積層圧電素子及びその製造方法、並びに振動波駆動装置
【課題】駆動部4と非駆動部5から成る積層圧電素子のおいて、焼成や分極による反りを抑制できる積層圧電素子を提供する。
【解決手段】非駆動部5に駆動部4よりも厚さが厚く、広い面積の電極層を設け、場合によりこの電極層を用いて分極し、積層圧電素子の反りを抑制する。その方法として、駆動部4の電極層になる導電ペースに比べ、非駆動部5の電極層になる導電ペーストの導電材料の比率や塗布量を増やし印刷して電極層を形成する。
【解決手段】非駆動部5に駆動部4よりも厚さが厚く、広い面積の電極層を設け、場合によりこの電極層を用いて分極し、積層圧電素子の反りを抑制する。その方法として、駆動部4の電極層になる導電ペースに比べ、非駆動部5の電極層になる導電ペーストの導電材料の比率や塗布量を増やし印刷して電極層を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電材料の層を積層した積層圧電素子及びその製造方法、並びに前記積層圧電素子を用いた振動波駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気−機械エネルギー変換機能を有する代表的な材料である圧電材料は、圧電素子として様々な用途に用いられており、特に最近は、複数層を重ね一体に成形し焼結した積層圧電素子が多く使われるようになってきた。この積層圧電素子の特徴は、単一の層から成る圧電素子と比べ、積層化によって低い電圧で大きな変形歪や大きな力が得られること、さらに、積層する一層の厚さを薄くすることができるので小型化が可能であることである。
【0003】
一般的に積層圧電素子は、複数の圧電セラミックスから成る圧電材料の層で形成された圧電層と、各圧電層に隣接して設けられ導電材料で形成された導電層である電極層とから構成されている。そして、圧電層と電極層とを複数層重ねて積層化して焼結し、その後に分極処理を行い積層圧電素子全体が圧電性を有するようにしている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図9は、特許文献1に開示された積層圧電素子の構造図である。
【0005】
この積層圧電素子20は、直線(リニア)駆動する振動波モータに用いられる振動体であり、電圧を印加して駆動させ振動を発生させる駆動部26と電圧を印加しない非駆動部27とから構成されている。また、積層圧電素子20は、曲げ振動が発生可能な厚さの非駆動部27を設けている。
【0006】
非駆動部27は、第1層から所定層(例えば第20層)までが電極層の無い圧電層22で構成されている。駆動部26は、所定層(例えば第21層)から最終層(例えば第30層)までが、2分割された電極層23−1、23−2が形成された圧電層22と、2分割されていない電極層23−3が形成された圧電層22とが交互に重なり積層化され構成されている。
【0007】
駆動部26と非駆動部27は、同時に積層して一体化され焼成され、積層圧電素子20を構成している。非駆動部27の厚さは、積層圧電素子20において曲げ振動を発生させることが可能な厚さに設定されている。非駆動部27の厚さが薄いと、駆動部26によって発生した振動エネルギーを曲げ振動として取り出すことができない。
【0008】
各圧電層22における、2分割された電極層23−1、23−2と、ほぼ全面の電極層23−3は、それぞれスルーホール24−1、24−2、24−3を介し独立して電気的に繋がれ、最下層の圧電層表面にある3つの表面電極層25と導通している。スルーホールとは、圧電層22を貫通する穴に導電材料を充填したものである。そして、電極層23−1、23−2、23−3に挟まれた各圧電層22には所定の分極極性を与えられている。
【0009】
積層圧電素子20は、上記分極極性を与えた後に、積層圧電素子20の最下面にある表面電極層25をラップ加工で削り落とした後、表面の所定の位置にフレキシブル回路基板を貼り付けることで、駆動回路と接続を行うことができるようになっている。そして、積層圧電素子20の電極層23−3をグランドとし、電極層23−1、23−2に時間的な位相差を有する高周波電圧を印加すると、異なる2つの曲げ振動を同時に発生させることができる。
【0010】
一方、薄い板状の積層体である圧電アクチュエータ基板30は焼成時の収縮に伴いうねりや反りが生じやすい。そこで、特許文献2には、図10に示すように、積層体の厚みの1/2の位置を通り圧電アクチュエータ基板30の表面に平行な線に関して、線対称になるように2層の導電材料を主成分とした高収縮層31をセラミックス層32の間に設けることが開示されている。さらに、図11に示すように、3層以上の高収縮層31とセラミックス層32を有する圧電アクチュエータ基板33においても、線対称に配置されることが記載されている。
【0011】
前述した特許文献1のように、電極層が存在する駆動部と電極層が存在しない非駆動部が共存している積層圧電素子において、焼成時に導電材料から成る電極層は圧電材料から成る圧電層より早く収縮を起こして、変形、特に反りを生じやすい。そこで、特許文献2のように、導電材料を主成分とした高収縮層(電極層)を積層圧電素子の厚さ方向において線対称に配置することは、反りの軽減に対し確かに効果がある。
【特許文献1】特開2005−168281号公報
【特許文献2】特開2004−349688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前述した特許文献1の積層圧電素子においては、駆動部には複数の電極層があり、駆動部の表面には積層圧電素子と同時に焼成される分極用の表面電極層が設けられ、そして駆動部は分極されている。分極された複数の圧電層は焼成と同じように面方向において収縮するので、反りの程度はさらに助長される。このため、特許文献2のように電極層を線対称に配置しただけでは反りの抑制は不十分であった。
【0013】
この反りがあると、積層圧電素子の表面を両面ラップ加工や研削加工を行い平坦にしても、内部の電極層は加工した平坦な表面に対し反ったままであり、極端な場合には内部の電極層が加工した表面に露出してしまい素子として使用することができなった。
【0014】
本発明は上記従来の問題点に鑑み、駆動部と非駆動部から成る積層圧電素子の焼成や分極に伴い発生する素子の変形、特に反りの発生を抑制することができる積層圧電素子及びその製造方法、並びに振動波駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するため、導電層に対する電圧の印加により駆動し当該積層圧電素子に振動を発生させる駆動部と、前記振動の発生が可能な厚さで構成された非駆動部とを備え、前記駆動部及び前記非駆動部が圧電材料から成る圧電層を積層して成る積層圧電素子において、前記非駆動部に、導電材料で構成された1つ以上の導電層を形成したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の振動波駆動装置は、前記請求項1乃至6の何れかに記載の積層圧電素子を振動体とし、前記振動体と、前記振動体に加圧されて接触する接触体とを相対的に移動させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の積層圧電素子の製造方法であって、前記導電層を形成するためのペースト状の導電材料から成る導電ペーストと、前記圧電層を形成するためシート状の圧電材料から成る圧電シートとを予め用意しておき、前記導電ペーストが塗布された圧電シートと前記導電ペーストが塗布されていない圧電シートとを重ねて一体化する積層一体化工程と、前記積層一体化工程後の積層物を焼成する焼成工程とを有し、前記積層一体化工程は、前記焼成工程後において前記非駆動部に1つ以上の導電層が形成されるように、圧電シートを積層一体化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、焼成や分極に伴い発生する積層圧電素子の変形、特に反りの発生を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
