説明

管の補修方法

【課題】管内面に生じた要補修部の補修を安価で短時間で補修箇所の発現状況に拘わらず容易に行える管の補修方法を提供する。
【解決手段】伸縮性を有する筒状の基部(1a)と基部の外周面に設けられ常温より高い第2温度(TH2)以上で軟化する接着層(1b)とを有するチューブ(1)と、発熱体(3)を有し内部の気体の入出で拡縮可能なバッグ(2)と、を用いる。縮めたバッグをチューブ内に通して管(62)の開口部(62b)から内部に挿入する挿入工程と、バッグを内部に気体を流入しチューブを拡径させると共に、発熱体を加熱し接着層が第1温度以上となるようチューブを昇温させて、接着層を軟化状態で要補修部(AR1)を含む管内面に接触させるチューブ接触工程と、接着層を第1温度未満に降温して硬化させ、チューブを管内面に固着させるチューブ固着工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の補修方法に係り、特に、管の内面に対して施す、損傷の補修及び腐食の進行を抑える補修に好適な管の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管が樹脂管の場合、化学物質の付着や管の製造に伴う残留応力などに起因してクラックなどの損傷が発現する場合がある。
クラックが進行すると、管内部の流体の外部漏洩や管本体の破損を招く虞があるので、その進行は抑える必要がある。
管が鋼管の場合、製造品質や設置環境に起因して経時的に腐食が発生する場合がある。
製造品質については、メッキ付着工程で形成したメッキ層の厚さのバラツキやメッキ不良があると、メッキが特に薄い部位は腐食の生じる可能性が高くなっていることによる。
設置環境については、例えば、鋼管が鉄塔に用いられた場合、管内結露の発生状況、雨滴の浸入状況、鳥の営巣状況などに関連して、常に水分と酸素とが供給され得る環境下にある部位は腐食の生じる可能性が高くなることによる。
鋼管の腐食が進行すると、トラブルの原因となる虞があるので、腐食の進行は抑える必要がある。
【0003】
管の内面における損傷や腐食は、発現有無及び発現程度を判定することが難しい。
通常は、ファイバスコープを管内に導入し、得られた管内面の映像を基に、損傷及び腐食の有無、種類、程度、位置の特定、などの発現状況の把握を行っている。
そして、把握された発現状況に基づき必要と判断された場合、その損傷や腐食が発現した部位に対して補修を行う。
【0004】
補修作業は、従来、種々の方法が行われており、鉄塔の鋼管の腐食に対する補修方法を例にとれば、腐食している鋼管の新鋼管への交換,鋼管内面への塗装,及び鋼管の内部空間への充填剤注入などの方法がある。
鋼管の内部空間への充填剤注入に関する技術の一例が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−162406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の補修方法において、新鋼管への交換作業は、作業時間が長く、さらに付随費用として新鋼管の運搬費、旧鋼管の処分費などがかかるため、全体として極めて高コストになるという問題がある。
また、交換する鋼管に大きな荷重が掛かっている場合は、実質的に交換作業ができない場合もあり得る。
鋼管内面への塗装作業は、塗装費用が嵩むことに加え、腐食場所が管の端部から離れている場合、作業が極めて困難になる、という問題がある。
内部空間への充填剤注入作業は、作業自体が大がかりになると共に注入する充填剤の分だけ鋼管の質量が増加することから鉄塔の強度検討も必要となる。そのため、費用、工数共、多大になるという問題がある。
【0007】
上述した各問題は、程度の差はあるものの、鉄塔の鋼管に限らず屋外,屋内,地中,水中などに配設された様々な管の補修において改善が望まれる問題である。
このように、管の補修方法に対し、安価で、短時間で完了し、補修箇所の管端部からの距離や程度に拘わらず容易に行えることが望まれている。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、安価で、短時間で完了し、補修箇所の発現状況に拘わらず容易に行える管の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は手段として次の手順を有する。
1) 管(62)の内面に生じた要補修部(AR1)の補修を行うための管の補修方法であって、
伸縮性を有する筒状の基部(1a)と、前記基部(1a)の外周面に設けられ常温よりも高い第1の温度(TH1)以上で軟化する接着層(1b)と、を有するチューブ(1)と、
発熱体(3)を有すると共に内部の気体を入出させることで拡縮可能なバッグ(2)と、を用い、
前記バッグ(2)と前記チューブ(1)とを、縮めた状態の前記バッグ(2)を前記チューブ(1)内に通した状態にして前記管(62)の開口部(62b)から前記要補修部(AR1)に向け挿入する挿入工程と、
前記バッグ(2)の内部に気体を流入させて前記バッグ(2)を拡張し前記チューブ(1)を拡径させると共に、前記発熱体(3)を加熱して、前記接着層(1b)が前記第1の温度(TH2)以上となるように前記チューブ(1)を昇温させることで、前記接着層(1b)を軟化状態で前記管(62)の前記要補修部(AR1)を含む内面に接触させるチューブ接触工程と、
前記接着層(1b)の温度を前記第1の温度(TH1)未満に降温して前記接着層(1b)を硬化させ、前記チューブ(1)を前記管(62)の内面に固着させるチューブ固着工程と、
