精密基板収納容器およびその製造方法
【課題】がたつきなどを防止して摩擦による発塵を防止することができる精密基板収納容器と、その製造方法とを提供する。
【解決手段】内部に精密基板5を収納する容器本体2と、容器本体2の開口部に被せられる蓋体3とを具備し、容器本体2の底面に、精密基板5を保持するリアリテーナ4が設けられた精密基板収納容器1であって、容器本体2は、ポリカーボネート樹脂からなり、底面のリアリテーナ固定部から、複数の貫通孔を有する固定片が突設され、リアリテーナ4は、サーモプラスチックエラストマーからなり、この固定片を被覆し、貫通孔に成形樹脂が回り込んで固定片と一体化した状態でリアリテーナ固定部に設けられたものである。リアリテーナ4のV溝41の溝底に支持溝410が設けられたものである。リテーナの載置面に、精密基板5との接触面積を減らす凸部231aが設けられたものである。
【解決手段】内部に精密基板5を収納する容器本体2と、容器本体2の開口部に被せられる蓋体3とを具備し、容器本体2の底面に、精密基板5を保持するリアリテーナ4が設けられた精密基板収納容器1であって、容器本体2は、ポリカーボネート樹脂からなり、底面のリアリテーナ固定部から、複数の貫通孔を有する固定片が突設され、リアリテーナ4は、サーモプラスチックエラストマーからなり、この固定片を被覆し、貫通孔に成形樹脂が回り込んで固定片と一体化した状態でリアリテーナ固定部に設けられたものである。リアリテーナ4のV溝41の溝底に支持溝410が設けられたものである。リテーナの載置面に、精密基板5との接触面積を減らす凸部231aが設けられたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶用ガラス板などの精密基板を多数枚収納し、保管、運搬等に使用する容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の精密基板(薄板)は、その表面に超微細加工が施されることから、その保管、運搬、収納には極めて高度な清潔性が必要とされ、密封性に優れた容器本体と蓋体とからなる基板収納容器が使用されている。このような収納容器は、優れた密封性を保っていたとしても、運搬時の振動などによって精密基板が振動を受けると、精密基板と収納容器との間で摩擦による発塵が起こり、これが原因で精密基板を汚染してしまうことになってしまう。
【0003】
そこで、従来より、容器本体や蓋体に、これら容器本体や蓋体と別に成形されたサーモプラスチックエラストマーからなるフロントリテーナおよびリアリテーナを設け、これらのフロントリテーナおよびリアリテーナを介して容器本体に収納された精密基板を保持することが行われている。
【0004】
例えば、蓋体のフロントリテーナと対向する容器本体の底面の位置に、V型溝を有するリアリテーナを設け、このリアリテーナとフロントリテーナとの間で、この容器本体内に設けた精密基板を挟持固定する収納容器が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この収納容器は、精密基板を出し入れする際には容器本体を横倒しにして開口部を側面に開口させた状態で、容器本体に設けられたリテーナ上に精密基板が載置される。
【0006】
載置後、開口部に蓋体を固定すると、図13(a)に示すように、容器本体aのリテーナb上に載置されていた精密基板cは、この蓋体dに設けたフロントリテーナeが可撓変形して生じる付勢力によって容器本体a内へと押し込まれ、リアリテーナfとフロントリテーナeとの間で挟持される。
【0007】
挟持後の収納容器は、開口部が上方に向くように容器本体aを起こして運搬されるが、この容器本体aを起こした際、図13(b)に示すように、精密基板cは、リアリテーナfのV型溝gの溝底側へとスライドし、このV型溝gの溝底と、フロントリテーナeとの間で挟持固定されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平6−79152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の収納容器の場合、リアリテーナfのV型溝gの傾斜面のうち、少なくとも精密基板cがスライド移動する側の傾斜面は、傾斜角度を緩く設定していたため、V型溝gの溝底とフロントリテーナeとの間で精密基板cを挟持固定したとしても、V型溝gの溝底に精密基板cの位置を維持しておくことができず、経時的使用によりガタツキなどを生じることとなり、これに起因する摩擦によって発塵し、収納容器内を汚染してしまうことが懸念されるといった不都合があった。
【0010】
そのため、V型溝gの傾斜角度を大きく設定してV型溝gの溝底の位置に精密基板cを維持しやすくすることが考えられるが、この場合、V型溝gの溝底までの距離、すなわち、容器本体aを起こした際にフロントリテーナeによって精密基板cを押し込む距離が長くなってしまうので、V型溝gの溝底にスライド移動した状態では、フロントリテーナeによる付勢力が低下してしまうこととなり、リアリテーナfのV型溝gの溝底と、フロントリテーナeとによる精密基板cの挟持固定力が低下してしまう。また、容器本体aを横倒しにした際と、容器本体aを起こした際とで精密基板cの位置が変わり過ぎるので、ガタツキや摩擦の原因となる。
【0011】
また、フロントリテーナeによる付勢力を強くしてリアリテーナfのV型溝gの溝底と、フロントリテーナeとによる精密基板cの挟持固定力を確保することも考えられるが、この場合、フロントリテーナeを今まで以上に可撓変形させて蓋体dを容器本体aに固定しなければならないので、容器本体aに対する蓋体dの着脱作業が難しくなる。また、経時的使用によりフロントリテーナeによる付勢力が低下してくるので、耐久性が劣ることとなる。
【0012】
また、上記従来の収納容器の場合、強度を確保するためにポリカーボネートによって成形されている蓋体dおよび容器本体aに対して、フロントリテーナeおよびリアリテーナfは、サーモプラスチックエラストマーからなるため、そのままでは蓋体dおよび容器本体aに固定することができない。
【0013】
そのため、蓋体dおよび容器本体aに対してフロントリテーナeおよびリアリテーナfを、熱溶着やかしめやインサート成形によって固定することが考えられるが、熱溶着やかしめの場合、成形時の発塵やガスの発生などによって蓋体dおよび容器本体aが汚染されてしまい良好な収納容器を成形することができない。すなわち、蓋体dおよび容器本体aを構成するポリカーボネートの成形温度が300〜330度前後であるのに対して、フロントリテーナeおよびリアリテーナfを構成するサーモプラスチックエラストマーの成形温度は180〜230度前後と低温であるため、成形温度の高い蓋体dおよび容器本体aを成形しておいて、成形温度の低いフロントリテーナe及びリアリテーナfを熱溶着しなければならないが、蓋体dおよび容器本体aに求められる清浄性が非常に高いため、フロントリテーナeおよびリアリテーナfの成形時の発塵やガスの発生による収納容器内の汚染を避けることができない。
【0014】
また、インサート成形の場合、蓋体dおよび容器本体aの大きさに対してフロントリテーナeおよびリアリテーナfが小さいので、インサート成形後の応力がフロントリテーナeおよびリアリテーナfに集中し、これらフロントリテーナeおよびリアリテーナfがひび割れてしまうため成形することができない。
【0015】
したがって、従来の収納容器は、蓋体dおよび容器本体aに対してフロントリテーナeおよびリアリテーナfを嵌合固定したものしか成形することができなかった。
【0016】
このうち、蓋体dに設けられるフロントリテーナeは、精密基板cの周縁を支持した状態で精密基板cの動きに追従できるように、蓋体dに対して弾性固定されるため、蓋体dに対して嵌合固定するものであっても良いが、容器本体aに設けられるリアリテーナfは、精密基板cを挟持固定した後の容器本体aが、開口部が上方に向くように容器本体aを起こして運搬されるため、容器本体aと強固に固定する必要があり、嵌合固定では十分な固定強度を確保することができない。したがって、経時的使用によりガタツキなどを生じることとなり、これに起因する摩擦によって発塵し、収納容器内を汚染してしまうことが懸念される。
【0017】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであって、がたつきなどを防止して摩擦による発塵を防止することができる精密基板収納容器と、その製造方法とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための本発明の収納容器は、上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を保持するリアリテーナが設けられた収納容器であって、容器本体は、ポリカーボネート樹脂からなり、底面に設けられたリアリテーナ固定部から、複数の貫通孔を有する固定片が突設されてなり、リアリテーナは、サーモプラスチックエラストマーからなり、この固定片を被覆し、貫通孔に成形樹脂が回り込んで固定片と一体化した状態でリアリテーナ固定部に設けられてなるものである。
【0019】
また、上記課題を解決するための本発明の精密基板収納容器の製造方法は、上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を保持するリアリテーナが設けられた収納容器を製造する方法であって、リアリテーナが固定される固定部から複数の貫通孔を有する固定片が突設されるとともに、この固定片と相反する位置には容器本体と溶融一体化するインサート部が形成された中芯部材を、容器本体と同素材で成形し、この中芯部材の固定部を、リアリテーナの成形型のキャビティに露出させ、貫通孔にリアリテーナの成形樹脂を回り込ませて固定片を被覆し、この固定片と一体化した状態でリアリテーナ固定部に、容器本体と異素材のリアリテーナを成形し、中芯部材のインサート部を、容器本体の成形型のキャビティに露出させて容器本体を成形し、このインサート部を介して中芯部材と容器本体とを溶融一体化させて容器本体にリアリテーナを設けるものである。
