説明

縮合物、感光性組成物およびその製造方法、およびそれを用いたネガ型レジストパターンの形成方法

【課題】保存安定性があり、加熱焼成し膜とした際、鉛筆硬度HB以上で、膜厚1.5μm以上にしてもクラックを発生させることのない膜を得ることが出来る、アルコキシシランの加水分解および縮合反応によって得られる縮合物を提供する。
【解決手段】一般式(1):Si(ORで表されるアルコキシシランAと、一般式(2):(R)Si(ORで表されるアルコキシシランBと一般式(3):(RSi(ORで表されるアルコキシシランCをモル比で表して、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70の範囲で縮合させたアルコキシシランの縮合物。(Rはメチル基またはエチル基、Rはメチル基、エチル基またはフェニル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定のアルコキシシランを用いた縮合物、感光性組成物およびその製造方法、および当該感光性樹脂組成物からなるネガ型レジストパターンを、ガラス基板またはシリコン基板等の基体上に形成するネガ型レジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、タッチパネル、有機EL等においては、様々な保護膜または絶縁膜が使われる。
【0003】
液晶のカラーフィルターを保護する保護膜には、主に湿式法により成膜されたエポキシ樹脂膜が用いられる。
【0004】
一方、絶縁膜には、TFT(Thin Film Transistor)液晶ディスプレイにおけるTFT用の絶縁膜があり、主にCVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜されたSiN膜が用いられる。
【0005】
保護膜や絶縁膜には、前記従来の材料に対し、近年のTFT液晶ディスプレイの応答速度の高速化、バックライト光源の高輝度化に対応するためのさらに高い耐熱性を有し、ディスプレイ画面の大面積化に対応するための成膜の容易さおよびコストの優位さを有する湿式成膜可能な材料が求められている。
【0006】
例えば、アルコキシシランの加水分解および縮合反応によって得られる縮合物(以後、単に縮合物と呼ぶことがある)は、耐熱性、可視光域における透明性、ガラス基板およびシリコン基板への密着性に優れた材料として公知である。
【0007】
当該縮合物は、原料として用いるアルコキシシランの種類や組成を特定し製造方法を工夫することで、有機溶剤に対し高い溶解性を示し、湿式成膜が可能となるので、半導体およびディスプレイにおける保護膜または絶縁膜として用いるのに有望な材料である。
【0008】
また、縮合物中のシリコンの含有量が多いと、各種絶縁膜はもとより、ハードマスクとしても有望な材料となる。例えば、集積回路の絶縁膜として有機系高分子を用いた場合、微細パターンを転写するレジスト膜と同じ有機材料のため、レジストと絶縁膜を区別しエッチングすることは難しい。そこで、レジストと当該絶縁膜の間に、無機物の層を設けることがあり、この層をハードマスクと呼ぶ。
【0009】
ディスプレイや半導体の分野においては、基体上に薄膜を様々な形状に加工することが多く、その際にはフォトリソグラフィーが用いられる。フォトリソグラフィーは、ガラス基板またはシリコン基板等の基体上にレジスト膜を形成し、パターンを有するフォトマスクを介してレジスト膜を照射露光し、露光部と未露光部の現像液に対する溶解度差で、フォトマスクのパターンが転写されたレジストパターンを形成する技術である。保護膜または絶縁膜にパターン形成する場合は、これら膜上にレジストパタ−ンを形成した後、エッチングしてパターンを形成する必要がある。
【0010】
現在、前述の保護膜または絶縁膜に用いる材料に、フォトリソグラフィーでパターン形成可能な前記縮合物を用いたレジスト材料等が開発されており、これらを用いれば、レジスト塗布およびエッチングの両工程を省略できることから、製造工程の短縮とコスト低減が期待される。
【0011】
例えば、特許文献1には、シラノール基を有する樹脂と、高エネルギー線の照射により酸を発生する化合物とを含有していることを特徴とするネガ型レジスト材料が開示されている。
【0012】
特許文献2には、(1)シリコンに直結したメチル基、およびシラノール基を有し、かつシラノール含有率が0.1〜2.0であるアルカリ可溶性シロキサンポリマー(但し、シラノール含有率は、赤外分光分析による900cm−1のシラノール基と1271cm−1のシリコン−メチル基による吸収ピークの吸光度比すなわちAbs(900cm−1)/Abs(1271cm−1)をさす。)(2)放射線の作用によって反応促進剤を発生する化合物(3)溶剤を主成分とする感光性樹脂組成物が開示されている。
【0013】
特許文献3には、フェニルトリエトキシシランまたはフェニルトリメトキシシランからなる成分(X)と、メチルトリエトキシシランまたはメチルトリメトキシシランからなる成分(Y)と、トリエトキシシランまたはトリメトキシシランからなる成分(Z)とを、特定の比率で反応させて得られたアルコキシシランの縮合物(A)、及び光や熱などの外的刺激により酸を発生する酸発生剤(B)を含有する膜形成用組成物、これを用いたパターン膜の製造方法及び電子機器用絶縁膜が開示されている。
【0014】
また、アルコキシシランの加水分解、および縮合反応によって得られる縮合物には、以下に記述する2つの課題がある。
【0015】
1つ目の課題は、縮合物の保存安定性であり、これは縮合物中に残存するシラノール(Si−OH)基が保存期間中に徐々に縮合反応し、縮合が進行し分子量が大きくなった縮合物は、その粘性や有機溶剤への溶解度といった物性が変化し、一様に湿式成膜することが困難となり、所望の膜が得難いことである。
