説明

穴開け種まき兼用装置

【課題】畑の畝を覆うマルチシートに開ける穴の径を小さくでき、かつその穴の中心部に種子をまくことのできる穴開け種まき兼用装置を提供する。
【解決手段】兼用装置1を、畝Rに沿って移動可能なフレーム10と、フレーム10に同心状に固定された、外側のカッタ20および内側の種まきパイプ30から構成する。昇降可能な環状カッタ20は、その径が20mm〜30mmであり、下降位置でマルチシートMにほぼ同径の小さな穴Hを開ける。種まきパイプ30は、独立して昇降可能な芯パイプ31と鞘パイプ32の二重構造をしており、芯パイプ31と鞘パイプ32は下降位置で畝Rの土中に下端部が差し込まれる。種子Sが供給される芯パイプ31は、下端部外周にその種子Sの排出口31bを有しており、鞘パイプ32が前記下降位置にあるときは、排出口31bは閉塞されている。鞘パイプ32を上昇させると、排出口31bは開放され、マルチシートMの穴Hのほぼ中央に種子Sがまかれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畑の畝を覆うマルチシートに対する穴開けと、その穴への種まきとを行う穴開け種まき兼用装置に関する。
また、この発明は上記装置等を用いた種まき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畑の畝は、雑草の繁殖などを防止するためにマルチシート(mulching sheet)で覆われることが多いが、そのままではこのマルチシートが邪魔になって畝に育成対象となる野菜などの種子をまくことができない。
そのため、まず穴開け装置を用いてマルチシートに種まき用の穴を開けておき(特許文献1参照)、ついで種まき装置を用いてこの穴から畝に種子をまくことが一般的におこなわれている。
【0003】
ここで従来の種まき装置は、トラクタの後部などに取り付けられた検出片がマルチシートの上をなぞってゆき、マルチシートの穴の箇所に来ると検出片が穴内に落ち込むことでその落差により穴の存在を検知し、これをもとに種まきを行う方式を採用している。しかし、この種まき装置を用いる方式には次の2つの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−70256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の課題は、上記従来の方式では、マルチシートの穴の径が小さいと、検出片が穴に落ち込み難くなるなどして穴の検出精度が上がらないため、穴径を一定以上の大きさ、たとえば45mm〜50mm程度にする必要があることである。
このように穴径を大きくすればするほど、それだけ畝の露出部分が大きくなり、その部分から雑草が多く繁殖して野菜の生育が阻害されてしまう。
【0006】
第2の課題は、上記従来の方式では、検出片はマルチシートと穴との境界部分で穴に落ち込むことで穴を検知し、これに連動して種子が供給されるため、種子は穴の縁部に片寄ってまかれることである。
このように種子が穴の縁部に片寄っていると、マルチシートが邪魔になって野菜の生育が阻害されてしまう。
【0007】
そこで、畑の畝を覆うマルチシートに開ける穴の径を小さくでき、かつその穴の中心部に種子をまくことのできる装置が要請される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような課題を解決するため、本発明者らは、畑の畝を覆うマルチシートに対する穴開けと、その穴への種まきとを、一つの装置でほぼ同時におこなえる穴開け種まき兼用装置を発明したのである。
【0009】
具体的には、発明にかかる穴開け種まき兼用装置を、車両に取り付けられて畝に沿って移動可能なフレームと、前記フレームに昇降動可能に固定され下降位置でマルチシートに穴を開ける環状カッタと、前記フレームに前記環状カッタの内側に同心状になるように昇降動可能に固定され下降位置で畝の土中に下端部が差し込まれる種まきパイプと、を備える構成としたのである。
