説明

給湯機

【課題】浴槽水の温度検出回数を削減しつつ、浴槽水の過度な温度低下を防止することのできる給湯機を提供することを目的とする。
【解決手段】浴槽1に接続された水循環路3を有し、当該水循環路3を用いて浴槽水を循環させる風呂保温浴槽循環回路Cを備える。浴槽水の温度が所定温度以下に低下した場合に、追い焚き加熱動作を用いて浴槽水の温度を上昇させる風呂保温動作を実行する。浴室利用者による入浴動作の有無を音で検知する音声検知部11を備える。入浴動作が行われていないと判定された場合に、風呂保温動作を停止し、また、入浴動作が行われていないと判定された場合であっても入浴時期の学習により予測される入浴時期の到来時には風呂保温動作を起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴槽水の温度を一定に保つ風呂保温機能を有する給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、浴槽水の温度を一定に保つ風呂保温機能を有する風呂加熱装置が開示されている。この従来の風呂加熱装置は、浴室に配設した焦電型赤外センサによって浴室における人体の有無の検知を行い、人体が検知されない場合には、風呂保温手段の動作する時間間隔を長くするか、もしくは風呂保温手段の動作を停止させるというものである。このような構成によれば、浴槽水の温度検出回数を削減し、水循環路内の低温水の流入による浴槽水の温度低下を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−109177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の風呂加熱装置において、浴室内に人体が検出されない場合に風呂保温手段の動作する時間間隔を長くするという手法では、長時間に渡って人体が検出されない場合であっても浴槽水の温度検出が行われることになる。このため、浴槽水の温度低下を低減するには限界があるといえる。また、上記従来の風呂加熱装置において、浴室内に人体が検出されない場合に風呂保温手段の動作を停止させるという手法が用いられている場合には、加熱手段(追い焚き動作)によって湯水の加熱が行われるのは必ず人体検知後である。このため、長時間に渡る浴槽水の温度低下により、入浴までの間に浴槽水を所望の浴槽温度に高める処理が間に合わず、快適性を損なう場合があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、浴槽水の温度検出回数を削減しつつ、浴槽水の過度な温度低下を防止することのできる給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る給湯機は、浴槽に接続された水循環路を有し、当該水循環路を用いて浴槽水を循環させる浴槽水循環手段と、水循環路内を流れる湯を加熱する加熱手段と、水循環路を循環する湯の温度を検知することで浴槽水の温度を取得する温度検知手段とを有し、浴槽水の温度が所定温度以下に低下した場合に、加熱手段を用いて浴槽水の温度を上昇させる風呂保温手段と、浴室利用者による入浴動作の有無を判定する入浴判定手段と、入浴判定手段による入浴の判定結果に基づいて、入浴時期を学習して予測する予測手段と、入浴判定手段によって入浴動作が行われていないと判定された場合に、風呂保温手段の動作を停止し、入浴判定手段によって入浴動作が行われていないと判定された場合であっても予測手段によって予測される入浴時期の到来時には風呂保温手段を起動する起動時期制御手段と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、浴槽水の温度検出回数を削減しつつ、浴槽水の過度な温度低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用する風呂保温機能を有する貯湯式給湯機であるヒートポンプ式の給湯機と浴室の構成図である。
【図2】風呂保温浴槽循環回路Cの詳細な構成を表した図である。
