説明

立体視画像生成方法および立体視画像生成システム

【課題】看者に自然な立体感を知覚させる立体視画像を原画像から生成することが可能な立体視画像生成方法および立体視画像生成システムを提供する。
【解決手段】各画素の特徴情報を取得する特徴情報取得ステップと、特徴情報に基づいて各画素に奥行き情報を生成する奥行き情報生成ステップと、前記奥行き情報に基づいて立体視画像を生成する立体視画像生成ステップと、を有する。この奥行き情報生成ステップでは、一対の画素間にエッジを設定し、特徴情報に基づいてエッジに重み情報を設定し、各画素の中からスタート画素を選択し、スタート画素から各画素までの重み情報を利用して経路情報を求め、この経路情報に基づいて各画素に奥行き情報を設定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視差によって画像を見る者に立体感を知覚させる立体視画像を生成する立体視画像生成方法および立体視画像生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、右眼と左眼にそれぞれ異なる画像を視認させることで観察者に立体感を知覚させる2眼視差式の立体視画像が、映画やテレビ放送等の分野で広く用いられるようになってきている。また、見る角度によって観察者が視認する画像を変化させる多眼(多視点)式の立体視画像によって観察者に立体感を知覚させる技術も、例えば裸眼立体視デバイスで用いられている。更に、これらの2眼視差式と多眼式を組み合わせた多眼視差式の立体視画像も用いられつつある。視差式の立体視画像の場合、右眼に視認させる右眼用画像および左眼に視認させる左眼用画像から構成され、両画像中の被写体の位置を人間の両眼視差に合わせてそれぞれ水平方向にシフトする(ずらす)ことにより、画像を見る者(看者)に立体感を知覚させるようにしている。
【0003】
従来、視差式の立体視画像は、2台のカメラを左右に並べて、右眼用画像および左眼用画像を同時に撮影することによって生成されるのが一般的であった。この場合、人間の両眼視差と略同様の視差を有する右眼用画像および左眼用画像を直接得ることができるため、看者に違和感を持たせることのない自然な立体視画像を生成することができる。
【0004】
しかしながら、このように2台のカメラによって右眼用画像および左眼用画像を撮影する手法では、全く同仕様の2台のカメラを正確に位置決めして配置すると共に、両者を完全に同期させた状態で撮影を行う必要がある。このため、撮影の際には専門スタッフと共に特殊な専用機器を多数揃える必要があり、撮影コストが増大するだけではなく、カメラその他の各種機器の設定や調整に多大な時間を要するという問題があった。
【0005】
また従来の多眼式の立体視画像は、多くの視点にカメラを並べて、多視点の画像を同時に撮影することによって生成されるのが一般的であった。しかしながら、このように複数台のカメラによって多視点の画像を撮影する手法では、全く同仕様の複数台のカメラを正確に位置決めして配置すると共に、すべてを完全に同期させた状態で撮影を行う必要があという問題があった。
【0006】
ましてや、多眼視差式の立体視映像となると、様々な視点に対して、2台ずつカメラを配置して、視差を含んだ映像を撮影する必要がある。従って、極めて特異な目的が無い限り、一般的に普及するにはほど遠い状況となっている。
【0007】
これに対し、1台のカメラによって通常どおりに撮影された画像に画像処理を施すことで、2眼視差式の右眼用画像および左眼用画像を生成する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この手法では、まず原画像を構成する各画素に奥行き情報(奥行き値)を設定し、この奥行き情報に応じて各画素の水平方向の位置を変更することにより、両画像中の被写体の位置を両眼視差に合わせてシフトした右眼用画像および左眼用画像を生成するようになっている。
【0008】
この手法によれば、一般的なカメラによって撮影した通常の原画像から立体視画像を生成することが可能であるため、撮影コストを低減し、撮影時間を短縮することができる。また、既存の映画等のコンテンツから立体視画像を生成したり、一般的なテレビ放送を立体視画像に変換してテレビ画面に表示させたりすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−123842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、通常の原画像から立体視画像を生成する従来の手法では、一般的に原画像を構成する各画素の色相、彩度または明度(上記特許文献1では、彩度)の値をそのまま各画素の奥行き情報としているため、例えば被写体である人物等と背景の境界においては奥行き情報の値が大きく変化することとなり、奥行きの断絶(不連続)が生じるという問題があった。
【0011】
このような奥行きの断絶が生じている場合、人物等と背景の間の遠近のみが強調されて人物等が平面的に感じられる、いわゆる描き割り効果等の不自然な立体感として知覚されることとなる。また、右眼用画像および左眼用画像において各画素の位置を変更する際に、人物等に含まれる画素と背景に含まれる画素の移動量が大きく異なることから、原画像において人物等に遮蔽されていた背景に大きなギャップ(欠損)が生じることとなる。
【0012】
