説明

義肢及び義肢用ライナー

【課題】容易な装着作業を通じて手足の断端部に義肢を装着することができるとともに、簡易な構成をもってその正常な装着状態を維持することのできる義肢を提供する。
【解決手段】義足1は、足の断端部Sが挿嵌可能な挿嵌部4を有したソケット3を備える。また、ソケット3の内側面には、ソケット3の挿嵌部4に断端部Sを挿入する方向Bに傾斜する繊維状部材41が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手足等の断端部に装着される義肢及び義肢用ライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の義肢及び義肢用ライナーとしては、特許文献1に記載のものがある。例えば、図17に示される義足2001では、足の断端部Sにライナー2002が装着されるとともに、そのライナー2002が装着された状態の断端部Sをソケット2003に取り付けるようにしている。このライナー2002は、例えば合成皮革等の材料により形成され、断端部Sの形状に合わせた形状を有している。一方、ソケット2003は、ライナー2002が装着された状態の断端部Sが挿嵌される挿嵌部2004を有しており、挿嵌部2004はライナー2002が装着された断端部Sの形状に合わせた形状を有している。尚、ソケット2003は、例えば繊維強化樹脂によって形成されている。また、義足2001には、ライナー2002の装着された断端部Sに対してソケット2003を留めるための装着具2010が設けられている。装着具2010は、ソケット2003に固定される固定片2011と、ライナー2002の装着された断端部Sの周囲(本例においては膝)に巻き付けられるベルト2012とを有している。そして、図17に矢印にて示すように、こうした装着具2010により、断端部Sから義足2001が抜け落ちたり、断端部Sに対して義足2001が回転したりしないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3129695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、こうした従来の義足2001にあっては、上述したような義足2001の抜け落ちや回転等を抑制するために、ライナー2002及びソケット2003とは別に装着具2010が必要になるとともに、使用者はこうした装着具2010のベルト2012を断端部Sの周囲に巻き付けるといった煩雑な作業をその都度強いられるようになる。そのため、従来の義足2001にあっては、その装着作業が煩雑になりその構成も複雑になるといった問題がある。
【0005】
尚、こうした問題は、上述したような義足に限られるものではなく、その他の義足や、義手等の義肢、及び義肢用ライナーにおいて概ね共通して生じ得るものである。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易な装着作業を通じて手足の断端部に義肢及び義肢用ライナーを装着することができるとともに、簡易な構成をもってその正常な装着状態を維持することのできる義肢及び義肢用ライナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
尚、以下の説明において、「ソケット」とは、これを「ライナー」とは別の部材とする場合はもとより、ソケットの内側面にライナーを貼り付けて一体化したものも含む。この場合、ソケットの内側面に貼り付けられたライナーの内側面が「ソケットの内側面」に相当することとなる。
【0007】
(1)請求項1に記載の発明は、手足の断端部を挿嵌可能な挿嵌部を有したソケットを備える義肢であって、前記ソケットの内側面には、前記ソケットの挿嵌部に断端部を挿入する方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、ソケットの挿嵌部に対して断端部を挿入する場合には、繊維状部材が、いわゆる順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ソケットの内側面に繊維状部材を設けることに起因してソケットの装着が困難なものとなることはない。一方、ソケットが断端部から抜け落ちようとする場合には、繊維状部材が、いわゆる逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケットが断端部から抜け落ちることを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部に義肢を装着することができるとともに、簡易な構成をもって義肢の正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0009】
ちなみに、繊維状部材の配設態様としては、ソケットの内側面に繊維状部材を貼り付けるといった態様の他、ソケット自体によって繊維状部材を形成するといった態様を採用することができる。
【0010】
また一般の義肢にあっては、断端部にライナーを装着した後、そのライナーが装着された断端部をソケットの挿嵌部に挿入する場合が多いが、例えばソケットの内側面にライナーを貼り付けて一体化した構成が採用される場合もある。こうした構成にあって、ソケットの挿嵌部に対して断端部を挿入する場合には、ライナーの内側面、すなわち「ソケットの内側面」に設けられる繊維状部材が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ソケットの内側面に繊維状部材を設けることに起因してソケットの装着が困難なものとなることはない。一方、ソケットが断端部から抜け落ちようとする場合には、「ソケットの内側面」に設けられる繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケットが断端部から抜け落ちることを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部に義肢を装着することができるとともに、簡易な構成をもって義肢の正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0011】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の義肢において、断端部に装着されるライナーを備え、前記ソケットの挿嵌部には前記ライナーが装着された断端部が挿嵌されることをその要旨としている。
【0012】
こうした構成にあっても、ソケットの挿嵌部に対してライナーが装着された断端部が挿嵌される場合には、繊維状部材が断端部、換言すればこれに装着されたライナーの外側面に接触することとなることから、請求項1に記載の発明に準じた作用効果を奏することができる。
【0013】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の義肢において、前記ライナーの内側面には、前記ライナーに断端部を挿入する方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、ライナーに対して断端部を挿入する場合には、ライナーの内側面に設けられた繊維状部材が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ライナーの内側面に繊維状部材を設けることに起因してライナーの装着が困難なものとなることはない。一方、ライナーが断端部から抜け落ちようとする場合には、ライナーの内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、断端部からライナーが抜け落ちることを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部にライナーを装着することができるとともに、簡易な構成をもってライナーの正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0015】
また例えば、ライナー全体をシリコン樹脂等、伸縮性に富む材料によって形成し、ライナーと断端部との密着性が高い状態とすることにより、ライナーが断端部から抜け落ちることを抑制することもできるが、この場合には長時間の使用によって断端部とライナーとの間に蒸れが生じ、使用者に不快感を与えることとなる。しかし、上記構成によれば、このようにライナーと断端部との密着性を高くしなくとも、ライナーが断端部から抜け落ちることを抑制することができることから、長時間の使用によって断端部とライナーとの間に蒸れが生じることはなく、使用者に不快感を与えることはない。
【0016】
ちなみに、繊維状部材の配設態様としては、ライナーの内側面に繊維状部材を貼り付けるといった態様の他、ライナー自体によって繊維状部材を形成するといった態様を採用することができる。
【0017】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の義肢において、前記ライナーの外側面には、前記ソケットの挿嵌部に前記ライナーを挿入する方向とは逆の方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、ソケットの挿嵌部に対してライナーが装着された断端部を挿入する場合には、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材が順毛となり、またソケットの挿嵌部の内側面に設けられた繊維状部材も順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ライナーの外側面に繊維状部材を設けることに起因してソケットの装着が困難なものとなることはない。一方、ライナーの装着された断端部からソケットが抜け落ちようとする場合には、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材が逆毛となり、またソケットの挿嵌部の内側面に設けられた繊維状部材も逆毛となる。そして、それら繊維状部材の傾斜方向が逆方向となっているためにそれらが互いに絡み合うことで、より大きな抵抗力が生じる。このため、ライナーの装着された断端部からソケットが抜け落ちることを一層抑制することができる。
【0019】
ちなみに、繊維状部材の配設態様としては、ライナーの外側面に繊維状部材を貼り付けるといった態様の他、ライナー自体によって繊維状部材を形成するといった態様を採用することができる。
【0020】
(5)請求項5に記載の発明は、手足の断端部に装着された状態でソケットに挿嵌される義肢用ライナーであって、前記ライナーの内側面には、前記ライナーに断端部を挿入する方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0021】
同構成によれば、ライナーに対して断端部を挿入する場合には、ライナーの内側面に設けられた繊維状部材が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ライナーの内側面に繊維状部材を設けることに起因してライナーの装着が困難なものとなることはない。一方、ライナーが断端部から抜け落ちようとする場合には、ライナーの内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、断端部からライナーが抜け落ちることを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部に義肢用ライナーを装着することができるとともに、簡易な構成をもって義肢用ライナーの正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0022】
