説明

組立搬送設備

【課題】部品の組付位置が大幅に変更された場合でも容易に対応可能な組立搬送設備を提供する。
【解決手段】下側搬送装置20にリフタ間距離変更機構70を設けた。これにより、部品の組付位置が変更された場合であっても、複数のリフタ23・24間の距離を容易に変更することができるため、リフタを取り外して移動させるような手間の係る作業を要することなく、迅速に対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ状態で搬送される搬送物の下方で、搬送物と同期させて部品を搬送しながら、部品を搬送物の下方から組み付けるための組立搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示されている組立搬送設備(自動車の組立ライン)では、自動車のボディをオーバーヘッドコンベアラインにより吊り下げ状態で搬送すると共に、このボディの下方で、ボディと同期させてエンジンやリアアクスル等の部品を搬送し、ボディの下方から各部品が組み付けられている。このとき、各部品は、ボディと同期して移動可能な搬送台車に設置された複数のリフタ(昇降テーブル6・7)上に載置され、リフタを上昇させることにより部品がボディに組付可能な高さまで持ち上げられる。
【0003】
この組立搬送設備のリフタには、前後方向(ボディ搬送方向)及び左右方向(ボディ搬送方向と直交する水平方向)に位置調整可能なワーク支持台6b・7bが設けられ、このワーク支持台6b・7bの位置を調整することにより、各部品の組付位置を微調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−72609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような組立搬送設備において、オーバーヘッドコンベアラインで搬送されるワークの種類が変更されると、部品の組付位置が変わる。例えば、搬送されるボディの種類が変わると、ホイールベースが変わるため、エンジン及びリアアクスルの組付位置、特に両部品の前後方向距離が変わる。上記特許文献1の組立搬送設備では、水平方向に移動可能なワーク支持台6b・7bが設けられているため、部品の組付位置の変更がワーク支持台6b・7bの移動可能範囲内であれば対応できるが、ワーク支持台6b・7bの移動可能範囲を越えると対応できない。この場合、リフタを搬送台車から一旦取り外して移動させ、部品の組付位置に対応した箇所に当該リフタを設置しなおす必要があり、多大な労力及び時間を要する。特に、複数種のボディが同一ラインに搬送される場合は、異なる種類のボディが連続して搬送されるため、部品の組付位置の変更に時間がかかると搬送ラインを停止させる必要が生じ、生産効率の低下を招くこととなる。
【0006】
本発明の解決すべき課題は、部品の組付位置が大幅に変更された場合でも容易に対応可能な組立搬送設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、搬送物を吊り下げ状態で搬送する上側搬送装置と、前記搬送物の下方で、前記搬送物の搬送方向と同方向で往復移動可能な下側搬送装置と、下側搬送装置に設けられ、搬送物に組み付ける部品を昇降可能に支持する複数のリフタとを備え、各リフタに搭載した部品を前記搬送物と同期させて搬送しながら、前記搬送物の下方から前記部品を組み付ける組立搬送設備であって、前記複数のリフタ間の距離を変更するためのリフタ間距離変更機構を設けたことを特徴とする。
【0008】
このように、本発明の組立搬送設備は、リフタ間距離変更機構が設けられる。これにより、部品の組付位置が変更された場合であっても、複数のリフタ間の距離を容易に変更することができるため、リフタを取り外して移動させるような手間の係る作業を要することなく、迅速に対応することができる。
【0009】
上記の組立搬送設備において、前記部品を搭載した搬入装置を下側搬送装置の移動経路内に搬入し、この搬入装置の下方にリフタを配置し、この状態でリフタを上昇させることにより前記部品をリフタに搭載すれば、リフタの上昇動作のみで部品をリフタに搭載することができる。リフタの上昇動作は、吊り下げ搬送された搬送物の高さまで部品を上昇させるために必須の動作であるため、この動作を利用してリフタ上に部品を搭載することで、別途の部品移載工程を省略でき、サイクルタイムの短縮及び組立コストの低減が図られる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、部品の組付位置が大幅に変更された場合でも容易に対応可能な組立搬送設備を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】組立搬送設備の平面図である。
