説明

管理機

【課題】車軸への動力伝達部材の構成を簡素化し、設置スペースおよび部品点数を削減させ、生産性かつ操作性の向上およびコンパクト化を図った管理機を提供する。
【解決手段】機体の下部に配設したロータリー耕耘装置3の前方または後方であって、機体の左右下部に配置した駆動輪としての車輪4を備え、車輪4には、外周面近傍の内側部に動力伝達部材21を設け、この動力伝達部材21の近傍には、アクチュエータ23を配置するとともに、アクチュエータ23の出力軸23a先端部には、動力伝達部材21と噛合可能な回転部材24を設け、車輪4を、アクチュエータ23の動力により回転部材24および動力伝達部材21を介して駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の下部に配設したロータリー耕耘装置の前方または後方であって、機体の左右下部に配置した駆動輪としての車輪を備える管理機に関し、より詳細には、車輪には、外周面近傍の内側部に動力伝達部材を設け、この動力伝達部材の近傍には、アクチュエータを配置するとともに、アクチュエータの出力軸先端部には、動力伝達部材と噛合可能な回転部材を設け、車輪を、アクチュエータの動力により回転部材および動力伝達部材を介して駆動させた管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管理機には、例えば、機体フレームにバッテリーと電動モータを搭載し、機体前部にロータリ耕耘装置および機体後部に走行車輪が配設され、機体の側部には動力伝動機構である一対の出入力プーリ並びにこの間に巻装するベルトが設けられ、電動モータからプーリに伝達された動力は、ミッションケースの入力軸に伝えられ、車軸に取付ける左右の走行車輪を駆動するとともにロータリケースを介してロータリ耕耘装置の耕耘軸を駆動させるもの(例えば、特許文献1)がある。また、耕耘軸と前輪をエンジン駆動し、後輪を、この後輪上に設置したモータで駆動するハイブリッド型の管理機(例えば、特許文献2)もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−169602号公報
【特許文献2】特開2007−22378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような管理機では、電動モータと車軸との間に、クラッチ部材のほか、減速機構としてのベルトやチェン、ギアなどを必要とし、電動モータの動力を車軸に、クラッチ部材で接続または遮断させたり、ベルトやチェン、ギアなどを用いて減速を行わなければならず、これらクラッチ部材や減速機構を設置するために大きなスペースを要し、機体の小型化や製造コストを下げることができないという問題があった。また、車軸への動力接断や、車軸の正転逆転の切換えが、これらクラッチ部材や減速機構を介して複雑な構成をしており、操作性やメンテナンス性が悪いという問題もあった。
そこで、この発明の目的は、車軸への動力伝達部材の構成を簡素化し、設置スペースおよび部品点数を削減させ、生産性かつ操作性の向上およびコンパクト化を図った管理機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、機体の下部に配設したロータリー耕耘装置の前方または後方であって、前記機体の左右下部に配置した駆動輪としての車輪を備える管理機において、前記車輪には、外周面近傍の内側部に動力伝達部材を設け、該動力伝達部材の近傍には、アクチュエータを配置するとともに、前記アクチュエータの出力軸先端部には、前記動力伝達部材と噛合可能な回転部材を設け、前記車輪を、前記アクチュエータの動力により前記回転部材および動力伝達部材を介して駆動させたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の管理機において、前記アクチュエータは、摺動可能に設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の管理機において、前記車輪は、前記動力伝達部材を、前記アクチュエータの回転方向切換えにより正逆回転させることで、前後進を切換可能としたことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の管理機において、前記回転部材は、前記