また例えば、ライナー全体をシリコン樹脂等、伸縮性に富む材料によって形成し、ライナーと断端部との密着性が高い状態とすることにより、ライナーが断端部から抜け落ちることを抑制することもできるが、この場合には長時間の使用によって断端部とライナーとの間に蒸れが生じ、使用者に不快感を与えることとなる。しかし、上記構成によれば、このようにライナーと断端部との密着性を高くしなくとも、ライナーが断端部から抜け落ちることを抑制することができることから、長時間の使用によって断端部とライナーとの間に蒸れが生じることはなく、使用者に不快感を与えることはない。
【0023】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の義肢用ライナーにおいて、前記ライナーの外側面には、前記ソケットの挿嵌部に前記ライナーを挿入する方向とは逆の方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0024】
同構成によれば、ソケットの挿嵌部に対してライナーが装着された断端部を挿入する場合には、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ライナーの外側面に繊維状部材を設けることに起因してソケットの装着が困難なものとなることはない。一方、ライナーの装着された断端部からソケットが抜け落ちようとする場合には、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ライナーの装着された断端部からソケットが抜け落ちることを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部にソケットを装着することができるとともに、簡易な構成をもってソケットの正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0025】
(7)請求項7に記載の発明は、手足の断端部に装着された状態でソケットに挿嵌される義肢用ライナーであって、前記ライナーの外側面には、前記ソケットの挿嵌部に前記ライナーを挿入する方向とは逆の方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0026】
同構成によれば、ソケットの挿嵌部に対してライナーが装着された断端部を挿入する場合には、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ライナーの外側面に繊維状部材を設けることに起因してソケットの装着が困難なものとなることはない。一方、ライナーの装着された断端部からソケットが抜け落ちようとする場合には、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ライナーの装着された断端部からソケットが抜け落ちることを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部にソケットを装着することができるとともに、簡易な構成をもってソケットの正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0027】
(8)請求項8に記載の発明は、手足の断端部が挿嵌される挿嵌部を有したソケットを備える義肢であって、前記ソケットの内側面には、同ソケットの周方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0028】
同構成によれば、手足の断端部がソケットの挿嵌部に挿嵌された状態において、ソケットが、繊維状部材の傾斜方向に回転しようとする場合には、ソケットの内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケットが、繊維状部材の傾斜方向に回転することについてはこれを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部に義肢を装着することができるとともに、簡易な構成をもって義肢の正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0029】
ちなみに、繊維状部材の配設態様としては、ソケットの内側面に繊維状部材を貼り付けるといった態様の他、ソケット自体によって繊維状部材を形成するといった態様を採用することができる。
【0030】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の義肢において、前記繊維状部材は、前記ソケットの周方向において前記所定の方向に傾斜する第1繊維状部材と、前記所定の方向とは逆の方向に傾斜する第2繊維状部材とを含むことをその要旨としている。
【0031】
同構成によれば、手足の断端部がソケットの挿嵌部に挿嵌された状態において、ソケットが、同ソケットの周方向において上記所定の方向に回転しようとする場合には第1繊維状部材が逆毛となり、同所定の方向とは逆の方向に回転しようとする場合には第2繊維状部材が逆毛となる。このため、ソケットが、同ソケットの周方向において上記所定の方向に回転すること、及び同所定の方向とは逆の方向に回転することの双方を抑制することができる。すなわち、ソケットが同ソケットの周方向に回動することを抑制することができる。
【0032】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項8又は請求項9に記載の義肢において、断端部に装着されるライナーを備え、前記ソケットの挿嵌部には前記ライナーが装着された断端部が挿嵌されることをその要旨としている。
【0033】
こうした構成にあっても、ソケットの挿嵌部に対してライナーが装着された断端部が挿嵌される場合には、繊維状部材が断端部、換言すればこれに装着されたライナーの外側面に接触することとなることから、請求項8又は請求項9に記載の発明に準じた作用効果を奏することができる。
【0034】
(11)請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の義肢において、前記ライナーの外側面には、同ライナーの周方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0035】
同構成によれば、ライナーの装着された手足の断端部がソケットの挿嵌部に挿嵌された状態において、ソケットが、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材の傾斜方向とは逆の方向に回転しようとする場合には、同繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケットが、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材の傾斜方向とは逆の方向に回転することについてはこれを抑制することができる。
【0036】
ちなみに、繊維状部材の配設態様としては、ライナーの外側面に繊維状部材を貼り付けるといった態様の他、ライナー自体によって繊維状部材を形成するといった態様を採用することができる。
【0037】
(12)請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の義肢において、前記ライナーに設けられる前記繊維状部材は、前記ライナーの周方向において前記所定の方向に傾斜する第1繊維状部材と、前記所定の方向とは逆の方向に傾斜する第2繊維状部材とを含むことをその要旨としている。
【0038】
同構成によれば、ライナーの装着された手足の断端部がソケットの挿嵌部に挿嵌された状態において、ソケットが、ライナーの周方向において上記所定の方向に回転しようとする場合には、ライナーの外側面に設けられた第2繊維状部材が逆毛となり、同所定の方向とは逆の方向に回転しようとする場合には、ライナーの外側面に設けられた第1繊維状部材が逆毛となる。このため、ソケットが、ライナーの周方向において上記所定の方向に回転すること、及び同所定の方向とは逆の方向に回転することの双方を抑制することができる。すなわち、ソケットがライナーの周方向に回動することを抑制することができる。
【0039】
(13)請求項13に記載の発明は、請求項11又は請求項12に記載の義肢において、前記ライナーの装着された手足の断端部が前記ソケットの挿嵌部に挿嵌された状態で、前記ソケットの内側面に設けられた前記繊維状部材と、前記ライナーの外側面に設けられた前記繊維状部材とは、互いに接触するように構成され、且つそれら接触する繊維状部材の傾斜方向が逆方向となるように構成されることをその要旨としている。
【0040】
同構成によれば、ライナーの装着された手足の断端部がソケットの挿嵌部に挿嵌された状態において、ソケットが、ソケットの内側面に設けられた繊維状部材の傾斜方向、すなわちライナーの周方向においてライナーの外側面に設けられた繊維状部材の傾斜方向とは逆の方向に回転しようとする場合には、ソケットの内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となり、またライナーの外側面に設けられた繊維状部材が逆毛となる。そして、それら繊維状部材の傾斜方向が逆方向となっているためにそれらが絡み合うことで、より大きな抵抗力が生じる。このため、ソケットが、ソケットの内側面に設けられた繊維状部材の傾斜方向に回転することを一層抑制することができる。
【0041】
尚、請求項8に記載の発明の構成に、請求項11に記載の発明の構成が適用されたものに対して、本発明を適用した場合には、ソケットの内側面に設けられる繊維状部材とライナーの外側面に設けられる繊維状部材とを互いに接触するように構成し、且つソケットの内側面に設けられる繊維状部材の傾斜方向とライナーの外側面に設けられる繊維状部材の傾斜方向とが逆方向となるように構成すればよい。
【0042】
また、請求項9に記載の発明の構成に、請求項11に記載の発明の構成が適用されたものに対して、本発明を適用した場合には、ソケットの内側面に設けられる第1繊維状部材及び第2繊維状部材のうちいずれか一方とライナーの外側面に設けられる繊維状部材とを互いに接触するように構成し、且つそれら接触する繊維状部材の傾斜方向、すなわちソケットの内側面に設けられる第1繊維状部材及び第2繊維状部材のうちいずれか一方の傾斜方向とライナーの外側面に設けられる繊維状部材の傾斜方向とが逆方向となるように構成すればよい。
【0043】
また、請求項8に記載の発明の構成に、請求項12に記載の発明の構成が適用されたものに対して、本発明を適用した場合には、ソケットの内側面に設けられる繊維状部材とライナーの外側面に設けられる第1繊維状部材及び第2繊維状部材のうちいずれか一方とを互いに接触するように構成し、且つそれら接触する繊維状部材の傾斜方向、すなわちソケットの内側面に設けられる繊維状部材の傾斜方向とライナーの外側面に設けられる第1繊維状部材及び第2繊維状部材のうちいずれか一方の傾斜方向とが逆方向となるように構成すればよい。
【0044】
また、請求項9に記載の発明の構成に、請求項12に記載の発明の構成が適用されたものに対して、本発明を適用した場合には、ソケットの内側面に設けられる第1繊維状部材及び第2繊維状部材とライナーの外側面に設けられる第1繊維状部材及び第2繊維状部材とを互いに接触するように構成し、且つそれら接触する繊維状部材の傾斜方向、すなわちソケットの挿嵌部の内側面に設けられる第1繊維状部材、第2繊維状部材の傾斜方向とライナーの外側面に設けられる第1繊維状部材及び第2繊維状部材の傾斜方向とが逆方向となるように構成すればよい。特にこの場合、ソケットが、同ソケットの周方向において所定の方向に回転する場合であれ、同所定の方向とは逆の方向に回転する場合であれ、ソケットの内側面及びライナーの外側面に設けられた各繊維状部材のうち対応する繊維状部材が絡み合うようになるため、上記所定の方向の回転及びその逆の方向の回転の双方を一層抑制することができる。すなわち、ソケットが同ソケットの周方向に回動することを一層抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部に義肢を装着することができるとともに、簡易な構成をもって義肢の正常な装着状態を一層的確に維持することができるようになる。
