説明

耐熱性フェノール樹脂組成物及びそれを用いた耐熱性パッド並びに耐熱性パッドの製造方法

【課題】
約400℃の工程においても鋼材コイルを接触状態で搬送、保管することが可能な耐熱性と強度を備え、しかもコストの上昇を最小限に抑制することが可能な耐熱性フェノール樹脂組成物を提供し、また耐熱性フェノール樹脂組成物を用いた耐熱性パッド並びに耐熱性パッドの製造方法を提供する。
【解決手段】
耐熱性フェノール樹脂組成物は、ロックウールとポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維からなる耐熱基材にフェノール樹脂を含浸させ、加圧熱硬化させた。耐熱基材は、ロックウールが40〜95wt%、PBO繊維が5〜60wt%の多重織クロスである。更に、耐熱性フェノール樹脂組成物は、耐熱基材が50〜80wt%、フェノール樹脂が20〜50wt%とした。耐熱性パッドは、ベース材と耐熱性フェノール樹脂組成物からなる耐熱層の2層構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温状態の金属製品の接触に耐える耐熱性フェノール樹脂組成物及びそれを用いた耐熱性パッド並びに耐熱性パッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製品の製造工程において、鋼線や鋼板の二次加工・処理を行う工場ラインでは各種の耐熱性材料が使用されている。熱間・冷間圧延、焼鈍処理後の鋼線や鋼板はコイル状に巻き取られて取り扱われるが、この高温状態の鋼材コイルを搬送、保持する時に疵を防止する目的で使用する置き台には、耐熱性の接触部材が用いられている。
【0003】
低温工程ではPE/PP複合材や木材が当接部材として使用されている。これらは、接触対象とする鋼材コイルよりも硬度が低いので、線材に疵を付けることはない。しかし、高温工程ではPE/PP複合材や木材では耐熱性が持たないので、使用することができない。そこで、カーボン繊維で補強した耐熱ゴム材等を置き台に使用することも考慮されるが、満足できる結果は得られてない。そのため、このような用途での接触部材には、主に金属部材が用いられている。しかし、金属部材と高温の鋼材コイルが接触する部分に疵が付くことは避けられないのである。しばしば、短時間のみ高温の鋼材コイルを接触させる場合には、耐熱性と耐久性を犠牲にして木材を用いて疵が付くことを防止することもある。
【0004】
特許文献1には、熱間圧延後の巻き取りコイル等の鋼材コイルを支持する円筒体支持部の耐熱性や耐摩耗性を有する材料として、グラファイト等の耐熱性を有し、鋼材コイルよりも軟らかい材料を用いることで鋼材コイルに支持部の跡が付くのを防止することが開示されている。しかし、グラファイトを用いると一般的に大幅なコスト高となる。
【0005】
一方、従来から高強度の繊維クロスとフェノール樹脂からなる積層成形品は提供されている。フェノール樹脂は、比較的耐熱性の高い熱硬化性樹脂であるので、高温の環境下で使用に耐えることができる。特許文献2には、ガラス繊維、アラミド繊維及びポリノジック繊維を混紡した混紡糸を用いて製織した基材に混紡織物を基材とし、これにフェノール樹脂のようなマトリックスとなる熱硬化性樹脂を含浸した含浸シート(プリプレグ)を積層し、加熱加圧成形して樹脂積層板を製造し、この樹脂積層板を連続熱間鋼板圧延設備における仕上圧延機から巻取機にいたるホットランテーブル用ガイド板として用いることが開示されている。
【0006】
しかし、特許文献2に記載の樹脂積層板は、温度の高い鋼板が接触するものであるが、鋼板が常時接触する用途に用いられるのではなく、短時間の接触に耐える程度の耐熱性を備えているに過ぎない。つまり、400℃程度の高温状態にあり、しかも数トンもある鋼材コイルを載置し、長時間保持する用途には耐えられないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−219076号公報
【特許文献2】特開2005−296965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、熱間・冷間圧延工程、焼鈍工程で鋼材コイルを搬送、保管する時に、金属製の置き台に接触することでコイルに疵が発生する。低温工程では、PE/PP複合材や木材を接触箇所に設置することで対応可能であるが、約400℃の工程では安全に使用できる材料がなく、鋼材コイルの防疵対策ができてないのが現状である。
