説明

積層装置および積層方法

【課題】セパレータの受け渡しを円滑に行うことで、電池の製造時間を短縮可能な積層装置および積層方法を提供する。
【解決手段】所定形状のセパレータ40を外周面311で保持して回転することで搬送する円柱状の搬送ドラム310,320と、前記セパレータ40と重なるように搬送ドラムの接線方向へ所定形状の正極22を搬送する電極搬送部200と、を有し、搬送ドラムの外周面に対応して、正極が投入される部位よりも搬送ドラムの回転方向上流側に非回転的に位置してセパレータを吸着する吸着領域A2と、正極が投入される部位よりも回転方向下流側に非回転的に位置してセパレータを離間させる非吸着領域A3とが区画され、外周面が吸着領域において吸着したセパレータを外周面の回転によって非吸着領域へ搬送して、外周面からセパレータを離間させて正極に受け渡すことで正極とセパレータを回転方向下流側から順次積層する積層装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層装置および積層方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用電池、太陽電池および電子機器用電池など各種電池において、積層型の電池が使用されている。積層型電池は、正極、負極(以下、正極および負極を、電極と称する場合がある。)およびセパレータをシート状に形成し、正極、セパレータ、負極、セパレータの順に交互に積層して構成される。
【0003】
このような積層型電池の製造に用いられる装置として、様々な装置が提案されており、例えば特許文献1に記載の装置が挙げられる。
【0004】
特許文献1に記載の装置は、まず、上下に対向して配置される受け台および押え板の搬送方向への移動を停止させた状態で、受け台および押え板の各々にセパレータを吸引保持した後、下方の受け台に吸着されているセパレータの上に正極を載置する。次に、上方の押え板を下降させて押え板に吸着されているセパレータを正極の上に被せ、この状態で、正極の周囲で重なるセパレータの縁同士を熱接着して、袋状となるセパレータに正極が挟まれた袋詰正極を作製する。そして、受け台と押え板の間に袋詰正極を挟んだ状態のまま搬送した後、受け台と押え板の間から袋詰正極を取り出し、この袋詰正極を負極と交互に積層することで、正極、セパレータ、負極、セパレータの順に交互に積層した電池要素を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2007―329111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、停止した状態の受け台に吸着されているセパレータの上に正極を載置した後に、押え板を下降させて抑え板に吸着されたセパレータを正極に被せることで袋詰正極(袋詰電極)を作製しているため、セパレータの受け渡しに時間がかかり、製造時間が長くなる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、セパレータの受け渡しを円滑に行うことで、電池の製造時間を短縮可能な積層装置および積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層装置は、所定形状のセパレータを外周面で保持して回転することで搬送する円柱状の回転搬送部と、セパレータと重なるように前記回転搬送部の接線方向へ所定形状の電極を搬送する電極搬送部とを備えている。前記回転搬送部の外周面に対応して、電極搬送部によって電極が投入される部位よりも回転搬送部の回転方向上流側に位置してセパレータを吸着する吸着領域と、電極が投入される部位よりも回転搬送部の回転方向下流側に位置してセパレータを離間させる非吸着領域とが区画され、外周面が、吸着領域および非吸着領域と相対的に回転する。そして、積層装置は、外周面が前記吸着領域において吸着したセパレータを外周面の回転によって非吸着領域へ搬送して、外周面から当該セパレータを離間させて電極に受け渡すことで、電極とセパレータを回転方向下流側から順次積層する。
【0009】
また、本発明の積層方法は、所定形状のセパレータを外周面で保持して回転することで搬送する円柱状の回転搬送部と、前記セパレータと重なるように前記回転搬送部の接線方向へ所定形状の電極を搬送する電極搬送部と、を有する装置の回転搬送部の外周面に対応して、吸着領域および非吸着領域を区画する。吸着領域は、電極搬送部によって電極が投入される部位よりも回転搬送部の回転方向上流側に位置してセパレータを吸着する。非吸着領域は、電極が投入される部位よりも回転搬送部の回転方向下流側に位置してセパレータを離間させる。外周面は、前記吸着領域および非吸着領域と相対的に回転可能する。そして、積層方法は、外周面が吸着領域において吸着したセパレータを回転搬送部の回転によって非吸着領域へ搬送して、外周面から当該セパレータを離間させて電極に受け渡すことで、電極とセパレータを回転方向下流側から順次積層する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層装置および積層方法によれば、外周面が、吸着領域および非吸着領域と相対的に回転し、外周面が吸着領域において吸着したセパレータを回転搬送部の回転によって非吸着領域へ搬送し、外周面からセパレータを離間させて電極に受け渡すことで、電極とセパレータを回転方向下流側から順次積層するため、外周面に吸着されたセパレータを外周面から離間させつつ円滑に電極上へ受け渡して積層することが可能となって、電池の製造時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【図2】リチウムイオン二次電池の分解斜視図である。
【図3】負極および袋詰正極を示す平面図である。
【図4】袋詰正極に負極を重ねた様子を示す平面図である。
【図5】積層装置を示す概略斜視図である。
【図6】積層装置の電気的構成を示す図である。
【図7】積層装置の電極搬送部を示す側面図である。
【図8】積層装置の電極搬送部を示す正面図である。
【図9】積層装置の電極搬送部を示す平面図である。
【図10】積層装置の回転搬送部を示す概略断面図である。
【図11】積層装置による積層方法の工程を示す第1の説明図である。
【図12】積層装置による積層方法の工程を示す第2の説明図である。
【図13】積層装置による積層方法の工程を示す第3の説明図である。