を有することを特徴とする管の補修方法である。
2) 前記チューブ接触工程は、前記気体を空気とし、
前記バッグ(2)の内部へ空気を流入させ前記バッグ(2)の内圧を大気圧よりも高い所定の圧力(PC1)以上で所定の時間(t1〜t4)維持することを特徴とする1)に記載の管の補修方法である。
3) 前記所定の時間(t1〜t4)を、前記接着層(1b)を前記第1の温度(TH1)以上とする時間(t2〜t3)よりも長く設定することを特徴とする2)に記載の管の補修方法である。
4) 前記チューブ接触工程は、
前記バッグ(2)の内圧が前記所定の圧力(PC1)以上であるときに、前記基部(1a)の温度が前記第1の温度(TH1)に達するよう昇温させることを特徴とする2)又は3)記載の管の補修方法である。
5) 前記チューブ固着工程において、
前記接着層(1b)の温度が前記第1の温度(TH1)又は前記第1の温度(TH1)よりも低い第2の温度(TH2)未満になった時点で、前記バッグ(2)の内圧の前記所定の圧力(PC1)からの降下を開始することを特徴とする2)〜4)のいずれか1つに記載の管の補修方法である。
6) 前記挿入工程において、
前記チューブ(1)の位置を、その長手方向の中央位置(P2)と前記要補修部(AR1)における管軸(CL)方向の中央位置(P1)とが概ね一致するよう調整することを特徴とする1)〜5)のいずれか1つに記載の管の補修方法である。
7) 前記基部(1a)と硬化状態の前記接着層(1b)とが光透過性を有することを特徴とする1)〜6)のいずれか1つに記載の管の補修方法である。
8) 前記基部(1)は、熱膨張性チューブであることを特徴とする1)〜7)のいずれか1つに記載の管の補修方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、管の補修が、安価で、短時間で完了し、補修箇所の発現状況に拘わらず容易に行える、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の管の補修方法の実施例で用いる部材及び装置の概要構成を説明するための図である。
【図2】本発明の管の補修方法の実施例で用いるチューブを説明するための図である。
【図3】本発明の管の補修方法の実施例で用いるバッグを説明するための図である。
【図4】図3に示したバッグの横断面図である。
【図5】本発明の管の補修方法の実施例で補修する鋼管鉄塔及び補修時の装置の配置を説明する図である。
【図6】本発明の管の補修方法の実施例における補修工程を説明するための図である。
【図7】本発明の管の補修方法の実施例における温度及び圧力のプロファイルを説明するための図である。
【図8】本発明の管の補修方法の実施例における補修工程及び補修後の状態を説明する図である。
【図9】本発明の管の補修方法の実施例における補修後の状態を説明するための断面を含む部分的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図9を用いて説明する。
【0013】
実施例の管の補修方法では、補修作業において、概略、図1に示される部材及び器具を用いる。
具体的には、補修する管の内面に固着させるチューブ1と、発熱体3を備え気体の流入流出により膨縮するバッグ2と、バッグ2内に流入させる気体を供給するポンプ51と、バッグ2とポンプ51とを連結するエアホース51aと、エアホース51の途中に設けられたバルブ52と、ポンプ51及び発熱体3の電源となる電源部53と、発熱体3の温度や発熱体3に供給する電流を制御する制御部54と、を用いる。
まず、チューブ1及びバッグ2について詳述する。
【0014】
<チューブ1について>
図2は、チューブ1を示す二面図であって、図2(a)が端面を見た正面図、図2(b)が半縦断面図である。
【0015】
チューブ1は、筒状の基部1aと、基部1aの外周面に設けられた接着層1bと、を有して形成されている。
基部1aは、加熱により膨張する熱膨張性チューブである。材料として周知の熱膨張性樹脂材を利用し、肉厚,外径,長さは任意に設定される。
具体的には、熱膨張性樹脂がポリオレフィン系であって、寸法は一例として、肉厚:1mm、外径:136mm、長さ:300mmである。
基部1a及び接着層1bは、共に光透過性を有する。例えば、乳白色で半透明とされている。
基部1aは、少なくとも径方向の伸縮性を有すると共に、常温よりも高い所定の温度以上で拡径する性質を有している。また、拡径した後は、温度が低下しても拡径した形状が保持される。
例えば80℃においてある程度拡径が進行し、また、120℃,5分の加熱により、常温時の外径が所定の倍率(例:約1.2倍)に拡張し、拡張した形状で安定するという熱膨張性を有するように組成が調整されている。
【0016】
接着層1bは、例えばホットメルト接着剤の層であり、基部1aの外周面に、接着剤シートの貼付又は接着剤そのものの塗布、などの方法で形成されている。
ホットメルト接着剤として、軟化点が、例えば70℃〜80℃のものを選択する。接着層1bの厚さは限定されない。例えば、0.3mm〜0.8mmである。
【0017】
その他、熱膨張性チューブとして、形状記憶性樹脂組成物からなり、成形時の形状を記憶すると共に成形後の延伸処理で収縮し、その後の加熱により膨張して成形時の形状に復元するものが知られている。
この形状記憶性を有する熱膨張性チューブを基部1bとして用いてもよい。
【0018】
<バッグ2について>
図3は、バッグ2の縦断面図であり、図4は、バッグ2の横断面図である。
