説明

粉粒体施用装置

【課題】機体幅の略中央にブロア配置を可能とし、多条植えの粉粒体繰出部に対する加圧空気供給が左右非対称でも簡易な構成で個々の粉粒体繰出部の安定動作を可能とする田植機の粉粒体施用装置を提供する。
【解決手段】粉粒体施用装置40は、複数の粉粒体繰出部42を車幅方向に配列してブロア47から受けた加圧空気を案内するエアチャンバ48を備え、粉粒体を移送ホース43によりエア搬送するように構成され、上記エアチャンバ48は、粉粒体繰出部42の配列線に沿って各粉粒体繰出部42…と連通する左右対称の2つの連通部48sと、これら左右の連通部48sの間を1箇所以上の折れ点Pで機体の前後方向に折曲して接続する中間部48cとから形成し、この中間部48cの何れかの折れ点Pには、その折れ曲がりの内側部分に向けてブロア47から加圧空気を案内する給気路49を接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラクタや田植機等に併設されて肥料や薬剤等の粉粒体を施用する粉粒体施用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
田植機は、水田走行可能な機体に多条用の苗載台、苗移植装置等を備えて圃場に苗を植付け、また、特許文献1に示すように、粉粒体施用装置を備えることにより、肥料、薬剤を圃場に施用することができる。
上記粉粒体施用装置は、各植付条について粉粒体繰出部を横並びに備え、この粉粒体繰出部にはエアチャンバからブロアによる加圧空気を受け、それぞれの供給ホースを介して肥料、薬剤を送出する。
【0003】
また、機体中央のエンジン位置との関係からブロアを中央に配置した左右対称の構成が採れないので加圧空気の左右配分が不安定となり、この不安定な空気流によって粉粒体の詰まりが生じないように、横並びの粉粒体繰出部に沿って延びるエアチャンバの一側端にブロアを配置することにより、加圧空気の一様な配分を可能としている。
【特許文献1】特開2004−81099号公報
【0004】
しかし、上記粉粒体施用装置は、横並びの粉粒体繰出部に沿って延びるエアチャンバの一側端にブロアが配置されていることから、ブロアをエンジン近傍配置とした場合と比較して機体幅方向の寸法低減上の大きなネックとなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、機体幅のコンパクト化のためにブロアの機体幅の略中央配置を可能としつつ、多条の粉粒体繰出部に対する加圧空気供給が左右非対称でも簡易な構成で個々の粉粒体繰出部の安定動作を可能とする粉粒体施用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、粉粒体タンク(41)から所定量の粉粒体を移送ホース(43)側に繰出す複数の粉粒体繰出部(42…)を車幅方向に配列し、前記移送ホース(43)にブロア(47)から受けた加圧空気を案内するエアチャンバ(48)を備え、粉粒体を移送ホース(43…)によりエア搬送する粉粒体施用装置において、上記エアチャンバ(48)は、粉粒体繰出部(42…)の配列線に沿って各粉粒体繰出部(42…)と連通する左右対称の2つの連通部(48s、48s)と、これら左右の連通部(48s、48s)の間を1箇所以上の折れ点(P)で機体の前後方向に折曲して接続する中間部(48c)とから形成し、この中間部(48c)の何れかの折れ点(P)には、その折れ曲がりの内側部分に向けてブロア(47)から加圧空気を案内する給気路(49)を接続したことを特徴とする。
【0007】
上記ブロアからの加圧空気は、給気路からエアチャンバの中間部の何れかの折れ点でその折れ曲がりの内側部分に向けてその左右に安定配分され、左右対称の2つの連通部から各粉粒体繰出部を介して移送ホース内の粉粒体が加圧空気によって移送される。
【発明の効果】
【0008】
上記粉粒体施用装置は、ブロアからの加圧空気が給気路からエアチャンバの中間部によりその左右に安定配分され、左右対称の2つの連通部からの加圧空気によって各粉粒体繰出部から移送ホースを介して粉粒体が移送されることから、ブロアを略機体中央配置として機体幅寸法のコンパクト化及び機体の左右重量バランスの安定化を図りつつ、粉粒体の安定施用を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の一実施例である4条植え乗用型田植機について図面に基づき詳細に説明する。乗用田植機の側面図を図1に示し、平面図を図2に示す。