【0020】
また、上記方法において、リアリテーナの成形型のキャビティに露出させた固定部の表面積を100とした場合、容器本体の成形型のキャビティに露出させたインサート部の表面積が150%以上となされた中芯部材を用いるものである。
【0021】
さらに、上記課題を解決するための本発明の精密基板収納容器は、上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を等間隔で保持するリアリテーナが設けられた収納容器であって、リアリテーナは、容器本体を横倒しにしてその内部に精密基板を収納して蓋体を固定してから容器本体を起こした状態で、蓋体からの付勢力および精密基板の自重によって精密基板を溝底側へと押し込むようになされたV溝を有してなり、この溝底部には、精密基板の基板面に直行する支持面から、支持角度20〜45度に設定され、押し込まれた精密基板の周縁を嵌合する支持溝が設けられてなるものである。
【0022】
さらに、上記課題を解決するための本発明の精密基板収納容器は、上記精密基板収納容器において、容器本体の両側壁面に、複数枚の精密基板を保持するリテーナが設けられ、前記リテーナは、精密基板が載置される載置面に、精密基板との接触面積を減らす凸部が設けられているものである。凸部は特に限定されるものではないが、例えば、容器本体の底面側から開口部側に向かって線状に凸設するように形成されたものでも良く、また、上記精密基板収納容器において、凸部は、容器本体の底面側から開口部側に向かって点線状に凸設するように形成されたものでも良く、さらに、上記精密基板収納容器において、精密基板が載置されるリテーナの載置面は、容器本体の開口部付近に、凸部最頂部と面一になる滑り止め面が形成されたものでも良い。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本発明の精密基板収納容器によると、容器本体の底面に設けたリアリテーナ固定部から複数の貫通孔を有する固定片を突設し、この固定片を被覆して貫通孔に成形樹脂が回り込んで固定片と一体化した状態で、リアリテーナ固定部にリアリテーナを設けているので、容器本体とリアリテーナとを強固に一体化して経時的使用によるガタツキを無くし、摩擦による発塵を防止することができる結果、収納容器内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できる。
【0024】
また、本発明の精密基板収納容器の製造方法によると、あらかじめ容器本体と同素材で成形した中芯部材の固定部に容器本体と異素材のリアリテーナを成形した後、この中芯部材のインサート部を容器本体と溶融一体化させることにより、容器本体に、この容器本体と異素材のリアリテーナを成形一体化することが可能となる。
【0025】
また、本発明の精密基板収納容器によると、リアリテーナのV溝の溝底部には、精密基板の基板面に直行する支持面から、支持角度20〜45度に設定された支持溝を設けているので、容器本体を横倒しにしてその内部に精密基板を収納して蓋体を固定ししてから容器本体を起こした際に、この蓋体からの付勢力および精密基板の自重によって精密基板がV溝の溝底側へと押し込まれ、この支持溝に嵌まり込むこととなる。したがって、安定した固定状態が得られることとなり、経時的使用によるガタツキを無くし、摩擦による発塵を防止することができる結果、収納容器内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できる。
【0026】
また、精密基板が載置されるリテーナの載置面に、精密基板との接触面積を減らす凸部を設ける構成を付加することで、精密基板は、リテーナとの摩擦が減り、この摩擦に起因する発塵を防止することができる結果、収納容器内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できる。
【0027】
さらに、容器本体の開口部付近の載置面に、凸部最頂部と面一になる滑り止め面を形成する構成を付加することで、精密基板が横滑りして位置ズレすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る精密基板収納容器の全体構成の概略を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る精密基板収納容器の精密基板を出し入れする状態での断面図である。
【図3】本発明に係る精密基板収納容器の精密基板を収納した状態での断面図である。
【図4】(a)ないし(e)は、精密基板収納容器に精密基板を収納して運搬後、取り出すまでの作業工程図である。
【図5】(a)ないし(e)は、図4(a)ないし(e)の各工程における精密基板の状態を示す断面図である。
【図6】(a)は図5(b)の部分省略拡大図、同図(b)は図5(c)の部分省略拡大図である。
【図7】(a)ないし(c)は、本発明に係る精密基板収納容器における各種リテーナの形状を示す部分拡大図である。
【図8】(a)ないし(c)は、本発明に係る精密基板収納容器におけるさらに他のリテーナの形状を示す部分拡大図である。
【図9】本発明に係る精密基板収納容器に用いられているリヤリテーナの部分拡大図である。
【図10】(a)ないし(e)は、本発明に係る精密基板収納容器に用いられているリヤリテーナを容器本体にインサート成形する際の工程図である。
【図11】(a)および(b)は、インサート成形に用いられる中芯部材にリヤリテーナを成形一体化した状態を示す平面図および側面図である。
【図12】図11(b)のI−I線における断面図である。
【図13】(a)および(b)は、従来の精密基板収納容器における精密基板収納時の動作を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0030】
図1ないし図3は精密基板収納容器(以下、単に収納容器という。)1の全体構成の概略を示し、図4は同収納容器1に精密基板5を収納し、運搬後、取り出すまでの動作を示し、図5は図4の要部を示し、図6は同図5(b)、図5(c)の部分省略拡大図を示している。
【0031】
この収納容器1は、容器本体2と蓋体3とを具備し、容器本体2の底面21にリアリテーナ4が設けられている。
【0032】
容器本体2は、ポリカーボネート、ポリプロピレンその他のプラスチックで主として透明または半透明材料によって成形されている。この容器本体2は、図1および図3に示す縦置き状態で、4つの側壁面22a,22b,22c,22dと底面21とから構成されて上面が開口した略立方体形状の有底筒状に形成されている。この容器本体2には、開口部20に蓋体3を設けることができるように、開口部20から蓋体3の厚み分に相当する距離だけ入った位置に、段差が形成されて蓋体載置部20aが設けられている。容器本体2の対向する側壁面22a,22cは、蓋体載置部20aよりも上の開口部20の内周立上り壁部分に、後述する蓋体3から出没する係合片33を係合するための係合孔20bが設けられている。容器本体2の底面21には、平行する二列のリアリテーナ固定部24が、対向する側壁面22a,22c間を連絡するように設けられている。また、対向する残りの側壁面22b,22dには、それぞれ開口部20から底面21に向かって複数の板状のリテーナ23が設けられている。容器本体2は、これらのリテーナ23が水平方向となり、開口部20が側面から開口するように横倒しにした状態で、対向する側壁面22a,22cと平行するように、精密基板5が等間隔で複数枚収納される。各精密基板5は、容器本体2の側壁面22b,22dに設けられた各リテーナ23と、底面21のリアリテーナ固定部24に設けられたリアリテーナ4とによって支持される。
【0033】
リテーナ23は、図7(a)に示すように、精密基板5が載置される側の載置面231全体に、容器本体2の底面21から開口部20に向かって線状に凸となる凸部231aが設けられている。この凸部231aは、高さ約0.5mm、幅約0.5mmとなるように凸設されている。この凸部231aとしては、線状のものに限定されるものではなく、図7(b)に示すように、載置面231全体に、直径1mm以下、高さ1mm以下、好ましくは直径0.5mm、高さ0.5mmの突起を配した凸部231aであってもよいし、図7(c)に示すように、上記線状の凸部231aと同じ箇所を点線状に凸となるように形成した凸部231aであってもよい。
【0034】
この場合、精密基板5は、凸部231a上に載置されることとなり、接触面積が減るので、リテーナ23の載置面231と精密基板5との間の摩擦抵抗を減らすことができ、この摩擦に起因する発塵を防止することができる。
【0035】
この凸部231aの高さとしては、特に0.5mmに限定されるものではなく、精密基板5が凸部231aとのみ接触して接触面積を減らすことができる高さがあればよい。ただし、あまり高すぎると無駄であり、また、容器本体2を成形して脱型する際に支障を来たすこととなるため、1mm以下、特に0.5mm程度が好ましい。1mm以下の高さの場合、複雑な脱型構造を有する高価な金型を使用しなくても容器本体2の底面21から開口部20の方向に脱型する型を使用して成形することができる。
【0036】
また、凸部231aの面積についても、リテーナ32の載置面231に通常載置した時の精密基板5と載置面231との接触面積よりも減るのであれば、特に限定されるものではないが、精密基板5をリテーナ23に載置した際の安定性を確保した状態でできるだけ接触面積を減らしたものにすることが好ましい。具体的には、精密基板5と載置面231との接触面積を100とした場合、精密基板5と凸部231aとの接触面積が10%以下、好ましくは5%以下となるように凸部231aを形成することが好ましい。
