説明

結束漏洩伝送路、通信装置、および通信システム

【課題】MIMO用アンテナとして用いられる複数の漏洩伝送路の適切な敷設をより容易に行うことができるようにする。
【解決手段】結束漏洩同軸ケーブル100において、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cのそれぞれの外部導体には、所定の大きさのスリットが所定の間隔で形成される。漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cは、相関が低減されるように、スリットの向きが互いに異なるように結束される。若しくは、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cは、支持材によりλ/2ずつ離されて結束される。本発明は、例えば、結束漏洩伝送路、通信装置、および通信システムに適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束漏洩伝送路、通信装置、および通信システムに関し、特に、MIMO用アンテナとして用いられる複数の漏洩伝送路の適切な敷設をより容易に行うことができるようにした結束漏洩伝送路、通信装置、および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network)等の普及に伴い、一般家庭のような比較的狭いエリアに対して無線エリアを設定して通信を行うだけでなく、オフィスや公共の施設など広範囲に対して無線エリアを設定して通信を行う需要が高まっている。
【0003】
このような広範囲を一つのアクセスポイントでカバーするためには、一般に、アクセスポイントやアクセスポイントと通信を行う端末の電波出力を上げる方法や、搭載するアンテナを高利得アンテナにする方法で対応することができる。
【0004】
しかしながら、電波出力を上げることは消費電力を増大させることであるので、例えば移動端末の電池消費を早めることになる。また高利得のアンテナはそのサイズが大きく、小型化が要求される移動端末には不向きであった。
【0005】
そこで、移動端末側の装備は変更せず、アクセスポイント側のアンテナに漏洩同軸ケーブルを用いることで、広いエリアを面的にカバーする方法が考えられた(例えば特許文献1参照)。
【0006】
さらに近年、無線技術の高度化により、複数のアンテナを用いたMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信方式が主流となりつつある。この技術は、複数のアンテナそれぞれからの電波の経路差、すなわち数学的に相関が低いことを応用して、異なる伝送ストリームを多重して伝送する方式である。
【0007】
ここで、MIMO用のアンテナに漏洩同軸ケーブルを適用する場合について説明する。図1は、MIMO用アンテナとして3本の漏洩同軸ケーブルが敷設された室内の様子を説明する断面図である。図1において、漏洩同軸ケーブルは、その断面が示されている。図1の例の場合、漏洩同軸ケーブルは、天井付近に3本まとめて設置されている。
【0008】
これらの漏洩同軸ケーブルは、通常の無指向性タイプであるとする。この場合、端末と漏洩同軸ケーブル間の電波は、直接波が支配的となる。そして、上述したように、これらの漏洩同軸ケーブルは互いに近接するように設置されている。したがって、端末とこれら3本の各アンテナとの位置関係に大きな差が無いため、アンテナ間(漏洩同軸ケーブル間)の相関が高くなり、MIMOとして十分な特性を得られないことが考えられる。一般にMIMOの場合、アンテナの間隔をλ/2以上離すことが求められている。
【0009】
そこで、3本の漏洩同軸ケーブルを図2のように十分に離して設置する方法が考えられる。この場合、各漏洩同軸ケーブルから端末までの距離に大きな差が生じる可能性が高いので、MIMOとして十分な特性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-135159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、一般に、漏洩同軸ケーブルの設置場所は制約が多く、複数の漏洩同軸ケーブルを任意の位置に配置することは困難であった。例えばケーブルラック等の限られた場所にしか漏洩同軸ケーブルを設置することができないことも多い。つまり、空間によっては、図2に示されるように複数の漏洩同軸ケーブルを1つのケーブルラックに収まらないほど互いに十分な距離をとるように配置することが困難になる恐れがあった。
【0012】
また、漏洩同軸ケーブル同士を十分離して設置するために新たにケーブルラックを用意するのは、敷設費用の増大を招くだけでなく、空間の美観を損なう恐れもあった。
【0013】
さらに、MIMOとして利用する(MIMOとしての十分な特性を確保する)ためには、アンテナ間(漏洩同軸ケーブル間)の距離をλ/2以上離すなどしてブランチ(アンテナ)間の相関を低くしたり、アンテナ(漏洩同軸ケーブル)から放射される電波の偏波を直交させたりする必要がある。
【0014】
しかしながら、そのためには、同軸ケーブルを敷設する敷設者に、高度なアンテナ知識が要求される。そのため、敷設の技術的な難易度が高い空間における漏洩同軸ケーブルの敷設や、アンテナに関する知識の浅い人間による漏洩同軸ケーブルの敷設では、MIMOとしての特性を損なう恐れがあった。
【0015】
本発明は上述したような実情に鑑みて提案されたものであり、MIMOとしての十分な特性を確保しつつ、敷設の自由度と容易性が十分な漏洩同軸ケーブルを実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一側面は、内部で信号を伝送する伝送路を有し、主に前記伝送路の外周に設けられたスリットを介して電波の送受信が行なわれる漏洩伝送路が複数結束される結束漏洩伝送路であって、前記漏洩伝送路は、各漏洩伝送路に設けられた、前記漏洩伝送路に電波指向性を付与する前記スリットが互いに異なる方向に向くように互いに結束される結束漏洩伝送路である。
