説明

継手構造およびこの継手構造を備える衝撃式掘削工具

【課題】 脱着が容易で、耐久性に優れた継手構造およびこの継手構造を備える衝撃式掘削工具を提供する。
【解決手段】 独立した2つの継手部材1、2を軸線O1方向に連結するための継手構造Bであって、一方の継手部材1には、その先端側に軸線O1方向に延出された第1継手部4が設けられており、第1継手部4には軸線O1回りに捻れるネジ山6bを有する雄ネジ部6が形成されているとともに、雄ネジ部6は、軸線O1に沿った断面においてネジ山6bの頂点を結んだ線が、軸線O1から外周方向に凸の曲線を描きつつ第1継手部4の延出方向に向けて外径が小さくなるように形成されている一方、一方の継手部材1と連結される他方の継手部材2には、第1継手部4の雄ネジ部6が螺合される雌ネジ部13を有する第2継手部16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネル掘削や採石等で、岩盤などの掘削に用いられるロッドやビットなどの衝撃式掘削工具に用いて好適な継手構造およびこの継手構造を備える衝撃式掘削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば削岩機やロータリーパーカッションドリルなどの削孔機は、衝撃式掘削工具の、棒状のロッドやケーシング(一方の継手部材)と、その先端にロックビットなどのビット(他方の継手部材)とが取り付けられ、ロッドやケーシングとともにビットを回転させつつ岩盤などの被削物に打撃させることで被削物の掘削を行うものである。このとき、ビットと対向するロッドやケーシングの後端側が、削岩機や削孔機の油圧式や機械式の打撃装置に接続され、この打撃装置により軸線回りに回転された状態でロッドやケーシングに繰り返し衝撃力が付加される。付加された衝撃力は、ロッドやケーシングを介してビットに伝達され、伝達された衝撃力を受けてビットが被削物に打撃されて、被削物が掘削される。
【0003】
一般に、ロッドやケーシングとビットとを連結させる継手構造には、それぞれに雄ネジ部もしくは雌ネジ部が設けられ、この雄ネジ部と雌ネジ部とを螺合することで互いを連結するネジ式の継手構造が多用されている。複数のロッドやケーシングの連結、ロッドと打撃装置との連結においても同様の継手構造が多用されている。また、この種の継手構造の雄ネジ部や雌ネジ部は、ネジ山の頂点を結ぶ直線が例えばロッドの軸線と平行する平行ネジとされている(例えば、特許文献1参照。)。このネジ式の継手構造は、螺合された連結部分に繰り返し衝撃力などの大きな力が作用しても安定的に脱着可能であるなどの利点を有する。
【0004】
一方で、例えば図4に示すような、ロッド1の先端部分をテーパー形状とし、ロッド1と連結されるビット2にロッド1のテーパー形状と係合するテーパー形状の内孔を設け、両テーパー部分が面接触されることで互いを連結する継手構造Aも存在する。この種の継手構造Aは、繰り返し衝撃力を受けるような場合においても連結部分の磨耗が少ないという利点を有する。
【特許文献1】特表2003−515022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のネジ式の継手構造では、衝撃式掘削工具のロッドやビットなどの継手部材に繰り返し衝撃力が付加されることで被削物から絶えず繰り返し反力が作用し、この反力により、一部のネジ山が他のネジ山と比較して集中的に磨耗して、全てのネジ山が寿命に至る前に、連結部分で継手部材が折損してしまうという問題があった。
【0006】
すなわち、上記の継手構造のように雄ネジ部および雌ネジ部が平行ネジとされている場合には、継手部材の軸線方向に作用する反力が、その反力を最初に受ける先端側のネジ山(第1ネジ山)に集中的に作用する。第1ネジ山に集中的に作用した反力は、第1ネジ山が弾性変形を生じることで、順次後端側のネジ山に負荷されてゆく。このため、第1ネジ山と比較して、後端側のネジ山ほど負荷される反力は小さくなり、第1ネジ山は、他のネジ山に比べて集中的に磨耗されてしまう。これにより、連結された両継手部材の第1ネジ山付近に磨耗による隙間が生じ、両継手部材がガタつきを生じ始め、この付近の雌ネジ部側の継手部材(他方の継手部材)に曲げ応力が作用し折損されてしまうという問題があった。
【0007】