【0037】
また、凸部231aは、精密基板5が載置される載置面231のうち、実際に精密基板5が載置される箇所のみに設けられたものであってもよい。例えば、図8は、実際に精密基板5が載置される箇所のみに凸部231aを設け、載置面231の開口部付近は、この凸部231aの最頂部と面一となるようにした平滑面231bを形成している。
【0038】
この場合、仮に精密基板5が凸部231a上で横滑りしそうな状況があったとしても、平滑面231bで摩擦抵抗が増すので、精密基板5が横滑りして位置ズレすることを防止できる。
【0039】
リアリテーナ4は、サーモプラスチックエラストマーによって形成されている。このリアリテーナ4は、上記した容器本体2の底面21のリアリテーナ固定部24にそれぞれ設けられる長尺に形成されており、その表面には、精密基板5の周縁51を支持するV溝41と、精密基板5の裏面52を支持する支持片42とが長手方向に沿って交互に複数個設けられている。
【0040】
このうち、支持片42は、容器本体2の側壁面22b,22dに設けられたリテーナ23と同ピッチで設けられており、このリテーナ23と支持片42とによって、精密基盤5の裏面52を支持することができるようになされている。この支持片42を設けるピッチとしては、8mm〜12mmとなされ、V溝41は6mm〜8mmの範囲に設けられる。
【0041】
V溝41は、図9に示すように、精密基板5の面に対して直行する支持面を基準にして、一方の傾斜面41aの傾斜角αが2.5度となされ、他方の傾斜面41bの傾斜角βが26度となされている。このV溝41は、精密基板5を支持することとなる支持片42の表面に近い側に2.5度の緩やかな傾斜角αの傾斜面41aが位置し、支持片42の裏面に近い側に26度の傾斜角βの傾斜面41bが位置するように設けられる。また、一方の傾斜面41aの溝底部には、他方の傾斜面41bと同じ26度の傾斜角βとなるように26度の傾斜角θの傾斜面41cが形成されて支持溝410が形成されている。
【0042】
このリアリテーナ4は、図3に示すように、精密基板5の周縁51の円弧に沿うように、V溝41、支持片42および支持溝410が斜めに加工されている。
【0043】
なお、本実施の形態において、リアリテーナ4は、支持溝410の傾斜面41cおよび傾斜面41bが26度となされているが、このV溝41に位置することとなる精密基盤5の表面53と干渉することなく周縁51のみを支持することができる角度であれば、特に26度に限定されるものではなく、20〜45度の範囲で所望の角度に設定することができる。すなわち、一般に、精密基板5は、周縁51が20〜27度にテーパー処理されて角が曲面加工されており、この周縁51よりも内径側の表面53に微細加工が施されている。したがって、支持溝410の傾斜面41cおよび傾斜面41bを20〜45度に設定しておけば、このリヤリテーナ4が精密基板5の表面53に構築された微細加工部分と接触することなく、周縁51のみを支持溝410に支持できることとなる。
【0044】
また、本実施の形態において、リアリテーナ4は、一方の傾斜面41aの傾斜角αが2.5度となされているが、この傾斜面41aは、特に2.5度に限定されるものではなく2.5〜5度の範囲で所望の角度に設定することができる。すなわち、精密基板5は、支持片42に支持された状態からこの傾斜面41aをスライド移動して最終的には支持溝410に支持固定されることとなるが、傾斜面41aが2.5度未満の傾斜角αの場合、角度が無さ過ぎて傾斜面41aをスライド移動できなくなる。また、傾斜角αが5度を超えると、スライド移動させて精密基板5を押し込む距離が長くなるので、後述するフロントリテーナ6の付勢力が不足することになってしまう。
【0045】
蓋体3は、容器本体2と同様の素材によって形成されている。この蓋体3は、容器本体2の開口部20の内側にガスケット30を介して落とし込むことが可能な大きさに形成されている。この蓋体3上面には回動可能なカム31が設けられており、このカム31の回動に連動するリンク機構32を介して蓋体3の対向する2辺の端面から係合片33が出没するように形成されている。また、蓋体3を開口部20の内側にガスケット30を介して落とし込んだ状態で、蓋体3の係合片33が出没する位置と対向する容器本体2の開口部20内側の位置には係合孔20bが設けられている。そして、この係合孔20bに蓋体3の係合片33が係合することで容器本体2に蓋体3を固定することができるように構成されている。
【0046】
この蓋体3の内面には、サーモプラスチックエラストマーによって形成されたフロントリテーナ6が設けられている。このフロントリテーナ6は、図3に示すように、蓋体3に嵌合される嵌合部61から延設された各アーム62の先端に支持溝63を設けて構成されており、嵌合部61の部分を蓋体3の内面から突設されたリブ34に嵌合固定することによって取り付けられる。支持溝63は、精密基板5の周縁51を挟持することができるように、20〜45度の傾斜面を有するV字溝から構成されている。また、アーム62は、可撓変形可能となされており、精密基板5の周縁51を支持溝63で挟持した状態のまま、可撓変形可能な範囲内で、精密基板5の動きに追従できるようになされている。
【0047】
次に、このようにして構成される収納容器1に精密基板5を収納する場合、また、運搬後、取り出す場合について説明する。
【0048】
まず、図4(a)に示すように、容器本体2を横倒しにして開口部20を側面に開口させた状態にする。
【0049】
次いで、図5(a)に示すように、容器本体2のリテーナ23の載置面231と、リアリテーナ4の支持片42との上に精密基板5を載置させる。
【0050】
載置後、図4(b)および図5(b)に示すように、容器本体2の開口部20に蓋体3を固定する。
【0051】
この固定は、蓋体3の係合片33を容器本体2の係合孔20bに係合させて行われる。この係合の際、精密基板5は、リテーナ23の載置面231とリアリテーナ4の支持片42とに支持された状態で、蓋体3に設けたフロントリテーナ6の支持溝63に周縁51が支持されるが、この支持溝63は、蓋体3を固定することによってアーム62が可撓変形するので、精密基板5を容器本体2内へと押し込む付勢力を生じることとなる。この押し込みにより、図6(a)に示すように、精密基板5は、フロントリテーナ6とリヤリテーナ4との間で挟持固定されることとなる。
【0052】
精密基板5を収納した後の収納容器1は、図4(c)に示すように、開口部20が上方に向くように容器本体2を起こして運搬される。この容器本体2を起こした際、図5(c)および図6(b)に示すように、精密基板5は、フロントリテーナ6の付勢力と自重とにより、容器本体2の底面21に位置する周縁51が、リアリテーナ4のV溝41の溝底側へとスライド移動し、溝底部に設けられた支持溝410に嵌まり込むこととなり、この支持溝410と、フロントリテーナ6の支持溝63との間で嵌合挟持固定されることとなる。
【0053】
この精密基板5がスライド移動してリテーナ23の載置面231から離れる際、精密基板5は、載置面231と擦れて摩擦することとなるが、この載置面231に形成した凸部231a(図3,図7,図8参照)としか接触していないので、摩擦抵抗が減り、この摩擦に起因する載置面231からの発塵を防止することができる結果、収納容器1内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できるのである。
【0054】
また、この精密基板5がスライド移動する際、フロントリテーナ6は、可撓変形したアーム62の付勢力によって支持溝63が精密基板5のスライド移動に追従するので、ガタツキや摩擦による発塵を防止することができる。また、リアリテーナ4は、支持溝410によって精密基盤5の周縁51を嵌合固定するので、固定後のガタツキや摩擦による発塵を防止することができる結果、収納容器1内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できるのである。
【0055】
さらに、この嵌合挟持固定後は、精密基板5の周縁51が支持溝410に嵌まり込む段差の分だけフロントリテーナ6のアーム62の可撓変形が緩和されて支持溝63に作用する付勢力は低下することとなるが、その分精密基板5は、自重が作用した状態で支持溝410に嵌まり込んで嵌合状態が強化されるので、支持溝63による付勢力が緩和された分、嵌合力が強化された嵌合挟持固定状態となる。また、アーム62の可撓変形が緩和される分、フロントリテーナ6の耐久性が向上することとなる。
【0056】
運搬後、収納容器1から精密基板5を取り出す場合は、図4(c)に示す状態から、図4(d)に示すように収納容器1を横倒しにする。この際、図5(d)に示すように、リテーナ23の載置面231から離れて、リアリテーナ4のV溝41と、フロントリテーナ6の支持溝63との間で嵌合挟持固定されていた精密基板5は、再度、リテーナ23の載置面231と、リアリテーナ4の支持片42との上に載置される。
【0057】
この際、精密基板5は、載置面231と擦れて摩擦することとなるが、この載置面231に形成した凸部231a(図3,図7,図8参照)としか接触していないので、摩擦抵抗が減り、この摩擦に起因する載置面231からの発塵を防止することができる結果、収納容器1内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できるのである。
【0058】
次いで、図4(e)および図5(e)に示すように、容器本体2の開口部20から蓋体3を取外す。
【0059】