【図2】組立搬送設備の側面図である。
【図3】リフタ内部の昇降手段を示す側面図である。
【図4】リフタ間距離変更機構の側面図である。
【図5】フロント側の台車の斜視図である。
【図6】リア側の台車の斜視図である。
【図7】(a)は、フロント側のリフタにおける下側搬送装置の幅方向断面図であり、(b)は、リア側のリフタにおける下側搬送装置の幅方向断面図である。
【図8】(a)〜(d)は、組立搬送設備による組立工程を示す平面図である。
【図9】組立搬送設備の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る組立搬送設備1は、搬送物としての自動車のボディW(図2参照)を吊り下げ状態で搬送すると共に、このボディWの下方で各種部品を同期させて搬送し、ボディWの下方から各種部品を組み付けるためのものである。図示例では、ボディWのフロント側部分にエンジンユニットGが組み付けられ、ボディWのリア側部分にリアアクスルユニットR及びスプリングSが組み付けられる。尚、以下の説明では、ボディWが搬送される方向(図1及び図2の左右方向)を搬送方向と言い、搬送方向と直交する水平方向(図1の上下方向、図2の紙面直交方向)を幅方向と言う。また、特に説明のない限り、リアアクスルユニットRはこれに装着されるスプリングSを含むものとする。
【0014】
組立搬送設備1は、図1に示すように、ボディWを吊り下げ状態で搬送する上側搬送装置としてのオーバーヘッドコンベア10(図1では二点鎖線でボディWの搬送方向のみを示している)と、ボディWに組み付けられるエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRを搭載し、搬送方向に往復移動可能な下側搬送装置20と、エンジンユニットG及びリアアクスルユニットRを下側搬送装置20の移動経路上に搬入する搬入装置としての台車30及び40と、ツールボックス50とを主に備える。
【0015】
オーバーヘッドコンベア10は、所定方向に(図1では右から左へ)一定速度でボディWを吊り下げ状態で搬送するものである。本実施形態では、図2に示すように、搬送方向に延びたレール11と、レール11から下方に延びたハンガ12と、ハンガ12をレール11に沿って移動させる駆動部(図示省略)とを備える。ハンガ12でボディWを側方から抱え込んで吊り下げ状態で保持した状態で、駆動部を駆動することにより、ハンガ12及びボディWが下流側(図中左側)に搬送される。
【0016】
下側搬送装置20は、搬送方向に往復移動可能とされる。本実施形態では、搬送方向に延びたコンベアC20により駆動され、図1に実線で示す位置と鎖線で示す位置との間で往復移動可能とされる。この下側搬送装置20の移動可能領域が組立搬送設備1における組付作業エリアAとなる。下側搬送装置20の往復移動は、図示しない制御システムにより制御され、オーバーヘッドコンベア10で搬送されるボディWと同期して移動するように制御される。すなわち、ボディWが作業エリアA内で搬送されているときは、下側搬送装置20は、このボディWの真下で、且つ、ボディWと同じ速度で下流側へ搬送される。このボディWが作業エリアAから搬出されたら、下側搬送装置20は上流側に後退し、新たなボディWが作業エリアAに搬入されるまでの間に作業エリアAの上流側端部に配される。新たなボディWが作業エリアAに搬入されたら、このボディWと同期して下流側に搬送される。
【0017】
下側搬送装置20は、ベースプレート22と、複数のリフタ23及び24とを有する。ベースプレート22の上面に、リフタ23及び24が搬送方向に離隔して配される。フロント側のリフタ23にはエンジンユニットGが搭載され、リア側のリフタ24にはリアアクスルユニットRが搭載される。リフタ23とリフタ24との間隔は、ボディWへのエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRの組付位置の間隔に合わせられている(図2参照)。
【0018】
コンベアC20は、搬送方向に延び、搬送方向で何れの方向にも走行可能に設けられる。図示例では、コンベアC20は地面に埋め込まれ、コンベアC20の搬送面(上面)が地面とほぼ同一平面上に配される。コンベアC20の搬送面にベースプレート22の下面が固定され、この状態でコンベアC20を走行させることで、下側搬送装置20が搬送方向に搬送される。尚、ここで言う「地面」とは、組立搬送設備1が設置される面を意味し、実際の地上面から浮かせた設置面も含む。
【0019】
