説明

組電池装置

【課題】コンパクトな形状を保ちかつ温度管理も容易な、単位セルを複数有する組電池装置を提供すること。
【解決手段】複数の単位セルは、おのおのが矩形の厚板状の形状を有し、互いに背面と腹面とが、または背面どうしが、または腹面どうしが対向するようにひとつの方向に並べて配置されている。また、密閉容器は、複数の単位セルの全体を囲っている。また、熱交換部材は、密閉容器の内壁面と複数の単位セルそれぞれのひとつの側面との間に設けられており、熱輸送流体を流す流路を備えた密構造になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、単位セルを複数有する組電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HEV(hybrid electric vehicle)、EV(electric vehicle)などの車両で使われる組電池装置は、車両内の限られた空間への配置のためコンパクトな形状を有しかつこれを適切な動作温度に保つための温度管理機能が求められる。コンパクトな形状の確保と、必要な温度管理とは、両立が難しい場合もある。例えば、空気の流れにより冷却などの温度管理を行うには、そのための空間を必要とするため、全体としてコンパクトな形状が確保されない可能性がある。また、通常は、単位セルを複数組み合わせて組電池装置を構成するため、この傾向はより顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−050000号公報
【特許文献2】特開2009−134938号公報
【特許文献3】特開2008−047371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンパクトな形状を保ちかつ温度管理も容易な、単位セルを複数有する組電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の組電池装置は、複数の単位セルと、密閉容器と、熱交換部材とを持つ。複数の単位セルは、おのおのが矩形の厚板状の形状を有し、互いに背面と腹面とが、または背面どうしが、または腹面どうしが対向するようにひとつの方向に並べて配置されている。また、密閉容器は、前記複数の単位セルの全体を囲っている。また、熱交換部材は、前記密閉容器の内壁面と前記複数の単位セルそれぞれのひとつの側面との間に設けられており、熱輸送流体を流す流路を備えた密構造になっている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】一実施形態である組電池装置の構成を示す縦断面図および横断面図。
【図2】図1中に示した熱交換部材16の構成を示す分解斜視図。
【図3】別の実施形態である組電池装置の構成を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以上を踏まえ、以下では実施形態の組電池装置を図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態である組電池装置の構成を示す縦断面図(図1(a))および横断面図(図1(b))である。図1(b)は、図1(a)中のA−Aa位置における矢視方向断面に相当している。図1(a)の図示における上下で、この装置の通常使用時の上下を示している。ただし、この方向の設置はひとつの好ましい使用姿勢であるものの、使用姿勢がこれに限られるわけではない。
【0008】
図1に示すように、この組電池装置は、単位セル11、バスバー12、スペーサ13、密閉容器14、断熱部材層15、熱交換部材16、バッテリ端子取り出し用容器貫通部材17a、17b、バッテリ端子18a、18b、流路接続用容器貫通部材19a、19b、流体供給/回収部および熱交換部21、流体供給管22、接続部23、25、流体回収管24を有する。
【0009】
単位セル11は、複数がひとつの方向に並べて設けられている。単位セル11のおのおのは、矩形の厚板状の形状を有し、その背面と腹面とが、または背面どうしが、または腹面どうしが対向するように並べられている。この実施形態では、これらの単位セル11を直列に接続するように、その電極11tどうしを電気的に接続するバスバー12を設け、このバスバー12の配置を単純にするため、単位セル11の背面どうし、または腹面どうしが対向するように並べられている。
【0010】
複数の単位セル11の電気的接続態様(直列、並列、またはそれらの混合)やバスバー12の配置いかんによっては、隣り合う単位セル11どうしの対向は、背面と腹面、背面どうし、腹面どうし、いかようにもなる。
【0011】