【図14】積層装置による積層方法の工程を示す第4の説明図である。
【図15】積層装置による積層方法の工程を示す第5の説明図である。
【図16】積層装置による積層方法の工程を示す第6の説明図である。
【図17】積層装置による積層方法の工程を示す第7の説明図である。
【図18】積層装置による積層方法の工程を示す第8の説明図である。
【図19】積層装置の回転搬送部の動作を示すグラフである。
【図20】積層装置の他の例を示す概略断面図である。
【図21】積層装置の更に他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
本発明は、電池の製造工程の一部に適用される、電池の発電要素を組み立てるための積層装置および積層方法に関する。本発明の一実施形態に係る積層装置を説明する前に、電池の構造について説明する。
【0014】
(電池)
まず、図1を参照して、積層装置により形成されるリチウムイオン二次電池(積層型電池)について説明する。図1はリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図、図2はリチウムイオン二次電池の分解斜視図、図3は負極および袋詰正極の平面図である。
【0015】
図1に示すとおり、リチウムイオン二次電池10は、扁平な矩形形状を有しており、正極リード11および負極リード12が外装材13の同一端部から導出されている。外装材13の内部には、充放電反応が進行する発電要素(電池要素)15が収容されている。図2に示すとおり、発電要素15は、袋詰正極20と、負極30とが交互に積層されて形成される。
【0016】
袋詰正極20は、図3(A)に示すように、ごく薄いシート状の正極集電体(集電箔)の両面に正極活物質層が形成されてなる矩形形状の正極22が、矩形形状のセパレータ40により挟み込まれてなる。2枚のセパレータ40は、端部において接合部42により相互に接合されて、袋状に形成されている。セパレータ40は、直線的に形成される辺44Aから正極22の正極タブ23が引き出され、辺44Aの反対の辺44Bに、部分的に突出する係合部43が形成されている。係合部43は、部外装材13内で外装材13に係合することで、電池要素15を外装材13に対して固定する役割を果たす。正極22は、正極タブ23以外の部分に正極活物質層24が形成されている。
【0017】
負極30は、図3(B)に示すように、矩形形状で形成され、ごく薄いシート状の負極集電体(集電箔)の両面に負極活物質層34が形成されてなる。負極30は、負極タブ33以外の部分に負極活物質層34が形成されている。
【0018】
袋詰正極20に、負極30を重ねると図4に示すようになる。図4に示すように、負極活物質層34は、正極22の正極活物質層24よりも平面視して一回り大きく形成されている。
【0019】
なお、袋詰正極20と負極30とを交互に積層してリチウムイオン二次電池を製造する方法自体は、一般的なリチウム二次電池の製造方法であるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
(積層装置)
次に本発明の一実施形態に係る積層装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本積層装置は、図5,6に示すように、正極用のシート素材Dから正極22を切り出す正極切断部100と、切り出された正極22を搬送する電極搬送部200と、電極搬送部200の搬送方向下流側に設けられる回転搬送部300と、回転搬送部300の両側に設けられた溶着部400と、装置の全体を統括して制御する制御装置500(制御部)とを備えてなる。本実施形態では、正極22の搬送される方向を搬送方向X、正極22の面と垂直な方向を上下方向Z、上下方向Zおよび搬送方向Xと交差する方向を幅方向Yとして説明する。
【0022】
正極切断部100は、ロール状に巻回された正極用のシート素材Dを、打ち抜き加工等によって所定形状に切断することで、所定の形状の正極22(シート部材)を切り出すものである。ここで切り出された正極22は、矩形形状であって、正極タブ23を有する。
【0023】
電極搬送部200は、図7〜9に示すように、正極切断部100にて切り出された正極22を搬送するコンベア210と、コンベア210上の正極22を吸着して保持して回転搬送部300(セパレータ搬送部)へ搬送する吸着搬送部220とを備えている。コンベア210の上方には、撮像カメラ230(位置検出部)と照明231が設けられている。
【0024】
コンベア210は、無端状に形成された通気性を有するサクションベルト211と、搬送方向に並んで配置されてサクションベルト211を回転可能に保持する2つの回転軸212と、サクションベルト211の内部に配置される負圧発生部213とを備えている。
【0025】
サクションベルト211には複数の空気吸引孔214が形成されており、空気吸引孔214を介して負圧発生部213により空気を吸引することにより、薄くて搬送が困難な正極22をコンベア210上の平坦な設置面215(基準面)に吸引保持して搬送可能となっている。サクションベルト211の設置面215は、撮像カメラ230により正極22との境界が認識しやすい色調となっており、本実施形態は白色となっている。
【0026】
なお、本実施形態では、正極22を略水平状態に設置可能な平坦な設置面215を備えるものとしてコンベア210を適用しているが、その他の装置を用いてもよい。
【0027】
コンベア210の両側部には、サクションベルト211上の正極22の側部を押圧して保持する押圧部240が設けられる。押圧部240は、制御装置500により制御されるアクチュエータ241によってサクションベルト211上の設置面215(基準面)に対して近接または離間するクランパー242を備えている。クランパー242は、正極22を設置面215に押圧することで正極22の歪みを矯正するものである。特に、ロール状に巻回されたシート素材Dから切り出される正極22は、巻き癖が残って丸まりやすい。また、正極22、負極30およびセパレータ40は非常に薄い箔状の素材であり、特に自動車用電池等のような大型の電池では、非常に変形しやすい。なお、サクションベルト211は、設置面215に接触している部材を吸引して保持するものであるが、通常、設置面215から離れている部位を引き付けるほどの吸引力は備えていない。そこで、クランパー242によって正極22を設置面215に押し付けることで、正極22の変形を矯正する。これにより、撮像カメラ230による正極22の位置の把握を高精度に行うことができ、かつ吸着搬送部220による吸着位置も高精度に設定でき、後の工程における加工精度が向上する。
