説明

耐火不燃性高断熱板材

【課題】 耐火不燃性で軽量なうえ極めて高い断熱性を保持する、耐火不燃性高断熱板材を安価に提供する。
【解決手段】 所要の厚さと面積で且耐火不燃性を有する二枚の無機質板材の間に、平均粒径が2mm以下で且見掛比重が0.2以下のパーライト微粒体に、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を10乃至25容量%割合で配合混練してなる断熱塗着材を所要の厚さに塗着させ加熱乾燥によりパーライト微粒体相互を強力に接着固化し、且無機質板材と一体的に接着される高断熱性断熱層が形成されてなる構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火不燃性に加えて軽量で極めて高い断熱性を保持し、建物外断熱材や高温炉の炉材としては極めて好適な、耐火不燃性高断熱板材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物は建物空間の環境を快適に保持させるうえから、外気温の変動を遮断し或いは夏期における冷房や冬期における冷暖房熱エネルギーの漏出を防止するうえから、内装材の裏側には内断熱板材が、更に外装材の裏面には外断熱板材が使用されている。
そして内断熱板材においては、耐火不燃の規制が無いことから、その見掛比重が略0.1乃至0.3と軽量で且断熱性即ち熱伝導率(kcal/m・h・C°)も0.03乃至0.05と著しく優れ、而も安価なことから専らポリスチレン発泡板材を初めポリウレタン発泡板材若しくはフェノール発泡板材等が使用されている。
【0003】
然しながら今日の如く外装材に耐火不燃性素材が使用され且建物構造の密閉性の高まりと、他方における高齢化に伴う身体不自由者や独居老人の増大等とも相俟って、一旦火災の発生に見舞われると、合成樹脂素材からなる内断熱板材からは猛烈な有害ガスや煤煙が発生し、これによる多数の人命が失われる結果となっている。
これがため早くから、耐火不燃素材による内断熱板材の研究がなされて来たものの、合成樹脂素材による耐火不燃性の内断熱材の実現は不可能とされており、現状においては耐火不燃性と軽量で断熱性を保持し、而も安価な内断熱材としてはガラスウールが挙げられるが、該ガラスウールは結露等により形崩れが発生するばかりか、施工時における作業者への突刺の危険も顕在し、且現在に至っては折損飛散するガラスウールの吸引危険も指摘されるに至っている。
【0004】
他方建物の外装材は耐火不燃性が要求されることから、その素材としては金属を初めコンクリート、モルタル、しっくい、タイル、レンガ等が主として使用されて且これら外装材は耐火不燃性を保持するものの、多重なうえ断熱性に劣ることから、断熱性を保持させた該断熱板材となすためには十分な厚さを有する外装材の裏面に、更にポリウレタンやフェノール樹脂からなる軽量で高断熱性を有する合成樹脂発泡板材を積層させて耐火不燃外断熱板として使用している。
これがため仮令外装材にコンクリート板を使用した場合にも、断熱材としての合成樹脂発泡板材を炎や熱より保護するうえからは、コンクリート板の厚さとしても略25mm以上が要請され、極めて多重となるばかりか高コストともなり、施工に際しても作業機械の使用と且嵩高なため保管や輸送コストも莫大なものが強いられている。
【0005】
而して発明者は既にシロキサン及びシラノール塩多分子溶液が加熱による水分蒸散に伴い、シロキサン結合の促進と加熱融着性の創出及び連続気泡構造の生成とにより略30乃至50倍に及ぶ酸化珪素態の無機質発泡成形体を形成しえることや、所要の寸法形状からなる成形型内において発泡倍率の制約のため圧部加圧を付加させることにより、その見掛比重が略0.1乃至0.2の極めて軽量で且実用性能たる耐圧縮強度や曲げ強度の保持と、略1,000℃の耐熱性と断熱性所謂熱伝導率も0.034(kcal/m・h・C°)と優れた性能を保持する無機質発泡成形物が形成しえること、並びに該無機質発泡成形物の形成には、シロキサン結合の促進と加熱融着性とにより成形金型と強力な融着接合が発生するため、成形金型内面に特別な剥離層を形成させること、更にはシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液中の水分を確実に蒸散放出させぬと、吸水脆化が招来されることも解明している。
【0006】
