説明

管理機

【課題】一台でU溝とV溝との両方の溝を形成可能とした管理機を提供する。
【解決手段】ロータリーフレーム21の左右両側で機体の前後方向へ伸延する回転軸周りに開閉可能に構成した左右ロータリーカバー23と、を備える管理機において、左右ロータリーカバー23の各後部に、矩形状の左右畝立てシート30を、機体の下部後方へ向けてそれぞれ吊設し、ロータリーフレーム21の後端部には、左畝立てシート30a及び右畝立てシート30bの少なくとも一部を上から覆う状態に配設した中央土分け体31を固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝立て作業を行うことのできる管理機に関し、特に、U型の溝とV型の溝との両方を形成可能な管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原動機からの動力をミッション部に入力し、同ミッション部に設けた出力軸に耕耘爪を配設して耕耘部を形成し、この耕耘部を土壌に接触させながら前進することにより、畝立て作業を行うことができるように構成した管理機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような管理機によれば、圃場に畝を容易に立てることができ、畝立て作業効率を向上させることができる。
【特許文献1】特開平2005-143455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の管理機では、畝立て作業時に形成できる溝の形状は1種類しかなく、1台の管理機では、作物の種類に応じて溝の形状を選択することができなかった。
【0005】
すなわち、栽培する作物に応じて溝の形状を断面視略U字状の溝(以下、U溝ともいう。)や断面視略V字状の溝(以下、V溝ともいう。)に適宜選択して形成する必要があるが、上記従来の管理機では、U溝かV溝のどちらか一方しか形成することができず、どちらか他方の溝を形成するためには、別の管理機を用いるか、または、培土器などの付属品を管理機に別途配設して形成する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る管理機では、ミッション部と、同ミッション部に固定して後方へ伸延させたロータリーフレームと、ロータリーフレームの下方でミッション部と連動連結させて配設した耕耘軸に、半径方向外方に向けて放射状に立設した複数の耕耘爪を備える円筒状の爪軸を挿通して形成した耕耘作業部と、同耕耘作業部の上方を覆うように配設し、ロータリーフレームの左右両側で機体の前後方向へ伸延する回転軸周りに開閉可能に構成した左右ロータリーカバーと、を備える管理機において、左右ロータリーカバーの各後部に、矩形状の左右畝立てシートを、機体の下部後方へ向けてそれぞれ吊設し、ロータリーフレームの後端部には、左畝立てシート及び右畝立てシートの少なくとも一部を上から覆う状態に配設した中央土分け体を固定していることとした。
【0007】
また、爪軸は、耕耘軸に、耕耘爪の先端が機体の外方へ向くように挿通し、左右ロータリーカバーは、左右畝立てシートの下端部が略水平状態となる閉位置と、左畝立てシートの左下端部及び右畝立てシートの右下端部が中央土分け体の下端部よりも上方となる開位置とに開閉可能なものであり、同左右ロータリーカバーを開位置とした状態で、耕耘軸を進行方向と同方向へ回動させながら機体を前方へ進行させることにより、耕耘爪で耕耘した土を、中央土分け体で機体の左右両側に押し分けて、断面視略V型の溝を形成可能としたことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の本発明では、左右ロータリーカバーの各後部に、矩形状の左右畝立てシートを、機体の下部後方へ向けてそれぞれ吊設し、ロータリーフレームの後端部には、左畝立てシート及び右畝立てシートの少なくとも一部を上から覆う状態に配設した中央土分け体を固定することとしたため、ロータリーカバーを開き、耕耘作業部にて機体の側部前方へ土を巻き上げることで、U溝を形成することができるとともに、側部後方へ向けて土を巻き上げるように耕すことで、耕耘した土を中央土分け体で機体の左右方向へ分流し、左右畝立てシートにて分流された土をそれぞれ側方に押しのけてV溝を形成することができ、1台の管理機でU溝とV溝との二種類の溝を形成することができる。