【0019】
バッグ2は、気体(例えば空気)を流通させるためのエアチューブ2aと、エアチューブ2aの先端(図3の右側端)に固定されたエンドホルダ2bと、エアチューブ2aの途中に固定されたホルダ2cと、エンドホルダ2bに取り付けられた2d1,ホルダ2cに取り付けられた円形状の端部2d2,及び端部2d1,2d2の外周縁同士を繋ぐ側部2d3を有するバッグ本体部2dと、短冊状に形成されその長手がエアチューブ2aに沿った姿勢でバッグ本体部2dの側部2d3の内面に周方向に並列配設された複数の発熱体3と、を有して構成されている。
バッグ本体部2dは、柔らかい布状部材で形成され、内部に気体が充填された状態で略円筒状を呈し、内部から気体が抜けると萎めることができるように形成されている。
【0020】
エアチューブ2aは、ポリアミド系合成繊維により形成されたものを用いる。ポリアミド系合成繊維がより柔軟性の高い繊維(例えば所謂ソフトナイロン繊維)であって、エアチューブ2a自体がある程度柔軟性を有するものであると、後述する作業がより容易になるので好ましい。
エアチューブ2aにおける図3の右方側端部は、エンドホルダ2bにより塞がれており、図3の左方側が、エアホース51aに接続される。
エアチューブ2aは、エンドホルダ2bとホルダ2cとの間において、内外を連通する貫通孔2eが設けられている。図3(a)では、3箇所形成されている。
エアチューブ2aとそれに設けられた貫通孔2eとを介してバッグ本体部2d内への気体の流入、流出が行われる。
【0021】
エアチューブ2aには、更に、後述する発熱体3に接続されたコードCDを挿通させるコード用の貫通孔2e1が設けられている。
貫通孔2e1に挿通されるコードCDは、発熱体に電流を供給するリード線LD1及び発熱体の温度を測定する温度センサ(図示せず)からの出力を制御部54に向け供給するためのリード線LD2を含む。
コードCDは、貫通孔2e1を通してエアチューブ2a内に引き込まれ、エアチューブ2aの図3における左方側端部から外部に引き出される。リード線LD1は電源部53に接続され、リード線LD2は制御部54に接続される(図1も参照)。
【0022】
エンドホルダ2bは、円盤状の端板部2b1と、端部2b1から立設した円筒部2b2とを有して形成されている。円筒部2b2には、エアチューブ2aの先端部が嵌め込まれている。
端板部2b1には、バッグ本体部2dの端部2d1が封止状態で取り付けられている。
ホルダ2cは、貫通孔2c1を有する円筒部2c2と、円筒部2c2の端部から外方に向け張り出したリング状のフランジ部2c3と、を有して形成されている。
貫通孔2c1には、エアチューブ2aが挿通されており、ホルダ2cは、挿通されたエアチューブ2の所定の位置で固定されている。
フランジ部2c3には、バッグ本体部2dの端部2d2が封止状態で取り付けられている。
【0023】
バッグ本体部2dは、導電布Dhを用いて形成されている。
また、少なくとも、バッグ本体部2dの側部2d3は、導電布Dhと熱伝導性に優れたゴムシートGsとを重ね合わせた複合材FGにより形成されている(図4参照)。
導電布Dhは、例えば、ポリエステル繊維にCu及びNiをメッキした繊維により織られた布である。
ゴムシートGsは、例えば、シリコーンゴムのシートである。
複合材FGは、導電布Dhに対してゴムシートGsを重ね合わせて一体化した積層布である。
複合材FGは、導電布Dhに対してシリコーンのゴムシートGsを積層した積層布とされているので、良好な熱伝導性を有する。
【0024】
図4に示されるように、側部2d3は、この複合材FGを、導電布Dhが外側、ゴムシートGsが内側になるように用いて形成されている。
導電布Dhの厚さ及びそれを用いた複合材FGの厚さは、一例として、それぞれ0.1mm、0.25mm〜0.35mmである。
【0025】
側部2d3の内面には、発熱体3が複数取り付けられている。
発熱体3は、例えば、扁平の直方体を呈する面発熱体であり、良好な柔軟性と耐熱性とを有する市販のシリコンラバーヒータを所定形状に加工したものである。
発熱体3の寸法例としては、幅(周方向)25mm,厚さ1.5mm,消費電力60Wである。また、発熱体3の仕様上の連続使用温度としては、例えば約300℃である。
【0026】
図3,図4に示されるように、発熱体3は、側部2d3の周方向に角度30°ピッチで12個が並列に取り付けられている。
例えば、バッグ本体部2dの外径φA(図3参照)を約133mmとし、幅25mmの発熱体3を12個周方向に並べると、発熱体3同士の距離(間隙)D4(図4参照)は、約9.7mmとなる。
【0027】
チューブ1が上述の寸法例、肉厚:1mm、外径:136mm、長さ:300mmの場合、チューブ1と組み合わせて使用するバッグ2のバッグ本体部2dの寸法例は、外径:134mm、長さ:440mmである。
また、発熱体3は、長さ:400mmとし、側部2d3の長手方向にはセンター一致で配設する。
バッグ本体部2dは、隣接する発熱体3間に発熱体3の半幅程度の距離D4が設けられているので、内部の気体が抜けた状態で、発熱体3同士を折り重ねるようにして、径方向にコンパクトな状態に畳んで潰すことができる。直径は、概ね1/3程度に縮めることができる。
【0028】
次に、上述したチューブ1及びバッグ2を用いて管を補修する方法の実施例について詳述する。
実施例は、鉄塔の鋼管の内面に発生した錆の進行を抑えるための補修の方法である。
