づいて行われているため、オペレータの操作負担が大きいだけでなく、操作タイミングのずれによって植付終了位置などにバラツキが生じやすいという問題があった。
【0003】
そこで、作業を行う圃場内で予め直進走行した条件に従って、その走行の軌跡と同じ方向で同じ距離だけ走行させる直進制御と、作業を行う圃場内で予め旋回した条件に従って、その旋回の軌跡と同じ方向で同じ位相だけ旋回させる旋回制御とを行う移植機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−337031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の移植機によれば、手動走行時の走行軌跡や走行条件を記憶する学習機能(ティーチング機構)を備え、この学習した走行軌跡や走行条件に基づいて手動走行時の走行状態を再現することが可能であるが、学習した直進走行距離に到達したか否かの判断に基づいて旋回を開始するため、直進走行中のスリップなどに起因する距離計測誤差により、旋回開始タイミングに大きなばらつきが生じるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、ステアリングホイールの操作に応じて走行機体を操向するステアリング機構と、走行機体に昇降自在に連結される植付部と、該植付部に対する動力供給を入切する植付クラッチとを備える移植機において、前記ステアリング機構をアクチュエータの駆動力で作動させるステアリング作動手段と、該ステアリング作動手段を制御する制御装置とを備えると共に、該制御装置に、植付クラッチの切り操作及び/又は植付部の上昇操作に基づいて植付けの終了を判断する植付終了判断手段と、該植付終了判断手段による植付終了判断後の経過時間及び/又は走行距離に基づいて旋回開始タイミングを判断する旋回開始タイミング判断手段と、該旋回開始タイミング判断手段による旋回開始タイミング判断に応じてステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回操作手段とを設けたことを特徴とする。このようにすると、植付行程終了時における植付クラッチの切り操作や植付部の上昇操作を基準として旋回を開始するので、直進走行中のスリップなどに起因する距離計測誤差を排除し、旋回開始タイミングのばらつきを可及的に小さくすることができる。また、オペレータは、ステアリング操作に気を取られることなく、植付行程終了時における植付クラッチの切り操作や植付部の上昇操作に集中できるので、各行程の植付終了位置を精度良く揃えることができる。
また、前記ステアリング作動手段は、自動旋回操作手段によるステアリング機構の作動よりも、ステアリングホイールの手動操作によるステアリング機構の作動を優先させる手動優先手段を備えることを特徴とする。このようにすると、必要に応じて旋回開始タイミングを変更したり、自動旋回操作を解除することができる。
また、前記制御装置は、手動旋回操作時における植付終了後の旋回開始タイミングを学習する旋回開始タイミング学習手段を備えることを特徴とする。このようにすると、オペレータの好みに応じた旋回開始タイミングを学習させ、それを再現することができる。
また、前記制御装置は、植付終了後にステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回モードと、植付終了後にステアリング機構を手動で旋回操作する手動旋回モードとの切換えを行う旋回モード切換手段を備えることを特徴とする。このようにすると、作業条件やオペレータの好みに応じて、いずれかの旋回モードを選択することができる。
また、前記制御装置は、次行程に走行基準線を引くマーカの振り出し方向に基づいて旋回方向を判断する旋回方向判断手段を備えることを特徴とする。このようにすると、マーカの振り出し方向を利用し、次回の旋回方向を正確かつ容易に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は乗用田植機の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付部3が連結されている。植付部3は、マット苗を載置する苗載台4、苗載台4から苗を掻取って田面に植付ける植付機構5、田面を滑降するフロート6などを備えて構成され、走行機体1から伝動される植付動力によって植付作業を行う。
【0007】
走行機体1の前部には、図示しないエンジン及びトランスミッションが搭載されている。エンジンが出力する動力は、トランスミッションで変速され、植付部3、前輪7及び後輪8に伝動される。トランスミッションには、植付クラッチ(図示せず)が内装されており、該植付クラッチの入切に基づいて植付部3に対する植付動力の伝動が入切される。
【0008】