そこで発明者はシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が、その含有水分の加熱蒸散によるシロキサン結合の促進並びに加熱融着性の創出とにより金属板材やコンクリート板材、セラミックス板材等の無機質板材と強力な接着がなしえ且シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の加熱発泡による無機質発泡成形物並びに真珠岩や黒曜石を加熱焼成発泡させたパーライトは共に優れた断熱性能と軽量性を保持すること、及びシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液をパーライトと所要の容量割合で配合混練させ高粘度可塑状となすことにより、無機質板材に所望の厚さで塗着でき且加熱により高断熱層の形成と無機質板材との一体的接着が可能なることに想到し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は耐火不燃性と軽量で強靭なうえ極めて高い断熱性を保持する、耐火不燃高断熱性板材を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、金属板材やセメント板材、ケイサンカルシウム板材、陶板材若しくはセラミックス板材等からなり、所要の厚さと面積の無機質板材が表裏面に若しくは多層に配され、且この表裏面若しくは多層の無機質板材の間には、シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至65重量%に水分が35乃至55重量%割合の組成からなり、且分子量換算で4,000程度に多分子量化させたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、その平均粒径が2mm以下で且見掛比重が0.2以下のパーライト微粒体に10乃至25容量%割合で混合混練させて高粘度可塑状となし、厚肉な塗着性と成形性を保持させた断熱塗着材となしたうえ、この断熱塗着材を所要の厚さで塗着させ且加熱により水分蒸散を図り、以って軽量で高断熱性断熱層を無機質板材と一体的強固に接着されてなる、耐火不燃性高断熱板材の構成に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の技術的手段によれば、その表面及び裏面には金属板材やセメント板材、ケイサンカルシウム板材、陶板材若しくはセラミックス板材等の耐候性や強靭性、並びに耐火性等を保持する無機質板材が配されてなるから、外部の風雨や太陽光線、温度変動に晒され、或いは火炎に晒されても十分に耐久性を保持するばかりか、その中間に形成される高断熱性断熱層が極めて低比重のパーライトが用いられ、且該パーライト相互がシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の強力なシロキサン結合及び加熱融着性とにより酸化珪素態で強固に接着され、而も表裏の若しくは多層の無機質板材とも一体的に強固に接着されてサンドウィッチ構造を形成するため全体的構造強度が格段に向上するため、使用する無機質板材も可能な限り薄物を使用して軽量化が図れるとともに、一体的に強固に接着形成される高断熱性断熱層は、パーライトと酸化珪素態の接着であるから、略1,000℃に対抗しえる耐火不燃性を保持するため、長時間の火炎中においても耐火不燃で且有害ガスや煤煙の発生もなく、而も全体が極めて軽量となるばかりか嵩も大幅に削減され施工性が極めて良好になしえるとともに、その運搬の容易さや保管スペースの削減効果等は極めて大きなものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
適宜厚さと面積の鉄板材からなる二枚の無機質板材の間に、シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が55重量%に水分が45重量%割合の組成で、且分子量換算等で略4,000程度に多分子量化させたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、平均粒径が1mmのパーライト微粒体に対し15容量%割合で混合混練させた断熱塗着材を所要の厚さに塗着したうえ、加熱により水分蒸散させて高断熱性断熱層を一体的に強固に接着させた構成。
【実施例1】
【0011】
以下に本発明実施例を図とともに詳細に説明すれば、図1は本発明に用いる無機質板材1の見取図であって、該無機質板材1は本発明の使用目的が外装断熱板材や焼却炉や加熱炉等の高温断熱炉材、或いは保冷や保温機器の断熱板材等にも使用するものであるから、その外表面即ち表面及び裏面には耐火不燃性はもとより風雨や太陽光線或いは温度や湿度の変動にも十分対抗しえる耐候性や耐光性、或いは使用時における外部衝撃の付加にも対抗しえる硬度や強度等の強靭性をも具備する事が要請されることから、金属板材即ち鉄板材や鋼板材ばかりかステンレス板材やアルミ板材等の非鉄金属板材はもとより、セメント板材やケイサンカルシウム板材、陶板材、或いはセラミックス板材等の無機質板材が選択される。無論、使用目的によっては無機質板材1の内、表面に使用する素材と裏面に使用する素材とを使い分けることも考えられる。