<積層圧電素子1の構造>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る積層圧電素子の構成を示す構造図である。また、図2は、図1の積層圧電素子の長手方向の断面図である。
【0021】
図1、2において、積層圧電素子1は、電圧を印加し駆動させ積層圧電素子自体を振動させる駆動部4と、電圧を印加しない非駆動部5とを備えている。そして、駆動部4及び非駆動部5は、圧電材料の層である圧電層2−1〜2−8で構成されると共に、導電材料からなる導電層である表面電極層3−1及び電極層3−2〜3−6が形成されている。
【0022】
駆動部4は、外形より小さい電極である電極層3−2と、同じく外形より小さく2分割され形成された電極層3−3と、電極層3−2と同じ形状の電極層3−4とを有している。さらに、電極層3−2と3−3に挟まれた圧電層2−2と、電極層3−3と3−4に挟まれた圧電層2−3とを備えている。
【0023】
図2の斜線部Aが圧電活性領域であり、表面電極層3−1に電圧を印加することにより駆動を起こさせる領域である。この圧電活性領域は、圧電層2−2、2−3と平行な面内(分極方向に対し垂直な方向)で振動し、積層圧電素子1に2つの曲げ振動を起こさせることができる。
【0024】
駆動部4における電極層3−2、3−4と2分割された電極層3−3は、それぞれ3本のスルーホール6−1、6−2、6−3を介し独立して電気的に導通している。そして、最上層の表面にある3つに分割された表面電極層3−1−1、3−1−2、3−1−3と別々に導通している。一方、非駆動部5は、圧電層2−4から圧電層2−8までの各圧電層を備え、その間に外形まで達し全面を覆う電極層3−5と電極層3−6が形成されている。
【0025】
駆動部4と非駆動部5は同時に積層して一体化され焼成されるものである。そして、後述のように表面電極層3−1を使って分極処理を行い、所定の分極極性を与える。しかし、非駆動部5の電極層3−5、3−6はスルーホール等で導通していないため、電極層3−5、3−6に隣接する圧電層は分極されない。
【0026】
また、スルーホール6−1、6−2、6−3は、後述のように振動体の駆動時に圧電層に電圧を印加する際にも用いる。そのため、電圧が印加される駆動部4の電極層3−2、3−3、3−4は、積層圧電素子1の外周面には露出しないようにしている。露出していると結露、異物の付着などにより電流のリークやショートが起こることも考えられるからである。一方、非駆動部5の電極層3−5、3−6は駆動には関係なく、電圧も印加されないので、積層圧電素子1の外周面に露出させている。
【0027】
駆動部4と駆動部5はユニモルフになっており、非駆動部5の厚さは、積層圧電素子1において曲げ振動を発生させることが可能な厚さに設定されている。非駆動部5の厚さが薄いと、駆動部4によって発生した振動エネルギーを曲げ振動として取り出すことができないからである。
【0028】
ここで、本実施の形態の積層圧電素子1は、平板状であり、縦が5.5mm、幅が3.5mm、厚さが0.42mmである。そして、各圧電層の厚さは60μm、スルーホール6−1〜6−3の径は0.1mmである。後述のように、駆動部4の電極層の厚さは2〜3μmであり、非駆動部5の電極層の厚さは駆動部4の電極層の厚さの約2.5倍の5〜7μmである。
【0029】
圧電層となる圧電材料は、鉛を含んだペロブスカイト型の結晶構造を有するジルコン酸鉛とチタン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする。そして、この他に複数の金属元素から成る化合物を少量添加し固溶させた三成分系や多成分系の圧電セラミックスを使っている。この圧電セラミックスの粉末と有機バインダーから成るグリーンシートを圧電層としている。
【0030】
<積層圧電素子1の製造方法>
図3は、図1の積層圧電素子1の製造方法を示す工程図である。
【0031】
(A)積層一体化工程(ステップS11)
圧電層2−1〜2−8は、一定寸法の形状に切り出したグリーンシートから成り、電極層3−1〜3−6は、導電材料である銀・パラジウムの粉末を主成分とし有機ビヒクルと混練した導電ペーストを前記グリーンシート上にスクリーン印刷で形成して設ける。電極層を形成していないグリーンシートと所定の電極層を形成したグリーンシートとを順に重ね、加圧して積層一体化する。
【0032】
電極層3−1〜3−6を形成する導電ペーストは、共沈法から作った球形の平均粒径1.2μmの銀・パラジウム粉末(銀80重量%、パラジウム20重量%)から成る導電材料を主成分とする。そして、前述のグリーンシートを作成する際に使った平均粒径0.4μmの圧電セラミックス粉末を添加し混ぜて作成する。これは一般に、金属である導電材料は圧電セラミックスよりも低温で早く焼結が進むので、圧電セラミックスの粉末を混ぜることで焼結を遅らせて、焼結時の温度に対する収縮を圧電セラミックスのそれに近づけるためである。つまり、導電ペーストの焼結時の収縮を抑えるためである。
【0033】
駆動部4の電極層3−2〜3−4と非駆動部5の電極層3−5、3−6を形成する導電ペーストは、添加する圧電セラミックス粉末をそれぞれ15重量%と5重量%とする。そして、非駆動部5の導電ペーストの導電材料の混合比率を増やし、さらに、この導電ペーストの単位面積当たりの塗布量を増やすようにしている。なお、有機ビヒクルは焼失するのでこの混合比率には含まない。
【0034】
(B)焼成工程(ステップS12)
積層一体化工程後は、所定温度(例えば1100℃)の鉛雰囲気で焼成し一体焼結させる。焼成により、始めにグリーンシートの有機バインダーと導電ペーストの有機ビヒクルは焼失する。焼結が終わると、グリーンシートは焼結し圧電セラミックスとして圧電層になり、導電ペーストは導電材料の粉末が焼結し導電性を有する電極層になる。
【0035】
本実施の形態では、駆動部4の電極層3−2〜3−4と非駆動部5の電極層3−5、3−6を形成する導電ペーストは、前述したように、添加する圧電セラミックス粉末をそれぞれ15重量%と5重量%とする。そして、非駆動部5の導電ペーストの導電材料の混合比率を増やすようにしている。これにより、焼成時の非駆動部5の電極層3−5と3−6の焼結にかかる時間が短くなり、周辺の収縮が大きくなる。つまり結果的に積層圧電素子1の反りを抑えることができる。また、導電材料の比率が増えることで電極層の厚さは厚くなる。
【0036】
さらに、前述したように導電ペーストの単位面積当たりの塗布量を増やすようにしたので、焼成時の素子の電極層3−5、3−6焼結が一層早くなり、周辺の収縮をより大きくすることができる。
【0037】
なお、導電ペーストの塗布量を変えるには、印刷に使用するクリーンの版厚(スクリーンの厚さと乳剤の厚さ)やメッシュを変えることで可能である。塗布量の増加により電極層の厚さは厚くなる。
【0038】
本実施の形態では、上記の圧電セラミックス粉末の添加量=5重量%の導電ペーストを使い、最終的に焼成後の電極層3−5、3−6が5〜7μmの厚さになるようにした。これにより、本実施の形態の上記の層構成において、駆動部4の反りを十分抑制することができる。
【0039】
なお、圧電セラミックス粉末の添加量=15重量%の導電ペーストを用いた場合には、電極層3−5、3−6の厚さを10μm程度に増やす方が望ましい。