【0009】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、約400℃の工程においても鋼材コイルを接触状態で搬送、保管することが可能な耐熱性と強度を備え、しかもコストの上昇を最小限に抑制することが可能な耐熱性フェノール樹脂組成物を提供し、また耐熱性フェノール樹脂組成物を用いた耐熱性パッド並びに耐熱性パッドの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の課題解決のために、ロックウールとポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維からなる耐熱基材にフェノール樹脂を含浸させ、加圧熱硬化させたことを特徴とする耐熱性フェノール樹脂組成物を構成した(請求項1)。
【0011】
そして、前記耐熱基材は、ロックウールが40〜95wt%、PBO繊維が5〜60wt%であることが好ましい(請求項2)。
【0012】
更に、前記耐熱基材が50〜80wt%、フェノール樹脂が20〜50wt%であり(請求項3)、更に好ましくは前記耐熱基材が70〜75wt%、フェノール樹脂が25〜30wt%である(請求項4)。
【0013】
そして、本発明は、前述の耐熱性フェノール樹脂組成物からなる耐熱層と、ガラス繊維クロスにフェノール樹脂を含浸させた積層成形品からなるベース材とを積層したことを特徴とする耐熱性パッドを構成した(請求項5)。
【0014】
また、本発明は、ロックウールとポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維からなる耐熱基材にフェノール樹脂を含浸させた耐熱層材料と、ガラス繊維クロスにフェノール樹脂を含浸させたシート材を複数枚重ね合わせたベース材材料とを積層し、加圧、加熱処理して、ベース材の表面に耐熱層が一体化した耐熱性パッドを成形することを特徴とする耐熱性パッドの製造方法を提供する(請求項6)。
【0015】
ここで、耐熱性パッドの製造方法において、耐熱層に関して採用される特徴的技術は、前述の耐熱性フェノール樹脂組成物と同じである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の耐熱性フェノール樹脂組成物及びそれを用いた耐熱性パッドによれば、400℃の金属製品の接触温度にも耐えることができ、また金属製品の表面に疵が付くことを防止できる。また、本発明の耐熱性パッドは、ベース材によって基本的な機械的強度と板厚を確保し、耐熱層で高い耐熱性を持たせているので、両者の特徴を同時に備えた従来にない優れた耐熱性パッドとなる。それにより、本発明の耐熱性パッドを、熱間・冷間圧延工程、焼鈍工程で鋼材コイルを搬送、保管する時の置き台の接触部材として用いることにより、鋼材コイルに疵が付くことを防止でき、従来のように疵付いた鋼材コイルを選別する作業が不要になって、作業効率及び歩留まりも大きく改善することができる。
【0017】
また、耐熱性パッドの製造方法によれば、ロックウールとPBO繊維からなる耐熱基材にフェノール樹脂を含浸させた耐熱層材料と、ガラス繊維クロスにフェノール樹脂を含浸させたシート材を複数枚重ね合わせたベース材材料とを積層し、加圧、加熱処理して、ベース材の表面に耐熱層が一体化した耐熱性パッドを成形するので、耐熱層とベース材の界面が連続して強固に一体化するので、熱履歴を受けても界面から剥離することがないのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る耐熱性パッドの断面図である。
【図2】耐熱性パッドの高温物接触試験の配置図を示す斜視図である。
【図3】410℃に加熱した接触治具を耐熱性パッドに接触させた後の接触治具、A部温度、B部温度の変化を示すグラフである。
【図4】異なる初期温度の接触治具を耐熱性パッドに接触させた後のA部温度の変化を示すグラフである。
【図5】本発明の耐熱性パッドを接触部分に装着したコイルスキッドの実施形態を示す斜視図である。
【図6】同じくコイルスキッドにスチール線材コイルを載置した使用状態の斜視図である。
【図7】本発明の耐熱性パッドを接触部分に装着したコイルスキッドに鋼板コイルを載置した使用状態を示し、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の耐熱性フェノール樹脂組成物の実施形態を詳しく説明する。本発明の耐熱性フェノール樹脂組成物は、ロックウールとポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維からなる耐熱基材にフェノール樹脂を含浸させ、加圧熱硬化させたことを特徴としている。