例えば、図5に示される鋼管鉄塔61の斜材62において予めファイバスコープにより特定された、上方側から約2mの位置に発現した約100mmの円形を範囲とする腐食部位(錆発生部位)に対し、その進行を抑える補修方法を説明する。
以下、補修をする斜材62を補修管62とも称する。補修対象となる部位、すなわち、損傷部位又は腐食部位を要補修部とも称する。
【0029】
図5は、斜材62を含む鋼管鉄塔61の一部を示す図である。
鋼管鉄塔61の斜材62の上方側の端部62aはI字継手で接続されており、I字継手における半円状の端開口部は、ファイバスコープが挿入できるわずかな隙間を残して薄板が溶接で固定されている。
補修に先立ち、この薄板を取り外し、端部62aの開口部から腐食部位をある程度越える位置までの鋼管内面の汚れをブラシ等で除去しておく。
【0030】
地上GLには、ポンプ51としてのコンプレッサ51bと、電源部53としての発電機53aとを設置する。また、各装置の動作制御のため制御部54(パーソナルコンピュータ等)を用意する。
補修管62の端部62a付近の作業場には、地上との間で次の三つの部材を配設する。
すなわち、コンプレッサ51bからのエアホース51a,発電機53aからの電源ケーブル53b(図5では一点鎖線で図示),及び制御部54へ向け温度センサからの出力を伝達するセンサ用ケーブル53c(図5では破線で図示)である。
エアホース51aの端部62a近傍にバルブ52を設ける。この設置位置に限らず、バルブ52は開閉作業のし易い場所に設置すればよい。
【0031】
エアホース51aの先端に、バッグ2のエアチューブ2aを接続する。
電源ケーブル53bにコードCDの内の発熱体3からのリード線LD1を接続する。
センサ用ケーブル53cにコードCDの内の温度センサからのリード線LD2を接続する。
また、チューブ1に温度センサーを設けてもよく、その場合は、その温度センサからのリード線を、別のセンサ用ケーブルに接続し、制御部54に向け供給する。
【0032】
バッグ2は、バッグ本体部2dの内部を外気よりも低圧の状態、又はバルブ52の操作等により外気と連通した状態にしておく。
図6(a)に示されるように、この状態で、バッグ本体部2dを、最大膨張時の外径(二点鎖線で示す)に対して、径方向に小さく畳む(潰す)ことができる。この段階では、少なくとも、開口部62bから補修管62の内部に挿入できる大きさに畳んでおく。
【0033】
<チューブ1とバッグ本体部2dとの一体化工程>
次に、図6(b)に示されるように、チューブ1に、径方向に潰したバッグ本体部2dを通す。
バッグ本体部2dは、力を加えない状態では、膨張時の円筒形状に戻ろうとするので、チューブ1に対して内側から広がる方向に軽く付勢する。
そのため、チューブ1は、内側に通したバッグ本体部2dから容易に抜けることはない。
【0034】
また、バッグ本体部2dは、上述の寸法例でも示したように、備えた発熱体3の長手方向の長さが用いるチューブ1の全長より長いものを選んで(又は製作して)使用する。
そして、チューブ1の長手方向の中央位置とバッグ本体部2dの長手方向の中央位置とを概ね一致させておくとよい。
これにより、チューブ1の長手方向の全域が発熱体3の長手方向範囲に含まれる。また、後工程においてバッグ本体部2dを膨らました際に、側部2d3によってチューブ1の内面全体が拡径する方向に付勢されると共に、バッグ本体部2d1を膨らました状態で、チューブ1の内面における発熱体3に対応した範囲は、チューブ1の長手方向全域に亘っているので、発熱体3の発熱により、チューブ1は長手方向において、より均一に加熱される。
【0035】
<補修管62内への挿入工程>
チューブ1に、径方向に潰したバッグ本体部2dを所定の位置まで通したら、図6(c)に示されるように、補修管62の端部62aに開いた半月状の開口部62bから、チューブ1とそれに嵌め込んだバッグ本体部2dとを補修管62の内部に挿入する。
開口部62bの開口形状や開口面積に応じ、必要であればチューブ1も潰すなどして変形させて挿入する。
挿入した長さは、エアチューブ2a及びエアホース51aの送り込み量で判定する。
エアチューブ2a及びエアホース51aには、送り込み量からバッグ本体部2dの挿入量が判定できるように予め目盛りMを付与しておくとよい。
【0036】
<送り込み量調整工程>
チューブ1を嵌め込んだバッグ本体部2dの送り込み量は、バッグ本体部2dの長手方向の中央、換言すれば、チューブ1の長手方向の中央が、補修管62の要補修部である損傷又は腐食範囲における管軸方向の中央に概ね合致するように調整される。
この位置合わせは、エアチューブ2a及びエアホース51aに付与された目盛りMで行うが、バッグ2と共にファイバスコープを補修管62内に挿入し、ファイバスコープによって得られた画像を利用して調整してもよい。
調整が完了したら、チューブ1とバッグ本体部2dをその位置で保持する。
【0037】
この送り込み量調整工程について図6(d)を用いて詳述する。図6(d)は補修管62の部分的縦断面図であり、補修管62の内部に、要補修部に向けバッグ本体部2dなどを矢印方向に挿入しつつある状態を示している。
図6(d)において、補修すべき腐食部分が腐食部AR1であり、その管軸方向中央位置P1は、補修管62の開口部62bから距離LA1の位置にある。
腐食部分の厚みは管径に対してほとんど無視できる程度であるが、図6(d)以下の図においては、腐食部AR1を便宜的に太実線で示している。
【0038】
チューブ1の長手方向の中央位置P2と開口部62bとの間の距離LA2は、エアチューブ2a及びエアホース51aに所定間隔で付与された目盛りMと、予め判明している、目盛りMの内の基準となる基準目盛りMKから中心位置P2までの距離LA2aとから把握される。