また、雄ネジ部側の継手部材(一方の継手部材)においても、第1ネジ山が磨耗されることによって、連結部分の後端付近に集中的に曲げ応力が作用し折損される場合があるという問題があった。
【0008】
一方、テーパー部分が面接触されることで継手部材が連結される継手構造においては、継手部材の軸線方向に繰り返し作用する反力によって、一方の継手部材の先端に形成されたテーパー部分が、他方の継手部材の内孔に過剰に貫入されてしまい、接触面の摩擦力で連結された両継手部材を分離できなくなるという問題があった。また、一方の継手部材のテーパー部分が内孔に過剰に貫入されることで、他方の継手部材が変形し折損されてしまう場合があるという問題もあった。
【0009】
このように、継手部材(衝撃式掘削工具)が折損された場合、特に岩盤などの削孔作業中に折損された場合には、折損され孔内に残された衝撃式掘削工具の回収と再度削孔をやり直すために多大な時間と労力を費やす必要が生じるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑み、脱着が容易で、耐久性に優れた継手構造およびこの継手構造を備える衝撃式掘削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0012】
本発明の継手構造は、独立した2つの継手部材を軸線方向に連結するための継手構造であって、一方の継手部材には、その先端側に軸線方向に延出された第1継手部が設けられており、該第1継手部には前記軸線回りに捻れるネジ山を有する雄ネジ部が形成されているとともに、該雄ネジ部は、前記軸線に沿った断面において前記ネジ山の頂点を結んだ線が、前記軸線から外周方向に凸の曲線を描きつつ該第1継手部の延出方向に向けて外径が小さくなるように形成されている一方、前記一方の継手部材と連結される他方の継手部材には、前記第1継手部の前記雄ネジ部が螺合される雌ネジ部を有する第2継手部が設けられている。
【0013】
また、本発明の継手構造は、前記第1継手部の前記ネジ山は、その前記頂点周辺が前記軸線に沿った断面において凸曲線をなし、その前記頂点における曲率半径が、前記断面において隣り合う前記ネジ山の間隔の30%以上とされていることが望ましい。
【0014】
本発明の衝撃式掘削工具は、上記の継手構造により連結される衝撃式掘削工具であって、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とが互いに螺合した状態で、前記第1継手部の先端面と、前記第2継手部の前記雌ネジ部のネジ孔底面とが互いに当接させられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の継手構造によれば、軸線に沿った断面においてネジ山の頂点を結んだ線が軸線から外周方向に凸の曲線となるように第1継手部の雄ネジ部が形成されることによって、雄ネジ部の先端側の外径が小径とされ、この小径部分と螺合される他の継手部材の、雌ネジ部のネジ孔から外周側の部分の肉厚を大きく確保することができる。これにより、大きな反力を受けて磨耗を生じやすい第1ネジ山付近の他の継手部材の剛性を大きくすることができ、他の継手部材の折損を防ぐことが可能となる。その一方で、後端側では雄ネジ部の外径を大きく確保できることによって、回転打撃力を確実に伝達することが可能となる。
【0016】
また、ネジ山自体も断面を凸曲線とすることにより、特に軸線方向先端付近に位置するネジ山の、反力を受けるフランク部の断面積を大きくすることができる。このため、軸線方向先端付近に位置するネジ山のフランク部が受ける単位面積当たりの反力を低減させることができ、この部分の集中的な磨耗を防止することができる。さらに、雄ネジ部の外径が先端側に向かって漸次小とされることで、先端付近に位置するネジ山以外のネジ山でも確実に反力を受けることができる。これにより、全てのネジ山の磨耗状態を均一化することが可能となる。よって、ネジ山の磨耗により曲げ応力が局所的に作用することを防止でき、継手部材の折損を防止することができる。また、第1継手部の寿命をネジ山の磨耗限界とすることができ、第1継手部の長寿命化を図ることが可能となる。
【0017】
さらに、本発明の継手構造によれば、第1継手部のネジ山の曲率半径が、隣り合うネジ山の間隔の30%以上とされていることによって、上記効果が得られるフランク部の断面積を備えたネジ山とすることができる。
