説明

空気調和機

【課題】力率改善回路の異常に起因しない過電圧が発生しても、室外ユニットは室内ユニットに異常信号を送信せず、力率改善回路異常の表示を行わない空気調和機を提供すること。
【解決手段】電圧検出手段により検出された前記直流電圧に基づいて前記力率改善用半導体スイッチを制御する制御手段を備える電源装置を有する室外ユニットと、前記電源装置に供給する交流電圧をオン/オフするメイン電源スイッチを有する室内ユニットとを備え、前記電源装置の制御手段は、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧が上限電圧以上になると、前記力率改善用半導体スイッチをオフし、前記室内ユニットに前記メイン電源スイッチをオフするように制御信号を出力するが、圧縮機停止中においては、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧が上限電圧以上となっても前記制御信号を出力させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流回路と力率改善回路を有する電源装置を用いた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は従来の空気調和機の回路ブロック図である。図3に示すように、室外ユニット200には交流電圧を直流電圧に変換するダイオードブリッジ2と、力率を改善する力率改善回路4とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
室内ユニット100には、交流電源1の一端が接続された通信部13と、交流電源1の他端が一端に接続され、他端が端子(L側端子)に接続されたパワーリレー11とを備えている。そして通信部を介して交流電源1の他端を端子(N側端子)に接続すると共に、通信部13からの通信線を端子に接続している。
【0004】
一方、室外ユニット200の電源装置は、端子(室内ユニット100のN側端子に接続)に一端が接続されたコイルと、コイルの他端に一方の交流入力端子が接続され、端子(室内ユニットのL側端子に接続)に他方の交流入力端子が接続されたダイオードブリッジ2と、ダイオードブリッジ2の直流出力端子の両端に接続された平滑コンデンサ5を備えている。
【0005】
また、電源装置は、半導体スイッチ(IGBT4b)を用いた力率改善回路4とを備えると共に、平滑コンデンサ5の両端電圧を検出する直流電圧検出部10と、直流電圧検出部10により検出された直流電圧に基づいて半導体スイッチ(IGBT4b)のオン/オフを制御する制御部8とを備えている。また、室外ユニット200は、制御部8により制御される通信部9を備えている。
【0006】
従来、空気調和機の室外ユニット200は、直流電圧検出部10が検出する電圧が一定値以上となった場合、平滑コンデンサ5に過電圧が印加されたと判断し、半導体スイッチ(IGBT4b)を停止させ、通信部9を通じて室内ユニット100に異常信号を送信する。そして、室内ユニット100は、室外ユニット200の力率改善回路4の異常と判断し、パワーリレー11を切断させることによって、交流電源1の入力を遮断させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−134826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、力率改善回路の異常に起因しない場合の過電圧に対しても室内ユニットに異常を送信し、パワーリレーを遮断してしまう。ここで力率改善回路の異常に起因しない場合の過電圧が発生する原因として、圧縮機停止時に圧縮機モータからの回生電圧が平滑コンデンサに印加され、電圧が上昇することが挙げられる。
【0009】
ところが室内ユニットは、過電圧の原因にかかわらず異常信号を受信し、力率改善回路の異常としてパワーリレーを遮断し、室内ユニット及びリモコンに表示される故障診断履歴に力率改善回路の異常として異常履歴を残す。
【0010】
そのため、サービスマンが空気調和機を点検する時は、力率改善回路異常の故障診断履歴を見て点検をするので、室外ユニット電源装置の故障と誤判断を招いてしまうという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、力率改善回路の異常に起因しない過電圧が発生しても、室外ユニットは室内ユニットに異常信号を送信せず、力率改善回路異常の表示を行わない空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の空気調和機は、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、前記整流回路から出力される直流電圧をオン動作により昇圧する力率改善用半導体スイッチと、前記整流回路から出力される直流電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧に基づいて前記力率改善用半導体スイッチを制御する制御手段を備える電源装置を有する室外ユニットと、前記電源装置に供給する交流電圧をオン/オフするメイン電源スイッチを有する室内ユニットとを備え、前記電源装置の制御手段は、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧が上限電圧以上になると、前記力率改善用半導体スイッチをオフし、前記室内ユニットに前記メイン電源スイッチをオフするように制御信号を出力するが、圧縮機停止中においては、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧が上限電圧以上となっても前記制御信号を出力させないことにより、圧縮機停止時に圧縮機モータからの回生電圧が平滑コンデンサに印加され、電圧上昇し前記上限電圧を超過しても室内ユニットに異常信号を送信せず、室外ユニットは電源遮断せず通電しつづけることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、力率改善回路の異常に起因しない過電圧が発生しても、室外ユニットは室内ユニットに異常信号を送信せず、力率改善回路異常の表示を行わない空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における空気調和機の回路ブロック図