そこで、送り込み量調整工程においては、バッグ本体部2dを、距離LA2が距離LA1と一致するように補修管62内に送り込む。
チューブ1は、長手方向の長さL1が、腐食部AR1の管軸方向の最大長さLarよりも長いものを選択して(又は製作して)使用する。
腐食部AR1への酸素及び水分の供給をより確実に遮断する観点から、例えば、L1がLarの3倍以上のチューブ1を用いるとより良い。
【0039】
図6(e)は、送り込み量調整工程によって、バッグ本体部2dが狙いの位置に送り込まれた状態を示している。
すなわち、腐食の範囲AR1の管軸方向の中央位置P1と、チューブ1の長手方向の中央位置P2と、が概ね一致した状態である。
制御部54は、この状態から、発熱体3の温度とバッグ本体部2dの内部に加える気体圧力とを所定のプロファイルに基づいて制御する。
【0040】
<温度及び圧力の制御工程>
図7は、温度及び圧力について予め設定したプロファイルを示すグラフである。まず、このグラフについて説明する。
横軸を時間とし、縦左軸を温度、縦右軸を圧力としている。また、温度変化は実線で、圧力変化は一点鎖線で示している。
温度は、接着層1bの温度を、予め把握しておいた発熱体3の温度と接着層1bの温度との相関から発熱体3の温度センサからの出力に基づき判定し、圧力はコンプレッサ53aから得られる圧力数値を利用して判定する。チューブ1に温度センサを設け、その温度センサからの出力に基づいて判定してもよい。
これらの判定は制御部54が行うが作業者が行ってももちろんよい。制御部54は、接着層1bの温度が図7のプロファイルに沿うように発熱体3への通電を制御する。
【0041】
図7において、圧力特性は直線で示されているが、圧力値は、実際にはある範囲で変動するので、厳密には直線状にならない。また、温度特性も、実際には変動を持って推移するので変動の多い曲線となる。図7では、説明のため、便宜的に、それぞれ直線及び変化の少ない曲線で示してある。
【0042】
(1)まず、バルブ52を開き、時間t0からポンプ51によってバッグ本体部2d内にエアチューブ2a及びエアホース51aを介して空気を送り込み、バッグ本体部2d内の気圧を圧力PC0(大気圧)からPC1まで上昇させる。圧力PC1は、例えば0.2MPaである。
制御部54は、時間t1〜t4の間、バッグ本体部2d内が一定の圧力PC1を維持するようにポンプ51を制御する。昇圧によって潰されたバッグ本体部2dが膨張し、一旦圧力PC1に達しても、バッグ本体部2dの馴染みやチューブ1との嵌合のなじみにより、圧力は低下する傾向(図7の破線PCSのように)にある。従って、ポンプ51を稼働状態として一定の圧力PC1を維持する。
維持する圧力は、必ずしも一定の圧力で維持することに限らず、一定の圧力(ここでは予め設定されたPC1以上で維持すればよい。
圧力PC1は、バッグ本体部2dが十分拡張しチューブ1の内面全体を拡径方向に付勢することができる最低の圧力以上に設定する。
t0〜t1は、約10秒である。
【0043】
(2)制御部54は、バッグ本体部2d内の圧力がPC1に達したと判定したら(時間t1)、発熱体3への通電を開始し発熱させる。
【0044】
(3)制御部54は、温度センサの出力に基づいて温度が常温TH0から温度TH1を越えたと判定したら(時間t2)、その温度TH1を越えた温度で所定の時間維持するように通電を制御する(時間t2〜t3)。時間t1〜t2は、例えば5分である。温度TH1は、例えば80℃と設定し、所定の時間は、例えば10〜15分とする。
【0045】
(4)制御部54は、温度を温度TH1を越えて所定時間維持したら、発熱体3への通電を停止し、常温まで自然降温させる(t3以降)。
【0046】
(5)制御部54は、接着層1bの温度が、接着層1bが完全に硬化する温度TH2迄降下したと判定したら、バッグ本体部2d内の圧力を大気圧又は大気圧未満に降下させる。
【0047】
各工程における制御部54の制御は、もちろん作業者が手動で行ってもよい。
上述のプロファイルにより実現するチューブ1及びバッグ本体部2dの挙動等について詳述する。
【0048】
<時間t0〜t1>
バッグ本体部2d内に気体が流入し、内部の圧力(以下、単に内圧とも称する)が上昇するに伴い、潰されていたバッグ本体部2dが膨らんで元の(本来の)円筒状形状に戻る。
バッグ本体部2dの側部2d3の外径は、加熱前の常温での(延伸処理された)チューブ1の内径よりも大きく形成されているので、側部2d3は内圧PC1への昇圧によってチューブ1を押し広げようとする。チューブ1は伸縮性を有しているので、これに追従して拡径する。内圧PC1において、チューブ1の外周面は、補修管62の内面62nに接触する。
すなわち、バッグ本体部2dは、内圧PC1において本来の円筒形状を維持するに十分であり、これによりチューブ1は、その外周面が補修管62の内面62nに密着するようにバッグ本体部2dによって拡径方向に付勢され拡径する。
【0049】
<時間t1〜t2>
温度TH1は、チューブ1の接着層1bの軟化温度の上限値として設定されている。チューブ1の材質によっては、基部1aが膨張し拡径し得る温度である。
また、実施例では、温度TH2は軟化した接着層1bが完全に硬化する温度として設定されている。例えば、TH1=80℃、TH2=60℃である。
発熱体3は、バッグ本体部2dの側部2d3における熱伝導性に優れたゴムシートGsに取り付けられているので、発熱体3で発生した熱は、ゴムシートGsを介して側部2d3全体に偏りなく伝達される。