【0020】
本発明で使用するロックウールは、マグアルティマ繊維(株式会社マグ製)である。マグアルティマ繊維は、天然鉱石を高温で融解し、遠心法で製造された短繊維である。耐熱性(JIS R3450に準拠)は、800℃×30分の強熱減量率は0.5%であり、溶融温度は1000℃である。繊維径は4〜8μm、アスベスト成分は0%であり、発がん性がなく、EU指令に適合している。
【0021】
本発明で使用するポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維は、ザイロン(東洋紡績株式会社の登録商標)である。ザイロンは、剛直で極めて直線性の高い分子構造を持つPBO繊維を結晶紡糸した繊維である。ザイロンは、カーボン繊維を上回る高強度・高弾性率を有し、有機繊維の中で最高の耐熱性・難燃性を備えた繊維であり、分解温度は650℃である。
【0022】
具体的には、前記耐熱基材は、ロックウール(マグアルティマ繊維)が40〜95wt%、PBO繊維(ザイロン)が5〜60wt%の範囲で作製し、PBO繊維の割合を可及的に少なく設定する。ロックウールの割合を増やすと、当然耐熱性には有利である。
【0023】
また、本発明の耐熱性フェノール樹脂組成物は、前記耐熱基材にフェノール樹脂を含浸、乾燥させたプリプレグシートを用意し、それを熱間プレス成形して所定の厚さの耐熱材とするのである。ここで、前記耐熱基材が50〜80wt%、フェノール樹脂が20〜50wt%であり、更に好ましくは前記耐熱基材が70〜75wt%、フェノール樹脂が25〜30wt%である。
【0024】
具体的には、耐熱基材に、レゾール型又はノボラック型のフェノール樹脂を塗布するが、フェノール樹脂が20wt%未満ではカスレが発生し、25wt%以上で十分に含浸させることができる。また、フェノール樹脂が50wt%を超えると、耐熱性が悪くなるので好ましくなく、30wt%もあれば効果は十分である。
【0025】
このようにして作製した本発明の耐熱性フェノール樹脂組成物からなる耐熱材は、高耐熱性を有し、熱劣化が少ないので、摩耗が少ないといった特徴がある。
【0026】
ここで、実施例の耐熱材は、マグアルティマ繊維が80wt%、PBO繊維が20wt%で、厚さ14mm、目付8kg/m2の多重織クロスからなる耐熱基材に対して、25〜30wt%のレゾール型フェノール樹脂を均一塗布し、乾燥して溶剤を除去したプリプレグを適当な大きさに裁断し、5MPaの一定圧力を加えながら、180℃の温度で所定時間加熱して作製した。
【0027】
次に、本発明の耐熱性フェノール樹脂組成物からなる耐熱層2と、ガラス繊維クロスにフェノール樹脂を含浸させた積層成形品からなるベース材3とを積層した耐熱性パッド1の製造方法を説明する。数トンの鋼材コイルを載置しても耐えるたけの機械的強度を持たせるために、前述の耐熱性フェノール樹脂組成物からなる耐熱材の厚さを厚くすることは、コスト高となるので、現実的ではない。そのため、このような用途で用いる耐熱性パッド1は、耐熱性フェノール樹脂組成物からなる耐熱層2とガラス繊維クロスにフェノール樹脂を含浸させた積層成形品からなるベース材3の2層構造とし、前記耐熱層2で十分な耐熱性を確保し、前記ベース材3で機械的強度を持たせるだけの厚さを確保するのである。
【0028】
先ず、マグアルティマ繊維が80wt%、PBO繊維が20wt%で、厚さ14mm、目付8kg/m2の多重織クロスからなる耐熱基材に対して、25〜30wt%のレゾール型フェノール樹脂を、塗布ロールを用いて均一に塗る。それから、電気炉に投入して乾燥させ、溶剤を除去して耐熱層材料(耐熱層プリプレグ)を用意する。
【0029】
一方、ガラス繊維クロス60wt%にフェノール樹脂40wt%を含浸させ、乾燥させたシート状プリプレグ(ベース材プリプレグ)を用意する。
【0030】
耐熱層プリプレグとベース材プリプレグとを所定の大きさに裁断し、サイズと数量を揃える。本実施形態では、前記耐熱層プリプレグを1枚、前記ベース材プリプレグを20〜30枚用いる。そして、前記耐熱層プリプレグを成形直前に100℃に設定した電気炉へ投入して吸湿水分の除去を行う。また、前記ベース材プリプレグは、100℃に設定した電気炉に投入し、吸湿した水分の除去並びにフェノール樹脂の半硬化処理を行う。
【0031】
それから、前記耐熱層プリプレグ1枚とベース材プリプレグ28枚とを重ね、熱間プレスで一体成形する。成形条件は、成形圧力が5MPaで一定、成形温度が180℃である。その後、ポストキュアを行い、フェノール樹脂の硬化を促進して完成する。このようにして製造した耐熱性パッド1を図1に示す。この耐熱性パッド1は、耐熱層2の厚さは約8mm、ベース材3の厚さは約18mmである。耐熱層2とベース材3の界面は連続し、完全に一体化している。
