説明

繊維強化複合材料用プリプレグおよびその成形体

【課題】工程通過性が良好で、成形加工性が良好なプリプレグとその製造方法を提供する。
【解決手段】強化繊維とエポキシ樹脂組成物からなるプリプレグであって、プリプレグの厚み方向の両表面側に、25℃における粘度が1.0×10〜1.0×10Pa・sかつ、ガラス転移温度が7〜15℃であるエポキシ樹脂組成物[A]が存在し、厚み方向の中心部に、25℃における粘度が5.0×10〜1.0×10Pa・sであるエポキシ樹脂組成物[B]が存在していることを特徴とするプリプレグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れたハンドリング性や工程通過性を備えつつ、コンポジットに積層したときに高強度、高弾性率かつ高靭性といった優れた力学特性を与えるプリプレグ、ならびにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やアラミド繊維などを強化繊維として用いた繊維強化複合材料の製造には、強化繊維に未硬化の熱硬化性樹脂組成物が含浸されたシート状中間基材であるプリプレグを用いる方法が一般的である。かかる方法では、プリプレグを積層した後、加熱により硬化させることで、繊維強化複合材料の成形物が得られる。このようにして製造された繊維強化複合材料はテニスラケット、ゴルフシャフト、釣竿等、様々な一般産業用途に利用されているが、高い比強度・比剛性を有するため、特に軽量化を必要とする航空機の構造材料として注目されている。
【0003】
プリプレグの積層法として、ハンドレイアップ法、ATL(Automated
Tape Laying)法、AFP(Automated Fiber
Placement)法などが挙げられるが、航空機のように大型複合材料を製造する場合、生産性の飛躍的な向上が可能となることから、ATL法やAFP法といった自動積層法が用いられる(例えば特許文献1参照)。中でもAFP法は、プリプレグを繊維方向にテープ状に切断したスリットテーププリプレグを積層する手法をとり、航空機胴体など比較的曲面の多い部品を製作することに適しており、プリプレグの欠損を最小限に抑えることが出来るため、近年多く用いられる方法となってきた。
【0004】
AFP法では、積層効率の向上が可能となることから、2〜13mm幅の細幅プリプレグを約十から数百本集束させるプロセスがあり、当該プリプレグをガイドに導きマシンヘッドに集結させてマンドレルに巻き付けるが、この際ガイドとテープが擦過することによって、樹脂などが脱落して、工程通過性が低下する問題があった。プリプレグに含浸させたエポキシ樹脂組成物のガイドへの脱落、付着を防ぐと同時に巻き付け時の接着性を確保するため、当該プロセスはプリプレグの解舒時にエポキシ樹脂組成物の粘度がより高くなる低温条件、例えば10℃以下において実施され、巻き付け時に温度を上昇させて貼り付けることが多い。
【0005】
AFPに使用されるプリプレグの製法には、基本的には炭素繊維を12000本や24000本などのいわゆるストランド単位で樹脂を含浸させ幅を一定に規定して巻き取るヤーンプリプレグ法と、一旦幅広のプリプレグを作成した後、所定の幅に幅方向にスリットして巻き取るスリットテープ法がある。前者の方法で細幅テーププリプレグを作成するときに、樹脂の軟化点を−5℃〜25℃であることを規定した特許が知られる。(特許文献2)ここでは、成形時のテープ幅を一定に保つことを目的として樹脂の軟化点を規定しており、ヤーンプリプレグを製造する含浸性に関して検討を行っているが、脱落物を防止するためには、軟化点の更なる検討や粘度調整が必要となる。
【0006】
また、特許文献3において、ヤーンプリプレグの巻取り性を改善し、ドレープ性を確保するため、使用する熱硬化性樹脂の粘度範囲を3000〜100000ポイズ、更に好ましくは、5000〜40000ポイズとすることが記載されている。特許文献4には熱硬化性樹脂の粘度については、含浸時における温度で流動性を有していることが必要であるとされ、流動性の尺度としての粘度の範囲としては、1〜100万センチポイズが好ましく、更に好ましくは、1〜1万センチポイズであるとされる。しかし、これらの発明では、脱落物を防止するために樹脂組成の調整をすると、ドレープ性や含浸性が悪化する問題がある。
【0007】
また、通常ヤーンプリプレグには常温での粘度が数Pa・sである樹脂が使用されるが、それらのプリプレグではプロセスでの樹脂脱落が多いため、カチオン重合性樹脂組成物を含むヤーンプリプレグにおいて、30℃における粘度が1×10〜1×10Pa・s、80℃における粘度が1〜300Pa・sであることを特徴とするヤーンプリプレグを用い、成形中あるいは成形後に樹脂を活性化する技術が開示されている(特許文献5)。この技術によれば、樹脂脱落に効果が認められるものの、樹脂を活性化するための特別な装置・条件が必要であった。
【0008】
さらにヤーンプリプレグにおいて、マトリックス樹脂のガラス転移点が−25℃〜20℃のエポキシ樹脂組成物を用い、エポキシ樹脂はテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンタイプの樹脂を構成成分として含み、マトリックスに均一に含有される熱可塑樹脂およびマトリックスに溶解しない熱可塑樹脂粒子などを含むことが好ましく、衝撃後の圧縮強度は、130MPa以上あることが好ましいことが開示されている。(特許文献6)
しかしながら、このような設計では、コンポジット特性に関しては、良好なものが得られるものの、AFP成形時の脱落物を防ごうとして、樹脂組成を調整するか、プロセス温度を調整すると、ヤーンプリプレグが硬くなりすぎて、マンドレルへの貼り付け性、形状追随性が不足し、逆にこれらを改良しようとすると、脱落物が増加する問題があった。