従って、側部2d3の温度ムラはほとんどなく、チューブ1も側部2d3に伴ってほぼ均一に温度上昇及び温度降下する。
すなわち、チューブ1は、温度センサからの温度情報がほぼチューブ1の温度情報と同じ、あるいは十分に相関がとれると捉えてよい構造になっている。
発熱体3自体の温度は接着層1bの温度よりも高く、両温度の差は作業場所の外気温などに依存する。例えば、関東地方の冬場での屋外作業において温度TH1=80℃を維持するための発熱体3自体の温度は100℃〜160℃となる。
【0050】
時間t1〜t2における常温からTH1への昇温により、接着層1bの軟化が完了する。
一方、チューブ1の基部1aは、熱膨張が温度TH1で実質的に開始している。
【0051】
<時間t2〜t3>
時間t2〜t3において、接着層1bは、その温度が、軟化温度TH1を越えているので、軟化状態が維持される。
ここで、チューブ1は、熱膨張が進行して形状が安定した状態になるまでに数分を要する。
発明者らの実験により、実施例で用いたポリオレフィン系の熱膨張性チューブ1は、80℃を越えた温度で保持する場合、その温度を10分間維持すると熱膨張が完了して形状及び組成が十分安定した状態になることが判明したので、温度TH1の維持時間であるt2〜t3は10〜15分と設定した。
この維持時間は、15分よりも長くてもよいが、補修工事の短時間化の観点から、形状及び組成の安定に必要な時間を越え、かつ可及的短時間に設定するのが現実的で好ましい。
維持時間はもちろん10〜15分に限定されるものではなく、用いるチューブ1の熱膨張特性に応じて、熱膨張した形状及び組成が十分安定する時間として適宜設定する。
【0052】
図8(a)に示されるように、バッグ本体部2dからの拡径方向の付勢力F2に加え、チューブ1の基部1aの熱膨張によって、接着層1bは軟化した状態で補修管62の内面62nに接触し、押し付けられる。
すなわち、接着層1bは、補修管62の内面62nに対し、その内面62nの形状(例えば凹凸)に倣い密着するように押しつけられる。
より詳しくは、補修対象の腐食部AR1とその周囲の所定範囲に対して、接着層1bは軟化した状態で密着させられる。
【0053】
この状態の拡大模式図を図8(b)に示す。
図8(b)は、腐食部AR1とその周囲の所定範囲との模式的部分断面図である。
この状態で、すでに腐食部AR1は、軟化した接着層1bの密着によって外部(大気)との接触が断たれ、酸素と水分の供給がされない状態となっている。
【0054】
<時間t3〜t4>
時間t3〜t4において、接着層1bの温度は、温度TH1を越えた領域から温度TH2(時間t4)を経て常温に向け降下する。
チューブ1の基部1aは、すでに形状遷移が進行しており、この温度降下で形状は変化しない。
接着層1bは、その温度が、温度TH1から温度TH2以下に低下することにより、図8(b)に示した状態で完全硬化する。
すなわち、接着層1は、腐食部AR1に対する外部からの酸素と水分との供給を完全に遮断した状態で固化する。
従って、腐食部AR1の腐食の進行が止められる。
時間t3〜t4は例えば約5分である。
【0055】
<時間t4〜t5>
時間t4にて温度が温度TH2に至ったら、内圧をPC1から大気圧又はそれ以下に減圧する(図7には大気圧に減圧するプロファイルが示されている)。
これにより、チューブ1が補修管62の内面62nに固定された状態でバッグ本体部2dのみが萎み縮径するので、バッグ本体部2dを開口部62bから引き出すことができる。バッグ本体部2dは、縮径の程度は、上述のように例えば1/3程度である。
開口部62aが特に狭い場合、あるいはバッグ本体部2dが良好に潰れない場合は、内圧を減圧して強制的に潰して縮径させるのが有効である。
【0056】
図8(c)は、補修完了後の補修箇所の状態を示す断面図である。
図9は、補修箇所近傍について、補修箇所を一部切断して斜視的に見た図である。腐食部AR1の範囲はクロスハッチングで示されている。
管軸CL方向においては、腐食部AR1と隣接する所定範囲AR5,AR6とを含めた領域が、また、周方向においては、腐食部AR1とそれ以外の部分との全周域が、接着層1bに完全に覆われるようにしてチューブ1が固着している。
【0057】
以上の工程により管の補修が行われる。
上述した補修は、腐食部AR1の腐食進行を抑えるための補修であるが、腐食部AR1に相当する部分がクラックや微小欠落などの損傷部であっても、同様の補修作業が実施できる。
その場合、損傷部を完全に覆う接着層1bとして、硬化前の軟化状態でクラックの隙間への浸透性及び微小欠落部への形状追従性が高く、硬化後に高い強度と接着力とを発揮する接着剤を選定することが好ましい。
【0058】
管の補修作業後、チューブ1が所定の位置に固定されているかを確認する際にもファイバースコープが利用できる。
チューブ1は、基部1aと接着層1bとの両方が光透過性を有するので、固定されたチューブ1及び硬化した接着層1bを通して腐食部AR1(又は損傷部)の形状や位置が画像上把握できる。
例えば、図9に示されたように、チューブ1を透して補修管62の内面62nの腐食部AR1(クロスハッチングの範囲)が視認できる。
すなわち、チューブ1が腐食部AR1(又は損傷部)とその周囲の所定範囲を確実に覆って固着されているか否かの判定が、カメラで撮影した画像により確認できる。
【0059】
チューブ1及びバッグ2は、補修管62の内径に応じてそれぞれの外径が最適となるものを予め用意しておくとよい。