車輪に設けた2の前記動力伝達部材間に挟装し、前記アクチュエータの摺動により、前記回転部材を、いずれか一方の前記動力伝達部材間に噛合わせることで、前記車輪を前後進切換可能としたことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の管理機において、前記動力伝達部材は、前記車輪の内周部に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、機体の下部に配設したロータリー耕耘装置の前方または後方であって、機体の左右下部に配置した駆動輪としての車輪を備える管理機において、車輪には、外周面近傍の内側部に動力伝達部材を設け、この動力伝達部材の近傍には、アクチュエータを配置するとともに、アクチュエータの出力軸先端部には、動力伝達部材と噛合可能な回転部材を設け、車輪を、アクチュエータの動力により回転部材および動力伝達部材を介して駆動させたので、車輪を電動モータ(アクチュエータ)により動力伝達部材を介して直接回転させることができ、電動モータと車輪との動力接続を簡素化することができる。また、電動モータと車輪との間には、従来のように、減速機構としてのベルトやチェン、ギアなどの設置を必要とせず、部品点数の削減および省スペース化を図ることができるとともに、車輪に取付けた動力伝達部材が、大きな減速効果を車輪に与えることができる。従って、生産性を向上させたコンパクトな管理機を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、アクチュエータは、摺動可能に設けたので、従来のようにクラッチ部材などを必要とせず、作業者は操作部材などによる簡単な操作で電動モータを摺動させて電動モータの設置位置を変更し、この電動モータを動力伝達部材に接続または離間させて、容易に電動モータの動力を車輪の動力伝達部材に接断させることができる。従って、生産性および操作性を向上させたコンパクトな管理機を提供することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、車輪は、動力伝達部材を、アクチュエータの回転方向切換えにより正逆回転させることで、前後進を切換可能としたので、アクチュエータの回転方向を切換えるのみの簡単な構成で、動力伝達部材による減速効果を得ながら車輪を前後進させることができる。従って、生産性および操作性を向上させた管理機を提供することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、回転部材は、車輪に設けた2の動力伝達部材間に挟装し、アクチュエータの摺動により、回転部材を、いずれか一方の動力伝達部材間に噛合わせることで、車輪を前後進切換可能としたので、作業者は電動モータを、操作部材などで所望する機体の進行方向に対応する位置に摺動させるだけで車輪の前後進切換えを容易に行うことができる。従って、操作性を向上させた管理機を提供することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、動力伝達部材は車輪の内周部に設けたので、車輪内周のスペースを有効活用できるとともに、電動モータにより動力伝達部材を介して車輪の内周から減速効果を得ながら安定的に車輪を回転させることができる。従って、生産性を向上させたコンパクトな管理機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一例としての管理機の全体側面図である。
【図2】同管理機を上方から見た斜視図である。
【図3】同管理機の平面図である。
【図4】走行系の動力伝達機構を備える左車輪内側の斜視図である。
【図5】走行系の動力伝達機構における、動力伝達部材と回転部材とを離間させた状態(a)および動力伝達部材と回転部材とを接続させた状態(b)を示す左車輪付近の背面断面図である。
【図6】車輪内側の内外周に走行系の動力伝達機構を二重構造で備える左車輪付近の背面断面図である。
【図7】車軸に走行系の動力伝達機構を二重構造で備える左車輪付近の背面断面図である。
【図8】車輪内側に取付部を介して二重構造の動力伝達部材を備える左車輪付近の背面断面図である。
【図9】車輪内周に組込んだ動力伝達部材を模式的に示す左車輪の斜視図である。