リフタ23及び24は、図2に示すように、昇降テーブル23a・24aと、昇降テーブル23a・24aを昇降させる昇降手段とを有する。昇降手段として、例えば図3に示すように、2本のチェーン61a・61bが噛合して1本の硬い棒状のチェーンとなるジップチェーン61を採用することができる。ジップチェーン61は、一対のチェーンケース62の内部にそれぞれ収容されたチェーン61a・61bが、サーボモータ(図示省略)で駆動されるチェーンローラ63a・63bにより送り出され、幅方向中央部で噛合して棒状となって上方に延びる。この硬い棒状となったジップチェーン61で、昇降テーブル23aが持ち上げられる。図示例では、昇降テーブル23aの姿勢を水平に保つために、パンタグラフ64が幅方向両側に設けられる(図3では奥側のパンタグラフ64のみを示す)。ジップチェーン61は、チェーンローラ63a・63bの駆動力をほとんど遊びのない状態で昇降テーブル23aに伝達することができるため、昇降テーブル23aの位置を正確に制御することができる。また、チェーンローラ63a・63bの駆動をサーボモータで行うことで、例えば油圧シリンダを用いる場合と比べて遊びがさらに小さくなり、昇降テーブル23aの位置をより正確に制御することができる。
【0020】
リフタ23・24は、制御システム(図示省略)による自動制御により昇降され、下側搬送装置20の搬送距離に応じて適宜の高さに設定される。また、リフタ23・24には昇降テーブル23a・24aを手動で昇降させるためのスイッチ23b・24bが設けられ、このスイッチ23b・24bを作業者が操作することにより昇降テーブル23a・24aの高さを微調整することができる。
【0021】
リフタ23・24の昇降テーブル23a・24aの上面には、搬送方向にスライド可能な縦スライド台23c・24cと、縦スライド台23c・24cの上面に、幅方向にスライド可能な横スライド台23d・24dとが設けられる。フロント側のリフタ23の横スライド台23dの上面には、エンジンユニットGを搭載した台車30を支持する支持部23a1が設けられ、リア側のリフタ24の横スライド台24dの上面には、リアアクスルユニットRを直接支持する支持部24a1が設けられる。これにより、リフタ23・24上に搭載される部品は水平方向にスライド可能となるため、部品をボディWに組み付ける際に部品の水平方向位置を微調整して組付位置に合わせることができる。
【0022】
下側搬送装置20には、リフタ23・24間の搬送方向距離を変更するためのリフタ間距離変更機構70が設けられる。例えば、図2に示すように、フロント側のリフタ23の下部プレート23eをベースプレート22に対して搬送方向でスライド可能に設けると共に、リア側のリフタ24の下部プレート24eをベースプレート22に固定する。そして、図4に示すように、リア側の下部プレート24eに固定されたブロック71に油圧シリンダ73を取り付け、この油圧シリンダ73のピン73aの先端部を、フロント側の下部プレート23eに固定されたブロック72に例えばナット74により連結する。このシリンダ73のピン73aを突出あるいは退入させることにより、フロント側のリフタ23が下部プレート23eと共に搬送方向にスライドし、これによりリフタ23・24間の距離が変更される。尚、リフタ間距離変更機構70は、油圧シリンダ73に限らず、例えばサーボモータにより駆動するものであってもよい。また、油圧シリンダやサーボモータの駆動を制御システム(図示省略)で制御することにより、下側搬送装置20と同期して搬送されるボディWの種類に合わせて、リフタ23・24間の距離を自動的に変更することができる。このように、リフタ間距離変更機構を設けることで、搬送されるボディWの種類が変わった場合でも、そのホイールベースに合わせてリフタ23・24間の距離を容易且つ迅速に変更することができる。
【0023】
下側搬送装置20には、後退時の障害物を検知するための非接触式センサが設けられる。本実施形態では、図1に示すように、ベースプレート22の上流側端部に、光源26からの光を検知可能な光センサ25が設けられる。光センサ25は、通常、光源26からの光を検知してONになっているが、光センサ25と光源26との間に障害物があると、光源26の光が光センサ25に届かず、光センサ25がOFFとなる。このONからOFFへ切り替わった信号が制御システム(図示省略)に伝達され、この信号により制御システムが障害物の存在を認識し、下側搬送装置20の搬送が停止される。これにより、下側搬送装置20が、後退時に障害物(人など)と接触する事態を未然に防止することができる。尚、接触バンパ(図示省略)等の接触式センサにより障害物を検知することも可能であるが、衝突する前に障害物を検知することができる点で、上記のような非接触式センサが好ましい。また、下側搬送装置20は、作業者による作業が行われながらゆっくり前進するため、図示例では前方の障害物を検知するセンサは設けていないが、もちろん、前進時の障害物との衝突を確実に回避するために上記のような非接触式センサを下側搬送装置20の前方に設けても良い。さらに、図1では非接触式センサをベースプレート22の一箇所にのみ設けているが、非接触式センサを幅方向の複数箇所に設ければ、より正確に障害物の有無を検知することができる。