【図3】音声検知部の詳細な構成を表した図である。
【図4】本発明の実施の形態1における風呂保温動作の概要を表したタイムチャートである。
【図5】入浴に伴う音の有無の判定結果と、入浴時期(入浴時刻と入浴時間間隔)の学習により予測される次回の入浴時期とに基づいて、風呂保温動作の起動および停止を行う処理を示すフローチャートである。
【図6】湯張り完了後の入浴回数と各入浴における入浴時刻を記録する処理を示すフローチャートである。
【図7】保温動作時刻設定部が入浴時刻記録部から取得する湯張り完了時刻および入浴時刻に基づいて、風呂保温動作の起動時刻を設定する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明を適用する風呂保温機能を有する貯湯式給湯機であるヒートポンプ式の給湯機100と浴室の構成図である。図1に示すシステムは、浴槽1に供給される湯を貯える貯湯タンク101と、沸き上げ回路Aと、風呂保温熱源供給回路Bと、風呂保温浴槽循環回路Cとを備えている。
【0010】
より具体的には、沸き上げ回路Aは、冷媒として二酸化炭素を用いるヒートポンプユニット201を利用して貯湯タンク101内の水を沸き上げるための回路であり、ヒートポンプユニット201とヒートポンプ循環ポンプ202とが順次接続されている。風呂保温熱源供給回路Bは、浴槽1内の浴槽水を保温するための熱源となる貯湯タンク101内の高温水を循環させるための回路であり、貯湯タンク101と追い焚き用の熱交換器2と風呂保温熱源循環ポンプ102とが順次接続されている。
【0011】
風呂保温浴槽循環回路Cは、浴槽1と熱交換器2と循環ポンプ4と温度センサ5とが順次接続された水循環路3を有している。また、風呂保温浴槽循環回路Cは、浴槽水の温度を一定に保つための風呂保温動作を制御する制御装置6を有している。風呂保温動作は、浴槽水の温度が所定温度(図4を参照して後述する追焚起動浴槽温度T)以下に低下した場合に、循環ポンプ4と風呂保温熱源循環ポンプ102とを起動させて、風呂保温熱源供給回路Bを流れる高温水と水循環路3を流れる浴槽水とを熱交換器2を介して熱交換させる(追い焚き加熱動作を行う)ことにより、浴槽水の温度を上昇させる動作である。更に、風呂保温浴槽循環回路Cは、入浴動作の有無を判定するために、入浴に伴う音声の有無を検出する音声検知部11を有している。
【0012】
図2は、風呂保温浴槽循環回路Cの詳細な構成を表した図である。図2に示すように、制御装置6は、時間管理部7と、入浴時刻記録部8と、保温動作時刻設定部9と、自動保温起動停止決定部10とを有している。制御装置6は、温度センサ5で検知された湯の温度に基づいて循環ポンプ4の制御を行う。また、制御装置6には、音声検知部11が接続されている。
【0013】
より具体的には、時間管理部7は、時間管理を行う。入浴時刻記録部8は、音声検知部11から取得する浴室内の音声検知情報に基づいて、湯張り完了時刻と、浴室利用者による入浴動作の行われた回数と、入浴動作ごとの入浴時刻とを記録する。保温動作時刻設定部9は、入浴時刻記録部8から取得する湯張り完了時刻および入浴時刻に基づいて、風呂保温動作の起動時刻を設定する。自動保温起動停止決定部10は、音声検知部11から取得する音声検知情報と保温動作時刻設定部9にて設定された風呂保温動作の起動時刻情報とに基づいて、風呂保温動作の起動および停止を決定する。
【0014】
図3は、音声検知部11の詳細な構成を表した図である。図3に示すように、音声検知部11は、浴室内の音を集音するマイクロフォン1101と、マイクロフォンアンプ1102と、A/Dコンバータ(Analog to Digital Converter)1103と、計測処理回路1104とが順次接続された構成を有している。
【0015】
計測処理回路1104は、適応フィルタ1105と、加算器1106と、LMS(Least Mean Square)演算部1107と、判断部1108とから構成される。ここでは、時刻を離散値kで表し、適応フィルタ1105からの出力をy(k)、A/Dコンバータ1103からの出力信号をx(k)、加算器1106からの出力をe(k)というように、時刻の離散値kの関数で表す。