この取外し作業は、係合孔20bに係合されていた蓋体3の係合片33の係合を解除して行う。この取外し作業の際、フロントリテーナ6のアーム62の可撓変形が緩和されて支持溝63に作用する付勢力が無くなり、精密基板5は、リテーナ23の載置面231と、リアリテーナ4の支持片42との所定位置上に載置され、容器本体2から取り出し作業可能な状態となる。また、この蓋体3の取外しによってフロントリテーナ6の付勢力を解除した際に、この動作に起因して精密基板5とリテーナ23の載置面21との間で摩擦を生じることとなるが、精密基板5は、この載置面231に形成した凸部231a(図3,図7,図8参照)としか接触していないので、摩擦抵抗が減り、この摩擦に起因する載置面231からの発塵を防止することができる結果、収納容器1内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できるのである。
【0060】
また、この蓋体3を取り外す際に、精密基板5がリテーナ23の載置面231から横滑りすることが懸念される場合には、図8に示すように、実際に精密基板5が載置される箇所のみに凸部231aを形成し、載置面231の開口部付近は、この凸部231aの最頂部と面一となるようにした平滑面231bを形成しておけば、平滑面231bで摩擦抵抗が増すので、精密基板5が横滑りして位置ズレすることを防止できる。
【0061】
なお、精密基板5を収納した後の収納容器1は、開口部20が上方に向くように容器本体20を起こして運搬されるため、精密基板5の全荷重は、リアリテーナ4で支承することとなる。したがって、可撓変形して精密基板5に追従するように構成したフロントリテーナ6とは異なり、リアリテーナ4は、ガタツキや摩擦による発塵を防止するために、容器本体2の底面21と強固に一体化した状態で固定しておかなければならない。
【0062】
これを達成するために、本願発明では、リアリテーナ4は、容器本体2の底面21にインサート成形によって一体化されている。
【0063】
次に、このリアリテーナ4のインサート成形について述べる。
【0064】
図10は、インサート成形工程の概略を示し、図11および図12は中芯部材25にリアリテーナ4を成形一体化した状態を示している。
【0065】
すなわち、このリアリテーナ4のインサート成形は、中芯部材25にリアリテーナ4を成形一体化した後、この中芯部材25を容器本体2と成形一体化して容器本体2にリアリテーナ4を設けるものである。
【0066】
中芯部材25は、図10(a)に示すように、基材26の表面にリアリテーナ固定部24が設けられ、裏面にインサート部27が設けられて構成されている。
【0067】
基材26は、リアリテーナ4が固定可能な長尺の板状に形成されている。
【0068】
リアリテーナ固定部24は、基材26の表面に、基材26と略同じ長さで基材26の約半分の幅で一段高くなるように盛り上がって形成されている。このリアリテーナ固定部24からは、複数の貫通孔28aを有する固定片28が、略長さ方向全体にわたって突設されている。
【0069】
インサート部27は、基材26の裏面に、基材26と略同じ長さで約半分の幅で突設されている。インサート部27の両側は、容器本体2の成形時にキャビティ内に安定状態で固定できるように脚部27aが形成されており、中央部は、溶融した樹脂の流動を損なうことなく、キャビティ80内に樹脂を充填させることができるように凹設部27bが形成されている。このインサート部27の形状としては、容器本体2の成形型8のキャビティ80に安定状態で固定でき、かつ、溶融した樹脂の流動を損なうことのない形状であれば、特にその形状は限定されるものではない。
【0070】
ただし、リアリテーナ4の成形時にキャビティ70に露出する中芯部材25のリアリテーナ固定部24の表面積を100とした場合に、容器本体2の成形時にキャビティ80に露出する中芯部材25のインサート部27の表面積は、150%以上、好ましくは200〜750%となるように設定することが好ましい。より好ましくは200〜500%となるように設定される。この設定が150%未満の場合は、中芯部材25にリヤリテーナ4を成形しなくても、容器本体2に直接リヤリテーナ4を成形する場合とあまり変わりなくなってしまう。また、750%を越えると、中芯部材25が、インサート部27を介して容器本体2の成形時の熱の影響を大きく受けるので、中芯部材25に成形したリヤリテーナ4がひび割れてしまうこととなる。
【0071】
この中芯部材25を用いたリヤリテーナ4のインサート形成は、次のようにして行われる。
【0072】
まず、容器本体2と同素材のポリカーボネート樹脂によって中芯部材25を成形する。
【0073】
次に、この中芯部材25のリアリテーナ固定部24を、リヤリテーナ4の成形型7のキャビティ70に露出させ、このキャビティ70内にサーモプラスチックエラストマーの溶融樹脂を充填してリアリテーナ固定部24にリヤリテーナ4を成形する。この際、リアリテーナ固定部24には、複数の貫通孔28aを有する固定片28が突設されているので、リヤリテーナ4は、固定片28を被覆し、貫通孔28aに樹脂が回り込んで、この固定片28と構造的に強固に一体化することとなる。
【0074】
脱型後、中芯部材25のインサート部27を容器本体2の成形型8のキャビティ80に露出させ、このキャビティ80内にポリカーボネートの溶融樹脂を充填してインサート部27を溶融一体化させて容器本体2を成形する。
【0075】
この容器本体2の成形時には、リヤリテーナ4自体はキャビティ80の外に設けられており、熱の影響を受けないので、ひび割れなどを生じない。また、このようにして成形された容器本体2は、リヤリテーナ4が強固に一体化したものとなるため、ガタツキなどを生じない。したがって、経時的使用によるガタツキを無くし、摩擦による発塵を防止することができる結果、収納容器1内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できるのである。
【0076】
なお、本実施の形態において、収納容器1は、凸部231aを有するリテーナ23と、V溝41の溝底に支持溝410を有するリアリテーナ4と、容器本体2の底面21のリアリテーナ固定部24にインサート成形したリアリテーナ4とを構成することによって収納容器1内の発塵を防止するようになされているが、これら各要素のうち、何れか一つ以上を有する収納容器1であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る精密基板収納容器は、高度の清潔性が要求される半導体ウエハ、液晶ガラス基板などを収納して航空機輸送し、或いは温度差の大きい地域への移送用として使用される。
【符号の説明】
【0078】
1 精密基板収容容器
2 容器本体
20 開口部
21 底面
22b 側壁面
22d 側壁面
23 リテーナ
231 載置面
231a 凸部
231b 平滑面(滑り止め面)
24 リテーナ固定部
25 中芯部材
26 基材
27 インサート部
28 固定片
28a 貫通孔
3 蓋体
4 リヤリテーナ
41 V溝
410 支持溝
5 精密基板
6 フロントリテーナ
7 成形型
70 キャビティ
8 成形型
80 キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶用ガラス板などの精密基板を多数枚収納し、保管、運搬等に使用する容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の精密基板(薄板)は、その表面に超微細加工が施されることから、その保管、運搬、収納には極めて高度な清潔性が必要とされ、密封性に優れた容器本体と蓋体とからなる基板収納容器が使用されている。このような収納容器は、優れた密封性を保っていたとしても、運搬時の振動などによって精密基板が振動を受けると、精密基板と収納容器との間で摩擦による発塵が起こり、これが原因で精密基板を汚染してしまうことになってしまう。
【0003】
そこで、従来より、容器本体や蓋体に、これら容器本体や蓋体と別に成形されたサーモプラスチックエラストマーからなるフロントリテーナおよびリアリテーナを設け、これらのフロントリテーナおよびリアリテーナを介して容器本体に収納された精密基板を保持することが行われている。
【0004】
例えば、蓋体のフロントリテーナと対向する容器本体の底面の位置に、V型溝を有するリアリテーナを設け、このリアリテーナとフロントリテーナとの間で、この容器本体内に設けた精密基板を挟持固定する収納容器が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この収納容器は、精密基板を出し入れする際には容器本体を横倒しにして開口部を側面に開口させた状態で、容器本体に設けられたリテーナ上に精密基板が載置される。
【0006】
載置後、開口部に蓋体を固定すると、図13(a)に示すように、容器本体aのリテーナb上に載置されていた精密基板cは、この蓋体dに設けたフロントリテーナeが可撓変形して生じる付勢力によって容器本体a内へと押し込まれ、リアリテーナfとフロントリテーナeとの間で挟持される。
【0007】
挟持後の収納容器は、開口部が上方に向くように容器本体aを起こして運搬されるが、この容器本体aを起こした際、図13(b)に示すように、精密基板cは、リアリテーナfのV型溝gの溝底側へとスライドし、このV型溝gの溝底と、フロントリテーナeとの間で挟持固定されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平6−79152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の収納容器の場合、リアリテーナfのV型溝gの傾斜面のうち、少なくとも精密基板cがスライド移動する側の傾斜面は、傾斜角度を緩く設定していたため、V型溝gの溝底とフロントリテーナeとの間で精密基板cを挟持固定したとしても、V型溝gの溝底に精密基板cの位置を維持しておくことができず、経時的使用によりガタツキなどを生じることとなり、これに起因する摩擦によって発塵し、収納容器内を汚染してしまうことが懸念されるといった不都合があった。