【0024】
フロント側の台車30は、フロント側のリフタ23にエンジンユニットGを搬入するものであり、リフタ23の上昇によりエンジンユニットGと共に持ち上げられる構成となっている。具体的には、図5に示すように、エンジンユニットGが載置される矩形状の天板31と、天板31の四隅から下方に延びた4本の脚部32と、脚部32の下端に設けられた車輪33とを備える。
【0025】
リア側の台車40は、リア側のリフタ24にリアアクスルユニットRを搬入するものであり、リフタ24の上昇により持ち上げられることなく、リアアクスルユニットRをリフタ24に搭載可能な構成となっている。具体的には、図6に示すように、フレーム41と、フレーム41から下方に延びた4本の脚部42と、脚部42の下端に設けられた車輪43とを備える。フレーム41は、幅方向に離隔して平行に設けられた一対の側部としての側部フレーム41aと、一対の側部フレーム41aの一方の端部(上流側端部)を幅方向に連結する連結フレーム41bとからなり、上面視で略コの字型をなしている。フレーム41には、リアアクスルユニットRを支持する支持部44が設けられる。
【0026】
図7に示すように、台車30の脚部32の幅方向間隔W1、及び台車40の脚部42の幅方向間隔W2は、何れも下側搬送装置20の幅W0(図示例ではベースプレート22の幅)よりも大きく設定される(W1>W0、W2>W0)。また、台車30の天板31の下端までの高さH1、及び台車40のフレーム41の下端までの高さH2は、何れもリフタ23及び24を最下方位置に降下させた状態の下側搬送装置20の高さH0(図示例では支持部24a1の上端までの高さ)よりも高く設定される(H1>H0、H2>H0)。以上により、台車30・40の天板31・フレーム41の下方に形成されるスペースに、下側搬送装置20を潜り込ませて配置することが可能となる。
【0027】
組立搬送設備1には、台車30・40を作業エリアA内に搬入する駆動手段が設けられる。本実施形態では、図1に示すように、台車30・40をそれぞれ別々に駆動する複数の駆動手段として、搬送方向に延び、作業エリアAの内部と外部とを跨いで設けられた複数のコンベアC30及びC40が設けられる。コンベアC30及びC40は、上述のコンベアC20と同様に、地面に埋め込まれて設置され、搬送面が地面とほぼ同一平面上に配される。コンベアC30はフロント側の台車30を搬送するものであり、フロント側の台車30の車輪幅に合わせて設けられた平行な2本のコンベアからなる。コンベアC40はリア側の台車40を搬送するものであり、リア側の台車40の車輪幅に合わせて設けられた平行な2本のコンベアからなる。図示例では、リア側の台車40の車輪幅がフロント側の台車30の車輪幅よりも若干大きく、これによりコンベアC30の幅方向外側にコンベアC40が設けられている。
【0028】
ツールボックス50は、組付に要する工具や組付部品(ネジ等)が搭載され、下側搬送装置20の幅方向両側に設けられる。ツールボックス50は、コンベアC50によって搬送方向で往復移動可能とされ、図1に示すように、下側搬送装置20のフロント側のリフタ23の幅方向両側と、リア側のリフタ24の幅方向両側にそれぞれ1台ずつ、計4台配される。これのより、各リフタ23・24の幅方向両側から組付作業を行う4名の作業者それぞれの背後に、ツールボックス50が配される。ツールボックス50は下側搬送装置20と同期して搬送され、これにより必要な工具等を常に作業者の近くに配することができる。
【0029】
以下、上記構成の組立搬送設備1における組付手順を説明する。尚、図8では、ボディWが図中の右から左へ向けて搬送され、オーバーヘッドコンベア10、ボディW、及びツールボックス50等の記載を省略している。
【0030】
まず、図8(a)に矢印で示すように、エンジンユニットGを搭載したフロント側の台車30をコンベアC30上に搬入すると共に、リアアクスルユニットRを塔載したリア側の台車40をコンベアC40上に搬入する。このとき、台車30及び40は、搬送方向に隣接させた状態(搬入に支障がない程度に近接させた状態)で各コンベアC30・C40上に搬入される。これにより、例えば台車30・40を離隔した状態でコンベア上に搬入する場合と比べて、作業エリアAの上流側に確保すべきスペースを縮小することができる。
【0031】
この間、作業エリアAでは、下側搬送装置20がボディWと同期して下流側に搬送され、下側搬送装置20に搭載されたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRをボディWに組み付ける作業が行われている。
【0032】