【0016】
マイクロフォン1101に入力された音声信号は、マイクロフォンアンプ1102で増幅されたうえで、A/Dコンバータ1103によってディジタル信号に変換される。このディジタル信号x(k)は、計測処理回路1104内の適応フィルタ1105へ順次入力されていく。適応フィルタ1105からの出力信号y(k)は、無音状態の参照信号としての0(入力なし)から減算される。
【0017】
計測処理回路1104では、常時、無音状態の参照信号(0)とマイクロフォン1101で集音される音声信号との間の音声差を関数として、適応フィルタ1105を用いた同定が行われる。上記同定を行うために、適応フィルタ1105では、加算器1106において無音入力信号と適応フィルタ1105の出力信号y(k)との誤差信号e(k)(e(k)=0−y(k))が0になるように、適応フィルタ1105の係数が更新される。
【0018】
本実施形態では、適応フィルタ1105の係数更新アルゴリズムとして、LMS演算部1107が使用されており、誤差信号e(k)が最小二乗法により最小となるように適応フィルタ1105の係数が更新される。適応フィルタ1105の係数を逐次更新するアルゴリズムは以下のように示される。
【0019】
適応フィルタ1105における適応ディジタルフィルタの係数ベクトルをW、適応フィルタ1105の入力信号ベクトルをX、係数更新ステップサイズパラメータ(スカラ)をμで表すと、次式を得ることができる。
W(k+1)=W(k)+2×μ×e(k)×X(k)
ここで、WおよびXは、下記のように長さnのベクトルである。
W(k)=[W1(k),W2(k),・・・・,Wn(k)]T
X(k)=[X1(k),X2(k),・・・・,Xn(k)]T
なお、Tは転置を表す。また、W(k)は音声の特徴関数となり、適応フィルタ1105への入力信号x(k)と出力信号y(k)との関係は、y(k)=W(k)T×X(k)となる。
【0020】
浴室内で入浴に伴う音が発生する場合、計測処理回路1104の特徴関数が刻々と変化するので、適応フィルタ1105の係数は逐次更新される。したがって、フィルタ係数の時間変化を観測し、時間変化の差分を計測することで、音声の有無の変動、つまり入浴に伴う音の有無を検出することができる。
【0021】
上記の例で、入浴に伴う音声の有無の検出に対して適応フィルタ1105およびLMSアルゴリズムを用いる利点は、マイクロフォン1101、マイクロフォンアンプ1102、A/Dコンバータ1103などでの定常的な音声特性やマイクロフォン1101で集音される浴室内の定常音などの入浴に関係のない音声信号が検出される場合でも、適応フィルタ1105の係数の収束によって無音状態と判定することができ、入浴に伴う音声の有無をより明確に判別できる効果があるためである。
【0022】
次に判断部1108では、LMS演算部1107で更新されるフィルタ係数を取得し、そのフィルタ係数の時間的な差分を常時監視する。フィルタ係数の差分の値があらかじめ設定した閾値を超えた場合は、入浴に伴う音声が発生したと判断するが、閾値を超えない場合は入浴に伴う音声は発生していないと判断する。
【0023】
より具体的には、ΔW(k)=W(k)−W(k−1)で表される係数ベクトルWの差分を考える。このΔW(k)は、時刻k−1から時刻kへのフィルタ係数の変化量を表す。そして、ベクトルΔW(k)の各成分の二乗和をD(k)とする。Δtを時刻k−1と時刻kまでの時間間隔とする。
【0024】
判断部1108は、LMS演算部1107で更新されるフィルタ係数に基づき、ΔtごとにD(k)を算出して監視を行う。そして、D(k)が閾値を超えた状態があらかじめ設定した一定時間(たとえば10秒間)継続した場合には、音声が発生したと判断し、閾値を超えない場合には、音声が発生していないと判断する。また、判断部1108は、音声の有無を判断した結果を音声検知部11の外部の装置(制御装置6)へ通報する。
