説明

繰出装置

【課題】より確実に圃場に点播することができる繰出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】粒状体60を収容するホッパー5と、該ホッパー5の下部開口近傍に回転可能に設けられると共に外周部に繰出凹部41aを有する繰出ロール41と、該繰出ロール41下方の落下位置まで繰出ロール41の外周を覆うことにより粒状体60が前記繰出凹部41aから落下しないように案内するガイド部50とを設けた繰出装置7において、該ガイド部50を、前記繰出ロール41の外周部に摺接する低摩擦層51と、弾性変形が可能な中間緩衝層52と、繰出時に発生する応力によっても弾性変形しない剛性を有するベース部53と、により構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出ロールを回転させることにより一定量ずつ肥料や種子や薬剤等の粒状体を繰り出す繰出装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トラクタ等の走行車両の後部に施肥播種機を取り付け、該施肥播種機においては、肥料、種子、薬剤等を充填するホッパーの下部に繰出装置を設け、該繰出装置中の繰出ロールを、トラクタの走行に合わせて回転させることで、肥料、種子、薬剤等の粒状体を一定量ずつ放出するようにしている。そして、このような施肥播種機では、ホッパー内の粒状体を、ホッパー上部から繰出ロールの繰出凹部に落入させ、繰出ロールの回転と共に下方に搬送して一定量ずつ繰り出すという技術が公知となっている。このような構成の繰出装置に関しては、特許文献1において種子の落下間隔にばらつきが生じないように繰出装置下部のガイドロートの内部に垂直面を設ける等の技術が開示されている。
また、特許文献2及び特許文献3においては繰出ロールの外周部にガイド板を設けることで、播種精度を向上するという技術が開示されている。
また、特許文献4においては回転可能なガイド体を用いて、種子を安定的に繰り出すという技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−125615号公報
【特許文献2】実公平3−79612号公報
【特許文献3】特開平9−168317号公報
【特許文献4】特開2005−58060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献2及び特許文献3に開示されているようなガイド板を設けた繰出装置においては、ガイド板が板状の一体構造で形成されているために種子が繰出ロールとガイド板の間に噛み込んでしまうと、繰出ロールとガイド板との間に隙間が発生し繰出凹部から搬送途中の種子がこぼれ落ちることがあった。つまり、ガイド板のガイド機能が十分に働かず種子の落下間隔にばらつきが生じてしまっていたのである。さらに種子が大きなものになるほど上記のような問題が起こりやすくなり、点播間隔を一定にすることが難しくなり条播状態となってしまうのである。
また、条播になった場合、苗が隙間を持たずに過密状態で成育することとなり、風を通さず空気が澱みやすくなる。その結果、湿気が溜まる原因となり、病気が発生しやすくなるのである。さらに一部で病気や害虫が発生した際にも、隣接する苗に伝染しやすいため広範囲に広がってしまうという課題がある。そのため精度良く点播を行う必要があるのである。
そこで、本発明においては、精度良く圃場に点播することができる繰出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、粒状体を収容するホッパーと、該ホッパーの下部開口近傍に回転可能に設けられると共に外周部に繰出凹部を有する繰出ロールと、該繰出ロール下方の落下位置まで繰出ロールの外周を覆うことにより粒状体が前記繰出凹部から落下しないように案内するガイド部とを設けた繰出装置において、該ガイド部を、前記繰出ロールの外周部に摺接する低摩擦層と、弾性変形が可能な中間緩衝層と、繰出時に発生する応力によっても弾性変形しない剛性を有するベース部と、により構成したものである。
【0006】
請求項2においては、前記ホッパーの下部開口近傍から前記ガイド部の間にブラシ部を設け、該ブラシ部の先端を前記繰出ロールの外周部に摺接させるものである。
【0007】
請求項3においては、前記ブラシ部の上部に、繰出ロールの外周部に当接する擦り切り部を設け、該擦り切り部を前記繰出ロールの外周部に対して耐磨耗性のある部材で構成したものである。