【0012】
そしてかかる無機質板材1は、前記の如く耐火不燃性や耐熱性或いは強靭性を保持するものの、これら無機質板材1は断熱性には著しく劣るものであるから、外断熱板材や焼却炉や高温炉の断熱板材としての使用には断熱性能の優れる断熱材を組合せねばならぬものの、軽量で耐火不燃性を保持する断熱材が存在せぬため、現状では断熱性に劣るコンクリート板材やコンクリートブロック或いはレンガ等を十分な厚さを以って形成のうえ使用している。
【0013】
反面本発明においては、接着形成される高断熱性断熱層2が、耐火不燃性の保持はもとより、その見掛比重も0.2以下と極めて軽量なうえ断熱性即ち熱伝導率においても略0.035乃至0.04kcal/m・h・C°であって、無機質板材としての発泡コンクリートの見掛比重0.65及び熱伝導率0.13或いはケイサンカルシウム板の見掛比重0.8及び熱伝導率0.11に比べて極めて軽量で且高断熱性を保持するばかりか、該高断熱性断熱層2が無機質板材1との一体的接着によるサンドウィッチ構造の形成に伴い、全体的に補強効果が格段に向上される。これがため使用する無機質板材1としては、取扱上において支障の無い限り肉薄なものの使用が可能となるもので、具体的にはその大きさが縦90cm横180cm程度の面積の場合においては、鉄板材の場合ではその厚さも2乃至3mm程度で、更にコンクリート板材の場合ではその厚さ10乃至12mm程度のものでも使用可能となる。
【0014】
かくして選択された無機質板材1は、該無機質板材1の保持する特有の性能を発揮させるうえから、本発明においては表面と裏面とに使用するもので、この表面と裏面の無機質板材1相互の間に強固一体的に耐火不燃性と極めて軽量で高断熱性を保持する高断熱性断熱層2を接着形成させるものであるから、一方側の無機質板材1の一側面には高断熱性断熱層2を接着形成させるための断熱塗着材20が所要の厚さを以って塗着される。
【0015】
この断熱塗着材20は、形成される高断熱性断熱層2が耐火不燃性はもとより、その見掛比重において最大でも0.2以下と極めて軽量で且その断熱性即ち熱伝導率においても0.034乃至0.04程度を保持し、且無機質板材1と強固に接着してサンドウィッチ構造を形成しえる強力な接着性をも保持し、而も加熱により短時間に接着形成させるうえから、図2に示す如く断熱塗着材20としては、その平均粒径が2.0mm以下望ましくは0.5乃至1.0mmで且その見掛比重が0.2以下望ましくは0.05乃至0.1のパーライト微粒体20Aに対して、シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至65重量%に水分35乃至55重量%の組成からなり、且分子量換算で略4,000程度に多分子量化させた錯化合物状のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液20Bが10乃至25容量%割合で配合混練され、少なくともパーライト微粒体20Aの外表面に均質に塗着させてなるものである。
【0016】
かかる場合において、パーライト自体は真珠岩や頁岩、膨脹頁岩或いは黒曜石等の多種に亘るものが生産販売されているが、本発明においては黒曜石からなりその平均粒径が最大でも2.0mm以下望ましくは0.5乃至1.0mmが好適で、且見掛比重においても0.2以下、望ましくは0.05乃至0.1が好適で、この範囲のパーライト微粒体20Aの使用により、形成される高断熱性断熱層2の見掛比重も0.2以下の軽量で而も強靭に形成しえることによる。
【0017】
更にパーライト微粒体20Aに対しシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液20Bの配合混練割合は、10容量%割合より少なくなると、パーライト微粒体20A相互の接着固化ばかりか、無機質板材1との接着力も不十分となり、実用使用性能面に支障が生ずる。
反面シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液20Bの配合混練割合が25容量%割合を超えると、断熱塗着材20自体が軟弱化し塗着形成時の保形性が悪く、所望の厚さの高断熱性断熱層2の形成が難しくなる。加えてかかるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液20Bの配合混練割合は、使用するパーライト微粒体20Aの粒径によっても多少変動するもので、その平均粒径が1.0乃至2.0mmの場合では略15乃至20容量%程度が、その平均粒径が0.1乃至0.5mm程度の場合では略10乃至15容量%が望ましい。