【0045】
(14)請求項14に記載の発明は、手足の断端部に装着された状態でソケットに挿嵌される義肢用ライナーであって、前記ライナーの外側面には、同ライナーの周方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0046】
同構成によれば、ライナーの装着された手足の断端部がソケットの挿嵌部に挿嵌された状態において、ソケットが、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材の傾斜方向とは逆の方向に回転しようとする場合には、同繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケットが、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材の傾斜方向とは逆の方向に回転することについてはこれを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部にソケットを装着することができるとともに、簡易な構成をもってソケットの正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0047】
ちなみに、繊維状部材の配設態様としては、ライナーの外側面に繊維状部材を貼り付けるといった態様の他、ライナー自体によって繊維状部材を形成するといった態様を採用することができる。
【0048】
(15)請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の義肢用ライナーにおいて、前記繊維状部材は、前記ライナーの周方向において前記所定の方向に傾斜する第1繊維状部材と、前記所定の方向とは逆の方向に傾斜する第2繊維状部材とを含むことをその要旨としている。
【0049】
同構成によれば、ライナーの装着された手足の断端部がソケットの挿嵌部に挿嵌された状態において、ソケットが、ライナーの周方向において上記所定の方向に回転しようとする場合には、ライナーの外側面に設けられた第2繊維状部材が逆毛となり、同所定の方向とは逆の方向に回転しようとする場合には、ライナーの外側面に設けられた第1繊維状部材が逆毛となる。このため、ソケットが、ライナーの周方向において上記所定の方向に回転すること、及び同所定の方向とは逆の方向に回転することの双方を抑制することができる。すなわち、ソケットがライナーの周方向に回動することを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部にソケットを装着することができるとともに、簡易な構成をもってソケットの正常な装着状態を的確に維持することができるようになる。
【0050】
(16)請求項16に記載の発明は、手足の断端部を挿嵌可能な挿嵌部を有したソケットを備える義肢であって、前記ソケットの内側面には、前記ソケットの挿嵌部に断端部を挿入する方向とは逆の方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0051】
同構成によれば、ソケットの挿嵌部に断端部が完全に挿嵌されている状態において、ソケットの挿嵌部の奥に断端部が落ち込もうとする場合には、ソケットの内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケットの挿嵌部の奥に断端部が落ち込むことを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部に義肢を装着することができるとともに、簡易な構成をもって義肢の正常な装着状態を的確に維持することができるようになる。
【0052】
ちなみに、繊維状部材の配設態様としては、ソケットの内側面に繊維状部材を貼り付けるといった態様の他、ソケット自体によって繊維状部材を形成するといった態様を採用することができる。
【0053】
(17)請求項17に記載の発明は、請求項16に記載の義肢において、前記ソケットは、下腿の断端部が挿嵌されるものであることをその要旨としている。
大腿の断端部が挿嵌されるソケットにあっては、通常、ソケットの座骨支持面が使用者の体重を支持する形状とされていることから、ソケットの挿嵌部の奥への断端部の落ち込みがある程度規制されるようになっている。これに対して、下腿の断端部が挿嵌されるソケットにあっては、大腿用ソケットのように体重を支持する部位が少ないことから、ソケットの挿嵌部の奥に断端部が落ち込むといった問題が生じやすい。この点、上記構成によるように、下腿の断端部が挿嵌されるソケットに対して、請求項17に記載の発明を適用すれば、ソケットの挿嵌部の奥に断端部が落ち込むことを好適に抑制することができるようになる。
【0054】
(18)請求項18に記載の発明は、請求項17に記載の義肢において、前記ソケットの内側面に設けられる前記繊維状部材は前記ソケットの内側面の体重支持部に設けられることをその要旨としている。
【0055】
ソケットが、下腿の断端部が挿嵌されるものにあっては、使用者の足が痩せ細る等して、膝下と、これに対向するソケットの内側面との間の間隙が大きくなると、ソケットを通じて使用者の体重を好適に支持することができなくなり、ソケットの挿嵌部の奥に断端部が落ち込みやすくなる。この点、上記構成によれば、ソケットの挿嵌部の奥に断端部が落ち込もうとする場合には、ソケットの内側面の体重支持部に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケットの挿嵌部の奥に断端部が落ち込むことを的確に抑制することができるようになる。
【0056】
また、ソケットの内側面に繊維状部材を貼り付ける構成の場合、膝下と、これに対向するソケットの内側面との間の間隙が大きくなった場合には、同間隙に応じた繊維長を有する繊維状部材に適宜貼り替えることとすれば、繊維状部材を通じての上記落ち込み抑制機能を簡易な態様によって的確に維持することができるようになる。
【0057】
(19)請求項19に記載の発明は、請求項16〜請求項18のいずれか一項に記載の義肢において、断端部に装着されるライナーを備え、前記ソケットは、その挿嵌部に前記ライナーが装着された断端部が挿嵌されるものであり、前記ライナーの外側面において前記ソケットの内側面に設けられる前記繊維状部材に対向する位置には、前記ソケットの挿嵌部に前記ライナーを挿入する方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0058】
同構成によれば、ライナーの装着された断端部がソケットの挿嵌部に完全に挿嵌されている状態において、ソケットの挿嵌部の奥にライナーの装着された断端部が落ち込もうとする場合には、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材が逆毛となり、またソケットの内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となる。そして、それら繊維状部材の傾斜方向が逆方向となっているためにそれらが互いに絡み合うことで、より大きな抵抗力が生じる。これにより、ソケットの挿嵌部の奥にライナーの装着された断端部が落ち込むことを一層抑制することができるようになる。
【0059】
ちなみに、繊維状部材の配設態様としては、ライナーの外側面に繊維状部材を貼り付けるといった態様の他、ライナー自体によって繊維状部材を形成するといった態様を採用することができる。
【0060】
(20)請求項20に記載の発明は、手足の断端部に装着された状態でソケットに挿嵌される義肢用ライナーであって、前記ライナーの外側面には、前記ソケットの挿嵌部に前記ライナーを挿入する方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0061】
同構成によれば、ライナーの装着された断端部がソケットの挿嵌部に完全に挿嵌されている状態において、ソケットの挿嵌部の奥にライナーの装着された断端部が落ち込もうとする場合には、ライナーの外側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケットの挿嵌部の奥にライナーの装着された断端部が落ち込むことを抑制することができる。従って、容易な装着作業を通じて手足の断端部に義肢用ライナーを装着することができるとともに、簡易な構成をもって義肢用ライナーの正常な装着状態を的確に維持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態に係る義足についてその概略構成を示す概略構成図。
【図2】同実施形態における義足について、足の断端部Sに装着された状態における義足の部分断面構造を模式的に示す部分断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る義足用ライナーについて、同ライナーを中心とした部分断面構造を模式的に示す部分断面図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る義足について、同義足を中心とした一部断面構造を模式的に示す一部断面図。
【図5】本発明の第4実施形態に係る義足について、同義足を中心とした部分断面構造を模式的に示す部分断面図。
【図6】本発明の第5実施形態に係る義足の概略構成を示す概略構成図。
【図7】同実施形態における義足の横断面図であって、ライナーの開口部側における横断面構造を示す横断面図。
【図8】同実施形態における義足の横断面図であって、ライナーの先端部側における横断面構造を示す横断面図。
【図9】本発明の第6実施形態に係る義足について、(a)義足を中心とした正面図、(b)ソケットの断面構造を示す断面図。
【図10】図9におけるE−E断面構造を示す断面図。
【図11】本発明に係る義足用ライナーの変形例について、同ライナーを中心とした断面構造を示す断面図。
【図12】本発明に係る義足の変形例について、同義足を中心とした部分断面構造を示す部分断面図。
【図13】本発明に係る義足の他の変形例について、同義足を中心とした部分断面構造を示す部分断面図。
【図14】本発明に係る義足の他の変形例について、同義足を中心とした部分断面構造の部分断面図。
【図15】本発明に係る義足用ライナーの変形例について、同ライナーを中心とした部分断面構造を示す部分断面図。
【図16】(a)(b)本発明に係る所定の傾斜方向及びその逆方向についての定義を説明するための略図。
【図17】従来の義肢の斜視構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0063】
<第1実施形態>
以下、図1及び図2を参照して、本発明に係る義肢を、下腿部において切断された足に装着される義足1として具体化した第1実施形態について説明する。
【0064】
図1に、本実施形態の義足1の概略構成を示す。尚、同図においては、義足1を構成するライナー2とソケット3とを同軸状に離間した状態で示している。また、同図においては、ソケット3の下部の構成については図示していないが、同部分については図17に示した従来の義足2001におけるソケット2003と同様或いはそれに準じた構造を有しているものとする。
【0065】
図1に示すように、義足1は、足の断端部Sに装着可能なライナー2と、ライナー2が装着された断端部Sが挿嵌される挿嵌部4を有したソケット3とを備えている。