【0028】
クランパー242は、吸着搬送部220による正極22の吸着位置を確保するために、サクションベルト211上の正極22の搬送方向に沿う2側辺H2,H4(縁部)に沿う長尺な部位を押圧可能に形成されており、さらに撮像カメラ230により正極22の4側辺H1〜H4(縁部)を撮像できるように、4側辺H1〜H4の縁部よりも内側(正極22の中央側)を押圧可能となっている。なお、クランパー242は、押さえた正極22をクランパー242を透過して撮像できるように、透明な部材で形成される。透明な部材には、例えばアクリル樹脂やガラス等を適用できるが、材料は特に限定されず、照明231の周波数や撮像カメラ230の撮像特性に応じて適宜設定できる。
【0029】
吸着搬送部220は、駆動装置(不図示)に接続されて移動可能な装置本体221と、装置本体221の下部に設けられて負圧供給源(不図示)に接続されることで吸着力を発揮する吸着ヘッド222とを備えている。吸着ヘッド222は、駆動装置の動作に従って上下方向Z、搬送方向Xおよび幅方向Yに3次元的に移動可能であり、さらに、水平面に沿って回転可能となっている。
【0030】
コンベア210の上方に設けられる撮像カメラ230は、コンベア210により搬送されてくる正極22を、クランパー242により押圧して保持した後、照明231が照射する光の元に撮像するものである。撮像カメラ230は、正極22が所定位置まで搬送されて停止した際に撮像された正極22の画像に基づく信号を制御装置500に送信する。所定の信号を受け取った制御装置500は、信号から正極22の位置や状態を算出し、算出結果に基づいて吸着搬送部220の駆動装置の移動を制御し、正極22の位置や姿勢を適正に修正して、後述する回転搬送部300の隙間340(図5参照)に搬送する。
【0031】
具体的には、所定位置でコンベア210を停止させ、撮像カメラ230によって撮像された画像から、正極22の4辺に対応する側辺エリアE1〜E4の縁部を検出する。縁部は、サクションベルト211と正極22の色調の差異から検出できる。この検出結果から、4辺の近似直線L1〜L4を最小二乗法等を用いて算出する。次に、4辺の近似直線L1〜L4の交点である四隅の角部K1〜K4を算出し、4つの角部K1〜K4の平均値を算出して、これを電極中心点Oの座標とする。なお、電極中心点Oの座標は、搬送方向Xおよび幅方向Yの座標で表される。そして、正極22の搬送方向に沿う2側辺H2,H4の近似直線L2,L4の一方、または両方の平均値から、正極22の水平面(基準面)における傾き角θを算出する。この後、電極中心点Oの座標と傾き角θから、水平面における正極22の正規位置に対する位置および傾きの補正量を算出し、この補正量を矯正するように、吸着搬送部220(位置補正部)の駆動装置を制御して正極22の位置および姿勢を補正しつつ、回転搬送部300の隙間340に搬送する。
【0032】
なお、本実施形態では、撮像カメラ230によって正極22の位置や状態を認識しているが、その他のセンサも用いてもよく、例えば正極22の先端部を検知する接触センサ等によって、正極22の位置を認識することもできる。
【0033】
吸着搬送部220は、コンベア210の所定位置に正極22が搬送されて、クランパー242により正極22の側部を押圧して正極22の形状を矯正した状態で、垂直に下降して吸着ヘッド222により正極22を吸着して保持する。そして、クランパー242による正極22の拘束を開放し、正極22の略水平状態を維持したまま上昇した後、算出した補正量に応じて正極22の位置および姿勢を適正に修正して、回転搬送部300の隙間340に搬送する。
【0034】
回転搬送部300の隙間340の近傍には、図10に示すように、隙間340の上下を挟むように設けられて正極22の回転搬送部300への導入を補助する導入支持部250が設けられる。導入支持部250は、複数のローラ群からなり、吸着搬送部220により搬送されてきた正極22を支持するとともに、回転搬送部300の隙間340に送り出すものである。
【0035】
導入支持部250は、1つのローラからなる上側導入支持部251と、複数のローラからなる下側導入支持部252とを備えている。上側導入支持部251は、上下方向Zに移動可能であり、上方へ移動した“開状態”から、下降して下側導入支持部252の搬送方向最下流側のローラとの間に正極22を挟持する“閉状態”となることができ、かつ回転駆動することで挟持した正極22を隙間340に送り出すことができる。
【0036】
下側導入支持部252は、搬送方向上流側のローラが斜めに下降した“開状態”から、吸着搬送部220から正極22を受け渡される際に、上昇して略水平となって“閉状態”となり、正極22を搬送可能に支持する(図14参照)。上側導入支持部251のローラと対をなす搬送方向最下流側のローラは、回転駆動が可能となっており、上側導入支持部251との間に正極22を挟持した状態で回転することで、挟持した正極22を隙間340に送り出すことができる。
【0037】
したがって、吸着搬送部220により正極22が搬送されてくると、上側導入支持部251を下降させて下側導入支持部252との間に正極22の先端部を挟持し、かつ下側導入支持部252のローラを上昇させて略水平状態とし、正極22の下面を支持する。この後、吸着搬送部220の吸着ヘッド222から正極22を解放して、導入支持部250の回転によって正極22を回転搬送部300の隙間340に順次送り込む。
【0038】
回転搬送部300(セパレータ搬送部)は、シート状のセパレータ素材Sからセパレータ40を切り出しつつ、吸着搬送部220によって搬送される正極22に積層するものである。回転搬送部300は、円柱状に形成された上下一対の積層ドラム310(円柱状回転体)、積層ドラム320(円柱状回転体)を備えている。
【0039】
この上下一対の積層ドラム310,320は、回転軸が搬送方向Xに直交し、所定の隙間340を空けて外周面311同士が対向するように互いに平行に配置され、かつ水平面を基準に対称構造で構成される。
【0040】