【0017】
前記漏洩伝送路は、送受信される電波の波長の2分の1以上の距離が保たれるように、所定の支持材を介して互いに結束されるようにすることができる。
【0018】
各漏洩伝送路のスリットは、偏波面の向きが互いに異なる電波を送受信するように、互いに異なる角度で設けられているようにすることができる。
【0019】
前記漏洩伝送路は、前記伝送路として中心導体を有し、さらに、前記中心導体の周囲に絶縁体を介して形成され、前記スリットを備える外部導体を有する漏洩同軸ケーブルであるようにすることができる。
【0020】
前記漏洩伝送路は、前記伝送路として、前記スリットが設けられた、中空構造の管状導体を有する漏洩導波管であるようにすることができる。
【0021】
各漏洩伝送路が互いに異なる信号を同時に送受信するMIMO(Multiple Input Multiple Output)用アンテナとして機能するようにすることができる。
【0022】
本発明の他の側面は、内部で信号を伝送する伝送路を有し、主に前記伝送路の外周に設けられたスリットを介して電波の送受信が行なわれる漏洩伝送路が複数結束される結束漏洩伝送路であって、前記漏洩伝送路が、各漏洩伝送路に設けられた、前記漏洩伝送路に電波指向性を付与する前記スリットが互いに異なる方向に向くように互いに結束され、MIMO(Multiple Input Multiple Output)用アンテナとして機能する結束漏洩伝送路と、前記結束漏洩伝送路を介して信号を送受信し、他の装置とMIMO通信を行う通信手段とを備える通信装置である。
【0023】
本発明のさらに他の側面は、第1の通信装置と第2の通信装置とが互いに通信を行う通信システムであって、前記第1の通信装置は、内部で信号を伝送する伝送路を有し、主に前記伝送路の外周に設けられたスリットを介して電波の送受信が行なわれる漏洩伝送路が複数結束される結束漏洩伝送路であって、前記漏洩伝送路が、各漏洩伝送路に設けられた、前記漏洩伝送路に電波指向性を付与する前記スリットが互いに異なる方向に向くように互いに結束される、MIMO(Multiple Input Multiple Output)用アンテナとして機能する結束漏洩伝送路と、前記結束漏洩伝送路を介して信号を送受信し、前記第2の通信装置とMIMO通信を行う第1の通信手段とを備え、前記第2の通信装置は、前記第1の通信装置と前記MIMO通信を行う第2の通信手段を備える通信システムである。
【0024】
本発明の一側面においては、内部で信号を伝送する伝送路が備えられ、主に前記伝送路の外周に設けられたスリットを介して電波の送受信が行なわれる漏洩伝送路が複数結束され、その漏洩伝送路が、各漏洩伝送路に設けられた、漏洩伝送路に電波指向性を付与する前記スリットが互いに異なる方向に向くように互いに結束される。
【0025】
本発明の他の側面においては、内部で信号を伝送する伝送路を有し、主に伝送路の外周に設けられたスリットを介して電波の送受信が行なわれる漏洩伝送路が複数結束される結束漏洩伝送路であって、漏洩伝送路が、各漏洩伝送路に設けられた、漏洩伝送路に電波指向性を付与するスリットが互いに異なる方向に向くように互いに結束され、MIMO(Multiple Input Multiple Output)用アンテナとして機能する結束漏洩伝送路と、結束漏洩伝送路を介して信号を送受信し、他の装置とMIMO通信を行う通信手段とが備えられる。
【0026】
本発明のさらに他の側面においては、第1の通信装置と第2の通信装置とが互いに通信を行う通信システムの第1の通信装置では、内部で信号を伝送する伝送路を有し、主に伝送路の外周に設けられたスリットを介して電波の送受信が行なわれる漏洩伝送路が複数結束される結束漏洩伝送路であって、漏洩伝送路が、各漏洩伝送路に設けられた、漏洩伝送路に電波指向性を付与するスリットが互いに異なる方向に向くように互いに結束される、MIMO(Multiple Input Multiple Output)用アンテナとして機能する結束漏洩伝送路と、結束漏洩伝送路を介して信号を送受信し、第2の通信装置とMIMO通信を行う第1の通信手段とが備えられ、第2の通信装置では、第1の通信装置とMIMO通信を行う第2の通信手段が備えられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、通信を行うことができる。特に、MIMO用アンテナとして用いられる複数の漏洩伝送路の適切な敷設をより容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来の漏洩同軸ケーブルの敷設の様子の例を示す図である。
【図2】従来の漏洩同軸ケーブルの敷設の様子の他の例を示す図である。
【図3】本発明を適用した結束漏洩同軸ケーブルの主な構成例を示す図である。
【図4】図3の結束漏洩同軸ケーブルの指向性について説明する図である。
【図5】支配的な電波経路の例を説明する図である。
【図6】本発明を適用した結束漏洩同軸ケーブルの他の構成例を示す図である。
【図7】本発明を適用した結束漏洩同軸ケーブルの、さらに他の構成例を示す図である。
【図8】本発明を適用した結束漏洩同軸ケーブルの、さらに他の構成例を示す図である。
【図9】本発明を適用した結束漏洩導波管の構成例を示す図である。
【図10】本発明を適用した通信システムの構成例を示す図である。
【図11】基地局内部の構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(結束漏洩同軸ケーブル)
2.第2の実施の形態(漏洩導波管)
3.第3の実施の形態(通信システム)
【0030】
<1.第1の実施の形態>