【0040】
また、導電材料は共沈法以外での製法でも、また粒径が異なっていても、圧電セラミックス粉末の添加量を変えれば適用は可能であり、前述と同様な効果をもたらす。添加する圧電セラミックス粉末については、圧電層と同じものに限らずまた粒径も異なっていても同様な効果を有する。さらに、非駆動部5の圧電層2−4〜2−8は、駆動部4の圧電層2−1〜2−3より厚いシートを用いることで、圧電層の数を減らしても良い。
【0041】
(C)分極処理工程(ステップS13)
焼成後は分極処理を行う。この分極処理では、まず、3本のスルーホール6−1、6−2、6−3に繋がる表面電極層3−1−1、3−1−2、3−1−3にそれぞれ金属ピン(不図示)を押し当てる。次いで、表面電極層3−1−1をグランド(G)とし、表面電極層3−1−2と3−1−3をプラス(+)として、所定温度(例えば100〜150℃)のオイル中で、所定電圧(例えば200V)を印加して、約10分〜30分かけて分極を行う。この結果、電極層3−2、3−4をグランド(G)とし、電極層3−3をプラス(+)として、圧電層2−2と2−3は分極される。
【0042】
(D)両面ラップ加工/平面研削加工(ステップS14)
上記の分極処理後は、両面ラップ加工または平面研削加工を行うことで、積層圧電素子1の上面及び下面を削り平坦化する。圧電層2−1と2−8はその表面から厚さの半分ほど(約30μm)が削られ、表面電極層3−1も削り落とされる。
【0043】
なお、積層圧電素子1は、最上面の表面電極層3−1を加工で削り落とした後の面に露出するスルーホール6−1〜6−3の端部に合わせた所定の位置にフレキシブル回路基板を貼り付ける。これによって、駆動回路との接続を行うことができるようになっている。
【0044】
<第1の実施の形態に係る利点>
従来例では、非駆動部に、本実施の形態の電極層3−5と3−6に相当する、外形まで達する全面の電極層を設けていない。そのため、焼成し分極処理した後は反りの発生が顕著であり、表面を平坦に加工すると、本実施の形態の電極層3−2に相当する電極層が表面に露出して、振動波モータの振動体として使用ができなかった。
【0045】
一方、本実施の形態では、非駆動部5において、導電ペーストの導電材料の比率や塗布量を増やすことで電極層の厚さを厚くした、外形まで達する全面の電極層3−5と3−6を設けた。この電極層3−5と3−6それぞれ単独でも、素子1の反りの抑制効果はあるが、これらを合わせることで少ない数の電極層で素子1の反りの発生を抑制することができる。したがって、素子1は、電極層3−2が表面の露出することもなく良好な構成となる。
【0046】
また、非駆動部5の電極層3−5と3−6は、駆動部4の電極層3−2〜3−4に比べて導電材料の比率や塗布量を増やして形成すれば、非駆動部5の電極層の数を駆動部4の電極層の数より極力少なくすることができ、製造時間の短縮が可能となり低コストに繋がる。
【0047】
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態で説明した積層圧電素子を複数配列した積層圧電素子板を用意し、この積層圧電素子板から個々の素子を分離する実施の形態について説明する。即ち、第2の実施の形態では、小寸法の素子を量産するに際し、1個単独で作るのではなく多数個を同時に作り、生産性を上げるようにしたものである。
【0048】
図4(a),(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る積層圧電素子板の構造図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)はB−B断面図である。
【0049】
この積層圧電素子板7は、縦横の長さが約40mmであり、上記第1の実施の形態に係る積層圧電素子1を縦9個、横6個を配列させたものである。この積層圧電素子板7から図4(b)の破線Cに沿って切断して切り離し、積層圧電素子1に相当する素子1’を取り出すことができる。
【0050】
図4(b)に示すように、駆動部4の電極層3−2’,3−3’,3−4’は図2と同じで個々の積層圧電素子1でそれぞれ分かれているが、非駆動部5の電極層3−5’と3−6’は積層圧電素子板7のほぼ全面に設けている。また、非駆動部5の電極層3−5’、3−6’の厚さは駆動部4の電極層3−2’〜3−4’の厚さの約2.5倍の5〜7μmとした。その他、圧電層や電極層の材質、厚さ、導電ペーストなど条件は、基本的に第1の実施の形態と同じである。
【0051】
<第2の実施の形態に係る利点>
従来例では、表面電極層を上面にして焼成・分極処理した場合、駆動部には、本実施の形態の全面電極層3−5’、3−6’に相当する電極層を設けていないため、従来の積層圧電素子板の反りは大きなものとなる。即ち、図5に示すように、積層圧電素子板7の反りの変形による凸部の高さをHとし、積層圧電素子板7の厚さをTとした場合に、積層圧電素子板7の反りLは、次式で計算することができる。
【0052】
H−T=L
この計算式により、従来例の反りLを求めると、積層圧電素子板の反りLは50〜70μmも発生した。
【0053】
これに対して、本実施の形態では、電極層3−5’と3−6’を設けているため、積層圧電素子板7の反りLは5〜10μmとなり、従来例よりも大幅に減少した。反りLがこの程度であれば、その後、この積層圧電素子板のまま両面ラップ加工または平面研削加工を行って上面及び下面を削り平坦化しても、電極層の露出はない。そして、この積層圧電素子板7から切り離して積層圧電素子1を後述の振動波モータの振動体として使えば、振動波モータの動作として良好な結果が得られる。
【0054】
[第3の実施の形態]
図6(a),(b)は、本発明の第3の実施の形態に係る積層圧電素子板の構造図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)はB’−B’断面図である。
【0055】
図6(a)に示す積層圧電素子板7’は、外観は図4(a)の積層圧電素子板7とほぼ同じで縦横の長さが約40mmであり、積層圧電素子1’が縦9個、横6個配列されている。
【0056】
第3の実施の形態と上記第2の実施の形態との違いは、積層圧電素子板7’の端で、非駆動部5のほぼ全面に設けている電極層3−7、3−8にスルーホール6−4、6−5を介して表面電極6−1、6−2を接続していることである。
【0057】
そして、この表面電極3−3、3−4とスルーホール6−4、6−5を用いて、電極層3−7をグランド(G)とし、電極層3−8をプラス(+)として、非駆動部5の分極と同時に圧電層2−6’の分極処理を行う。
【0058】
なお、駆動部4側の電極層3−4もグランド(G)であるので、電極層3−4と電極層3−7の間の圧電層は分極されない。なお、その他の圧電層や電極層の材質、厚さ、用いた導電ペーストなど条件は基本的に第2の実施の形態と同じである。
【0059】
<第3の実施の形態に係る利点>
このような積層圧電素子板7’において、非駆動部5の電極層3−7と3−8を用いて圧電層2−6’の分極処理も行い、第2の実施の形態の計算式で測定すると、積層圧電素子板7’の反りLは、0〜5μmとなり、従来例よりも大幅に減少した。
【0060】
そして、この積層圧電素子板7’の両面ラップ加工を行い、図6(b)の破線Cに沿って切断し切り離して積層圧電素子1’を取り出し、後述の振動波モータの振動体として使い、振動波モータの動作として良好な結果を得た。この積層圧電素子板7’から切り離した積層圧電素子1’はスルーホール6−4、6−5とは分離され、振動波モータの駆動時は圧電層2−6’には電圧は印加されず非駆動部5となる。
【0061】