【0025】
次に、上記のように構成されたヒートポンプ式の給湯機100における特徴的な風呂保温動作について説明する。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態1における風呂保温動作の概要を表したタイムチャートであり、浴室内の入浴時の音の検出状態と、浴槽水温度の変化と、風呂保温動作の起動および停止と、追い焚き加熱動作の起動および停止との関係を示す模式図である。
【0027】
本実施形態では、風呂保温動作の起動を伴う風呂湯張り動作が起動した後に、湯張りが完了した場合であっても、そのまま風呂保温動作の起動を維持しないようになっている。浴室の音が検出されない場合には入浴が行われていないため、湯水の温度が低下しても追焚き加熱動作を行う必要が無い。このため、このような場合には、風呂保温動作を停止することで、浴槽水の温度検知動作に伴って水循環路3などから低温水が浴槽1に流入することを防止することができる。
【0028】
制御装置6は、浴室利用者の入浴時期(より具体的には、入浴時刻および入浴時間間隔)を学習して予測する機能を有している。このような機能については、図6および7のフローチャートを参照して後述する。本実施形態では、湯張り完了後に浴室内で音を検知した場合、または、入浴時期の学習により予測される入浴時刻もしくは入浴時間間隔が経過した場合に、風呂保温動作が起動するようにしている。
【0029】
図4において、黒丸が付された時刻は、湯張り完了(または入浴終了)時刻を表している。図4に示す例は、湯張り完了後において、入浴時間間隔の学習値に基づく風呂保温動作の起動時刻(黒の三角印)、入浴時間の学習値に基づく風呂保温動作の起動時刻(白の三角印)、および浴室音声検知判定(黒の逆三角印)の順で、風呂保温動作の起動時期が到来するケースを示している。
【0030】
本実施形態では、図4に示すように、湯張り完了時刻の経過後に、浴室内で音が一定時間の間に検知されなかった場合(浴室音声未検出判定(白の逆三角印)がなされた場合)には、入浴が行われていないと判別され、風呂保温動作が停止される(保温動作起動停止フラグFLGがOFFとされる)ようになっている。この場合には、浴室内での音を検知するまで、または入浴時期の学習により予測される入浴時刻等が到来するまで、風呂保温手段は起動しない。その結果、浴槽水の温度検知が行われず、浴槽水の温度は、図4に示すように、当該温度検知の影響ではなく放熱の影響で低下している。
【0031】
図4に示す例では、その後、入浴時間間隔の学習値による入浴時間間隔の予測に基づく風呂保温動作の起動予定時刻(黒の三角印)が到来した時に、風呂保温動作が一時的に起動され、また、起動と同時に浴槽水の温度検知が実行される。この例では、当該起動予定時刻の到来時には、浴槽水温度が追焚起動浴槽温度Tにまで低下していないので、追い焚き加熱動作は実行されない。図4に示す例では、その後、入浴時間の学習値による入浴時間の予測に基づく風呂保温動作の起動予定時刻(白の三角印)が到来した時に、風呂保温動作が一時的に起動され、また、起動と同時に浴槽水の温度検知が実行される。この例では、当該起動予定時間の到来時には、浴槽水温度が追焚起動浴槽温度T以下にまで低下している。このため、浴槽水温度が追焚停止浴槽温度Tに到達するまで追い焚き加熱動作が実行される。
【0032】
更に、図4に示す例では、その後、浴室内の音が検知された際に風呂保温動作が起動されるとともに、浴槽水の温度検知が実行される。この場合には、図4に示すように、浴槽水温度が追焚起動浴槽温度Tにまで低下していないので、追い焚き加熱動作は実行されない。そして、その後、浴室内の音が継続的に検知されている場合には、風呂保温手段が継続して起動され、所定の時間間隔が経過した場合に浴槽水の温度検知が実行されるようになる。
【0033】