各々の積層ドラム310,320の外周面311には、セパレータ40を吸着可能な吸着部が形成され、積層ドラム310,320の内部には、非回転的に設けられる内側構造部330が設けられる。積層ドラム310,320の幅(回転軸方向の長さ)は、セパレータ素材Sの両縁部が積層ドラム310,320の両端部からはみ出す程度となっている。
【0041】
上下の積層ドラム310,320は、隙間340を空けて配置されており、この隙間340において、搬送方向Xの下流側へ向かって同方向に回転するようになっている。すなわち、上側に位置する積層ドラム310は、図10の紙面上で左回りに回転することにより、外周面311に吸着保持したセパレータ40を隙間340まで搬送する。また、下側に位置する積層ドラム320は、図10の紙面上で右回りに回転することにより、外周面311に吸着保持したセパレータ40を隙間340まで搬送する。なお、上側および下側の積層ドラム310,320は、制御装置500により回転制御される駆動モータ(不図示)により駆動される。
【0042】
積層ドラム310,320には、外周面311に無数の通気孔312が形成されており、周方向の一部に、後述する切断部350に設けられるセパレータカッター351(切断刃)が侵入可能な凹部313(受け部)が形成されている。凹部313は、積層ドラム310,320の180度毎の2箇所に形成される。なお、凹部313が周方向に2箇所設けられるのは、積層ドラム310,320が1回転する毎に2枚のセパレータ40を切り出すためであり、積層ドラム310,320の1回転の間に切り出すセパレータ40の枚数に応じて、周方向の凹部313の数を変更できる。
【0043】
そして、各々の積層ドラム310,320の周辺には、外周面311に近接して、シート状のセパレータ素材Sを供給または拘束する送出ローラ部360(ロック機構)と、積層ドラム310,320の外周面311上のセパレータ素材Sを切断する切断部350と、切断部350による切断で発生する不要の切取片S’(図15参照)を回収するための切取片吸着部370とが設けられている。
【0044】
回転搬送部300の搬送方向下流側の斜め上方および斜め下方には、円柱状に形成された小型の送出ローラ部360が設けられている。
【0045】
送出ローラ部360は、回転搬送部300の搬送方向下流側の斜め上方および斜め下方に、円柱状に形成された一対の送出ローラ361,362が、所定の隙間を空けて配置されている。この送出ローラ部360は、セパレータロール(不図示)から搬送される一枚の連続したセパレータ素材Sを隙間に挟み込みつつ、回転することで回転搬送部300に送り出し、停止することで送り出しを停止してセパレータ素材Sを拘束する。送出ローラ361,362は、制御装置500によって制御されて、所定のタイミングで回転搬送部300にセパレータ素材Sを送り出すようになっている。
【0046】
切断部350は、回転搬送部300の上方および下方に、それぞれセパレータカッター351を備えている。セパレータカッター351は、積層ドラム310,320の外周面311に吸着保持されたセパレータ素材Sを溶融させて所定形状に切り出す熱カッターである。具体的には、セパレータ40が積層ドラム310,320の外周面311に吸着保持され搬送されて、積層ドラム310,320の凹部313がセパレータカッター351と対向する位置まで移動すると、セパレータカッター351が制御装置500の指令を受けて積層ドラム310,320の凹部313に侵入するように移動し、セパレータ40を溶融して図3(A)に示すような所定形状に切り出す。セパレータ素材Sからセパレータ40を連続的に切り出す際には、先に切り出すセパレータ40の後端を係合部43が形成される辺44Bとし、次に切り出すセパレータ40の前端を直線的な辺44Aとして、この形状の一致しない2辺44A,44Bを切断部350によって同時に切り出すことで、余剰の切取片S’が発生する。
【0047】
切取片吸着部370は、吸着力を発揮するカッター用吸着ヘッド371を備えており、セパレータカッター351がセパレータ素材Sを切断した後に凹部313から抜け出して後退するタイミングで、切断した部位に近接移動し、セパレータカッター351により切り出されたセパレータ40の余剰の切取片S’を吸引して保持する。そして、切取片S’を吸引保持したままカッター用吸着ヘッド371を積層ドラム310,320の外周面311から離間させる。この後、カッター用吸着ヘッド371の吸引を停止して切取片S’を離し、積層ドラム310,320の外周面311から離間した位置に別途設けられる吸い込み口372によって切取片S’を吸い込んで回収する。すなわち、吸い込み口372のみで切取片S’を回収しようとすると、吸い込む過程で切取片S’が外周面311に残るセパレータ40やセパレータ素材Sに接触してしまう虞があるが、カッター用吸着ヘッド371で一旦吸着して離間させた後に吸い込み口372で回収することで、切取片S’によるセパレータ40やセパレータ素材Sの損傷を抑制しつつ回収できる。
【0048】
各々の積層ドラム310,320の内部に設けられる内側構造部330には、装置の作動時に工程に応じて負圧の強度を調整可能な第1負圧室331と、装置の作動時に負圧が略一定に保たれる第2負圧室332とが非回転的に形成される。第1負圧室331および第2負圧室332は、圧力調整弁が設けられた負圧供給装置333に接続され、制御装置500によって負圧供給装置333を制御することで内部の圧力を調整可能である。
【0049】
第1負圧室331および第2負圧室332は、積層ドラム310,320の内周面によって外部と隔絶されており、したがって、積層ドラム310,320に形成される通気孔312を介して、積層ドラム310,320の外周面311に非回転的に負圧の領域を発生させる。この領域は、積層ドラム310,320が回転しても、回転することはない。第1負圧室331は、送出ローラ部360に対応する位置から、積層ドラム310,320の回転方向へ向かってセパレータカッター351に対応する位置までの範囲に形成される。第2負圧室332は、セパレータカッター351に対応する位置から、積層ドラム310,320の回転方向へ向かって隙間340に対応する位置までの略180度の範囲に形成される。
【0050】