走行機体1には、植付クラッチ及び植付部3の油圧昇降機構に連繋される植付作業機操作カム(図示せず)が設けられている。この植付作業機操作カムは、「上げ」、「固定」、「下げ」、「植付」の各位置に操作され、「上げ」位置では、植付部3を上昇させ(植付クラッチは切り)、「固定」位置では、植付部3を任意の高さで固定し(植付クラッチは切り)、「下げ」位置では、植付部3を下降させ(植付クラッチは切り)、「植付」では、植付部3を下降させて、植付クラッチを入にする。
【0009】
図1及び図2に示すように、植付部3の左右両側には、次行程及び/又は前行程に走行基準線を引くためのマーカ9L、9Rが設けられている。各マーカ9L、9Rは、左右側方に振り出される線引姿勢と、植付部3の側部に沿って起立する格納姿勢とに回動変姿自在に構成されると共に、スプリング9aによって振り出し方向に付勢されている。
【0010】
一方、走行機体1には、図3及び図4に示すように、左右一対のマーカ動作アーム10L、10Rが設けられており、各マーカ動作アーム10L、10Rが、それぞれワイヤ11L、11Rを介して、マーカ9L、9Rの基端部に連結されている。そして、マーカ動作アーム10L、10Rが前方へ回動すると、ワイヤ11L、11Rが引かれてマーカ9L、9Rが格納動作し、一方、マーカ動作アーム10L、10Rが後方へ回動すると、ワイヤ11L、11Rが緩み、マーカ9L、9Rの振り出し動作が許容される。
【0011】
前記マーカ動作アーム10L、10Rを前後回動自在に支持するプレート12には、更に、ローラ13を備えるローラアーム14が前後回動自在に設けられている。このローラアーム14は、ロッド15を介して昇降リンク機構2の基端部に連結されており、昇降リンク機構2の昇降動作に応じて、前後回動するようになっている。そして、ローラアーム14は、昇降リンク機構2の上昇に伴って前方へ回動すると、ローラ13を介して左右のマーカ動作アーム10L、10Rを前方へ押す一方、昇降リンク機構2の下降に伴って後方へ回動すると、左右のマーカ動作アーム10L、10Rの後方への回動を許容する。これにより、植付部3の昇降に応じて、マーカ9L、9Rの格納動作及び振り出し動作が自動的に行われることになる。
【0012】
前記マーカ動作アーム10L、10Rの前側には、左右一対のストッパアーム16L、16Rが設けられている。各ストッパアーム16L、16Rは、支軸17を支点として前後回動自在に構成されると共に、スプリング18L、18Rによって後方に付勢されている。そして、各ストッパアーム16L、16Rは、マーカ動作アーム10L、10Rが前方へ回動したとき、マーカ動作アーム10L、10Rのピン10aに押されて前方へ退避回動した後、後方へ復帰回動してマーカ動作アーム10L、10Rに係合する。この状態では、マーカ動作アーム10L、10Rの回動がロックされるため、植付部3を下降させても、マーカ9L、9Rの振り出しが規制される。
【0013】
更に、ストッパアーム16L、16Rの前方には、マーカ切り換えアーム19が設けられている。マーカ切り換えアーム19は、左右方向を向き、中央部の支軸20を中心に前後揺動するシーソー状の部材であり、その両端部には、ストッパアーム16L、16Rに連結されるロッド21L、21Rが融通連結されている。つまり、マーカ切り換えアーム19が中立姿勢のときは、ストッパアーム16L、16Rの前後回動が許容されるため、ストッパアーム16L、16Rによってマーカ9L、9Rの振り出しが規制される一方、マーカ切り換えアーム19が左右いずれかに傾くと、一方のストッパアーム16L、16Rがロッド21L、21Rを介して前方に引かれ、一方のマーカ9L、9Rの振り出しが許容される。これにより、マーカ切り換えアーム19の動作によって、左右のマーカ9L、9Rを選択的に振り出したり、両マーカ9L、9Rの振り出しを規制することが可能になる。
【0014】
マーカ切り換えアーム19には、マーカ切り換えモータ22が連繋されており、その駆動に基づいてマーカ切り換えアーム19の姿勢が制御される。マーカ切り換えモータ22は、マーカ切り換えアーム19を、左右振り出し規制位置と、左マーカ振り出し位置と、右マーカ振り出し位置とに選択的に動作させるが、植付部3の下降に伴って、一方のマーカ9L、9Rが振り出された後、マーカ切り換えアーム19を他方の振り出し位置へ動作させることにより、左右のマーカ9L、9Rを振り出す両落ち状態を現出させることが可能となっている。また、マーカ切り換えアーム19には、その姿勢を検出するマーカ切り換え検出スイッチ23が連繋されており、該マーカ切り換え検出スイッチ23の検出信号に基づいて、左右マーカ9L、9Rの振り出し方向(左右振り出し規制状態(OFF)、左マーカ振り出し状態、右マーカ振り出し状態、両落ち状態)を判断することが可能になる。
【0015】