【0009】
請求項2記載の本発明では、爪軸は、耕耘軸に、耕耘爪の先端が機の外方へ向くように挿通し、左右ロータリーカバーは、左右畝立てシートの下端部が略水平状態となる閉位置と、左畝立てシートの左下端部及び右畝立てシートの右下端部が中央土分け体の下端部よりも上方となる開位置とに開閉可能なものであり、同左右ロータリーカバーを開位置とした状態で、耕耘軸を進行方向と同方向へ回動させながら機体を前方へ進行させることにより、耕耘爪で耕耘した土を、中央土分け体で機体の左右両側に押し分けてV溝を形成可能としたため、V溝を形成する際に、より形の整ったV溝を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る管理機では、ミッション部と、同ミッション部に固定して後方へ伸延させたロータリーフレームと、ロータリーフレームの下方でミッション部と連動連結させて配設した耕耘軸に、半径方向外方に向けて放射状に立設した複数の耕耘爪を備える円筒状の爪軸を挿通して形成した耕耘作業部と、同耕耘作業部の上方を覆うように配設し、ロータリーフレームの左右両側で機体の前後方向へ伸延する回転軸周りに開閉可能に構成した左右ロータリーカバーとを備え、同ロータリーカバーを開いた状態で、耕耘軸を前方進行方向と逆方向に回転させながら耕耘作業部の側部前方へ土を巻き上げて、断面視略U字状の溝を形成可能な管理機において、左右ロータリーカバーの各後部に、略矩形状の左右畝立てシートを、機体の下部後方へ向けてそれぞれ吊設し、ロータリーフレームの後端部には、左右畝立てシートの少なくとも一部を上から覆う状態に配設したシート状の中央土分け体を固定し、同中央土分け体の略中央部に上下方向へ切れ目を設けている。
【0011】
したがって、ロータリーカバーを開いてV溝を形成する際に、土が中央土分け体に当接することにより、中央土分け体の両側部が切れ目部分を中心として後方へなびくように上面視略へ字状屈曲し、耕耘した土を左右方向へ分けながらV溝の底部を形成するとともに、後方に流れてきた土を左右畝立てシートが機体の側部外方へ押し寄せてV溝の壁部分を形成することとなり、形の整ったV溝を形成することができ、一台の管理機でU溝とV溝との2種類の溝を形成することができる。
【0012】
ここで、畝立てシートは、弾力性を備える素材でシート状に形成している。すなわち、シート状(板状)に形成可能な弾力性を備える素材であれば、特に限定されるものではなく、たとえば、ゴムや、ビニル等の樹脂類、プラスチック、バネ鋼等とすることができる。
【0013】
また、畝立てシートは、素材自体が弾力性を備えなくとも、弾力性を備えた状態で上面視略へ字状に屈曲可能であれば良く、2枚の板状のステンレス鋼の側部同士をバネ等の弾性部材を備える蝶番等で屈曲可能に接合して形成しても良い。
【0014】
以下に、本発明の最良の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1及び図2に示すAは、本発明に係る管理機を示しており、同管理機Aは、図1及び図2に示すように、側面視略へ字状に屈曲させて形成したミッション部2の前方位置に原動機部3を配設するとともに、ミッション部2の前側下部に走行部4を配設する一方、ミッション部2の後側下部に耕耘作業部5を配設し、同耕耘作業部5の上方には、前記ミッション部2に基端部を軸支して後部上方へ伸延させたハンドル26を備える操作部6を配設している。
【0016】
以下に、管理機Aの各部の構造について説明する。
【0017】
〔ミッション部〕
ミッション部2は、図1及び図2に示すように、管理機Aの下方に配設した走行部4と、耕耘作業部5との間に、側面視略へ字状に屈曲させた屈曲部10を備えて架設しており、同ミッション部2は、屈曲部10から前低後高の傾斜状に伸延させた走行部側ケース構成体7と、屈曲部10から前高後低の傾斜状に伸延させた耕耘作業部側ケース構成体8とから構成している。
【0018】