AFP法におけるガイドへのエポキシ樹脂組成物の付着量を低減させるためには、AFP法での使用温度における当該樹脂組成物の粘度は、高粘度であることが好ましい。一方で、ハンドリング性の観点からは、航空機のような大型な積層体の製造には多くの時間を費やすため、プリプレグの積層に必要となる適度なタック・ドレープ性に加えて、積層されたプリプレグ同士の接着を維持するために、優れたタックライフを有することが好ましい。さらには、プリプレグ製造において、加熱・加圧工程中でエポキシ樹脂組成物を流動させ、未含浸の強化繊維に含浸させる比較的高い温度領域では、当該樹脂組成物の粘度は、低粘度であることが好ましい。このような観点から、通常AFPプロセスに供するヤーンプリプレグは予め冷却されたり、低温雰囲気においてガイドを通して解舒され、脱落物を防ぐ努力を行った後、好ましくはプリプレグやマンドレルへの巻き付け性を改善するため加熱された後積層される。この際の冷却の温度は常温以下であり、好ましくは15℃以下、より好ましくは5〜10℃の温度が適用される。しかしながら、このような条件を選定したとしても、上述の樹脂粘度要件を同時に満足させることは従来の樹脂では必ずしも容易ではなく、従来のプリプレグでは、プリプレグに含浸させたエポキシ樹脂組成物のガイドへの脱落、付着量が多く、頻繁な清掃が必要となり、生産性が低下する問題があった。
【0009】
プリプレグの樹脂について、その厚み方向に樹脂組成を変更させたプリプレグについて、従来いくつかの検討が行われている。特許文献7では、ハニカムコキュア成形での高品位を目的としてエポキシ樹脂と、芳香族アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤およびノボラック系硬化剤からなる群より選ばれた1種または2種以上の硬化剤と、固形ゴムとからなるエポキシ樹脂組成物であって、80℃において振動周波数0.02Hzで測定した複素粘性率η0.02が5000ポイズ以上であり、振動周波数2Hzで測定した複素粘性率η2 と上記振動周波数0.02Hzで測定した複素粘性率η0.02との関係がlog η0.02−log η2 ≧0.5を満足することを特徴とするエポキシ樹脂組成物であり、表層と内層とで粘度の異なるエポキシ樹脂組成物からなるプリプレグであって、表層のエポキシ樹脂組成物の80℃において振動周波数0.02Hzで測定した複素粘性率η0.02が40000〜400000ポイズであり、内層のエポキシ樹脂組成物の80℃において振動周波数0.02Hzで測定した複素粘性率η0.02が5000ポイズ以上40000ポイズ未満であることを特徴とするプリプレグが開示されているが、この構成では本特許の目的である樹脂の脱落防止には効果がなかった。
【0010】
また、ヤーンプリプレグにおいて、補強繊維束に、Bステージの、10℃よりも高いガラス転移点をもつ熱硬化性樹脂が含浸され、その熱硬化性樹脂含浸繊維束に、Bステージの、ガラス転移点が−10〜10℃である熱硬化性樹脂がさらに含浸されていることを特徴とするヤーンプリプレグが提供され、巻取り性と、解舒性を両立させた工夫が見られる(特許文献8)。しかしこの構成では本特許の目的である樹脂の脱落防止には効果がなかった。
【0011】
さらに、プリプレグの粘着性と柔軟性を確保しつつ強化繊維の方向以外の強度、すなわち非繊維軸引張強度や衝撃後圧縮強度に対して顕著に改良のなされた構造体を与えるため、プリプレグの外層に樹脂を素材とする球状の微粒子を局在化させることが開示されている(特許文献9)。しかしこの構成では本特許の目的である樹脂の脱落防止には効果がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2008−517810号公報
【特許文献2】特開2000−191807号公報
【特許文献3】特開平09−012220号公報
【特許文献4】特開平09−169861号公報
【特許文献5】特開2007−297487号公報
【特許文献6】特開平11−130882号公報
【特許文献7】特開平05−239317号公報
【特許文献8】特開昭62−116638号公報
【特許文献9】特開平01−110537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は、優れたハンドリング性、工程通過性、積層性、コンポジット性能を維持したまま、AFP法におけるガイドへの樹脂の付着を低減した、プリプレグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、強化繊維とエポキシ樹脂組成物からなるプリプレグであって、プリプレグの厚み方向の両表面側に、25℃における粘度が1.0×10〜1.0×10Pa・sかつ、ガラス転移温度が7〜15℃であるエポキシ樹脂組成物[A]が存在し、厚み方向の中心部に、25℃における粘度が5.0×10〜1.0×10Pa・sであるエポキシ樹脂組成物[B]が存在していることを特徴とするプリプレグである。
【0015】
また、本発明のプリプレグに用いられるエポキシ樹脂組成物[A]の80℃における粘度は100〜1000Pa・sであることが好ましい。
さらに、本発明のプリプレグに用いられるエポキシ樹脂組成物[A]が、エポキシ当量が800〜3000g/eqである2官能エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂組成物[A]に含まれる全てのエポキシ樹脂100重量部に対して5〜25重量部含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明のプリプレグは、強化繊維が長手方向に一方向に配列したものであることが好ましい。
【0017】
また、上記のプリプレグを強化繊維の配列方向に平行に帯状に切断し、スリットテーププリプレグが提供される。
【0018】
さらに、スリットテーププリプレグをマンドレル上に積層し、成形してなる複合材料が提供される。
【0019】