【0010】
そのため、V型溝gの傾斜角度を大きく設定してV型溝gの溝底の位置に精密基板cを維持しやすくすることが考えられるが、この場合、V型溝gの溝底までの距離、すなわち、容器本体aを起こした際にフロントリテーナeによって精密基板cを押し込む距離が長くなってしまうので、V型溝gの溝底にスライド移動した状態では、フロントリテーナeによる付勢力が低下してしまうこととなり、リアリテーナfのV型溝gの溝底と、フロントリテーナeとによる精密基板cの挟持固定力が低下してしまう。また、容器本体aを横倒しにした際と、容器本体aを起こした際とで精密基板cの位置が変わり過ぎるので、ガタツキや摩擦の原因となる。
【0011】
また、フロントリテーナeによる付勢力を強くしてリアリテーナfのV型溝gの溝底と、フロントリテーナeとによる精密基板cの挟持固定力を確保することも考えられるが、この場合、フロントリテーナeを今まで以上に可撓変形させて蓋体dを容器本体aに固定しなければならないので、容器本体aに対する蓋体dの着脱作業が難しくなる。また、経時的使用によりフロントリテーナeによる付勢力が低下してくるので、耐久性が劣ることとなる。
【0012】
また、上記従来の収納容器の場合、強度を確保するためにポリカーボネートによって成形されている蓋体dおよび容器本体aに対して、フロントリテーナeおよびリアリテーナfは、サーモプラスチックエラストマーからなるため、そのままでは蓋体dおよび容器本体aに固定することができない。
【0013】
そのため、蓋体dおよび容器本体aに対してフロントリテーナeおよびリアリテーナfを、熱溶着やかしめやインサート成形によって固定することが考えられるが、熱溶着やかしめの場合、成形時の発塵やガスの発生などによって蓋体dおよび容器本体aが汚染されてしまい良好な収納容器を成形することができない。すなわち、蓋体dおよび容器本体aを構成するポリカーボネートの成形温度が300〜330度前後であるのに対して、フロントリテーナeおよびリアリテーナfを構成するサーモプラスチックエラストマーの成形温度は180〜230度前後と低温であるため、成形温度の高い蓋体dおよび容器本体aを成形しておいて、成形温度の低いフロントリテーナe及びリアリテーナfを熱溶着しなければならないが、蓋体dおよび容器本体aに求められる清浄性が非常に高いため、フロントリテーナeおよびリアリテーナfの成形時の発塵やガスの発生による収納容器内の汚染を避けることができない。
【0014】
また、インサート成形の場合、蓋体dおよび容器本体aの大きさに対してフロントリテーナeおよびリアリテーナfが小さいので、インサート成形後の応力がフロントリテーナeおよびリアリテーナfに集中し、これらフロントリテーナeおよびリアリテーナfがひび割れてしまうため成形することができない。
【0015】
したがって、従来の収納容器は、蓋体dおよび容器本体aに対してフロントリテーナeおよびリアリテーナfを嵌合固定したものしか成形することができなかった。
【0016】
このうち、蓋体dに設けられるフロントリテーナeは、精密基板cの周縁を支持した状態で精密基板cの動きに追従できるように、蓋体dに対して弾性固定されるため、蓋体dに対して嵌合固定するものであっても良いが、容器本体aに設けられるリアリテーナfは、精密基板cを挟持固定した後の容器本体aが、開口部が上方に向くように容器本体aを起こして運搬されるため、容器本体aと強固に固定する必要があり、嵌合固定では十分な固定強度を確保することができない。したがって、経時的使用によりガタツキなどを生じることとなり、これに起因する摩擦によって発塵し、収納容器内を汚染してしまうことが懸念される。
【0017】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであって、がたつきなどを防止して摩擦による発塵を防止することができる精密基板収納容器と、その製造方法とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための本発明の収納容器は、上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を保持するリアリテーナが設けられた収納容器であって、容器本体は、ポリカーボネート樹脂からなり、底面に設けられたリアリテーナ固定部から、複数の貫通孔を有する固定片が突設されてなり、リアリテーナは、サーモプラスチックエラストマーからなり、この固定片を被覆し、貫通孔に成形樹脂が回り込んで固定片と一体化した状態でリアリテーナ固定部に設けられてなるものである。
【0019】
また、上記課題を解決するための本発明の精密基板収納容器の製造方法は、上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を保持するリアリテーナが設けられた収納容器を製造する方法であって、リアリテーナが固定される固定部から複数の貫通孔を有する固定片が突設されるとともに、この固定片と相反する位置には容器本体と溶融一体化するインサート部が形成された中芯部材を、容器本体と同素材で成形し、この中芯部材の固定部を、リアリテーナの成形型のキャビティに露出させ、貫通孔にリアリテーナの成形樹脂を回り込ませて固定片を被覆し、この固定片と一体化した状態でリアリテーナ固定部に、容器本体と異素材のリアリテーナを成形し、中芯部材のインサート部を、容器本体の成形型のキャビティに露出させて容器本体を成形し、このインサート部を介して中芯部材と容器本体とを溶融一体化させて容器本体にリアリテーナを設けるものである。
【0020】
また、上記方法において、リアリテーナの成形型のキャビティに露出させた固定部の表面積を100とした場合、容器本体の成形型のキャビティに露出させたインサート部の表面積が150%以上となされた中芯部材を用いるものである。
【0021】
さらに、上記課題を解決するための本発明の精密基板収納容器は、上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を等間隔で保持するリアリテーナが設けられた収納容器であって、リアリテーナは、容器本体を横倒しにしてその内部に精密基板を収納して蓋体を固定してから容器本体を起こした状態で、蓋体からの付勢力および精密基板の自重によって精密基板を溝底側へと押し込むようになされたV溝を有してなり、この溝底部には、精密基板の基板面に直行する支持面から、支持角度20〜45度に設定され、押し込まれた精密基板の周縁を嵌合する支持溝が設けられてなるものである。
【0022】
さらに、上記課題を解決するための本発明の精密基板収納容器は、上記精密基板収納容器において、容器本体の両側壁面に、複数枚の精密基板を保持するリテーナが設けられ、前記リテーナは、精密基板が載置される載置面に、精密基板との接触面積を減らす凸部が設けられているものである。凸部は特に限定されるものではないが、例えば、容器本体の底面側から開口部側に向かって線状に凸設するように形成されたものでも良く、また、上記精密基板収納容器において、凸部は、容器本体の底面側から開口部側に向かって点線状に凸設するように形成されたものでも良く、さらに、上記精密基板収納容器において、精密基板が載置されるリテーナの載置面は、容器本体の開口部付近に、凸部最頂部と面一になる滑り止め面が形成されたものでも良い。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本発明の精密基板収納容器によると、容器本体の底面に設けたリアリテーナ固定部から複数の貫通孔を有する固定片を突設し、この固定片を被覆して貫通孔に成形樹脂が回り込んで固定片と一体化した状態で、リアリテーナ固定部にリアリテーナを設けているので、容器本体とリアリテーナとを強固に一体化して経時的使用によるガタツキを無くし、摩擦による発塵を防止することができる結果、収納容器内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できる。
【0024】
また、本発明の精密基板収納容器の製造方法によると、あらかじめ容器本体と同素材で成形した中芯部材の固定部に容器本体と異素材のリアリテーナを成形した後、この中芯部材のインサート部を容器本体と溶融一体化させることにより、容器本体に、この容器本体と異素材のリアリテーナを成形一体化することが可能となる。
【0025】
また、本発明の精密基板収納容器によると、リアリテーナのV溝の溝底部には、精密基板の基板面に直行する支持面から、支持角度20〜45度に設定された支持溝を設けているので、容器本体を横倒しにしてその内部に精密基板を収納して蓋体を固定ししてから容器本体を起こした際に、この蓋体からの付勢力および精密基板の自重によって精密基板がV溝の溝底側へと押し込まれ、この支持溝に嵌まり込むこととなる。したがって、安定した固定状態が得られることとなり、経時的使用によるガタツキを無くし、摩擦による発塵を防止することができる結果、収納容器内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できる。
【0026】
また、精密基板が載置されるリテーナの載置面に、精密基板との接触面積を減らす凸部を設ける構成を付加することで、精密基板は、リテーナとの摩擦が減り、この摩擦に起因する発塵を防止することができる結果、収納容器内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できる。
【0027】
さらに、容器本体の開口部付近の載置面に、凸部最頂部と面一になる滑り止め面を形成する構成を付加することで、精密基板が横滑りして位置ズレすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る精密基板収納容器の全体構成の概略を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る精密基板収納容器の精密基板を出し入れする状態での断面図である。