さらに詳細には、前記種まきパイプは、上端部から投入された種子を内部通路を経て下端部の外周に設けられた排出口から排出可能な芯パイプと、前記芯パイプと独立に昇降動可能であり芯パイプとの相対的な下降位置で前記芯パイプの排出口を閉塞し芯パイプとの相対的な上昇位置で前記芯パイプの排出口を開放する鞘パイプと、を有する構成としたのである。
【0010】
車両を走行させながら畝上の所定位置で、フレームに対してすべて上昇位置にある、種まきパイプの芯パイプ、鞘パイプおよび環状カッタを同期して下降させる。すると、環状カッタによりマルチシートに穴があけられると同時に、種まきパイプの下端部が畝の土中に差し込まれる。
この状態から、環状カッタと種まきパイプの鞘パイプのみを上昇させると、下降位置にとどまる芯パイプの排出口が土中において鞘パイプによる閉塞から開放され、芯パイプ内に投入された種子が排出口を経て土中へとまかれる。
【0011】
さらに、芯パイプを上昇させると、環状カッタ、芯パイプ、および鞘パイプはすべて当初の上昇位置へと復帰することになる。
車両を走行させてフレームを畝に沿って移動させながら、所定の間隔をおいてこの一連の動作をおこなっていくと、マルチシートの穴開けおよびその穴への種まき作業の自動化が図られる。
【0012】
また、種まきの方法としては、上記したように種まきパイプの下端部が畝の土中に差し込まれた状態から、芯パイプおよび鞘パイプを同時に上昇させ、空中において芯パイプの上昇を停止し鞘パイプのみを上昇させて芯パイプの排出口を開放し排出された種子を落下させる方式を採用してもよい。
このようにすると、土中では排出口は閉塞されたままであるから、排出口から芯パイプ内に土等が侵入するのを簡単に防止できる。
【0013】
ここで、種まきパイプは、マルチシートに穴を開ける環状カッタの同心内側にあり、ここから種子が排出されるため、種子はマルチシートの穴の中央近辺にまかれることになる。したがって、マルチシートが野菜生育の邪魔になることがない。
なお、環状カッタとしては、ポンチカッタ、熱カッタ、およびレーザーカッタのいずれを採用することもできる。
【0014】
また従来のように、マルチシートの穴を先に開けておいて後から検出片でその穴を検知する方式を採用しておらず、穴開けと種まきを同じ装置でほぼ同時に行うので、マルチシートの穴を検知のために拡げる必要がなくなる。
したがって、環状カッタの径をたとえば20mm〜30mmのように小さいものとして、マルチシートの穴を従来の45mm〜50mmよりもはるかに小さくすることができる。その結果、穴から露出する畝の面積が小さくなって、雑草の繁殖を抑えることが可能となる。
【0015】
さらに前記芯パイプは、内部通路の底が前記排出口に向けて下り勾配に傾斜しかつその傾斜方向の左右方向に中高となるものとすると、種子が芯パイプ内で傾斜方向の左右いずれかに片寄って位置決めされた上で、その傾斜に沿って排出口からスムーズに排出されるため好ましい。
【0016】
さらに前記鞘パイプは、前記環状カッタのマルチシートの穴開けにより出る抜きカスを前記カッタの内周と挟み込んで保持可能な膨出部を有すると、マルチシートの穴あけと同時に不要な抜きカスを回収できるため好ましい。
【0017】
さらに前記芯パイプは、その下端に円錐形の尖鋭部を有すると、芯パイプが畝の土中に突き刺さりやすいため好ましい。
さらにこの穴開け種まき兼用装置は、前記鞘パイプを前記芯パイプとの相対的な下降位置に付勢するばねを備えるものとすると、種まき後に芯パイプの排出口は鞘パイプによりすばやく閉塞されるため、排出口から芯パイプ内に土や塵埃が侵入するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