【0008】
請求項4においては、前記繰出凹部の相対する断面角部のうち少なくとも一方に、丸み又は面取りを施したものである。
【0009】
請求項5においては、前記繰出凹部が、前記繰出ロールの外周部に等間隔に配置されるとともに、前記繰出凹部間の円弧長が繰出凹部の円弧長の略2倍以上になるように規制したものである。
【0010】
請求項6においては、前記繰出装置の下部に、風防手段を設け、該風防手段の本体または表面を、滑り性及び撥水性の良い部材で構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、粒状体を収容するホッパーと、該ホッパーの下部開口近傍に回転可能に設けられると共に外周部に繰出凹部を有する繰出ロールと、該繰出ロール下方の落下位置まで繰出ロールの外周を覆うことにより粒状体が前記繰出凹部から落下しないように案内するガイド部とを設けた繰出装置において、該ガイド部を、前記繰出ロールの外周部に摺接する低摩擦層と、弾性変形が可能な中間緩衝層と、繰出時に発生する応力によっても弾性変形しない剛性を有するベース部と、により構成したことにより繰出ロールとガイド部との間に粒状体が噛み込んだ際に繰出凹部からの種子の落下を防ぐことができる。そのため従来よりも点播精度が向上し、点播間隔を一定にすることができる。
【0013】
請求項2においては、前記ホッパーの下部開口近傍から前記ガイド部の間にブラシ部を設け、該ブラシ部の先端を前記繰出ロールの外周部に摺接させることにより、種子等の粒状体の繰出凹部への充填を効率よく行うことができる。
【0014】
請求項3においては、前記ブラシ部の上部に、繰出ロールの外周部に当接する擦り切り部を設け、該擦り切り部を前記繰出ロールの外周部に対して耐磨耗性のある部材で構成したことにより、前記中間緩衝層を設けた場合の粒状体の噛み込みを低減することが可能となる。また従来のブラシだけを用いたものよりも繰出ロールに対する擦り切り性能を向上させることができるため、種子等の粒状体の繰出凹部への充填を効率よく行うことができる。
【0015】
請求項4においては、前記繰出凹部の相対する断面角部のうち少なくとも一方に、丸み又は面取りを施したことにより、繰出凹部において種子等の粒状体の擦り切りや出入りがスムーズにできる。
【0016】
請求項5においては、前記繰出凹部が、前記繰出ロールの外周部に等間隔に配置されるとともに、前記繰出凹部間の円弧長が繰出凹部の円弧長の略2倍以上になるように規制したことにより、点播精度が向上し、点播間隔を一定することができる。
【0017】
請求項6においては、前記繰出装置の下部に、風防手段を設け、該風防手段の本体または表面を、滑り性及び撥水性の良い部材で構成したことにより、種子への風の影響や泥はねによる種子等の粒状体の落下間隔のばらつきを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る繰出装置を搭載した施肥播種機の全体的な構成を示した全体側面図、図2は本発明に係る繰出装置を示した側面一部図、図3は同じく断面側面図、図4は本発明に係る繰出ロールの断面側面図、図5は本発明に係る風防部を備えた湛水点播直播機の右斜め背面からの斜視図、図6は同じく背面からの斜視図、図7は湛水点播直播機の繰出装置下部からみた斜視図、図8は本発明に係る風防部を備えた繰出装置の断面側面図、図9は後端部が開放された風防部を備えた繰出装置の断面側面図、図10は後端部が開放された風防部の斜視図、図11は従来の繰出装置の断面側面図である。
【実施例1】
【0019】
本発明に係る繰出装置の実施例として、施肥播種機に搭載されるロールタイプの繰出装置の例を示す。但し、本発明は施肥機や播種機や薬剤散布機等にも適用でき、繰出装置を具備するものであれば特に限定するものではない。
【0020】
図1にて本発明の施肥播種機1の全体構成から説明する。なお、以下の説明ではトラクターの進行方向である図1中の矢印Aの方向を前方とする。施肥播種機1は前上部に設けた取付フレーム35がトラクター等の走行車両の後部に設けたツールバーに装着され、左右に位置調整可能とされている。該取付フレーム35の後部に播種フレーム36が固設され、該播種フレーム36の後部に施肥用の繰出装置6が固設され、該繰出装置6の後部に播種用の繰出装置7が固定され、該繰出装置6・7の上部にホッパー4・5がそれぞれ脱着可能に設けられている。繰出装置6の下部にはガイドロート8が配設され、ガイドロート8下端にガイドパイプ10が連通されている。該ガイドパイプ10は、図1の側面手前かつ前方に湾曲し、その下端は作溝ディスク19の回転軸の略前方側面側に位置している。一方、繰出装置7の下部にはガイドロート9が配設され、該ガイドロート9の下端に導管12が連通されている。該導管12の下端はガイドパイプ11に挿入されている。ガイドパイプ11はローラーフレーム17に固定されており、ガイドパイプ11下端は作溝ディスク19・19間に挿入している(以下播種フレーム36、ホッパー4・5、繰出装置6・7、ガイドロート8・9、ガイドパイプ10、導管12等トラクターの後部に接続固定される部分を総称して「接続部2」とする)。