【0018】
また、本発明の衝撃式掘削工具によれば、上記の継手構造の効果を有し、且つ雄ネジ部と雌ネジ部とを螺合した際に、第1継手部の先端面と第2継手部の雌ネジ部のネジ孔底面とが互いに当接させられていることによって、軸線方向に作用する衝撃力を確実に連結された先端側の継手部材に伝達することができる。これにより、掘削性に優れた衝撃式掘削工具とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1から図3を参照し、本発明の一実施形態に係る継手構造Bおよびこの継手構造Bを備えた衝撃式掘削工具Cについて説明する。
【0020】
本発明の一実施形態は、図1から図3に示すように、例えば削岩機やロータリーパーカッションドリルなどの削孔機に取り付けられて、被削物の掘削を行うためのロッド1やロッド1の先端に取り付けられるビット2などの衝撃式掘削工具Cに関するものであるとともに、ロッド(一方の継手部材)1とビット(他方の継手部材)2とに備えられ両者を連結させるための継手構造Bに関するものである。
【0021】
衝撃式掘削工具Cであるロッド1は、図1に示すように、軸線O1を中心とした円筒棒状に形成されたロッド本体部3とこのロッド本体部3の先端3aから軸線O1方向に延出された第1継手部4とから構成されている。第1継手部4は、ロッド本体部3の先端3aから軸線O1方向に延出された接続部5と、接続部5から延出された雄ネジ部6と、雄ネジ部6から延出された先端部7とから構成されている。接続部5は、軸線O1方向の中央部分の外径がロッド本体部3の外径よりも小となるようくびれた形状に形成されている。
【0022】
また、雄ネジ部6は、外周6aに軸線O1回りに捻れる例えばロープネジが本実施形態では1条で形成されており、そして、軸線O1に沿った断面においてネジ山6bの頂点6cを結んだ線Tが、軸線O1から外周6a方向に凸の曲線を描きつつ第1継手部4の延出方向に向けて外径が小さくなるように形成されている。さらに、この雄ネジ部6のネジ山6bは、その頂点6c周辺が軸線O1に沿った断面において凸曲線をなし、その頂点6cにおける曲率半径Rが隣り合うネジ山6bの間隔Pの30%以上とされている。先端部7は、略円筒状に形成されており、雄ネジ部6に対向する先端面7aが軸線O1に直交されている。また、先端部7は、雄ネジ部6に対向する先端面7aと外周面7bとが交差する端部7cが曲面形状とされている。
【0023】
衝撃式掘削工具Cであるビット2は、図2に示すように、軸線O2を中心とした略円筒棒状に形成されており、先端2a側が例えば岩盤などの被削物に当接されて被削物を破壊する刃先部10とされている。刃先部10は、他の部分よりも先端2aに向けて外径が漸次大となるように形成されており、その先端部分には、複数の孔10aが形成されている。この孔10aには、先端11aが断面凸の球形とされる例えば超硬合金などの刃部11が嵌合、ろう付けされて植設されており、刃先部10の先端面10bに対して刃部11の先端11aが若干突出した状態で固定されている。
【0024】
また、ビット2には、後端2bから刃先部10に向けて軸線O2中心の内孔(ネジ孔)12が設けられている。そして、この内孔12には、図1に示したロッド1の雄ネジ部6と螺合される雌ネジ部13と、雌ネジ部13の先端13aからビット2の先端2a側に形成されるとともに、雌ネジ部13の先端13aの内径よりも若干大きな内径とされた先端拡張部14と、雌ネジ部13の後端13bからビット2の後端2bに形成され、雌ネジ部13の後端13bの内径よりも若干大きな内径とされた後端拡張部15とが形成されている。
【0025】
