説明

組立てシステム

【課題】作業効率を向上できる組立てシステムを提供すること。
【解決手段】組立てシステム1は、搬送経路2を搬送されるワーク4をロボット10で組み立てる。ロボット10は、ロボット本体20と、このロボット本体20に軸支されるアーム30と、このアーム30の先端に軸支されたハンド37と、を備える。アーム30は、ロボット本体20側から順に、第1軸311、第2軸321、第3軸331、第4軸341、第5軸351および第6軸361で互いに軸支された第1腕部31、第2腕部32、第3腕部33、第4腕部34、第5腕部35および第6腕部36を備える。ロボット本体20からワーク4までの距離は、アーム30を水平に延ばした場合のロボット本体20から第3軸331までの距離に略等しくなるように設定され、第4腕部34は、湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立てシステムに関する。詳しくは、ロボットでワークを組立てる組立てシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のエンジンやトランスミッション等の重量物を、ロボットを用いて組み立てる組立てシステムが知られている。
この組立てシステムとしては、例えば、2本の6軸のロボットアームを備え、これらロボットアームを協調動作させてワークを組み立てるシステムがある(特許文献1参照)。このシステムによれば、2本のロボットアームを協調動作させて、ワークを組み立てることができる。
【特許文献1】特開2006−35346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、以上のようなシステムでは、ロボットアームを2台並列に配置して作業させると、アームの姿勢が限定されるため、作業効率が低下する場合があった。例えば、一方のロボットアームでワークの上面を作業しながら、他方のロボットアームでワークの側面や正面(手前側の面)を作業したり、2台のロボットアームで小さなワークの同一面や大きなワークの同一面上の狭い作業領域を互いに干渉せずに作業したりすることは困難であった。
【0004】
本発明は、作業効率を向上できる組立てシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の組立てシステムは、搬送経路を搬送されるワークをロボットで組み立てる組立てシステムであって、前記ロボットは、ロボット本体と、当該ロボット本体に軸支されるアームと、当該アームの先端に軸支されたハンドと、を備え、前記アームは、前記ロボット本体側から順に、第1軸、第2軸、第3軸、第4軸、第5軸および第6軸で互いに軸支された第1腕部、第2腕部、第3腕部、第4腕部、第5腕部および第6腕部を備え、前記ロボット本体から前記ワークまでの距離は、前記アームを水平に延ばした場合の前記ロボット本体から前記第3軸までの距離に略等しくなるように設定され、前記第4腕部は、湾曲していることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、ロボットを7軸としたので、ロボットを6軸とした場合に比べて、ハンドの姿勢を同じにしても、アームの姿勢の自由度が高くなる。
したがって、例えば、ロボットを2台並列に配置して協調動作させても、これら2台のロボットのアームの姿勢を変化させることで、互いのアームが干渉するのを防止できる。その結果、これら2台のロボットの設置間隔を狭くできる。さらに、2台のロボットのうちの一方でワークの上面を作業しながら、他方でワークの側面や正面(手前側の面)を作業したり、2台のロボットで小さなワークの同一面や大きなワークの同一面上の狭い作業領域を互いに干渉せずに作業したりできる。よって、作業効率を向上できる。
【0007】
ここで、第4腕部を湾曲させたので、従来の7軸ロボットに比べて、ハンドを第1腕部に接近させることができる。よって、ロボット本体からワークまでの距離を、アームを水平に延ばした場合のロボット本体から第3軸までの距離に略等しくなるように設定して、従来の7軸ロボットよりも搬送経路の近くにロボットを設置できる。
よって、従来の7軸ロボットに比べて、ロボットの作業範囲をより広くできるので、作業内容が変更されても、ロボットと搬送路との位置関係を調整する必要がなく、ワークの組立てコストを低減できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロボットを7軸としたので、ロボットを6軸とした場合に比べて、ハンドの姿勢を同じにしても、アームの姿勢の自由度が高くなる。したがって、例えば、ロボットを2台並列に配置して協調動作させても、これら2台のロボットのアームの姿勢を変化させることで、互いのアームが干渉するのを防止できる。その結果、これら2台のロボットの設置間隔を狭くできる。さらに、2台のロボットのうちの一方でワークの上面を作業しながら、他方でワークの側面や正面(手前側の面)を作業したり、2台のロボットで小さなワークの同一面や大きなワークの同一面上の狭い作業領域を互いに干渉せずに作業したりできる。よって、作業効率を向上できる。ここで、第4腕部を湾曲させたので、従来の7軸ロボットに比べて、ハンドを第1腕部に接近させることができる。よって、ロボット本体からワークまでの距離を、アームを水平に延ばした場合のロボット本体から第3軸までの距離に略等しくなるように設定して、従来の7軸ロボットよりも搬送経路の近くにロボットを設置できる。よって、従来の7軸ロボットに比べて、ロボットの作業範囲をより広くできるので、作業内容が変更されても、ロボットと搬送路との位置関係を調整する必要がなく、ワークの組立てコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る組立てシステム1の側面図である。