【図10】リアロータリー型の例を示す管理機の全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1はこの発明の一例としての管理機の全体側面図、図2は同管理機を上方から見た斜視図、図3は同管理機の平面図である。
【0017】
この管理機1は、図1〜3に示すように、例えば、機体中央に配設した機体フレーム2の前部下方に、作業機としてのロータリー耕耘装置3を配置し、機体フレーム2の後部下方であって、ロータリー耕耘装置3の後方には、左右一対の車輪4を配設するとともに、機体フレーム2上にはバッテリー6が積載されている。さらに、機体フレーム2の後部からは、機体の後方かつ上方に向けて延出した操縦ハンドル10が備えられる。
【0018】
そして、機体フレーム2の下部に取付けられたケース5には、ロータリー耕耘装置3の耕耘軸12および車輪4の車軸14が枢支されている。なお、符号16はゲージ輪である。
【0019】
ロータリー耕耘装置3は、周面に複数の耕耘爪11を放射状に植設した耕耘軸12から構成され、これら上方をカバー7で覆設している。そして、例えば、耕耘軸12の内部には、それぞれ図示しない、操縦ハンドル10に連係した制御部を備える電動モータが、減速機構とともに配設され、バッテリー6から供給された電力により前記電動モータを介して耕耘軸12を回転駆動させている。なお、耕耘軸12を駆動させる電動モータは、上述の構成に限定されず、例えば、機体フレーム2に固定し、この出力軸を耕耘軸12に適宜方法で連結させてもよい。
【0020】
また、上述したバッテリー6は、本実施例のような機体前部にロータリー耕耘装置3を備えるフロントロータリー型の管理機1では、バッテリー6の中央部(重心部)が耕耘軸12上に位置するように機体フレーム2上に配置させることが好ましい。このような構成にすることで、ロータリー耕耘装置3側に適度な荷重を与え、操縦ハンドル10の操作力を適切な操作力にできるとともに、耕耘爪11の反力によるロータリー耕耘装置3の浮き上がりを防止することができる。
【0021】
なお、本願発明の管理機1は、上述した例のフロントロータリー型であっても、以下に記すリアロータリー型でもよく、図10に例示するような、機体後部にロータリー耕耘装置3´を備えるリアロータリー型の管理機1´の場合では、バッテリー6´を、機体前部に配設した車輪4´の車軸上より、バッテリー6´の一部または全体を前方に突出させて機体フレーム2´上に設置する。このような構成にすることで、バッテリー6´がフロントウェイトの機能を果たすため、従来、機体前端部に設けていた、金属製の重量を有するフロントウェイトを小型化あるいは不要とすることができる。従って、機体の総重量を軽減でき、作業性や燃費を向上させることができる。
【0022】
次に、本願発明の特徴である、走行系の動力伝達機構について、その具体的構成を説明する。図4は走行系の動力伝達機構を備える左車輪内側の斜視図、図5は走行系の動力伝達機構における、動力伝達部材と回転部材とを離間させた状態(a)および動力伝達部材と回転部材とを接続させた状態(b)を示す左車輪付近の背面断面図である。
【0023】
本願発明の管理機1を構成する左右一対の車輪4であって、その左右一方の車輪4(本例では左車輪4で説明しているが、右車輪4であってもよい)における外周面近傍の内側部には、例えば、図3〜4に示すような外周面に歯先を備える平歯車などの動力伝達部材21が、車輪4の外周面に沿って固設あるいは着脱可能に取付けられる。
【0024】
また、左車輪4側の機体フレーム2に取付けた台座22の上面には、バッテリー6から供給された電力で駆動し、操縦ハンドル10に連係した制御部を備える電動モータなどのアクチュエータ23が、出力軸23aを左車輪4側(機体外側方)に向け、かつ出力軸23aの先端部が下方の動力伝達部材21上に位置するように、取付部材などで着脱可能に固定されている。
【0025】
さらに、このアクチュエータ23における出力軸23aの先端部には、動力伝達部材21の歯先と噛合可能な歯車などの回転部材24が取付けられる。
【0026】
この台座22は、図4に示したように、例えば、上板22aおよび下板22bからなる周知の平行クランク機構を用いてもよく、下板22bが機体フレーム2に固定される。そして、上板22aおよび下板22bの後部側面に形成された溝d内に、支点軸cを中心に回動するアーム22c後端のピンp1,p2が嵌入される。