図5は、入浴に伴う音の有無の判定結果と、入浴時期(入浴時刻と入浴時間間隔)の学習により予測される次回の入浴時期とに基づいて、風呂保温動作の起動および停止を行う処理を示すフローチャートである。なお、音声検知部11による入浴の検知では、音声の有無を判定の条件に用いるため、音声が検知されないまま一定の時間が経過した場合に、入浴が終了したと判定するようにしている。ここでは、そのような一定の経過時間の一例として、不在判定時間を10分とした。
【0034】
S101では、保温動作起動停止フラグFLGがON状態(風呂保温動作が起動状態)に初期化されるとともに、音声検出時点からの経過時間であるTcntが0秒に初期化される。次いで、S102では、1秒毎に在・不在の状態検知(入浴に伴う音の検知)を行うために、1秒の待機時間が設けられる。
【0035】
次に、S103において上記経過時間Tcntが更新されたうえで、S104では、保温動作時刻設定部9から取得した時刻であってi番目入浴向け保温動作起動予定時刻となる時刻Ts(i)と現在時刻Trealとが等値であるか否かが比較される。この時刻Ts(i)は、後述する図7に示すフローチャートの処理により設定される値である。S104の判定が行われた結果、上記2つの時刻が等値である場合にはS107へ、異なる場合にはS105へ移行する。
【0036】
S105では、湯張りを含む前回入浴イベント時刻(湯張り完了時刻もしくは前回入浴時刻)Tprvと保温動作時刻設定部9から取得したi番目入浴向け入浴時間間隔ΔTs(i)を加算して得られる保温動作起動予定時刻が等値であるか否かが比較される。このi番目入浴向け入浴時間間隔ΔTs(i)も、後述する図7に示すフローチャートの処理により設定される値である。S105の判定が行われた結果、上記2つの時刻が等値である場合にはS107へ、異なる場合はS106へ移行する。
【0037】
S106では、マイクロフォン1101からの浴室の音声検出情報が取得されたか否かが判別される。その結果、音声が検出された場合には、S107にて経過時間Tcntが0にクリアされた後に、S108にて保温動作起動停止フラグFLGがOFFであるか否かが判別される。その結果、このフラグFLGがOFFである場合には、S109にて当該フラグFLGがONに設定される(風呂保温動作が起動状態とされる)。
【0038】
一方、S106において音声が検出されない場合には、S110にて経過時間Tcntと不在判定時間定数Tabs(例えば、10分)とが比較される。その結果、経過時間Tcntが不在判定時間定数Tabsを超えている場合には、浴室内に人が不在であると判断され、S111にて保温動作起動停止フラグFLGがOFFに設定される(風呂保温動作が停止状態とされる)。
【0039】
図6は、湯張り完了後の入浴回数と各入浴における入浴時刻を記録する処理を示すフローチャートである。ここでは、過去の湯張り動作毎の入浴を、1日1回湯張り動作があると想定して1週間分に渡って記録するために、湯張り毎(別)の入浴回数および入浴時刻を記録するデータ配列Tarray(d,i)を用いるようにしている。データ配列Tarray(d,i)におけるdは、過去の湯張り動作の順番を示す湯張り順序カウンタであり、前回の湯張りを0、過去7回前の湯張りを6として、7回分の湯張りを数えるものである。iは、湯張りごとの湯張りを含む入浴イベント回数カウンタであり、湯張りを0、最初の入浴を1としたうえで、それ以降の入浴回数を順番に入浴毎に数えるものである。
【0040】
図6において、S201では、湯張りごとの入浴イベントの回数を数えるカウンタiが0に、過去の湯張りの順番を示す湯張り順序カウンタdが6に、それぞれ初期化される。次いで、S202では、湯張り動作と風呂保温動作を含む風呂機能の起動の有無が判別される。その結果、風呂機能がONの場合は、S203にて湯張りの完了の有無が判別される。
【0041】
S203において湯張りが完了したと判定された場合には、S204およびS205にてデータ配列Tarray(d,i)を湯張り一回分だけ更新するために、湯張り1回分ずつデータのシフト操作が行われる。
【0042】