走行車体1の前後には走行車輪としての左右一対の前輪2、2及び後輪3、3が架設されている。車体上前部に操作ボックス4及びステアリングハンドル5等を有する操縦装置がフロントステップ6上に設けられ、車体後方部には昇降可能に植付部7が装着されている。操作ボックス4の後側に運転席8が設けられ、運転席8の下側に田植機の各部に動力を供給するエンジン9が搭載されている。また、ステップ6の後方部分は後輪3のフェンダーカバーを兼ねている。なお、本明細書では乗用田植機の前進側に向かって左方向、右方向をそれぞれ左側、右側という。
【0010】
植付部7は、左右に往復動する苗載タンク10、一株分の苗を切取って土中に植込む植付装置11、苗植付面を整地するフロート12等からなる。エンジン9の駆動により、エンジン出カプーリ13、伝動ベルト14b及びミッション入力プーリ15を介して入力軸(図示せず)へ伝動し、該入力軸によりミッションケース17内へ動力を伝達する構成である。
【0011】
ミッションケース17から左右方向に突設する前輪アクスルケース(不図示)を介して左右前輪駆動ケース19内へ伝動し、前輪車軸20を回転駆動して左右の前輪2、2を駆動するようになっている。また、該ミッションケース17の後部から後方に動力を伝達する左右の後輪伝動軸21を設け、該左右の後輪伝動軸21の駆動により左右それぞれの後輪伝動ケース22内に伝動し、後輪車軸23を回転駆動して左右の後輪3、3を駆動するようになっている。
【0012】
なお、植付部7は、油圧昇降シリンダ24の伸縮による昇降リンク機構25の上下回動により、上下方向に昇降するよう設けられている。また、植付部7は、前記ミッションケース17からの動力により、該ケース17から後方へ延びる植付伝動軸26により伝動されて作動する構成となっている。
【0013】
ステアリングハンドル5は、これの回動操作によりステアリング軸27及び図示しないピットマンアームとタイロッド等を介して左右の前輪2、2を操向させ操舵するようになっている。ステアリングハンドル5の左側には主変速レバー29を、右側にはスロットルレバー30を設けている。また、操作ボックス4の左側部には機体の走行及び植付部7の駆動の停止操作を行う停止レバー31を、右側部には植付部7の昇降及び駆動の入切が行える植付・昇降レバー32(図2)を設けている。
【0014】
車体1前部の左側寄り位置には主クラッチペダル33(図2)を設けている。この主クラッチペダル33の踏み込み操作により機体の走行及び植付部7の駆動を停止するように構成している。また、車体1前部の右側寄り位置にはブレーキ操作具(以下ブレーキペダルという)34(図2)を設けている。このブレーキペダル34は、該ペダル34の踏み込み操作で図示しない連結機構を介してミッションケース17内の4輪ブレーキ装置(図示せず)を作動させて左右の前後輪2、3を制動するように構成している。なお、主クラッチペダル33を省略して、ブレーキペダル34の踏み込み操作にて主クラッチが同時に切れる構成にしても良い。
【0015】
運転席8の後方には、粉粒体施用装置40を設ける。この粉粒体施用装置40は、粉粒体タンク41から所定量の粉粒体を移送ホース43側に繰出す粉粒体繰出部42…を車幅方向に植付け条と対応して配列し、これら各粉粒体繰出部42…にブロア47から受けた加圧空気を案内するエアチャンバ48を備え、粉粒体を植付条数分の移送ホース43…によりエア搬送する。この移送ホース43…により、薬肥は、フロート12の左右両側に取り付けた対応する施用ガイド44…まで導かれ、施用ガイド44…の前側に設けた作溝体45、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。
【0016】
上記エアチャンバ48は、図3の拡大平面図(a)、背面図(b)、左側面図(c)により示すように、粉粒体繰出部42の配列線に沿って各粉粒体繰出部42と連通する左右対称の2つの連通部48s、48sと、これら左右の連通部48s、48sの間を機体の後方にコの字状に折曲して接続する中間部48cとから形成し、この中間部48cの何れかの折れ点Pにその折れ曲がりの内側部分Cに向けてブロア47から加圧空気を案内する給気路49を接続する。ブロア47は、エンジン9の駆動力がベルト14aにより運転席8の下方に配置されたプーリ47aを介して伝達駆動される。
【0017】