ライナー2は、袋状をなすとともに、使用者の断端部Sの形状に合った形状を有している。ここで、ライナー2は、ゴム生地を縫着することによって形成されている。ちなみに、本実施形態では、ライナー2のゴム生地として、厚さが2mm〜5mmのものを採用している。
【0066】
ソケット3は、有底筒状をなすとともに、その挿嵌部4は、ライナー2が装着された断端部Sの形状に合った形状を有している。ここで、ソケット3は、繊維強化樹脂によって形成されている。
【0067】
ところで、前述したように、従来の義足には、断端部Sから義足が抜け落ちないようにするために、ライナーの装着された断端部Sに対してソケットを留めるための装着具が設けられている。
【0068】
ところが、こうした従来の義足にあっては、上述したような義足の抜け落ちを抑制するために、ライナー及びソケットとは別に装着具が必要になるとともに、使用者はこうした装着具のベルトを断端部Sの周囲に巻き付けるといった煩雑な作業をその都度強いられるようになる。そのため、従来の義足にあっては、その装着作業が煩雑になりその構成も複雑になるといった問題がある。
【0069】
これに対して、断端部Sから義足が抜け落ちないようにするために、ライナーの先端部に第1の連結金具を設けるとともに、ソケットの挿嵌部の底端部に第2の連結金具を設け、これら連結金具の連結を通じてライナーに装着される断端部Sに対してソケットを固定する義肢も開発されるに至っている。しかしながら、こうした構成を備える義足においても、ライナー及びソケットとは別に連結金具が必要になるとともに、使用者はこうした連結金具の連結及び解除といった煩雑な作業をその都度強いられるようになる。そのため、その連結作業及び解除作業が煩雑になりその構成が複雑となるといった問題が同様にしてある。またこの場合、ライナー及びソケットに各連結金具を設けるためのスペースが必要となるが、断端部Sの長さは使用者によって大きく異なることから、例えば断端部Sが長く、各連結金具を設けるためのスペースを確保することのできない使用者にあっては、こうした義足を装着することができない。更に、各連結金具の連結を通じてライナーがソケットに引っ張られることにより、断端部Sの先端部が引っ張られる結果、使用者に不快感を与えるといった問題が生じるおそれがある。更に、断端部Sの先端部がこのようにして引っ張られ続けると、断端部Sの肉を痩せさせてしまうといった問題が生じるおそれがある。
【0070】
また例えば、ライナー全体をシリコン樹脂等、伸縮性に富む材料によって形成し、ライナーと断端部Sとの密着性が高い状態とすることにより、ライナーが断端部から抜け落ちることを抑制することもできるが、この場合には長時間の使用によって断端部Sとライナーとの間に蒸れが生じ、使用者に不快感を与えることとなる。またこの場合、ソケットとライナーとが密着することでソケットとライナーとの間の内部空間が密封状態とされることとなるが、使用者の動きによってソケットとライナーとが離れる際に、上記内部空間の空気が外部へ漏れ、これに伴い不快な音が発生することがある。そのため、こうした音の発生によっても、不快感を与えることとなる。
【0071】
そこで、本実施形態では、図1に示すように、ライナー2の内側面及び外側面、並びにソケット3の挿嵌部4の内側面に、以下に詳述する繊維状部材21、22、41を設けることにより、足の断端部Sから義足1が抜け落ちることを抑制するようにしている。
【0072】
すなわち、ライナー2の内側面に設けられる繊維状部材21は、ライナー2に断端部Sを挿入する方向A(図1において下方)に傾斜する起毛である。
また、ライナー2の外側面に設けられる繊維状部材22は、ソケット3の挿嵌部4にライナー2を挿入する方向Bとは逆の方向(図1において上方)に傾斜する起毛である。
【0073】
また、ソケット3の内側面に設けられる繊維状部材41は、ソケット3の挿嵌部4に断端部Sを挿入する方向B(図1において下方)に傾斜する起毛である。ここで、ソケット3の内側面に設けられる繊維状部材41は、義足1が断端部Sに装着された状態において、ライナー2の外側面に設けられる繊維状部材22に対向する位置に設けられている。
【0074】
尚、図1では、便宜上、各繊維状部材21、22、41、すなわち起毛を誇張して記載している。
次に、図2を併せ参照して、本実施形態の作用について説明する。
【0075】
図2に、義足1が足の断端部Sに装着された状態における同義足1の部分断面構造を模式的に示す。尚、同図においては、便宜上、断端部Sとライナー2とを、またライナー2とソケット3とを、それぞれ離間して示しているが、実際には、これらはそれぞれ接触した状態となっている。
【0076】
図1に示すように、ライナー2に対して断端部Sを挿入する場合には、ライナー2の内側面に設けられた繊維状部材21の起毛が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ライナー2の内側面に繊維状部材21を設けることに起因してライナー2の装着が困難なものとなることはない。また、ソケット3の挿嵌部4に対してライナー2が装着された断端部Sを挿入する場合には、ライナー2の外側面に設けられた繊維状部材22の起毛が順毛となり、またソケット3の挿嵌部4の内側面に設けられた繊維状部材41の起毛が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ライナー2の外側面に繊維状部材22を設けること、及びソケット3の挿嵌部4の内側面に繊維状部材41を設けることに起因してソケット3の装着が困難なものとなることはない。
【0077】
一方、図2に示すように、ライナー2が断端部Sから抜け落ちようとする場合には、ライナー2の内側面に設けられた繊維状部材21の起毛が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ライナー2が断端部Sから抜け落ちることが抑制されるようになる。また、ライナー2の装着された断端部S、すなわちライナー2によって被覆された断端部Sからソケット3が抜け落ちようとする場合には、ライナー2の外側面に設けられた繊維状部材22の起毛が逆毛となり、またソケット3の挿嵌部4の内側面に設けられた繊維状部材41の起毛も逆毛となる。そして、それら起毛の傾斜方向が逆方向となっているためにそれらが互いに絡み合うことで、より大きな抵抗力が生じる。このため、ライナー2の装着された断端部Sからソケット3が抜け落ちることが抑制されるようになる。
【0078】
以上説明した本実施形態に係る義肢によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)義足1は、足の断端部Sが挿嵌可能な挿嵌部4を有したソケット3を備えるものとした。また、ソケット3の内側面には、ソケット3の挿嵌部4に断端部Sを挿入する方向Bに傾斜する起毛である繊維状部材41が設けられるものとした。これにより、容易な装着作業を通じて足の断端部Sに義足1を装着することができるとともに、義足1が断端部Sから抜け落ちることを簡易な構成をもって抑制することができ、義足1の正常な装着状態を維持することができるようになる。また、従来の義足に設けられる装着具を用いずとも、義足1が断端部Sから抜け落ちることを抑制することができることから、装着具によって使用者の自由な動きが妨げられるといった従来の義足における問題が生じることもない。
【0079】
(2)義足1は、断端部Sに装着されるライナー2を備え、ソケット3の挿嵌部4にはライナー2が装着された断端部Sが挿嵌されるものとした。また、ライナー2の内側面には、ライナー2に断端部Sを挿入する方向Aに傾斜する起毛である繊維状部材21が設けられるものとした。これにより、容易な装着作業を通じて足の断端部Sにライナー2を装着することができるとともに、ライナー2が断端部Sから抜け落ちることを簡易な構成をもって抑制することができ、ライナー2の正常な装着状態を維持することができるようになる。また、シリコン樹脂等の材料によって形成されるライナーを用いてライナーと断端部Sとの密着性を高くしなくとも、ライナー2が断端部Sから抜け落ちることを抑制することができることから、長時間の使用によって断端部Sとライナー2との間に蒸れが生じることはなく、使用者に不快感を与えることはない。また、ソケット3とライナー2とが密着することがないことから、ソケット3とライナー2との間の内部空間が密閉状態とされることがなく、不快な音が発生することもない。
【0080】
(3)ライナー2の外側面には、ソケット3の挿嵌部4にライナー2を挿入する方向Bとは逆の方向に傾斜する起毛である繊維状部材22が設けられるものとした。これにより、容易な装着作業を通じて足の断端部Sにソケット3を装着することができるとともに、ソケット3が断端部Sから抜け落ちることを簡易な構成をもって抑制することができ、ソケット3の正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0081】
(4)ライナー2は、ゴム生地によって形成されるものとした。これにより、使用者の断端部Sの形状が、ある程度変化した場合であっても、断端部Sとソケット3の内側面との間におけるライナー2の弾性変形を通じて、ソケット3の内側面に対して断端部Sが当接した状態に維持される。これにより、ライナー2の内側面に設けられる繊維状部材21を、これに対向する断端部Sに対して接触させた状態に好適に維持することができるとともに、ソケット3の挿嵌部4の内側面に設けられる繊維状部材41を、これに対向するライナー2の外側面に設けられる繊維状部材22に対して接触させた状態に好適に維持することができるようになる。
<第2実施形態>
以下、図3を参照して、本発明に係る義肢用ライナーを、下腿部において切断された足の断端部Sに装着される義足用ライナー(以下、「ライナー102」)として具体化した第2実施形態について説明する。
【0082】
図3に、本実施形態のライナー102について、同ライナー102を中心とした部分断面構造を模式的に示す。尚、同図は、ライナー102が装着された足の断端部Sがソケット103の挿嵌部104に挿嵌されている状態を示している。また、便宜上、断端部Sとライナー102とを、またライナー102とソケット103の挿嵌部104とを、それぞれ離間して示しているが、実際には、これらはそれぞれ接触した状態となっている。また、第1実施形態において例示した構成と同一の構成(例えば符号「2」が付される構成)については対応する符号として「100」を加算した符号(例えば「102」)を付すことにより重複する説明を割愛する。
【0083】
以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図3に示すように、ライナー102は、先の第1実施形態において例示したライナー2と同一の構成である。
【0084】
一方、ソケット103には、その挿嵌部104の内側面に、先の第1実施形態において例示した繊維状部材41が設けられていない。すなわち、ソケット103の挿嵌部104の内側面は、ソケット103を構成する繊維強化樹脂によって形成される素面が露出している。
【0085】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ライナー102に対して断端部Sを挿入する場合には、ライナー102の内側面に設けられた繊維状部材121が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ライナー102の内側面に繊維状部材121を設けることに起因してライナー102の装着が困難なものとなることはない。また、ソケット103の挿嵌部104に対してライナー102が装着された断端部Sを挿入する場合には、ライナー102の外側面に設けられた繊維状部材122が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ライナー102の外側面に繊維状部材122を設けることに起因してソケットの装着が困難なものとなることはない。