また、ミッション部2の屈曲部10の前側上部には、左右幅方向に軸線を向けて配設した入力軸11をミッション部2の左側方に回動自在に突出しており、次に述べる原動機部3からの動力でこの入力軸11を回動することにより、同ミッション部2の内部に設けた変速機構を介して走行部4や耕耘作業部5に動力を伝えるようにしている。
【0019】
〔原動機部〕
原動機部3は、ミッション部2の前側下部に原動機載置台12を取付け、同原動機載置台12の上部に原動機13を載設し、同原動機13の上部に燃料タンク14を取付けて構成している。なお、図中、15はフロントウエイトを兼ねたバンパーである。
【0020】
〔走行部〕
走行部4は、ミッション部2の走行部側ケース構成体7の下端部近傍に、左右幅方向に向けて伸延させた車軸16を回動自在に取付け、同車軸16の左右端部に車輪17を取り付けて形成している。
【0021】
〔耕耘作業部〕
耕耘作業部5は、ミッション部2の耕耘作業部側ケース構成体8の後側下部に左右幅方向に向けて伸延させた耕耘軸18を回動自在に取付ける一方、半径方向外方に向けて放射状に立設した複数の耕耘爪20を備える円筒状の爪軸19を、前記耕耘軸18に着脱自在に挿通し、前記耕耘軸18の回動に伴って、耕耘爪が回転するように構成している。
【0022】
また、ミッション部2の耕耘作業部側ケース構成体8の上方傾斜部分には、耕耘作業部5の上方に張り出すように、機体の後方へ向けてロータリーフレーム21を配設しており、耕耘爪20の回動軌跡22の上方を覆うように、同ロータリーフレーム21の左右両側にロータリーカバー23を取付けている。
【0023】
さらに、前記ロータリーフレーム21の後端部には、支持ブラケット24を配設し、同支持ブラケット24に耕深調節バー25を前後方向に揺動可能に軸支している。なお、ロータリーカバー23及び耕耘作業部5については、後にさらに詳細に説明する。
【0024】
〔操作部〕
操作部6は、ミッション部2の中途部に平面視で略門型状のハンドル26を前低後高の傾斜状に取付け、同ハンドル26の上端部にクラッチレバー27を配設するとともに、ハンドル26の前方に変速レバー28を前低後高の傾斜状に配設して構成している。
【0025】
変速レバー28は、基端部をミッション部2の右側方に望ませるとともに、おなじくミッション部2の右側方に設けた変速リンク機構を介して、ミッション部2内の変速機構を操作し、作業時に走行部4や耕耘作業部5を変速可能としている。
【0026】
〔本発明の要旨〕
上記のような構成において、本発明の要旨は、左右ロータリーカバー23の各後部に、左右畝立てシート30をそれぞれ配設し、同左右畝立てシート30間の略中央部を覆うように、ロータリーフレーム21から中央土分け体31を吊設し、左右ロータリーカバー23を開き、耕耘作業部5で機体の後部外方へ向けて土をはね飛ばしながら機体を前進させることにより、圃場にV溝を形成可能としたことにある。
【0027】
以下に、まず、左右ロータリーカバー23の構成と、その開閉構造について説明する。
【0028】
(ロータリーカバー)
図3は機体の左斜め後方からの斜視図である。図3に示すように、左ロータリーカバー23aと、右ロータリーカバー23bとは、ロータリーフレーム21上に立設した開閉調整機構38を介して接続している。
【0029】
耕耘作業部5の左側上方を覆うように配設した左ロータリーカバー23aは、ロータリーフレーム21の左側面に、機体の前後方向に軸線を向けた蝶着部材32を介して蝶着し、同軸線周りに上下方向へ開閉可能に構成している。
【0030】
また、この左ロータリーカバー23aの上面には、平面視略4分の1円弧状に形成し、幅方向中央部に長手方向に沿って形成した長穴35を備える左スイングアーム33aを備えており、同左スイングアーム33aは、その円弧状とした先端部を機体の右側方へ向けるとともに、基端部を左ロータリーカバー23aの上面で左右方向へ揺動自在に軸支している。
【0031】
さらに、左ロータリーカバー23aの後部には、弾性材で矩形シート状に形成した左畝立てシート30aを備えるとともに、同左畝立てシート30aはその上部を左ロータリーカバー23aの後方下端部から垂れ下がるように取付けている。
【0032】