上記構成の粉粒体施用装置40は、エアチャンバ48に1箇所以上の折れ点Pで機体の前後方向に折曲する中間部48cを備え、その何れかの折れ点Pで折れ曲がりの内側部分Cに向けて給気路49を接続することにより、ブロア47からの加圧空気が中間部48cの折れ点Pでその左右に安定配分され、左右対称の2つの連通部48s,48sの加圧空気によって各粉粒体繰出部42から粉粒体が移送ホース43を介して移送される。したがって、ブロアを略機体中央配置として機体幅寸法のコンパクト化及び機体の左右重量バランスの安定化を図りつつ、粉粒体の安定施用を確保することが可能となる。
【0018】
また、上記エアチャンバ48の支持構成は、図4の拡大平面図(a)、背面図(b)、左側面図(c)により示すように、左右の施用部支持フレーム58s、58sの内側の左右の接続プレート58p、58pの間にエアチャンバの中間部48cを挟み込むようにして同施用部支持フレーム58s、58sにエアチャンバ48を固定する。また、施用部支持フレーム58s、58sに固定するエアチャンバ48の部分は断面を長方形に形成する。尚、前記左右の施用部支持フレーム58s、58s及び接続プレート58p、58pは、左右方向に延びる共通の本体フレーム59に支持された構成となっている。
【0019】
このように、左右の接続プレート58p、58pの間にエアチャンバの中間部48cを填め込むように固定することにより、支持剛性を確保して粉粒体施用装置40の全体バランスを良くすることができる。また、本体フレーム59にはエアチャンバ48の取付けブラケットを設ける必要がなくなる。
【0020】
また、図5の田植機本体部の背面図に示すように、機体の外枠フレーム55とエンジン9の間にブロア47を配置し、ブロア47の前下方にマフラ51を斜め下に向かって設ける。このとき、ブロア47はステップ6の左側下の後方に配置し、またマフラ51をエンジン9の左側後方部に取り付ける。外枠フレーム55の後方には角パイプ状の横フレーム57が設けられ、この横フレーム57の上方でこれと平行な方向に伸びる丸パイプ状のステップ受けフレーム(不図示)の間でブロア47が支持される。
【0021】
このように、機体中心線寄りにブロア47を配置することにより、エンジンからの伝動系が簡易化されるとともに、機体側方へ突出していないので、機体幅寸法を小さく構成することができる。
【0022】
また、左右2つに分けて配置した粉粒体タンク41、41の間の下方左側にブロア47を配置し、下方右側に植付部7の植付クラッチ駆動用の植付伝動軸26及び粉粒体施用装置40の繰出部42を駆動させるための施用駆動出力軸61を配置する。この構成によれば、動力伝動機構を機体の左右方向にバランス良く配置することができる。
【0023】
また、施用駆動出力軸61を植付伝動軸26に対して斜め上方に配置し、植付伝動軸26及び施用駆動出力軸61を圃場面に対して傾斜配置される植付クラッチケース62内に設けることで、植付クラッチケース62が後輪3に干渉せず、また、植付部7の上昇時に施用駆動出力軸61と植付伝動軸26が干渉することを防ぐことができる。上記構成により、トレッドの狭い4条植の田植機でもこれらの部材をコンパクトに設置することができた。
【0024】
次に、移送ホースの取付けについて説明する。
移送ホース43の取付けの要部平面図およびそのA矢視図を図6、図7(a)にそれぞれ示すように、取付フック43hとホースステー43sとの間に中間部品43cを設け、移送ホース43の取付フック43hと空気抜き部43aが左右方向に、すなわち、車幅方向に配置できるようにし、かつ、前後方向に回動可能に構成する。
【0025】
従来の移送ホースの固定は、空気抜きの穴と取付フックが前後に配置され、取付フックを支点として回動するようにして前後にスペースを要していたが、小型の田植機の場合、前後重量バランスのために機体の前後長を短縮化すると後輪3と植付部7との距離が狭くなり、スペース的に配置が困難であった。
しかし、上記構成とすることにより、移送ホース43をより苗タンク10に近づけて配置することができ、かつ、新規に型を起こしたりする必要が無く、従来の移送ホースをそのまま使用することができる。
【0026】
また、各移送ホース43の空気抜き部43aには、縦断面図を図7(b)に示すように、空気逃がし蓋43fのところに笛43gを設けて空気の吹き出し音である「ピー音」で知らせるように構成する。このように構成することにより、詰まりセンサ、ブザー、バッテリ等の電気部品を要することなく、移送ホース43が詰まったときに警報ブザーとして作動する。また、共通の警報ブザーではモニターのランプ等によりいずれの移送ホースかの特定を要するが、移送ホース別に笛43gが鳴ることから、複数の移送ホースについて異常のものを容易に特定することができる。