[結束漏洩同軸ケーブルの構成]
図3は、本発明を適用した結束漏洩同軸ケーブルの主な構成例を示す図である。
【0031】
図3に示される結束漏洩同軸ケーブル100は、必要本数分の漏洩同軸ケーブルが束ねた状態で固着(結束)されたものであり、MIMO(Multiple Input Multiple Output)用のアンテナとして利用される。
【0032】
MIMOとは、複数のアンテナを組み合わせてデータ送受信の帯域を広げる無線通信技術のことである。例えば、無線LAN(Local Area Network)の高速化などに応用されている。
【0033】
通常の無線LAN通信では、例えば54Mbps等といった帯域幅の限界があったが、MIMOでは複数のアンテナで同時に異なるデータを送信し、受信時に合成することで擬似的に広帯域を実現し、通信の高速化を図ることができる。理論上では、この擬似的な帯域幅は、使用するアンテナの本数に比例して広くなる。
【0034】
また、MIMOの場合、複数のアンテナから複数の経路を通って電波が届くことで、障害物が多く存在する環境での送受信が安定し、通信状況を大幅に改善する効果も得られる。
【0035】
なお、結束される漏洩同軸ケーブルの本数は任意である。以下においては、3本を例として説明する。
【0036】
結束漏洩同軸ケーブル100は、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cがケーブル長手方向に沿って互いに結束されたものである。なお、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cの太さは任意である。
【0037】
漏洩同軸ケーブルとは、所定間隔で開けられたスリットを介して、内部の伝送路を伝送される信号を意図的に電波として外部に輻射させたり、外部の電波を受信し、受信信号として内部の伝送路を伝送させたりする同軸ケーブルである。
【0038】
図3にその断面が示されている。例えば、漏洩同軸ケーブル100Aには、その中心から外側に向かって、中心導体101A、絶縁体102A、外部導体103A、および外部皮膜104Aが形成される。
【0039】
中心導体101Aは、例えば銅、銀、金、アルミニウム等の導体からなる線である。その中心導体101Aの全長に絶縁体102Aが被覆して形成されている。絶縁体102Aは、例えばポリエチレンやフッ素樹脂等の、安定した絶縁性と成形性とを有する絶縁素材により構成される。
【0040】
その絶縁体102Aの全長には、外部導体103Aが被覆して形成されている。その外部導体103Aの全長には、外部皮膜104Aが被覆して形成されている。
【0041】
なお、外部導体103Aには、所定の間隔で所定の大きさのスリット105A(小穴)が複数設けられている。図3においては、スリット105Aを外部皮膜104A上に示しているが、実際には、外部導体103Aに設けられる。ただし、このスリット105Aは、外部皮膜104Aまで貫通するようにしてもよい。中心導体101A、絶縁体102A、外部導体103A、外部皮膜104A、およびスリット105Aの厚さ、太さ、若しくは大きさは任意である。
【0042】
また、図3においては、漏洩同軸ケーブル100Aに設けられた複数のスリットの内の1つをスリット105Aとして示しているが、以下の説明においては、基本的に、スリット105Aは、漏洩同軸ケーブル100Aに設けられた複数のスリット全てを示す。ただし、漏洩同軸ケーブル100Aに設けられた複数のスリットの内の、任意の一部のスリット(1つ若しくは複数のスリット)をスリット105Aと称する場合もある。
【0043】
漏洩同軸ケーブル100Bおよび漏洩同軸ケーブル100Cも漏洩同軸ケーブル100Aと同様の構成を有する。つまり、漏洩同軸ケーブル100Bは、中心導体101B、絶縁体102B、外部導体103B、および外部皮膜104Bを有する。また、漏洩同軸ケーブル100Cは、中心導体101C、絶縁体102C、外部導体103C、および外部皮膜104Cを有する。
【0044】
結束漏洩同軸ケーブル100においては、外部皮膜104A、外部皮膜104B、外部皮膜104Cが、それらの長手方向に沿って互いに固着される(一体的に形成される)ことにより、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cが互いに結束されている。
【0045】
外部導体103Bおよび外部導体103Cにも、外部導体103Aの場合と同様に、外周の所定の方向に、所定の大きさのスリットが所定の間隔で形成される(スリット105Bおよびスリット105C)。
【0046】
漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cのそれぞれがアンテナとして機能し、電波の送受信を行うことにより、結束漏洩同軸ケーブル100は、MIMO用のアンテナとして機能する。つまり、結束漏洩同軸ケーブル100は、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cのそれぞれが、同時に互いに異なるデータを送受信することにより、擬似的な広帯域通信を実現する。
【0047】
漏洩同軸ケーブル100Aは、中心導体101Aを伝送される信号が電波として外部に輻射される(漏洩する)が、その信号の多くは、このスリット105Aから漏洩する。また、漏洩同軸ケーブル100Aは、ケーブル外部の電波を受信し、その受信信号を電気信号として中心導体101Aを伝送させるが、その電波の多くは、このスリット105Aを介して受信される。
【0048】
そして、図3に示されるように、スリット105Aは、外部導体103Aの外周に対して、その一部に形成される。つまり、各スリット105Aは、漏洩同軸ケーブル100Aの外周の所定の方向に形成される。このスリット105Aにより、漏洩同軸ケーブル100Aには、その所定の方向(スリット105Aの方向)に電波指向性が付与される。