次に、図8(b)に矢印で示すように、コンベアC30・C40を駆動して台車30・40を下流側に搬送し、作業エリアA内に搬入する。台車30及び40は、それぞれ別々のコンベアC30及びC40で搬送され、隣接した状態でコンベアC30・C40上に搬入された台車30・40は、その間隔を広げながら搬送される。台車30・40の作業エリアAへの搬入が完了した時点で、各台車に載置されたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRが、ボディWへの組付位置に対応した間隔で配されるように、台車30・40同士の間隔が設定される。
【0033】
この間も、下側搬送装置20はボディWと同期して下流側に搬送され、各部品の組付作業が続けられ、下側搬送装置20が作業エリアAの下流側端部に達するまでの間に組付作業が完了する(図8(b)では、組み付けられたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRが下側搬送装置20上から無くなっている)。下側搬送装置20が作業エリアAの下流側端部まで達したら、下側搬送装置20を停止させ、リフタ23・24を降下させる。これにより、持ち上げられていた台車30が接地され、台車30の天板31からリフタ23の支持部23a1が離隔し、空の台車30と下側搬送装置20とが分離される。
【0034】
下側搬送装置20のリフタ23・24を最下方位置まで降下させたら、コンベアC20を搬送方向とは逆向きに駆動し、下側搬送装置20を上流側に後退させる。このとき、下側搬送装置20には非接触式センサ(光センサ25、図1参照)が設けられているため、下側搬送装置20の上流側側における障害物の有無を確実に検知することができる。また、図8(c)に示すように、下側搬送装置20から分離された空の台車30は作業エリアAの下流側端部に残される。この空の台車30は、別途の搬送手段によりエンジンの組立ライン(図8(d)にL1で示す)へと搬送される。組立ラインL1では、エンジンユニットGを組み立てながら台車30に載せて搬送し、組み上がったエンジンユニットGを搭載した台車30がコンベアC20の上流側端部付近に順次配置される。
【0035】
コンベアC20の上流側端部まで後退した下側搬送装置20は、台車30及び40の下方に潜り込む(図8(c)参照)。これによりエンジンユニットGの下方にフロント側のリフタ23が配置されると共に、リアアクスルユニットRの下方にリア側のリフタ24が配置される(図2参照)。この状態でリフタ23を上昇させると、図9に示すように、昇降テーブル23aの上面に設けられた支持部23a1で台車30の天板31が下方から支持され、台車30と共にエンジンユニットGが持ち上げられる。このように、リフタ23で台車30ごとエンジンユニットGを持ち上げることにより、エンジンユニットGは台車30上に載置するだけでよいため、台車30にエンジンユニットGを支持する特別な支持部を設ける必要はない。従って、エンジンユニットGの種類が変わっても、同じ台車30を使用することができる。一方、リフタ24を上昇させると、上述のように、昇降テーブル24aが台車40の側部フレーム41aの内側を通過し、支持部73・74でリアアクスルユニットRのみを持ち上げ、リア側の台車40は接地した状態とされる。
【0036】
そして、コンベアC40を逆方向に走行させ、空になったリア側の台車40を上流側に後退させ、下側搬送装置20から分離する。この台車40が上流側端部まで達したら別途の駆動手段によりリアアクスルユニットRの塔載ライン(図8(d)にL2で示す)へと搬送する。搭載ラインL2では、リアアクスルユニットRの各部品を台車40に順に搭載しながら台車40を搬送し、リアアクスルユニットRを塔載した台車40がコンベアC40の上流側端部付近に順次配置される。
【0037】
各部品(エンジンユニットG及びリアアクスルユニットR)をリフタ23・24に搭載した下側搬送装置20の上方に、新たなボディWが搬送されてきたら、このボディWと同期して下側搬送装置20が下流側に搬送される。これと共に、リフタ23・24がさらに上昇し、各部品がボディWの組付位置に配される。このとき、各部品の高さがボディWの組付位置に合っていない場合は、作業者のスイッチ操作で高さが微調整される。また、各部品の水平方向位置がボディWの組付位置に合っていない場合は、縦スライド台23c・24c及び横スライド台23d・24d(図2参照)を介して各部品がリフタ23・24上で水平方向に動かされ、部品の水平方向位置が微調整される。こうして、ボディWと各部品が同期して下流側に搬送されながら、各部品をボディWの組付位置に正確に配置し、両者の組付作業が行われる。
【0038】
上記サイクルを繰り返すことにより、オーバーヘッドコンベア10により順次搬送されてくるボディWに、エンジンユニットG及びリアアクスルユニットRが下方から組み付けられる。