【図3】本発明に係る精密基板収納容器の精密基板を収納した状態での断面図である。
【図4】(a)ないし(e)は、精密基板収納容器に精密基板を収納して運搬後、取り出すまでの作業工程図である。
【図5】(a)ないし(e)は、図4(a)ないし(e)の各工程における精密基板の状態を示す断面図である。
【図6】(a)は図5(b)の部分省略拡大図、同図(b)は図5(c)の部分省略拡大図である。
【図7】(a)ないし(c)は、本発明に係る精密基板収納容器における各種リテーナの形状を示す部分拡大図である。
【図8】(a)ないし(c)は、本発明に係る精密基板収納容器におけるさらに他のリテーナの形状を示す部分拡大図である。
【図9】本発明に係る精密基板収納容器に用いられているリヤリテーナの部分拡大図である。
【図10】(a)ないし(e)は、本発明に係る精密基板収納容器に用いられているリヤリテーナを容器本体にインサート成形する際の工程図である。
【図11】(a)および(b)は、インサート成形に用いられる中芯部材にリヤリテーナを成形一体化した状態を示す平面図および側面図である。
【図12】図11(b)のI−I線における断面図である。
【図13】(a)および(b)は、従来の精密基板収納容器における精密基板収納時の動作を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0030】
図1ないし図3は精密基板収納容器(以下、単に収納容器という。)1の全体構成の概略を示し、図4は同収納容器1に精密基板5を収納し、運搬後、取り出すまでの動作を示し、図5は図4の要部を示し、図6は同図5(b)、図5(c)の部分省略拡大図を示している。
【0031】
この収納容器1は、容器本体2と蓋体3とを具備し、容器本体2の底面21にリアリテーナ4が設けられている。
【0032】
容器本体2は、ポリカーボネート、ポリプロピレンその他のプラスチックで主として透明または半透明材料によって成形されている。この容器本体2は、図1および図3に示す縦置き状態で、4つの側壁面22a,22b,22c,22dと底面21とから構成されて上面が開口した略立方体形状の有底筒状に形成されている。この容器本体2には、開口部20に蓋体3を設けることができるように、開口部20から蓋体3の厚み分に相当する距離だけ入った位置に、段差が形成されて蓋体載置部20aが設けられている。容器本体2の対向する側壁面22a,22cは、蓋体載置部20aよりも上の開口部20の内周立上り壁部分に、後述する蓋体3から出没する係合片33を係合するための係合孔20bが設けられている。容器本体2の底面21には、平行する二列のリアリテーナ固定部24が、対向する側壁面22a,22c間を連絡するように設けられている。また、対向する残りの側壁面22b,22dには、それぞれ開口部20から底面21に向かって複数の板状のリテーナ23が設けられている。容器本体2は、これらのリテーナ23が水平方向となり、開口部20が側面から開口するように横倒しにした状態で、対向する側壁面22a,22cと平行するように、精密基板5が等間隔で複数枚収納される。各精密基板5は、容器本体2の側壁面22b,22dに設けられた各リテーナ23と、底面21のリアリテーナ固定部24に設けられたリアリテーナ4とによって支持される。
【0033】
リテーナ23は、図7(a)に示すように、精密基板5が載置される側の載置面231全体に、容器本体2の底面21から開口部20に向かって線状に凸となる凸部231aが設けられている。この凸部231aは、高さ約0.5mm、幅約0.5mmとなるように凸設されている。この凸部231aとしては、線状のものに限定されるものではなく、図7(b)に示すように、載置面231全体に、直径1mm以下、高さ1mm以下、好ましくは直径0.5mm、高さ0.5mmの突起を配した凸部231aであってもよいし、図7(c)に示すように、上記線状の凸部231aと同じ箇所を点線状に凸となるように形成した凸部231aであってもよい。
【0034】
この場合、精密基板5は、凸部231a上に載置されることとなり、接触面積が減るので、リテーナ23の載置面231と精密基板5との間の摩擦抵抗を減らすことができ、この摩擦に起因する発塵を防止することができる。
【0035】
この凸部231aの高さとしては、特に0.5mmに限定されるものではなく、精密基板5が凸部231aとのみ接触して接触面積を減らすことができる高さがあればよい。ただし、あまり高すぎると無駄であり、また、容器本体2を成形して脱型する際に支障を来たすこととなるため、1mm以下、特に0.5mm程度が好ましい。1mm以下の高さの場合、複雑な脱型構造を有する高価な金型を使用しなくても容器本体2の底面21から開口部20の方向に脱型する型を使用して成形することができる。
【0036】
また、凸部231aの面積についても、リテーナ32の載置面231に通常載置した時の精密基板5と載置面231との接触面積よりも減るのであれば、特に限定されるものではないが、精密基板5をリテーナ23に載置した際の安定性を確保した状態でできるだけ接触面積を減らしたものにすることが好ましい。具体的には、精密基板5と載置面231との接触面積を100とした場合、精密基板5と凸部231aとの接触面積が10%以下、好ましくは5%以下となるように凸部231aを形成することが好ましい。
【0037】
また、凸部231aは、精密基板5が載置される載置面231のうち、実際に精密基板5が載置される箇所のみに設けられたものであってもよい。例えば、図8は、実際に精密基板5が載置される箇所のみに凸部231aを設け、載置面231の開口部付近は、この凸部231aの最頂部と面一となるようにした平滑面231bを形成している。
【0038】
この場合、仮に精密基板5が凸部231a上で横滑りしそうな状況があったとしても、平滑面231bで摩擦抵抗が増すので、精密基板5が横滑りして位置ズレすることを防止できる。
【0039】
リアリテーナ4は、サーモプラスチックエラストマーによって形成されている。このリアリテーナ4は、上記した容器本体2の底面21のリアリテーナ固定部24にそれぞれ設けられる長尺に形成されており、その表面には、精密基板5の周縁51を支持するV溝41と、精密基板5の裏面52を支持する支持片42とが長手方向に沿って交互に複数個設けられている。
【0040】
このうち、支持片42は、容器本体2の側壁面22b,22dに設けられたリテーナ23と同ピッチで設けられており、このリテーナ23と支持片42とによって、精密基盤5の裏面52を支持することができるようになされている。この支持片42を設けるピッチとしては、8mm〜12mmとなされ、V溝41は6mm〜8mmの範囲に設けられる。
【0041】
V溝41は、図9に示すように、精密基板5の面に対して直行する支持面を基準にして、一方の傾斜面41aの傾斜角αが2.5度となされ、他方の傾斜面41bの傾斜角βが26度となされている。このV溝41は、精密基板5を支持することとなる支持片42の表面に近い側に2.5度の緩やかな傾斜角αの傾斜面41aが位置し、支持片42の裏面に近い側に26度の傾斜角βの傾斜面41bが位置するように設けられる。また、一方の傾斜面41aの溝底部には、他方の傾斜面41bと同じ26度の傾斜角βとなるように26度の傾斜角θの傾斜面41cが形成されて支持溝410が形成されている。
【0042】
このリアリテーナ4は、図3に示すように、精密基板5の周縁51の円弧に沿うように、V溝41、支持片42および支持溝410が斜めに加工されている。
【0043】
なお、本実施の形態において、リアリテーナ4は、支持溝410の傾斜面41cおよび傾斜面41bが26度となされているが、このV溝41に位置することとなる精密基盤5の表面53と干渉することなく周縁51のみを支持することができる角度であれば、特に26度に限定されるものではなく、20〜45度の範囲で所望の角度に設定することができる。すなわち、一般に、精密基板5は、周縁51が20〜27度にテーパー処理されて角が曲面加工されており、この周縁51よりも内径側の表面53に微細加工が施されている。したがって、支持溝410の傾斜面41cおよび傾斜面41bを20〜45度に設定しておけば、このリヤリテーナ4が精密基板5の表面53に構築された微細加工部分と接触することなく、周縁51のみを支持溝410に支持できることとなる。
【0044】
また、本実施の形態において、リアリテーナ4は、一方の傾斜面41aの傾斜角αが2.5度となされているが、この傾斜面41aは、特に2.5度に限定されるものではなく2.5〜5度の範囲で所望の角度に設定することができる。すなわち、精密基板5は、支持片42に支持された状態からこの傾斜面41aをスライド移動して最終的には支持溝410に支持固定されることとなるが、傾斜面41aが2.5度未満の傾斜角αの場合、角度が無さ過ぎて傾斜面41aをスライド移動できなくなる。また、傾斜角αが5度を超えると、スライド移動させて精密基板5を押し込む距離が長くなるので、後述するフロントリテーナ6の付勢力が不足することになってしまう。
【0045】
蓋体3は、容器本体2と同様の素材によって形成されている。この蓋体3は、容器本体2の開口部20の内側にガスケット30を介して落とし込むことが可能な大きさに形成されている。この蓋体3上面には回動可能なカム31が設けられており、このカム31の回動に連動するリンク機構32を介して蓋体3の対向する2辺の端面から係合片33が出没するように形成されている。また、蓋体3を開口部20の内側にガスケット30を介して落とし込んだ状態で、蓋体3の係合片33が出没する位置と対向する容器本体2の開口部20内側の位置には係合孔20bが設けられている。そして、この係合孔20bに蓋体3の係合片33が係合することで容器本体2に蓋体3を固定することができるように構成されている。