【0049】
漏洩同軸ケーブル100Bおよび漏洩同軸ケーブル100Cにおいても同様である。スリット105Bは、漏洩同軸ケーブル100Bの外周の所定の方向に形成される。スリット105Cは、漏洩同軸ケーブル100Cの外周の所定の方向に形成される。つまり、漏洩同軸ケーブル100Bおよび漏洩同軸ケーブル100Cにも、それぞれ、所定の方向に電波指向性が付与される。
【0050】
結束漏洩同軸ケーブル100においては、スリット105A、スリット105B、およびスリット105Cのそれぞれが互いに異なる方向を向くように形成される。つまり、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cには、互いに異なる方向に電波指向性が付与される。
【0051】
[指向性]
図4は、図3の結束漏洩同軸ケーブル100の指向性について説明する図である。
【0052】
図4に示される放射パターン121Aは、漏洩同軸ケーブル100Aから漏洩する電波の放射パターンの例を示す。図4に示される放射パターン121Bは、漏洩同軸ケーブル100Bから漏洩する電波の放射パターンの例を示す。図4に示される放射パターン121Cは、漏洩同軸ケーブル100Cから漏洩する電波の放射パターンの例を示す。
【0053】
図4の例では、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cは、天井近傍に、それぞれが天井に対して略平行に並べられて設置されている。
【0054】
漏洩同軸ケーブル100Aには、天井に対して略平行に、漏洩同軸ケーブル100Bや漏洩同軸ケーブル100Cが有る方とは逆向き(図中左向き)にスリット105Aが形成されている。漏洩同軸ケーブル100Bには、天井に対して略垂直(図中下向き)にスリット105Bが形成されている。漏洩同軸ケーブル100Cには、天井に対して略平行に、漏洩同軸ケーブル100Aや漏洩同軸ケーブル100Bが有る方とは逆向き(図中右向き)にスリット105Cが形成されている。
【0055】
したがって、放射パターン121Aは、天井に対して略平行に広がり、放射パターン121Bは、天井に対して略垂直に広がり、放射パターン121Cは、天井に対して略平行に、放射パターン121Aとは逆向きに広がっている。
【0056】
各放射パターンは、その漏洩同軸ケーブルの電波指向性を示す。つまり、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cには、それぞれ、互いに異なる方向に電波指向性が付与されている。
【0057】
このように、結束漏洩同軸ケーブル100は、複数の漏洩同軸ケーブルを結束し、各漏洩同軸ケーブルに所定の大きさのスリットを、所定の間隔で、各漏洩同軸ケーブル間で互いに異なる向きとなるように設けるので、各漏洩同軸ケーブル間の相関を少なくすることできる。つまり、結束漏洩同軸ケーブル100は、擬似的な広帯域通信を実現し、高速で安定した通信を行うことができるといった、MIMO用アンテナとしての特性を十分に確保することができる。
【0058】
例えば、図5に示されるように、端末装置151と結束漏洩同軸ケーブル100との間で電波の授受(無線通信)が行われる場合、端末装置151と結束漏洩同軸ケーブル100との間の支配的な伝搬パス(電波経路)は、漏洩同軸ケーブル毎にそれぞれ大きく異なることになる。
【0059】
例えば、漏洩同軸ケーブル100Aから端末装置151に向かう電波は、矢印161Aおよび矢印162Aのような、壁で反射する伝搬パスが支配的となる。これに対して、漏洩同軸ケーブル100Bから端末装置151に向かう電波は、矢印161Bおよび矢印162Bのような、床で反射する伝搬パスが支配的となる。これらに対して、漏洩同軸ケーブル100Cから端末装置151に向かう電波は、矢印161Cおよび矢印162Cのような、天井で反射する伝搬パスが支配的となる。
【0060】
つまり、伝搬パス毎の相関が低減するので、結束漏洩同軸ケーブル100の、MIMO用アンテナとしての特性(通信の高速性および安定性)の向上を期待することができる。
【0061】
結束漏洩同軸ケーブル100は、上述したような状態で各漏洩同軸ケーブルが結束されているので、誰がこの結束漏洩同軸ケーブル100を敷設しても、この漏洩同軸ケーブル同士の関係は維持される。したがって、結束漏洩同軸ケーブル100は、漏洩同軸ケーブルを1本ずつ離して敷設する場合と比較して、より容易に敷設することができる。換言すれば、この結束漏洩同軸ケーブル100を用いることにより、敷設作業者は、アンテナの専門知識を必要とせずに、容易に、MIMO用アンテナとしての特性が十分に得られるように漏洩同軸ケーブルを敷設することができる。
【0062】
また、結束漏洩同軸ケーブル100は、複数の漏洩同軸ケーブルが結束されているので、限られた設置スペースに敷設することができる。つまり、例えば、図2の例のように、広範囲に広げて漏洩同軸ケーブルを敷設する必要がない。したがって、結束漏洩同軸ケーブル100をMIMO用のアンテナとして適用することにより、設置コストを低減させることができるだけでなく、アンテナの敷設により空間の美観が損なわれることを抑制することができる。
【0063】
[結束漏洩同軸ケーブルの構成]
なお、漏洩同軸ケーブルの結束方法は任意である。図3においては、漏洩同軸ケーブルの長手方向に対する垂直面において、各漏洩同軸ケーブルを直線状に並べて結束する場合について説明したが、これに限らず、例えば、漏洩同軸ケーブルの長手方向に対する垂直面において、各漏洩同軸ケーブルを平面状に並べて結束するようにしてもよい。
【0064】
図6は、本発明を適用した結束漏洩同軸ケーブルの他の構成例を示す図である。
【0065】