ここで、ロッド1の第1継手部4が嵌挿されるこの内孔12部分が第2継手部16とされ、第2継手部16の先端16aには、第1継手部4の先端部7の雄ネジ部6に対向する先端面7aと面接触して当接される底面16bが形成されている。また、第1継手部4の雄ネジ部6は、軸線O1に沿った断面においてネジ山6bの頂点6cを結んだ線Tが軸線O1から外周6a方向に凸の曲線を描きつつ第1継手部4の延出方向に向けて外径が小さくなるように形成されているため、第2継手部16の雌ネジ部13も、軸線O2に沿った断面において谷底13cを結んだ線Xが軸線O2から外周2c方向に凸の曲線を描きつつ内孔12の底面16b側に向けて外径が小さくなるように形成されている。さらに、第1継手部4の雄ネジ部6のネジ山6bは、その頂点6c周辺が軸線O1に沿った断面において凸曲線をなし、その頂点6cにおける曲率半径Rが隣り合うネジ山6bの間隔Pの30%以上とされているため、これに螺合される雌ネジ部13の谷底13cも雄ネジ部6のネジ山6bと同じ曲率半径Rで形成されている。これにより、先端13a側のビット2の肉厚H1は、雌ネジ部13の後端13b側のビット2の肉厚H2よりも大きなものとされている。
【0026】
また、図2から図3に示すように、先端拡張部14と後端拡張部15が形成されていることにより、第1継手部4と第2継手部16とを連結した際に、第1継手部4と第2継手部16とが非接触状態となる逃がし部17が形成される。さらに、ビット1には、図2に示すように、第2継手部16の先端16aに形成された底面16bに直交し、内孔12と連通されつつ軸線O2方向に延設された円柱状の空洞部18が設けられている。この空洞部18からは斜めにブロー孔19が分岐して、ビット2の先端部2a外周に形成されたくり粉溝20の底面に開口させられている。これに対して、ロッド1には、ビット2の空洞部18に連通して例えば圧縮エアなどを供給する図示せぬ貫通孔が軸線O1に沿って形成されている。
【0027】
ついで、図1から図3を参照し、上記の構成からなる継手構造Bを備えるロッド1とビット2とを連結させ、繰り返し反力を受けた場合における継手構造Bの作用および効果について説明する。
【0028】
はじめに、図1および図2に示したロッド1とビット2とをそれぞれの軸線O1、O2が一致するように配置させつつ、ビット2の内孔12にロッド1の第1継手部4を挿入する。そして、ロッド1またはビット2、あるいはこの双方を軸線O1、O2回りに回転させて、第1継手部4の雄ネジ部6と第2継手部16の雌ネジ部13とを螺合させる。このとき、第1継手部4の先端部7の先端面7aと、第2継手部16の先端16aの底面16bとが面接触して当接され、それ以上内孔12内に第1継手部4が挿入できない状態となるまで回転させる。これにより、図3に示すように、ロッド1とビット2とが連結される。また、このとき、第1継手部4の先端部7と雄ネジ部6の先端側の一部および接続部5と雄ネジ部6との接続部分が、逃がし部17の位置に配置される。
【0029】
このように、第1継手部4と第2継手部16とを螺合してロッド1とビット2とが連結された状態で、ロッド1の後端に接続された図示せぬ例えば削岩機や削孔機の打撃装置が駆動され、ロッド1とビット2が、軸線O1、O2回りに回転されつつ繰り返し衝撃力F1を付加される。付加された衝撃力F1は、ロッド1を介してビット2に伝達され、伝達された衝撃力F1を受けてビット2が被削物に打撃される。これにより、ビット2の刃部11で被削物が掘削される。
【0030】
このとき、繰り返し衝撃力F1を受けた被削物から、ロッド1およびビット2に繰り返し反力F2が作用される。通常、この反力F2は、ロッド1およびビット2の軸線O1、O2方向に作用される。この反力F2は、継手構造Bに伝達され、逃がし部17に位置する雄ネジ部6を除き、雌ネジ部13の先端13a側に位置する雄ネジ部6の第1ネジ山6dに大きく作用される。
【0031】
ところが、上記構成の継手構造Bでは、軸線O1に沿った断面においてネジ山6bの頂点6cを結んだ線Tが軸線O1から外周6a方向に凸の曲線となるように雄ネジ部6が形成されているため、第1ネジ山6dの反力F2を受けるフランク部Sの断面積が、従来の継手構造の第1ネジ山のフランク部と比較して大きいものとされている。このため、フランク部Sに作用する単位面積当たりの反力F2は従来の継手構造よりも小さなものとされる。また、この継手構造Bは、外径が先端側に向けて漸次小とされていることにより、雄ネジ部6の第1ネジ山6d以外のネジ山6bでも反力F2を受けることが可能とされる。さらに、第1継手部4の先端部7の先端面7aと、第2継手部16の先端16aの底面16bとが面接触して当接されており、確実に衝撃力F1を伝達可能とされるとともに、この接触部分でその反力F2を受けることができるため、雄ネジ部と雌ネジ部とに作用する反力は低減されることとなる。よって、継手構造Bの第1ネジ山6dは、従来の継手構造と比較して磨耗されにくいものとされつつ繰り返し反力F2によってネジ山6b全体が均一的に磨耗されるものとなる。