次に、S206では、d−1番目の湯張りの入浴時刻記録がすべてシフトされたことを確認するため、湯張り毎(別)の入浴回数記録データ配列Bcnt(d−1)と湯張り毎の入浴イベント回数カウンタiとが比較される。その結果、当該カウンタiが当該データ配列Bcnt(d−1)も大きい場合は、データのシフト動作が終了され、S207にて、Bcnt(d−1)がBcnt(d)にシフトされる。
【0043】
次に、7回分の湯張りの入浴時刻データをすべてシフトするため、S208では、ひとつ新しいデータをシフト操作するために湯張り順序カウンタdが減算されるとともに、湯張りを含む入浴イベント回数カウンタiが0に初期化される。次いで、S209にて、湯張り順序カウンタdが1より小さいか否かが比較され、その結果、小さい場合は湯張り別の入浴時刻記録データ配列Tarray(d,i)のデータがすべてシフトされたとみなされ、S210に移行する。
【0044】
次に、前回湯張り時の入浴時刻データ配列Tday(i)のデータを湯張り別の入浴時刻記録データ配列Tarray(d,i)に格納する処理のために、S210では、入浴イベント回数カウンタiが0に初期化される。次いで、S211において、湯張り別の入浴時刻記録データ配列Tarray(d,i)のうちで一番新しい湯張り時のデータを格納する記録データ配列Tarray(0,i)に、前回湯張り時の入浴時刻データ配列Tday(i)を格納する処理が行われる。
【0045】
具体的には、S212、S213において、前回湯張り時の入浴回数Bdayと入浴イベント回数カウンタiとが比較される。その結果、当該カウンタiが前回湯張り時のBdayより大きい場合には、データの格納処理が完了したと判断できる。この場合には、S214において、湯張り別の入浴回数記録データ配列Bcnt(i)のうちの一番新しい湯張り時のデータ格納場所Bcnt(0)に、前回湯張りの入浴回数Bdayが格納される。更に、湯張りを含む前回入浴イベント時刻Tprvと入浴イベント回数カウンタiが0に初期化される。
【0046】
次に、湯張り完了時刻および入浴時刻を記録するために、S215において、湯張り後の入浴時刻データ配列Tday(i)に現在時刻Trealが記録されるとともに、自動動作起動停止決定部10で用いる前回入浴イベント時刻(湯張り完了時刻もしくは前回入浴時刻)Tprvに現在時刻Trealが格納される。
【0047】
次に、湯張り後の入浴時刻データ配列Tday(i)における次のデータ格納場所にデータを格納するため、S216では、入浴イベント回数カウンタiが加算される。次いで、S217では、湯張り動作と風呂保温動作を含む風呂機能がONであるかOFFであるかが判別される。その結果、風呂機能がOFFである場合には、今回の湯張りにおける入浴時刻の記録が終了され、S201に移行する。一方、風呂機能がONである場合には、S218にて浴室の音声監視が行われる。その結果、入浴に伴う音声が検出された場合には、S215へ移行して、湯張り後の入浴時刻データ配列Tday(i)に、現在時刻Trealと湯張りを含む前回入浴イベント時刻Tprvが記録される。
【0048】
図7は、保温動作時刻設定部9が入浴時刻記録部8から取得する湯張り完了時刻および入浴時刻に基づいて、風呂保温動作の起動時刻を設定する処理を示すフローチャートである。図7においては、先ず、湯張り別の入浴時刻記録データ配列Tarray(d,i)における湯張りを除く入浴時刻を処理するために、S301にて、湯張りを含む入浴イベント回数カウンタiが1に初期化される。
【0049】
次に、S302において、湯張り順序カウンタd=0〜6までのすべてのTarray(d,i)におけるi番目入浴のうちの最も遅い入浴時刻が、湯張り後のi番目入浴時刻Ts(i)に格納される。S302では、更に、同じ湯張り時における前回入浴時刻Tarray(d,i−1)と今回入浴時刻Tarray(d,i)との差の最大となる時間間隔が入浴順番毎に計算されたうえで、i番目入浴向け入浴時間間隔ΔTs(i)にそれぞれ記録される。
【0050】