また、走行機体1には、ステアリングホイール24の操作に応じて走行機体1を操向するステアリング機構(図示せず)が設けられている。図5及び図6に示すように、ステアリングホイール24とステアリング機構の間に介在するステアリング軸25には、自動旋回クラッチ機構26を介してステアリング作動機構(ステアリング作動手段)27が連結されている。ステアリング作動機構27は、ステアリングホイール24の手動操作に代えて、ステアリング機構をアクチュエータの駆動力で作動させるものであり、本実施形態では、減速機構内蔵モータからなる旋回モータ28と、その駆動力をステアリング軸25に伝動するギヤ伝動機構29とを用いて構成されている。
【0016】
また、本実施形態のステアリング作動機構27は、旋回モータ28によるステアリング機構の作動よりも、ステアリングホイール24の手動操作によるステアリング機構の作動を優先させるトルクリミッタ(手動優先手段)30を備えている。このトルクリミッタ30は、ステアリング作動機構27のギヤ伝動機構29に介在しており、ステアリングホイール24が手動操作されると、自動旋回クラッチ機構26が入り状態であっても、ステアリングホイール24の手動操作に応じて走行機体1が操向される。なお、本実施形態の自動旋回クラッチ機構26には、電動シリンダからなる自動旋回クラッチモータ31がシフタ32を介して連繋されており、この自動旋回クラッチモータ31の駆動に応じて自動旋回クラッチ機構26が入切作動される。
【0017】
さらに、走行機体1には、マイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM、I/Oなどを含む)を用いて構成される制御装置33が設けられている。図7に示すように、制御装置33の入力側には、前述したマーカ切り換え検出スイッチ23の他に、前述した植付作業機操作カムを操作する植付作業機操作レバー34と、植付作業機操作カムの位置を検出する植付作業機操作ポテンショ35と、後述する走行モードを選択する走行モード選択スイッチ36と、ステアリング軸25の回転を検出するステアリングセンサ37と、走行機体1の走行距離を検出する走行距離センサ38とが接続されている。ちなみに、植付作業機操作レバー34や走行モード選択スイッチ36は、図8及び図9に示すように、ステアリングホイール24の近傍に配置されている。
【0018】
また、制御装置33の出力側には、前述した旋回モータ28、自動旋回クラッチモータ31及びマーカ切り換えモータ22の他に、植付作業機操作カムを作動させる植付作業機操作カムモータ39が接続されている。即ち、制御装置33は、植付作業機操作レバー34の操作に応じた植付作業機操作カムモータ39の駆動により、植付部3の昇降や植付クラッチの入切を行う植付作業機制御、マーカ切り換えモータ22の駆動により、マーカ9L、9Rの振り出しを行うマーカ制御、旋回モータ28や自動旋回クラッチモータ31の駆動により、作業行程の終端で走行機体1を自動的に旋回させる旋回始め制御などを行う。
【0019】
図10に示すように、旋回始め制御は、植付クラッチの切り操作及び/又は植付部3の上昇操作に基づいて植付けの終了を判断すると共に、植付終了判断後の経過時間T及び/又は走行距離N1に基づいて旋回開始タイミングを判断し、該旋回開始タイミング判断に応じてステアリング機構を自動的に旋回操作するように制御手順が定められる。このようにすると、植付行程終了時における植付クラッチの切り操作や植付部3の上昇操作を基準として自動旋回を開始できるので、直進走行中のスリップなどに起因する距離計測誤差を排除し、旋回開始タイミングのばらつきを可及的に小さくすることができる。また、オペレータは、ステアリング操作に気を取られることなく、植付行程終了時における植付クラッチの切り操作や植付部3の上昇操作に集中できるので、各行程の植付終了位置を精度良く揃えることができる。
【0020】
また、旋回始め制御は、手動旋回操作時における植付終了後の旋回開始タイミングを学習することが好ましい。このようにすると、オペレータの好みに応じた旋回開始タイミングを学習させ、それを再現することが可能になる。
また、選択可能な走行モードとしては、植付終了後にステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回モードと、植付終了後にステアリング機構を手動で旋回操作する手動旋回モードとを備えることが好ましい。このようにすると、作業条件やオペレータの好みに応じて、走行モードを選択することが可能になる。
【0021】
次に、上記のような旋回始め制御を実現する具体的な制御手順について、図11を参照して説明する。図11に示す旋回始め制御(第一実施形態)では、まず、植付作業機操作レバー34による植付部上昇操作を判断する(S101:植付終了判断手段)。ここで操作ありと判断した場合は、走行モード選択スイッチ36の操作位置を判断する(S102:旋回モード切換手段)。本実施形態の走行モードとしては、植付終了後にステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回モードと、植付終了後にステアリング機構を手動で旋回操作する手動旋回モードと、手動旋回操作時における植付終了後の旋回開始タイミングを学習するティーチングモードとがあり、何れかのモードが選択される。ここで、ティーチングモードが選択されている場合は、ステアリングセンサ37による手動旋回操作情報の取得が行われる(S103:旋回開始タイミング学習手段)。ここで取得される手動旋回操作情報としては、植付終了後のステアリング操作タイミング(経過時間T)、旋回方向、ステアリング最大操作量などが含まれる。そして、手動旋回操作情報を取得した後は、取得情報に基づいて、旋回タイマカウント値Tやステアリング切れ角目標値を設定すると共に、方向フラグのセットを行う(S104)。