組立てシステム1は、AGV3(Automatic Guided Vehicle)が走行する搬送経路2の途中に設けられている。AGV3には、ワーク4が載置されている。
この組立てシステム1は、AGV3により搬送経路2を搬送されるワーク4を組み立てる7軸のロボット10を備える。
【0010】
図2および図3は、ロボット10の平面図および側面図である。
ロボット10は、ロボット本体20と、このロボット本体20に設けられた2本のマニピュレータ21と、を備える。
各マニピュレータ21は、7軸であり、ロボット本体20に軸支されるアーム30と、このアーム30の先端に軸支されたハンド37と、を備える。
【0011】
アーム30は、ロボット本体20側から順に、第1腕部31、第2腕部32、第3腕部33、第4腕部34、第5腕部35、および、第6腕部36を備える。
【0012】
第1腕部31は、略直線状に延びており、第1軸311でロボット本体20に軸支される。この第1軸311は、第1腕部31の軸方向を回転中心として、第1腕部31を回転させる。
【0013】
第2腕部32は、略直線状に延びており、第2軸321で第1腕部31に軸支される。この第2軸321は、第1腕部31の軸方向と第2腕部32の軸方向との成す角度を変化させる。
第3腕部33は、略直線状に延びており、第3軸331で第2腕部32に軸支される。この第3軸331は、第3腕部33の軸方向を回転中心として、第3腕部33を回転させる。
【0014】
第4腕部34は、湾曲して延びており、第4軸341で第3腕部33に軸支される。この第4軸341は、第3腕部33の軸方向と第4腕部34の基端側の軸方向との成す角度を変化させる。
第5腕部35は、略直線状に延びており、第5軸351で第4腕部34に軸支される。この第5軸351は、第5腕部35の軸方向を回転中心として、第5腕部35を回転させる。
【0015】
第6腕部36は、略直線状に延びており、第6軸361で第5腕部35に軸支される。この第6軸361は、第5腕部35の軸方向と第6腕部36の軸方向との成す角度を変化させる。
【0016】
ハンド37は、第7軸371で第6腕部36に軸支される。この第7軸371は、ハンド37の軸方向を回転中心として、ハンド37を回転させる。
このハンド37が軸支される第7軸371の端面を、フランジ面38とする。
【0017】
図3に示すように、以上のロボット10では、ロボット本体20からワーク4までの距離は、アーム30を水平に延ばした場合のロボット本体20から第3軸331までの距離に略等しくなるように設定されている。
【0018】
図1に戻って、ワーク4は、略直方体状の空間であり、上面41と、ロボット10のロボット本体20側の正面42と、正面42とは反対側の背面43と、正面42および背面43の間の側面44と、高さhにおける底面45と、で囲まれている。
【0019】
次に、以上のロボット10の動作を説明する。
ここで、ロボット10の作業範囲を説明するため、ロボット10の第4腕部34を湾曲させずに直線状としたものをロボット10Aとし、このロボット10Aとロボット10とを比較する。
【0020】
図4は、フランジ面38を下向きにした状態でのロボット10の作業範囲(図4中、二点鎖線Aで示す)と、フランジ面38を水平かつワーク4の正面42に対向させた状態でのマニピュレータ21の作業範囲(図4中、二点鎖線Bで示す)と、を示す側面図である。
図5は、フランジ面38を下向きにした状態での底面45についてのロボット10の作業範囲を示す平面図である。ロボット10は2つのマニピュレータ21を備えるため、図5では、マニピュレータ21のそれぞれの作業範囲を二点鎖線で示す。
【0021】
図6は、フランジ面38を下向きにした状態でのロボット10Aの作業範囲(図6中、二点鎖線Aで示す)と、フランジ面38を水平かつワーク4の正面42に対向させた状態でのロボット10の作業範囲(図6中、二点鎖線Bで示す)と、を示す側面図である。
図7は、フランジ面38を下向きにした状態での底面45についてのロボット10Aの作業範囲を示す平面図である。ロボット10Aは2つのマニピュレータ21を備えるため、図7では、マニピュレータ21のそれぞれの作業範囲を二点鎖線で示す。
【0022】
まず、組立てシステム1でワーク4の底面45を作業する場合を想定する。
ロボット10Aでは、図6および図7に示すように、ワーク4の上面41の正面42側を作業するために、ロボット本体20からワーク4までの距離は、アーム30を水平に延ばした場合のロボット本体20から第3軸331と第4軸341の間までの距離に略等しくなるように設定されている。