発明にかかる穴開け種まき兼用装置を以上のように構成したので、畑の畝を覆うマルチシートに開ける穴の径を小さくでき、かつその穴の中心部分に種をまくことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の穴開け種まき兼用装置の全体正面図
【図2】第1実施形態の穴開け種まき兼用装置の全体縦断面図
【図3】第1実施形態の穴開け種まき兼用装置の(a)は要部縦断面図、(b)は要部斜視図
【図4】第1実施形態の穴開け種まき兼用装置の縦断面図
【図5】第2実施形態の穴開け種まき兼用装置の(a)は要部縦断面図、(b)は要部斜視図
【図6】第3実施形態の穴開け種まき兼用装置の(a)は要部縦断面図、(b)は要部斜視図
【図7】第4実施形態の穴開け種まき兼用装置の(a)は要部縦断面図、(b)は要部斜視図
【図8】第4実施形態の穴開け種まき兼用装置の種まきパイプの動作を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつこの発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1〜図3に示す第1実施形態の穴開け種まき兼用装置1は、トラクタ等の車両に取り付けて用いられ、マルチシートMに覆われた畑の畝Rに対する穴開け作業と、その穴Hへたまねぎなどの野菜の種子Sをまく作業とを、1つの装置でほぼ同時におこなうものである。
【0022】
具体的には、図1のように、この兼用装置1は、フレーム10と、カッタ20と、種まきパイプ30と、を備える。
図示のように、フレーム10は、水平部11と、水平部11の両端から起立する起立部12と、を有して側面視コの字型の外観をなしている。その起立部12が図示省略のトラクタの後部に固定されることで、フレーム10は畝に沿って移動可能となっている。
【0023】
フレーム10の水平部11には、複数のカッタ20が外側に複数の種まきパイプ30が内側に、各一対をなして同心状に固定されている。
環状カッタ20および種まきパイプ30は、平面視千鳥状に配置されており、たとえば9つがフレーム10に固定されている。
【0024】
各カッタ20は、円筒形(環状)のポンチカッタであって、フレーム10に対し昇降動可能に固定されている。これらは、トラクタに搭載されたカム等を用いた公知の機構(図示省略)により、同期して昇降操作をおこなえるようになっている。
図2および図3のように、各カッタ20の下端部は波刃からなる刃部21になって、カッタ20の下降位置においてマルチシートMを切断して、円形の穴Hを開けられるようになっている。
カッタ20の外径は、たとえば20mm〜30mmであり、刃部21の厚みは、たとえば0.2mm〜1.5mmである。
【0025】
一方、種まきパイプ30は、図2および図3のように、それぞれ円筒形の内側の芯パイプ31と外側の鞘パイプ32の2重構造になっており、フレーム10に対し昇降動可能に固定されている。
芯パイプ31の外径はたとえば約7.5mmであり、鞘パイプ32の内径はたとえば約8mm、外径はたとえば約12mmとなっている。
【0026】
芯パイプ31は、カッタ20と同様にトラクタに搭載された公知の機構により、カッタ20とは独立に昇降操作をおこなえるようになっている。
また、芯パイプ31は、図2のように、その上端部が漏斗状に広がって種子Sを投入するホッパ31aとなっており、下端部の外周面には排出口31bを有している。したがって、パイプ内部の空洞が通路31cとなって種子Sはホッパ31aから下端部に案内され(落下して)、排出口31bから排出されるようになっている。
【0027】
トラクタには、公知の種子供給機構が搭載されており(図示省略)、ここから芯パイプ31のホッパ31aに種子S(取り扱いを容易にするために樹脂によりコーティングして球形にしたもの)が供給されるようになっている。
また、トラクタには、公知の薬液散布機構も搭載されており(図示省略)、そのノズルが芯パイプ31のホッパ31aの上方に臨んでいる。種子供給機構から芯パイプ31のホッパ31aに供給された種子Sは、この薬液散布機構のノズルからの薬液噴射により殺菌等される。それとともに、その薬液の噴射力により芯パイプ31の内部通路31cを通じて速やかに下端部へと送られるようになっている。