一方、ロータリーフレーム21を挟んで反対側の右ロータリーカバー23bにも、左ロータリーカバー23aと左右対称をなすように同様の部材を配設してる。
【0033】
すなわち、耕耘作業部5の右側上方を覆うように配設した右ロータリーカバー23bは、ロータリーフレーム21の右側面に、機体の前後方向に軸線を向けた蝶着部材32を介して蝶着し、同軸線周りに上下方向へ開閉可能に構成している。
【0034】
また、この右ロータリーカバー23bの上面には、平面視略4分の1円弧状に形成し、幅方向中央部に長手方向に沿って形成した長穴35を備える右スイングアーム33bを備えており、同右スイングアーム33bは、その円弧状とした先端部を機体の左側方へ向けるとともに、基端部を右ロータリーカバー23bの上面で左右方向へ揺動自在に軸支している。
【0035】
さらに、右ロータリーカバー23bの後部には、弾性材で矩形シート状に形成した右畝立てシート30bを備えるとともに、同右畝立てシート30bはその上部を右ロータリーカバー23bの後方下端部から垂れ下がるように取付けている。
【0036】
ここで、ロータリーフレーム21には、上面部に雌ネジ構造を備えた支持プレート36を立設しており、同支持プレート36は、正面視略星形形状のハンドルと、雄ネジ構造とを備える調整つまみ37が前記雌ネジ構造に螺合可能となるようにしている。
【0037】
そして、左スイングアーム33aの先端部と、右スイングアーム33bの先端部とを、ロータリーフレーム21の上方で重ね合わせるとともに、左右スイングアーム33の長穴35に前記調整つまみ37の雄ネジ構造を挿通し、前記支持プレート36の雌ネジ構造に螺着することにより、開閉調整機構38を構成している。
【0038】
このような開閉調整機構38によれば、調整つまみ37を緩めて左右ロータリーカバー23を開き、調整つまみ37を再度閉めることにより、左右ロータリーカバー23を開いた状態で固定することができる。
【0039】
そして、前記左右畝立てシート30は、この開閉調整機構38を調整し、左右ロータリーカバー23を開いた際には、同左右ロータリーカバー23とともに移動して、機体後部から見た際に略ハ字状に左右方向へ開くこととなる。
【0040】
次に、ロータリーフレームの後部に配設した中央土分け体31について説明する。
【0041】
中央土分け体31は、弾性素材で正面視略正八角形のシート状に形成しており、その上部から同中央土分け体31の中途部に至るまで下方へ向けて切込みを入れた切込み部39を備えた形状としている。
【0042】
また、中央土分け体31の上端部は、ロータリーフレーム21の後端部に形成した土分け体取付けプレート40にボルトで螺着して取り付けている。
【0043】
そして、この中央土分け体31は、前記左右畝立てシート30よりも機体後部側に配設しており、左畝立てシート30aの機体中央寄りの一部と、右畝立てシート30bの機体中央寄りの一部との両方に重なって覆う状態で土分け体取付けプレート40に吊設している。
【0044】
このような構成において、左右ロータリーカバー23は、同左右ロータリーカバー23を閉じることにより、左右畝立てシート30の下端部が略水平となる状態(以下、閉位置という)と、左右ロータリーカバー23を開くことにより、左畝立てシート30aの左下端部及び右畝立てシート30bの右下端部が、中央土分け体31の下端部よりも上方となる状態(以下、開位置という)とをとることができる。
【0045】
なお、切込み部39には、ロータリーフレーム21に支持ブラケット24を介して取り付けた耕深調節バー25を挿通しており、同耕深調節バー25の先端部が左右畝立てシート30よりも内側にくるように配設している。
【0046】
(耕耘作業部)
次に、耕耘作業部5について説明する。図4は図3に示した耕耘作業部5の状態を示す部分拡大平面図である。図4に示すように、耕耘作業部5は、耕耘作業部側ケース構成体8の下端部に、機体の左右方向へ軸線を向けた耕耘軸18を配設して形成している。
【0047】