【0022】
一方、自動旋回モードが選択されている場合は、旋回タイマのカウントを開始すると共に(S105)、自動旋回クラッチ機構26を入りとし(S106)、
旋回タイマTの経過を判断する(S107:旋回開始タイミング判断手段)。旋回タイマT時間が経過したら、方向フラグに基づいて旋回方向を判断すると共に(S108)、旋回方向が右である場合は、旋回モータ28を右旋回方向に駆動させ(S109:自動旋回操作手段)、旋回方向が左である場合は、旋回モータ28を左旋回方向に駆動させる(S110:自動旋回操作手段)。その後は、所定のステアリング切れ角に達したか否かを判断し(S111)、該判断結果がYESになった時点で旋回モータ28の駆動を停止すると共に(S112)、自動旋回クラッチ機構26を切り(S113)、さらに、方向フラグを反転させる(S114)。
【0023】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、ステアリングホイール24の操作に応じて走行機体1を操向するステアリング機構と、走行機体1に昇降自在に連結される植付部3と、該植付部3に対する動力供給を入切する植付クラッチとを備える乗用田植機において、ステアリング機構をアクチュエータの駆動力で作動させるステアリング作動機構27と、該ステアリング作動機構27を制御する制御装置33とを備えると共に、該制御装置33は、植付部3の上昇操作に基づいて植付けの終了を判断すると共に、植付終了判断後の経過時間に基づいて旋回開始タイミングを判断し、該旋回開始タイミング判断に応じてステアリング機構を自動的に旋回制御するように構成されているので、植付行程終了時における植付部3の上昇操作を基準として自動旋回を開始することができ、その結果、直進走行中のスリップなどに起因する距離計測誤差を排除し、旋回開始タイミングのばらつきを可及的に小さくすることができる。また、オペレータは、ステアリング操作に気を取られることなく、植付行程終了時における植付クラッチの切り操作や植付部の上昇操作に集中できるので、各行程の植付終了位置を精度良く揃えることができる。
【0024】
また、ステアリング作動機構27は、自動旋回制御によるステアリング機構の作動よりも、ステアリングホイール24の手動操作によるステアリング機構の作動を優先させるトルクリミッタ30を備えるので、必要に応じて旋回開始タイミングを変更したり、自動旋回操作を解除することができる。
【0025】
また、制御装置33は、手動旋回操作時における植付終了後の旋回開始タイミングを学習する旋回開始タイミング学習機能を備えるのえ、オペレータの好みに応じた旋回開始タイミングを学習させ、それを再現することができる。
【0026】
また、制御装置33は、植付終了後にステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回モードと、植付終了後にステアリング機構を手動で旋回操作する手動旋回モードとを備え、走行モード選択スイッチ36の操作に応じてモード切換を行うので、作業条件やオペレータの好みに応じて、任意の旋回モードを選択することができる。
【0027】
次に、本発明の第二実施形態に係る旋回始め制御について、図12を参照して説明する。この図に示す第二実施形態の旋回始め制御は、次行程に走行基準線を引くマーカ9L、9Rの振り出し方向に基づいて旋回方向を判断し、その方向に走行機体1を自動旋回させる点が前記実施形態と相違している。このようにすると、マーカ9L、9Rの振り出し方向を利用し、次回の旋回方向を正確かつ容易に判断することができる。
【0028】
具体的に説明すると、第二実施形態の旋回始め制御では、まず、植付作業機操作レバー34による植付クラッチ切り操作を判断する(S201)。ここで操作ありと判断した場合は、マーカ切り換え検出スイッチ23の検出信号に基づいて、左右マーカ9L、9Rの振り出し方向を判断すると共に(S202)、その判断結果に応じて方向フラグをセットする(S203〜S205)。例えば、マーカ振り出し方向が右である場合は、方向フラグに右旋回をセットし(S204)、マーカ振り出し方向が左である場合は、方向フラグに左旋回をセットし(S205)、また、規制なしの場合は、方向フラグに規制なしをセットする(S203)。
【0029】