【0032】
前記耐熱性パッド1を熱伝導性の評価とクラックの有無を確認するために、高温物接触試験を行った。試験配置は図2に示している。本発明の耐熱性パッド1を100mm×100mmに切り出し、その上に、材質がSUS310S、120mm×120mmの平面形状で、重さが5kgの接触治具4を、所定温度に加熱した後に載せた。前記耐熱層2とベース材3の界面には予め熱電対が埋設されており、またベース材3の裏面にも熱電対が装着されており、耐熱層2とベース材3の界面部分(A部)とベース材3の裏面部分(B部)の温度変化を測定した。
【0033】
図3は、410℃に加熱した接触治具4を、耐熱性パッド1の耐熱層2の上に載置した状態で、接触治具4の温度変化と、A部とB部での温度変化を測定した結果を示している。A部の温度は、耐熱層2からベース材3への伝熱を示している。前記接触治具4は、空気中への熱の輻射と、耐熱性パッド1への伝熱によって時間の経過とともに温度が低下する。そして、A部の温度は、接触治具4の接触後から上昇し、約10分後に最大となり、それ以降は接触治具4の温度低下とともに緩やかに低下する。接触治具4の温度が410℃であるにも係わらず、A部の温度は最高でも300℃に達しなかった。それにより、耐熱層2より耐熱性が劣るベース材3でも十分に耐えることが可能であることが分かる。尚、ベース材3の裏面温度(B部の温度)は、最大でも150℃を超えなかった。試験中、耐熱性パッド1の材料破壊、発煙、発火、変形、クラックは発生しなかった。また、試験後に、耐熱層2の外面及び内部、接触治具4の接触面を観察したが、全く問題がなかった。因みに、ベース材3のみの場合には、410℃の接触治具4の接触でクラックが発生した。
【0034】
図4は、前記接触治具4の初期温度を450℃、400℃、350℃とした場合の、前記耐熱性パッド1の耐熱層2とベース材3の界面部分(A部)の温度変化を示している。これにより、A部の温度の最大値は、接触治具4の初期温度より約100℃低くなることが分かる。これらの接触治具4の各初期温度において、接触後の耐熱性パッド1を観察した。その結果、450℃接触する場合、ベース材3にクラックが発生し、発煙した。これにより、450℃以上の温度で接触する用途には、層間剥離、ベース材強度劣化、発煙が起こる可能性が高く、使用できない。一方、400℃以下で接触する場合、クラックや発煙は発生せず、本発明の耐熱性パッド1の効果が得られることが分かった。
【0035】
次に、図5及び図6に基づいて、本発明の耐熱性パッド1を接触部分に装着したコイルスキッド5の実施形態を簡単に説明する。このコイルスキッド5は、焼鈍工程後のコイル冷却・搬送ラインに設置され、置き台6の上面と、該置き台6の一端部に垂設した支え部材7の側面に、前記耐熱性パッド1を添設したものである。前記置き台6は2本の平行支持レールを備え、その上に添設した両耐熱性パッド1,1の上面は、鋼材コイルの円周面に加わる応力が集中しないように傾斜面となっている。つまり、耐熱性パッド1の耐熱層2の表面が鋼材コイルの円周面に対して接線方向を向くように取り付けている。前記置き台6の長さは約3m、支え部材7の高さは約150cmである。
【0036】
図6に示すように、鋼材コイルとして、サイズが直径150cm、軸方向長さが70cm、重さ2tのスチール線材コイル8を置き台6に載置し、支え部材7に凭れ掛かった状態に保持した。実際には、温度が約400℃のスチール線材コイル8を6個載置した。
【0037】
7ヶ月間の実機使用試験の結果、スチール線材コイル8の前記耐熱性パッド1と接触する部位に疵は全く付かなかった。また、置き台6に設けた耐熱性パッド1は、端部の摩耗が進行し、曲面になっているが、コイルと面接触状態を保っている。支え部材7に設けた耐熱性パッド1は、表面接触状態が保たれ、摩耗は殆ど進行していない。耐熱性パッド1から摩耗粉(糸)は発生するが、コイル製品への付着はなく、作業現場への影響はなかった。また、耐熱性パッド1の破損、変形もなく、強度面からも問題がないことが確認された。置き台6に設けた耐熱性パッド1は、使用前に厚さ8mmあった耐熱層2が3mm以上残っており、継続使用可能な状態であった。前記コイルスキッド5の耐熱性パッド1に対する要求寿命は、半年〜1年であるので、十分に実用に耐えることが分かった。
【0038】