【0086】
一方、ライナー102が断端部Sから抜け落ちようとする場合には、ライナー102の内側面に設けられた繊維状部材121が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ライナー102が断端部Sから抜け落ちることが抑制されるようになる。また、ライナー102の装着された断端部S、すなわちライナー102によって被覆された断端部Sからソケット103が抜け落ちようとする場合には、ライナー102の外側面に設けられた繊維状部材122が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ライナー102の装着された断端部Sからソケット103が抜け落ちることが抑制されるようになる。
【0087】
以上説明した本実施形態に係る義肢用ライナーによれば、第1実施形態の作用効果(4)に加えて、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(5)ライナー102は、足の断端部Sに装着された状態でソケット103に挿嵌されるものであって、ライナー102の内側面には、ライナー102に断端部Sを挿入する方向Aに傾斜する起毛である繊維状部材121が設けられるものとした。これにより、容易な装着作業を通じて足の断端部Sにライナー102を装着することができるとともに、ライナー102が断端部Sから抜け落ちることを簡易な構成をもって抑制することができ、ライナー102の正常な装着状態を維持することができるようになる。また、シリコン樹脂等の材料によって形成されるライナーを用いてライナーと断端部Sとの密着性を高くしなくとも、ライナー102が断端部Sから抜け落ちることを抑制することができることから、長時間の使用によって断端部Sとライナー102との間に蒸れが生じることはなく、使用者に不快感を与えることはない。また、ソケット103とライナー102とが密着することがないことから、ソケット103とライナー102との間の内部空間が密閉状態とされることがなく、不快な音が発生することもない。
【0088】
(6)ライナー102の外側面には、ソケット103の挿嵌部104にライナー102を挿入する方向Aとは逆の方向に傾斜する起毛である繊維状部材122が設けられるものとした。これにより、容易な装着作業を通じて足の断端部Sにソケット103を装着することができるとともに、ソケット103が断端部Sから抜け落ちることを簡易な構成をもって抑制することができ、ソケット103の正常な装着状態を維持することができるようになる。
<第3実施形態>
以下、図4を参照して、本発明に係る義肢を、下腿部において切断された足の断端部Sに装着される義足201として具体化した第3実施形態について説明する。
【0089】
図4に、本実施形態の義足201について、同義足201を中心とした一部断面構造を模式的に示す。尚、同図は、足の断端部Sに義足201が装着された状態を示している。また、便宜上、断端部Sとソケット203とを離間して示しているが、実際には、これらは接触した状態となっている。
【0090】
同図に示すように、ソケット203の底部には、ソケット203の底面から下方に突出する凸部を有する金属製のソケット側連結部244が内設されている。このソケット側連結部244の凸部は、足部209及び管部208に連結される連結部207において同連結部207の上部に形成される凹部に挿入されて係合されるようになっている。
【0091】
本実施形態では、ソケット203の挿嵌部204の内側面に、以下に詳述する繊維状部材241を設けることにより、足の断端部Sからソケット203が抜け落ちることを抑制するようにしている。すなわち、繊維状部材241は、ソケット203の挿嵌部204に断端部Sを挿入する方向に傾斜する起毛であり、ソケット203の挿嵌部204の内側面全体に形成されている。
【0092】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ソケット203の挿嵌部204に対して断端部Sを挿入する場合には、繊維状部材241が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ソケット203の内側面に繊維状部材241を設けることに起因してソケット203の装着が困難なものとなることはない。
【0093】
一方、ソケット203が断端部Sから抜け落ちようとする場合には、繊維状部材241が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケット203が断端部Sから抜け落ちることが抑制されるようになる。
【0094】
以上説明した本実施形態に係る義肢によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(7)義足201は、足の断端部Sを挿嵌可能な挿嵌部204を有したソケット203を備えるものであって、ソケット203の内側面には、ソケット203の挿嵌部204に断端部Sを挿入する方向に傾斜する起毛である繊維状部材241が設けられるものとした。これにより、容易な装着作業を通じて足の断端部Sに義足201を装着することができるとともに、義足201が断端部Sから抜け落ちることを簡易な構成をもって抑制することができ、義足201の正常な装着状態を維持することができるようになる。
<第4実施形態>
以下、図5を参照して、本発明に係る義足を、下腿部において切断された足の断端部Sに装着される義足301として具体化した第4実施形態について説明する。
【0095】
図5に、本実施形態の義足301について、同義足301を中心とした部分断面構造を模式的に示す。尚、同図は、足の断端部Sに義足301が装着された状態を示している。また、便宜上、断端部Sとソケット303とを離間して示しているが、実際には、これらは接触した状態となっている。
【0096】
同図に示すように、ソケット303は、有底筒状をなすとともに繊維強化樹脂によって形成されるソケット本体303Aと、袋状をなすとともにソケット本体303Aの内側面に貼り付けられるライナー部303Bとを備えている。ここで、ライナー部303Bは、上記第1実施形態において例示したライナー2を形成するゴム生地と同じ材料によって形成されている。このように、本実施形態では、ソケット本体303Aとライナー部303Bとが一体化されている。以下では、ソケット本体303Aの内側面に貼り付けられたライナー部303Bの内側面を、「ソケット303の内側面」として説明する。
【0097】
本実施形態では、ソケット303の挿嵌部304の内側面に、以下に詳述する繊維状部材341を設けることにより、足の断端部Sからソケット303が抜け落ちることを抑制するようにしている。
【0098】
すなわち、繊維状部材341は、ソケット303の挿嵌部304に断端部Sを挿入する方向Aに傾斜する起毛であり、ソケット303の挿嵌部304の内側面全体に形成されている。
【0099】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ソケット303の挿嵌部304に対して断端部Sを挿入する場合には、繊維状部材341が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、ソケット303の内側面に繊維状部材341を設けることに起因してソケット303の装着が困難なものとなることはない。
【0100】
一方、ソケット303が断端部Sから抜け落ちようとする場合には、繊維状部材341が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケット303が断端部Sから抜け落ちることが抑制されるようになる。
【0101】
以上説明した本実施形態に係る義肢によれば、上記第3実施形態の作用効果(7)に準じた作用効果が得られるようになる。
<第5実施形態>
以下、図6〜図8を参照して、本発明に係る義肢を、下腿部において切断された足の断端部Sに装着される義足401として具体化した第5実施形態について説明する。
【0102】
図6に、本実施形態の義足401の概略構成を示す。尚、同図においては、義足401を構成するライナー402の側面構造とソケット403の部分断面構造とを同軸状に離間した状態で示している。また、第1実施形態において例示した構成と同一の構成(例えば符号「2」が付される構成)については対応する符号として「400」を加算した符号(例えば「402」)を付すことにより重複する説明を割愛する。
【0103】
以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態では、ライナー402の外側面及びソケット403の挿嵌部404の内側面に、以下の繊維状部材423、424、443、444を設けることにより、ソケット403が同ソケット403の周方向(ライナー402の周方向)X,Yに回動することを抑制するようにしている。
【0104】
同図に示すように、本実施形態では、ライナー402の外側面において同ライナー402の開口部側(同図中において上側)に、第1繊維状部材423が設けられている。また、ライナー402の外側面において同ライナー402の先端部側(同図中において下側)に、第2繊維状部材424が設けられている。これら繊維状部材423、424は、ライナー402の外側面全周にわたり所定の幅をもって形成されている。
【0105】
また、ソケット403の挿嵌部404の内側面において同挿嵌部404の開口部側(同図中において上側)に、第2繊維状部材443が設けられている。また、ソケット403の挿嵌部404の内側面において同挿嵌部404の底部側(同図中において下側)に、第1繊維状部材444が設けられている。これら繊維状部材443、444は、ソケット403の挿嵌部404の内側面全周にわたり所定の幅をもって設けられている。
【0106】
次に、図7及び図8を参照して、ライナー402の外側面及びソケット403の挿嵌部404の内側面に設けられる繊維状部材423、424、443、444について詳細に説明する。
【0107】
図7に、ライナー402の装着された断端部Sがソケット403の挿嵌部404に挿嵌された状態における義足401の横断面構造であって、繊維状部材423、443の配設位置における横断面構造を示す。また図8に、ライナー402の装着された断端部Sがソケット403の挿嵌部404に挿嵌された状態における義足401の横断面構造であって、繊維状部材424、444の配設位置における横断面構造を示す。尚、これらの図においては、便宜上、ライナー402とソケット403とを離間して示しているが、実際には、これらはそれぞれ接触した状態となっている。
【0108】
図7に示すように、ライナー402の外側面に設けられる第1繊維状部材423は、同ライナー402の周方向において、すなわち同ライナー402の外側面に沿って周回する方向において所定の方向Xに傾斜する起毛である。一方、ソケット403の内側面に設けられる第2繊維状部材443は、同ソケット403の周方向において上記所定の方向Xとは逆の方向Yに傾斜する起毛である。
【0109】
図8に示すように、ライナー402の外側面に設けられる第2繊維状部材424は、同ライナー402の周方向において所定の方向Xに傾斜する起毛である。一方、ソケット403の内側面に設けられる第1繊維状部材444は、同ソケット403の周方向において上記所定の方向Xに傾斜する起毛である。
【0110】
尚、これら図7、8では、便宜上、各繊維状部材423、424、443、444の起毛を誇張して記載している。
次に、図7及び図8を参照して、本実施形態の作用について説明する。
【0111】