また、旋回始め制御では、植付作業機操作レバー34による植付部上昇操作を判断する(S206:植付終了判断手段)。ここで操作ありと判断した場合は、走行モード選択スイッチ36の操作位置を判断する(S207:旋回モード切換手段)。ここで、ティーチングモードが選択されている場合は、ステアリングセンサ37による手動旋回操作情報の取得が行われる(S208:旋回開始タイミング学習手段)。ここで取得される手動旋回操作情報としては、植付終了後のステアリング操作タイミング(経過時間T)、旋回方向、ステアリング最大操作量などが含まれる。そして、手動旋回操作情報を取得した後は、取得情報に基づいて、旋回タイマカウント値Tやステアリング切れ角目標値を設定すると共に、方向フラグのセットを行う(S209)。
【0030】
一方、自動旋回モードが選択されている場合は、旋回タイマのカウントを開始すると共に(S210)、自動旋回クラッチ機構26を入りとし(S211)、
旋回タイマTの経過を判断する(S212:旋回開始タイミング判断手段)。旋回タイマT時間が経過したら、方向フラグに基づいて旋回方向を判断すると共に(S213:旋回方向判断手段)、旋回方向が右である場合は、旋回モータ28を右旋回方向に駆動させ(S214:自動旋回操作手段)、旋回方向が左である場合は、旋回モータ28を左旋回方向に駆動させる(S215:自動旋回操作手段)。その後は、所定のステアリング切れ角に達したか否かを判断し(S216)、該判断結果がYESになった時点で旋回モータ28の駆動を停止すると共に(S217)、自動旋回クラッチ機構26を切りとする(S218)。
【0031】
次に、本発明の第三実施形態に係る旋回始め制御について、図13を参照して説明する。この図に示す第三実施形態の旋回始め制御は、植付終了判断後の走行距離N1に基づいて旋回開始タイミングを判断する点が前記実施形態と相違している。具体的に説明すると、第三実施形態の旋回始め制御では、まず、植付作業機操作レバー34による植付部上昇操作を判断する(S301:植付終了判断手段)。ここで操作ありと判断した場合は、走行モード選択スイッチ36の操作位置を判断する(S302:旋回モード切換手段)。ここで、ティーチングモードが選択されている場合は、ステアリングセンサ37及び走行距離センサ38による手動旋回操作情報の取得が行われる(S303:旋回開始タイミング学習手段)。ここで取得される手動旋回操作情報としては、植付終了後のステアリング操作タイミング(走行距離N1)、ステアリング戻しタイミング(走行距離N2)、旋回方向、ステアリング最大操作量などが含まれる。そして、手動旋回操作情報を取得した後は、取得情報に基づいて、走行距離センサ目標値N1、N2やステアリング切れ角目標値を設定すると共に、方向フラグのセットを行う(S304)。
【0032】
一方、自動旋回モードが選択されている場合は、走行距離センサ38による走行距離の検出を開始すると共に(S305)、自動旋回クラッチ機構26を入りとし(S306)、走行距離を判断する(S307:旋回開始タイミング判断手段)。走行距離が目標値N1に達したら、方向フラグに基づいて旋回方向を判断すると共に(S308)、旋回方向が右である場合は、旋回モータ28を右旋回方向に駆動させ(S309:自動旋回操作手段)、旋回方向が左である場合は、旋回モータ28を左旋回方向に駆動させる(S310:自動旋回操作手段)。その後は、所定のステアリング切れ角に達したか否かを判断し(S311)、該判断結果がYESになった時点で旋回モータ28の駆動を停止する(S312)。その後、走行距離を再度判断し(S313)、走行距離が目標値N2に達したら、自動旋回クラッチ機構26を切ると共に(S314)、方向フラグを反転させる(S315)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】乗用田植機の側面図である。
【図2】マーカを示す平面図である。
【図3】マーカ切換部を示す側面図である。
【図4】マーカ切換部を示す平面図である。
【図5】ステアリング作動機構を示す側面図である。
【図6】ステアリング作動機構を示す断面図である。
【図7】制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図8】ステアリングホイールの近傍を示す正面図である。
【図9】ステアリングホイールの近傍を示す斜視図である。
【図10】旋回始め制御の作用説明図である。
【図11】第一実施形態に係る旋回始め制御のフローチャートである。
【図12】第二実施形態に係る旋回始め制御のフローチャートである。
【図13】第三実施形態に係る旋回始め制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1 走行機体
3 植付部
9 マーカ
24 ステアリングホイール
26 自動旋回クラッチ機構
27 ステアリング作動機構
28 旋回モータ
30 トルクリミッタ
31 自動旋回クラッチモータ