また、複数の単位セル11のそれぞれの側面が、密閉容器14の下側に設けられた熱交換部材16と対向するように、単位セル11のそれぞれは、その端子11tのある面が一方のサイドに向く姿勢で配置されている。これは、熱交換部材16との対向面積を考えると、端子11tのある面の反対側の面より、側面の方が一般的に面積大であり熱交換に有利であるためである。
【0012】
単位セル11のそれぞれには、端子11tが正極、負極の2端子、設けられている。これらの端子11tは、バスバー12で別の単位セル11に電気的に接続されるか、または、この組電池装置の全体としての端子18a、18bに接続されている。
【0013】
バスバー12は、単位セル11の端子11tどうしを電気的に接続する部材である。単位セル11どうしの配置の許容誤差を考慮して、図示するように、伸縮可能なばね機能を有していると、取り付けやその後のバッテリ端子11tの位置に微変動が生じたときにも対応でき好ましい。
【0014】
スペーサ13は、単位セル11どうしの間を埋めるように設けられる。スペーサ13を設けず空間(空洞)とするより、単位セル11と熱交換部材16との間での熱輸送が円滑になる。また、各単位セル11の温度偏差もより小さくできる。そのため、熱伝導率のある程度高い材質が好ましいが、単位セル11の外面どうしを互いに電気絶縁する必要がある場合には、絶縁性の材質の部材を用いるか、または絶縁性の層を表面に有した部材を用いる。なお、単位セル11どうしの間の寸法をごく小さく設定し、スペーサ13を排することにしてもよい。
【0015】
密閉容器14は、少なくとも、単位セル11の全体、および熱交換部材16を囲うように設けられる。好ましくは、密閉容器14の内壁面上は、断熱部材層15とする。容器14を密閉構造としたことにより、この容器14内で冷却/加温のため気流を形成することは意図しない。すなわち、いわゆる空冷温機能を排し、冷却/加温はもっぱら熱交換部材16によるように構成している。このため、熱交換部材16も密閉容器14内に配置される。そして、さらには、単位セル11からみて、その熱交換が熱交換部材16との間でほとんど完結されることを意図して、密閉容器14の内壁面全部に断熱部材層15を設けている。
【0016】
このように断熱部材層15を設ければ、容器14の外側からの熱の移動もほぼ遮断されるため、組電池装置として温度管理上好ましい。ただし、そのような熱の移動があっても熱交換部材16による熱交換が機能しなくなるわけではないので、断熱部材層15は必須ではない。また、断熱部材層15を容器14の内壁全面ではなく、一部のみに設けることも考えられる。例えば、熱交換部材16と密閉容器14との間に少なくとも断熱部材層15を配置するようにする。これは、熱交換部材16を、外部との意図しない熱移動から隔離し、単位セル11との間での熱交換に効率よく振り向けるためである。
【0017】
なお、容器14として金属などの非絶縁性の材質のものを採用し、断熱部材層15を熱交換部材16がある側とは反対側の容器14の内壁面上に設けない場合にあっては、単位セル11の外面どうしを互いに電気絶縁する必要がもしあれば、単位セル11と容器14の内壁面との間に、絶縁シートを介在させる。
【0018】
密閉容器14およびその内壁面上の断熱部材層15は、例えば、図1(b)に示すように、そのふたとなる側の、密閉容器ふた側14aおよび断熱部材層ふた側15aとの組み合わせで、密閉構造にすることができる。図示するように、単位セル11の端子11tに対向する側に、密閉容器ふた側14aおよび断熱部材層ふた側15aを設ければ、この組電池装置を組み立てる上で少なくとも都合がよい。
【0019】
また、そのような密閉容器ふた側14aおよび断熱部材層ふた側15aの配置において、これらを取り外せるように構成すれば、端子11tにアクセスが容易になることで、内部の単位セル11のメンテナンスを行う上でも好ましくなる。密閉容器ふた側14aおよび断熱部材層ふた側15aを、密閉容器14および断熱部材層15との間で取り外し、固定するには、種々の公知の固定方法(例えばねじ止めなど:ねじは不図示)を用いることができる。
【0020】
熱交換部材16は、複数の単位セル11のそれぞれの側面と対向するように、密閉容器14内に配置されている。熱交換部材16の内部には、熱輸送流体(例えば水)を流すための流路16cが設けられており、熱伝導を良好にするため、流路16cを除き密構造になっている。材質としては、例えば、アルミニウムなどの金属、またはフィラーを混ぜて熱伝導性を改善した樹脂などが挙げられる。金属などの非絶縁性の材質を採用した場合であって、単位セル11の外面どうしを互いに電気絶縁する必要がある場合には、単位セル11と熱交換部材16との間に、絶縁シートを介在させる。