【0046】
この蓋体3の内面には、サーモプラスチックエラストマーによって形成されたフロントリテーナ6が設けられている。このフロントリテーナ6は、図3に示すように、蓋体3に嵌合される嵌合部61から延設された各アーム62の先端に支持溝63を設けて構成されており、嵌合部61の部分を蓋体3の内面から突設されたリブ34に嵌合固定することによって取り付けられる。支持溝63は、精密基板5の周縁51を挟持することができるように、20〜45度の傾斜面を有するV字溝から構成されている。また、アーム62は、可撓変形可能となされており、精密基板5の周縁51を支持溝63で挟持した状態のまま、可撓変形可能な範囲内で、精密基板5の動きに追従できるようになされている。
【0047】
次に、このようにして構成される収納容器1に精密基板5を収納する場合、また、運搬後、取り出す場合について説明する。
【0048】
まず、図4(a)に示すように、容器本体2を横倒しにして開口部20を側面に開口させた状態にする。
【0049】
次いで、図5(a)に示すように、容器本体2のリテーナ23の載置面231と、リアリテーナ4の支持片42との上に精密基板5を載置させる。
【0050】
載置後、図4(b)および図5(b)に示すように、容器本体2の開口部20に蓋体3を固定する。
【0051】
この固定は、蓋体3の係合片33を容器本体2の係合孔20bに係合させて行われる。この係合の際、精密基板5は、リテーナ23の載置面231とリアリテーナ4の支持片42とに支持された状態で、蓋体3に設けたフロントリテーナ6の支持溝63に周縁51が支持されるが、この支持溝63は、蓋体3を固定することによってアーム62が可撓変形するので、精密基板5を容器本体2内へと押し込む付勢力を生じることとなる。この押し込みにより、図6(a)に示すように、精密基板5は、フロントリテーナ6とリヤリテーナ4との間で挟持固定されることとなる。
【0052】
精密基板5を収納した後の収納容器1は、図4(c)に示すように、開口部20が上方に向くように容器本体2を起こして運搬される。この容器本体2を起こした際、図5(c)および図6(b)に示すように、精密基板5は、フロントリテーナ6の付勢力と自重とにより、容器本体2の底面21に位置する周縁51が、リアリテーナ4のV溝41の溝底側へとスライド移動し、溝底部に設けられた支持溝410に嵌まり込むこととなり、この支持溝410と、フロントリテーナ6の支持溝63との間で嵌合挟持固定されることとなる。
【0053】
この精密基板5がスライド移動してリテーナ23の載置面231から離れる際、精密基板5は、載置面231と擦れて摩擦することとなるが、この載置面231に形成した凸部231a(図3,図7,図8参照)としか接触していないので、摩擦抵抗が減り、この摩擦に起因する載置面231からの発塵を防止することができる結果、収納容器1内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できるのである。
【0054】
また、この精密基板5がスライド移動する際、フロントリテーナ6は、可撓変形したアーム62の付勢力によって支持溝63が精密基板5のスライド移動に追従するので、ガタツキや摩擦による発塵を防止することができる。また、リアリテーナ4は、支持溝410によって精密基盤5の周縁51を嵌合固定するので、固定後のガタツキや摩擦による発塵を防止することができる結果、収納容器1内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できるのである。
【0055】
さらに、この嵌合挟持固定後は、精密基板5の周縁51が支持溝410に嵌まり込む段差の分だけフロントリテーナ6のアーム62の可撓変形が緩和されて支持溝63に作用する付勢力は低下することとなるが、その分精密基板5は、自重が作用した状態で支持溝410に嵌まり込んで嵌合状態が強化されるので、支持溝63による付勢力が緩和された分、嵌合力が強化された嵌合挟持固定状態となる。また、アーム62の可撓変形が緩和される分、フロントリテーナ6の耐久性が向上することとなる。
【0056】
運搬後、収納容器1から精密基板5を取り出す場合は、図4(c)に示す状態から、図4(d)に示すように収納容器1を横倒しにする。この際、図5(d)に示すように、リテーナ23の載置面231から離れて、リアリテーナ4のV溝41と、フロントリテーナ6の支持溝63との間で嵌合挟持固定されていた精密基板5は、再度、リテーナ23の載置面231と、リアリテーナ4の支持片42との上に載置される。
【0057】
この際、精密基板5は、載置面231と擦れて摩擦することとなるが、この載置面231に形成した凸部231a(図3,図7,図8参照)としか接触していないので、摩擦抵抗が減り、この摩擦に起因する載置面231からの発塵を防止することができる結果、収納容器1内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できるのである。
【0058】
次いで、図4(e)および図5(e)に示すように、容器本体2の開口部20から蓋体3を取外す。
【0059】
この取外し作業は、係合孔20bに係合されていた蓋体3の係合片33の係合を解除して行う。この取外し作業の際、フロントリテーナ6のアーム62の可撓変形が緩和されて支持溝63に作用する付勢力が無くなり、精密基板5は、リテーナ23の載置面231と、リアリテーナ4の支持片42との所定位置上に載置され、容器本体2から取り出し作業可能な状態となる。また、この蓋体3の取外しによってフロントリテーナ6の付勢力を解除した際に、この動作に起因して精密基板5とリテーナ23の載置面21との間で摩擦を生じることとなるが、精密基板5は、この載置面231に形成した凸部231a(図3,図7,図8参照)としか接触していないので、摩擦抵抗が減り、この摩擦に起因する載置面231からの発塵を防止することができる結果、収納容器1内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できるのである。
【0060】
また、この蓋体3を取り外す際に、精密基板5がリテーナ23の載置面231から横滑りすることが懸念される場合には、図8に示すように、実際に精密基板5が載置される箇所のみに凸部231aを形成し、載置面231の開口部付近は、この凸部231aの最頂部と面一となるようにした平滑面231bを形成しておけば、平滑面231bで摩擦抵抗が増すので、精密基板5が横滑りして位置ズレすることを防止できる。
【0061】
なお、精密基板5を収納した後の収納容器1は、開口部20が上方に向くように容器本体20を起こして運搬されるため、精密基板5の全荷重は、リアリテーナ4で支承することとなる。したがって、可撓変形して精密基板5に追従するように構成したフロントリテーナ6とは異なり、リアリテーナ4は、ガタツキや摩擦による発塵を防止するために、容器本体2の底面21と強固に一体化した状態で固定しておかなければならない。
【0062】
これを達成するために、本願発明では、リアリテーナ4は、容器本体2の底面21にインサート成形によって一体化されている。
【0063】
次に、このリアリテーナ4のインサート成形について述べる。
【0064】
図10は、インサート成形工程の概略を示し、図11および図12は中芯部材25にリアリテーナ4を成形一体化した状態を示している。
【0065】
すなわち、このリアリテーナ4のインサート成形は、中芯部材25にリアリテーナ4を成形一体化した後、この中芯部材25を容器本体2と成形一体化して容器本体2にリアリテーナ4を設けるものである。
【0066】
中芯部材25は、図10(a)に示すように、基材26の表面にリアリテーナ固定部24が設けられ、裏面にインサート部27が設けられて構成されている。
【0067】
基材26は、リアリテーナ4が固定可能な長尺の板状に形成されている。
【0068】
リアリテーナ固定部24は、基材26の表面に、基材26と略同じ長さで基材26の約半分の幅で一段高くなるように盛り上がって形成されている。このリアリテーナ固定部24からは、複数の貫通孔28aを有する固定片28が、略長さ方向全体にわたって突設されている。
【0069】
インサート部27は、基材26の裏面に、基材26と略同じ長さで約半分の幅で突設されている。インサート部27の両側は、容器本体2の成形時にキャビティ内に安定状態で固定できるように脚部27aが形成されており、中央部は、溶融した樹脂の流動を損なうことなく、キャビティ80内に樹脂を充填させることができるように凹設部27bが形成されている。このインサート部27の形状としては、容器本体2の成形型8のキャビティ80に安定状態で固定でき、かつ、溶融した樹脂の流動を損なうことのない形状であれば、特にその形状は限定されるものではない。
【0070】
ただし、リアリテーナ4の成形時にキャビティ70に露出する中芯部材25のリアリテーナ固定部24の表面積を100とした場合に、容器本体2の成形時にキャビティ80に露出する中芯部材25のインサート部27の表面積は、150%以上、好ましくは200〜750%となるように設定することが好ましい。より好ましくは200〜500%となるように設定される。この設定が150%未満の場合は、中芯部材25にリヤリテーナ4を成形しなくても、容器本体2に直接リヤリテーナ4を成形する場合とあまり変わりなくなってしまう。また、750%を越えると、中芯部材25が、インサート部27を介して容器本体2の成形時の熱の影響を大きく受けるので、中芯部材25に成形したリヤリテーナ4がひび割れてしまうこととなる。
【0071】
この中芯部材25を用いたリヤリテーナ4のインサート形成は、次のようにして行われる。
【0072】
まず、容器本体2と同素材のポリカーボネート樹脂によって中芯部材25を成形する。