したがって、積層ドラム310,320の外周面311には、第1負圧室331に対応する位置で負圧が調整されて変化する滑り領域A1(吸着力調整領域)と、第2負圧室332に対応する位置で負圧が略一定でセパレータ素材Sまたは切り出されたセパレータ40を吸着して保持する吸着領域A2とが区画される(図11参照)。吸着領域A2は、吸引力が強く、セパレータ素材Sまたは切り出されたセパレータ40を吸引力により保持して、積層ドラム310,320の回転によりこれらを回転させることができる。これに対し、滑り領域A1は、吸着領域A2と同程度の吸引力に設定してセパレータ40を回転させることができるとともに、吸引力を低下させることで、セパレータ素材Sを外周面311から離れない程度に保持しつつも、積層ドラム310,320が回転する際にセパレータ素材Sを回転させずに外周面311上で滑らせることができる。
【0051】
また、内側構造部330の、隙間340に対応する位置から、積層ドラム310,320の回転方向へ向かって送出ローラ部360に対応する位置までの範囲は、第1負圧室331および第2負圧室332のいずれも設けられないため、外周面311のこの範囲に対応する部位には、負圧が発生せずにセパレータ40を吸着しない非吸着領域A3が非回転的に形成される。
【0052】
そして、回転搬送部300は、積層ドラム310,320でセパレータ40を切り出しつつ吸着保持して搬送し、積層ドラム310,320の回転と電極搬送部200による電極22の搬送の速度を同期させつつ、搬送方向Xの下流側から正極22の両面にセパレータ40を順次積層する。このとき、電極22は、吸着搬送部220によって円柱形状の積層ドラム310,320の接線方向T(図10参照)へ導入される。
【0053】
溶着部400は、正極22の両面に積層されたセパレータ40の両縁部同士を溶着するものである(図3参照)。この溶着部400は、積層ドラム310,320の回転軸方向の両端にそれぞれに、上下一対の溶着機410,420を備えている。
【0054】
上下の溶着機410,420は、対向する面に搬送方向Xに沿って複数の突起411、412が設けられており、対向する突起411,421によってセパレータ40同士を加圧しつつ加熱することで、溶着可能となっている。
【0055】
溶着機410,420は、搬送方向X及び上下方向Zへ移動可能となっており、隙間340に搬送されて積層されたセパレータ40および正極22に同期するように搬送方向Xへ同速で移動しつつ互いに接近し、対向する突起411,421によって、積層されたセパレータ40同士を接合して接合部42を形成する。そして、セパレータ40で袋状に包装された正極22が所定位置まで搬送されると、溶着機410,420を離間させ、搬送方向上流側へ移動させた後、再び搬送方向Xへ同速で移動させつつ近接させて、他の接合部42を溶着する。全ての接合部42が接合された後、溶着機410,420同士が離間して、作製された袋詰正極20が開放される。
【0056】
なお、セパレータ40同士を接合するには、上述の構造に限定されず、例えば1対の回転する加熱ローラの間で加熱しつつ溶着したり、加熱せずに加圧のみで圧着したり、または接着剤を用いて接合することも可能である。
【0057】
制御装置500は、図6に示すように、正極切断部100、撮像カメラ230、押圧部240、コンベア210、吸着搬送部220、導入支持部250、送出ローラ部360、積層ドラム310,320、切断部350、切取片吸着部370、負圧供給装置333および溶着部400の全てを統括して一体的に制御し、各々を同期させつつ作動させることができる。なお、制御装置500は、電池を構成するための他の装置をも含めて、統括的に制御を行うこともできる。
【0058】
次に本積層装置を用いた積層方法について、図11〜図19を参照しつつ説明する。
【0059】
まず、ロール状に巻回された正極用のシート素材Dを、正極切断部100にて切断し、正極22を形成する。切り出された正極22は、不図示の吸着パッドやコンベア等によって、コンベア210の設置面215上に載置される。また、送出ローラ部360はセパレータロールから送られてくる一枚の連続したセパレータ素材Sを隙間に挟み込んで拘束している。したがって、セパレータ素材Sの先端部は、図11に示すように、回転搬送部300の最上部または最下部に位置している。そして、第1負圧室331は、負圧が低く設定されて、外周面311の滑り領域A1でセパレータ素材Sが引き出されることなく、積層ドラム310,320がセパレータ素材Sの内面上を滑りながら回転している。なお、本実施形態では、積層ドラム310,320の1回転で2枚のセパレータ40を切り出すため、図11にて2点鎖線で示すように、先に切り出されたセパレータ40が、既に積層ドラム310,320の外周面311上に吸着されて搬送されている。
【0060】
正極22が載置されたコンベア210は、図11に示すように、サクションベルト211の設置面215上の正極22を、サクションベルト211によって吸着保持して捲れ等の発生を抑えつつ、搬送方向Xへ一列に並んで縦並び(タブが搬送方向Xの上流側に位置する並び)に搬送する。なお、正極22を、横並び(タブが幅方向Yに位置する並び)で搬送してもよい。サクションベルト211は、所定の位置まで移動すると、正極22を吸着保持した状態のまま移動を停止する。そして、図12に示すように、押圧部240が作動して、クランパー242によって正極22の2側辺H2,H4に沿う長尺な部位を押圧する(図8,9参照)。これにより、正極22の丸まり等の変形が矯正される。そして、正極22のサクションベルト211から浮いていた部分がサクションベルト211に近づくことで、サクションベルト211によって吸引されて、設置面215上に正極22が密に付着することになる。
【0061】
この状態で、撮像カメラ230が正極22の4側辺H1〜H4を撮像し、制御装置500に所定の信号を送信する。制御装置500は、受信した信号から、前述した方法で電極中心点Oの座標と傾き角θを算出し、正極22の正規位置に対する位置および傾きの補正量を算出する。なお、撮像の際には、クランパー242は正極22の4側辺H1〜H4の縁部よりも内側(正極22の中央側)を押圧するため、撮像カメラ230によって4側辺H1〜H4を確実に撮像できる。また、クランパー242が透明な材料で形成されているため、撮像範囲にクランパー242が入っても、クランパー242を透過して正極22を撮像できる。
【0062】