【0016】
2つ目の課題は、膜厚1.5μm以上の硬い膜が得難いことである。特に、液晶ディスプレイ分野等の保護膜または絶縁膜には、厚み1.5μm以上の鉛筆硬度HB以上、好ましくは2H以上の硬さが要求されることが多い。縮合物は、湿式成膜後に高温で加熱焼成を行う必要があり、最終的に、前記膜硬度にて、膜厚1.5μm以上のクラックのない膜が得難いことである。
【0017】
以上に記述したようにアルコキシシランの加水分解、および縮合反応によって得られる、保護膜または絶縁膜に利用される縮合物において、保存安定性に優れることおよび厚み1.5μm以上、の鉛筆硬度HB以上、好ましくは2H以上の硬い膜を得ることの2つの課題をともに解決するものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平2−129642号公報
【特許文献2】特開平10−246960号公報
【特許文献3】国際公開WO2008/047654のパンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記のような状況の下、アルコキシシランの加水分解および縮合反応によって得られる縮合物において、従来の手法によるアルコキシシランの加水分解および縮合によって得られる縮合物では困難であった保存安定性に優れること、および縮合物を硬い膜とした際の膜厚1.5μm以上の膜にクラックを発生させないことという課題を解決し、保存安定性に優れ、尚且つ縮合物を使用して基板上へ膜を形成する際、加熱焼成後、膜厚1.5μm以上で、鉛筆硬度HB以上の硬さでクラックがない優れた膜を得るための縮合物が求められている。
【0020】
また、本発明の縮合物に高エネルギー線の作用により酸を発生する光酸発生剤を添加した感光性組成物、当該感光性組成物を基体上へ塗布しレジスト膜を形成した後、フォトリソグラフィーにより、高エネルギー線を照射することでネガ型レジストパターンを形成するネガ型レジストパターンの形成方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、各種アルコキシシランを原料にして得られる縮合物に関して検討した結果、特定の構造を有する3種類のアルコキシシランを原料に用いて、それらを特定の組成比で用い、水、有機溶剤、酸触媒を加えて、加水分解および縮合反応を行った後、水による抽出で酸触媒を除去し、さらに有機溶剤を除去して得られた縮合物は保存安定性に優れ、且つ溶剤を加え基体に塗布すれば、加熱焼成後、基体上に膜厚1.5μm以上で鉛筆硬度HB以上のクラックのない硬質な膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
具体的には、本発明は以下のとおりである。
【0023】
[発明1]
一般式(1):Si(OR
(式(1)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基である。)
で表されるアルコキシシランAと、
一般式(2):(R)Si(OR
(式(2)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランBと
一般式(3):(RSi(OR
(式(3)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランCを
モル比で表して、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70の範囲で縮合させたアルコキシシランの縮合物。
【0024】
発明1の縮合物を得るためには、原料のアルコキシシランA〜Cの他に、アルコキシシランA〜Cを加水分解するための水、反応溶剤としての水溶性の有機溶剤B、好ましくはアルコール、縮合反応を進行させるための触媒として、好ましくは酢酸を用いて縮合反応させる。縮合反応後に反応溶液中に存在する縮合物を、水と混和しない非水溶性の有機溶剤Cによって抽出し、次いで、その有機溶剤C中に含まれる酢酸を水で洗浄することで除去し、さらには有機溶剤C中に溶解している微量の水を除去した後、有機溶剤Cを、減圧留去すること等で除去して目的とする縮合物が得られる。
【0025】
[発明2]
一般式(1):Si(OR
(式(1)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基である。)
で表されるアルコキシシランAと、
一般式(2):(R)Si(OR
(式(2)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランBと
一般式(3):(RSi(OR
(式(3)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランCからなり、
モル比で表して、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70であるアルコキシシラン混合物Dに、水、水溶性の有機溶剤Bおよび酸触媒を加え縮合前混合物とする第1の工程と、
縮合前混合物を加水分解および縮合させ反応系に縮合物を生成させる第2の工程と、
反応系から酸触媒を水で抽出除去する工程および縮合物を非水溶性の有機溶剤Cで抽出して縮合物溶液を得る工程を有する第3の工程と、
縮合物溶液から有機溶剤Cを除去する第4の工程を有することを特徴とする、アルコキシシランの縮合物の製造方法。
【0026】
尚、アルコキシシラン混合物Dは、モル比で表して、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70とした、アルコキシシランA、アルコキシシランBおよびアルコキシシランCの混合物である。