耕耘作業部側ケース構成体8の内部には、原動機13からの動力を、ミッション部2の内部に配設した変速機構を介して伝動する伝動チェーン41を配設しており、同伝動チェーン41を、前記変速機構と、耕耘作業部側ケース構成体8の内部で耕耘軸18の長さ方向略中央部に軸線を同じくして設けたスプロケット42とに掛け回し、変速機構の駆動に伴って伝動チェーン41回転させた際に、耕耘軸18が回動するように構成している。なお、図中、耕耘作業部側ケース構成体8の内部に沿って示した一転鎖線は、伝動チェーン41の軌跡を示している。
【0048】
また、耕耘軸18には、機体の左右にそれぞれ突出させた耕耘軸左端部18a及び耕耘軸右端部18bを備えるとともに、同耕耘軸左端部18a及び耕耘軸右端部18bに、円筒形状で左右にそれぞれ開口した爪軸端部48a、48b及び48c、48dを備える爪軸19を挿通して固定し、耕耘軸18の回動に伴って爪軸19も回動するようにしている。
【0049】
この爪軸19は、円周周りに放射状に爪ホルダ44、44、…を配設しており、各爪ホルダ44、44、…には、それぞれ土に切り込む耕耘刃49を備える耕耘爪20を挿入し、ボルト45で螺着して同耕耘爪20を固定している。なお、図4中、右端と左端の耕耘爪は、オフセット爪20aである。
【0050】
また、この爪軸19は、耕耘軸18を挿入していない側の開口部、すなわち爪軸端部48a及び48dに泥詰まり防止栓47を挿入しており、爪軸19の内部に泥が詰まってしまうのを防止している。
【0051】
さらに、この爪軸19は、泥詰まり防止栓47を抜き取って、爪軸19を左右反転させ、この泥詰まり防止栓47の代わりに耕耘軸18を挿通可能としている。
【0052】
したがって、図4では耕耘爪20が全て機体の内側に向く配列(以下、内盛り配列ともいう)としているが、たとえば、左右両側の泥詰まり防止栓47、47を爪軸19から抜き取るとともに、耕耘軸左端部18aに爪軸19を爪軸端部48d側から挿着し、耕耘軸右端部18bに爪軸19を爪軸端部48a側から挿着することにより、図5に示すように、耕耘爪20が全て機体の外側に向く配列(以下、外盛り配列ともいう)とすることが可能である。
【0053】
また、図4の状態から、左右両側の泥詰まり防止栓47、47を爪軸19から抜き取るとともに、耕耘軸左端部18aに爪軸19を爪軸端部48a側から挿着し、耕耘軸右端部18bに爪軸19を爪軸端部48d側から挿着することで、耕耘爪20を外盛り配列とすることも可能である。
【0054】
このような耕耘作業部5の構成によれば、図1に示す耕耘爪20のように、耕耘刃49が耕耘爪20の一側方にのみ形成され、土壌への突入方向が決まっている場合であっても、内盛り配列と外盛り配列との変更、及び、機体が前進する際の車軸16の回転方向と同方向の耕耘軸18の回転(以下、ダウン回転という)と機体が前進する際の車軸16の回転方向と逆方向の耕耘軸18の回転(以下、アップ回転という)との変更を自在に行うことができる。
【0055】
なお、内盛り配列及び外盛り配列は、掘り起こした圃場の土を機体の内方側に向けてまきあげる場合と、外方側に向けてまきあげる場合とで、用途に応じて適宜選択するものである。耕耘爪20を図4に示すように内盛り配列とすれば、掘り起こした土を機体の内方側にまきあげることとなるため、機体の外方へはあまり飛び出さないこととなり、耕耘爪20を図5に示すように外盛り配列とすれば、掘り起こした土を機体の外方側へまきあげることとなるため、機体の側方に土を盛る(畝を作る)こととなる。
【0056】
また、ダウン回転及びアップ回転は、掘り起こした圃場の土を機体の後方側に向けてまきあげる場合と、前方側に向けてまきあげる場合とで、用途に応じて適宜選択するものである。耕耘軸18を図6(a)に示すようにダウン回転とすれば、掘り起こした土を機体の後方側に寄せることとなるため、ロータリーカバーの後方に吊設した左右畝立てシート30に土が多く当たることとなり、耕耘軸18を図6(b)に示すようにアップ回転とすれば、掘り起こした土を機体の前方側へまきあげることとなるため、機体の前方に土を多く送り出すこととなる。
【0057】
次に、上述してきた構成を備える管理機Aで行う耕耘作業、U溝形成作業(畝盛り作業)、V溝形成作業(畝立て作業)の各状態について説明する。
【0058】
(耕耘作業)