【0032】
さらに、雄ネジ部6の第1ネジ山6dが他のネジ山6bよりも早く磨耗されるような場合においても、外径が先端側に向けて漸次小とされていることで、第1ネジ山6d以外のネジ山6bでロッド1とビット2とが強固に連結され、この部分で繰り返し反力F2を確実に受けることが可能とされる。このため、ロッド1とビット2とのガタつきは生じずに、磨耗された第1ネジ山6d付近のビット2および雄ネジ部6の後端付近のロッド1に集中的な曲げ応力が作用することを防止可能とされる。また、第1ネジ山6dが磨耗されロッド1とビット2とがガタつくような場合においても、雌ネジ部13の先端側のビット2の肉厚H1が、雌ネジ部13の後端13b側のビット2の肉厚H2よりも大きく、雌ネジ部13の先端13a側のビット2部分が高剛性とされているため、ビット2の折損が生じにくいものとされる。
【0033】
したがって、上記の継手構造Bによれば、軸線O1に沿った断面においてネジ山6bの頂点6cを結んだ線Tが軸線O1から外周6a方向に凸の曲線となるように雄ネジ部6が形成されていることにより、第1ネジ山6dの反力F2を受けるフランク部Sの断面積を大きく確保することができ、フランク部Sに作用する単位面積あたりの反力Fを低減させることができる。また、外径が先端側に向けて漸次小となるように形成されていることで、雄ネジ部6の第1ネジ山6d以外のネジ山6bでも確実に反力F2を受けることができるため、全てのネジ山6bの磨耗状態を均一化することが可能となる。よって、第1ネジ山6dが集中的に磨耗されることにより曲げ応力が局所的に作用することを防止することができ、ロッド1やビット2の折損防止を図ることができる。また、第1継手部4の寿命をネジ山6bの磨耗限界とすることができるため、継手構造Bの長寿命化を図ることが可能となる。
【0034】
また、軸線O1に沿った断面においてネジ山6bの頂点6cを結んだ線Tが軸線O1から外周6a方向に凸の曲線となるように雄ネジ部6が形成されていることにより、これに螺合される雌ネジ部13の先端13a側のビット2の肉厚H1を、後端13b側の肉厚H2よりも大きくすることができるため、曲げ応力が作用しやすい部分の剛性を高めることができ、ビット2の折損を防止することが可能となる。その一方で、後端側では雄ネジ部6の外径を大きく確保できるため、回転打撃力を確実に伝達することができる。
【0035】
さらに、上記の継手構造Bによれば、ネジ山6bの曲率半径Rが隣り合うネジ山6bの間隔Pの30%以上とされていることにより、ネジ山6bのフランク部Sの断面積を、全てのネジ山6bで繰り返し反力F2を確実に受けることができるものとすることができ、全てのネジ山6bの磨耗状態をより均一化することが可能となる。
【0036】
また、上記の継手構造Bによれば、繰り返し反力F2を継手構造全体で受けることができ、従来の平行ネジを備える継手構造の脱着が容易に行えるという利点を確保しつつ、テーパー形状を備える継手構造の磨耗が少ないという利点を有する継手構造Bとすることができる。
【0037】
さらに、上記の効果を有する継手構造Bを備えた衝撃式掘削工具Cは、ロッド1とビット2とを連結した状態で、第1継手部4の先端部7の先端面7aと、第2継手部16の先端16aの底面16bとが面接触して当接されるため、確実に衝撃力F1を伝達することができ、且つその反力F2を接触面でも受けることができるため、優れた掘削性と耐久性とを有する衝撃式掘削工具Cとされる。
【0038】
なお、本発明は、上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、一方の継手部材をロッド1とし、他方の継手部材をビット2として説明を行ったが、本発明は、第1継手部4と第2継手部16とがそれぞれ設けられ連結される継手部材であれば適用可能であり、特に継手部材の種類が限定されるものではない。
【0039】
また、1つの継手部材1、2に第1継手部4または第2継手部16が設けられているものとしたが、1つの継手部材1、2に複数の第1継手部4または複数の第2継手部16が設けられていてもよく、さらに、1つの継手部材1、2に第1継手部4と第2継手部16とがそれぞれ単数もしくは複数で設けられていてもよいものである。また、継手部材は、円筒棒状であるものとしたが円柱棒状であってもよいものであり、さらに、断面が円形ではなく六角形状などの多角形状とされていてもよいものである。