【0027】
[発明3]
アルコキシシラン混合物Dが有するアルコキシ基のモル数の1.5倍以上、5倍以下のモル数の水を用いることを特徴とする、発明2の縮合物の製造方法。
【0028】
[発明4]
有機溶剤Bがアルコールであることを特徴とする、発明2または発明3の縮合物の製造方法。
【0029】
[発明5]
酸触媒が酢酸であることを特徴とする、発明2〜4のいずれか1つの縮合物の製造方法。
【0030】
次いで、発明1の縮合物に、光酸発生剤と有機溶剤Aを加えることで感光性組成物を製造できる。具体的には、発明1の縮合物を、縮合物を溶解可能な有機溶剤Aに溶解させ、高エネルギー線の作用で酸を発生する光酸発生剤を添加することで感光性組成物を製造できる。
【0031】
[発明6]
発明1の縮合物、光酸発生剤および有機溶剤Aを含む感光性組成物。
【0032】
[発明7]
有機溶剤Aが極性溶剤であることを特徴とする、発明6の感光性組成物。
【0033】
発明6または発明7の感光性組成物は、以下に示す発明8〜11のいずれか1つの感光性組成物の製造方法によって得られる。
【0034】
[発明8]
一般式(1):Si(OR
(式(1)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基である。)
で表されるアルコキシシランAと、
一般式(2):(R)Si(OR
(式(2)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランBと
一般式(3):(RSi(OR
(式(3)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランCからなり、
モル比で表して、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70であるアルコキシシラン混合物Dに、水、水溶性の有機溶剤Bおよび酸触媒を加え縮合前混合物とする第1の工程と、
縮合前混合物を加水分解および縮合させ反応系に縮合物を生成させる第2の工程と、
反応系から酸触媒を水で抽出除去し工程および縮合物を非水溶性の有機溶剤Cで抽出して縮合物溶液を得る工程を有する第3の工程と、
縮合物溶液から有機溶剤Cを除去する第4の工程と
光酸発生剤および有機溶剤Aを加える第5の工程を有することを特徴とする、感光性組成物の製造方法。
【0035】
[発明9]
アルコキシシラン混合物Dが有するアルコキシ基のモル数の1.5倍以上、5倍以下のモル数の水を用いることを特徴とする、発明8の感光性組成物の製造方法。
【0036】
[発明10]
有機溶剤Bがアルコールであることを特徴とする、発明8または発明9の感光性組成物の製造方法。
【0037】
[発明11]
発明8〜10の感光性組成物の製造方法であって、酸触媒が酢酸であることを特徴とする方法。
【0038】
発明6または発明7の感光性組成物を用いて、ガラス基板またはシリコン基板等の基体上に湿式成膜し、基板をプリベークすることで膜が得られる。この膜に対して、フォトマスクを介して高エネルギー線を照射することで、照射部の光酸発生剤より酸が発生し、照射部の膜でシラノール基の縮合が進行し照射部の縮合物の縮合がさらに促進して、アルカリ現像液に対して不溶となり、アルカリ現像液に未照射部の膜のみが溶けることで現像され、フォトマスクのパターンが転写したネガ型レジストパターンが形成される。
【0039】
この後、薄膜を高温下に加熱焼成することで、ネガ型レジストパターン中に残存するシラノール基を低減させることで、ディスプレイの保護膜または絶縁膜、半導体のハードマスクまたは絶縁膜が得られる。
【0040】
[発明12]
発明6または発明7の感光性組成物を基体上に塗布して形成した膜に高エネルギー線を照射して、照射部に酸を発生させて照射部の縮合物の縮合をさらに促進させてアルカリ現像液に不溶とした後、未照射部の膜を除去してネガ型パターンを形成することを特徴とする、ネガ型パターンの形成方法。
【0041】
[発明13]
照射する高エネルギー線が波長400nm以下の電磁波、または電子線であることを特徴とする、発明12のネガ型パターンの形成方法。
【発明の効果】
【0042】
本発明の縮合物は保存安定性に優れ、尚且つ、ガラス基板またはシリコン基板等の基体上へ塗布し膜とした際に、焼成後に、膜厚1.5μm以上で鉛筆硬度HB以上のクラックのない膜を得ることが容易である。例えば、本発明の縮合物は、溶液として湿式塗布し薄を形成した際、膜厚が1.5μm以上であっても、クラックの発生が確認されず、鉛筆硬度H以上を示した。
【0043】
さらに、本発明の縮合物は耐熱性が高く、可視光において高い透明性を有し、ガラス基板またはシリコン基板への密着性に優れ、且つ低吸水性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一般式(1):Si(ORで表されるアルコキシシランAと、一般式(2):(R)Si(ORで表されるアルコキシシランBと一般式(3):(RSi(ORで表されるアルコキシシランCの好適なモル比を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の縮合物、感光性組成物およびその製造方法、およびそれを用いたネガ型パターンの形成方法について以下、詳細に説明する。
【0046】
1.縮合物
本発明の縮合物は、特定の構造を有する各種アルコキシシランを原料に用いて、それらを特定の割合で用い、水、有機溶剤Bおよび酸触媒を加えて加水分解および縮合反応を行った後、水による抽出で酸触媒を除去し、さらに有機溶剤Bを除去したものである。
【0047】
即ち、本発明は、一般式(1):Si(OR
(式(1)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基である。)