さらに強化繊維に25℃における粘度が5.0×10〜1.0×10Pa・sであるエポキシ樹脂組成物[B]を含浸して1次プリプレグを作成し、その後連続して、または一旦巻き取った1次プリプレグを巻出して、25℃における粘度が1.0×10〜1.0×10Pa・sかつ、ガラス転移温度が7〜15℃であるエポキシ樹脂組成物[A]を両面から含浸させることを特徴とするプリプレグの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、プリプレグ表面層のエポキシ樹脂組成物[A]の粘度が充分高いため、AFP法におけるガイドへの樹脂の付着を低減させ、ひいては繊維強化複合材料の生産性を向上させることが可能となる。また、プリプレグ内層側に存在するエポキシ樹脂組成物[B]の粘度が充分低いため、優れたドレープ性を有する。さらには、該樹脂[B]がプリプレグの厚み方向の中心部に充分存在し、かつプリプレグの厚み方向の表面側に存在するエポキシ樹脂組成物[A]の粘度が充分高いため、該樹脂[A]の強化繊維への沈み込みを抑制し、優れたタックライフを有するため、ハンドリング性の良いプリプレグを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のプリプレグに用いるエポキシ樹脂組成物[A]は、25℃における粘度が、1.0×10〜1.0×10Pa・sであることを必須とする。より好ましくは、1.0×10〜1.0×10Pa・sである。1.0×10Pa・sより低いと、AFP法におけるガイドへの液状または半固形の樹脂の付着量が多くなり、清掃頻度が高く生産性が低下するのに加え、粘度が低いため、タック過剰による、貼りなおしの作業効率の悪化や、樹脂の沈み込みによるタックライフの悪化を招く。1.0×10Pa・sより高いと、ガイドへプリプレグを擦過させた際に、プリプレグ表面に樹脂粉が発生し、脱落した樹脂粉の清掃が必要となるため、生産性が低下するのに加え、粘度が高いため、タック・ドレープ性が低くハンドリング性も損なわれる。
【0022】
なお、ここでいう25℃における粘度は、動的粘弾性測定装置(例えば、レオメーターRDA2:レオメトリックス社製など)を用い、パラレルプレートを用い、20℃より昇温速度2℃/minで単純昇温し、歪み100%、周波数0.5Hz、プレート間隔 1mmで測定を行うことで得られる粘度曲線より、25℃での粘度を読みとったものをいう。
【0023】
また、プリプレグに用いるエポキシ樹脂組成物[A]は、ガラス転移温度が7〜15℃であることを必須とする。前記と同様の理由で、7℃より低いと、AFP法において樹脂が軟らかいままプロセスされるので、金属製ガイドへの樹脂の付着量が多くなるのに加え、低粘度による、タック過剰やタックライフの悪化になる。15℃より高いと、金属製ガイドへプリプレグを擦過させた際に、ガラス状であるプリプレグ樹脂が樹脂粉を発生するようになり、さらに高粘度によるタック・ドレープ性の悪化になる。ここで、AFPは、プリプレグの樹脂脱落を防ぐため、好ましくは常温より温度が低い条件、例えば15℃以下、より好ましくは10℃以下0℃以上でプロセスされる。0℃以下でAFPを行うことも可能であるが、かえって樹脂が硬くなりすぎて、固体の脱落物が増加したり、結露を防ぐ工夫が必要となる。
【0024】
なお、ここで言うガラス転移温度は、示差熱量計(DSC)を用いて、JIS K7121(1987)に基づいてもとめた中間点温度である。
【0025】
ハンドリング性、工程通過性、積層性とコンポジット特性を両立するためには、エポキシ当量が800〜3000g/eqである2官能エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂組成物[A]に含まれる全てのエポキシ樹脂100重量部に対して5〜25重量部配合することが好ましい。エポキシ等量が800g/eqより低いと、ガラス転移温度や粘度が低下し、3000g/eq以上だと成形体の耐熱性が低下するため好ましくない。
さらに、本発明のプリプレグに用いるエポキシ樹脂組成物[A]は、該樹脂を強化繊維に含浸してなるプリプレグにおいて、該樹脂がプリプレグの厚み方向の量表面側に局在化していることが必要である。
【0026】
また、本発明のプリプレグには、プリプレグに適度なドレープ性を与えるために、25℃におけるマトリックス樹脂の粘度が5.0×10〜1.0×10Pa・sであるエポキシ樹脂組成物[B]をプリプレグの厚み方向に中心部に存在せしめることが必要である。かかるエポキシ樹脂組成物[B]をプリプレグの厚み方向に中心部に存在せしめる手段としては、あらかじめエポキシ樹脂組成物[B]を離型紙などの上にコーティングした樹脂フィルム付きの離型紙シート(以降、単に「樹脂フィルム」と記すこともある)をまず作製し、次いで強化繊維の両側あるいは片側からその樹脂フィルム付きの離型紙シートの樹脂フィルム面を強化繊維側にして重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂組成物を含浸させた1次プリプレグを作成し、その後、1次プリプレグの両面からエポキシ樹脂組成物[A]を1次プリプレグを作成したときと同様にして含浸させてプリプレグを得る方法を好ましく用いることが出来る。なお、1次プリプレグは、一旦巻き取った後、巻出してエポキシ樹脂組成物[A]を含浸させても良いし、強化繊維にエポキシ樹脂組成物[B]を含浸させて1次プリプレグとした直後に引き続いてエポキシ樹脂組成物[A]を含浸させても良い。かかるプリプレグの形態とすることにより、プリプレグ厚み方向の中央部に存在するエポキシ樹脂組成物[B]の粘度が充分低いため、優れたドレープ性を得ることが出来る。粘度が5.0×10Pa・sより低いと、エポキシ樹脂組成物[A]がプリプレグの中心部に沈み込み易くなり、タックライフが損なわれ、粘度が1.0×10Pa・sを超えるとドレープ性が損なわれる。かかる観点から、樹脂組成物[B]の粘度は、5.0×10〜2.0×10Pa・sであると好ましい。また、ドレープ性とタックライフの観点から、プリプレグ厚み方向の中央部のエポキシ樹脂組成物[B]の存在範囲としてはプリプレグ厚みの30〜90%の範囲であることが好ましく、50〜70%の範囲であればより好ましい。
【0027】