次に、操作する入浴の順番を進めるために、S303では、湯張りを含む入浴イベント回数カウンタiが1だけ加算される。次いで、湯張り別の入力回数記録データ配列Bcnt(d)に格納されたデータのうちの最小の入浴回数分でS301の処理を行うようにするために、S304において、当該データ配列Bcnt(d)の最小値と湯張りを含む入浴イベント回数カウンタiとが比較される。その結果、湯張りを含む入浴イベント回数カウンタiが上記データ配列Bcnt(d)の最小値より大きい場合は、この図7における保温動作時刻設定部9に関する一連の処理が終了される。
【0051】
以上説明した図5〜7に示す処理によれば、各湯張り動作後の入浴順番(入浴イベント回数カウンタi)と関連付けられた状態で各入浴時刻が図6に示す処理によって入浴時刻記録部8に記録(学習)されたうえで、過去の入浴時期(入浴時刻および入浴時間間隔)の学習結果に基づいて予測される入浴時期となるように風呂保温手段を起動させるべき予測時刻が図7に示す処理によって設定される。そのうえで、図5に示す処理により、浴室内で音が検知された場合、または、入浴時期の学習により予測される入浴時刻もしくは入浴時間間隔が経過した場合にのみ、風呂保温動作が起動するように制御される。
【0052】
これにより、浴室における音声によって入浴の有無が検知されることで、入浴がない場合には風呂保温機能(風呂保温動作)を停止することができるので、浴槽水の温度検知に伴う浴槽1への低温水の流入を抑制することができる。このため、貯湯タンク101内の熱量の余分な消費を減らすことで、省エネルギー性を高めることが可能である。更に、湯張り後の入浴時間の学習によって、浴室内の音が検出されない状況下では入浴が行われると見込まれるタイミングでのみ風呂保温動作を一時的に起動することで、入浴が行われる際に、浴槽水の温度が下がり過ぎている状況が生ずるのを抑制することができ、入浴時の快適性を損なわない。そのうえ、上記図5に示す処理によれば、学習結果による風呂保温動作の一時的な起動は、入浴と入浴の間で最大2回(S104またはS105の判定が成立した場合)までに抑えられる。このため、浴槽1への低温水の流入が最低限に抑えられるので、省エネルギー性能を高めることが可能である。
【0053】
また、上記図7に示す処理によれば、風呂保温手段を起動させるべき予測時刻である湯張り後のi番目入浴時刻Ts(i)として、湯張り順序カウンタd=0〜6までのすべてのTarray(d,i)におけるi番目入浴のうちの最も遅い入浴時刻(最遅入浴時刻)が使用される。また、同じ湯張り時における前回入浴時刻Tarray(d,i−1)と今回入浴時刻Tarray(d,i)との差の最大となる時間間隔(最長入浴時間間隔)が、風呂保温手段を起動させるべき予測時刻を設定する際の入浴時間間隔として使用される。入浴時刻または入浴時間間隔の学習値として上記のような最遅入浴時刻または最長入浴時間間隔が使用されることにより、浴室内の音が未検出である期間中に風呂保温動作が極力起動しないようにすることができ、浴槽水の温度検出回数をより削減することができる。
【0054】
また、上記図6および7に示す処理によれば、各湯張り動作後の入浴順番(入浴イベント回数カウンタi)と関連付けられた状態で(言い換えれば、入浴順番ごとに)、上記最遅入浴時間または最長入浴時間間隔が取得される。このような処理によって入浴順番ごとに風呂保温動作を起動させるべき予測時刻が設定されることにより、複数の浴室利用者の各湯張り動作後の(例えば毎日の)入浴順番が習慣的に同じようになっている場合において、各入浴順番における入浴時期の傾向を学習して、風呂保温動作を起動させるべき時期をより適切に設定することができる。
【0055】
なお、本実施の形態1では、入浴有無の検知を浴室内の音声検知により行ったが、それ以外の人体検知手段、例えば赤外線や映像による検知、浴室内の明暗による検知、あるいは入浴者による操作による人体検知などでよってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 浴槽
2 熱交換器
3 水循環路
4 循環ポンプ
5 温度センサ
6 制御装置
7 時間管理部