例えば、鋼管鉄塔の場合、補修が必要となる管の内径は、概ね40mm〜200mmの範囲で段階的に存在することが予めわかっているので、事前対応が容易である。
バッグ2については、一種類のバッグ2で、近い内径の複数種の補修管への対応が可能であるから、設備投資がより抑制される。
チューブ1については、補修管の内径毎に適合した外径のものを使用するのがよい。外径が異なる仕様のチューブ1は安価に製造可能であるから、顕著なコストアップが懸念されるものではない。
【0060】
上述の管の補修方法では、バッグ2は単に拡縮するのみであって摩耗や経時劣化する部分はほとんどない。しかも容易に回収可能なので、長期に亘り繰り返し使用ができる。
また、チューブ1も特殊な材料を用いたものではなく、汎用の熱収縮チューブとホットメルト接着剤等とで形成できる。
一方、バッグ2を所定の円筒形状に拡張させるために必要な内圧は、上限値例として0.2MPaであるから、特殊なポンプは不要である。例えば、自転車の空気入れや、浮き輪に空気を供給するいわゆる足踏みポンプも利用可能である。
このように、管の補修において高コストとなる部材や機材はなく、補修作業が極めて低コストで行える。
【0061】
また、図7に示すプロファイルからも明らかなように、自然冷却も含めt0〜t5が30分程度で済む。
ポンプや電源などの付帯設備を高所に持ち上げる必要がなく、それらを地上に配置して作業が行えるので、前準備や後片付けも極めて短時間で容易に行える。
従って、管の補修作業が、極めて短時間に実行できる。
【0062】
また、補修箇所の管端部からの距離に拘わらず、同じ内容の補修作業が実行できる。補修箇所にバッグ2を送り込む際の位置決めも、エアホース52aなどの目盛りにより補修箇所の管端部からの遠近に拘わらず安定して精度よく行える。
補修範囲(面積)に対応したチューブ及びバッグを予め準備して補修作業に臨むことができ、現場対応となるカット&トライ作業が実質的に無い。
従って、管の補修作業が、極めて高い作業品質を維持して行うことができる。
【0063】
また、接着層1bの補修管62の内面62nへの付勢力として、基部1aの熱膨張力のみならずバッグ本体部2dから付与される拡径方向の圧力も働いている。
しかも、バッグ本体部2dは、チューブ1の内面の全面をほぼ均一に付勢する。
仮にチューブ1の基部1aの組成にばらつきがあって熱膨張度合いにばらつきが生じても、バッグ本体部2dからの付勢力によりそのばらつきの影響を打ち消して、チューブ1を補修管62の内面62nに均等に押しつけることができる。
これにより、補修管62の内面62nの凹凸状態に影響を受けず、また、機材接着層1bは隙間なく確実に補修管62の内面62nに固着される。
従って、酸素及び水分など流体や気体の遮断効果が求められる腐食部への補修には特に好適である。
また、チューブ1の基部1bは、膨張時に径方向のみならず長手方向にも拡大する。そのため、チューブ1を腐食部の位置に配置する作業において、管軸方向の配置位置精度に裕度が増すので、作業がより容易になり、作業品質も安定する。
また、プロファイルにおいて、バッグ本体部2d内の圧力が所定の一定値PC1以上であるときに、基部1aの温度が温度TH1に達するように昇温を行う。
これにより、基部1aは、昇温によって膨張する前にバッグ本体部2dの拡張により拡径方向に付勢されて拡張し、その後、昇温による膨張が開始する。
従って、チューブ1の拡径がより安定して行われ、補修品質のばらつきが低減する。
また、プロファイルにおいて、バッグ本体部2d内の圧力が所定の一定値PC1以上の温度を維持している時間t1〜t4を、接着層1bの温度を温度TH1以上とする時間t2〜t3を含み、時間t2〜t3よりも長い時間に設定する。
これにより、軟化した接着層1bにより均一な圧力が付与され、接着層1bを補修対象の腐食部AR1とその周囲の所定範囲に対してより良好に密着させることができる。
【0064】
本発明の実施例及び変形例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてさらに別の変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0065】
チューブの接着層は、同一種でなくてよい。物性の異なる複数の層を長手方向に環状に並べて設けてもよい。
例えば、チューブの中央部に封止に優れる環状封止層を配置し、それを挟む両端側を接着に優れる環状層としてもよい。この場合、腐食部の補修においては、環状封止層にて腐食部が覆われるようにする。
また、送り込み量調整工程においては、チューブ1の長手方向の中央位置ではなく、環状封止層の長手方向の中央位置が、要補修部AR1の管軸方向の中央位置と合致するようにチューブ1の送り込み位置を調整する。
【0066】
エアチューブ2a、エアホース51aの名称は、主に空気が流通されることから便宜的に設定したが、これらは、補修管62の配置位置における外部環境等に応じて、空気以外の気体を流通させるものであってよい。
バッグ2において、発熱体3は、複数枚の短冊状ゴムヒータを周方向に並列配置した例を説明したが、これに限らず長尺のゴムヒータを、側部2d3の内面に螺旋状に貼り付けたものでもよい。
【0067】
基部1aが昇温により膨張し拡径を開始する温度と接着層1bが昇温により軟化を開始する温度との上下関係は限定されない。
【0068】
作業時の外部温度が著しく低い場合には、チューブ1の加熱が良好に行えるよう補修間62の外面に断熱材を巻くなどの保温処理を行うとよい。