さらに、成形性、特に1次プリプレグへの含浸性の観点から、エポキシ樹脂組成物[A]の80℃での粘度は100〜1000Pa・sであることが好ましい。より好ましくは300〜600Pa・sである。80℃での粘度が100Pa・sより低いと含浸性は良好であるが、樹脂が流動しやすく、樹脂フィルム付きの離型紙シートを重ねて加圧しプリプレグとするときに離型紙シートの端部から樹脂が流れでてプリプレグ化の加工性が悪化するため好ましくない。80℃での粘度が1000Pa・sより高いと、エポキシ樹脂組成物[A]を離型紙上に塗布した樹脂フィルムの間にプリプレグを挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して含浸した際に、樹脂フィルム上に樹脂が残る、いわゆる裏取られが発生し、プリプレグ化の加工性や品位が悪化するため好ましくない。
【0028】
なお、ここでいう80℃における粘度は、動的粘弾性測定装置(例えば、レオメーターRDA2:レオメトリックス社製など)を用い、パラレルプレートを用い、20℃より昇温速度2℃/minで単純昇温し、歪み100%、周波数0.5Hz、プレート間隔 1mmで測定を行うことで得られる粘度曲線より、80℃での粘度を読みとったものをいう。
【0029】
本発明のプリプレグに用いるエポキシ樹脂組成物[A]および[B]のエポキシ樹脂としては、特に、アミン類、フェノール類、炭素・炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましい。
【0030】
具体的には、アミン類を前駆体とするエポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類、アミノフェノールのグリシジル化合物類、グリシジルアニリン類、キシレンジアミンのグリシジル化合物などが挙げられる。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類は航空機構造材としての複合材料用樹脂として耐熱性に優れるため好ましい。
【0031】
フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂が挙げられる。特に、2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、高温側の粘度の低下率が比較的高いため、本発明でより好ましく用いることが出来る。
炭素・炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂としては、多環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
これらのエポキシ樹脂は、単独で用いても良いし、適宜配合して用いてもよい。グリシジルアミン型エポキシ樹脂と2官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の組み合わせは、耐熱性、耐水性および作業性を併せ持つために特に好ましい。
【0033】
本発明のプリプレグに用いるエポキシ樹脂組成物[A]および[B]の硬化剤としては、芳香族アミン類、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジドの単体または、混合系を挙げることができる。芳香族アミン類としては、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタキシレンジアミンなどが挙げられる。
【0034】
これらの硬化剤は、単独で用いても良いし、適宜配合して用いてもよい。芳香族アミン類は、樹脂硬化物に耐熱性を付与することが出来るために特に好ましい。添加量は、エポキシ樹脂のエポキシ基と芳香族アミン類の活性水素の化学量論において対エポキシ0.7〜1.2等量となるように添加することが耐熱性付与の面から好ましい。
【0035】
本発明のプリプレグに用いるエポキシ樹脂組成物[A]および[B]には、ゴム粒子や熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子や、エポキシ樹脂以外の液状熱硬化性樹脂、硬化促進剤、難燃剤、シランカップリング剤、可溶性熱可塑性樹脂を1種または2種以上含有させることが出来る。エポキシ樹脂組成物の粘度制御や、複合材料の耐衝撃性向上の面からも熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子や可溶性熱可塑性樹脂をより好ましく用いることが出来る。
【0036】
ゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が挙げられる。
【0037】
熱可塑性樹脂粒子としては、アクリル系粒子やポリアミド系粒子、ポリイミド系粒子、ポリエーテルイミド系粒子が好ましく用いられる。
【0038】
エポキシ樹脂以外の液状熱硬化性樹脂としては、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが使用できる。
【0039】
可溶性熱可塑性樹脂とは、エポキシ樹脂を配合するときに、通常温度を常温より高く設定して混練処理した際に、エポキシ樹脂に対してマクロ的に均一に混合される熱可塑性樹脂を指し、常温に戻したときに微細な相に分離するもの、均一相を保つものを含み、具体的には、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルスルホン、ボリビニルホルマール、ポリメタクリル酸メチルなどが好ましく用いられる。
【0040】
またエポキシ樹脂組成物[A]と[B]の比率は、1:9〜7:3の範囲が好ましく、特に3:7〜5:5の範囲が特に好ましい。1:9より[A]の比率が低いと、脱落防止効果が少なく、7:3より[A]の比率が多いと、プリプレグのドレープ性が損なわれる。
【0041】
本発明のプリプレグは、上記したエポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるものである。強化繊維としては、ガラス繊維、ケブラー繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、ホウ素繊維などが挙げられる。中でも比強度・比弾性率の点で炭素繊維や黒鉛繊維が好ましい。