【0021】
前記取付フレーム35の前面より下方に支持フレーム13が垂設され、該支持フレーム13の下部には平行リンク15・16が枢支軸31・32により回動自在に枢支され、下端に前記ガイドパイプ10下端を固定するための支持杆37が固定されている。前記平行リンク15・16の他端は後方へ延出されてローラーフレーム17の前部に枢支軸33・34により回動自在に枢支されている。該ローラーフレーム17の前端には支持杆18が固設され、下端に作溝ディスク19を平面視V字状に回転自在に軸支している。そして、ローラーフレーム17より斜め下方に突設したアーム20の下端で作溝ディスク19の後部に覆土ディスク21を付設し、更に、ローラーフレーム17の前後中途部にローラーアーム22の前端を回動自在に枢支して後下方に突出し、該ローラーアーム22後部に鎮圧ローラー23を装着している(作溝ディスク19、覆土ディスク21、鎮圧ローラー23、ローラーフレーム17等平行リンク15・16の回動により圃場の凹凸に追随する部分を総称して「接地部3」とする)。
【0022】
前記取付フレーム35後面より、付勢アーム14が後方へ突設され、該付勢アーム14とローラーフレーム17との間に付勢部材となる圧縮バネ24・38を外嵌した支持ロッド39が介装されている。該支持ロッド39の下端は支点軸25により枢支され、上部は支点軸26により摺動自在かつ回動自在に支持されている。こうして、接地部3は略一定圧で圃場に押し付けて、圃場の凹凸に追随しつつ付勢されるようにしている。
【0023】
このような構成において、作業時にはホッパー4に粉粒状肥料を、ホッパー5に粒状体の一例である種子60を充填し、トラクター後部に施肥播種機1を装着してトラクターを前進させると、作溝ディスク19により圃場には断面V字状の溝ができ、図示しない駆動機構により繰出装置6・7が駆動されて、ホッパー4から繰出装置6、ガイドロート8、ガイドパイプ10を経て圃場に形成された溝から所定距離離れた位置に肥料が投下される。一方、ホッパー5から繰出装置7、ガイドロート9、導管12、ガイドパイプ11を経て種子60が該溝に投下され、覆土ディスク21により覆土され、覆土ローラー23により鎮圧される。
【0024】
次に、繰出装置の構成について図2、図3を用いて説明する。なお、繰出装置6・7は略同じ構成となっているので、種子の繰出装置7について説明する。繰出装置7は繰出ケース40と繰出ロール41と繰出駆動軸42とブラシ部43よりなり、繰出ケース40は上方及び下方を開放して、上部にホッパー5の下部を連通し、下部にロート9を連通接続している。繰出ケース40の上下前後略中央に繰出駆動軸42が左右水平方向に貫通され、該繰出駆動軸42上に繰出ロール41が外嵌されて、該繰出ロール41は繰出ケース40内に収納されている。
【0025】
前記繰出ロール41の外周面には一定間隔をおいて繰出凹部41a・41a・・・(本実施例では4箇所)が形成されている。また、繰出ケース40の後面より繰出ロール41の中心に向かう如くブラシ部43が挿入されて、ブラシ部43の先端は繰出ロール41の外周面に接するように配設される。そして、ブラシ部43の下部から繰出ロール41最下位置近傍までを覆うようにガイド部50を配設している。
【0026】
このような構成において、繰出駆動軸42の回転駆動により繰出ロール41を矢印方向に回転すると、ホッパー5内に充填された種子60は繰出凹部41a内に嵌入し、この嵌入した状態で回転してブラシ部43によって、繰出凹部41a内に嵌入できない余分な種子60は除かれ、繰出凹部41a内に嵌入した種子60のみ下方に搬送される。そして、ブラシ部43及びガイド部50を通過すると、種子60の自重により自然落下して、ロート9上に落ち、導管12、ガイドパイプ11を介して圃場面に落下するのである。
【0027】
次に、本発明に係る繰出装置7の特徴について詳述する。