【0069】
温度及び圧力のプロファイルは、図7に示したものに限定されない。
圧力がPC1に達する前に温度上昇を開始してもよい。
温度が温度TH1から降下した後、常温に至ってから減圧を開始してもよいが、作業時間短縮の観点から、温度が温度TH2以下になって接着層1bが完全に硬化した後に減圧を開始することが、補修管62の内面62nの封止をより確実に行えると共に作業時間が短縮されるので望ましい。
作業時間短縮をより優先する場合は、温度が温度TH1以下になった時点で減圧を開始してもよい。この場合、降温のばらつきなどにより、接着層1bがまだ部分的に完全硬化していない可能性のある状態での減圧開始となる。従って、バッグ2からの拡径方向の付勢力が減って、付勢力が能力一杯ではない状態で接着層1bが硬化する虞があるので、減圧は温度TH2以下になって開始することがより望ましい。
【0070】
管の材質は鋼に限らない。また、管の断面形状は円形に限らない。
実施例の方法によれば、チューブ1は、伸縮性を有し、昇温に伴う自発的膨張に加え、その膨張が行われる前からバッグ本体部2dの外形拡張による拡径方向の付勢力を受け拡径しているので、管の内面形状に容易に馴染む。従って、管の断面形状は限定されるものではない。
接着層1bの材質は、軟化及び硬化の温度特性に基づいて適宜選択できる。
【0071】
以上詳述した実施例及び各変形例は、互いに自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 チューブ、1a 基部、1b 接着層
2 バッグ
2a エアチューブ
2b エンドホルダ、2b1 端板部、2b2 円筒部
2c ホルダ、2c1 貫通孔、2c2 円筒部、2c3 フランジ部
2d バッグ本体部、2d1,2d2 端部、2d3 側部
2e,2e1 貫通孔
3 発熱体
51 ポンプ、51a エアホース、51b コンプレッサ
52 バルブ
53 電源部
53a 発電機、53b 電源ケーブル、53c センサ用ケーブル
54 制御部、61 鋼管鉄塔
62 斜材(補修管)、62a 端部、62b 開口部、62n 内面
AR1 腐食部(要補修部)
CD コード、D4 (発熱体間)距離、LD1,LD2 リード線
M 目盛り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内面に生じた要補修部の補修を行うための管の補修方法であって、
伸縮性を有する筒状の基部と、前記基部の外周面に設けられ常温よりも高い第1の温度以上で軟化する接着層と、を有するチューブと、
発熱体を有すると共に内部の気体を入出させることで拡縮可能なバッグと、を用い、
前記バッグと前記チューブとを、縮めた状態の前記バッグを前記チューブ内に通した状態にして前記管の開口部から前記要補修部に向け挿入する挿入工程と、
前記バッグの内部に気体を流入させて前記バッグを拡張し前記チューブを拡径させると共に、前記発熱体を加熱して、前記接着層が前記第1の温度以上となるように前記チューブを昇温させることで、前記接着層を軟化状態で前記管の前記要補修部を含む内面に接触させるチューブ接触工程と、
前記接着層の温度を前記第1の温度未満に降温して前記接着層を硬化させ、前記チューブを前記管の内面に固着させるチューブ固着工程と、
を有することを特徴とする管の補修方法。
【請求項2】
前記チューブ接触工程は、前記気体を空気とし、
前記バッグの内部へ空気を流入させ前記バッグの内圧を大気圧よりも高い所定の圧力以上で所定の時間維持することを特徴とする請求項1記載の管の補修方法。
【請求項3】
前記所定の時間を、前記接着層を前記第1の温度以上とする時間よりも長く設定することを特徴とする請求項2記載の管の補修方法。
【請求項4】
前記チューブ接触工程は、
前記バッグの内圧が前記所定の圧力以上であるときに、前記基部の温度が前記第1の温度に達するよう昇温させることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の管の補修方法。
【請求項5】
前記チューブ固着工程において、
前記接着層の温度が、前記第1の温度又は前記第1の温度よりも低い第2の温度未満になった時点で、前記バッグの内圧の前記所定の圧力からの降下を開始することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の管の補修方法。
【請求項6】
前記挿入工程において、
前記チューブの位置を、その長手方向の中央位置と前記要補修部における管軸方向の中央位置とが概ね一致するよう調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の管の補修方法。
【請求項7】
前記基部と硬化状態の前記接着層とが光透過性を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の管の補修方法。
【請求項8】
前記基部は、熱膨張性チューブであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の管の補修方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−36302(P2013−36302A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175721(P2011−175721)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】