表1に耐熱層2の厚さが2mm、4mm、8mmの実施例1,2,3と、耐熱層2が無くベース材3のみの比較例1、金属の場合の比較例2とを比較試験した結果をまとめている。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1,2(2mm、4mm仕様)は、厚さが薄いので比較的製造が容易である。耐熱層による防疵効果は発揮するが、摩耗代が薄く、製品寿命が短い。実施例1の2mm仕様では、断熱効果が少なく、ベース材への伝熱量が大きいためクラックが発生する。実施例2の4mm仕様では、耐熱層の樹脂塗布状態(レゾール樹脂の含有量)によりクラックの発生する恐れがある。それに対して、実施例3の8mm仕様では、厚さが厚く剛性が強いため、通常の生産用含浸機を使用できず、生産効率が悪い、あるいはコスト高となるが、耐熱層の防疵効果を発揮でき、また製品寿命が長く、400℃の接触温度に対しても、断熱効果によりベース材への伝熱量を抑え、ベース材の耐熱限界温度以下で保持することが可能であるので、クラックの発生を防止できる。
【0041】
比較例1は、耐熱層がないベース材のみからなるので、耐熱性がなく、クラックが発生するので、全く使用不可能である。比較例2は、金属製の接触部材であるが、従来例に記載したように、防疵効果が全く無い。
【0042】
本発明の耐熱層2とベース材3の2層構造からなる耐熱性パッド1は、要求仕様に応じて耐熱層2の厚さを調整する。熱間・冷間圧延工程、焼鈍工程で鋼材コイルを搬送、保管する時に使用する耐熱性パッドとしては、耐熱層の厚さは余裕を持たせて少なくとも8mmに設定することが好ましい。
【0043】
図7は、前述のコイルスキッド5に、鋼板コイル9を載置する使用例を示している。耐熱性パッドのその他の使用例として、鋼材コイルに対しては反転装置、Cフック、フォーク等の接触部材が挙げられる。
【符号の説明】
【0044】
1 耐熱性パッド、
2 耐熱層、
3 ベース材、
4 接触治具、
5 コイルスキッド、
6 置き台、
7 支え部材、
8 スチール線材コイル、
9 鋼板コイル。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックウールとポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維からなる耐熱基材にフェノール樹脂を含浸させ、加圧熱硬化させたことを特徴とする耐熱性フェノール樹脂組成物。
【請求項2】
前記耐熱基材は、ロックウールが40〜95wt%、PBO繊維が5〜60wt%である請求項1記載の耐熱性フェノール樹脂組成物。
【請求項3】
前記耐熱基材が50〜80wt%、フェノール樹脂が20〜50wt%である請求項1又は2記載の耐熱性フェノール樹脂組成物。
【請求項4】
前記耐熱基材が70〜75wt%、フェノール樹脂が25〜30wt%である請求項3記載の耐熱性フェノール樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4何れか1項に記載の耐熱性フェノール樹脂組成物からなる耐熱層と、ガラス繊維クロスにフェノール樹脂を含浸させた積層成形品からなるベース材とを積層したことを特徴とする耐熱性パッド。
【請求項6】
ロックウールとポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維からなる耐熱基材にフェノール樹脂を含浸させた耐熱層材料と、ガラス繊維クロスにフェノール樹脂を含浸させたシート材を複数枚重ね合わせたベース材材料とを積層し、加圧、加熱処理して、ベース材の表面に耐熱層が一体化した耐熱性パッドを成形することを特徴とする耐熱性パッドの製造方法。
【請求項7】
前記耐熱基材は、ロックウールが40〜95wt%、PBO繊維が5〜60wt%である請求項6記載の耐熱性パッドの製造方法。
【請求項8】
前記耐熱基材が50〜80wt%、フェノール樹脂が20〜50wt%である請求項6又は7記載の耐熱性パッドの製造方法。
【請求項9】
前記耐熱基材が70〜75wt%、フェノール樹脂が25〜30wt%である請求項8記載の耐熱性パッドの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−178952(P2011−178952A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46735(P2010−46735)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000107619)スターライト工業株式会社 (62)
【Fターム(参考)】