その結果、底面45の背面43側には、アーム30を水平に延ばしても作業できない作業不可能領域45Aが生じることになる。
【0023】
これに対し、ロボット10では、図4および図5に示すように、ロボット10Aに比べて、フランジ面38を第1腕部31に接近させることができる。よって、ロボット本体20からワーク4までの距離を、アーム30を水平に延ばした場合のロボット本体20から第3軸331までの距離に略等しくなるように設定できる。
その結果、底面45の正面42側端部から背面43側端部まで作業できることになり、底面45の全面に亘って作業を行うことができる。
【0024】
次に、組立てシステム1で、ワークの側面44を作業する場合を想定する。
ロボット10Aでは、図6および図7に示すように、ワーク4の側面44の背面43側端部までフランジ面38を到達させることができず、ワーク4の側面44には、作業できない作業不可能領域44Aが生じることになる。
これに対し、ロボット10では、図4および図5に示すように、側面44の正面42側端部から背面43側端部まで作業できることになり、側面44の全面に亘って作業を行うことができる。
【0025】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)ロボット10を7軸としたので、ロボットを6軸とした場合に比べて、ハンド37の姿勢を同じにしても、アーム30の姿勢の自由度が高くなる。
したがって、例えば、ロボット10を2台並列に配置して協調動作させても、これら2台のロボット10のアーム30の姿勢を変化させることで、互いのアーム30が干渉するのを防止できる。その結果、これら2台のロボット10の設置間隔を狭くできる。さらに、2台のロボット10のうちの一方でワーク4の上面を作業しながら、他方でワークの側面や正面(手前側の面)を作業したり、2台のロボットで小さなワークの同一面や大きなワークの同一面上の狭い作業領域を互いに干渉せずに作業したりできる。よって、作業効率を向上できる。
【0026】
(2)第4腕部34を湾曲させたので、従来の7軸ロボットに比べて、ハンド37を第1腕部31に接近させることができる。よって、ロボット本体20からワーク4までの距離を、アーム30を水平に延ばした場合のロボット本体20から第3軸331までの距離に略等しくなるように設定して、従来の7軸ロボットよりも搬送経路2の近くにロボット10を設置できる。
その結果、上述のように、ワーク4の正面42から背面43に至るまで、奥行き方向に確実に作業できるうえに、ワーク4の上面41から底面45に至るまで、上下方向に確実に作業できる。よって、従来の7軸ロボットに比べて、ロボット10の作業範囲をより広くできるので、作業内容が変更されても、ロボット10と搬送路2との位置関係を調整する必要がなく、ワーク4の組立てコストを低減できる。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る組立てシステムの側面図である。
【図2】前記実施形態に係る組立てシステムを構成するロボットの平面図である。
【図3】前記実施形態に係る組立てシステムを構成するロボットの側面図である。
【図4】前記実施形態に係るロボットの作業範囲を示す側面図である。
【図5】前記実施形態に係るロボットの作業範囲を示す平面図である。
【図6】従来例に係るロボットの作業範囲を示す側面図である。
【図7】従来例に係るロボットの作業範囲を示す平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 組立てシステム
2 搬送経路
4 ワーク
10 ロボット
20 ロボット本体
30 アーム
31 第1腕部
32 第2腕部
33 第3腕部
34 第4腕部
35 第5腕部
36 第6腕部
37 ハンド
311 第1軸
321 第2軸
331 第3軸
341 第4軸
351 第5軸
361 第6軸
371 第7軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路を搬送されるワークをロボットで組み立てる組立てシステムであって、
前記ロボットは、ロボット本体と、当該ロボット本体に軸支されるアームと、当該アームの先端に軸支されたハンドと、を備え、
前記アームは、前記ロボット本体側から順に、第1軸、第2軸、第3軸、第4軸、第5軸および第6軸で互いに軸支された第1腕部、第2腕部、第3腕部、第4腕部、第5腕部および第6腕部を備え、
前記ロボット本体から前記ワークまでの距離は、前記アームを水平に延ばした場合の前記ロボット本体から前記第3軸までの距離に略等しくなるように設定され、
前記第4腕部は、湾曲していることを特徴とする組立てシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−272879(P2008−272879A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119705(P2007−119705)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】