で表されるアルコキシシランAと、
一般式(2):(R)Si(OR
(式(2)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランBと
一般式(3):(RSi(OR
(式(3)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランCを
モル比で表して、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70の範囲で縮合させたアルコキシシランの縮合物を提供する。
【0048】
本発明の縮合物は、特定の構造を有する各種アルコキシシランが加水分解および縮合反応したことで複雑に3次元ネットワーク構造を形成したものである。
【0049】
例えば、Rがフェニル基である一般式(2)で表されるアルコキシシランB、Rがメチル基である一般式(3)で表されるアルコキシシランCより得られた縮合物には、以下に示す構造が含まれているものと思われる。構造中に波線で図示した結合手は、その先においてもシロキサン結合のネットワークが続いていることを意味する。
【化1】

【0050】
本発明において、アルコキシシランA〜Cを用いて保存安定性に優れ、さらには成膜時に膜厚1.5μm以上、鉛筆硬度H以上の硬質な膜がクラックを伴うことなく形成可能な縮合物を得るためには、モル比で表して、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70の範囲で縮合させることが好ましい。さらに、好ましくは、モル%で表して、0%以上、70%以下のアルコキシシランAと、30%以上、100モル%未満のアルコキシシランBと、0%以上、70%以下のアルコキシシランCからなるアルコキシシランの混合物を縮合させたアルコキシシランの縮合物であり、硬質な膜を得るためには、アルコキシシランAまたはアルコキシシランCを必須の組成物として用いることが好ましい。
【0051】
アルコキシシランAが70モル%より多いと、固形分が析出しやすくなり、保存安定性に劣る、また縮合物より得られる膜が硬質となり、膜厚を1.5μm以上の膜とした際、クラックが入りやすい。アルコキシシランBが30モル%より少ないと硬質な膜が得がたい。アルコキシシランCが70モル%より多いと、硬質な膜を得がたい。さらに、好ましくは、モル比であらわして、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜40:30〜90:0〜50の範囲である。
【0052】
さらに、好ましくは、アルコキシシランA〜Cを図1に示したA、B、C、D、Eの5点で囲まれた網掛けの範囲内のモル百分率の比で混合して使用する。
【0053】
図1中の各点におけるアルコキシシランA〜Cのそれぞれのモル比は、AがアルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=40:30:30、BがアルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0:50:50、CがアルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0:90:10、DがアルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=20:80:0、EがアルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=40:60:0である。
【0054】
原料のアルコキシシランが、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70のモル比から外れている場合、得られる縮合物は、上記のように(1)保存安定性が劣る、(2)クラックのない、膜厚1.5μm以上の膜を形成することが困難になる、または(3)高温での加熱焼成後に十分な膜硬度が得られなくなり、ディスプレイおよび半導体用途の保護膜や絶縁膜としては実用し難い。さらに、好ましくは、図1に示したA、B、C、D、Eの5点で囲まれた網掛け部の範囲内である。
【0055】
この縮合物を有機溶剤A、好ましくは極性溶剤に溶解させ、ガラス基板またはシリコン基板等の基体上に湿式成膜する。例えば、当該基体上に塗布した後、プリベーク、即ち加熱して有機溶剤Aを除去し膜とする。この膜を加熱焼成すれば、ディスプレイまたは半導体の保護膜または絶縁膜、或いは半導体製造分野のハードマスクまたは絶縁膜として使用可能となる。
【0056】
2.縮合物の製造方法
本発明の縮合物の製造においては、前記アルコキシシランA〜Cを室温にて反応容器に仕込んだ後、アルコキシシランA〜Cを加水分解するための水、反応溶剤として有機溶剤B、好ましくは、アルコール、縮合反応を進行させるための酸触媒、好ましくは、酢酸を加え縮合前混合物として反応器内へ仕込み、次いで反応溶液を90°Cに加熱しながら内容物を撹拌し、加水分解および縮合反応を進行させ縮合物を生成する。
【0057】
この際、反応系中の未反応原料、水、アルコール、酢酸が反応系外へと留去される事を防ぐため、反応容器にはコンデンサーを具備させることが好ましい。縮合反応に必要な時間は通常3〜5時間である。縮合反応後に反応溶液を室温(20℃)まで降温させた後、反応系中に存在する縮合物を取り出すために、水と混和しない有機溶剤C、即ち非水溶性溶剤で接触抽出し、次いでその有機溶剤C中に含まれる酢酸を水で洗浄して除去する。
【0058】
さらに固体乾燥剤を用いて有機溶剤C中に溶解している微量の水を除去した後、固体乾燥剤をろ過によって除去する。最後に有機溶剤Cを減圧除去することで目的とする縮合物を得る。或いは固体乾燥剤を用いずに、有機溶剤Cを減圧除去する過程にて、水を同時に減圧除去してもよい。