【0027】
次に、繰出部42の施用量調節機構について説明する。
全植付条の施用量を同時に調節するための施用量調節ギヤを廻すハンドルのグリップ部の延長上にコの字形の部品を取付け、この部分がギヤとダイヤルが噛合っているところの両端にスライドして入るようにしてストッパとする。
【0028】
詳細には、図8の施用量調節機構の正面図(a)、側面図(b)に示すように、各条のダイヤル42aにギヤ42bをかまし、このギヤ42bに設けたハンドル42hを回してダイヤル42aを調節する。この際、図のように、ハンドル42hのグリップ42g部分がギヤ42bのピッチ円上にくるようにし、グリップ42gの延長上にコの字形のストッパ42sを溶接して取付ける。そして、このストッパ42sがハンドル42hに対してギヤbの軸線42c方向にスライド可能に支持する。ストッパ42sのコの字形の部分がスライド動作によってギヤ42bとダイヤル42aが噛合っているところの両端に入るようにすることにより、ギヤ42b(ダイヤル42a)が回るのを止めるストッパになる。
【0029】
従来のものは、ハンドル付近に施用量の目盛りを示す部品やハンドルを固定する部品、ハンドルを折り畳む部品等、部品点数が多かった(特開2003−134909号公報)が、上記構成とすることにより、ダイヤル付近には目盛りが有り、ハンドル付近には必要が無く、このような余計な部品を無くすことによって部品点数を減らすことができる。
【0030】
次に、粉粒体ホッパ41の構成については、図9の縦断面図に示すように、内部に螺旋体41sを設け、その中心軸を多数の穴41h…を形成したパイプ41pによって形成し、ブロア41bと連通して温風を吐出するように構成するようにしてもよい。これにより、粉粒体ホッパ41内の粉粒体は、前記螺旋体41sの回転により攪拌されながら前記多数の穴41h…から吐出される風を受け、該粉粒体の乾燥を良好に促されるとともに、粉粒体ホッパ41内の粉粒体を均一に乾かすことができる。よって、この粉粒体が、繰出部42、移送ホース43あるいは施用ガイド44等の移送経路上で詰まるようなことを防止でき、円滑な粉粒体施用作業が行える。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】乗用型の田植機の側面図である。
【図2】乗用型の田植機の平面図である。
【図3】エアチャンバの拡大平面図(a)、背面図(b)、左側面図(c)である。
【図4】エアチャンバの支持構成の拡大平面図(a)、背面図(b)、左側面図(c)である。
【図5】田植機本体部の背面図である。
【図6】移送ホースの取付け構造の要部平面図である。
【図7】図6におけるA矢視図である。
【図8】施用量調節機構の正面図(a)、側面図(b)である。
【図9】粉粒体ホッパの縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 走行車体
2 前輪
3 後輪
5 ステアリングハンドル
6 フロントステップ
7 植付部
8 運転席
9 エンジン
10 苗載タンク
12 フロート
25 昇降リンク機構
40 粉粒体施用装置
41 粉粒体タンク(粉粒体ホッパ)
42 粉粒体繰出部
43 移送ホース
47 ブロア
48 エアチャンバ
48c 中間部
48s 連通部
49 給気路
C 内側部分
P 折れ点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体タンク(41)から所定量の粉粒体を移送ホース(43)側に繰出す複数の粉粒体繰出部(42…)を車幅方向に配列し、前記移送ホース(43)にブロア(47)から受けた加圧空気を案内するエアチャンバ(48)を備え、粉粒体を移送ホース(43…)によりエア搬送する粉粒体施用装置において、
上記エアチャンバ(48)は、粉粒体繰出部(42…)の配列線に沿って各粉粒体繰出部(42…)と連通する左右対称の2つの連通部(48s、48s)と、これら左右の連通部(48s、48s)の間を1箇所以上の折れ点(P)で機体の前後方向に折曲して接続する中間部(48c)とから形成し、この中間部(48c)の何れかの折れ点(P)には、その折れ曲がりの内側部分に向けてブロア(47)から加圧空気を案内する給気路(49)を接続したことを特徴とする粉粒体施用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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