【0027】
さらに、このアーム22c上部のピンp1には、連結部材24を介して機体後方に向けて延出させたレバーなどの操作部材25の基端部が取付けられるとともに、基端部より上方の回動支点Cに設けられた回動支点軸26が、機体フレーム2などに枢支される。
【0028】
従って、台座22は、後述する操作部材25の操作により、アーム22cの支点軸cを中心とした回動により、ピンp1,p2が、上板22aおよび下板22bの溝d内を摺動することで、アーム22cの上下方向の摺動に応じ、下板22bに対して上板22aが上下方向に摺動するため、アクチュエータ23も、回転部材24が動力伝達部材21に接触または離間する範囲の高さで上下摺動する構成とされる。
【0029】
このように、走行系の動力伝達機構20は、動力伝達部材21や台座22、アクチュエータ23、操作部材25などから構成される。なお、上板22aおよびアクチュエータ23は、上方向に摺動しても機体フレーム2に接触しない(摺動を阻害されない)機体フレーム2の側方に設置される。
【0030】
ここで、管理機1の機体を走行させる場合には、作業者は、例えば、アクチュエータ23を駆動させ、操作部材25を、ニュートラル位置から走行位置に向けて上方へ回動操作する。このとき操作部材25は、回動支点Cを中心として基端部が後方へ回動されることから、連結部材24がピンp1を溝dに沿って後方に摺動し、アーム22cが支点軸cを中心として下方に摺動することで、上板22aが下方に摺動される。
【0031】
なお、操作部材25の走行位置やニュートラル位置での係止(回転部材24を動力伝達部材21に噛み合わせた状態で維持)方法は、特に限定されるものではないが、例えば、溝dの両端に設けたノッチnにピンp1を係止させてもよい。または、アーム22cに係止部材を設けたり、あるいは操作部材25の周囲に係止板を設置してもよい。
【0032】
この結果、アクチュエータ23の設置位置が下方に移動し、図5(b)に示すように回転部材24を動力伝達部材21に噛合わせることで、アクチュエータ23の回転駆動力が、回転部材24および動力伝達部材21を介して左車輪4に伝達され、車軸14を介して左右車輪4が回転し、機体を前進走行させることができる。なお、走行速度は、操縦ハンドル10の操作により、前記制御部を介してアクチュエータ23の回転速度を変化させることで、機体の走行速度が調節される。
【0033】
なお、機体を後進させる際、この場合には、操縦ハンドル10の操作により、前記制御部を介してアクチュエータ23の回転向きを逆転させることにより、機体を後進させることができる。
【0034】
また、アクチュエータ23から車輪4への動力伝達を遮断させる場合には、上述とは逆に、操作部材25を、走行位置からニュートラル位置に向けて下方へ回動操作する。このとき操作部材25は、回動支点Cを中心として基端部が前方へ回動されることから、連結部材24がピンp1を溝dに沿って前方に摺動し、アーム22cが支点軸cを中心として上方に摺動することで、上板22aが上方に摺動される。
【0035】
この結果、アクチュエータ23の設置位置が上方に移動し、図5(a)に示すように回転部材24を動力伝達部材21との噛合わせを解除して離間させることで、アクチュエータ23の回転駆動力の左車輪4への伝達を遮断でき、左右車輪4の回転駆動を停止させることができる。
【0036】
このような構成にすることで、車輪4をアクチュエータ23により動力伝達部材21を介して直接回転させることができ、アクチュエータ23と車輪4との動力接続を簡素化することができる。また、アクチュエータ23と車輪4との間には、従来のように、減速機構としてのベルトやチェン、ギアなどの設置を必要とせず、部品点数の削減および省スペース化を図ることができるとともに、車輪4に取付けた動力伝達部材21が、大きな減速効果を車輪4に与えることができる。
【0037】
特に、動力伝達部材21を車輪4の外周面近傍の内側部に設置したため、上述したような従来の減速機構としてのギアを、車輪4の直径程度に大きく設置する場合と同等の減速効果を有し、減速機構を劇的に簡素化させることができる。
【0038】