【0059】
尚、本発明の縮合物を得るための加水分解および縮合反応において使用する水のモル当量は、原料のアルコキシシランが有するアルコキシ基の合計モル当量の1.5〜5倍である。1.5倍当量を下回ると加水分解が効率よく行われず、保存安定性に乏しい縮合物となる。5倍モル当量を上回った場合は、生産性が極端に低下するので好ましくない。
【0060】
本発明の縮合物または感光性組成物を得るための加水分解および縮合反応において、有機溶剤Bはアルコールが好適であり、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールまたはブタノールが挙げられる。
【0061】
本発明の縮合物または感光性組成物を得るために、縮合反応後に反応系中に存在する縮合物を抽出するために用いられる、縮合物を溶解し水と混和しない有機溶剤Cとしては、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテルまたはジブチルエーテルが挙げられる。
【0062】
本発明の縮合物または感光性組成物を得るために、縮合反応後に有機溶剤Cから水を除去するために用いられる固体乾燥剤としては、硫酸マグネシウムが挙げられる。
【0063】
3.感光性組成物およびその製造方法
次に本発明の縮合物を当該縮合物が溶解可能な有機溶剤A、好ましくは極性溶剤に溶解させ、高エネルギー線の作用で酸を発生する光酸発生剤を添加することで感光性組成物とする。
【0064】
本発明の感光性組成物に用いる有機溶剤Aとしては、プロピレングリコールモノメチルアセテート(以後、PGMEAと略する)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリドンが挙げられる。
【0065】
本発明の感光性組成物に用いる高エネルギー線の作用により酸を発生する、即ち、照射する高エネルギー線を吸収することで酸を発生させる光酸発生剤としては、具体的には、トリフェニルスルホニウムトルフルオロメタンスルホネート、米国BASF社製、商品名、Irgacure PAG121、Irgacure PAG103、Irgacure CGI1380、Irgacure CGI725、みどり化学株式会社製、商品名、PAI−101,PAI−106、NAI−105、NAI−106、TAZ−110、TAZ−204、サンアプロ株式会社製、商品名、CPI−200K、CPI−210S、CPI−101A、CPI−110A、CPI−100P、CPI−110P、CPI−100TF、HS−1、HS−1A、HS−1P、HS−1N、HS−1TF、HS−1NF、HS−1MS、HS−1CS、LW−S1、LW−S1NF、株式会社三和ケミカル製、商品名、TFE−トリアジン、TME−トリアジンまたはMP−トリアジンが挙げられる。
【0066】
4.ネガ型レジストパターンの形成方法
前記溶液状の感光性組成物を、ガラス基板またはシリコン基板等の基体上に湿式成膜する。例えば、当該基体上に塗布した後、プリベーク、即ち加熱して有機溶剤Aを除去することでレジスト膜を得る。このレジスト膜を、フォトリソグラフィーにより、ネガ型レジストパターンとする。具体的には、パターンが成形されたフォトマスクを介して高エネルギー線をレジスト膜に照射し、照射部の光酸発生剤より酸を発生させ照射部のレジスト膜の縮合反応をさらに進め、照射部のレジスト膜のみを現像液に対して不溶化させた後、現像液で現像すれば、未照射部は現像液に溶解し、照射部のみが基板上に残り、ネガ型レジストパターンが形成される。
【0067】
この後、ネガ型レジストパターンを加熱焼成し、パターン中に残存するシラノール基を縮合させる。熱焼成時の温度としては、高硬度な薄膜を得るためには高温であることが好ましいが、温度上限がディスプレイや半導体の製造プロセスに依存する。例えば、一般的な液晶ディスプレイにおけるオーバーコートの成膜工程において、加熱温度の上限は250°Cである。
【0068】
本発明の感光性組成物を用いてネガ型レジストパターンを形成する方法において用いられる現像液としては、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液等が挙げられる。
【0069】
本発明の組成物を用いてネガ型レジストパターンを形成する方法において用いられる高エネルギー線としては、波長が紫外領域以下、具体的には波長400nm以下の領域の高エネルギー線である、高圧水銀ランプによる紫外線光、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)または極端紫外光(波長13.5nm)、あるいは電子線が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0071】
縮合物の重量平均分子量(Mw)は、GPCを用い、溶媒にテトラヒドロフラン、ポリスチレン換算で測定した。シリコン基板上に成膜したレジスト膜の厚みは触針式表面形状測定機、シリコン基板上に形成した膜の鉛筆硬度は、引っかき硬度試験機を用いて測定した。本実施例で用いた測定機器を以下に示す。
【0072】
GPC:東ソー株式会社製、製品名、HLC−8320GPC、カラム、東ソー株式会社製、製品名、TSKgelGMHXL
触針式表面形状測定機:米国Veeco社製、製品名、Dektak8
電動鉛筆引っかき硬度試験機:株式会社安田精機製作所製、型番No.553−M
実施例1
[縮合物の合成]