【0028】
また、芯パイプ31は下端部に両刃形状の尖鋭部31dを有しており、芯パイプ31の下降位置で、その下端部が畝の土中に差し込まれる(突き刺さる)ようになっている。
さらに、芯パイプ31の内部通路31cの底31eは、排出口31bに向けて下り勾配に傾斜しており、その傾斜方向の左右方向(両側方向)にかけては、中央が高く両側が低い中高形状、すなわち中央から両側に向けて下り勾配となっている。
【0029】
鞘パイプ32は、カッタ20と同様にトラクタに搭載された公知の機構により、芯パイプ31と独立して昇降操作をおこなえるようになっている。
そして、鞘パイプ32が芯パイプ31から見て相対的に上昇位置にあるときには、芯パイプ31の排出口31bは開放されるようになっている。また、鞘パイプ32が芯パイプ31から見て相対的に下降位置にあるときには、芯パイプ31の排出口31bは鞘パイプ32により閉塞されているようになっている。
【0030】
さらに、鞘パイプ32はその下端部が中空の円環形(ドーナツ型)に膨らんで膨出部32aとなっており、この膨出部32aと芯パイプとの間には空隙が形成されている。膨出部32a以外の箇所においては、上述のように鞘パイプ32の内径が8mm、芯パイプ31の外径が7.5mmであるから、両者の間にはほとんど空隙がないことになる。
【0031】
第1実施形態の兼用装置1の構成は以上のようであり、次に図4を参照してその動作を説明する。
トラクタを走行させながら、マルチシートで覆われた畝上の所定位置でフレーム10から、まず図4(a)のように、カッタ20、芯パイプ31、鞘パイプ32のすべてを同時に下降させる。
カッタ20の下降により、図4(b)のようにマルチシートMが切断され、外径が20mm〜30mmのカッタ20とほぼ同径の円形の小さな穴Hが形成される。
【0032】
また、芯パイプ31および鞘パイプ32の下降により、図4(b)のように芯パイプ31の尖鋭部が土中に突き刺さり、芯パイプ31および鞘パイプ32の下端部が土中に差し込まれる。
ここで芯パイプ31と鞘パイプ32は同時に同速度で下降しているため、芯パイプ31の排出口31bは鞘パイプ32により閉塞されたままである。
【0033】
ついで、下降位置にあるカッタ20、芯パイプ31、鞘パイプ32のうち、図4(c)のようにカッタ20と鞘パイプ32だけを上昇させる。
すると、芯パイプ31だけが下降位置にとどまることになり、鞘パイプ32の上昇により、芯パイプ31の排出口31bが畝Rの土中において開放される。
また、カッタ20の切断でできたマルチシートMの抜きカスDが、鞘パイプ32の膨出部32aとカッタ20内周に挟み込まれてこれらとともに上昇して畝上から取り除かれ、回収される。
【0034】
これとは別に、芯パイプ31には、上述の種子供給機構および薬液散布機構により、殺菌等された種子Sを供給する。
ここで、芯パイプ31の内部通路31cの底は、排出口31bに向けて傾斜しているため、芯パイプ31に供給された種子Sは、この傾斜に沿って排出口31bからスムーズに畝Rの土中に排出される。
なおこのとき、芯パイプ31の内部通路の底31eはその傾斜方向の左右方向に中高となっているため、種子Sは左右いずれか一方に片寄った状態に位置決めされた上で、排出口31bから排出されることになる。
このようにして、種子S,マルチシートMの穴Hのほぼ中央部分に自動的に種まきされる。なお種まきの後に、トラクタに付属するローラなどで、畝Rの上を押えて種子Sが定着しやすいようにしてもよい。
最後に、図4(d)のように、芯パイプ31も上昇させると、種まき作業が完了し、最初の図(a)の状態に戻る。
【0035】
トラクタを畝Rに沿って移動させ、所定の間隔をおいて前記図4(a)〜(d)の動作を順次おこなっていくと、マルチシートMの穴あけ作業と穴Hへの種まき作業が連続的におこなわれていく。