【図2】同実施の形態1における圧縮機駆動停止前後の直流電圧の時間変動を示すグラフ
【図3】従来の空気調和機の回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明の空気調和機は、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、前記整流回路から出力される直流電圧をオン動作により昇圧する力率改善用半導体スイッチと、前記整流回路から出力される直流電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧に基づいて前記力率改善用半導体スイッチを制御する制御手段を備える電源装置を有する室外ユニットと、前記電源装置に供給する交流電圧をオン/オフするメイン電源スイッチを有する室内ユニットとを備え、前記電源装置の制御手段は、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧が上限電圧以上になると、前記力率改善用半導体スイッチをオフし、前記室内ユニットに前記メイン電源スイッチをオフするように制御信号を出力するが、圧縮機停止中においては、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧が上限電圧以上となっても前記制御信号を出力させないことにより、圧縮機停止時に圧縮機モータからの回生電圧が平滑コンデンサに印加され、電圧上昇し前記上限電圧を超過しても室内ユニットに異常信号を送信せず、室外ユニットは電源遮断せず通電しつづけることができ、室外ユニットへの通電が継続されるため、室外ユニット電源装置内の運転情報がリセットされずに済み、圧縮機の再起動時間を短縮化させることもできる。
【0016】
第2の発明の空気調和機は、前記制御手段は、圧縮機停止中において前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧が上限電圧以上となる時間が一定時間以上連続して発生した場合においては、前記制御信号を出力させることにより、正常な直流電圧印加時でも過電圧状態と誤判断し続ける故障モードが発生した場合においては、力率改善回路4の異常と判定し、室内ユニット100は力率改善回路異常の表示をし、室外ユニット200への通電を遮断することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施形態における空気調和機の回路ブロック図を示すものである。
【0019】
図2は、圧縮機駆動停止前後の直流電圧の時間変動を示すグラフである。
【0020】
図1において、室内ユニット100は、室外ユニットの電源装置に供給する交流電圧をオン/オフするパワーリレー11を有しており、制御部12によってオン/オフは制御される。また、室外ユニット200との通信を行う通信部13は制御部12に接続されている。室外ユニット200へは、L1およびL2端子で交流電圧の供給を行い、C1端子で通信信号を伝達させる。
【0021】
室外ユニット200は、L2端子及びN2端子間に発生する交流電圧をリアクタ3を介して直流電圧に変換するダイオードブリッジ2と、前記ダイオードブリッジ2と前記リアクタ3とで構成される整流回路から出力される直流電圧をオン動作により昇圧するIGBT4b及びダイオードブリッジ4aによって構成される力率改善回路4と、ダイオードブリッジ2から出力され平滑コンデンサ5により平滑化される直流電圧を検出する直流電圧検出部10と、直流電圧検出部10により検出された直流電圧に基づいて、IGBT4bのオン/オフを制御する制御部8とを備える電源装置を有している。
【0022】
制御部8は力率改善用半導体スイッチであるIGBT4bにオン/オフの指示を出す昇圧制御部8aと、直流電圧検出部10の電圧に基づいて異常判定を行う異常判定処理部8bと、圧縮機7の駆動/停止により異常判定の出力許可を判断する停止時判定処理部8cにより構成されている。また、平滑コンデンサ5に発生する直流電圧は、インバータ回路6に接続され、インバータ回路6の出力電圧が圧縮機7に接続され、圧縮機7の回転数制御が行われる。停止時判定処理部8cは、通信部9からC2端子を介しC1端子へ通信信号を伝達するようにしている。
【0023】
以上のように構成された空気調和機について、以下その動作、作用を説明する。
【0024】
まず、室外ユニット200の制御部8は、直流電圧検出部10により検出された直流電圧が上限電圧の350V以上になると、IGBT4bをオフした後、異常判定処理部8bにて力率改善回路4の異常と判断し、通信部9から通信部13を通じ力率改善回路異常信号を室内ユニット100に出力し、制御部12からパワーリレー11をオフする制御信号を出力する。
【0025】