フッ素樹脂製の撹拌羽、ジムロート型還流器を具備した容積1Lの3つ口フラスコに、アルコキシシランAとしてのSi(OEt)を16.22g、アルコキシシランBとしてのPhSi(OMe)を90.10g、アルコキシシランCとしてのMeSi(OMe)を27.39g仕込んだ。モル比は、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=10:60:30であった。
【0073】
次いでイソプロパノールを102.87g、水を78.56g、酢酸を0.06g、フラスコ内に仕込んだ後、フラスコを90°Cに加温し、加水分解および縮合反応を行った。3時間後、反応液(反応系)を室温に戻し、フラスコ内にイソプロピルエーテルを200ml、水を200ml入れ撹拌した。その後、2層分離した反応液の上層側を回収し、水200mlで3回洗浄した。次いで、イソプロピルエーテル中に溶解した微量の水分を硫酸マグネシウムで除去した後、硫酸マグネシウムを濾別した。エバポレーターにてイソプロピルエーテルを減圧留去したところ、目的とする縮合物が無色の粘性液体として得られた。収量74.82g、Mw=990であった。得られた縮合物を5°Cにて1ヶ月間保管したが、Mwに変化は認められず、縮合物は保存安定性に優れていた。
【0074】
[縮合物を用いたネガ型レジストパターンの形成]
上記の縮合物5.20gをPGMEA4.70gに溶解させ、光酸発生剤である5−P−toluenesulfonyloxyimino−5H−thiophen−2−ylidene)−(2−methylphenyl)acetonitrile(米国BASF社製、商品名、Irgacure PAG121)を0.05g添加し、感光性組成物とした。これを用いて、直径100mmのシリコン基板上に回転速度1000rpm、保持時間10秒でスピンコーターにて上記感光性組成物によるレジスト膜を成膜した後、基板を150°Cにて1分間加熱しプリベークした。
【0075】
次いで、マスクアライナ(マスクアライメント装置、ズースマイクロテック株式会社製、型番、MA6)とパターン形成されたフォトマスクを用いて、シリコン基板上のレジスト膜に、波長365nmの紫外線を1分間照射した。シリコン基板をマスクアライナより取り出し、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて、20秒間接触現像させた。基板上には最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、シリコン基板を250°Cのオーブン内にて1時間入れて、ネガ型レジストパターンを加熱焼成したところ、厚さ7.0μmのネガ型レジストパターン付きシリコン基板が得られた。シリコン基板上のレジスト膜にはクラックは認められず、鉛筆硬度はHBを示し、良好なネガ型レジストパターンが得られた。
【0076】
実施例2
[縮合物の合成]
実施例1で用いたのと同様の三口フラスコに、アルコキシシランAとしてのSi(OEt)を31.69g、アルコキシシランBとしてのPhSi(OMe)を60.12g、アルコキシシランCとしてのMeSi(OMe)を36.52g仕込んだ。モル比は、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=20:40:40であった。
【0077】
次いで、イソプロパノールを102.13g、水を77.24g、酢酸を0.06g、三口フラスコ内に仕込み、実施例1と同様の手順で縮合物を合成した。目的の縮合物は無色の粘性液体として得られ、収量67.77g、Mw=1130であった。得られた縮合物を5°Cにて1ヶ月間保管したが、Mwに変化は認められず、縮合物は保存安定性に優れていた。
【0078】
[縮合物を用いたネガ型レジストパターンの形成]
上記の縮合物5.67gをPGMEA5.30gに溶かし、実施例1と同様の光酸発生剤(米国BASF社製、商品名、Irgacure PAG121)を0.05g添加し、感光性組成物とした。当該感光性組成物を用いて、直径100mmのシリコン基板上に回転速度1000rpm、保持時間20秒でスピンコーターにて上記感光性組成物によるレジスト膜を成膜した後、シリコン基板を150℃にて1分間加熱しプリベークした。
【0079】
次いで、実施例1と同じ装置を用い、同様の手順で、レジスト膜に紫外光の照射を行ったところ、最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、基板を250°Cのオーブン内にて1時間、加熱焼成したところ、膜厚3.1μmのネガ型レジストパターン付きシリコン基板が得られた。シリコン基板上のレジストパターンにはクラックは認められず、パターンの鉛筆硬度はHを示し、良好なネガ型レジストパターンが得られた。
【0080】
実施例3
[縮合物の合成]
実施例1で用いたのと同様の三口フラスコに、アルコキシシランAとしてのSi(OEt)を17.23g、アルコキシシランBとしてのPhSi(OMe)を130.18g、アルコキシシランCとしてのMeSi(OMe)を9.93g仕込んだ。モル比は、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=10:80:10であった。
【0081】
次いで、イソプロパノールを118.20g、水を89.02g、酢酸を0.06g、三口フラスコ内に仕込み、実施例1と同様の手順で縮合物を合成した。的の縮合物は無色の粘性液体として得られ、収量93.43g、Mw=970であった。得られた縮合物を5°Cにて1ヶ月間保管したが、Mwに変化は認められず、縮合物は保存安定性に優れていた。
【0082】
[縮合物を用いたネガ型レジストパターンの形成]
上記の縮合物2.04をPGMEA、2.02gに溶かし、実施例1と同様の光酸発生剤(米国BASF社製、商品名、Irgacure PAG121)を0.02g添加し、感光性組成物とした。当該感光性組成物を用いて、直径100mmのシリコン基板上に回転速度1000rpm、保持時間10秒でスピンコーターにて上記感光性組成物によるレジスト膜を成膜した後、シリコン基板を150℃にて30秒間加熱しプリベークした。