この兼用装置1を用いて開けたマルチシートMの穴Hは、上述のように小さいため畝に雑草が繁殖し難くなっている。
またこの兼用装置1によりまかれた種子Sは、上述のように穴Hのほぼ中央に位置するため、穴縁のマルチシートMが風でばたついたりしても、野菜生育の妨げとなることがない。
【0036】
なお種まきの方法は、この実施形態に限定されず、たとえば以下のようにしてもよい。
まず、芯パイプ31と鞘パイプ32を同時に下降させて畝Rに突き刺し、次いで両パイプ31、32を同時に上昇させて畝Rから抜く。ついで、鞘パイプ32だけを上昇させて空中において芯パイプ31の排出口31bを開放させ、両パイプ31、32の突き刺しにより畝Rに出来た凹部に排出口31bから種子Sを落下させる。
このようにすると、土中において排出口31bは閉塞されたままであるから、排出口31bから芯パイプ31内に土や塵埃が侵入するのを防止することができる。
【0037】
図5に、第2実施形態の穴開け種まき兼用装置1を示す。第1実施形態の兼用装置1と同一の構造については説明を省略する。
この兼用装置1では、芯パイプ31の尖鋭部31dが片刃となっており、芯パイプ31の底31eは排出口31bに向けて下り勾配に傾斜しているが、左右方向に中高とはならず平坦(水平)になっている。
この実施形態の兼用装置1においても、第1実施形態と同様にマルチシートMの穴Hが小さいため畝Rに雑草が繁殖し難く、また種子Sが穴Hのほぼ中央にまかれるためマルチシートMが野菜生育の妨げとなることもない。
【0038】
図6に、第3実施形態の穴開け種まき兼用装置1を示す。第1および第2実施形態の兼用装置1と同一の構造については詳しい説明を省略する。
この兼用装置1では、芯パイプ31の尖鋭部31dが円錐形となっている。
このように尖鋭部31dが円錐形であるため、芯パイプ31が畝Rの土中にスムーズに突き刺さるようになっている。
芯パイプ31の排出口31bはパイプ長手方向に細長く形成されており、底31eは排出口31bに向けてなだらかに下り勾配に傾斜している。また、上記実施形態と同様にパイプ32は膨出部32aを有している。
【0039】
図7および図8に、第4実施形態の穴開け種まき兼用装置1を示す。第1および第2実施形態の兼用装置1と同一の構造については説明を省略する。
この兼用装置1では、芯パイプ31の尖鋭部31dが円錐形となっており、またその排出口31bはパイプ長手方向に細長く形成され、下部が尖鋭部31dにまで延びている。底31eは排出口に向けてなだらかに下り勾配に傾斜している。
一方、鞘パイプ32の下端部も膨出して略円錐形(切頭円錐形)に形成されている。さらに鞘パイプ32には、その下端部から下方に延出する蓋片32bが設けられている。
ここで鞘パイプ32の芯パイプ31との相対的な下降位置においては、芯パイプ31の尖鋭部31d上に設けられた排出口31bを蓋片32bが閉塞し、相対的な上昇位置においては、排出口31bを蓋片32bが開放するようになっている。
さらに、芯パイプ31の上端側にはカラー31fがねじ止めされており、このカラー31fと鞘パイプ32の上端との間には、芯パイプ31に外嵌するばね33が装填されている。
【0040】
排出口31bが上記第1から第3実施形態と比較して、より下端部に近づいて配置されているため、両パイプ31、32の突き刺しにより畝Rに出来た凹部に種子Sを空中から落下させて種まきをおこなう場合でも、落下位置がずれにくく、正確に凹部内に種子Sを収めることができる。
また、ばね33により鞘パイプ32は芯パイプ31の排出口31bを閉塞する向きに付勢されているため、畝Rの土中で排出口31bを開いて種まきをおこなう場合でも、種まき作業を終えると速やかに排出口31bを閉塞することが可能である。したがって、芯パイプ31内に土が侵入するのを抑制できる。
【符号の説明】
【0041】
1 穴開け種まき兼用装置
10 フレーム
11 水平部
12 起立部