【0028】
図3に示すように、繰出ロール41の外周部には、繰出凹部41aが一定間隔を置いて複数形成されており(本実施例では4箇所)、繰出ロール41を回転させることで、前記繰出凹部41aが上方の粒状体貯溜空間に臨む位置から下方の粒状体排出空間に向けて回動する際に、該繰出凹部41a内に入り込み貯溜された種子60を下方に搬送して繰り出されるように構成している。
【0029】
前記繰出ロール41は略円筒状であり、繰出駆動軸42上に繰出ロール41の軸心部が取り付けられており、繰出ケース40に回転自在に支持され着脱可能としている。またブラシ部43が繰出ケース40に固定されて繰出駆動軸42に対して略水平位置にある繰出ロール41の外周面に当接するように配置されている。種子60を繰出凹部41a内に収めて繰出ロール41下方の落下位置まで安定して搬送するためのガイド機能をもたせるように前記ブラシ部43の下部から前記繰出ロール41最下位置近傍まで覆うガイド部50を配置している。該ガイド部50は、繰出ロール41に摺接している低摩擦層51を備え、その下部には発泡体で構成した中間緩衝層52があり、それらを支持するために剛性を持ったベース部53より構成されている。こうしてホッパー5内の種子60は上部の開放された部分より繰出ロール41の繰出凹部41a内に入り、繰出ロール41が回転することにより、まず擦り切り部44で繰出凹部41a内に入ることができない余分な種子60を除き、続いてブラシ部43で種子60を繰出凹部41a内にきれいに収納するように表面をならして繰出凹部41a内の種子60のみ下方へ搬送されてロート9上に落ち、導管12、ガイドパイプ11を介して圃場面に繰り出される。
【0030】
このような構成において、まず、低摩擦層51はガイド部50が常に繰出ロール41と接触することから、繰出ロール41の表面摩耗を防ぐために繰出ロール41の表面に接するガイド部50及びその近傍に設けた滑性のある樹脂等で形成した表面層である。これにより繰出ロール41の表面摩耗を防ぐだけではなく、繰出凹部41a内に種子60が入らずに繰出ロール41と低摩擦層51との間に種子60を噛み込んだ場合においても種子60が抵抗とならずに繰出ロール41が滑らかに回転することができる。本実施例では低摩擦層51の材質として超高分子ポリエチレン(商標名ニューライト等)を用いたが、これに限るものではなく他の滑性のある材質のもの、例えば4フッ化エチレン(テフロン(登録商標))等であっても構わない。
【0031】
また、本発明においては、前記低摩擦層51の下部に中間緩衝層52を設けている。この中間緩衝層52として弾性体の一例である発泡体(スポンジ状のもの)で構成したことで、繰出ロール41とガイド部50との間に余分な隙間を極力発生させずに種子60の搬送を可能としたのである。中間緩衝層52の層の厚さとしては、搬送する粒状体の大きさに応じて考慮すれば良いが、搬送性と緩衝効果を鑑みると好ましくは粒状体の直径と比べ同等もしくは、やや大きい程度、例えば粒状体の大きさの1〜2倍程度の厚さを備えることが好ましい。なお、本実施例では中間緩衝層52の材質としてポリウレタン樹脂の発泡体を使用したが、弾性のあるものであれば、これに限るものではない。
また、上記中間緩衝層52を支持するために弾性変形しない剛性を有するベース部53を備えたことで、種子60を噛み込んだ際に不要な隙間を生じないように変形した中間緩衝層52を安定して支持し一定の形状を保持するように土台部分として機能するのものである。なお本実施例では、ベース部53の部材として塩化ビニール樹脂(PVC)を使用したがこれに限るものではなく弾性変形しない剛性を有する材料であれば他の樹脂や金属等であっても構わない。以上の構成により、図11で示すような従来のガイド板55を備えた繰出装置よりも播種のばらつきを抑え、一定量を一定間隔で繰り出すことができるようになったのである。
【0032】
すなわち、粒状体である種子60を収容するホッパー5と、該ホッパー5の下部開口近傍に回転可能に設けられると共に外周部に繰出凹部41aを有する繰出ロール41と、該繰出ロール41下方の落下位置まで繰出ロール41の外周を覆うことにより粒状体である種子60が前記繰出凹部41aから落下しないように案内するガイド部50とを設けた繰出装置7において、該ガイド部50を、前記繰出ロール41の外周部に摺接する低摩擦層51と、弾性変形が可能な中間緩衝層52と、繰出時に発生する応力によっても弾性変形しない剛性を有するベース部53と、により構成したことにより繰出ロール41とガイド部50との間に種子60が噛み込んだ際に繰出凹部41aからの種子60の落下を防ぐことができる。そのため従来よりも点播精度が向上し、点播間隔を一定にすることができる。