従来の手法においては、このようなギャップを回避するために、境界部分に対するぼかし処理や、人物等または背景の画像を拡大または変形させる処理を施すようにしたものもあるが、このような処理は、立体視画像の画質を劣化させるだけでなく、却って看者に違和感を与える場合があった。また、これらのぼかし処理や、拡大変形処理には、ソフトウエア上で立体視画像を加工するオペレータの作業負担を増大させるという問題があった。従って、多眼式や多眼視差式の立体視画像を、原画像から立体視画像を生成しようとすると、オペレータの加工作業が膨大となってしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑み、看者に自然な立体感を知覚させる立体視画像を原画像から生成することが可能な立体視画像生成方法および立体視画像生成システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明は、原画像を構成する各画素の特徴情報を取得する特徴情報取得ステップと、前記特徴情報に基づいて前記各画素に奥行き情報を生成する奥行き情報生成ステップと、前記奥行き情報に基づいて前記各画素の位置を変更した立体視画像を生成する立体視画像生成ステップと、を有し、前記奥行き情報生成ステップは、前記原画像から抽出された一対の前記画素の間にエッジを設定するエッジ設定ステップと、前記特徴情報に基づいて前記エッジに重み情報を設定する重み情報設定ステップと、前記各画素の中からスタート画素を選択するスタート画素選択ステップと、前記スタート画素から前記各画素までの前記重み情報についての経路を算出し、前記各画素に経路情報を設定する経路情報設定ステップと、前記経路情報に基づいて前記各画素に前記奥行き情報を設定する奥行き確定ステップと、を有することを特徴とする、立体視画像生成方法である。
【0015】
上記目的を達成する立体視画像生成方法において、上記発明の前記スタート画素選択ステップでは、前記原画像における最奥部を示す領域、または最前部を示す領域に含まれる前記画素を前記スタート画素に選択することを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成する立体視画像生成方法において、上記発明の前記スタート画素選択ステップでは、前記スタート画素を複数選択することを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成する立体視画像生成方法において、上記発明の前記経路情報設定ステップでは、前記複数のスタート画素ごとに前記経路を算出して前記各画素に複数の前記経路情報を設定し、前記奥行き確定ステップでは、前記各画素に設定された前記複数の経路情報の中から1つを選択するか、又は、前記複数の経路情報を合成するかによって、前記複数の経路情報に基づいて前記奥行き情報を設定することを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成する立体視画像生成方法において、上記発明の前記スタート画素選択ステップでは、前記原画像中の所定の領域に含まれる複数の前記画素をまとめて一つの前記スタート画素に選択することを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成する立体視画像生成方法において、上記発明は、前記原画像を複数の領域に区分する領域区分ステップをさらに備え、前記スタート画素選択ステップでは、前記複数の領域ごとに前記スタート画素を選択し、前記経路情報設定ステップでは、前記複数の領域ごとに前記経路を算出し、前記各画素に前記経路情報を設定することを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成する立体視画像生成方法において、上記発明の前記領域区分ステップでは、前記原画像に含まれる被写体ごとに前記原画像を前記複数の領域に区分することを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成する本発明は、電子計算機によって構成され、原画像を構成する各画素の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、前記特徴情報に基づいて前記各画素に奥行き情報を生成する奥行き情報生成手段と、前記奥行き情報に基づいて前記各画素の位置を変更した立体視画像を生成する立体視画像生成手段と、を有し、前記奥行き情報生成手段は、前記原画像から抽出された一対の前記画素の間にエッジを設定するエッジ設定手段と、前記特徴情報に基づいて前記エッジに重み情報を設定する重み情報設定手段と、前記各画素の中からスタート画素を選択するスタート画素選択手段と、前記スタート画素から前記各画素までの前記重み情報についての経路を算出し、前記各画素に経路情報を設定する経路情報設定手段と、前記経路情報に基づいて前記各画素に前記奥行き情報を設定する奥行き確定手段と、を有することを特徴とする、立体視画像生成システムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、看者に自然な立体感を知覚させる立体視画像を原画像から略自動的に生成することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る立体視画像生成システムのハードウエア構成を示すブロック図である。
【図2】同立体視画像生成システムのプログラム構成及び機能構成を示すブロック図である。
【図3】同立体視画像生成システムによる立体視画像生成の流れを示すブロック図である。
【図4】同立体視画像生成システムにおけるデプスマップの生成概念を示す図である。
【図5】同立体視画像生成システムにおける最短経路情報を算出する例を示す図である。
【図6】同立体視画像生成システムによる立体視画像生成手順を示すフローチャートである。
【図7】同立体視画像生成システムによるデプスマップの生成事例を示す(A)原画像、及び(B)デプスマップ画像である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る立体視画像生成システムの機能構成を示すブロック図である。
【図9】同立体視画像生成システムによる立体視画像生成の流れを示すブロック図である。
【図10】同立体視画像生成システムの他の例による立体視画像生成の流れを示すブロック図である。
【図11】同立体視画像生成システムの他の例による立体視画像生成の流れを示すブロック図である。
【図12】同立体視画像生成システムの他の例に係る機能構成を示すブロック図である。