次に、サクションベルト211の上方に位置する吸着搬送部220の吸着ヘッド222を下降させて、吸着ヘッド222を正極22の上面に押し付ける。これにより、正極22は吸着ヘッド222に吸着保持される。なお、正極22はサクションベルト211にも吸着されているが、吸着ヘッド222の吸着力をサクションベルト211よりも高く設定するか、若しくはサクションベルト211による吸着を一旦停止することで、吸着ヘッド222によって正極22をサクションベルト211から引き離すことができる。
【0063】
そして、積層ドラム310,320が回転し、セパレータカッター351に対応する位置へ向かって回転移動している凹部313がセパレータカッター351の位置まで所定角度αとなった際に、制御装置500によって第1負圧室331の負圧を高めて滑り領域A1の吸着力を強め、かつ送出ローラ部360を回転させて一対の送出ローラ361,362の間にセパレータ素材Sを挟みながら順次送り出し、セパレータ素材Sの供給を開始する(図19のT1を参照)。これにより、負圧が高まった滑り領域A1および吸着領域A2において積層ドラム310,320の外周面311にセパレータ素材Sが吸着保持されて、セパレータ素材Sが積層ドラム310,320の回転にしたがって順次引き出されることになる。なお、所定角度αは、切り出される1枚のセパレータ40の長さに対応した角度である。
【0064】
この後、吸着搬送部220は、図13に示すように、正極22を略水平状態に維持したまま上昇した後、搬送方向Xに移動し、回転搬送部300の隙間340へ搬送する。このとき、吸着搬送部220は、制御装置500によって駆動装置が制御されて、正極22を吸着してから回転搬送部300へ受け渡すまでの間に、補正量に基づいて正極22の位置および姿勢を補正する。これにより、正極22の位置が常に高精度に保たれ、後の工程における積層の精度が向上する。
【0065】
吸着搬送部220により搬送された正極22が、回転搬送部300の隙間340の手前に設けられる“開状態”の導入支持部250に到達すると、導入支持部250は、図14に示すように、上側導入支持部251を下降させて下側導入支持部252との間に正極22の先端部を挟持し、かつ下側導入支持部252のローラを上昇させて略水平状態として“閉状態”となり、正極22の下面を支持する。この後、吸着搬送部220の吸着ヘッド222から正極22を解放して、導入支持部250の回転によって正極22を回転搬送部300の隙間340に順次送り込む。
【0066】
また、回転搬送部300では、回転開始から積層ドラム310,320が角度αだけ回転すると、積層ドラム310,320の回転を停止する(図19のT2を参照)。このとき、セパレータ素材Sが一枚分のセパレータ40に対応する角度αだけ積層ドラム310,320上に引き出されており、凹部313が切断部350のセパレータカッター351に対向して位置する。そして、制御装置500の指令によってセパレータカッター351をセパレータ素材Sに押し付けて、セパレータ素材Sを所定の形状に切断してセパレータ40を切り出す。切り出されたセパレータ40は、積層ドラム310,320の吸着領域A2(図11参照)に位置しているため、積層ドラム310,320に吸着して保持される。
【0067】
そして、セパレータカッター351がセパレータ素材Sを切断した後に凹部313から抜け出して後退するタイミング(図19のT3を参照)で、図15に示すように、制御装置500の指令によってカッター用吸着ヘッド371が余剰の切取片S’に近接し、吸引して保持した後、元の位置へ戻る。この後、カッター用吸着ヘッド371の吸引を停止して切取片S’を離し、吸い込み口372(図10参照)によって切取片S’を吸い込んで回収する。
【0068】
そして、吸着搬送部220の吸着ヘッド222から正極22を解放した後、導入支持部250の回転により正極22を積層ドラム310,320の隙間340に順次送り込む。更に、積層ドラム310,320を再び回転させて(図19のT4を参照)、切り出されたセパレータ40を吸着したまま回転させ、隙間340に搬送する。なお、積層ドラム310,320を再び回転させる際には、制御装置500によって第1負圧室331の負圧を低下させて滑り領域A1の吸着力を弱め、かつ送出ローラ部360によりセパレータ素材Sを拘束した状態とする(図18参照)。これにより、外周面311の滑り領域A1でセパレータ40が引き出されることなく、積層ドラム310,320がセパレータ素材Sの内面上を滑りながら回転する。
【0069】
回転搬送部300の隙間340にセパレータ40の先端部が到達すると、図16に示すように、まず2枚のセパレータ40同士が積層された後、正極22の先端部の両面にセパレータ40が積層される。このとき、セパレータ40および正極22の速度が同速となり、かつセパレータ40および正極22が予め設定された適正な位置で重なるように、回転搬送部300および吸着搬送部220の搬送位置(搬送のタイミング)及び搬送速度を制御装置500によって制御する。次に、制御装置500の指令により対の溶着機410,420が近接しつつ搬送方向Xへ移動し、セパレータ40の両縁部の先端部のみを挟み込んで挟持する。そして、セパレータ40および正極22の搬送方向Xへの移動を保持したまま、突起411,421によって溶着する(図19のT5を参照)。セパレータ40は、隙間を過ぎると積層ドラム310,320の非吸着領域A3に達するため、セパレータ40は吸着力を受けることなしに積層ドラム310,320の外周面311から離れて、正極22を間に挟んだ状態で搬送方向Xへ順次搬出される。そして、セパレータ40の先端部が既に接合されているため、積層ドラム310,320の外周面311から離れても、セパレータ40同士が離れることはない。この後も、積層ドラム310,320に同期して導入支持部250により正極22が略水平状態で搬送方向Xに搬送され、積層ドラム310,320の外周面311に吸着保持されたセパレータ40が積層ドラム310,320の回転に従って正極22の両面に順次積層される。なお、このときには、次のセパレータ40を切り出すために、滑り領域A1の吸着力を再び強め、送出ローラ部360によるセパレータ素材Sの供給が開始されている(図19のT6を参照)。
【0070】
正極22の両面にセパレータ40が積層された状態で所定位置まで搬送した後、対の溶着機410,420を離間させて、搬送方向上流側へ移動させた後、図17に示すように、再び搬送方向Xへ移動させつつ近接させて、他の接合部42を溶着する。セパレータ40の両縁部の全ての接合部42が接合された後、図18に示すように、溶着機410,420同士が離間して、作製された袋詰正極20が開放される(図19のT7を参照)。この後、図示しない他の溶着機によってセパレータ40の辺44Bの接合部42も接合されて、袋詰正極20となる。