【0083】
次いで、実施例1と同じ装置を用い、同様の手順で、レジスト膜に紫外光の照射を行ったところ、最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、基板を250°Cのオーブン内にて1時間、加熱焼成したところ、膜厚5.0μmのネガ型レジストパターン付きシリコン基板が得られた。シリコン基板上のレジストパターンにはクラックは認められず、パターンの鉛筆硬度はHを示し、良好なネガ型レジストパターンが得られた。
【0084】
比較例1
[縮合物の合成]
実施例1で用いたのと同様の三口フラスコに、アルコキシシランAとしてのSi(OEt)を126.09g、アルコキシシランBとしてのPhSi(OMe)を30.03g、アルコキシシランCとしてMeSi(OEt)を22.47g仕込んだ。モル比は、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=66:17:17であった。
【0085】
次いで、イソプロパノールを152.28g、水を114.64g、酢酸、0.07gを三口フラスコ内に仕込み、実施例1と同様の手順で縮合物を合成した。目的の縮合物が無色の粘性液体として得られ、収量66.01g、Mw=9363であった。得られた縮合物を5°Cにて保管したところ、1週間後には、縮合物のゲル化が認められ、ゲル体はテトラヒドロフランに対して不溶であり、Mwは測定できなかった。このように縮合物は保存安定性に劣っていた。
【0086】
[縮合物を用いたネガ型レジストパターンの形成]
上記の縮合物8.29gをPGMEA8.21gに溶かし、実施例1と同様の光酸発生剤(米国、BASF社製、商品名、Irgacure PAG121)を0.10g添加し、感光性組成物とした。当該感光性組成物を用いて、直径100mmのシリコン基板上に回転速度2500rpm、保持時間30秒でスピンコートにて上記感光性組成物によるレジスト膜を成膜した後、シリコン基板を150℃にて30秒間加熱しプリベークした。
【0087】
次いで、実施例1と同様の装置を用い、同様の手順で、レジスト膜に紫外光の照射を行ったところ、最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、基板を250°Cのオーブン内にて1時間、加熱焼成したところ、膜厚1.3μmのネガ型レジストパターン付き基板が得られたものの、パターンにはクラックが発生していた。このように、膜厚1.3μmのパターンをクラックなく形成できなかった。
【0088】
比較例2
[縮合物の合成]
実施例1で用いたのと同様の三口フラスコに、アルコキシシランAとしてのSi(OEt)を26.31g、アルコキシシランBとしてのPhSi(OMe)を23.97g、アルコキシシランCとしてのMeSi(OMe)を120.08g仕込んだ。モ
ル比は、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=10:10:80であった。
【0089】
次いで、イソプロパノールを138.55g、水を103.40g、酢酸を0.06g、三口フラスコに仕込み、実施例1と同様の手順で縮合物を合成した。目的の縮合物が無色の粘性液体として得られ、収量90.22g、Mw=1071であった。得られた縮合物を5°Cにて1ヶ月間保管したが、Mwに変化は認められなかった。
【0090】
[縮合物を用いたネガ型レジストパターンの形成]
上記の縮合物3.11gをPGMEA3.08gに溶かし、実施例1と同様の光酸発生剤(米国、BASF社製、商品名、Irgacure PAG121)を0.03g添加し、感光性組成物とした。
【0091】
当該感光性組成物を用いて、直径100mmのシリコン基板上に回転速度1000rpm、保持時間10秒でスピンコーターにて上記感光性組成物によるレジスト膜を成膜した後、シリコン基板を150°Cにて2分間加熱しプリベークした。
【0092】
次いで、実施例1と同様の装置を用い、同様の手順で、レジスト膜に紫外光の照射を行ったところ、最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、基板を250°Cのオーブン内にて1時間、加熱焼成したところ、膜厚5.4μmのパターン付き基板が得られた。基板上の薄膜にクラックは認められなかったものの、鉛筆硬度は7B以下を示し、極めて軟質な膜であり、所望の硬度は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の縮合物は、たとえば、液晶ディスプレイ、タッチパネル、有機EL(Electro Luminescence)といったディスプレイ分野の保護膜および絶縁膜に使用することができる。
【0094】
また、本発明の縮合物は、比較的シリコン含有量が多いことから、半導体製造におけるハードマスクや各種絶縁膜に利用できる。
【0095】
また、本発明の縮合物に高エネルギー線の作用により酸を発生する光酸発生剤および有機溶剤Aを添加し感光性組成物とし、当該組成物をガラス基板またはシリコン基板等の基体上に湿式塗布しレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィーにより、フィトマスクを用いて高エネルギー線を照射し照射部に酸を発生させ、照射部のレジスト膜の縮合をさらに促進させアルカリ不溶とした後、アルカリ水溶液で現像することで、フォトマスクのパターンが転写したネガ型レジストパターンとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):Si(OR