このように、非駆動部5の電極層を用いて非駆動部5の一部の圧電層を分極することで、この分極した圧電層の逆方向の反りを発生させ、結果として積層圧電素子の反りをより少なくすることも可能である。ただし、分極することで、駆動時には電極層間には振動による電荷が発生し、圧電層だけ機械的な剛性が高くなる現象が起るため、分極した圧電層の電極層間は導通させておき剛性が高くなることを抑制することが望ましい。
【0062】
もちろん、非駆動部5の全面電極層3−5’、3−6’や3−7、3−8以外にさらに電極層を増やしても良いし、その電極層間で分極しても良い。さらに、第1乃至第3の実施の形態では、駆動部の電極層が3層で構成されている例を示したが、積層圧電素子に振動の発生が可能であれば電極層の層数はこれに限られるものではない。
【0063】
[第4の実施の形態]
図7は、上記各実施の形態に係る積層圧電素子を用いた振動波モータの構成を示す斜視図である。
【0064】
図7に示すように、振動波モータ11は、積層圧電素子1(または1’)から成る振動体8と、スライダー9から構成されている。平板状の形状を有する振動体8を構成する積層圧電素子1は前述と同じであり、非駆動部5の表面に、板状の摩擦材10が接着されている。摩擦材10は、高摩擦係数と摩擦耐久性を兼ね備える金属材料から形成されている。
【0065】
摩擦材10は、均一の厚さである部位10−1、10−2と、これらの部位よりも薄く構成された薄板部10−3、10−4とから構成されている。平板の金属材料にエッチング処理を施して部分的に厚みを減らすことで、摩擦材10の薄板部10−3、10−4を形成している。摩擦材10の部位10−1は、薄板部10−3と10−4の間に形成されて後述のスライダー9に対する接触部として使用される。
【0066】
一方、スライダー9は、スライダー基部9−1と、これに接合された、これも高摩擦係数と摩擦耐久性を兼ね備える摩擦材9−2とから構成されている。スライダー9の摩擦材9−2が、摩擦材10の接触部10−1に加圧されて接触する。
【0067】
振動体8を構成する積層圧電素子1の所定の位置にフレキシブル回路基板を貼り付けることで、駆動回路(不図示)と接続を行うことができるようになっている。
【0068】
図8(a),(b)は、振動体10に励起こされる2つの曲げ振動を示す図である。
【0069】
前述した積層圧電素子1の電極層3−2と3−4をグランドとして、2つに分割された電極層3−3のそれぞれに位相差を有する高周波電圧を印加する。これにより、図8(a),(b)に示すような異なる2つの曲げ振動を時間的な位相を90度ずらして同時に発生させることができる。
【0070】
図8(a)に示す曲げ振動は面外2次曲げ振動であり、図8(b)に示す振動は面外1次曲げ振動であり、これら2つの曲げ振動の共振周波数が略一致するように振動体8の形状が設計されている。摩擦材10の接触部10−1は面外2次曲げ振動の節近傍に配置されており、この振動により振動体8の長手方向(M1)に変位する。また、摩擦材10の接触部10−1は面外1次曲げ振動の腹近傍に配置されており、この振動により厚さ方向(M2)にも変位する。
【0071】
これら異なる2つの曲げ振動から成る複合振動を生成することで、振動体8を構成する積層圧電素子1に接着された摩擦材10の接触部10−1には楕円運動または円運動を発生させることができる。この結果、振動体8の接触部10−1の表面に加圧してスライダー9を接触させると、表面に発生した楕円運動または円運動により、スライダー9は振動体8に対して直線移動を行う。つまり、振動体8に対してスライダー9を加圧して接触させることで、振動体8との間に相対移動運動が形成されるため、直線(リニア)駆動する振動波モータ11を構成することができる。
【0072】
ここで、振動体8を構成する積層圧電素子1と摩擦材10は、縦横の寸法がほぼ一致している。摩擦材10の厚さは0.6mmで接触部10−1と部位10−2の厚さは0.1mmであり、薄板部10−3、10−4の厚さは50μmである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1の実施の形態に係る積層圧電素子の構成を示す構造図である。
【図2】図1の積層圧電素子の長手方向の断面図である。
【図3】図1の積層圧電素子1の製造方法を示す工程図である。
【図4】第2の実施の形態に係る積層圧電素子板の構造図である。
【図5】積層圧電素子板の反りを示す図である。
【図6】第3の実施の形態に係る積層圧電素子板の構造図である。
【図7】上記各実施の形態に係る積層圧電素子を用いた振動波モータの構成を示す斜視図である。
【図8】振動体に励起こされる2つの曲げ振動を示す図である。
【図9】従来の積層圧電素子の構造図である。
【図10】従来の圧電アクチュエータ基板を示す断面図である。
【図11】従来の他の圧電アクチュエータ基板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 積層圧電素子
2−1〜2−8 圧電層
3−1 表面電極層
3−2〜3−6 電極層
4 駆動部
5 非駆動部
8 振動体
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電材料の層を積層した積層圧電素子及びその製造方法、並びに前記積層圧電素子を用いた振動波駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気−機械エネルギー変換機能を有する代表的な材料である圧電材料は、圧電素子として様々な用途に用いられており、特に最近は、複数層を重ね一体に成形し焼結した積層圧電素子が多く使われるようになってきた。この積層圧電素子の特徴は、単一の層から成る圧電素子と比べ、積層化によって低い電圧で大きな変形歪や大きな力が得られること、さらに、積層する一層の厚さを薄くすることができるので小型化が可能であることである。
【0003】
一般的に積層圧電素子は、複数の圧電セラミックスから成る圧電材料の層で形成された圧電層と、各圧電層に隣接して設けられ導電材料で形成された導電層である電極層とから構成されている。そして、圧電層と電極層とを複数層重ねて積層化して焼結し、その後に分極処理を行い積層圧電素子全体が圧電性を有するようにしている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図9は、特許文献1に開示された積層圧電素子の構造図である。
【0005】
この積層圧電素子20は、直線(リニア)駆動する振動波モータに用いられる振動体であり、電圧を印加して駆動させ振動を発生させる駆動部26と電圧を印加しない非駆動部27とから構成されている。また、積層圧電素子20は、曲げ振動が発生可能な厚さの非駆動部27を設けている。
【0006】
非駆動部27は、第1層から所定層(例えば第20層)までが電極層の無い圧電層22で構成されている。駆動部26は、所定層(例えば第21層)から最終層(例えば第30層)までが、2分割された電極層23−1、23−2が形成された圧電層22と、2分割されていない電極層23−3が形成された圧電層22とが交互に重なり積層化され構成されている。
【0007】
駆動部26と非駆動部27は、同時に積層して一体化され焼成され、積層圧電素子20を構成している。非駆動部27の厚さは、積層圧電素子20において曲げ振動を発生させることが可能な厚さに設定されている。非駆動部27の厚さが薄いと、駆動部26によって発生した振動エネルギーを曲げ振動として取り出すことができない。
【0008】