【図13】同立体視画像生成システムの他の例による立体視画像生成の流れを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1には、第1実施形態に係る立体視画像生成システム1を構成するコンピュータ10の内部構成が示されている。このコンピュータ10は、CPU12、第1記憶媒体14、第2記憶媒体16、第3記憶媒体18、入力装置20、表示装置22、入出力インタフェース24、バス26を備えて構成される。CPU12はいわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されてこの立体視画像生成システム1の各種機能を実現する。第1記憶媒体14はいわゆるRAM(ランダム・アクセス・メモリ)であり、CPU12の作業領域として使用されるメモリである。第2記憶媒体16はいわゆるROM(リード・オンリー・メモリ)であり、CPU12で実行される基本的なプログラムを記憶するためのメモリである。第3記憶媒体18は、磁気ディスクを内蔵したハードディスク装置、CDやDVDやBDを収容するディスク装置、不揮発性の半導体フラッシュメモリ装置などで構成されており、この立体視画像生成システム1の全体的な基本動作を実現するOS(オペレーティングシステム)プログラムや、立体視画像を生成する際にCPU12で実行される立体視画像生成プログラムや、この立体視画像生成プログラムで利用されるデプスマップや立体視画像などの各種データなどを記憶する。入力装置20はキーボードやマウスであり、作業者によって立体視画像生成システム1に適宜情報を入力する装置である。表示装置22はディスプレイであって、作業者に対して視覚的なインタフェースを提供する。入出力インタフェース24は、立体視画像生成プログラムで必要となる原画像データを入力したり、同立体視画像生成プログラムで生成されたデプスマップや立体視画像を外部に出力したりするためのインタフェースである。バス26は、CPU12、第1記憶媒体14、第2記憶媒体16、第3記憶媒体18、入力装置20、表示装置22、入出力インタフェース24などを一体的に接続して通信を行うための配線となる。
【0026】
図2には、第3記憶媒体18に記憶されている立体視画像生成プログラムのプログラム構成と、この立体視画像生成プログラムがCPU12で実行されることにより実現されることによって立体視画像生成システム1が実現する機能構成が示されている。また、図3〜図5には、この立体視画像生成システム1によって実行される立体視画像生成手法が概念的に示されている。なお、この立体視画像生成システム1では、立体視画像生成プログラムの構成とその機能構成は対応関係にあることから、ここでは立体視画像生成システム1の機能構成の説明を行うことで、プログラムの説明は省略する。
【0027】
この立体視画像生成システム1は、特徴情報取得プログラムによって実現される特徴情報取得部140、奥行き情報生成プログラムによって実現される奥行き情報生成部160、立体視画像生成プログラムによって実現される立体視画像生成部180を備えて構成される。
【0028】
特徴情報取得部140は、原画像200を構成する各画素204の特徴情報240を取得する。この特徴情報240は、例えば、各画素204の色相、明度、彩度、色空間などのように、各画素204が単独で有している特徴的な情報の他、対象画素204の周囲の画素204の関係から導かれる特徴的な情報や、複数フレームを有する動画の場合は、各画素204の時間的な変化(前後のフレームの同じ位置の画素との関係)から導かれる特徴的な情報などを利用することも可能である。
【0029】
奥行き情報生成部160は、各画素204で取得される特徴情報240に基づいて、各画素204に奥行き情報270が設定されたデプスマップ260を生成する。
【0030】
具体的に、この奥行き情報生成部160は、更に詳細に、エッジ設定部162、重み情報設定部164、スタート画素選択部166、経路情報設定部168、奥行き確定部170を備える。
【0031】
図4に示されるように、エッジ設定部162は、原画像200から抽出される一対の画素204間にエッジ262を設定する。このエッジ262とは、概念として、一対の画素204間を結ぶ線又は両者を結ぶ経路を意味している。グラフ理論で考えると、一対の画素204が節点又は頂点となり、エッジ262が枝又は辺となる。本実施形態は、各画素204に対して、上下左右に隣接する合計4つの画素204に対するエッジ262を設定する。なお、本発明は、各画素204から上下左右に隣接する画素204に対してエッジ262を設定する場合に限定されるものではなく、右斜め上、左斜め上、右斜め下、左斜め下の隣接する画素204に対してエッジ262を設定したり、これらと上下左右を組み合わせた合計8画素204に対してエッジ262を設定することもできる。また、必ずしも隣り合う画素204間にエッジ262を設定する場合に限られず、途中の画素を飛ばすことで一定の距離を有する一対の画素204、即ち、間引き作業を行った画素204に対してエッジ262を設定することも可能である。勿論、飛び地のように遠く離れた場所にある一対の画素204の間にエッジ262を設定することも可能である。
【0032】
重み情報設定部164は、エッジ262を結ぶ一対の特徴情報240に基づいて、このエッジ262に重み情報264を設定する。この重み情報264は、本実施形態ではエッジ262間を結ぶ一対の画素204の特徴情報240の差を利用する。差が大きいほど重み情報264が大きくなり、差が小さい程、重み情報264が小さくなる。なお、この重み情報264は、エッジ262両端の一対の特徴情報240の「差」に限定されるものではなく、この一対の特徴情報240を利用して重み情報を算出する各種関数などを利用して、重み情報264を設定することも可能である。
【0033】