図7に示すように、ライナー402の装着された足の断端部Sがソケット403の挿嵌部404に挿嵌された状態において、ソケット403が、同ソケット403の周方向において所定の方向Xとは逆の方向Yに回転しようとする場合には、同ソケット403の内側面に設けられた第2繊維状部材443が逆毛となり、またライナー402の外側面に設けられた第1繊維状部材423が逆毛となる。そしてそれら繊維状部材443、423の傾斜方向が逆方向となっているためにそれらが絡み合うことで、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケット403が、同ソケット403の周方向において上記所定の方向Xとは逆の方向Yに回転することが抑制されるようになる。
【0112】
図8に示すように、ライナー402の装着された足の断端部Sがソケット403の挿嵌部404に挿嵌された状態において、ソケット403が、上記所定の方向Xに回転しようとする場合には、同ソケット403の内側面に設けられた第1繊維状部材444が逆毛となり、またライナー402の外側面に設けられた第2繊維状部材424が逆毛となる。そしてそれら繊維状部材の傾斜方向が逆方向となっているためにそれらが絡み合うことで、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケット403が、同ソケット403の周方向において上記所定の方向Xに回転することが抑制されるようになる。
【0113】
このようにして、ソケット403が、同ソケット403の周方向において所定の方向Xに回転する場合であれ、同所定の方向Xとは逆の方向Yに回転する場合であれ、ソケット403の内側面及びライナー402の外側面に設けられた各繊維状部材443、444、423、424のうち対応する繊維状部材443、423(444、424)が絡み合うようになるため、上記所定の方向Xの回転及びその逆の方向Yの回転の双方が抑制されるようになる。すなわち、ソケット403がその周方向に回動することが抑制されるようになる。
【0114】
以上説明した本実施形態に係る義肢によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(8)義足401は、足の断端部Sが挿嵌される挿嵌部404を有したソケット403を備えるものであって、ソケット403の内側面には、同ソケット403の周方向において所定の方向Yに傾斜する第1繊維状部材444と、同所定の方向Xとは逆の方向Yに傾斜する第2繊維状部材443とが設けられるものとした。これにより、容易な装着作業を通じて足の断端部Sに義足401を装着することができるとともに、義足401が断端部Sに対して回転することを簡易な構成をもって抑制することができ、義足401の正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0115】
(9)義足401は、断端部Sに装着されるライナー402を備え、ソケット403の挿嵌部404にはライナー402が装着された断端部Sが挿嵌されるものとした。また、ライナー402の外側面には、同ライナー402の周方向において所定の方向Xに傾斜する第1繊維状部材423と、同所定の方向Xとは逆の方向Yに傾斜する起毛を有した第2繊維状部材424とが設けられるものとした。これにより、容易な装着作業を通じて足の断端部Sに義足401を装着することができるとともに、義足401が断端部に対して回転することを簡易な構成をもって的確に抑制することができ、義足401の正常な装着状態を好適に維持することができるようになる。
【0116】
(10)ライナー402の装着された足の断端部Sがソケット403の挿嵌部404に挿嵌された状態で、ソケット403の内側面に設けられた第2繊維状部材443と、ライナー402の外側面に設けられる第1繊維状部材423とを互いに接触するように構成し、且つそれら接触する繊維状部材443、423の傾斜方向が逆方向となるように構成した。また、ソケット403の内側面に設けられる第1繊維状部材444と、ライナー402の外側面に設けられる第2繊維状部材424とを互いに接触するように構成し、且つそれら接触する繊維状部材444、424の傾斜方向が逆方向となるように構成した。これにより、容易な装着作業を通じて足の断端部Sに義足401を装着することができるとともに、義足401が断端部Sに対して回転することを簡易な構成をもって一層的確に抑制することができ、義足401の正常な装着状態を一層的確に維持することができるようになる。
<第6実施形態>
以下、図9及び図10を参照して、本発明に係る義肢を、下腿部において切断された足の断端部Sに装着される義足501として具体化した第6実施形態について説明する。
【0117】
図9(a)、(b)に、本実施形態の義足501の概略構成を示す。尚、同図(a)は、義足501を中心とした正面構造を示したものであり、同図(b)は、ソケット503の断面構造を示したものである。また、同図中において、膝を「K」にて示している。また、図10に、図9のE−E断面構造を示す。
【0118】
尚、これら図9及び図10では、第1実施形態において例示した構成と同一の構成(例えば符号「2」が付される構成)については対応する符号として「500」を加算した符号(例えば「502」)を付すことにより重複する説明を割愛する。
【0119】
以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図9に示すように、ソケット503は、下腿の断端部Sが挿嵌可能なものであり、その挿嵌部504における入口部分505が使用者の膝下に位置する。
【0120】
ところで、大腿の断端部が挿嵌されるソケットにあっては(図示略)、通常、ソケットの座骨支持面が使用者の体重を支持する形状とされていることから、ソケットの挿嵌部の奥への断端部の落ち込みがある程度規制されるようになっている。これに対して、図9(a)に示すように、下腿の断端部Sが挿嵌されるソケット503にあっては、大腿用ソケットのように体重を支持する部位が少ないことから、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込むといった問題が生じやすい。特に、ソケット503が、下腿の断端部Sが挿嵌されるものにあっては、使用者の足が痩せ細る等して、膝下と、これに対向するソケット503の内側面との間の間隙が大きくなると、ソケット503を通じて使用者の体重を好適に支持することができなくなり、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込みやすくなる。
【0121】
そこで、本実施形態では、図9(b)及び図10に併せ示すように、ソケット503の内側面に、より具体的には、その膝下に位置する部位を含む内側面に、同ソケット503の挿嵌部504に断端部Sを挿入する方向Aとは逆の方向に傾斜する繊維状部材545を設けるようにしている。ここで、繊維状部材545が設けられる部位には、体重支持部が含まれている。尚、ソケット503の内側面において繊維状部材545が設けられている部位以外の部位には、先の第1実施形態において例示した繊維状部材41と同一の繊維状部材541が設けられている。
【0122】
また、図10に示すように、ライナー502の外側面においてソケット503の内側面に設けられる繊維状部材545に対向する位置には、ソケット503の挿嵌部504にライナー502を挿入する方向Aに傾斜する繊維状部材525を設けるようにしている。尚、ライナー502の外側面において繊維状部材525が設けられている部位以外の部位には、先の第1実施形態において例示した繊維状部材22と同一の繊維状部材522が設けられている。また、ライナー502の内側面には、先の第1実施形態において例示した繊維状部材21と同一の繊維状部材521が設けられている。
【0123】
以下、本実施形態の作用を説明する。
図10に示すように、ライナー502の装着された断端部Sがソケット503の挿嵌部504に完全に挿嵌されている状態において、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込もうとする場合には、ソケット503の内側面の体重支持部に設けられた繊維状部材545の逆毛となり、またライナー502の外側面に設けられた繊維状部材525が逆毛となる。そして、それら繊維状部材545、525の傾斜方向が逆方向となっているためにそれらが互いに絡み合うことで、大きな抵抗力が生じる。このため、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込むことが抑制されるようになる。
【0124】
ここで、ソケット503の挿嵌部504は、その入口部分505がその他の部分よりも大きな径を有しているため、ソケット503の装着時において、ライナー502の外側面においてソケット503の内側面に対向する位置に設けられた繊維状部材525は逆毛になりにくく、またソケット503の内側面に設けられた繊維状部材545は逆毛になりにくい。そのため、ソケット503の装着が困難なものとなることはない。すなわち、ソケット503の挿嵌部504に断端部Sが完全に挿嵌された状態で更に断端部Sが落ち込もうとする場合に、これら繊維状部材525、545が逆毛となって上述したような落ち込みの抑制機能が作用することとなる。
【0125】
以上説明した本実施形態に係る義肢によれば、第1実施形態の作用効果(1)〜(4)に加えて、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(11)ソケット503の内側面には、同ソケット503の挿嵌部504に断端部Sを挿入する方向Aとは逆の方向に傾斜する繊維状部材545が設けられるものとした。これにより、容易な装着作業を通じて足の断端部Sに義足501を装着することができるとともに、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込むことを簡易な構成をもって抑制することができ、義足501の正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0126】
(12)ソケット503は、下腿の断端部Sが挿嵌されるものであって、ソケット503は、その挿嵌部504における入口部分505が膝下に位置するものであり、繊維状部材545はその膝下に位置する部位の内側面、すなわち体重支持部に設けられるものとした。これにより、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込むことを的確に抑制することができるようになる。
【0127】
(13)義足501は、断端部Sに装着されるライナー502を備えるものとした。また、ソケット503はその挿嵌部504にライナー502が装着された断端部Sが挿嵌されるものであり、ライナー502の外側面においてソケット503の内側面に設けられる繊維状部材545に対向する位置には、ソケット503の挿嵌部504にライナー502を挿入する方向Aに傾斜する繊維状部材525が設けられるものとした。これにより、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込むことを一層抑制することができるようになる。
【0128】
尚、本発明に係る義肢及び義肢用ライナーは、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0129】
・上記第1実施形態では、有底筒状のソケット3について例示したが、これに代えて、底なしの筒状のソケットとしてもよい。
・上記各実施形態では、厚さが2mm〜5mmのゴム生地によってライナーを構成するようにしているが、ライナーの厚さはこれに限られるものではなく、他に例えば、ライナーが使用される環境、特に気温や湿度等に応じて、5mm以上の厚さを有するゴム生地や2mm未満の厚さを有するゴム生地に変更することもできる。
【0130】