【0033】
また、前記ブラシ部43において、前記ブラシ部43の上部に、繰出ロール41の外周部に当接する擦り切り部44を設け、該擦り切り部44を前記繰出ロール41の外周部に対して耐磨耗性のある部材で構成している。
【0034】
このような構成において、擦り切り効果を上げるため擦り切り部44の先端部が、繰出ロール41に当接している。そのため繰出ロール41の摩耗を防止するために耐磨耗性のある硬質部材で構成している。硬質部材としては、本実施例ではゴム硬度7〜10程度の硬質ゴムを使用したがこれに限るものではなく、繰出ロール41の回転時に巻き込まれない程度の硬度を持つものであれば良い。ある程度の弾性があり摩耗に耐えうる材料であれば硬質ゴム以外であっても構わない。また硬質ゴムとしては天然ゴム、合成ゴム等を使用状況に応じて適宜選択すればよい。
例えば、繰出凹部41a内に入り切らない余分な種子60の掻き取りを行うために擦り切り部44を設けずにブラシ部43だけを設けた場合、中間緩衝層52が発泡体等の柔らかい部材で構成されているため、種子60によっては噛み込み等が発生しやすくなる。そのような場合に対応するため、本発明では、ブラシ部43の上部に硬質部材で構成された擦り切り部44を設けるようにしている。以上の構成により、従来のブラシだけを用いた擦り切りよりも繰出ロール41に対する擦り切り性能を更に向上させることができるため、種子60の繰出凹部41aへの充填を効率よく行うことができる。
【0035】
すなわち、前記ブラシ部43の上部に、繰出ロール41の外周部に当接する擦り切り部44を設け、該擦り切り部44を前記繰出ロール41の外周部に対して耐磨耗性のある部材で構成したことにより、前記中間緩衝層52を設けた場合の粒状体の噛み込みを低減することが可能となる。また従来のブラシだけを用いたものよりも繰出ロール41に対する擦り切り性能を向上させることができるため、粒状体の一例である種子60の繰出凹部41aへの充填を効率よく行うことができる。
【0036】
次に、繰出ロール41の外周面に設けた繰出凹部41aについて図3、図4を用いて説明する。
本発明においては、図3に示すように繰出凹部41aの相対する断面角部のうち少なくとも一方に、丸み又は面取りを施したものである。本実施例では繰出ロール41の回転時に擦り切り部44と最初に接触する断面角部を鋭角にしており、もう一方の断面角部に丸みを持たせている。
【0037】
このような構成において、まず擦り切り部44に最初に接触する断面角部を鋭角にしたことで種子60の擦り切り性能を高めている。また、もう一方の断面角部に丸みを持たせることで、擦り切り部44と断面角部との間に種子60が挟まれることを回避し種子60の割れを防ぐことができる。なお、種子60の搬送を考慮し、断面角部に面取りを施す場合は、繰出ロール41の外周接線より30°以内の傾斜部を持たせることが好ましい。さらに面取り後できた角部についても丸みを持たせることが好ましい。また、断面角部に丸みを持たせる場合、曲率半径Rは繰出凹部の深さより小さいことが好ましい。
【0038】
すなわち、前記繰出凹部41aの相対する断面角部のうち少なくとも一方に、丸み又は面取りを施したことにより、繰出凹部41aにおいて粒状体の一例である種子60の擦り切りや出入りがスムーズにできる。
【0039】
また、図4に示すように、本発明では前記繰出凹部41aが、前記繰出ロール41の外周部に等間隔に配置されるとともに、前記繰出凹部41a間の円弧長が繰出凹部41aの円弧長の略2倍以上になるように規制したものである。
【0040】
このような構成において、図4に示すように繰出凹部41aの円弧長をLa、繰出凹部41a間の円弧長をLbとすると、繰出凹部41a間の円弧長Lbが繰出凹部41aの円弧長Laの2倍より短い場合、期待する点播間隔より短くなりすぎるため、略条播状態になってしまう。
また図11に示すような従来の繰出ロール41では繰出凹部41aの間隔が狭いため、種子が噛み込んだ場合に、ガイド板55と繰出ロール41との間に隙間が発生し、種子60がこぼれ落ちる割合が高くなっていた。これらを鑑みて点播間隔を一定にするような精度の良い点播を行うにはLb≧2Laの条件で繰出凹部41aを繰出ロール41の外周面に配置することが好ましいことがわかったのである。
【0041】