さらに、アクチュエータ23は摺動可能に設けたので、従来のようにクラッチ部材などを必要とせず、作業者は操作部材25などによる簡単な操作でアクチュエータ23を摺動させてアクチュエータ23の設置位置を変更し、このアクチュエータ23を動力伝達部材21に接続または離間させて、アクチュエータ23の動力を車輪4の動力伝達部材21に容易に接断させることができる。
【0039】
また、車輪4は、動力伝達部材21を、アクチュエータ23の回転方向切換えにより正逆回転させることで、前後進を切換可能としたので、アクチュエータ23の回転方向を切換えるのみの簡単な構成で、動力伝達部材21による減速効果を得ながら車輪4を前後進させることができる。
【0040】
なお、アクチュエータ23を摺動可能に設置する台座22の昇降方法は、上述したような平行リンク機構によるものに限られず、例えばバネなどの弾性部材を用いたり、あるいは電動モータなど適宜方法を用いることができる。
【0041】
また、本願では、アクチュエータ23の回転方向を変えずに、車輪4を前後進させることもできる。図6は車輪内側の内外周に走行系の動力伝達機構を二重構造で備える左車輪付近の背面断面図、図7は車軸に走行系の動力伝達機構を二重構造で備える左車輪付近の背面断面図、図8は車輪内側に取付部を介して二重構造の動力伝達部材を備える左車輪付近の背面断面図である。
【0042】
この場合、例えば、まず図6に示すように、動力伝達部材31として、上述同様左右一方の車輪4(本例では左車輪4で説明しているが、右車輪4であってもよい)における外周面近傍の内側部には、内周面に歯先を備える平歯車などの動力伝達部材31aが、車輪4の内周面に沿って固設あるいは着脱可能に取付けられる。
【0043】
さらに、車輪4の内側部であって、アクチュエータ23の回転部材24が上下摺動可能なスペースを介して動力伝達部材31aの内側には、この動力伝達部材31aの直径よりも短く、外周面に歯先を備える平歯車などの動力伝達部材31bが動力伝達部材31aに沿って固設あるいは着脱可能に取付けられる。
【0044】
そして、これら動力伝達部材31の動力伝達部材31a,31b間には、アクチュエータ23の出力軸23aを左車輪4側(機体外側方)に向け、かつ出力軸23aの先端部に備える回転部材24が上方および下方の動力伝達部材31a,31bにおける歯先に位置するように、上述同様にして機体フレーム2に取付けた台座22の上面に取付部材などで着脱可能に固定(図6〜7では台座22や操作部材25などの記載は省略する)されている。
【0045】
ここで、例えば、出力軸23aが一定方向に回転(例えば、左側面視反時計回り)するアクチュエータ23により機体を前進させたい場合には、作業者は操作部材25でアクチュエータ23を上述同様の方法で上方に摺動し、アクチュエータ23の回転部材24を、動力伝達部材31aに接触(回転部材24を動力伝達部材31aにおける内周面の歯先に接触)させることで、動力伝達部材31aが回転部材24と同方向(例えば、左側面視反時計回り)に回転し、左車輪4が動力伝達部材31aを介して前進する。
【0046】
また、機体を後進させたい場合には、作業者は操作部材25でアクチュエータ23を下方に摺動し、アクチュエータ23の回転部材24を、動力伝達部材31bに接触(回転部材24を動力伝達部材31bにおける外周面の歯先に接触)させることで、動力伝達部材31bが回転部材24と逆方向(例えば、左側面視時計回り)に回転し、左車輪4が動力伝達部材31bを介して後進する。なお、機体を前後進させない場合には、アクチュエータ23を動力伝達部材31a,31b間のニュートラル位置に摺動させる。
【0047】
このような構成により、作業者はアクチュエータ23を、操作部材などで所望する機体の進行方向に対応した位置に摺動させるだけで、車輪4の前後進切換えを容易に行うことができる。よって、機体前後進の際、アクチュエータ23の回転方向を切換える必要がなく、アクチュエータ23の制御を簡素化することができる。
【0048】
また、動力伝達部材は、車軸に取付けることもできる。この場合、図7に示すように、動力伝達部材41として、上述同様に左右一方の車輪4(本例では左車輪4で説明しているが、右車輪4であってもよい)近傍の車軸14に、円盤状の動力伝達部材取付板42が設置され、この動力伝達部材取付板42の外側面には、内周面に歯先を備える平歯車などの動力伝達部材41aが、車軸14の外周面に沿って固設あるいは着脱可能に取付けられる。
【0049】