【0021】
熱交換部材16の流路16cは、流路接続用容器貫通部材19aの側から、流路接続用容器貫通部材19b側へとその形状が例えばジグザグ状に連なる一筋の流路である。熱交換部材16にこのような流路16cを設けるため、この実施形態では、一例として、上側の部材16aと下側の部材16bとを対向させた構成としている。これらの部材16a、16bの相互に対向されるべき面にそれぞれ溝を形成し、対向させ組み立てることで流路16cとしている(図2で再度触れる)。
【0022】
バッテリ端子取り出し用容器貫通部材17a、17bは、容器14および断熱部材層15を貫通して設けられた、内部にある単位セル11の端子11tからの(への)電気導通部材を引き出す(引き込む)空間を確保する部材である。この内側に電気導通部材を通すことにより、この組電池装置としての端子18a、18bを容器14の外側に設けることができる。密閉容器14が導電性の素材で構成されている場合には、これらの貫通部材17a、17bは、端子18a、18bとの電気絶縁性を確保するため、非導電性の素材のものを用いる。
【0023】
バッテリ端子18a、18bは、それぞれ容器14の外側に設けられた、それぞれ、この組電池装置としての正極、負極の端子である。
【0024】
流路接続用容器貫通部材19a、19bは、容器14および断熱部材層15を貫通して、熱交換部材16の流路16cを延長するように設けられている。また、さらに、これらの貫通部材19a、19bは、容器14の外側で、管22、24の端部である接続部23、25との接続の仲介機能を担うように設けられている。貫通部材19a、19bと熱交換部材の流路16cとは、液体シール性が保たれるように例えばオーリング(不図示)などを介して対向している。
【0025】
流体供給/回収部および熱交換部21は、流体供給管22および貫通部材19aを介して熱交換部材16の流路16cに熱輸送流体を供給し、かつ、貫通部材19bおよび流体回収管24を介して流路16cからその流体を回収する。また、供給する流体と回収された流体とは一般に温度が異なるので、回収から再度供給するときに熱交換を行い、回収温度の流体を供給温度の流体に温度変化させる。
【0026】
流体供給管22は、流体供給/回収部および熱交換部21からの流体を熱交換部材16方へと輸送する管である。流体回収管24は、熱交換部材16方からの流体を流体供給/回収部および熱交換部21へと輸送する管である。流体供給管22、流体回収管24は、それぞれ、その端部が接続部(フランジ)23、25になっており、それらを介してそれぞれ、貫通部材19a、19bに接続されている。
【0027】
図2は、図1中に示した熱交換部材16の構成を示す分解斜視図である。図2において、図1中に示した構成と対応するものには同一の符号を付してある。
【0028】
図2に示すように、密構造の熱交換部材16の内部に流路16cを形成するには、対向する2枚の板状の部材16a、16bにそれぞれ、位置的に重ね合わせることができる溝16ca、16cbを設け、部材16a、16bを互いに対向させるように組み立てればよい。このような溝16ca、16cbを形成するには、溝削り出し加工や、金型を用いた鋳造や射出成型などを用いることができる。2枚の部材16a、16bを対向させ組み合わせたときの溝16cの液体シール性を確保するためには、例えば、あらかじめ、溝16ca(または16cb)を挟むようにパッキン部材(不図示)を位置させるように部材16a(または16b)を構成すればよい。
【0029】
熱交換部材16の以上の構成は、一例である。組み合わせる部材をもっと多数とし、例えば、流路16cが進行する方向に細分化された部材の組み合わせとすることもできる。このようにユニット化すれば、単位セル11の配置数に応じて熱交換部材16の長手方向寸法を加減することができる。
【0030】
以上説明した実施形態の組電池装置によれば、これに気流を流すための大きな空間やダクトが必要なくなり、全体としてコンパクトな形状の組電池装置になる。また、単位セル11との熱交換を熱交換部材16との間で集中的に、またはそこまで行かなくとも主として、行わせるように構成しているので、温度管理が容易になる。例えば、各単位セル11の温度不均一性をより軽減するように、熱交換部材16の流路16cの構成を改良する(例えば配置密度や断面積を流路の進行方向に向かって変動させる)ことも容易である。
【0031】
断熱部材層15が容器14の内壁面の全面に設けられている場合には、冷却水の供給が止まっても、熱交換部材16の熱容量と外部との断熱とにより、しばらくは、各単位セル11を冷却する効果が継続する。これは、EVなどで走行から停止に移行したときの状態として想定されるので、そのような使用にも適していると言える。