・上記各実施形態では、ゴム生地によってライナーを形成するようにしているが、ライナーの材料はこれに限られるものではなく、他に例えば織布や不織布といった他の材料によって形成することもできる。
【0131】
・上記各実施形態においては、繊維状部材を直毛のものについてのみ例示したが、繊維状部材の形状はこれに限られるものではなく、他に例えば、湾曲したものや、螺旋状のものであってもよい。こうした繊維状部材としては、その毛根から毛先にかけて全体として、上記各実施形態において例示した所定の方向に傾斜しているものであればよい。
【0132】
・上記第1実施形態では、ゴム生地の縫着によってライナー2を形成していることから、ライナー2の内側面に繊維状部材21が設けられることに加え、ライナー2の底面にも繊維状部材21が設けられるようになっている。しかしながら、本発明に係る繊維状部材は、必ずしもライナーの底面に設けられる必要はなく、これに代えて、図11に示すように、ライナー602の内側面にのみ繊維状部材621を設け、ライナー602の底面についてはシリコン樹脂等、伸縮性や弾力性に富む材料によって形成されるスペーサ605を設けるようにしてもよい。これにより、断端部Sの先端とスペーサ605とが密着した状態に維持されることから、使用者の動きによってライナー602の底面と断端部Sの先端面とが離れること、及びこのことに起因する不快な音の発生を抑制することができるようになる。
【0133】
・上記第1実施形態では、繊維状部材21、22、41をライナー2の内側面の一部分、外側面の一部分、或いはソケット3の内側面の一部分に繊維状部材を設けるようにしているが、これらをライナー2の内側面全体、ライナー2の外側面全体、及びソケット3の内側面全体に設けるようにしてもよい。
【0134】
・上記第1実施形態によるように、ライナー2の外側面に繊維状部材22を設けることが、こうした繊維状部材22と、ソケット3の内側面に設けられた繊維状部材41とを互いに絡み合わせて、ライナー2の装着された断端部Sからソケット3が抜け落ちることを的確に抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明に係る義肢及び義肢用ライナーはこれに限られるものではなく、例えば義足が比較的軽い場合のように、ライナーの装着された断端部Sからソケットが抜け落ちることを抑制する上で必要とされる抵抗力がそれほど大きくない場合であれば、図12に示す義足701及びライナー702のように、ライナー702の内側面にのみ繊維状部材721を設け、ライナー702の外側面については繊維状部材を設けないようにしてもよい。この場合であっても、ソケット703の内側面に設けられた繊維状部材741によって、ライナー702の装着された断端部Sからソケット703が抜け落ちようとすることを、ある程度は抑制することができるようになる。
【0135】
・上記第1実施形態によるように、ライナー2の内側面に繊維状部材21を設けることが、足の断端部Sからライナー2が抜け落ちることを抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明に係る義肢及び義肢用ライナーはこれに限られるものではなく、例えばライナーが樹脂によって形成されるものであって、ライナー自身の復元力によって断端部Sから同ライナーが抜け落ちることを抑制することができる場合には、図13に示す義足801及びライナー802のように、ライナー802の外側面に繊維状状留め部材822を設け、ライナー802の内側面には繊維状部材を設けないようにすることもできる。
【0136】
・本発明に係る義肢は、ライナーの内側面及び外側面の少なくとも一方に繊維状部材が設けられるものに限らず、他に例えば、図14に示す義足901のように、ソケット903の挿嵌部904の内側面にのみ繊維状部材941を設け、ライナー902については、その内側面及び外側面の双方に繊維状部材を設けないようにすることもできる。この場合であっても、例えばライナーが樹脂によって形成されるものであって、ライナー自身の復元力によって断端部Sからライナーが抜け落ちることを抑制することができるのであれば、ソケット903の挿嵌部904の内側面に設けられる繊維状部材941によって、ライナー902の装着された断端部Sからソケット903が抜け落ちることを、ある程度は抑制することができるようになる。
【0137】
・上記第2実施形態によるように、ライナー102の内側面に繊維状部材121を設けることが、足の断端部Sからライナー102が抜け落ちることを抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明に係る義肢用ライナーはこれに限られるものではなく、例えばライナーが樹脂によって形成されるものであって、ライナー自身の復元力によって断端部Sからライナーが抜け落ちることを抑制することができる場合には、図15に示すライナー1002のように、その内側面に繊維状部材を設けないようにすることもできる。すなわち、ライナー1002の外側面にのみ繊維状状留め部材1022を設けるようにしてもよい。この場合であっても、ライナー1002の外側面に設けられる繊維状部材1022によって、断端部Sからソケット1003が抜け落ちることを、ある程度は抑制することができるようになる。
【0138】
・上記第5実施形態では、繊維状部材423、424、443、444を、ソケット403の周方向(ライナー402の周方向)において全周にわたって設けるようにしているが、これらを、ソケット403の周方向において部分的に設けるようにしてもよい。
【0139】
・上記第5実施形態によるように、ライナー402の装着された足の断端部Sがソケット403の挿嵌部404に挿嵌された状態で、ソケット403の内側面に設けられる繊維状部材443、444とライナー402の外側面に設けられる繊維状部材423、424とを互いに接触するように構成し、且つそれら接触する繊維状部材443、423(444、424)の傾斜方向が逆方向となるように構成することが、ソケット403が同ソケット403の周方向に回動することを的確に抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明に係る義肢はこれに限られるものではなく、上記第5実施形態において、ソケット403の内側面に設けられる第1繊維状部材444及び第2繊維状部材443のいずれか一方を割愛するようにすることや、第1繊維状部材444及び第2繊維状部材443のいずれか一方を、ライナー402の外側面に設けられる第2繊維状部材424及び第1繊維状部材423に接触しない位置に設けるようにすることもできる。また、上記第5実施形態において、ライナー402の外側面に設けられる第1繊維状部材423及び第2繊維状部材424のいずれか一方を割愛するようにすることもできる。更に、ソケット403の挿嵌部404の内側面に設けられる繊維状部材444、443とライナー402の外側面に設けられる繊維状部材423、424とが互いに接触しないように構成することもできる。
【0140】
・上記第5実施形態では、ソケット403の内側面及びライナー402の外側面の双方に、繊維状部材443、444、423、424を設けるようにしているが、本発明に係る義肢はこれに限られるものではなく、ライナーの外側面に繊維状部材を設けないようにすることもできる。すなわち、ソケットの内側面にのみ繊維状部材が設けられるものであっても、断端部Sに対して義足が回動することをある程度は抑制することができるようになる。また、これとは反対に、ソケットの内側面に繊維状部材を設けないようにすることもできる。すなわち、ライナーの外側面にのみ繊維状部材が設けられるものであっても、断端部Sに対して義肢が回動することをある程度は抑制することができるようになる。
【0141】
・上記第5実施形態では、ソケット403の内側面に、同ソケット403の周方向において所定の方向Xに傾斜する第1繊維状部材444と、同所定の方向Xとは逆の方向Yに傾斜する第2繊維状部材443とを設けるようにしている。しかしながら、これに代えて、ソケットの内側面に、第1繊維状部材444及び第2繊維状部材443のいずれか一方のみを設けるようにすることもできる。
【0142】
・上記第5実施形態では、ライナー402の外側面に、同ライナー402の周方向において所定の方向Xに傾斜する第1繊維状部材423と、同所定の方向Xとは逆の方向Yに傾斜する第2繊維状部材424とを設けるようにしている。しかしながら、これに代えて、ライナーの外側面に、第1繊維状部材423及び第2繊維状部材424のいずれか一方のみを設けるようにすることもできる。
【0143】
・上記第6実施形態では、図9(b)に示すように、ソケット503は、その挿嵌部504における入口部分505が膝下に位置するものであり、その膝下に位置する部位の内側面にのみ繊維状部材545を設けるようにしているが、これに代えて、こうした繊維状部材をソケットの挿嵌部における入口部分の内周面全周に設けるようにしてもよい。
【0144】
・上記第6実施形態によるように、ライナー502の外側面に、ソケット503の挿嵌部504にライナー502を挿入する方向Aに傾斜する起毛を有した繊維状部材525を設けることが、ライナー502の外側面に設けられた繊維状部材525の起毛と、ソケット503の内側面に設けられた繊維状部材545とを絡み合わせて、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込むことを抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、これに代えて、ライナー502の外側面に設けられた繊維状部材525を割愛するようにしてもよい。この場合であっても、ライナー502の装着された断端部Sがソケット503の挿嵌部504に完全に挿嵌されている状態において、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込もうとする場合に、ソケット503の内側面に設けられた繊維状部材545が逆毛となることで、大きな抵抗力が生じることから、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込むことが、ある程度は抑制されるようになる。
【0145】
・上記第6実施形態において、ソケット503の内側面に設けられた繊維状部材545を割愛するようにしてもよい。この場合であっても、ライナー502の外側面に設けられた繊維状部材525が逆毛となることで、大きな抵抗力が生じることから、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込むことが、ある程度は抑制されるようになる。
【0146】
・上記第6実施形態によるように、ソケットの内側面に、繊維状部材545の他に、繊維状部材541を設けるようにすることが、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込むことを抑制するとともに、ソケット503が断端部Sから抜け落ちることを抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、ライナーの装着された断端部からのソケットの抜け落ちが問題とならないのであれば、上記繊維状部材541を割愛するようにしてもよい。
【0147】
・上記第6実施形態によるように、ライナーの外側面に、繊維状部材525の他に、繊維状部材522を設けるようにすることが、ソケット503の挿嵌部504の奥に断端部Sが落ち込むことを抑制するとともに、ソケット503が断端部Sから抜け落ちることを抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、ライナーの装着された断端部からのソケットの抜け落ちが問題とならないのであれば、上記繊維状部材522を割愛するようにしてもよい。
【0148】