各圧電層22における、2分割された電極層23−1、23−2と、ほぼ全面の電極層23−3は、それぞれスルーホール24−1、24−2、24−3を介し独立して電気的に繋がれ、最下層の圧電層表面にある3つの表面電極層25と導通している。スルーホールとは、圧電層22を貫通する穴に導電材料を充填したものである。そして、電極層23−1、23−2、23−3に挟まれた各圧電層22には所定の分極極性を与えられている。
【0009】
積層圧電素子20は、上記分極極性を与えた後に、積層圧電素子20の最下面にある表面電極層25をラップ加工で削り落とした後、表面の所定の位置にフレキシブル回路基板を貼り付けることで、駆動回路と接続を行うことができるようになっている。そして、積層圧電素子20の電極層23−3をグランドとし、電極層23−1、23−2に時間的な位相差を有する高周波電圧を印加すると、異なる2つの曲げ振動を同時に発生させることができる。
【0010】
一方、薄い板状の積層体である圧電アクチュエータ基板30は焼成時の収縮に伴いうねりや反りが生じやすい。そこで、特許文献2には、図10に示すように、積層体の厚みの1/2の位置を通り圧電アクチュエータ基板30の表面に平行な線に関して、線対称になるように2層の導電材料を主成分とした高収縮層31をセラミックス層32の間に設けることが開示されている。さらに、図11に示すように、3層以上の高収縮層31とセラミックス層32を有する圧電アクチュエータ基板33においても、線対称に配置されることが記載されている。
【0011】
前述した特許文献1のように、電極層が存在する駆動部と電極層が存在しない非駆動部が共存している積層圧電素子において、焼成時に導電材料から成る電極層は圧電材料から成る圧電層より早く収縮を起こして、変形、特に反りを生じやすい。そこで、特許文献2のように、導電材料を主成分とした高収縮層(電極層)を積層圧電素子の厚さ方向において線対称に配置することは、反りの軽減に対し確かに効果がある。
【特許文献1】特開2005−168281号公報
【特許文献2】特開2004−349688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前述した特許文献1の積層圧電素子においては、駆動部には複数の電極層があり、駆動部の表面には積層圧電素子と同時に焼成される分極用の表面電極層が設けられ、そして駆動部は分極されている。分極された複数の圧電層は焼成と同じように面方向において収縮するので、反りの程度はさらに助長される。このため、特許文献2のように電極層を線対称に配置しただけでは反りの抑制は不十分であった。
【0013】
この反りがあると、積層圧電素子の表面を両面ラップ加工や研削加工を行い平坦にしても、内部の電極層は加工した平坦な表面に対し反ったままであり、極端な場合には内部の電極層が加工した表面に露出してしまい素子として使用することができなった。
【0014】
本発明は上記従来の問題点に鑑み、駆動部と非駆動部から成る積層圧電素子の焼成や分極に伴い発生する素子の変形、特に反りの発生を抑制することができる積層圧電素子及びその製造方法、並びに振動波駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するため、導電層に対する電圧の印加により駆動し当該積層圧電素子に振動を発生させる駆動部と、前記振動の発生が可能な厚さで構成された非駆動部とを備え、前記駆動部及び前記非駆動部が圧電材料から成る圧電層を積層して成る積層圧電素子において、前記非駆動部に、導電材料で構成された1つ以上の導電層を形成したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の振動波駆動装置は、前記請求項1乃至6の何れかに記載の積層圧電素子を振動体とし、前記振動体と、前記振動体に加圧されて接触する接触体とを相対的に移動させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の積層圧電素子の製造方法であって、前記導電層を形成するためのペースト状の導電材料から成る導電ペーストと、前記圧電層を形成するためシート状の圧電材料から成る圧電シートとを予め用意しておき、前記導電ペーストが塗布された圧電シートと前記導電ペーストが塗布されていない圧電シートとを重ねて一体化する積層一体化工程と、前記積層一体化工程後の積層物を焼成する焼成工程とを有し、前記積層一体化工程は、前記焼成工程後において前記非駆動部に1つ以上の導電層が形成されるように、圧電シートを積層一体化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、焼成や分極に伴い発生する積層圧電素子の変形、特に反りの発生を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
<積層圧電素子1の構造>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る積層圧電素子の構成を示す構造図である。また、図2は、図1の積層圧電素子の長手方向の断面図である。
【0021】
図1、2において、積層圧電素子1は、電圧を印加し駆動させ積層圧電素子自体を振動させる駆動部4と、電圧を印加しない非駆動部5とを備えている。そして、駆動部4及び非駆動部5は、圧電材料の層である圧電層2−1〜2−8で構成されると共に、導電材料からなる導電層である表面電極層3−1及び電極層3−2〜3−6が形成されている。
【0022】
駆動部4は、外形より小さい電極である電極層3−2と、同じく外形より小さく2分割され形成された電極層3−3と、電極層3−2と同じ形状の電極層3−4とを有している。さらに、電極層3−2と3−3に挟まれた圧電層2−2と、電極層3−3と3−4に挟まれた圧電層2−3とを備えている。
【0023】
図2の斜線部Aが圧電活性領域であり、表面電極層3−1に電圧を印加することにより駆動を起こさせる領域である。この圧電活性領域は、圧電層2−2、2−3と平行な面内(分極方向に対し垂直な方向)で振動し、積層圧電素子1に2つの曲げ振動を起こさせることができる。
【0024】
駆動部4における電極層3−2、3−4と2分割された電極層3−3は、それぞれ3本のスルーホール6−1、6−2、6−3を介し独立して電気的に導通している。そして、最上層の表面にある3つに分割された表面電極層3−1−1、3−1−2、3−1−3と別々に導通している。一方、非駆動部5は、圧電層2−4から圧電層2−8までの各圧電層を備え、その間に外形まで達し全面を覆う電極層3−5と電極層3−6が形成されている。
【0025】
駆動部4と非駆動部5は同時に積層して一体化され焼成されるものである。そして、後述のように表面電極層3−1を使って分極処理を行い、所定の分極極性を与える。しかし、非駆動部5の電極層3−5、3−6はスルーホール等で導通していないため、電極層3−5、3−6に隣接する圧電層は分極されない。
【0026】
また、スルーホール6−1、6−2、6−3は、後述のように振動体の駆動時に圧電層に電圧を印加する際にも用いる。そのため、電圧が印加される駆動部4の電極層3−2、3−3、3−4は、積層圧電素子1の外周面には露出しないようにしている。露出していると結露、異物の付着などにより電流のリークやショートが起こることも考えられるからである。一方、非駆動部5の電極層3−5、3−6は駆動には関係なく、電圧も印加されないので、積層圧電素子1の外周面に露出させている。
【0027】
駆動部4と駆動部5はユニモルフになっており、非駆動部5の厚さは、積層圧電素子1において曲げ振動を発生させることが可能な厚さに設定されている。非駆動部5の厚さが薄いと、駆動部4によって発生した振動エネルギーを曲げ振動として取り出すことができないからである。
【0028】