【0032】
また、流体供給/回収部および熱交換部21は、冷却用の流体を供給するだけでなく、場合によっては、加温用の流体を供給するようにしてもよい。これは、2次電池の組電池装置は、一般に、低温では内部抵抗が大きくなり出力として取り出せる電力が低下するためである。そこで、例えば、外気温が低温過ぎる場合などは、加温用の流体を供給して各単位セル11を適温にする。
【0033】
次に、別の実施形態である組電池装置について図3を参照して説明する。図3は、別の実施形態である組電池装置の構成を示す縦断面図である。図3において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一のものには同一符号を付してある。その部分については説明を省略する。また、横断面図の図示は、図1での図示を参照することができるので省略する。
【0034】
この組電池装置は、新たに弾性部材層31が、熱交換部材16と複数の単位セル11を介して対向するように、密閉容器14の内壁面と複数の単位セル11それぞれのひとつの側面との間に設けられている点が、図1に示した組電池装置と異なる点である。このような弾性部材層31を設けることで、単位セル11と熱交換部材16との密着性を増して熱的接続状態を向上させ(すなわち熱抵抗を下げ)、単位セル11と熱交換部材16との間の熱移動を円滑にしている。
【0035】
弾性部材層31としては、例えば、ゴム材料層に、導熱用のアルミニウムの蒸着層を積層したものを使用できる。単位セル11の外面どうしを互いに電気絶縁する必要がある場合には、単位セル11の側の表面には、絶縁性の材料層をさらに積層する。弾性部材層31が良導熱性をも有することで、単位セル11どうしでの熱の移動がさらに円滑になるため、その温度均一化を図る効果が高まる。
【0036】
なお、単位セル11と熱交換部材16との熱的接続状態をさらに向上させ熱抵抗を下げるためには、単位セル11それぞれの側面と熱交換部材16との間に、新たに伝熱グリースなどの良熱伝導体の層を設けると好ましい。
【0037】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
11…単位セル、11t…単位セル端子、12…バスバー、13…スペーサ、14…密閉容器、14a…密閉容器ふた側、15…断熱部材層、15a…断熱部材層ふた側、16…熱交換部材、16a…熱交換部材(上側)、16b…熱交換部材(下側)、16c…流路、16ca…上側部材溝、16cb…下側部材溝、17a,17b…バッテリ端子取り出し用容器貫通部材、18a,18b…バッテリ端子、19a,19b…流路接続用容器貫通部材、21…流体供給/回収部および熱交換部、22…流体供給管、23,25…接続部(フランジ)、24…流体回収管、31…弾性部材層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
おのおのが矩形の厚板状の形状を有し、互いに背面と腹面とが、または背面どうしが、または腹面どうしが対向するようにひとつの方向に並べて配置された複数の単位セルと、
前記複数の単位セルの全体を囲う密閉容器と、
前記密閉容器の内壁面と前記複数の単位セルそれぞれのひとつの側面との間に設けられた、熱輸送流体を流す流路を備えた密構造の熱交換部材と
を具備することを特徴とする組電池装置。
【請求項2】
前記密閉容器の内壁面上に設けられた断熱部材層をさらに具備し、
前記熱交換部材が、前記断熱部材層と前記複数の単位セルそれぞれのひとつの側面との間に設けられていること
を特徴とする請求項1記載の組電池装置。
【請求項3】
前記熱交換部材と前記複数の単位セルを介して対向するように、前記密閉容器の内壁面と前記複数の単位セルそれぞれのひとつの側面との間に設けられた弾性部材層をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の組電池装置。
【請求項4】
前記熱交換部材の前記流路につながるように前記密閉容器の外側に設けられた流体供給部をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の組電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−43757(P2012−43757A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186672(P2010−186672)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】