【0042】
AFP法で用いられるプリプレグとしては、ヤーンプリプレグ法で製造されたものでも良いが、一方向に引き揃えた強化繊維束にエポキシ樹脂組成物を含浸させ、繊維方向に切断されたスリットテーププリプレグが幅精度に優れており好ましい。スリットテーププリプレグの幅は2〜150mmが好ましいが、複雑な形状の部材を製造するAFP法では、2〜15mmが好ましい。更には3〜7mmの細幅のスリットテーププリプレグがより好ましい。
【0043】
これらの樹脂をプリプレグ厚み方向の中心部(プリプレグ内層と記すこともある)とプリプレグの厚み方向にの両表面(プリプレグ外層と記すこともある)に特定の配置(すなわち、外層に主としてエポキシ樹脂組成物[A]を配し、内層に主としてエポキシ樹脂組成物[B]を配する)とするには、まず強化繊維にエポキシ樹脂組成物[B]を含浸させ、1次プリプレグを得た後、エポキシ樹脂組成物[A]を含浸させることによって作成することが出来る。その際、エポキシ樹脂組成物[A]と[B]の過度の混合を防ぐため、[A]を含浸させる際にその温度、張力、あるいはプリプレグの含浸圧力等を調整することが好ましい。特に[B]を含浸させるときに比較して、[A]を含浸させるときの温度、圧力を低く設定して、両樹脂の混合を防止することが更に好ましい。
【0044】
本発明の複合材料は、本発明のプリプレグを複数枚積層した積層体を、オーブン中で加熱成形して製造することが出来る。この際必要に応じて加圧しても良い。また、このプリプレグを強化繊維の配列方向に平行に帯状に切断したスリットテーププリプレグを複数本用意し、AFP法によってマンドレル上に積層し、周囲をバッグ材によってシールし、シールした積層体を真空脱気して外部から加熱加圧して成形して製造することが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。
【0046】
なお、本実施例で、25℃、80℃での粘度は、動的粘弾性測定装置(レオメーターRDA2:レオメトリックス社製)を用い、パラレルプレートを用い、昇温速度2℃/minで20℃より単純昇温し、歪み100%、周波数0.5Hz、プレート間隔 1mmで測定を行い、得られた粘度曲線より、25℃、80℃での粘度を読みとった。
また、タックは、100mm幅、200mm長さにカットし、フラットなアルミ板に両面テープで貼り付けたプリプレグの表面に、18mm×18mmのガラスを0.1kgの荷重で3秒間押しつけた後、30mm/分の速度で引き上げるときの力を測定した。測定環境は24℃、50RH%である。タックが1.8〜2.4Nのとき、プリプレグ同士の張り付き性は好適であるが、2.4Nより高いと引き剥がしにくくなり、1.8Nより低いと張り付きにくくなり、共に作業性が悪化した。
【0047】
また、タックライフは、測定初期のタックから、1.0N以上低下した日数とした。
【0048】
また、本実施例で、ガラス転移温度は、示差熱量計(DSC)を用いて、JIS K7121(1987)に基づいてもとめた中間点温度を用いた。
【0049】
また、AFP法で1/4インチ幅にスリットしたスリットテーププリプレグを使用した際、プリプレグに含浸させたエポキシ樹脂組成物がガイドへ脱落するが、連続使用を続けると、樹脂の脱落物がガイド上に堆積し、スリットテーププリプレグに掛かる張力が大きくなる。これにより、スリットテーププリプレグが屈曲したり、スリットテーププリプレグの幅が細くなった際に、AFP装置の清掃を実施した。
【0050】
本実施例において、プリプレグは以下のように作製した。エポキシ樹脂組成物[A]、[B]をそれぞれニーダーで混練後、シリコーンを塗布した離型紙上に混練したエポキシ樹脂組成物[A]、[B]を均一に塗布して、樹脂フィルムとした。エポキシ樹脂組成物[B]が塗布された樹脂フィルムの間に均一に引き揃えた炭素繊維(東レ社製:T800SC−24K−10E)を挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して、炭素繊維にエポキシ樹脂組成物[B]が含浸した1次プリプレグを得た(炭素繊維重量190g/cm2、樹脂含有率25%)。1次プリプレグはエポキシ樹脂組成物[B]を含浸した後、両方の離型紙を剥離した。次に、エポキシ樹脂組成物[A]が塗布された樹脂フィルムの間に1次プリプレグを挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して、1次プリプレグにエポキシ樹脂組成物[A]が含浸したプリプレグを得た(炭素繊維重量190g/cm2、樹脂含有率35%)。この際、エポキシ樹脂組成物[A]を含浸させる条件は、エポキシ樹脂組成物[B]との混合を出来るだけ避けるため、エポキシ樹脂組成物[B]の含浸条件よりは低圧に設定し、エポキシ樹脂組成物[A]がプリプレグの両表面側に局在化するようにした。当該プリプレグは、一方の離型紙を剥離した後、ロール状に巻き取った。
(実施例1)
エポキシ樹脂組成物[A]として、ELM434(住友化学社製:エポキシ当量120g/eq)を80重量部、jER1055(ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量800〜900g/eq)を20重量部、4,4’−DDS(住友化学社製)を30重量部、スミカエクセル(登録商標)5003P(住友化学社製)を14重量部、MP1001(日本合成ゴム社製)を50重量部用いた。
エポキシ樹脂組成物[B]として、ELM434を80重量部、jER819(ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量180〜220g/eq)を20重量部、4,4’−DDSを30重量部、スミカエクセル(登録商標)5003Pを5重量部用いた。
エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、3×10Pa・s、80℃での粘度は、500Pa・s、ガラス転移温度は10℃であった。また、エポキシ樹脂組成物[B]の25℃での粘度は、2×10Pa・sであった。
【0051】
当該プリプレグは、タックが2.0Nで、タックライフは10日以上と、共に良好であった。室温でのドレープ性は良好であった。また、当該プリプレグを所定幅にスリットし、16本をあわせてAFP法で2000m連続使用した際の清掃回数は1回と良好であった。
(実施例2)
エポキシ樹脂組成物[A]として、スミカエクセル(登録商標)5003Pを14重量部から11重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、1×10Pa・s、80℃での粘度は、250Pa・s、ガラス転移温度は9℃となった。
【0052】
当該プリプレグは、タックが2.4Nと良好であったが、プリプレグの表面側により柔らかい樹脂が存在するため、プリプレグの表面側の樹脂がプリプレグの内層に沈み込むため、タックライフは9日間と若干悪化したが、問題ないレベルであった。室温でのドレープ性は良好であった。また、プリプレグ表面側により柔らかい樹脂が存在するため、樹脂の脱落量が多くなったが、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際の清掃回数は2回と良好であった。
(実施例3)
エポキシ樹脂組成物[A]として、スミカエクセル(登録商標)5003Pを14重量部から16重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、2×10Pa・s、80℃での粘度は、850Pa・s、ガラス転移温度は11℃となった。
【0053】
当該プリプレグは、タックライフが10日以上と良好であったが、プリプレグ表面側により硬い樹脂が存在するため、タックが1.5Nとやや低く、若干貼り付きにくくなった(作業性が若干低下するが、使用には問題ないレベルであった)。室温でのドレープ性は良好であった。また、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際には、プリプレグ表面に発生した樹脂粉が脱落したが、清掃回数は2回と良好であった。
(実施例4)
エポキシ樹脂組成物[A]として、スミカエクセル(登録商標)5003Pを14重量部から9重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、2×10Pa・s、80℃での粘度は、50Pa・s、ガラス転移温度は8℃となった。
【0054】
エポキシ樹脂組成物[A]の80℃での粘度が低いため、エポキシ樹脂組成物[A]が塗布された樹脂フィルムの間に1次プリプレグを挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して含浸した際に、樹脂フィルムの端部から樹脂が流れでてプリプレグ化の加工性がやや悪化したものの、問題のないプリプレグが得られた。
【0055】
当該プリプレグは、プリプレグ表面側により柔らかい樹脂が存在するため、タックが3.0Nとやや高く、貼り直し作業性が若干悪化した(作業性が若干悪化するが、使用には問題ないレベルであった)。また、プリプレグ表面側の樹脂がプリプレグ内層に沈み込むため、タックライフは6日間と実施例2よりもやや悪化した。室温でのドレープ性は良好であった。また、プリプレグ表面側により柔らかい樹脂が存在するため、樹脂の脱落量が多くなり、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際の清掃回数は4回と若干悪化したが、AFP操業上問題ないレベルであった。
(実施例5)
エポキシ樹脂組成物[A]として、スミカエクセル(登録商標)5003Pを14重量部から18重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、9×10Pa・s、80℃での粘度は、1100Pa・s、ガラス転移温度は12℃となった。
【0056】
エポキシ樹脂組成物[A]の80℃での粘度が高いため、エポキシ樹脂組成物[A]が塗布された樹脂フィルムの間に1次プリプレグを挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して含浸した際に、樹脂フィルム上に樹脂が残る、裏取られが発生し、プリプレグ化の加工性や品位がやや悪化したものの、問題のないプリプレグが得られた。
【0057】
当該プリプレグは、タックライフが10日以上と良好であったが、プリプレグ表面側により硬い樹脂が存在するため、タックが1.2Nと低く、貼り付きにくくなった(作業性が低下するが、使用には問題ないレベルであった)。室温でのドレープ性は良好であった。また、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際には、プリプレグ表面に発生した樹脂粉が脱落し、清掃回数は3回と若干悪化したが、AFP操業上問題ないレベルであった。
(実施例6)
エポキシ樹脂組成物[A]として、ELM434を80重量部から60重量部へ、jER1055を20重量部から40重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、1×10Pa・s、80℃での粘度は、600Pa・s、ガラス転移温度は14℃となった。
【0058】
当該プリプレグは、タックライフが10日以上と良好であったが、プリプレグ表面側により硬い樹脂が存在するため、タックが1.6Nとやや低く、若干貼り付きにくくなった(作業性が若干低下するが、使用には問題ないレベルであった)。室温でのドレープ性は良好であった。また、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際には、プリプレグ表面に発生した樹脂粉が脱落したが、清掃回数は2回と良好であった。
(実施例7)