さらに、動力伝達部材取付板42の外側面であって、アクチュエータ23の回転部材24が上下摺動可能なスペースを介して動力伝達部材41aの内側には、この動力伝達部材41aの直径よりも短く、外周面に歯先を備える平歯車などの動力伝達部材41bが動力伝達部材41aに沿って固設あるいは着脱可能に取付けられる。
【0050】
また、これら動力伝達部材41の動力伝達部材41a,41b間には、アクチュエータ23の出力軸23aを機体中央に向け、かつ出力軸23aの先端部に備える回転部材24が上方および下方の動力伝達部材41a,41bにおける歯先に位置するように、上述同様にして図7では図示しない機体フレーム2に取付けた台座22の上面に取付部材などで着脱可能に固定されている。
【0051】
そして、上述同様に、出力軸23aが一定方向に回転(例えば、左側面視反時計回り)するアクチュエータ23により機体を前進させたい場合には、作業者は操作部材25でアクチュエータ23を上方に摺動し、アクチュエータ23の回転部材24を、動力伝達部材41aにおける内周面の歯先に接触させることで、動力伝達部材41aが回転部材24と同方向(例えば、左側面視反時計回り)に回転し、左車輪4が動力伝達部材41aを介して前進する。
【0052】
また、機体を後進させたい場合には、作業者は操作部材25でアクチュエータ23を下方に摺動し、アクチュエータ23の回転部材24を、動力伝達部材41bにおける外周面の歯先に接触させることで、動力伝達部材41bが回転部材24と逆方向(例えば、左側面視時計回り)に回転し、左車輪4が動力伝達部材41bを介して後進する。
【0053】
さらに、図8に示すような動力伝達部材61にすることもできる。この場合、左右一方の車輪4(本例では左車輪4で説明しているが、右車輪4であってもよい)の内側部には、例えば円筒状などの動力伝達部材取付部62が設置され、この動力伝達部材取付部62の外側面には、互いに対向する内側面に歯先を備える、かさ歯車などの動力伝達部材61a,61bが、動力伝達部材取付部62の外周面に沿って固設あるいは着脱可能に取付けられる。
【0054】
また、これら動力伝達部材61a,61b間には、アクチュエータ23の出力軸23aを車軸14側に向け、かつ出力軸23aの先端部に備える回転部材24が、左右の動力伝達部材61a,61bの歯先に接触するように、アクチュエータ23を左右摺動自在にすべく上述同様にして機体フレーム2に取付けた台座22の側面に取付部材などで着脱可能に固定(図6〜8では台座22や操作部材25などの記載は省略する)されている。
【0055】
そして、例えば、出力軸23aを一定方向に回転させるアクチュエータ23において、操作部材25により上述同様の要領でアクチュエータ23を右方向に摺動し、回転部材24を動力伝達部材61aに接触させて機体を前進させるとともに、アクチュエータ23を左方向に摺動し、回転部材24を動力伝達部材61bに接触させて機体を後進させるものである。
【0056】
これらのような構成にすることで、回転部材24を、車輪4に設けた2の動力伝達部材31a,31bまたは41a,41bあるいは61a,61b間に挟装し、アクチュエータ23の摺動により、回転部材24を、いずれか一方の動力伝達部材間に噛合わせることで、車輪4を前後進切換可能としたので、作業者はアクチュエータ23を、操作部材25などで所望する機体の進行方向に対応する位置に摺動させるだけで車輪4の前後進切換えを容易に行うことができる。よって、機体前後進の際、アクチュエータ23の回転方向を切換える必要がなく、アクチュエータ23の制御を簡素化することができる。
【0057】
また、本願発明の管理機では、動力伝達部材を車輪の内周に組込む構成にしてもよい。図9は車輪内周に組込んだ動力伝達部材を模式的に示す左車輪の斜視図である。
【0058】
この図例のように、動力伝達部材51は、三股のスポーク52各端部に設け、左車輪4(右車輪4であってもよい)の内周部に嵌入させた転輪などの動力伝達部材51a,51b,51cと、これら動力伝達部材51のいずか1つの動力伝達部材51aに車輪4内側方から出力軸23aを連結したアクチュエータ23とから構成される。なお、アクチュエータ23は機体フレーム2などに適宜固定される。なお、出力軸23aには、クラッチ部材53が設けられる。
【0059】