ここで、本実施の形態の積層圧電素子1は、平板状であり、縦が5.5mm、幅が3.5mm、厚さが0.42mmである。そして、各圧電層の厚さは60μm、スルーホール6−1〜6−3の径は0.1mmである。後述のように、駆動部4の電極層の厚さは2〜3μmであり、非駆動部5の電極層の厚さは駆動部4の電極層の厚さの約2.5倍の5〜7μmである。
【0029】
圧電層となる圧電材料は、鉛を含んだペロブスカイト型の結晶構造を有するジルコン酸鉛とチタン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする。そして、この他に複数の金属元素から成る化合物を少量添加し固溶させた三成分系や多成分系の圧電セラミックスを使っている。この圧電セラミックスの粉末と有機バインダーから成るグリーンシートを圧電層としている。
【0030】
<積層圧電素子1の製造方法>
図3は、図1の積層圧電素子1の製造方法を示す工程図である。
【0031】
(A)積層一体化工程(ステップS11)
圧電層2−1〜2−8は、一定寸法の形状に切り出したグリーンシートから成り、電極層3−1〜3−6は、導電材料である銀・パラジウムの粉末を主成分とし有機ビヒクルと混練した導電ペーストを前記グリーンシート上にスクリーン印刷で形成して設ける。電極層を形成していないグリーンシートと所定の電極層を形成したグリーンシートとを順に重ね、加圧して積層一体化する。
【0032】
電極層3−1〜3−6を形成する導電ペーストは、共沈法から作った球形の平均粒径1.2μmの銀・パラジウム粉末(銀80重量%、パラジウム20重量%)から成る導電材料を主成分とする。そして、前述のグリーンシートを作成する際に使った平均粒径0.4μmの圧電セラミックス粉末を添加し混ぜて作成する。これは一般に、金属である導電材料は圧電セラミックスよりも低温で早く焼結が進むので、圧電セラミックスの粉末を混ぜることで焼結を遅らせて、焼結時の温度に対する収縮を圧電セラミックスのそれに近づけるためである。つまり、導電ペーストの焼結時の収縮を抑えるためである。
【0033】
駆動部4の電極層3−2〜3−4と非駆動部5の電極層3−5、3−6を形成する導電ペーストは、添加する圧電セラミックス粉末をそれぞれ15重量%と5重量%とする。そして、非駆動部5の導電ペーストの導電材料の混合比率を増やし、さらに、この導電ペーストの単位面積当たりの塗布量を増やすようにしている。なお、有機ビヒクルは焼失するのでこの混合比率には含まない。
【0034】
(B)焼成工程(ステップS12)
積層一体化工程後は、所定温度(例えば1100℃)の鉛雰囲気で焼成し一体焼結させる。焼成により、始めにグリーンシートの有機バインダーと導電ペーストの有機ビヒクルは焼失する。焼結が終わると、グリーンシートは焼結し圧電セラミックスとして圧電層になり、導電ペーストは導電材料の粉末が焼結し導電性を有する電極層になる。
【0035】
本実施の形態では、駆動部4の電極層3−2〜3−4と非駆動部5の電極層3−5、3−6を形成する導電ペーストは、前述したように、添加する圧電セラミックス粉末をそれぞれ15重量%と5重量%とする。そして、非駆動部5の導電ペーストの導電材料の混合比率を増やすようにしている。これにより、焼成時の非駆動部5の電極層3−5と3−6の焼結にかかる時間が短くなり、周辺の収縮が大きくなる。つまり結果的に積層圧電素子1の反りを抑えることができる。また、導電材料の比率が増えることで電極層の厚さは厚くなる。
【0036】
さらに、前述したように導電ペーストの単位面積当たりの塗布量を増やすようにしたので、焼成時の素子の電極層3−5、3−6焼結が一層早くなり、周辺の収縮をより大きくすることができる。
【0037】
なお、導電ペーストの塗布量を変えるには、印刷に使用するクリーンの版厚(スクリーンの厚さと乳剤の厚さ)やメッシュを変えることで可能である。塗布量の増加により電極層の厚さは厚くなる。
【0038】
本実施の形態では、上記の圧電セラミックス粉末の添加量=5重量%の導電ペーストを使い、最終的に焼成後の電極層3−5、3−6が5〜7μmの厚さになるようにした。これにより、本実施の形態の上記の層構成において、駆動部4の反りを十分抑制することができる。
【0039】
なお、圧電セラミックス粉末の添加量=15重量%の導電ペーストを用いた場合には、電極層3−5、3−6の厚さを10μm程度に増やす方が望ましい。
【0040】
また、導電材料は共沈法以外での製法でも、また粒径が異なっていても、圧電セラミックス粉末の添加量を変えれば適用は可能であり、前述と同様な効果をもたらす。添加する圧電セラミックス粉末については、圧電層と同じものに限らずまた粒径も異なっていても同様な効果を有する。さらに、非駆動部5の圧電層2−4〜2−8は、駆動部4の圧電層2−1〜2−3より厚いシートを用いることで、圧電層の数を減らしても良い。
【0041】
(C)分極処理工程(ステップS13)
焼成後は分極処理を行う。この分極処理では、まず、3本のスルーホール6−1、6−2、6−3に繋がる表面電極層3−1−1、3−1−2、3−1−3にそれぞれ金属ピン(不図示)を押し当てる。次いで、表面電極層3−1−1をグランド(G)とし、表面電極層3−1−2と3−1−3をプラス(+)として、所定温度(例えば100〜150℃)のオイル中で、所定電圧(例えば200V)を印加して、約10分〜30分かけて分極を行う。この結果、電極層3−2、3−4をグランド(G)とし、電極層3−3をプラス(+)として、圧電層2−2と2−3は分極される。
【0042】
(D)両面ラップ加工/平面研削加工(ステップS14)
上記の分極処理後は、両面ラップ加工または平面研削加工を行うことで、積層圧電素子1の上面及び下面を削り平坦化する。圧電層2−1と2−8はその表面から厚さの半分ほど(約30μm)が削られ、表面電極層3−1も削り落とされる。
【0043】
なお、積層圧電素子1は、最上面の表面電極層3−1を加工で削り落とした後の面に露出するスルーホール6−1〜6−3の端部に合わせた所定の位置にフレキシブル回路基板を貼り付ける。これによって、駆動回路との接続を行うことができるようになっている。
【0044】
<第1の実施の形態に係る利点>
従来例では、非駆動部に、本実施の形態の電極層3−5と3−6に相当する、外形まで達する全面の電極層を設けていない。そのため、焼成し分極処理した後は反りの発生が顕著であり、表面を平坦に加工すると、本実施の形態の電極層3−2に相当する電極層が表面に露出して、振動波モータの振動体として使用ができなかった。
【0045】
一方、本実施の形態では、非駆動部5において、導電ペーストの導電材料の比率や塗布量を増やすことで電極層の厚さを厚くした、外形まで達する全面の電極層3−5と3−6を設けた。この電極層3−5と3−6それぞれ単独でも、素子1の反りの抑制効果はあるが、これらを合わせることで少ない数の電極層で素子1の反りの発生を抑制することができる。したがって、素子1は、電極層3−2が表面の露出することもなく良好な構成となる。
【0046】
また、非駆動部5の電極層3−5と3−6は、駆動部4の電極層3−2〜3−4に比べて導電材料の比率や塗布量を増やして形成すれば、非駆動部5の電極層の数を駆動部4の電極層の数より極力少なくすることができ、製造時間の短縮が可能となり低コストに繋がる。
【0047】
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態で説明した積層圧電素子を複数配列した積層圧電素子板を用意し、この積層圧電素子板から個々の素子を分離する実施の形態について説明する。即ち、第2の実施の形態では、小寸法の素子を量産するに際し、1個単独で作るのではなく多数個を同時に作り、生産性を上げるようにしたものである。
【0048】