エポキシ樹脂組成物[A]として、ELM434を80重量部から97重量部へ、jER1055を20重量部から3重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、5×10Pa・s、80℃での粘度は、120Pa・s、ガラス転移温度は7℃となった。
【0059】
当該プリプレグは、プリプレグ表面側により柔らかい樹脂が存在するため、タックが2.9Nとやや高く、貼り直し作業性が若干悪化した(作業性が若干悪化するが、使用には問題ないレベルであった)。また、プリプレグ表面側の樹脂がプリプレグ内層に沈み込むため、タックライフは7日間と実施例1よりもやや悪化した。室温でのドレープ性は良好であった。また、プリプレグ表面側により柔らかい樹脂が存在するため、樹脂の脱落量が多くなり、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際の清掃回数は3回と若干悪化したが、AFP操業上問題ないレベルであった。
(実施例8)
エポキシ樹脂組成物[A]として、jER1055を20重量部からHM−101(大日本インキ化学工業社製:エポキシ当量3200−3900)を20重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、9×10Pa・s、80℃での粘度は、500Pa・s、ガラス転移温度は12℃となった。
【0060】
当該プリプレグは、タックが1.8Nで、タックライフは10日以上と、共に良好であった。室温でのドレープ性は良好であった。また、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際の清掃回数は1回と良好であったが、エポキシ当量が大きくなったため、複合材料の耐熱性が低下した。
(実施例9)
エポキシ樹脂組成物[A]として、jER1055を20重量部からjER819を20重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、8×10Pa・s、80℃での粘度は、120Pa・s、ガラス転移温度は8℃となった。
【0061】
当該プリプレグは、プリプレグ表面側により柔らかい樹脂が存在するため、タックが2.7Nとやや高く、貼り直し作業性が若干悪化した(作業性が若干悪化するが、使用には問題ないレベルであった)。また、プリプレグ表面側の樹脂がプリプレグ内層に沈み込むため、タックライフは7日間と実施例1よりもやや悪化した。室温でのドレープ性は良好であった。また、プリプレグ表面側により柔らかい樹脂が存在するため、樹脂の脱落量が多くなり、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際の清掃回数は4回と若干悪化したが、AFP操業上問題ないレベルであった。
(実施例10)
エポキシ樹脂組成物[A]として、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、スミカエクセル(登録商標)5003Pを5重量部から2重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[B]の25℃での粘度は、6×10Pa・sとなった。
【0062】
当該プリプレグは、タックが2.0Nと良好であったが、プリプレグ内面に軟らかい樹脂が存在し、樹脂の沈み込みが促進されるため、タックライフは7日と実施例1よりもやや悪化した。室温でのドレープ性は良好であった。また、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際には、樹脂の沈み込みにより、プリプレグ内面にある軟らかい樹脂が表面に存在し易くなるため、樹脂の脱落量が多くなったが、清掃回数は2回と良好であった。
(実施例11)
エポキシ樹脂組成物[A]として、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、スミカエクセル(登録商標)5003Pを5重量部から2重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[B]の25℃での粘度は、8×10Pa・sとなった。
【0063】
当該プリプレグは、タックが2.0Nで、タックライフは10日以上と、共に良好であった。室温でのドレープ性は、プリプレグ内面に硬い樹脂が存在するため、硬く若干巻きつきにくくなったが、問題ないレベルであった。また、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際の清掃回数は1回と良好であった。
(比較例1)
エポキシ樹脂組成物[A]として、スミカエクセル(登録商標)5003Pを14重量部から5重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、2×10Pa・s、80℃での粘度は、20Pa・s、ガラス転移温度は7℃となった。
【0064】
エポキシ樹脂組成物[A]の80℃での粘度が低いため、エポキシ樹脂組成物[A]が塗布された樹脂フィルムの間に1次プリプレグを挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して含浸した際に、樹脂フィルムの端部から樹脂が流れでてプリプレグ化の加工性がやや悪化したものの、プリプレグを作製することができた。
【0065】
当該プリプレグは、プリプレグ表面側により柔らかい樹脂が存在するため、タックが3.6Nと高く、貼り直し作業が出来ない問題が生じることがあった。また、プリプレグ表面側の樹脂がプリプレグ内層に沈み込むため、タックライフは室温で3日間と実施例1よりもかなり悪化し、4日程度経過すると、プリプレグ同士を貼り付ける事が困難となる問題が生じた。室温でのドレープ性は良好であった。また、プリプレグ表面側により柔らかい樹脂が存在するため、樹脂の脱落量が多くなり、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際の清掃回数は10回と悪化したため、操業性が大きく低下し、AFP法での適用は困難であった。