スタート画素選択部166は、原画像200における各画素204の中から、スタート画素266を選択する。このスタート画素266は、後述する最短経路情報268を設定する際のスタート地点となる。このスタート画素266は、画像200の中から自由に選択することが可能であるが、例えば図3に示されるように、原画像200において最も奥側に位置する領域200Aの中に存在する画素群、又は、最も前側に位置する領域200Bの中に存在する画素群から選択することが好ましい。なお、詳細は第2実施形態で詳述するが、原画像200から複数のスタート画素266を選択することも可能である。また更に、図3に示されるように、原画像200における所定の領域200Cに含まれる全ての画素204を、まとめて一つのスタート画素266として領域選択することも可能である。
【0034】
なお本実施形態では、原画像200における最も奥側の領域200Aの中から一つの画素をスタート画素266として選択する。
【0035】
経路情報設定部168は、原画像200において、スタート画素266から各画素204までの経路(エッジ262)の重み情報264を利用して、その最短経路を算出し、これらの各画素204に最短経路情報268を設定する。この具体的な例を図5を利用して説明する。
【0036】
説明を簡略化するために、ここでは原画像200が3行×3列の9つの画素204A〜204Iから構成されると仮定し、左上の画素204Aが、最も奥側に位置する画素であることから、スタート画素266として設定する場合を考える。画素204A〜204I間を結合する12個のエッジ262(1)〜262(12)には、各画素204A〜204Iが保有する特徴情報(図示省略)の相対差を利用して、1〜10までの重み情報264が予め設定されている。ここで中央上段の画素204Dの経路を考えると、スタート画素204Aと画素204Dを結ぶ経路として、例えば、スタート画素204Aと画素204Dを直接結ぶエッジ262(3)のみの第1経路R1と、スタート画素204A、画素204B、画素204E、画素204Dを結ぶ3つのエッジ262(1)、262(4)、262(6)からなる第2経路R2を有している。第1経路R1の重み情報264の総和は「1」、第2経路R2の重み情報264の総和は、3+2+5の「10」となる。このように、スタート画素204Aと画素204Dの間において取り得る全経路について同様に重み情報264の総和を算出し、最も小さい値となるのが最短経路である。ここでは、上記第1経路R1が最短経路となり、結果、この画素204Dには、最短経路情報268として、最短経路上の重み情報264の総和である「1」が設定される。
【0037】
経路情報設定部168は、各画素204A〜204Iまでの全てに対して、上記手法によって最短経路情報268を設定する。結果として、画素204Aは「0」、画素204Bは「3」、画素204Cは「11」、画素204Dは「1」、画素204Eは「5」、画素204Fは「10」、画素204Gは「5」、画素204Hは「12」、画素204Iは「12」の最短経路情報268が設定される。
【0038】
奥行き確定部170は、最短経路情報268に基づいて各画素204に奥行き情報270を設定する。なお、本実施形態では、奥行き確定部170は、この最短経路情報268を奥行き情報270としてそのまま用いる。この各画素204に設定される奥行き情報270を視覚的にマップ化したものがデプスマップ260となる。
【0039】
なお、必要に応じてこの最短経路情報268を補正した値を、奥行き情報270として用いることも可能である。例えば、原画像200が野外の風景を写した画像であるか、屋内空間を写した画像であるかによって異なる補正用関数を用意しておき、この最短経路情報268に対して、原画像200の内容に応じて選択された補正関数を適用して、奥行き情報270を算出することも可能である。
【0040】
立体視画像生成部180は、デプスマップ260に基づいて、各画素204の位置を変更した右眼用画像280Aおよび左眼用画像280Bから構成される立体視画像280を生成する。具体的には、デプスマップ260の奥行き情報270を利用して、奥側に位置する画素204に関しては水平方向の変位量(シフト量)を小さくし、手前側に位置する画素204に関しては水平方向の変位量を大きくして、視差を含んだ右眼用画像280Aおよび左眼用画像280Bを生成する。結果、画像を見る者(看者)の右眼に、右眼用画像280Aを見せると共に、左眼に左眼用画像280Bを見せることで、これに含まれる視差が脳内で処理されて立体感を知覚する。
【0041】
次に図6を参照して、立体視画像生成システム1による立体視画像の生成手順を説明する。
【0042】
まず、ステップ300において、立体視画像生成システム1の入出力インタフェース24を介して、複数の原画像(フレーム)200によって構成される動画像を第3記憶媒体18に登録する。その後、ステップ302では、特徴情報処理部140が、この動画像から最初の原画像(フレーム)200を抽出して、これを構成する各画素204の特徴情報240を取得する(特徴情報取得ステップ)。
【0043】
次いで、ステップ310では、この特徴情報240に基づいて各画素204に奥行き情報270を設定したデプスマップ260を生成する(奥行き情報生成ステップ)。この奥行き情報生成ステップ310は、詳細にステップ312〜ステップ320に分かれる。
【0044】
まず、ステップ312では、接近する2つの画素204間にエッジ262を設定する(エッジ設定ステップ)。その後、ステップ314では、各画素204に設定済みの特徴情報240に基づいて、エッジ262に重み情報264を設定する(重み情報設定ステップ)。次に、ステップ316では、各画素204の中からスタート画素266を選択し(スタート画素選択ステップ)、更に、ステップ318に進んで、スタート画素266から各画素204までの経路上の重み情報264の累積値が最小となるような最短経路を算出し、最短経路が算出された各画素204に対して、重み情報264の最小の累積値となる最短経路情報268を設定する(経路情報設定ステップ)。その後、ステップ320では、最短経路情報268を利用して、各画素204に奥行き情報270を設定し、この奥行き情報270を集合化して画素群に対するデプスマップ260を生成する(奥行き確定ステップ)。
【0045】