8 入浴時刻記録部
9 保温動作時刻設定部
10 自動保温起動停止決定部
11 音声検知部
100 ヒートポンプ式給湯機
101 貯湯タンク
102 風呂保温熱源循環ポンプ
201 ヒートポンプユニット
1101 マイクロフォン
1105 適応フィルタ
1107 LMS演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に接続された水循環路を有し、当該水循環路を用いて浴槽水を循環させる浴槽水循環手段と、
前記水循環路内を流れる湯を加熱する加熱手段と、前記水循環路を循環する湯の温度を検知することで浴槽水の温度を取得する温度検知手段とを有し、浴槽水の温度が所定温度以下に低下した場合に、前記加熱手段を用いて浴槽水の温度を上昇させる風呂保温手段と、
浴室利用者による入浴動作の有無を判定する入浴判定手段と、
前記入浴判定手段による入浴の判定結果に基づいて、入浴時期を学習して予測する予測手段と、
前記入浴判定手段によって入浴動作が行われていないと判定された場合に、前記風呂保温手段の動作を停止し、前記入浴判定手段によって入浴動作が行われていないと判定された場合であっても前記予測手段によって予測される入浴時期の到来時には前記風呂保温手段を起動する起動時期制御手段と、
を備えることを特徴とする給湯機。
【請求項2】
前記予測手段は、入浴時刻を学習して予測する手段であって、
前記起動時期制御手段は、前記予測手段によって入浴時刻の学習がなされる所定期間内に行われる入浴の時刻のうちの最も遅い最遅入浴時刻を、前記風呂保温手段の起動時期として設定する起動時期設定手段を含むことを特徴とする請求項1記載の給湯機。
【請求項3】
前記予測手段は、各湯張り動作後の入浴順番と関連づけて入浴時刻を学習して予測する手段であって、
前記起動時期設定手段は、前記入浴順番ごとに前記最遅入浴時刻を取得することを特徴とする請求項2に記載の給湯機。
【請求項4】
前記予測手段は、入浴が行われる入浴時間間隔を学習して予測する手段であって、
前記起動時期制御手段は、前記予測手段によって入浴時間間隔の学習がなされる所定期間内に行われる入浴の時間間隔のうちの最も長い最長入浴時間間隔が前回の入浴時刻から経過した時刻を、前記風呂保温手段の起動時期として設定する起動時期設定手段を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の給湯機。
【請求項5】
前記予測手段は、各湯張り動作後の入浴順番と関連づけて入浴時間間隔を学習して予測する手段であって、
前記起動時期設定手段は、前記入浴順番ごとに、前記最長入浴時間間隔を取得することを特徴とする請求項4に記載の給湯機。
【請求項6】
前記入浴判定手段は、入浴に伴う音声の有無を検知する音声検知手段を含み、当該音声検知手段により検知された音に基づいて、入浴動作の有無を判定する手段であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の給湯機。
【請求項7】
前記起動時期制御手段は、前記音声検知手段により入浴に伴う音声が検出された場合に、前記風呂保温手段を起動することを特徴とする請求項6記載の給湯機。
【請求項8】
前記音声検知手段は、浴室内の音を取得するマイクロフォンと、当該マイクロフォンに入力された音声信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータと、当該A/Dコンバータにより変換された前記マイクロフォンのディジタル信号を入力信号とする適応フィルタとを含み、
前記適応フィルタは、LMSアルゴリズムを用いて、無音入力信号と当該適応フィルタの出力信号との誤差信号がゼロになるように当該適応フィルタの係数が更新されるものであることを特徴とする請求項6または7に記載の給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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