(比較例2)
エポキシ樹脂組成物[A]として、ELM434を80重量部から60重量部へ、jER1055を20重量部からjER819を40重量部へ、スミカエクセル(登録商標)5003Pを14重量部から5重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、6×10Pa・s、80℃での粘度は、90Pa・s、ガラス転移温度は6℃となった。
【0066】
エポキシ樹脂組成物[A]の80℃での粘度が低いため、エポキシ樹脂組成物[A]が塗布された樹脂フィルムの間に1次プリプレグを挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して含浸した際に、樹脂フィルムの端部から樹脂が流れでてプリプレグ化の加工性がやや悪化したものの、プリプレグを作製することができた。
【0067】
当該プリプレグは、タックが2.2Nで、タックライフは10日以上と、共に良好であった。室温でのドレープ性は良好であった。また、プリプレグ表面側に存在する樹脂のガラス転移温度が低いため、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際の樹脂が柔らかいため、樹脂の脱落量が多くなり、清掃回数は8回と悪化したため、操業性が大きく低下し、AFP法での適用は困難であった。
(比較例3)
エポキシ樹脂組成物[A]として、ELM434を80重量部から60重量部へ、jER1055を20重量部からjER819を20重量部とHM−101を20重量部へ、スミカエクセル(登録商標)5003Pを14重量部から13重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、2×10Pa・s、80℃での粘度は、580Pa・s、ガラス転移温度は17℃となった。
【0068】
当該プリプレグは、タックライフが10日以上であったが、プリプレグ表面側により硬い樹脂が存在するため、タックが1.4Nと低く、貼り付きにくくなった(作業性が低下するが、使用には問題ないレベルであった)。室温でのドレープ性は良好であった。また、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際には、プリプレグ表面に発生した樹脂粉が脱落し、清掃回数は6回と悪化したため、操業性が大きく低下し、AFP法での適用は困難であった。
(比較例4)
エポキシ樹脂組成物[A]として、スミカエクセル(登録商標)5003Pを14重量部から20重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[A]の25℃での粘度は、3×10Pa・s、80℃での粘度は、1350Pa・s、ガラス転移温度は13℃となった。
【0069】
エポキシ樹脂組成物[A]が硬すぎるため、当該樹脂を均一に塗布して、樹脂フィルムとする、樹脂フィルム製造工程での使用が出来なかった。
(比較例5)
エポキシ樹脂組成物[A]として、実施例1と同様の組成のものを用い、エポキシ樹脂組成物[B]として、スミカエクセル(登録商標)5003Pを5重量部から7重量部とした他は、実施例1と同様の組成のものを用いた。結果として、エポキシ樹脂組成物[B]の25℃での粘度は、5×10Pa・sとなった。
【0070】
当該プリプレグは、タックが2.0Nで、タックライフは10日以上と、共に良好であった。室温でのドレープ性は、プリプレグ内面に硬い樹脂が存在するため、硬く巻きつきにくくなり、曲率の高い面に積層したプリプレグが剥がれて、はね上がる問題が生じることがあった。また、当該プリプレグを同様にAFP法で2000m連続使用した際の清掃回数は1回と良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維とエポキシ樹脂組成物からなるプリプレグであって、プリプレグの厚み方向の両表面側に、25℃における粘度が1.0×10〜1.0×10Pa・sかつ、ガラス転移温度が7〜15℃であるエポキシ樹脂組成物[A]が存在し、厚み方向の中心部に、25℃における粘度が5.0×10〜1.0×10Pa・sであるエポキシ樹脂組成物[B]が存在していることを特徴とするプリプレグ。
【請求項2】
エポキシ樹脂組成物[A]の80℃における粘度が100〜1000Pa・sである請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
エポキシ樹脂組成物[A]が、エポキシ当量が800〜3000g/eqである2官能エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂組成物[A]に含まれる全てのエポキシ樹脂100重量部に対して5〜25重量部含む請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
強化繊維が長手方向に一方向に配列した請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリプレグを強化繊維の配列方向に平行に帯状に切断したスリットテーププリプレグ。
【請求項6】
請求項5に記載のスリットテーププリプレグをマンドレル上に積層し、硬化してなる複合材料。
【請求項7】
強化繊維に25℃における粘度が5.0×10〜1.0×10Pa・sであるエポキシ樹脂組成物[B]を含浸して1次プリプレグを作成し、その後連続して、または一旦巻き取った1次プリプレグを巻出して、25℃における粘度が1.0×10〜1.0×10Pa・sかつ、ガラス転移温度が7〜15℃であるエポキシ樹脂組成物[A]を両面から含浸させることを特徴とするプリプレグの製造方法。

【公開番号】特開2010−229211(P2010−229211A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75885(P2009−75885)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】