すなわち、前記繰出凹部41aが、前記繰出ロール41の外周部に等間隔に配置されるとともに、前記繰出凹部41a間の円弧長が繰出凹部41aの円弧長の略2倍以上になるように規制したことにより、点播精度が向上し、点播間隔を一定することができるのである。
【0042】
つまり、以上のように構成することによって、繰出駆動軸42の回転駆動により繰出ロール41を矢印方向に回転すると、ホッパー5内に充填された種子60は繰出凹部41a内に嵌入し、この嵌入した状態で回転して、先ずはブラシ部43の上部に固着した擦り切り部44で繰出ロール41の外周面に沿って種子60が擦り切られ、繰出凹部41a内に嵌入できない余分な種子60が除かれる。次にブラシ部43で繰出凹部41a内に嵌入された種子60の表面が慣らされて、より均一に種子60が繰出凹部41a内に収まるようにしている。繰出ロール41の回転による種子60の搬送においても、低摩擦層51を設けたことにより搬送中に種子60が引っかからずにスムーズに流れるように促している。また、弾性変形が可能な中間緩衝層52を設けたことで種子60を搬送する際にガイド部50が繰出ロール41に密着した状態を維持し隙間を埋めるような形状を保つため、種子60が噛み込んでも余計な隙間が発生しないため搬送途中の種子60が繰出凹部41aから落下することが無くなるのである。また繰出凹部41aの形状を上記のように構成することで種子60の噛み込みや割れ等が少なくなり、よりスムーズに繰出凹部41aに種子60が充填されるのである。そうして繰出凹部41a内に嵌入した種子60のみ下方へ搬送される。そして、ガイド部50を通過すると、意図した時期において種子60の自重により自然に落下し、圃場面に繰り出されるのである。
このようにして本発明では安定して種子60を搬送することが可能となり播種のばらつきが少なくなり、ほぼ一定量の種子を一定間隔で落下させることにより、播種精度を上げることができたのである。
【0043】
なお、本実施例においては、繰出凹部41aとして溝状の繰出凹部41aを具備する繰出ロール41の例を示したが、繰出凹部41aの容量が変更できるスライドロール方式の繰出装置に適用することも可能である。
【0044】
また、本実施例では本発明の繰出装置を牽引型施肥播種機に搭載する例を示したが、その他の手押し型、固定型の播種機等に、あらゆるタイプの播種機、施肥播種機等に搭載することができる。
【0045】
次に、本発明に係る繰出装置の下部に風防部70を設けた例について図5乃至図10を用いて説明する。
【実施例2】
【0046】
図5は、実施例1と同様の繰出装置7を備えた湛水点播直播機である。
図5に示すように湛水点播直播機は、繰出装置7を備え、該繰出装置7の下部には図5、図6及び図8に示すように風防部70が配設されている。風防部70の断面形状は円筒状となっており、圃場面と接触しないように配置されている。また、風防部70の本体表面部分は滑り性及び撥水性の高い4フッ化エチレン(テフロン(登録商標))を用いて構成されている。
【0047】
このように構成することで、風の影響を排除し、また図7に示した繰出ケース40の下部や繰出ロール41の周辺部分及び圃場に落下する種子等を風や水分の付着から防ぐことが可能となる。特に車体前方にある接地輪71の泥の跳ね上げやフロート部72の旋回時の上げ下ろし時の泥はね等を防ぐのに効果的である。また繰出装置7の下部に風防部70を付加したことで、種子60が繰り出される風防部70の下端開口部と圃場面との間隔が縮まり、風の影響範囲が小さくなったことでも点播位置精度が向上したのである。つまり風防部70を配設したことで水分や泥の付着等が抑えられることにより種子60の落下間隔のばらつきを防止できることにより、播種精度を上げることが可能となったのである。
なお、本実施例では風防部70は図5、図6に示すような円筒状の形状であるが、図9、図10に示すように風防部70の断面形状がU字状になっている、つまり後端部が一部開放した形状であっても構わない。また風防部70を透明な合成樹脂等で構成し、その表面を滑り性及び撥水性の良い部材で構成することで種子60の落下状況も確認できるようにしても構わない。
また、本実施例では風防機能を具備する風防手段の一例を示したが、風防機能を有しているものであれば従来の施肥播種機等で用いられている種子等のガイドパイプである屈曲可能な軟質部材や伸縮自在な蛇腹等で構成されたパイプを風防手段として用いても構わない。上記のような軟質部材や蛇腹で構成されたガイドパイプを風防手段として使用した場合、伸縮自在・屈曲可能であるためパイプ下端の位置調整が自在にできる。これによりガイドパイプ下端部と圃場との間隔も状況に応じて適宜設定することができるため、風防手段としての機能を最大限発揮することが可能となる。