・上記第6実施形態では、ソケット503の内側面においてその入口部分505に繊維状部材545を設けるようにしている。また、ライナー502の外側面においてこうした繊維状部材545に対向するように繊維状部材525を設けるようにしている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、ソケットの内側面においてその奥部分に繊維状部材を設けるようにすることもできる。またこの場合、ライナーの外側面においてこうした繊維状部材に対向するように繊維状部材を設けるようにすればよい。
【0149】
・上記第6実施形態では、下腿の断端部が挿嵌されるソケット503を備える義足501について例示したが、本発明はこれに限られるものではなく、これを大腿の断端部が挿嵌されるソケットを備える義足に対して適用することもできる。
【0150】
・上記第1実施形態及び第6実施形態では、ソケット3、503の内側面に、ソケット3、503の挿嵌部4、504に断端部Sを挿入する方向Bに傾斜する繊維状部材41、541を設けるものについて例示したが、これに加えて、上記第5実施形態において例示した繊維状部材444、443を設けるようにすることもできる。すなわち、ソケットの内側面に、ソケットの挿嵌部に断端部Sを挿入する方向に傾斜する繊維状部材と、ソケットの周方向において所定の方向に傾斜する起毛を有した繊維状部材との双方を設けるようにしてもよい。
【0151】
・上記第1実施形態及び第6実施形態では、ライナー2、502の外側面に、ソケット3、503の挿嵌部4、504にライナー2、502を挿入する方向Bとは逆の方向に傾斜する繊維状部材22、522を設けるものについて例示したが、これに加えて、上記第5実施形態において例示した繊維状部材423、424を設けるようにすることもできる。すなわち、ライナーの外側面に、ソケットの挿嵌部にライナーを挿入する方向とは逆の方向に傾斜する繊維状部材と、ライナーの周方向において所定の方向に傾斜する起毛を有した繊維状部材との双方を設けるようにしてもよい。
【0152】
・上記各実施形態及びその変形例においては、ソケットの内側面に設けられてソケットの挿嵌部に断端部を挿入する方向に傾斜する繊維状部材(以下、繊維状部材K)と、ライナーの外側面に設けられてソケットの挿嵌部にライナーを挿入する方向とは逆の方向に傾斜する繊維状部材(以下、繊維状部材L)とについて例示した。そこでは特に、繊維状部材Kの傾斜方向と、繊維状部材Lの傾斜方向とのなす角度が180°となるものについて例示した。しかしながら、本発明における各繊維状部材はこうした態様を有するものの他、以下に示す態様をもって具現化することもできる。ここで、図16(a)に、繊維状部材Kの傾斜方向と繊維状部材Lの傾斜方向との関係を模式的に示す。同図に示すように、繊維状部材Kの傾斜方向と繊維状部材Lの傾斜方向とのなす角度αが所定角度(90°<α<180°)となるものであればよい。ただし、ソケットが断端部から抜け落ちようとする場合に、これら繊維状部材を逆毛とさせて、大きな抵抗力を生じさせるといった機能を十分に発揮させる上では、この所定角度αを大きく設定することが好ましい。
【0153】
・上記第5実施形態及びその変形例においては、ソケットの内側面に設けられてソケットの周方向において所定の方向に傾斜する第1繊維状部材(以下、第1繊維状部材M)と、上記所定の方向とは逆の方向に傾斜する第2繊維状部材(以下、第2繊維状部材N)とについて例示した。そこでは特に、第1繊維状部材Mの傾斜方向と、第2繊維状部材Nの傾斜方向とのなす角度が180°となるものについて例示した。しかしながら、本発明における各繊維状部材はこうした態様を有するものの他、以下に示す態様をもって具現化することもできる。ここで、図16(b)に、繊維状部材Mの傾斜方向と繊維状部材Nの傾斜方向との関係を模式的に示す。同図に示すように、繊維状部材Mの傾斜方向と繊維状部材Nの傾斜方向とのなす角度βが所定角度(90°<β<180°)となるものであればよい。ただしこの場合も同様に、ソケットが回動しようとする場合に、繊維状部材を逆毛とさせて、大きな抵抗力を生じさせるといった機能を十分に発揮させる上では、この所定角度βを大きく設定することが好ましい。
【0154】
・上記各実施形態では、下腿部において切断された足に装着される義足及び義足用ライナーについて例示したが、本発明に係る義肢及び義肢用ライナーはこれらに限られるものではなく、大腿部において切断された足のためのものや、義手等のためのものに対して適用することが可能である。
【符号の説明】
【0155】
1、201、301、401、501、701、801、901、2001…義足、2、102、202、402、502、602、702、802、902、1002、2002…ライナー、21、121、521、621、721…繊維状部材、22、122、522、622、822、1022…繊維状部材、3、103、203、303、403、503、703、803、903、1003、2003…ソケット、4、104、204、304、404、504、704、804、904、1004、2004…挿嵌部、41、241、341、541、741、841、941…繊維状部材、207…連結部、208…管部、209…足部、244…ソケット側連結部、303A…ソケット本体、303B…ライナー部、423、424、443、444…繊維状部材、525…繊維状部材、505…入口部分、545…繊維状部材、605…スペーサ、2010…装着具、2011…固定片、2012…ベルト、K…膝、S…断端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手足の断端部を挿嵌可能な挿嵌部を有したソケットを備える義肢であって、
前記ソケットの内側面には、前記ソケットの挿嵌部に断端部を挿入する方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢。
【請求項2】
請求項1に記載の義肢において、
断端部に装着されるライナーを備え、
前記ソケットの挿嵌部には前記ライナーが装着された断端部が挿嵌される
ことを特徴とする義肢。
【請求項3】
請求項2に記載の義肢において、
前記ライナーの内側面には、前記ライナーに断端部を挿入する方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の義肢において、
前記ライナーの外側面には、前記ソケットの挿嵌部に前記ライナーを挿入する方向とは逆の方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢。
【請求項5】
手足の断端部に装着された状態でソケットに挿嵌される義肢用ライナーであって、
前記ライナーの内側面には、前記ライナーに断端部を挿入する方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢用ライナー。
【請求項6】
請求項5に記載の義肢用ライナーにおいて、
前記ライナーの外側面には、前記ソケットの挿嵌部に前記ライナーを挿入する方向とは逆の方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢用ライナー。
【請求項7】
手足の断端部に装着された状態でソケットに挿嵌される義肢用ライナーであって、
前記ライナーの外側面には、前記ソケットの挿嵌部に前記ライナーを挿入する方向とは逆の方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢用ライナー。
【請求項8】
手足の断端部が挿嵌される挿嵌部を有したソケットを備える義肢であって、
前記ソケットの内側面には、同ソケットの周方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢。
【請求項9】
請求項8に記載の義肢において、
前記繊維状部材は、前記ソケットの周方向において前記所定の方向に傾斜する第1繊維状部材と、前記所定の方向とは逆の方向に傾斜する第2繊維状部材とを含む
ことを特徴とする義肢。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の義肢において、
断端部に装着されるライナーを備え、
前記ソケットの挿嵌部には前記ライナーが装着された断端部が挿嵌される
ことを特徴とする義肢。
【請求項11】
請求項10に記載の義肢において、
前記ライナーの外側面には、同ライナーの周方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢。
【請求項12】
請求項11に記載の義肢において、
前記ライナーに設けられる前記繊維状部材は、前記ライナーの周方向において前記所定の方向に傾斜する第1繊維状部材と、前記所定の方向とは逆の方向に傾斜する第2繊維状部材とを含む
ことを特徴とする義肢。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の義肢において、
前記ライナーの装着された手足の断端部が前記ソケットの挿嵌部に挿嵌された状態で、前記ソケットの内側面に設けられた前記繊維状部材と、前記ライナーの外側面に設けられた前記繊維状部材とは、互いに接触するように構成され、且つそれら接触する繊維状部材の傾斜方向が逆方向となるように構成される
ことを特徴とする義肢。
【請求項14】
手足の断端部に装着された状態でソケットに挿嵌される義肢用ライナーであって、
前記ライナーの外側面には、同ライナーの周方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢用ライナー。
【請求項15】
請求項14に記載の義肢用ライナーにおいて、
前記繊維状部材は、前記ライナーの周方向において前記所定の方向に傾斜する第1繊維状部材と、前記所定の方向とは逆の方向に傾斜する第2繊維状部材とを含む
ことを特徴とする義肢用ライナー。
【請求項16】
手足の断端部を挿嵌可能な挿嵌部を有したソケットを備える義肢であって、
前記ソケットの内側面には、前記ソケットの挿嵌部に断端部を挿入する方向とは逆の方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢。
【請求項17】
請求項16に記載の義肢において、
前記ソケットは、下腿の断端部が挿嵌されるものである
ことを特徴とする義肢。
【請求項18】
請求項17に記載の義肢において、
前記ソケットの内側面に設けられる前記繊維状部材は前記ソケットの内側面の体重支持部に設けられる
ことを特徴とする義肢。
【請求項19】
請求項16〜請求項18のいずれか一項に記載の義肢において、
断端部に装着されるライナーを備え、
前記ソケットは、その挿嵌部に前記ライナーが装着された断端部が挿嵌されるものであり、
前記ライナーの外側面において前記ソケットの内側面に設けられる前記繊維状部材に対向する位置には、前記ソケットの挿嵌部に前記ライナーを挿入する方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢。
【請求項20】
手足の断端部に装着された状態でソケットに挿嵌される義肢用ライナーであって、
前記ライナーの外側面には、前記ソケットの挿嵌部に前記ライナーを挿入する方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする義肢用ライナー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−98038(P2011−98038A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254062(P2009−254062)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(308020722)
【Fターム(参考)】