【0071】
そして、上記の工程を繰り返すことで、連続して袋詰正極20を作製することができる。
【0072】
作製された袋詰正極20は、次の工程へ搬送されて、負極30と交互に積層して電池要素15となり、最終的に二次電池10が製造される。
【0073】
本実施形態によれば、回転搬送部300の外周面311に対応して、正極22が投入される部位よりも回転方向上流側でセパレータ40を吸着する非回転的な吸着領域A2と、正極22が投入される部位よりも回転方向下流側でセパレータ40を離間させる非回転的な非吸着領域A3とが区画されるため、セパレータ40を回転搬送部300の回転によって搬送することで吸着領域A2から非吸着領域A3へ移動させることができる。そして、非吸着領域A3において外周面311からセパレータ40を離間させつつ正極22に受け渡すことで、正極22とセパレータ40を回転方向下流側から順次積層するため、外周面311に吸着されたセパレータ40を移動している正極22上へ円滑に受け渡して積層することが可能となり、電池の製造時間を短縮できる。なお、吸着領域A2および非吸着領域A3は、かならずしも非回転的でなくてもよい。すなわち、吸着領域A2および非吸着領域A3が回転(揺動も回転に含まれる)していても、外周面311が、吸着領域A2および非吸着領域A3と相対的に回転するのであれば、回転搬送部300の回転によって、外周面311上のセパレータ40を吸着領域A2から非吸着領域A3へ移動させることができる。また、吸着領域A2と非吸着領域A3の間の境界は、厳密に正極22が投入される部位に位置しなくてもよく、セパレータ40を吸着領域A2から非吸着領域A3へ移動させことで外周面311から正極22に受け渡すことが可能な範囲内で許容され得る。
【0074】
また、外周面311に通気孔312が形成される回転可能な積層ドラム310,320内側に、通気孔312を介して外周面312に非回転的に吸着領域A2および非吸着領域A1を形成する内側構造部330が設けられるため、容易な構成で、非回転的な吸着領域A2および非吸着領域A1を、回転する積層ドラム310,320の外周面311に区画できる。
【0075】
また、積層ドラム310,320の外周面311に、吸着領域A2よりも積層ドラム310,320の回転方向上流側に位置し、セパレータ40を吸着して固定する状態および吸着しつつ滑らす状態の間で切り換え可能に吸着力を調整可能な滑り領域A1(吸着力調整領域)が非回転的に形成される。このため、吸着力を調整することで、供給されるセパレータ素材Sを吸着して外周面311上に引き出すことができるとともに、セパレータ素材Sを回転させずに、かつセパレータ素材Sが外周面311から離れないように滑らせることもできる。なお、滑り領域A1も、吸着領域A2および非吸着領域A3と同様に、かならずしも非回転的でなくてもよい。
【0076】
また、電極搬送部200が、各々の外周面311が対向するように並ぶ積層ドラム310,320の隙間340に向かって正極22を搬送し、積層ドラム310,320により搬送される2枚のセパレータ40の間に積層ドラム310,320の接線方向へ正極22を配置するため、移動している正極22へ2枚のセパレータ40を同時かつ円滑に積層でき、工程の高速化が可能となって電池の製造時間を短縮できる。
【0077】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。
【0078】
図20は、本実施形態に係る積層装置の変形例を示すが、積層ドラム310,320の非吸着領域A4として、積層ドラム310,320の内部に大気圧よりも圧力の高い加圧室334を設け、通気孔312から気体(流体)を吹き出す構成とすることができる。このような構成とすれば、セパレータ40を積層ドラム310,320から離間させたいタイミングで、セパレータ40に極力負荷を与えずに離間させることができる。
【0079】
また、図21は、本実施形態に係る積層装置の他の変形例を示すが、円柱形状の積層ドラムではなく、柔軟に屈曲可能で通気孔382を有するサクションベルト380を複数の回転ローラ383で保持して構成される。このような構成とすれば、断面が非円形に限定されず、外周面381を任意の形状とすることができ、設計自由度が向上する。特に、対となるサクションベルト380の間のセパレータ40および正極22を積層する領域Bを広く設定することで、溶着機による溶着が完了するまでサクションベルト380でセパレータ40および正極22を挟んで保持でき、溶着の精度を向上できる。なお、図20および図21では、本実施形態と同様の機能を有する部位については同一の符号を使用し、その説明を省略する。
【0080】
また、上記実施形態では、袋詰正極20として、セパレータ40に正極22が袋詰めされた形態について説明したが、上記の積層装置によって袋詰めされるのは、負極30であってもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、図1に示すように、正極リード11および負極リード12が外装材13の同一端部から導出されている場合について説明したが、これに限定されない。正極リード11および負極リード12がたとえば反対の端部から導出されてもよい。この場合、二次電池10の発電要素15を形成する際には、正極タブ23と負極タブ33が相互に反対向きになるように負極30と袋詰正極20が積層される。
【0082】
また、本実施形態は、回転搬送部300の上下一対の積層ドラム310,320の間に所定の隙間340を設けているが、積層ドラム310,320が互いに接して隙間がない状態であってもよい。この場合、回転搬送部300の一方もしくは両方が、正極22およびセパレータ40の厚みに応じて追従する構造を備えることが好ましい。
【0083】
また、電極搬送部200において正極22を略水平状態に搬送しているが、その他の方向で搬送してもよい。
【0084】
また、一対の積層ドラム310,320を上下に配置するのではなく、その他の方向に配置してもよい。
【0085】
また、本実施形態は、セパレータカッター351により一枚の連続したセパレータ40を積層ドラム310,320の外周面311に吸着保持した状態で所定形状に切り出しているが、あらかじめ所定形状に切り出された積層ドラム310,320を、積層ドラム310,320に供給して吸着しつつ搬送してもよい。