図4(a),(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る積層圧電素子板の構造図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)はB−B断面図である。
【0049】
この積層圧電素子板7は、縦横の長さが約40mmであり、上記第1の実施の形態に係る積層圧電素子1を縦9個、横6個を配列させたものである。この積層圧電素子板7から図4(b)の破線Cに沿って切断して切り離し、積層圧電素子1に相当する素子1’を取り出すことができる。
【0050】
図4(b)に示すように、駆動部4の電極層3−2’,3−3’,3−4’は図2と同じで個々の積層圧電素子1でそれぞれ分かれているが、非駆動部5の電極層3−5’と3−6’は積層圧電素子板7のほぼ全面に設けている。また、非駆動部5の電極層3−5’、3−6’の厚さは駆動部4の電極層3−2’〜3−4’の厚さの約2.5倍の5〜7μmとした。その他、圧電層や電極層の材質、厚さ、導電ペーストなど条件は、基本的に第1の実施の形態と同じである。
【0051】
<第2の実施の形態に係る利点>
従来例では、表面電極層を上面にして焼成・分極処理した場合、駆動部には、本実施の形態の全面電極層3−5’、3−6’に相当する電極層を設けていないため、従来の積層圧電素子板の反りは大きなものとなる。即ち、図5に示すように、積層圧電素子板7の反りの変形による凸部の高さをHとし、積層圧電素子板7の厚さをTとした場合に、積層圧電素子板7の反りLは、次式で計算することができる。
【0052】
H−T=L
この計算式により、従来例の反りLを求めると、積層圧電素子板の反りLは50〜70μmも発生した。
【0053】
これに対して、本実施の形態では、電極層3−5’と3−6’を設けているため、積層圧電素子板7の反りLは5〜10μmとなり、従来例よりも大幅に減少した。反りLがこの程度であれば、その後、この積層圧電素子板のまま両面ラップ加工または平面研削加工を行って上面及び下面を削り平坦化しても、電極層の露出はない。そして、この積層圧電素子板7から切り離して積層圧電素子1を後述の振動波モータの振動体として使えば、振動波モータの動作として良好な結果が得られる。
【0054】
[第3の実施の形態]
図6(a),(b)は、本発明の第3の実施の形態に係る積層圧電素子板の構造図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)はB’−B’断面図である。
【0055】
図6(a)に示す積層圧電素子板7’は、外観は図4(a)の積層圧電素子板7とほぼ同じで縦横の長さが約40mmであり、積層圧電素子1’が縦9個、横6個配列されている。
【0056】
第3の実施の形態と上記第2の実施の形態との違いは、積層圧電素子板7’の端で、非駆動部5のほぼ全面に設けている電極層3−7、3−8にスルーホール6−4、6−5を介して表面電極6−1、6−2を接続していることである。
【0057】
そして、この表面電極3−3、3−4とスルーホール6−4、6−5を用いて、電極層3−7をグランド(G)とし、電極層3−8をプラス(+)として、非駆動部5の分極と同時に圧電層2−6’の分極処理を行う。
【0058】
なお、駆動部4側の電極層3−4もグランド(G)であるので、電極層3−4と電極層3−7の間の圧電層は分極されない。なお、その他の圧電層や電極層の材質、厚さ、用いた導電ペーストなど条件は基本的に第2の実施の形態と同じである。
【0059】
<第3の実施の形態に係る利点>
このような積層圧電素子板7’において、非駆動部5の電極層3−7と3−8を用いて圧電層2−6’の分極処理も行い、第2の実施の形態の計算式で測定すると、積層圧電素子板7’の反りLは、0〜5μmとなり、従来例よりも大幅に減少した。
【0060】
そして、この積層圧電素子板7’の両面ラップ加工を行い、図6(b)の破線Cに沿って切断し切り離して積層圧電素子1’を取り出し、後述の振動波モータの振動体として使い、振動波モータの動作として良好な結果を得た。この積層圧電素子板7’から切り離した積層圧電素子1’はスルーホール6−4、6−5とは分離され、振動波モータの駆動時は圧電層2−6’には電圧は印加されず非駆動部5となる。
【0061】
このように、非駆動部5の電極層を用いて非駆動部5の一部の圧電層を分極することで、この分極した圧電層の逆方向の反りを発生させ、結果として積層圧電素子の反りをより少なくすることも可能である。ただし、分極することで、駆動時には電極層間には振動による電荷が発生し、圧電層だけ機械的な剛性が高くなる現象が起るため、分極した圧電層の電極層間は導通させておき剛性が高くなることを抑制することが望ましい。
【0062】
もちろん、非駆動部5の全面電極層3−5’、3−6’や3−7、3−8以外にさらに電極層を増やしても良いし、その電極層間で分極しても良い。さらに、第1乃至第3の実施の形態では、駆動部の電極層が3層で構成されている例を示したが、積層圧電素子に振動の発生が可能であれば電極層の層数はこれに限られるものではない。
【0063】
[第4の実施の形態]
図7は、上記各実施の形態に係る積層圧電素子を用いた振動波モータの構成を示す斜視図である。
【0064】
図7に示すように、振動波モータ11は、積層圧電素子1(または1’)から成る振動体8と、スライダー9から構成されている。平板状の形状を有する振動体8を構成する積層圧電素子1は前述と同じであり、非駆動部5の表面に、板状の摩擦材10が接着されている。摩擦材10は、高摩擦係数と摩擦耐久性を兼ね備える金属材料から形成されている。
【0065】
摩擦材10は、均一の厚さである部位10−1、10−2と、これらの部位よりも薄く構成された薄板部10−3、10−4とから構成されている。平板の金属材料にエッチング処理を施して部分的に厚みを減らすことで、摩擦材10の薄板部10−3、10−4を形成している。摩擦材10の部位10−1は、薄板部10−3と10−4の間に形成されて後述のスライダー9に対する接触部として使用される。
【0066】
一方、スライダー9は、スライダー基部9−1と、これに接合された、これも高摩擦係数と摩擦耐久性を兼ね備える摩擦材9−2とから構成されている。スライダー9の摩擦材9−2が、摩擦材10の接触部10−1に加圧されて接触する。
【0067】
振動体8を構成する積層圧電素子1の所定の位置にフレキシブル回路基板を貼り付けることで、駆動回路(不図示)と接続を行うことができるようになっている。
【0068】
図8(a),(b)は、振動体10に励起こされる2つの曲げ振動を示す図である。
【0069】
前述した積層圧電素子1の電極層3−2と3−4をグランドとして、2つに分割された電極層3−3のそれぞれに位相差を有する高周波電圧を印加する。これにより、図8(a),(b)に示すような異なる2つの曲げ振動を時間的な位相を90度ずらして同時に発生させることができる。
【0070】
図8(a)に示す曲げ振動は面外2次曲げ振動であり、図8(b)に示す振動は面外1次曲げ振動であり、これら2つの曲げ振動の共振周波数が略一致するように振動体8の形状が設計されている。摩擦材10の接触部10−1は面外2次曲げ振動の節近傍に配置されており、この振動により振動体8の長手方向(M1)に変位する。また、摩擦材10の接触部10−1は面外1次曲げ振動の腹近傍に配置されており、この振動により厚さ方向(M2)にも変位する。
【0071】