また、本実施例では風防部70本体の表面を水分や泥の付着防止効果を向上させるために4フッ化エチレン(テフロン(登録商標))をコーティングして用いているが、その他の滑り性又は撥水性の良い樹脂材料で構成しても構わない。さらに風防部70本体自体を滑り性及び撥水性の良い樹脂材料だけで構成しても構わない。
【0048】
すなわち、前記繰出装置7の下部に、風防手段である風防部70を設け、該風防手段の本体または表面を、滑り性及び撥水性の良い部材で構成したことにより、種子への風の影響や泥はねによる種子60等の粒状体の落下間隔のばらつきを防止できる。
【0049】
なお、本実施例の風防部70においては、一定間隔で一定量を落下させる種子繰出装置について説明したが、肥料繰出装置や薬剤繰出装置等にも適用できる。また、本実施例ではロール式の繰出装置について説明したが、目皿式やベルト式等の繰出装置の下方に配置することもできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る繰出装置を搭載した施肥播種機の全体的な構成を示した全体側面図。
【図2】本発明に係る繰出装置を示した側面一部図。
【図3】同じく断面側面図。
【図4】本発明に係る繰出ロールの断面側面図。
【図5】本発明に係る風防部を備えた湛水点播直播機の右斜め背面からの斜視図。
【図6】同じく背面からの斜視図。
【図7】湛水点播直播機の繰出装置下部からみた斜視図。
【図8】本発明に係る風防部を備えた繰出装置の断面側面図。
【図9】後端部が開放された風防部を備えた繰出装置の断面側面図。
【図10】後端部が開放された風防部の斜視図。
【図11】従来の繰出装置の断面側面図。
【符号の説明】
【0051】
4・5 ホッパー
6・7 繰出装置
41 繰出ロール
41a繰出凹部
42 繰出駆動軸
43 ブラシ部
44 擦り切り部
50 ガイド部
51 低摩擦層
52 中間緩衝層
53 ベース部
60 種子
70 風防部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状体を収容するホッパーと、該ホッパーの下部開口近傍に回転可能に設けられると共に外周部に繰出凹部を有する繰出ロールと、該繰出ロール下方の落下位置まで繰出ロールの外周を覆うことにより粒状体が前記繰出凹部から落下しないように案内するガイド部とを設けた繰出装置において、該ガイド部を、前記繰出ロールの外周部に摺接する低摩擦層と、弾性変形が可能な中間緩衝層と、繰出時に発生する応力によっても弾性変形しない剛性を有するベース部と、により構成したことを特徴とする繰出装置。
【請求項2】
前記ホッパーの下部開口近傍から前記ガイド部の間にブラシ部を設け、該ブラシ部の先端を前記繰出ロールの外周部に摺接させることを特徴とする請求項1に記載の繰出装置。
【請求項3】
前記ブラシ部の上部に、繰出ロールの外周部に当接する擦り切り部を設け、該擦り切り部を前記繰出ロールの外周部に対して耐摩耗性のある部材で構成したことを特徴とする請求項2に記載の繰出装置。
【請求項4】
前記繰出凹部の相対する断面角部のうち少なくとも一方に、丸み又は面取りを施したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の繰出装置。
【請求項5】
前記繰出凹部が、前記繰出ロールの外周部に等間隔に配置されるとともに、前記繰出凹部間の円弧長が繰出凹部の円弧長の略2倍以上になるように設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の繰出装置。
【請求項6】
前記繰出装置の下部に、風防手段を設け、該風防手段の本体または表面を、滑り性及び撥水性の良い部材で構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の繰出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−202464(P2007−202464A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24832(P2006−24832)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】