以上の奥行き情報生成ステップ310が完了したら、次に、ステップ330に進んで、確定した奥行き情報270(デプスマップ260)に基づいて各画素204の位置をシフトさせた右眼用画像280Aおよび左眼用画像280Bからなる立体視画像を生成する(立体視画像生成ステップ)。
【0046】
なお、ここでは奥行き情報270を集合化してデプスマップ260を生成し、このデプスマップ260を利用して立体視画像280を生成する場合を例示しているが、本発明はこれに限定されない。デプスマップ化することなく、奥行き情報270をそのまま利用して立体視画像280を生成することが可能である。また、原画像200単位で全ての奥行き情報270が生成されるまで立体視画像生成ステップ330を待機させる必要は無く、画素204単位で設定される奥行き情報270を、逐次、立体視画像生成ステップ330に適用していき、画素204単位で立体視画像280を順次生成していくことも可能である。勿論、本実施形態で示すように、必要に応じて奥行き情報270をデプスマップ260によって画像化又は可視化することも好ましく、本立体視画像生成システム1のオペレータが奥行き情報270の設定状況を視覚的に確認する際に便利である。
【0047】
原画像200から立体視画像280の生成が完了したら、ステップ340に進んで、今回の原画像200が動画像の中で最後のフレームか否かを判断し、最後のフレームで無い場合は、ステップ302に戻って、次の原画像(フレーム)200を抽出して、上記と同じステップを繰り返す。一方、立体視画像280を生成した原画像200が動画中の最後のフレームとなる場合は、この立体視画像生成手順を終了させる。
【0048】
以上、本実施形態の立体視画像生成システム1によれば、立体視画像280を生成する際の立体感の根拠となる奥行き情報270を、複数の画素204間の最短経路に沿った重み情報264の累積値から算出される最短経路情報268を利用して生成する。この結果、エッジ262によって結ばれている画素204の集合に関して、この奥行き情報270に連続性を持たせることが可能となる。この奥行き情報270を利用して生成される立体視画像280に対して、自然な奥行き感を付与されることになる。とりわけ、従来のように、前面側の人物と奥側の背景の境界において、奥行き情報が極端に変化することで生じる立体視画像内の断絶(不連続)現象を抑制することが可能となり、看者にとって違和感の少ない立体感を立体視画像280に付与出来る。更に、この断絶現象が抑制されることに伴って、生成後の立体視画像280に対してギャップの発生を抑えることが可能となり、ギャップを埋めるための画像補整(ぼかしや画像変形)も低減され、画像品質の劣化が抑制される。
【0049】
更にこの立体視画像生成システム1では、原画像200における最奥部を示す領域200A、または最前部を示す領域200Bの中からスタート画素266を選択している。このスタート画素266は、他の画素204の最短経路情報268を算出する際の基準点(ゼロ点)となる。このスタート画素266を最奥又は最前の画素204から選択することで、違和感のないデプスマップ260を生成することができる。なお、このスタート画素266の選択は、表示装置(ディスプレイ)22に原画像200を表示させて、立体視画像生成システム1のオペレータに対して最奥又は最前と考えられるスタート画素266の選択を促すようにしても良い。また、立体視画像生成システム1が原画像200を解析することによって、最奥又は最前であろう領域200A、200Bを推測し、その中から自動的にスタート画素266を選択するようにしても良い。
【0050】
以上の結果、殆ど自動的に全ての奥行き情報270を算出することができるので、立体視画像生成システム1のオペレータの作業負担が大幅に軽減される。なお、従来のシステムでは、立体視画像を確認しながら、想定される代表的なシーン(山岳地帯、海、部屋、街頭など)に対応した複数のテンプレートから最適なテンプレートを選択して、デプスマップ260に補正を加えるような複雑な作業が要求されている。
【0051】
なお、本第1実施形態では、スタート画素選択ステップ316において、スタート画素266として1つの画素を選択する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図3で例示したように、原画像200中の所定の領域200Cに含まれる複数の画素204を、一つのスタート画素266として選択することもできる。即ち、最短経路手法で考えると、これらの領域に含まれる全画素204のエッジの重み情報と最短経路情報を予めゼロ又は固定値(基準値)に設定することを意味している。このようにすることで、この領域内に映像的なノイズが含まれている場合であっても、ノイズの影響をカットすることが可能となる。また、雲一つ無い晴天の空のように、奥行き感に差を付ける必要が無い領域の計算を省略することができるので、最短経路を算出する情報処理時間を大幅に削減することができる。また、ここではスタート画素266を一定の領域で指定する場合に限って示したが、スタート画素以外の他の画素についても、一定の領域として一体化することが可能である。例えばこの領域設定は、複数の隣接する画素で構成される一定の面積範囲の奥行き情報を共通化しても良いようなシンプルな被写体に好適である。この場合、一体化される領域では、これらの画素群を仮想的に1画素と見なすようにオペレータが領域指示を加える。結果、最短経路を算出する情報処理時間を大幅に削減することができる。
【実施例1】
【0052】