図6に示される結束漏洩同軸ケーブル200は、漏洩同軸ケーブルの長手方向に対する垂直面において、各漏洩同軸ケーブルが三角形に並べられて結束されている。また、各漏洩同軸ケーブルにおいて、スリットがその三角形の、自分自身が最も近い頂点に向かう方向に設けられている。したがって、各漏洩同軸ケーブルからの電波放射方向は、互いに120度ずつ異なる方向に向けられている。
【0066】
この場合も、各漏洩同軸ケーブルの電波指向性の向きが互いに異なるので、伝搬パス毎の相関が低減し、結束漏洩同軸ケーブル200の、MIMO用アンテナとしての特性の向上を期待することができる。
【0067】
また、結束漏洩同軸ケーブル200の、敷設の容易さと敷設に必要な場所の広さは、結束漏洩同軸ケーブル100と略同様である。ただし、各漏洩同軸ケーブルの並び方が異なるので、電波指向性の向きの組み合わせは、結束漏洩同軸ケーブル100の場合と異なる。したがって、敷設に最適な場所は結束漏洩同軸ケーブル100の場合と異なる可能性がある。
【0068】
例えば、結束漏洩同軸ケーブル100の場合、図4中上方向には、電波指向性が向けられていないので、仮に天井や壁面等に密着するように敷設したとしてもMIMO用アンテナとしての十分な特性を得やすいが、結束漏洩同軸ケーブル200の場合、電波指向性が結束漏洩同軸ケーブル200の周囲全体に広がっているので、天井や壁面等からある程度距離を設けて敷設するようにするのが望ましい。
【0069】
[結束漏洩同軸ケーブルの構成]
また、漏洩同軸ケーブル間の相関を低減させるために、各漏洩同軸ケーブルが、所定の支持材を用いて波長λの2分の1(λ/2)以上ずつ離された状態で結束されるようにしてもよい。
【0070】
図7は、本発明を適用した結束漏洩同軸ケーブルの、さらに他の構成例を示す図である。
【0071】
図7に示されるように、結束漏洩同軸ケーブル300の場合、漏洩同軸ケーブル100Aと漏洩同軸ケーブル100Bは、支持材301Aを介して結束されている。同様に、漏洩同軸ケーブル100Bと漏洩同軸ケーブル100Cは、支持材301Bを介して結束されている。
【0072】
支持材301Aおよび支持材301Bは、所定の距離を保つように複数の漏洩同軸ケーブルを結束するための部材である。支持材301Aにより、漏洩同軸ケーブル100Aと漏洩同軸ケーブル100Bは、距離λ/2離されて結束されている。支持材301Bにより、漏洩同軸ケーブル100Bと漏洩同軸ケーブル100Cは、距離λ/2離されて結束されている。
【0073】
このように、各漏洩同軸ケーブルをλ/2以上の間隔を確保しながら結束させることにより、漏洩同軸ケーブル間の相関を低減させることができる。つまり、結束漏洩同軸ケーブル300の、MIMO用アンテナとしての特性の向上を期待することができる。
【0074】
この結束漏洩同軸ケーブル300の場合、各漏洩同軸ケーブルの電波指向性が不要である。つまり、結束漏洩同軸ケーブル300は、各漏洩同軸ケーブルのスリットの向きに依らず、MIMO用アンテナとしての十分な特性を確保することができる。
【0075】
換言すれば、各漏洩同軸ケーブルの電波指向性の自由度が向上する。例えば各漏洩同軸ケーブルにおいてスリットを任意の方向に設けることができる。また、例えば、各漏洩同軸ケーブルの電波指向性を強めたり弱めたりすることができる。
【0076】
ただし、結束漏洩同軸ケーブル100や結束漏洩同軸ケーブル200の場合と同様に、スリットの向きによって、各漏洩同軸ケーブルの電波指向性を互いに異なる向きとすることにより、漏洩同軸ケーブル間の相関をさらに低減させることができる。
【0077】
なお、このような支持材を介した漏洩同軸ケーブル同士の結束パターンは任意であり、各漏洩同軸ケーブルが距離λ/2以上離されて結束されればよい。例えば、3本の漏洩同軸ケーブルが支持材によって距離λ/2以上ずつ離されて、三角形に結束されるようにしてもよいし、4本の漏洩同軸ケーブルが支持材によって距離λ/2以上ずつ離されて、四角形に結束されるようにしてもよい。
【0078】
[結束漏洩同軸ケーブルの構成]
また、指向特性と共に、偏波面を漏洩同軸ケーブル間で異なるように構成することもできる。例えば、各漏洩同軸ケーブルが送受信する電波を、垂直偏波、円偏波、および水平偏波のうち、互いに異なる偏波としてもよい。つまり、スリットの角度を変えることにより、漏洩同軸ケーブルが送受信可能な偏波面が変化する。このように偏波面を漏洩同軸ケーブル毎に変えることにより、漏洩同軸ケーブル間の相関をさらに低減させることができる。
【0079】
図8は、本発明を適用した結束漏洩同軸ケーブルの、さらに他の構成例を示す図である。図8に示されるように、結束漏洩同軸ケーブル400の場合、漏洩同軸ケーブル100Aのスリット105A、漏洩同軸ケーブル100Bのスリット105B、および、漏洩同軸ケーブル100Cのスリット105Cは、その角度が互いに異なる。つまり、結束漏洩同軸ケーブル400は、スリットの角度が漏洩同軸ケーブル毎に異なる。
【0080】
<2.第2の実施の形態>
[結束漏洩導波管の構成]
以上においては、MIMO用アンテナとして漏洩同軸ケーブルが用いられる場合について説明したが、漏洩同軸ケーブルの代わりに漏洩導波管が用いられるようにしてもよい。
【0081】
図9は、本発明を適用した漏洩導波管の構成例を示す図である。図9Aは、漏洩導波管500の、長手方向に垂直な断面の様子を示している。図9Aに示されるように、漏洩導波管500は、管状導体501を被覆材502で覆ったものである。
【0082】
導波管は、主にミリ波やマイクロ波等の伝送に用いられる。管状導体501は、中空構造となっており、円形または方形の断面を持つ金属製の管である。電磁波は、その管の中に、その形状や寸法、波長(周波数)に応じた電磁界を形成(この態様を伝播モードという)しながら管の中を伝播する。導波管においては、誘電体が空気となるので、誘電体損が少なく、大電力の伝送が可能である。なお、管状導体501の内部に誘電体を充てんさせることもできる。