(式(1)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基である。)
で表されるアルコキシシランAと、
一般式(2):(R)Si(OR
(式(2)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランBと
一般式(3):(RSi(OR
(式(3)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランCを
モル比で表して、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70の範囲で縮合させたアルコキシシランの縮合物。
【請求項2】
一般式(1):Si(OR
(式(1)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基である。)
で表されるアルコキシシランAと、
一般式(2):(R)Si(OR
(式(2)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランBと
一般式(3):(RSi(OR
(式(3)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランCからなり、
モル比で表して、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70であるアルコキシシラン混合物Dに、水、水溶性の有機溶剤Bおよび酸触媒を加え縮合前混合物とする第1の工程と、
縮合前混合物を加水分解および縮合させ反応系に縮合物を生成させる第2の工程と、
反応系から酸触媒を水で抽出除去する工程および縮合物を非水溶性の有機溶剤Cで抽出して縮合物溶液を得る工程を有する第3の工程と、
縮合物溶液から有機溶剤Cを除去する第4の工程を有することを特徴とする、アルコキシシランの縮合物の製造方法。
【請求項3】
アルコキシシラン混合物Dが有するアルコキシ基のモル数の1.5倍以上、5倍以下のモル数の水を用いることを特徴とする、請求項2に記載の縮合物の製造方法。
【請求項4】
有機溶剤Bがアルコールであることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の縮合物の製造方法。
【請求項5】
酸触媒が酢酸であることを特徴とする、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の縮合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の縮合物、光酸発生剤および有機溶剤Aを含む感光性組成物。
【請求項7】
有機溶剤Aが極性溶剤であることを特徴とする、請求項6に記載の感光性組成物。
【請求項8】
一般式(1):Si(OR
(式(1)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基である。)
で表されるアルコキシシランAと、
一般式(2):(R)Si(OR
(式(2)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランBと
一般式(3):(RSi(OR
(式(3)中、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはフェニル基である。)
で表されるアルコキシシランCからなり、
モル比で表して、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=0〜70:30〜100:0〜70であるアルコキシシラン混合物Dに、水、水溶性の有機溶剤Bおよび酸触媒を加え縮合前混合物とする第1の工程と、
縮合前混合物を加水分解および縮合させ反応系に縮合物を生成させる第2の工程と、
反応系から酸触媒を水で抽出除去し工程および縮合物を非水溶性の有機溶剤Cで抽出して縮合物溶液を得る工程を有する第3の工程と、
縮合物溶液から有機溶剤Cを除去する第4の工程と
光酸発生剤および有機溶剤Aを加える第5の工程を有することを特徴とする、感光性組成物の製造方法。
【請求項9】
アルコキシシラン混合物Dが有するアルコキシ基のモル数の1.5倍以上、5倍以下のモル数の水を用いることを特徴とする、請求項8に記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項10】
有機溶剤Bがアルコールであることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項11】
酸触媒が酢酸であることを特徴とする、請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項6または請求項7に記載の感光性組成物を基体上に塗布して形成した膜に高エネルギー線を照射して、照射部に酸を発生させて照射部の縮合物の縮合をさらに促進させてアルカリ現像液不溶とした後、未照射部の膜を除去してネガ型パターンを形成することを特徴とする、ネガ型パターンの形成方法。
【請求項13】
照射する高エネルギー線が波長400nm以下の電磁波、または電子線であることを特徴とする、請求項12に記載のネガ型パターンの形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−254968(P2012−254968A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107161(P2012−107161)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】