【0086】
また、本実施形態では、一対の対称形状の積層ドラム310,320が設けられるが、対となる積層ドラム(セパレータ搬送部)の形状が、非対称であってもよく、例えば一方を円柱状の積層ドラムとし、他方を任意の形状のサクションベルトとしてもよい。
【0087】
また、積層ドラム310,320は吸着力を備えているため、正極22(または負極30)の一方面に1枚のセパレータ40を積層するような構成では、積層ドラムが1つでも十分に機能を発揮する。
【0088】
また、導入支持部250は、その全てをローラからなるものとしたが、フラットな部材など、その他の部材で構成してもよい。
【0089】
また、切断部350に設けられる切断刃は、熱カッターでなくてもよく、物理的に鋭利な切断刃であってもよい。また、受け部として凹部313を設けているが、受け部は必ずしも凹部313でなくてもよい。
【0090】
また、積層ドラム310,320の滑り領域A1において、負圧を調整することでセパレータ素材Sの外周面311での滑りと吸着を調整しているが、第1負圧室331の負圧を略一定に保ち、送出ローラ部360の拘束力のみで、セパレータ素材Sの供給と拘束を調整してもよい。なお、この際には、滑り領域A1の吸着力は、吸着領域A2の吸着力よりも低いことが好ましい。
【0091】
また、積層ドラム310,320(セパレータ搬送部)に吸着力を与える方法は、負圧により吸着する方法に限定されず、例えば静電気により吸着してもよい。
【0092】
また、本実施形態では、正極切断部100、撮像カメラ230、押圧部240、コンベア210、吸着搬送部220、導入支持部250、送出ローラ部360、積層ドラム310,320、切断部350、切取片吸着部370、負圧供給装置333および溶着部400を、制御装置500(同期手段)により同期させているが、必ずしも全てが電気的に同期している必要はなく、例えば、少なくとも一部を機械的にリンクして同期させてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 二次電池、
22 正極(電極)、
30 負極(電極)、
40 セパレータ、
200 電極搬送部、
300 回転搬送部、
310,320 積層ドラム(円柱状回転体)、
311 外周面、
330 内側構造部、
A1 滑り領域(吸着力調整領域)、
A2 吸着領域、
A3,A4 非吸着領域、
X 搬送方向、
Y 幅方向、
Z 上下方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状のセパレータを外周面で保持して回転することで搬送する円柱状の回転搬送部と、
前記セパレータと重なるように前記回転搬送部の接線方向へ所定形状の電極を搬送する電極搬送部と、を有し、
前記回転搬送部の外周面に対応して、
前記電極搬送部によって前記電極が投入される部位よりも前記回転搬送部の回転方向上流側に前記セパレータを吸着する吸着領域と、
前記電極が投入される部位よりも前記回転搬送部の回転方向下流側に前記セパレータを離間させる非吸着領域と、が区画され、
前記外周面は、前記吸着領域および非吸着領域と相対的に回転し、
前記外周面が前記吸着領域において吸着した前記セパレータを前記外周面の回転によって前記非吸着領域へ搬送して、前記外周面から当該セパレータを離間させて前記電極に受け渡すことで前記電極とセパレータを前記回転方向下流側から順次積層する積層装置。
【請求項2】
前記回転搬送部は、
外周面に通気孔が形成される回転可能な円柱状回転体と、
前記円柱状回転体の内側に設けられ、前記通気孔を介して前記円柱状回転体の外周面に非回転的に吸着領域および非吸着領域を区画する内側構造部と、を有する請求項1に記載の積層装置。
【請求項3】
前記円柱状回転体の外周面に、前記吸着領域よりも前記回転搬送部の回転方向上流側に、前記セパレータを吸着して固定する状態および吸着しつつ滑らす状態の間で切り換え可能に吸着力を調整可能であり、前記外周面とずれて回転し若しくは非回転的に位置する吸着力調整領域が区画される、請求項1または2に記載の積層装置。
【請求項4】
前記非吸着領域は、気体を吹き出すことで前記セパレータを離間させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層装置。
【請求項5】
前記回転搬送部は、各々の外周面が対向するように並んで2つ設けられ、
前記電極搬送部は、2つの前記回転搬送部の間に向かって当該回転搬送部の接線方向へ前記電極を搬送し、当該前記回転搬送部により搬送される2枚のセパレータの間に前記電極を配置する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層装置。
【請求項6】
所定形状のセパレータを外周面で保持して回転することで搬送する円柱状の回転搬送部と、前記セパレータと重なるように前記回転搬送部の接線方向へ所定形状の電極を搬送する電極搬送部と、を有する装置の前記回転搬送部の外周面に対応して、前記セパレータを吸着する吸着領域および前記セパレータを離間させる非吸着領域を区画し、
前記吸着領域を、前記電極搬送部によって前記電極が投入される部位よりも前記回転搬送部の回転方向上流側に位置させ、
前記非吸着領域を、前記電極が投入される部位よりも前記回転搬送部の回転方向下流側に位置させ、
前記外周面を、前記吸着領域および非吸着領域と相対的に回転可能とし、
前記外周面が前記吸着領域において吸着した前記セパレータを前記外周面の回転によって前記非吸着領域へ搬送して、前記外周面から当該セパレータを離間させて前記電極に受け渡すことで前記電極とセパレータを前記回転方向下流側から順次積層する積層方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−221708(P2012−221708A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85742(P2011−85742)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000141886)株式会社京都製作所 (83)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】