【0083】
図9Bは、被覆材502を剥き取り、管状導体501を露出させたときの、漏洩導波管500の、長手方向を図中左右方向とする方向から見た外観を示している。図9Bに示されるように、管状導体501には、所定の大きさのスリット503(小穴)が、所定の間隔で所定の向きに設けられている。
【0084】
漏洩導波管500は、管状導体501内と外部空間との間でスリット503を介して、漏洩同軸ケーブルの場合と同様に電波の送受信を行うことができる。つまり、漏洩導波管500は、スリットが設けられた漏洩同軸ケーブルの場合と同様に電波指向性を有する。
【0085】
したがって、このような漏洩導波管500を、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cの代わりに用い、上述した第1の実施の形態のように、複数の漏洩導波管500を、各電波指向性の向きが異なるように結束することにより、より容易に、MIMO用アンテナとしての十分な特性を確保するように適切な敷設を行うことができるMIMO用アンテナを実現することができる。
【0086】
<3.第3の実施の形態>
[通信システムの構成]
次に、以上に説明したような結束漏洩伝送路(結束漏洩同軸ケーブルや結束漏洩導波管)を用いたMIMO通信を行う通信システムについて説明する。
【0087】
図10は、本発明を適用した通信システムの構成例を示す図である。図10に示されるように、本発明の実施形態による通信システム600は、基地局601と、無線通信装置621が無線通信(MIMO通信)を行うシステムである。
【0088】
基地局601には、MIMO用アンテナとして、終端器602Aにより終端される漏洩同軸ケーブル100A、終端器602Bにより終端される漏洩同軸ケーブル100B、および、終端器602Cにより終端される漏洩同軸ケーブル100Cからなる結束漏洩同軸ケーブル(結束漏洩同軸ケーブル100、結束漏洩同軸ケーブル200、結束漏洩同軸ケーブル300、若しくは、結束漏洩同軸ケーブル400)が接続される。
【0089】
漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cは、第1の実施の形態において説明したように、MIMO用アンテナとしての特性が十分に得られるように結束されている。
【0090】
第1の実施の形態において説明したように、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cには、それぞれ、複数のスリット(小穴)が設けられており、このスリットから電気信号の一部が無線信号として放射される。また、無線通信装置621から送信された無線信号がこのスリットにおいて受信され、電気信号に変換され、漏洩同軸ケーブル内を伝送され、受信信号として基地局601へ供給される。
【0091】
このように、基地局601は、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cを利用して通信を行う。したがって、基地局601は、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cに沿った範囲内に存在する無線通信装置621と通信することができる。
【0092】
また、結束漏洩同軸ケーブルを利用することにより、基地局601の通信可能な空間的範囲を制限することができる。したがって、通信システム600は、通常の無線通信システムだけでなく、例えば、放送局のスタジオ等のような、無線信号が外部へ漏洩することが好ましくない通信システムにも適用することができる。
【0093】
また、無線通信装置621は、複数のアンテナを備える。このため、基地局601と無線通信装置621は、MIMO通信を行うことができる。このとき、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cは、電波指向性の向きが互いに異なるように結束されているので、無線通信装置621は、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cのそれぞれと、互いに異なる伝送経路で無線信号の送受信を行うことができる。
【0094】
例えば、漏洩同軸ケーブル100Aから送信される無線信号は、矢印611Aおよび矢印612Aに示されるような経路で無線通信装置621に伝送される。また、例えば、漏洩同軸ケーブル100Bから送信される無線信号は、矢印611Bおよび矢印612Bに示されるような経路で無線通信装置621に伝送される。さらに、例えば、漏洩同軸ケーブル100Cから送信される無線信号は、矢印611Cおよび矢印612Cに示されるような経路で無線通信装置621に伝送される。
【0095】
つまり、漏洩同軸ケーブル同士の相関が抑制される。したがって、基地局601と無線通信装置621は、MIMO通信により、高速で安定的な無線通信を行うことができる。
【0096】
なお、無線通信装置621が備える複数のアンテナ間の距離は、基地局601が備える漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cの間の距離より十分に小さくてもよい。
【0097】
無線通信装置621は、例えば、PC(Personal Computer)、家庭用映像処理装置(表示装置、DVD(Digital Versatile Disc)レコーダ、ビデオデッキなど)、PDA(Personal Digital Assistants)、家庭用ゲーム機器、撮像装置、家電機器などの情報処理装置であってもよい。また、無線通信装置621は、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、携帯用ゲーム機器などの情報処理装置であってもよい。