耕耘作業時では、まず、図3に示したように、開閉調整機構38の調整つまみ37を緩めて左右スイングアーム33を最大に伸ばした状態とし、再び調整つまみ37を締めて左右ロータリーカバー23を閉位置とする。
【0059】
また、耕耘爪20を内盛り配列とし、ダウン回転可能な状態に爪軸19を耕耘軸18に配設する。
【0060】
そして、耕耘軸18をダウン回転させることにより、耕耘爪20が圃場の土壌に接触し、内盛り配列としたことで機体の外方へはあまり飛び出させず、掘り起こした土を機体の内方側にまきあげるとともに、ダウン回転によって掘り起こした土を機体の後方側に寄せることとなるため、ロータリーカバーの後方に吊設した左右畝立てシート30に土が多く当たり、圃場の耕耘を行うことができる。
【0061】
この際、左右畝立てシート30及び中央土分け体31は、耕耘した圃場の土を平らにならすという効果も有している。
【0062】
また、ダウン回転で機体の後方に跳ね上げた土が、作業者に当たるのを防ぐガードの役割を果たすこともできる。
【0063】
(U溝形成作業)
次に、U溝形成作業について説明する。図7は、U溝形成作業を行う際の管理機Aの状態を示した全体図である。
【0064】
すなわち、開閉調整機構38の調整つまみ37を緩めて左右スイングアーム33を最も縮めた状態とし、再び調整つまみ37を締めて左右ロータリーカバー23を開位置とする。
【0065】
また、耕耘爪20を外盛り配列とし、アップ回転可能な状態に爪軸19を耕耘軸18に配設する。
【0066】
そして、耕耘軸18をアップ回転させることにより、耕耘爪20が圃場の土壌に接触し、アップ回転によって掘り起こした土を機体の前方側へまきあげることとなるため、機体の前方に土を多く送り出しつつ、外盛り配列としたことで掘り起こした土を機体の外方側へ向けてまきあげることとなる。
【0067】
したがって、図8に示すように、管理機Aの両側方に、畝50a及び50bを形成することができ、この両側方の畝50aと畝50bとの間に、U溝51を形成することができる。なお、図中GはU溝51を形成する前の圃場の土壌面を示している。
【0068】
(V溝形成作業)
次に、V溝形成作業について説明する。図9は、V溝形成作業を行う際の管理機Aの状態を示した全体図である。
【0069】
すなわち、開閉調整機構38の調整つまみ37を緩めて左右スイングアーム33を最も縮めた状態とし、再び調整つまみ37を締めて左右ロータリーカバー23を開位置とする。
【0070】
また、耕耘爪20を外盛り配列とし、ダウン回転可能な状態に爪軸19を耕耘軸18に配設する。
【0071】
そして、耕耘軸18をダウン回転させることにより、耕耘爪20が圃場の土壌に接触し、ダウン回転によって掘り起こした土が機体の後方側に多く送り込まれ、しかも、外盛り配列としたことで掘り起こした土を機体の外方側へ向けてまきあげることとなる。
【0072】
この際、機体の後方に送り込まれた土は、ロータリーフレーム21の後方に吊設した中央土分け体31に連続的に流れ込むように当たることとなる。
【0073】
大量の土に対面した中央土分け体31は、同中央土分け体31の中央部に形成した切込み部39を中心に、後方へ向けて略へ字状に屈曲し、この屈曲した先端部で土を左右に分流する。
【0074】
そして、図10に示すように、この中央土分け体31が屈曲した先端部53の軌跡が、鋭角状のV溝54の底部を形成する。
【0075】
一方、中央土分け体31の屈曲した先端部で左方向に分流された土は、ロータリーカバー23が開位置となるに伴って左側方に張り出した左畝立てシート30aに接触し、同左畝立てシート30aに沿いながら流れて畝と接触し、V溝54の左側壁52aを形成する。
【0076】
この左側壁52aの形成中は、左畝立てシート30aが土の抵抗で後方に反り返っているので、左側壁52aを穏やかに圧迫し、作付けに適した状態の柔らかい土としながらも、形の整った左側壁52aを形成することができる。なお、図中に示す左右畝立てシート30及び中央土分け体31は、説明上、V溝54の形成直前の状態を示している。したがって、左右畝立てシート30及び中央土分け体31と、畝の破線とが重なった部分では、後方に反り返ることとなる。
【0077】