また、室内ユニット100は力率改善回路異常信号を受信すると、力率改善回路異常を故障診断履歴として記憶し、リモコン及び本体の表示部で故障履歴として表示される。
【0026】
なお、力率改善回路4の異常信号については、圧縮機7の停止中においては、直流電圧検出部10により検出された直流電圧が350V以上となっても停止時判定処理部8cに
おいて出力させないようにしている。
【0027】
但し、直流電圧が350V以上を180秒以上継続した場合は、異常判定処理部8bにて力率改善回路4の異常と判断し、通信部9から通信部13を通じ力率改善回路異常信号を室内ユニット100に出力し、制御部12からパワーリレー11をオフする制御信号を出力する。
【0028】
この構成により、圧縮機回転数が140Hzの場合に圧縮機7を停止させた時に圧縮機モータ(図示せず)からの回生電圧が平滑コンデンサ5に印加され、図2に示すように、圧縮機7の駆動停止前の直流電圧は290Vであったが、圧縮機7の駆動停止後に最大で400Vまで電圧が上昇する。よって、直流電圧は上限電圧の350Vを超過するが、圧縮機7の停止中においては、室内ユニット100に力率改善回路異常信号を送信せず、室外ユニット200は電源遮断せず通電しつづけることができる。
【0029】
これにより、力率改善回路4の異常に起因しない圧縮機モータからの回生電圧による過電圧が発生しても、室外ユニット200は室内ユニット100に異常信号を送信せず、力率改善回路異常の表示を行わないため、空気調和機の点検時に異常の誤判定を回避することができる。
【0030】
また、室外ユニット200への通電が継続されるため、室外ユニット200の電源装置内の運転情報がリセットされずに済み、圧縮機7の再起動時間を短縮化させることもできる。
【0031】
なお、圧縮機7の停止後、圧縮機モータからの回生電圧により直流電圧は400Vまで電圧が上昇しても、通常、電源装置等への放電により、図2に示すように、10秒程度で直流電圧は上限電圧の350V未満に降圧し、その後280V程度に落ち着くが、直流電圧検出部10自体が故障した場合は、直流電圧が350V未満であったとしても、直流電圧検出部10が直流電圧を350V以上と誤検知してしまい、異常判定処理部8bが異常状態と誤判断してしまう。このような場合は、所定時間(例えば、180秒)連続で異常信号が停止時判定処理部8cに入力されたら、異常状態と判断し通信部9から通信部13を通じて、力率改善回路異常信号を室内ユニット100に出力し、制御部12からパワーリレー11をオフする制御信号を出力する。
【0032】
これにより、正常な直流電圧印加時でも過電圧状態と誤判断し続ける故障モードが発生した場合においては、力率改善回路4の異常と判定し、室内ユニット100は力率改善回路異常の表示をし、室外ユニット200への通電を遮断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかる空気調和機は、圧縮機の停止時に高い回生電圧が発生するモータを使用する製品において、力率改善回路異常の誤判断を回避できることから圧縮機を搭載しているCO2ヒートポンプ給湯機等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 交流電源
2 ダイオードブリッジ
3 リアクタ
4 力率改善回路
4a ダイオードブリッジ
4b IGBT
5 平滑コンデンサ
6 インバータ回路
7 圧縮機
8 制御部
8a 昇圧制御部
8b 異常判定処理部
8c 停止時判定処理部
9 通信部
10 直流電圧検出部
11 パワーリレー
12 制御部
13 通信部
100 室内ユニット
200 室外ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、前記整流回路から出力される直流電圧をオン動作により昇圧する力率改善用半導体スイッチと、前記整流回路から出力される直流電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧に基づいて前記力率改善用半導体スイッチを制御する制御手段を備える電源装置を有する室外ユニットと、前記電源装置に供給する交流電圧をオン/オフするメイン電源スイッチを有する室内ユニットとを備え、前記電源装置の制御手段は、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧が上限電圧以上になると、前記力率改善用半導体スイッチをオフし、前記室内ユニットに前記メイン電源スイッチをオフするように制御信号を出力するが、圧縮機停止中においては、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧が上限電圧以上となっても前記制御信号を出力させないことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記制御手段は、圧縮機停止中において前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧が上限電圧以上となる時間が一定時間以上連続して発生した場合においては、前記制御信号を出力させることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−85319(P2013−85319A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221623(P2011−221623)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】