本実施形態の立体視画像生成システム1を利用して、静止画となる原画像200を利用して奥行き情報270を算出し、これを実験的に視覚化する目的でデプスマップ260を生成した結果を図7に示す。図7(A)の原画像200は、青空であって両側に木々が並んでいる広場に、女性が立っているシーンとなっている。なお、スタート画素266は、最も奥側となる青空の領域の1つの画素から選択した。図7(B)のデプスマップ260は、奥行き情報270の最小値(スタート画素266の「0」が最小値)が黒色で示されると共に、奥行き情報270の最大値が白で示されるようなグレースケール画像で視覚的に表現した。この立体視画像生成システム1で生成されたデプスマップ260は、遠い青空の周囲は黒色で表現され、両脇に並んでいる木々も、奥側が灰色で、手前側が白色となるように表現されている。また、中央にいる女性も、輪郭部分がグレーで、中心部分が白色に近づくように表現され、女性の立体感を含めて、繊細な奥行き感が表現されていることが分かる。また、本来、大きな距離差を有している青空と女性の頭部の境界であっても、グレースケールに関して極端に大きな差が生じていないことが分かる。結果、従来のように、奥行き情報が極端に変化することで生じる立体視画像内の断絶(不連続)現象も抑制されることが分かる。また、原画像200とデプスマップ260を比較すれば分かるように、グレースケールの濃淡と、実際の遠近感が極めて正確に表現されていることも分かる。
【0053】
次に、図8を参照して本発明の第2実施形態に係る立体視画像生成システム401を説明する。なお、第1実施形態の立体視画像生成システムと同一又は類似する部分については、名称及び符号を一致させることでここでの説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0054】
この立体視画像生成システム401は、特徴情報取得部140、奥行き情報生成部160、立体視画像生成部180に加えて、領域区分プログラムによって実現される領域区分部110を備えて構成される。
【0055】
この領域区分部110は、図9に示されるように、原画像200を複数の領域202に区分する。また、奥行き情報生成部160は、特徴情報240に基づいて各画素204に奥行き情報270を、複数の領域202A〜202Eごとに個別に生成して、領域202A〜202Eに対応した個別デプスマップ265を生成する。また、立体視画像生成部180は、複数の領域202A〜202Eごとに生成された複数の個別デプスマップ265A〜265Eに基づいて、各画素204の位置を変更した立体視画像280(右眼用画像280Aおよび左眼用画像280B)を生成する。
【0056】
特に本実施形態では、立体視画像生成部180が奥行き情報合成部186を備えるようにする。この奥行き情報合成部186は、奥行き情報生成部160によって領域202A〜202E毎に生成される複数の個別デプスマップ265A〜265Eを合成して、一つの結合デプスマップ267を生成する。結果、オペレータは、この結合デプスマップ267を利用して全体的な立体感を視覚的に確認することができる。立体視画像生成部180は、この結合デプスマップ267を利用して、右眼用画像280Aおよび左眼用画像280Bを生成することになる。なお、既に説明したように、オペレータが結合デプスマップ267を必要としない場合は、この奥行き情報合成部186を用いなくても良い。即ち、奥行き情報生成部160において領域202A〜202E毎に設定される奥行き情報270を、立体視画像生成部180が画素204単位で適用して立体視映像280を生成しても良い。
【0057】
より具体的に、領域区分部110が複数の領域202A〜202Eに原画像200を区分する際、スタート画素選択部166では、複数の領域202A〜202Eごとにスタート画素266A〜266Eを選択する。結果、経路情報設定部168では、複数の領域266A〜266Eごとに最短経路を算出し、この領域202A〜202E内の各画素204に対して最短経路情報268を設定する。特にこの第2実施形態では、領域区分部110が、原画像200に含まれる被写体を主要単位として複数の領域202A〜202Eに区分している。
【0058】
この結果、原画像200に設定された領域202A〜202E毎に独立して奥行き情報270を算出できる。例えば、原画像200の中に、立体的な観点で完全に独立した建築物や人物が部分的に存在しており、この建築物や人物とその他の領域の間で明らかに立体的な連続性を確保すべきでない場合、この建築物等を領域202A〜202Eで区分することで、奥行き情報270を独自に設定する。結果、領域202A〜202E単位で考えると、スタート画素266A〜266Eからの最短経路手法によって奥行き情報270が算出されるので、領域202A〜202E内では連続的で繊細な奥行き情報270が得られる。
【0059】
なお、このように領域202A〜202E毎にスタート画素266A〜266Eを設定する場合、各スタート画素266A〜266Eは、最短経路情報268が「ゼロ」となる。従って、これをそのまま奥行き情報270として採用すると、複数の個別デプスマップ265間で相対的な奥行き感がずれてしまう可能性がある。従って、奥行き確定部170では、個別デプスマップ265A〜265E毎に、最短経路情報268を全体的に補正してから奥行き情報270を確定することが好ましい。例えば、背景側の第1領域202Aの第1個別デプスマップ265Aと比較して、前面側の第2領域202Bの第2個別デプスマップ265Bの全画素204には、最短経路情報268に対して一定の前側シフト用の補正値を付加してから、これを奥行き情報270とする。このように、個別デプスマップ265A〜265E単位で奥行き感を補正することで、領域202A〜202E内では繊細且つ滑らかな立体感を出しつつ、複数の個別デプスマップ265A〜265E同士では、クッキリとした鮮明な立体感を付与することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、原画像200を複数の領域202A〜202Eに区分けし、この領域202A〜202Eの範囲内でスタート画素266A〜266Eを選択する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。
【0061】
例えば図10に示されるように、スタート画素選択部166では、原画像200を領域に区分するか否かに依存することなく、原画像200の全体からスタート画素266A〜266Dを複数選択し、経路情報設定部168では、原画像200の全画素204を対象に、この複数のスタート画素266A〜266Dごとに最短経路を算出して、各画素に複数の最短経路情報268A〜268Dを設定することができる。