【0040】
また、本実施形態の雄ネジ部6は、外周6aに軸線O1回りに捻れる例えばロープネジが1条で形成されているものとしたが、2条や3条で形成されていてもよいものである。さらに、第1継手部4には、接続部5が形成されているものとしたが、特に接続部5が形成されていなくてもよいものである。また、第2継手部16の内孔12には、先端拡張部14と後端拡張部15とが形成され、且つ第1継手部4と第2継手部16とを連結した際に、第1継手部4と第2継手部16とが非接触状態とされる逃がし部17が形成されるものとしたが、先端拡張部14と後端拡張部15は形成されていなくてもよいものであり、逃がし部17に位置する第1継手部4と第2継手部16とが接触されて連結されてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る継手構造を備える一方の継手部材を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る継手構造を備える他方の継手部材を示す断面図である。
【図3】図1と図2に示した継手部材を連結させた状態を示す断面図である。
【図4】従来のテーパー形状の継手構造を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 一方の継手部材(ロッド)
2 他方の継手部材(ビット)
3 ロッド本体部
3a ロッド本体部の先端
4 第1継手部
5 接続部
6 雄ネジ部
6a 雄ネジ部の外周
6b ネジ山
6c ネジ山の頂点
6d 第1ネジ山
7 先端部
7a 先端面
10 刃先部
12 内孔(ネジ孔)
13 雌ネジ部
13a 雌ネジ部の先端
13b 雌ネジ部の後端
16 第2継手部
16b 底面
17 逃がし部
B 継手構造
C 衝撃式掘削工具
F1 衝撃力
F2 反力
H1 ビットの肉厚
H2 ビットの肉厚
O1 ロッドの軸線
O2 ビットの軸線
P ネジ山の間隔
R ネジ山の曲率半径
S フランク部
T ネジ山の頂点を結ぶ線
X 雌ネジの谷底を結ぶ線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立した2つの継手部材を軸線方向に連結するための継手構造であって、
一方の継手部材には、その先端側に軸線方向に延出された第1継手部が設けられており、該第1継手部には前記軸線回りに捻れるネジ山を有する雄ネジ部が形成されているとともに、該雄ネジ部は、前記軸線に沿った断面において前記ネジ山の頂点を結んだ線が、前記軸線から外周方向に凸の曲線を描きつつ該第1継手部の延出方向に向けて外径が小さくなるように形成されている一方、前記一方の継手部材と連結される他方の継手部材には、前記第1継手部の前記雄ネジ部が螺合される雌ネジ部を有する第2継手部が設けられていることを特徴とする継手構造。
【請求項2】
請求項1記載の継手構造において、
前記第1継手部の前記ネジ山は、その前記頂点周辺が前記軸線に沿った断面において凸曲線をなし、その前記頂点における曲率半径が、前記断面において隣り合う前記ネジ山の間隔の30%以上とされていることを特徴とする継手構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の継手構造により連結される衝撃式掘削工具であって、
前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とが互いに螺合した状態で、前記第1継手部の先端面と、前記第2継手部の前記雌ネジ部のネジ孔底面とが互いに当接させられることを特徴とする衝撃式掘削工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−241837(P2006−241837A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59077(P2005−59077)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】