【0073】
次に、この中芯部材25のリアリテーナ固定部24を、リヤリテーナ4の成形型7のキャビティ70に露出させ、このキャビティ70内にサーモプラスチックエラストマーの溶融樹脂を充填してリアリテーナ固定部24にリヤリテーナ4を成形する。この際、リアリテーナ固定部24には、複数の貫通孔28aを有する固定片28が突設されているので、リヤリテーナ4は、固定片28を被覆し、貫通孔28aに樹脂が回り込んで、この固定片28と構造的に強固に一体化することとなる。
【0074】
脱型後、中芯部材25のインサート部27を容器本体2の成形型8のキャビティ80に露出させ、このキャビティ80内にポリカーボネートの溶融樹脂を充填してインサート部27を溶融一体化させて容器本体2を成形する。
【0075】
この容器本体2の成形時には、リヤリテーナ4自体はキャビティ80の外に設けられており、熱の影響を受けないので、ひび割れなどを生じない。また、このようにして成形された容器本体2は、リヤリテーナ4が強固に一体化したものとなるため、ガタツキなどを生じない。したがって、経時的使用によるガタツキを無くし、摩擦による発塵を防止することができる結果、収納容器1内部の汚染、所謂コンタミネーションの不都合を解消できるのである。
【0076】
なお、本実施の形態において、収納容器1は、凸部231aを有するリテーナ23と、V溝41の溝底に支持溝410を有するリアリテーナ4と、容器本体2の底面21のリアリテーナ固定部24にインサート成形したリアリテーナ4とを構成することによって収納容器1内の発塵を防止するようになされているが、これら各要素のうち、何れか一つ以上を有する収納容器1であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る精密基板収納容器は、高度の清潔性が要求される半導体ウエハ、液晶ガラス基板などを収納して航空機輸送し、或いは温度差の大きい地域への移送用として使用される。
【符号の説明】
【0078】
1 精密基板収容容器
2 容器本体
20 開口部
21 底面
22b 側壁面
22d 側壁面
23 リテーナ
231 載置面
231a 凸部
231b 平滑面(滑り止め面)
24 リテーナ固定部
25 中芯部材
26 基材
27 インサート部
28 固定片
28a 貫通孔
3 蓋体
4 リヤリテーナ
41 V溝
410 支持溝
5 精密基板
6 フロントリテーナ
7 成形型
70 キャビティ
8 成形型
80 キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を保持するリアリテーナが設けられた収納容器であって、
容器本体は、ポリカーボネート樹脂からなり、底面に設けられたリアリテーナ固定部から、複数の貫通孔を有する固定片が突設されてなり、
リアリテーナは、サーモプラスチックエラストマーからなり、この固定片を被覆し、貫通孔に成形樹脂が回り込んで固定片と一体化した状態でリアリテーナ固定部に設けられてなることを特徴とする精密基板収納容器。
【請求項2】
上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を保持するリアリテーナが設けられた収納容器であって、
リアリテーナが固定される固定部から複数の貫通孔を有する固定片が突設されるとともに、この固定片と相反する位置には容器本体と溶融一体化するインサート部が形成された中芯部材を、容器本体と同素材で成形し、
この中芯部材の固定部を、リアリテーナの成形型のキャビティに露出させ、貫通孔にリアリテーナの成形樹脂を回りこませて固定片を被覆し、この固定片と一体化した状態でリアリテーナ固定部に、容器本体と異素材のリアリテーナを成形し、
中芯部材のインサート部を、容器本体の成形型のキャビティに露出させて容器本体を成形し、このインサート部を介して中芯部材と容器本体とを溶融一体化させて容器本体にリアリテーナを設けることを特徴とする精密基板収納容器の製造方法。
【請求項3】
リアリテーナの成形型のキャビティに露出させた固定部の表面積を100とした場合、容器本体の成形型のキャビティに露出させたインサート部の表面積が150%以上となされた中芯部材を用いる請求項2記載の精密基板収納容器の製造方法。
【請求項4】
上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を等間隔で保持するリアリテーナが設けられた収納容器であって、
リアリテーナは、容器本体を横倒しにしてその内部に精密基板を収納して蓋体を固定してから容器本体を起こした状態で、蓋体からの付勢力および精密基板の自重によって精密基板を溝底側へと押し込むようになされたV溝を有してなり、この溝底部には、精密基板の基板面に直行する支持面から、支持角度20〜45度に設定され、押し込まれた精密基板の周縁を嵌合する支持溝が設けられてなることを特徴とする精密基板収納容器。
【請求項5】
容器本体の両側壁面に、複数枚の精密基板を保持するリテーナが設けられ、
前記リテーナは、精密基板が載置される載置面に、精密基板との接触面積を減らす凸部が設けられた請求項1または4記載の精密基板収納容器。
【請求項6】
凸部は、容器本体の底面側から開口部側に向かって線状に凸設するようになされた請求項5記載の精密基板収納容器。
【請求項7】
凸部は、容器本体の底面側から開口部側に向かって点線状に凸設するようになされた請求項5記載の精密基板収納容器。
【請求項8】
精密基板が載置されるリテーナの載置面は、容器本体の開口部付近に、凸部最頂部と面一になる滑り止め面が形成された請求項5ないし7の何れか一に記載の精密基板収納容器。
【請求項1】
上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を保持するリアリテーナが設けられた収納容器であって、
容器本体は、ポリカーボネート樹脂からなり、底面に設けられたリアリテーナ固定部から、複数の貫通孔を有する固定片が突設されてなり、
リアリテーナは、サーモプラスチックエラストマーからなり、この固定片を被覆し、貫通孔に成形樹脂が回り込んで固定片と一体化した状態でリアリテーナ固定部に設けられてなることを特徴とする精密基板収納容器。
【請求項2】
上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を保持するリアリテーナが設けられた収納容器であって、
リアリテーナが固定される固定部から複数の貫通孔を有する固定片が突設されるとともに、この固定片と相反する位置には容器本体と溶融一体化するインサート部が形成された中芯部材を、容器本体と同素材で成形し、
この中芯部材の固定部を、リアリテーナの成形型のキャビティに露出させ、貫通孔にリアリテーナの成形樹脂を回りこませて固定片を被覆し、この固定片と一体化した状態でリアリテーナ固定部に、容器本体と異素材のリアリテーナを成形し、
中芯部材のインサート部を、容器本体の成形型のキャビティに露出させて容器本体を成形し、このインサート部を介して中芯部材と容器本体とを溶融一体化させて容器本体にリアリテーナを設けることを特徴とする精密基板収納容器の製造方法。
【請求項3】
リアリテーナの成形型のキャビティに露出させた固定部の表面積を100とした場合、容器本体の成形型のキャビティに露出させたインサート部の表面積が150%以上となされた中芯部材を用いる請求項2記載の精密基板収納容器の製造方法。
【請求項4】
上面が開口し、内部に精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に被せられる蓋体とを具備し、容器本体の底面に、精密基板を等間隔で保持するリアリテーナが設けられた収納容器であって、
リアリテーナは、容器本体を横倒しにしてその内部に精密基板を収納して蓋体を固定してから容器本体を起こした状態で、蓋体からの付勢力および精密基板の自重によって精密基板を溝底側へと押し込むようになされたV溝を有してなり、この溝底部には、精密基板の基板面に直行する支持面から、支持角度20〜45度に設定され、押し込まれた精密基板の周縁を嵌合する支持溝が設けられてなることを特徴とする精密基板収納容器。
【請求項5】
容器本体の両側壁面に、複数枚の精密基板を保持するリテーナが設けられ、
前記リテーナは、精密基板が載置される載置面に、精密基板との接触面積を減らす凸部が設けられた請求項1または4記載の精密基板収納容器。
【請求項6】
凸部は、容器本体の底面側から開口部側に向かって線状に凸設するようになされた請求項5記載の精密基板収納容器。
【請求項7】
凸部は、容器本体の底面側から開口部側に向かって点線状に凸設するようになされた請求項5記載の精密基板収納容器。
【請求項8】
精密基板が載置されるリテーナの載置面は、容器本体の開口部付近に、凸部最頂部と面一になる滑り止め面が形成された請求項5ないし7の何れか一に記載の精密基板収納容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−18878(P2011−18878A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33764(P2010−33764)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(591270419)ゴールド工業株式会社 (14)
【出願人】(509160236)双日プラネット株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(591270419)ゴールド工業株式会社 (14)
【出願人】(509160236)双日プラネット株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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