これら異なる2つの曲げ振動から成る複合振動を生成することで、振動体8を構成する積層圧電素子1に接着された摩擦材10の接触部10−1には楕円運動または円運動を発生させることができる。この結果、振動体8の接触部10−1の表面に加圧してスライダー9を接触させると、表面に発生した楕円運動または円運動により、スライダー9は振動体8に対して直線移動を行う。つまり、振動体8に対してスライダー9を加圧して接触させることで、振動体8との間に相対移動運動が形成されるため、直線(リニア)駆動する振動波モータ11を構成することができる。
【0072】
ここで、振動体8を構成する積層圧電素子1と摩擦材10は、縦横の寸法がほぼ一致している。摩擦材10の厚さは0.6mmで接触部10−1と部位10−2の厚さは0.1mmであり、薄板部10−3、10−4の厚さは50μmである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1の実施の形態に係る積層圧電素子の構成を示す構造図である。
【図2】図1の積層圧電素子の長手方向の断面図である。
【図3】図1の積層圧電素子1の製造方法を示す工程図である。
【図4】第2の実施の形態に係る積層圧電素子板の構造図である。
【図5】積層圧電素子板の反りを示す図である。
【図6】第3の実施の形態に係る積層圧電素子板の構造図である。
【図7】上記各実施の形態に係る積層圧電素子を用いた振動波モータの構成を示す斜視図である。
【図8】振動体に励起こされる2つの曲げ振動を示す図である。
【図9】従来の積層圧電素子の構造図である。
【図10】従来の圧電アクチュエータ基板を示す断面図である。
【図11】従来の他の圧電アクチュエータ基板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 積層圧電素子
2−1〜2−8 圧電層
3−1 表面電極層
3−2〜3−6 電極層
4 駆動部
5 非駆動部
8 振動体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層に対する電圧の印加により駆動し当該積層圧電素子に振動を発生させる駆動部と、前記振動の発生が可能な厚さで構成された非駆動部とを備え、前記駆動部及び前記非駆動部が圧電材料から成る圧電層を積層して成る積層圧電素子において、
前記非駆動部に、導電材料で構成された1つ以上の導電層を形成したことを特徴とする積層圧電素子。
【請求項2】
前記非駆動部の前記導電層は、前記駆動部の導電層よりも厚く構成したことを特徴とする請求項1に記載の積層圧電素子。
【請求項3】
前記非駆動部の前記導電層は、前記駆動部の導電層よりも領域面積を広く構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の積層圧電素子。
【請求項4】
前記駆動部と前記非駆動部の導電層は、ペースト状の導電材料である導電ペーストを使用して形成され、
前記非駆動部の前記導電層を形成する導電ペーストは、前記駆動部の導電層を形成する導電ペーストよりも単位面積当たりの使用量が多いことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の積層圧電素子。
【請求項5】
前記駆動部と前記非駆動部の導電層は、ペースト状の導電材料である導電ペーストを使用して形成され、
前記非駆動部の前記導電層を形成する導電ペーストは、前記駆動部の導電層を形成する導電ペーストよりも主成分である導電材料の比率が多いことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の積層圧電素子。
【請求項6】
前記非駆動部の前記導電層に挟まれた圧電層は、分極されていることを特徴とする請求項項1乃至5の何れかに記載の積層圧電素子。
【請求項7】
前記請求項1乃至6の何れかに記載の積層圧電素子を振動体とし、前記振動体と、前記振動体に加圧されて接触する接触体とを相対的に移動させることを特徴とする振動波駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れかに記載の積層圧電素子の製造方法であって、
前記導電層を形成するためのペースト状の導電材料から成る導電ペーストと、前記圧電層を形成するためシート状の圧電材料から成る圧電シートとを予め用意しておき、
前記導電ペーストが塗布された圧電シートと前記導電ペーストが塗布されていない圧電シートとを重ねて一体化する積層一体化工程と、
前記積層一体化工程後の積層物を焼成する焼成工程とを有し、
前記積層一体化工程は、前記焼成工程後において前記非駆動部に1つ以上の導電層が形成されるように、圧電シートを積層一体化したことを特徴とする積層圧電素子の製造方法。
【請求項1】
導電層に対する電圧の印加により駆動し当該積層圧電素子に振動を発生させる駆動部と、前記振動の発生が可能な厚さで構成された非駆動部とを備え、前記駆動部及び前記非駆動部が圧電材料から成る圧電層を積層して成る積層圧電素子において、
前記非駆動部に、導電材料で構成された1つ以上の導電層を形成したことを特徴とする積層圧電素子。
【請求項2】
前記非駆動部の前記導電層は、前記駆動部の導電層よりも厚く構成したことを特徴とする請求項1に記載の積層圧電素子。
【請求項3】
前記非駆動部の前記導電層は、前記駆動部の導電層よりも領域面積を広く構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の積層圧電素子。
【請求項4】
前記駆動部と前記非駆動部の導電層は、ペースト状の導電材料である導電ペーストを使用して形成され、
前記非駆動部の前記導電層を形成する導電ペーストは、前記駆動部の導電層を形成する導電ペーストよりも単位面積当たりの使用量が多いことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の積層圧電素子。
【請求項5】
前記駆動部と前記非駆動部の導電層は、ペースト状の導電材料である導電ペーストを使用して形成され、
前記非駆動部の前記導電層を形成する導電ペーストは、前記駆動部の導電層を形成する導電ペーストよりも主成分である導電材料の比率が多いことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の積層圧電素子。
【請求項6】
前記非駆動部の前記導電層に挟まれた圧電層は、分極されていることを特徴とする請求項項1乃至5の何れかに記載の積層圧電素子。
【請求項7】
前記請求項1乃至6の何れかに記載の積層圧電素子を振動体とし、前記振動体と、前記振動体に加圧されて接触する接触体とを相対的に移動させることを特徴とする振動波駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れかに記載の積層圧電素子の製造方法であって、
前記導電層を形成するためのペースト状の導電材料から成る導電ペーストと、前記圧電層を形成するためシート状の圧電材料から成る圧電シートとを予め用意しておき、
前記導電ペーストが塗布された圧電シートと前記導電ペーストが塗布されていない圧電シートとを重ねて一体化する積層一体化工程と、
前記積層一体化工程後の積層物を焼成する焼成工程とを有し、
前記積層一体化工程は、前記焼成工程後において前記非駆動部に1つ以上の導電層が形成されるように、圧電シートを積層一体化したことを特徴とする積層圧電素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−281362(P2007−281362A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108862(P2006−108862)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【Fターム(参考)】
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