【0098】
また、基地局601および無線通信装置621は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11nに準拠してもよい。
【0099】
[基地局の構成]
図11は、基地局601の内部の構成例を説明する図である。
【0100】
図11に示されるように、基地局601は、送信のための構成として、上位レイヤ630、符号化部641、送信用ベクトル乗算部642、1次変調部643、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調部644、ガードインターバル付加部645、プリアンブル付加部646と、DAC(Digital Analog Converter)647、送信アナログ処理部648、および送受信アンテナ切替え部650、並びに、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cを有する。
【0101】
符号化部641は、上位レイヤ630から供給される送信データを符号化する。送信用ベクトル乗算部642は、MIMO送信のために、符号化された送信データのブランチへの振り分け、および送信用ベクトルの乗算を行う。
【0102】
1次変調部643は、各ブランチの送信データを分割して各サブキャリアに割り当て、各サブキャリアに割り当てた送信データをコンスタレーションに従って変調する。変調方式としては、例えば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16-QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、および64-QAMなどがあげられる。
【0103】
OFDM変調部644は、各サブキャリアの変調信号を逆フーリエ変換することにより時間領域のOFDM信号をブランチごとに生成する。そして、ガードインターバル付加部645は、各ブランチのOFDM信号を構成する各OFDMシンボルにガードインターバル(例えば、400ns、800ns)を付加する。さらに、プリアンブル付加部646が、各ブランチのOFDM信号の先頭に同期用のプリアンブルを付加してベースバンドの送信信号を生成する。
【0104】
DAC647は、プリアンブル付加部646から供給されるベースバンドの送信信号を、ブランチごとにデジタル形式からアナログ形式に変換する。そして、送信アナログ処理部648は、アナログ形式に変換されたベースバンドの送信信号をブランチごとに高周波の送信信号に変換する。
【0105】
送受信アンテナ切替え部650は、送信時、送信アナログ処理部648と漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cとを接続する。その結果、送信アナログ処理部648により得られた各ブランチの高周波の送信信号が漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cから無線信号として送信される。
【0106】
また、本実施形態に関連する基地局601は、受信のための構成として、上位レイヤ630、送受信アンテナ切替え部650、復号部668、受信用ベクトル乗算部667、1次復調部666、OFDM復調部665、ガードインターバル除去部664、同期部663、ADC(Analog Digital Converter)662、および受信アナログ処理部661、並びに、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cを有する。
【0107】
送受信アンテナ切替え部650は、受信時、受信アナログ処理部661と、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cとを接続する。その結果、漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cにより受信された高周波の受信信号が受信アナログ処理部661に供給される。
【0108】
受信アナログ処理部661は、供給される各ブランチの高周波の受信信号に、増幅、フィルタリング、およびダウンコンバージョンなどのアナログ処理を施すことにより、高周波の受信信号をベースバンドの受信信号に変換する。
【0109】
ADC662は、受信アナログ処理部661から供給されるベースバンドの受信信号を、ブランチごとにアナログ形式からデジタル形式に変換する。
【0110】
同期部663は、受信信号の先頭に付加されている同期用のプリアンブルに基づき、プリアンブルに続くパケットフレーム(OFDMシンボル)の切り出しのための同期タイミングをブランチごとに検出する。
【0111】
そして、ガードインターバル除去部664が、同期部663により検出された同期タイミングに従って各ブランチの受信信号からガードインターバルを除去してOFDMシンボルを切り出す。
【0112】
OFDM復調部665は、ガードインターバル除去部664により切り出されたOFDMシンボル単位で時間領域受信信号をフーリエ変換することにより、各サブキャリアの変調信号が得られる。
【0113】
1次復調部666は、各サブキャリアの変調信号を復調してビット列を得る。そして、受信用ベクトル乗算部667は、MIMO受信のために、各ブランチの復調信号に受信用ベクトルを乗算し、符号化されている受信データを得る。復号部668が、この符号化されている受信データを復号し、上位レイヤ630に供給する。
【0114】
上述したように、基地局601が、結束漏洩同軸ケーブルを介して無線通信装置621とMIMO通信を行う場合、無線通信装置621と各漏洩同軸ケーブルとの間の支配的な伝搬パス(電波経路)は、漏洩同軸ケーブル毎にそれぞれ大きく異なる。
【0115】