【0062】
奥行き確定部170では、各画素204に設定される複数の最短経路情報268の中から、いずれか一つの最短経路情報268A〜268Dを選択して、奥行き情報270を確定する。また、奥行き確定部170は、各画素204に設定される複数の最短経路情報268A〜268Dを利用して奥行き情報270を確定することもできる。この複数の最短経路情報268A〜268Dから一つの最短経路情報を選択したり、複数の最短経路情報268A〜268Dを利用したりする判断は、原画像200の全体で行っても良く、また画素204単位で行っても良い。画素204を複数の領域に区分する場合は、その領域単位で行うことも望ましい。
【0063】
この手法を図11を参照して別の観点から説明する。奥行き情報生成部160は、各スタート画素266A〜266Dに対応した仮デプスマップ263A〜263Dを複数生成する。そして、奥行き確定部170は、スタート画素266単位で複数生成された仮デプスマップ263A〜263Dの中からどれか一つを用いるか、又は、仮デプスマップ263A〜263Dからいずれか複数を重ねて用いるかを判定する。この際、原画像200を複数の領域202A〜202Dに区分している場合は、この領域202A〜202D単位で判断すれば、領域202A〜202Dに対応した個別デプスマップ265A〜265Dが生成される。この個別デプスマップ265A〜265Dを合成して結合デプスマップ267を得る。
【0064】
以上のようにすると、奥行き情報270を確定する際の選択肢を増やすことができる。この選択肢とは、本実施形態ではスタート画素266A〜266Dを意味している。特にここでは、領域202A〜202Dの範囲の外側を含めた広範囲からスタート画素266A〜266Dを選択している。例えば、原画像200の左側に位置する第1領域202Aでは、原画像200の右側端のスタート画素266Aを基準に算出した最短経路情報268A(仮デプスマップ263A)を適用できる。原画像200の右側に位置する第2領域202Bでは、原画像200の左側端のスタート画素266Bを基準に算出した最短経路情報268B(仮デプスマップ263B)を適用できる。また例えば、原画像200の手前側に位置する第3領域202Cでは、原画像200の奥側のスタート画素266Cを基準に算出した最短経路情報268C(仮デプスマップ263C)を適用できる。更に、原画像200の奥側に位置する第4領域202Dでは、原画像200の手前側のスタート画素266Dを基準に算出した最短経路情報268D(仮デプスマップ263D)を適用できる。
【0065】
既に説明したように、例えば、これらの最短経路情報268A〜268D(仮デプスマップ263A〜263D)から複数を選択し、これらを利用して、奥行き情報270(結合デプスマップ267)を確定することも好ましい。このようにすると、最短経路情報268A〜268D(仮デプスマップ263A〜263D)の各々では、正確な奥行き情報が得られないエラー部分を含有していても、他の最短経路情報268A〜268D(仮デプスマップ263A〜263D)で正確な奥行き情報が得られていれば、一緒に利用することで、そのエラー部分を自動的に補うことが可能となり、より一層滑らかな奥行き情報270(結合デプスマップ267)を得ることが可能となる。なお、複数の最短経路情報268A〜268Dを利用して奥行き情報270を確定する際は、これらの総和や平均値など、各種計算手法を適用することができる。
【0066】
以上の第2実施形態では、個別デプスマップ265を合成して結合デプスマップ267を生成してから、立体視画像280(右眼用画像280Aおよび左眼用画像280B)を生成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図12及び図13に示される立体視画像生成システム501のように、立体視画像生成部180は、個別画像生成部182と立体視画像合成部184を備えるようにする。この個別画像生成部182は、個別デプスマップ265A〜265Dに基づいて、画素の位置を変更した個別立体視画像282A〜282D(右眼用個別画像および左眼用個別画像)を領域202A〜202D毎に生成する。個別立体視画像282A〜282Dの生成を、全ての原画像200(動画における全フレーム)に適用していくことで、個別立体視画像282A〜282Dの完成具合をオペレータが領域202A〜202D単位で確認する。その後、立体視画像合成部184は、これら個別立体視画像282A〜282Dを合成して立体視画像280(右眼用画像280A及び左眼用画像280B)を生成する。
【0067】
立体視画像生成システム501による個別立体視画像282A〜282Dの生成時間は、全体の立体視画像280を生成する時間と比較して大幅に短縮できる。従って、オペレータは、領域202A〜202D単位で立体感を効率的に確認しながら作業を進めることができる。即ち、領域202A〜202D単位で立体感を詳細に調整・確認して個別立体視画像282A〜282Dの完成度を高めてから、この個別立体視画像282A〜282Dを合成して、最終的な立体視画像280(右眼用画像280A、左眼用画像280B)を生成するので、より違和感の少ない立体視画像280を得ることが出来る。
【0068】
以上、この第2実施形態によれば、奥行き感を算出する基準値となるスタート画素266を複数選択しているので、これらを自由に組み合わせて用いることにより、原画像200のシーンに合わせてより柔軟に奥行き情報270を確定することが可能となる。特に、原画像200を複数の領域202A〜202Dに区分した上で、各領域202A〜202Dにとって最適なスタート画素266A〜266Dを選択しているので、より自然な立体感を演出することが可能となる。
【0069】