33 制御装置
34 植付作業機操作レバー
36 走行モード選択スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操作に応じて走行機体を操向するステアリング機構と、走行機体に昇降自在に連結される植付部と、該植付部に対する動力供給を入切する植付クラッチとを備える移植機において、
前記ステアリング機構をアクチュエータの駆動力で作動させるステアリング作動手段と、該ステアリング作動手段を制御する制御装置とを備えると共に、該制御装置に、植付クラッチの切り操作及び/又は植付部の上昇操作に基づいて植付けの終了を判断する植付終了判断手段と、該植付終了判断手段による植付終了判断後の経過時間及び/又は走行距離に基づいて旋回開始タイミングを判断する旋回開始タイミング判断手段と、該旋回開始タイミング判断手段による旋回開始タイミング判断に応じてステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回操作手段とを設けたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記ステアリング作動手段は、自動旋回操作手段によるステアリング機構の作動よりも、ステアリングホイールの手動操作によるステアリング機構の作動を優先させる手動優先手段を備えることを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記制御装置は、手動旋回操作時における植付終了後の旋回開始タイミングを学習する旋回開始タイミング学習手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の移植機。
【請求項4】
前記制御装置は、植付終了後にステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回モードと、植付終了後にステアリング機構を手動で旋回操作する手動旋回モードとの切換えを行う旋回モード切換手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の移植機。
【請求項5】
前記制御装置は、次行程に走行基準線を引くマーカの振り出し方向に基づいて旋回方向を判断する旋回方向判断手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の移植機。
【請求項1】
ステアリングホイールの操作に応じて走行機体を操向するステアリング機構と、走行機体に昇降自在に連結される植付部と、該植付部に対する動力供給を入切する植付クラッチとを備える移植機において、
前記ステアリング機構をアクチュエータの駆動力で作動させるステアリング作動手段と、該ステアリング作動手段を制御する制御装置とを備えると共に、該制御装置に、植付クラッチの切り操作及び/又は植付部の上昇操作に基づいて植付けの終了を判断する植付終了判断手段と、該植付終了判断手段による植付終了判断後の経過時間及び/又は走行距離に基づいて旋回開始タイミングを判断する旋回開始タイミング判断手段と、該旋回開始タイミング判断手段による旋回開始タイミング判断に応じてステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回操作手段とを設けたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記ステアリング作動手段は、自動旋回操作手段によるステアリング機構の作動よりも、ステアリングホイールの手動操作によるステアリング機構の作動を優先させる手動優先手段を備えることを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記制御装置は、手動旋回操作時における植付終了後の旋回開始タイミングを学習する旋回開始タイミング学習手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の移植機。
【請求項4】
前記制御装置は、植付終了後にステアリング機構を自動的に旋回操作する自動旋回モードと、植付終了後にステアリング機構を手動で旋回操作する手動旋回モードとの切換えを行う旋回モード切換手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の移植機。
【請求項5】
前記制御装置は、次行程に走行基準線を引くマーカの振り出し方向に基づいて旋回方向を判断する旋回方向判断手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−244288(P2007−244288A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72242(P2006−72242)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]