【0039】
上記の組立搬送設備1において、上側搬送装置10で搬送されるボディWの種類が変わり、各部品の搬送方向の組付位置が大幅に変わる場合、リフタ間距離変更機構70(図2参照)によりリフタ23・24間の距離が新たな組付位置に合わせて調整される。具体的にはシリンダ73を手動あるいは自動により突出あるいは退入させることにより、リフタ23・24間の距離がボディWのホイールベースに合わせて変更される。このように、リフタ間距離変更機構70によりリフタ23・24間の距離を素早く変更することで、同一搬送ライン上に異なる種類のボディWが搬送されてくる場合であっても、搬送ラインを止めることなく対応することが可能となる。特に、リフタ間距離変更機構70を制御システムで自動制御し、下側搬送装置20の上方に搬送されるボディWの種類を検知し、そのホイールベースに合わせてリフタ23・24間の距離を自動的に調整するようにすれば、搬送ラインが止まる事態を確実に回避できる。尚、リフタ23・24間の距離の変更は、リフタ23・24が空の状態、すなわち、下流端位置でリフタ23・24を降下させてから、上流端位置でリフタ23・24を上昇させるまでの間に行う必要があり、例えば下側搬送装置20が後退している間に変更すれば良い。
【0040】
また、上記の組立搬送設備1では、図2及び図9に示すように、リフタ23・24を上昇させるだけで、台車30・40に搭載されたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRをリフタ23・24上に搭載することができるため、別途の移載工程や移載スペースを省略することができる。また、部品をリフタ上に搭載するために下側搬送装置20に台車等を隣接させる必要がなく、下側搬送装置20の幅方向両側に作業スペースを確保することができるため、リフタ23・24上への部品の搭載中(すなわちリフタ23・24の上昇中)でも作業者が組付作業を行うことができる。さらに、下側搬送装置20が作業エリアAの上流側端部に戻ってくるまでの間に、台車30・40の作業エリアAへの搬入を完了しておくことで、無駄な時間を減らしてサイクルタイムを短縮することができる。
【0041】
また、例えば作業エリアAの幅方向から台車を搬入すると、台車が作業エリアA内の作業者と干渉する恐れがあるが、図8(b)に示すように、下側搬送装置20の搬送経路の延長方向から台車30・40を作業エリアA内に搬入することで、作業者と干渉することなく、下側搬送装置20の搬送経路上に台車30・40を搬入することができる。
【0042】
また、図8(d)に示すように、フロント側の台車30を作業エリアAの出口(下流側端部)まで搬送すると共に、リア側の台車40を作業エリアAの入口(上流側端部)に留めることにより、台車30が搬送されるエンジン組立ラインL1と、台車40が搬送されるリアアクスル搭載ラインL2とを、組立搬送設備1の幅方向一方側で、交差させることなく配置することができるため、各ラインの構造を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 組立搬送設備
10 オーバーヘッドコンベア(上側搬送装置)
20 下側搬送装置
23、24 リフタ
30、40 台車(搬入装置)
50 ツールボックス
70 リフタ間距離変更機構
73 油圧シリンダ
B ボディ
20、C30、C40、C50 コンベア
E エンジンユニット
R リアアクスルユニット
A 作業エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を吊り下げ状態で搬送する上側搬送装置と、前記搬送物の下方で、前記搬送物の搬送方向と同方向で往復移動可能な下側搬送装置と、下側搬送装置に設けられ、搬送物に組み付ける部品を昇降可能に支持する複数のリフタとを備え、各リフタに搭載した部品を前記搬送物と同期させて搬送しながら、前記搬送物の下方から前記部品を組み付ける組立搬送設備であって、
前記複数のリフタ間の距離を変更するためのリフタ間距離変更機構を設けたことを特徴とする組立搬送設備。
【請求項2】
前記部品を搭載した搬入装置を下側搬送装置の移動経路内に搬入し、この搬入装置の下方にリフタを配置し、この状態でリフタを上昇させることにより前記部品をリフタに搭載する請求項1記載の組立搬送設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−73593(P2011−73593A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227601(P2009−227601)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】