また、このV溝54の左側面の形成と同様に、中央土分け体31の屈曲した先端部で右方向に分流された土は、ロータリーカバー23が開位置となるに伴って右側方に張り出した右畝立てシート30bに接触し、同右畝立てシート30bに沿いながら流れて畝と接触し、V溝54の右側壁52bを形成する。
【0078】
この右側壁52bの形成中は、右畝立てシート30bが土の抵抗で後方に反り返っているので、右側壁52bを穏やかに圧迫し、作付けに適した状態の柔らかい土としながらも、形の整った右側壁52bを形成することができる。
【0079】
したがって、管理機Aの両側方に、畝が形成することができ、この両側方の畝と畝の間に、V溝54を形成することができる。
【0080】
このようにして、本発明にかかる管理機Aでは、V溝54を形成することができる。
【0081】
上述してきたように、本発明にかかる管理機Aによれば、所望する溝の形に応じて別々の管理機を用いたり、または、培土器などの付属品を管理機に別途配設することなく、1台の管理機で、作物の種類に応じて溝の形状を選択することができる。
【0082】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る管理機の左側面を示した全体図である。
【図2】本発明に係る管理機の平面図である。
【図3】本発明に係る管理機の斜視図である。
【図4】耕耘作業部を示した平面図である。
【図5】耕耘作業部を示した平面図である。
【図6】機体の左側方から見た耕耘作業部を示した説明図である。
【図7】本発明に係る管理機の斜視図である。
【図8】U溝形成時の管理機の状態を示した説明図である。
【図9】本発明に係る管理機の斜視図である。
【図10】V溝形成時の管理機の状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0084】
A 管理機
2 ミッション部
5 耕耘作業部
18 耕耘軸
19 爪軸
20 耕耘爪
21 ロータリーフレーム
23a 左ロータリーカバー
23b 右ロータリーカバー
30a 左畝立てシート
30b 右畝立てシート
31 中央土分け体
54 V溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッション部と、
同ミッション部に固定して後方へ伸延させたロータリーフレームと、
前記ロータリーフレームの下方で前記ミッション部と連動連結させて配設した耕耘軸に、半径方向外方に向けて放射状に立設した複数の耕耘爪を備える円筒状の爪軸を挿通して形成した耕耘作業部と、
同耕耘作業部の上方を覆うように配設し、前記ロータリーフレームの左右両側で機体の前後方向へ伸延する回転軸周りに開閉可能に構成した左右ロータリーカバーと、を備える管理機において、
前記左右ロータリーカバーの各後部に、矩形状の左右畝立てシートを、機体の下部後方へ向けてそれぞれ吊設し、
前記ロータリーフレームの後端部には、前記左畝立てシート及び右畝立てシートの少なくとも一部を上から覆う状態に配設した中央土分け体を固定していることを特徴とする管理機。
【請求項2】
前記爪軸は、前記耕耘軸に、前記耕耘爪の先端が機体の外方へ向くように挿通し、
前記左右ロータリーカバーは、前記左右畝立てシートの下端部が略水平状態となる閉位置と、前記左畝立てシートの左下端部及び前記右畝立てシートの右下端部が前記中央土分け体の下端部よりも上方となる開位置とに開閉可能なものであり、
同左右ロータリーカバーを開位置とした状態で、前記耕耘軸を進行方向と同方向へ回動させながら機体を前方へ進行させることにより、
前記耕耘爪で耕耘した土を、前記中央土分け体で機体の左右両側に押し分けて、断面視略V型の溝を形成可能としたことを特徴とする請求項1に記載の管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−252221(P2007−252221A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77753(P2006−77753)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】