20 カッタ
21 刃部
30 種まきパイプ
31 芯パイプ
31a ホッパ
31b 排出口
31c 内部通路
31d 尖鋭部
31e 内部通路の底
31f カラー
32 鞘パイプ
32a 膨出部
32b 蓋片
33 ばね
R 畑の畝
M マルチシート
H マルチシートの穴
D マルチシートの抜きカス
S 種子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畑の畝Rを覆うマルチシートMに対する穴開けと、その穴Hへの種まきとを行う穴開け種まき兼用装置1であって、
車両に取り付けられて畝Rに沿って移動可能なフレーム10と、
前記フレーム10に昇降動可能に固定され、その下降位置でマルチシートMに穴Hを開けることが可能な環状カッタ20と、
前記フレーム10に前記環状カッタ20の内側に同心状になるように昇降動可能に固定され、その下降位置で畝Rの土中に下端部を差込可能な種まきパイプ30と、を備え、
前記種まきパイプ30は、
上端部から投入された種子Sを内部通路31cを経て下端部の外周に設けられた排出口31bから排出可能な芯パイプ31と、
前記芯パイプ31と独立に昇降動可能であり、その芯パイプ31との相対的な下降位置で前記芯パイプ31の排出口31bを閉塞し、その芯パイプ31との相対的な上昇位置で前記芯パイプ31の排出口31bを開放する鞘パイプ32と、を有する穴開け種まき兼用装置。
【請求項2】
前記芯パイプ31の内部通路の底31eが、前記排出口31bに向けて下り勾配に傾斜し、かつその傾斜方向の左右方向に中高となる請求項1に記載の穴開け種まき兼用装置。
【請求項3】
前記鞘パイプ32が、前記環状カッタ20のマルチシートMの穴開けにより出る抜きカスDをカッタ20の内周と挟み込んで保持可能な膨出部32aを有する請求項1または2に記載の穴開け種まき兼用装置。
【請求項4】
前記芯パイプ31は、その下端に円錐形の尖鋭部31dを有する請求項1から3のいずれかに記載の穴開け種まき兼用装置。
【請求項5】
前記鞘パイプ32を、前記芯パイプ31との相対的な下降位置に付勢するばね33をさらに備える請求項1から4のいずれかに記載の穴開け種まき兼用装置。
【請求項6】
前記カッタ20の環の径が、20mm〜30mmである請求項1から5のいずれかに記載の穴開け種まき兼用装置。
【請求項7】
畑の畝Rに種まきをおこなう方法であって、
上端部から投入された種子を内部通路31cを経て下端部の外周に設けられた排出口31bから排出可能な芯パイプ31と、前記芯パイプ31と独立に昇降動可能でありその芯パイプ31との相対的な下降位置で前記芯パイプ31の排出口31bを閉塞しその芯パイプ31との相対的な上昇位置で前記芯パイプ31の排出口31bを開放する鞘パイプ32と、を有する種まきパイプ30を準備するステップと、
前記芯パイプ31および鞘パイプ32を前記排出口31bが閉塞されたまま同時に下降させて前記畝Rに差し込んで凹部を形成するステップと、
前記芯パイプ31および鞘パイプ32を同時に上昇させて前記畝Rの凹部から抜き出すステップと、
前記鞘パイプ32のみを上昇させて空中で前記芯パイプ31bの排出口31bを開放し、排出された種子Sを前記畝Rの凹部に向けて落下させるステップと、を含む種まき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−167128(P2011−167128A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34597(P2010−34597)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(510046929)株式会社樋原製作所 (2)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(592202170)農事組合法人三国バイオ農場 (10)
【Fターム(参考)】