そして、機体を前進させたい場合には、作業者は、操縦ハンドル10などの操作によりクラッチ部材53の接続状態において、アクチュエータ23の出力軸23aを機体前進方向(例えば左側面視半時計回り)に回転駆動させることで、動力伝達部材51aも同方向に回転し、この動力伝達部材51aの摩擦力により左車輪4も同方向に回転し、車輪4を前進させることができる。
【0060】
また、機体を後進させたい場合には、作業者は、操縦ハンドル10などの操作によりクラッチ部材53の接続状態において、アクチュエータ23の出力軸23aを機体後進方向(例えば左側面視時計回り)に回転駆動させることで、動力伝達部材51aも同方向に回転し、この動力伝達部材51aの摩擦力により左車輪4も同方向に回転し、車輪4を後進させることができる。
【0061】
このような構成により、動力伝達部材51を車輪4の内周部に設けたので、車輪4内周のスペースを有効活用できるとともに、アクチュエータ23により動力伝達部材51を介して車輪4の内周から減速効果を得ながら安定的に車輪4を回転させることができる。なお、この場合、不図示の車軸14は、スポーク52に回転自在に枢支してもよいが、スポーク52は機体フレーム2などに固定される。
【0062】
なお、上述の例では、動力伝達部材51aの回転により車輪4を摩擦で回転させる例で説明したが、動力伝達部材51aの外周面および車輪4の内側面に歯車の歯先を設け、それらを噛合わせる構成にしてもよい。
【0063】
以上詳述したように、この例の管理機1は、機体の下部に配設したロータリー耕耘装置3の前方または後方であって、機体の左右下部に配置した駆動輪としての車輪4を備え、車輪4には、外周面近傍の内側部に動力伝達部材21を設け、この動力伝達部材21の近傍には、アクチュエータ23を配置するとともに、アクチュエータ23の出力軸23a先端部には、動力伝達部材21と噛合可能な回転部材24を設け、車輪4を、アクチュエータ23の動力により回転部材24および動力伝達部材21を介して駆動させたものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
なお、この発明は、駆動輪として、アクチュエータにより駆動する車輪を備えるあらゆる管理機に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 管理機
2 機体フレーム
3 ロータリー耕耘装置
4 車輪
6 バッテリー
14 車軸
20 動力伝達機構
21,31,41,51,61 動力伝達部材
22 台座
22a 上板
22b 下板
22c アーム
23 アクチュエータ
23a 出力軸
24 回転部材
25 操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の下部に配設したロータリー耕耘装置の前方または後方であって、前記機体の左右下部に配置した駆動輪としての車輪を備える管理機において、
前記車輪には、外周面近傍の内側部に動力伝達部材を設け、
該動力伝達部材の近傍には、アクチュエータを配置するとともに、
前記アクチュエータの出力軸先端部には、前記動力伝達部材と噛合可能な回転部材を設け、
前記車輪を、前記アクチュエータの動力により前記回転部材および動力伝達部材を介して駆動させたことを特徴とする管理機。
【請求項2】
前記アクチュエータは、摺動可能に設けたことを特徴とする、請求項1に記載の管理機。
【請求項3】
前記車輪は、前記動力伝達部材を、前記アクチュエータの回転方向切換えにより正逆回転させることで、前後進を切換可能としたことを特徴とする、請求項1に記載の管理機。
【請求項4】
前記回転部材は、前記車輪に設けた2の前記動力伝達部材間に挟装し、前記アクチュエータの摺動により、前記回転部材を、いずれか一方の前記動力伝達部材間に噛合わせることで、前記車輪を前後進切換可能としたことを特徴とする、請求項1に記載の管理機。
【請求項5】
前記動力伝達部材は、前記車輪の内周部に設けたことを特徴とする、請求項1に記載の管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−158283(P2012−158283A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20505(P2011−20505)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】