つまり、伝搬パス毎の相関が低減するので、基地局601に設けられた結束漏洩同軸ケーブル(結束された漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100C)の、MIMO用アンテナとしての特性(通信の高速性および安定性)の向上を期待することができる。
【0116】
漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cは互いに結束されているので、敷設作業者は、この漏洩同軸ケーブル100A、漏洩同軸ケーブル100B、および漏洩同軸ケーブル100Cを、専門の知識を必要とせずに、容易かつ適切に敷設することができる。
【0117】
また、設置コストを低減させることができるだけでなく、アンテナの敷設により空間の美観が損なわれることを抑制することができる。
【0118】
なお、漏洩同軸ケーブルの代わりに第2の実施の形態を用いて説明した漏洩導波管を適用するようにしてもよい。
【0119】
また、本明細書において、システムとは、複数のデバイス(装置)により構成される装置全体を表すものである。
【0120】
また、以上において、1つの装置(または処理部)として説明した構成が、複数の装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置(または処理部)として説明した構成が、まとめて1つの装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。また、各装置(または各処理部)の構成に上述した以外の構成が付加されるようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置(または処理部)の構成の一部が他の装置(または他の処理部)の構成に含まれるようにしてもよい。つまり、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0121】
100 結束漏洩同軸ケーブル, 101A、101B、および101C 中心導体, 102A、102B、および102C 絶縁体, 103A、103B、および103C 外部導体, 104A、104B、および104C 外部皮膜, 105A、105B、および105C スリット, 200および300 結束漏洩同軸ケーブル, 301Aおよび301B 支持材, 400 結束漏洩同軸ケーブル, 500 漏洩導波管, 501 管状導体, 502 被覆材, 503 スリット, 600 通信システム, 601 基地局, 621 無線通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で信号を伝送する伝送路を有し、主に前記伝送路の外周に設けられたスリットを介して電波の送受信が行なわれる漏洩伝送路が複数結束される結束漏洩伝送路であって、
前記漏洩伝送路は、各漏洩伝送路に設けられた、前記漏洩伝送路に電波指向性を付与する前記スリットが互いに異なる方向に向くように互いに結束される
結束漏洩伝送路。
【請求項2】
前記漏洩伝送路は、送受信される電波の波長の2分の1以上の距離が保たれるように、所定の支持材を介して互いに結束される
請求項1に記載の結束漏洩伝送路。
【請求項3】
各漏洩伝送路のスリットは、偏波面の向きが互いに異なる電波を送受信するように、互いに異なる角度で設けられている
請求項1に記載の結束漏洩伝送路。
【請求項4】
前記漏洩伝送路は、前記伝送路として中心導体を有し、さらに、前記中心導体の周囲に絶縁体を介して形成され、前記スリットを備える外部導体を有する漏洩同軸ケーブルである
請求項1に記載の結束漏洩伝送路。
【請求項5】
前記漏洩伝送路は、前記伝送路として、前記スリットが設けられた、中空構造の管状導体を有する漏洩導波管である
請求項1に記載の結束漏洩伝送路。
【請求項6】
各漏洩伝送路が互いに異なる信号を同時に送受信するMIMO(Multiple Input Multiple Output)用アンテナとして機能する
請求項1に記載の結束漏洩伝送路。
【請求項7】
内部で信号を伝送する伝送路を有し、主に前記伝送路の外周に設けられたスリットを介して電波の送受信が行なわれる漏洩伝送路が複数結束される結束漏洩伝送路であって、前記漏洩伝送路が、各漏洩伝送路に設けられた、前記漏洩伝送路に電波指向性を付与する前記スリットが互いに異なる方向に向くように互いに結束され、MIMO(Multiple Input Multiple Output)用アンテナとして機能する結束漏洩伝送路と、
前記結束漏洩伝送路を介して信号を送受信し、他の装置とMIMO通信を行う通信手段と
を備える通信装置。
【請求項8】
第1の通信装置と第2の通信装置とが互いに通信を行う通信システムであって、
前記第1の通信装置は、
内部で信号を伝送する伝送路を有し、主に前記伝送路の外周に設けられたスリットを介して電波の送受信が行なわれる漏洩伝送路が複数結束される結束漏洩伝送路であって、前記漏洩伝送路が、各漏洩伝送路に設けられた、前記漏洩伝送路に電波指向性を付与する前記スリットが互いに異なる方向に向くように互いに結束される、MIMO(Multiple Input Multiple Output)用アンテナとして機能する結束漏洩伝送路と、
前記結束漏洩伝送路を介して信号を送受信し、前記第2の通信装置とMIMO通信を行う第1の通信手段と
を備え、
前記第2の通信装置は、
前記第1の通信装置と前記MIMO通信を行う第2の通信手段
を備える通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−199760(P2011−199760A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66632(P2010−66632)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】