【0018】
図3は本発明耐火不燃性高断熱板材3の説明図であって、その目的が建築外断熱板材に使用する場合では、無機質板材1としては金属板材やセメント板材、ケイサンカルシウム板材若しくはセラミックス板材等が用いられ、更に焼却炉や高温炉の炉材としての使用では無機質板材1として特に耐火性に優れるセメント板材やレンガ板材、陶板材、若しくはセラミックス板材等が好適で、且この無機質板材1相互の間に一体的に形成される高断熱性断熱層2の厚さは、建物外断熱板材としての場合では略25乃至60mm程度が、更に焼却炉や高温炉等の炉材では略50乃至150mm程度の厚さで形成される。
【0019】
そして焼却炉や高温炉の炉材としては、本発明耐火不燃性高断熱板材3の全体的強靭性も強く求められる場合があって、かかる場合にはセメント板やレンガ板材、陶板材若しくはセラミックス板材からなる無機質板材1を、二枚に限定することなく三枚若しくは四枚に多層積層させたうえ、それぞれの無機質板材1の間に高断熱性断熱層2を全体が一体的に接着されるよう形成させることも提案される。
【0020】
以下に本発明により形成した建物外断熱材についての性能一例を述べれば、無機質板材として厚さ12mm、横1,000mm、縦1,000mmのケイサンカルシウム板をその表面及び裏面に用いて、その中間に平均粒径が1.2mmのパーライト微粒体に対して、シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が55重量%に水分45重量%割合の組成で、且分子量換算で略4,100程度に多分子量化させたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、15容量%割合で配合混練させた断熱塗着材を50mmの厚さに塗着のうえ、160℃の温度で加熱乾燥させて高断熱性断熱層を一体的に形成させた性能は、次表の通りである。
【0021】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0022】
使用目的に合せて無機質板材の素材と厚さ及び面積並びに高断熱性断熱層の厚さを適宜に形成させることにより、建物外断熱板材や冷暖機器の断熱板材或いは焼却炉や高温炉の炉材として即時使用可能。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 無機質板材の見取図である。
【図2】 断熱塗着材の説明図である。
【図3】 本発明品の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 無機質板材
2 高断熱性断熱層
20 断熱塗着材
20A パーライト微粒体
20B シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液
3 本発明品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要の厚さと面積で耐火不燃性を保持する無機質板材の間に、平均粒径が2mm以下で且見掛比重が0.2以下のパーライト微粒体に、シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至65重量%に水分35乃至55重量%の組成で、且分子量換算で略4,000程度に多分子量化させた錯化合物状のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が10乃至25容量%割合で配合混練された断熱塗着材が所要の厚さに塗着されたうえ、加熱乾燥によりパーライト微粒体相互及び無機質板材とを一体的強固に接着させる高断熱性断熱層が形成されてなることを特徴とする、耐火不燃性高断熱板材。
【請求項2】
表裏面に用いられる無機質板材が異なる素材からなる、請求項1記載の耐火不燃性高断熱板材。
【請求項3】
無機質板材が3枚以上の多数枚で積層され、且それぞれの無機質板材の間に断熱塗着材が塗着されたうえ、加熱乾燥によりパーライト微粒体相互及び無機質板材相互が一体的強固に接着させる高断熱性断熱層が形成されてなる、請求項1若しくは請求項2記載の耐火不燃性高断熱板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−42975(P2010−42975A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235674(P2008−235674)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(504384516)
【出願人】(507176493)
【Fターム(参考)】