なお、上記実施形態では、経路情報設定ステップ318において、スタート画素266から各画素204までの経路上の重み情報264の累積値が最小となるような最短経路を算出する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、プリム法などを利用して、全画素204を含む辺の部分集合で構成される経路のうち、その辺の集合の重みの総和が最小となるような経路を求めるようにしてもよい。即ち、本発明では、画素間の各種経路を利用して何らかの重み値を特定できれば、そのアルゴリズムの種類は問わない。
【0070】
また上記実施形態では、右眼用画像と左眼用画像の2眼視差式の立体視画像を生成する場合に限って例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、この奥行き情報を利用して多眼式の立体視映像を生成するようにしても良く、更には、多眼視差式の立体視映像を生成することも可能である。即ち、本発明では、奥行き情報を利用した立体視映像であれば、その種類は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の立体視画像生成方法および立体視画像生成システムは、映画やテレビ番組等の製作の分野以外にも、通常画像を立体視画像に変換して表示するテレビやゲーム機等の各種機器の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1、401、501 立体視画像生成システム
110 領域区分部
140 特徴情報取得部
160 奥行き情報生成部
162 エッジ設定部
164 重み情報設定部
166 スタート画素選択部
168 経路情報設定部
170 奥行き確定部
180 立体視画像生成部
200 原画像
204 画素
260 デプスマップ
280 立体視画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像を構成する各画素の特徴情報を取得する特徴情報取得ステップと、
前記特徴情報に基づいて前記各画素に奥行き情報を生成する奥行き情報生成ステップと、
前記奥行き情報に基づいて前記各画素の位置を変更した立体視画像を生成する立体視画像生成ステップと、を有し、
前記奥行き情報生成ステップは、
前記原画像から抽出された一対の前記画素の間にエッジを設定するエッジ設定ステップと、
前記特徴情報に基づいて前記エッジに重み情報を設定する重み情報設定ステップと、
前記各画素の中からスタート画素を選択するスタート画素選択ステップと、
前記スタート画素から前記各画素までの前記重み情報についての経路を算出し、前記各画素に経路情報を設定する経路情報設定ステップと、
前記経路情報に基づいて前記各画素に前記奥行き情報を設定する奥行き確定ステップと、を有することを特徴とする、
立体視画像生成方法。
【請求項2】
前記スタート画素選択ステップでは、前記原画像における最奥部を示す領域、または最前部を示す領域に含まれる前記画素を前記スタート画素に選択することを特徴とする、
請求項1に記載の立体視画像生成方法。
【請求項3】
前記スタート画素選択ステップでは、前記スタート画素を複数選択することを特徴とする、
請求項1または2に記載の立体視画像生成方法。
【請求項4】
前記経路情報設定ステップでは、前記複数のスタート画素ごとに前記経路を算出して前記各画素に複数の前記経路情報を設定し、
前記奥行き確定ステップでは、前記各画素に設定された前記複数の経路情報の中から1つを選択するか、又は、前記複数の経路情報を合成するかによって、前記複数の経路情報に基づいて前記奥行き情報を設定することを特徴とする、
請求項3に記載の立体視画像生成方法。
【請求項5】
前記スタート画素選択ステップでは、前記原画像中の所定の領域に含まれる複数の前記画素をまとめて一つの前記スタート画素に選択することを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の立体視画像生成方法。
【請求項6】
前記原画像を複数の領域に区分する領域区分ステップをさらに備え、
前記スタート画素選択ステップでは、前記複数の領域ごとに前記スタート画素を選択し、
前記経路情報設定ステップでは、前記複数の領域ごとに前記経路を算出し、前記各画素に前記経路情報を設定することを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の立体視画像生成方法。
【請求項7】
前記領域区分ステップでは、前記原画像に含まれる被写体ごとに前記原画像を前記複数の領域に区分することを特徴とする、
請求項6に記載の立体視画像生成方法。
【請求項8】
電子計算機によって構成され、
原画像を構成する各画素の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、
前記特徴情報に基づいて前記各画素に奥行き情報を生成する奥行き情報生成手段と、
前記奥行き情報に基づいて前記各画素の位置を変更した立体視画像を生成する立体視画像生成手段と、を有し、
前記奥行き情報生成手段は、
前記原画像から抽出された一対の前記画素の間にエッジを設定するエッジ設定手段と、
前記特徴情報に基づいて前記エッジに重み情報を設定する重み情報設定手段と、
前記各画素の中からスタート画素を選択するスタート画素選択手段と、
前記スタート画素から前記各画素までの前記重み情報についての経路を算出し、前記各画素に経路情報を設定する経路情報設定手段と、
前記経路情報に基づいて前記各画素に前記奥行き情報を設定する奥行き確定手段と、を有することを特徴とする、
立体視画像生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−227797(P2012−227797A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94710(P2011−94710)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(501335841)株式会社エム・ソフト (8)
【Fターム(参考)】