説明

耐震固定装置

【課題】工場内の床の所望位置に、バッファストレージ等の機器自体或いは機器の台車を固定可能にし、強い地震にも耐えるようにする。
【解決手段】耐震固定装置(51、52)は、複数の平板状床部材(201)が土台や土台上の基礎構造体から立設された複数の支柱を介することで土台から距離を隔てて敷き詰められてなる床に設けられた床側部材(701)と、床上を移動可能な機器の本体や該機器が載置される台車に設けられた機器側部材(501、502)とを含む。床側部材は、下端側にて、平板状床部材に開けられた貫通孔(201H)に対向する位置における床の床下で土台又は基礎構造体に取り付けられ、上端側にて、貫通孔に挿入されている又は面している貫通孔と同軸に上側に開口又は突出した床側連結部材を備える。機器側部材は、下端側にて、貫通孔を介して床側連結部材と連結可能であり、上端側にて、本体又は台車のベース板(50)に固定される機器側連結部材を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、工場内で軌道に沿って走行するビークル等の搬送車により搬送される被搬送物を、その処理装置、保管庫、棚等(以下単に「処理装置等」という)と搬送車との相互間で効率良く移載するために両者間に適宜設置される、バッファ、バッファストレージ等の一時保持用機器等の機器或いは設備機器(以下単に「機器」という)を、工場の床に固定するための耐震固定装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の耐震固定装置の一部分として、工場内における床上を、設置箇所に向けて移動可能なように底面に車輪が設けられた機器側に、床に対し位置決め可能であるように位置決め金具や固定用金具が設けられる。これに呼応する形で床側には、この種の耐震固定装置の他部分として、位置決め金具や固定用金具が設けられたりする。ここに「工場」は、例えば、半導体装置製造工場、液晶装置製造工場等である。工場内でビークル等により搬送される「被搬送物」は、例えば、半導体製造装置、液晶製造装置で用いられるウエーハ等を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)である。「機器」は、例えばバッファである。
【0003】
加えて、この種の耐震固定装置は、法律や規格等で決められた耐震基準を満たすように強固に固定するように構成されている。
【0004】
例えば、機器を床上に固定する装置の一例が特許文献1に開示されており、機器の耐震据付装置の一例が特許文献2に開示されている。機器が工場の床に固定されると、工場稼動時には、正確に位置決めされた機器等を介して、例えば、搬送車と処理装置等との間における被搬送物の移載が高精度にて実行可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−190345号公報
【特許文献2】特開平07−091025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、「工場の床」がクリーンルームの床であると、そこには、例えば、各々が一辺50〜60cmのグレーチング或いはグレーチングパネルがマトリクス状に多数敷き詰められており、グレーチングには、その四辺の縁にリブ、フレーム、梁等(以下単に「リブ等」という)の、グレーチング自体の強度を高めるための特殊構造が設けられており、その四隅にて支柱により支持される。ここで、背景技術による固定装置の類を設けるための孔をグレーチングに開孔しようとする場合、仮にこれら四隅や縁に開孔してしまったのでは、グレーチングの強度低下を招くと共に、開孔などの作業自体が困難或いは実践上不可能となるという技術的問題点がある。これに対し、工場主の観点から言えば、同一工場内にてもラインの設計変更が実施され得ることがら、床における任意の位置に機器を固定できないようでは、或いは、耐震固定に際して床破壊・破損の危険性をはらむようでは、機器の使い勝手が著しく悪くなってしまうか或いは機器が実践上使えない。
【0007】
更に、機器は、工場内におけるライン設計・仕様等に応じて或いはメンテナンス・補修を定期又は不定期に実施するために、可動式であること、即ち比較的容易に耐震固定を解除して取外し可能であることが是非望ましい。他方で、その設置の際には、床に対する、即ち工場内における搬送車の軌道、搬送車、処理装置等に対する位置決めを正確に行う必要がある。このため、耐震固定作業を含む設置作業には、位置決め精度を出すために、数時間或いは日単位といった長時間を要すると共に、特に“ティーチング”などと称される機器に対する位置の較正等を含む手間のかかる或いは複雑高度な位置決め作業も、設置・耐震固定の都度に必要になるという技術的問題点がある。
【0008】
特に、この種の固定装置により法定や規格の耐震基準をクリアする必要があることまでも考慮すると、上記のいずれの問題点の解決は、より一層困難であることが想定される。
【0009】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、床の所望位置に機器自体或いは機器の台車を固定可能であると共に、強い地震にも耐え得る耐震固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<1>
本発明の耐震固定装置は上記課題を解決するために、複数の平板状床部材が土台及び該土台上の基礎構造体の少なくとも一方から立設された複数の支柱を介することで前記土台から距離を隔てて敷き詰められてなる床に設けられた床側部材と、前記床上を移動可能な機器の本体及び該機器が載置される台車の少なくとも一方に設けられた機器側部材とを含む、前記機器を前記床上に耐震固定するための耐震固定装置であって、前記床側部材は、下端側にて、前記平板状床部材に開けられた貫通孔に対向する位置における前記床の床下で前記土台又は前記基礎構造体に取り付けられ、上端側にて、前記貫通孔に挿入されている又は面している前記貫通孔と同軸に上側に開口又は突出した床側連結部材を備え、前記機器側部材は、下端側にて、前記貫通孔を介して前記床側連結部材と連結可能であり、上端側にて、前記本体又は前記台車のベース板に固定される機器側連結部材を備える。
【0011】
本発明によれば、耐震固定装置は、相互に連結可能である床側部材と機器側部材とによって、機器を床上に耐震固定する。
【0012】
ここに本発明に係る「床」とは、例えばグレーチング或いはグレーチングパネル等である複数の平板状床部材が、マトリクス状に敷き詰められてなる。ここで特に、複数の平板状床部材は、典型的には、工場のコンクリート床などの土台と該土台上に設置された根太などの基礎構造体との少なくとも一方から立設された複数の支柱を介することで、土台から距離を隔てて敷き詰められている。言い換えれば、「床」は、二重床構造における上側の床部分、即ち、実際にその上面に当該機器を含む物が置かれる床を指す。このような床は、例えばグレーチングの四隅に設けられた支柱或いは脚によって、土台面から例えば数cmから数十cmの距離を隔てて、即ち、床下と土台との間に空間が空くように構成されている。なお、典型的なグレーチングの場合、その平面形状が、例えば、一辺50〜60cmの矩形或いは正方形であり、その四辺の縁に、高さ数cm程度のリブ等が設けられており、その四隅にて、支柱により支持されている。なお「工場」は典型的には、半導体装置製造工場や液晶装置製造工場であるが、このような床が存在する限りにおいて、これらの工場に限られない。
【0013】
本発明に係る「機器」とは、このような床に対して耐震固定される必要性がある限りにおいて任意である。「機器」は、例えば、工場の天井等に敷設された軌道上を走行するビークル等の搬送車により搬送される被搬送物を、その処理装置等と搬送車との相互間で効率良く移載するために両者間に適宜設置される、バッファ或いはバッファ装置、バッファストレージ等の機器である。更に、「機器」は、単なる棚のみならず、電動機構や機械機構などを備えてなる設備機器も含む広い概念である。なお「被搬送物」は、例えば半導体製造装置や液晶製造装置で用いられるウエーハ等を収容するFOUPである。
【0014】
機器を耐震固定する際には先ず、例えば工場内の生産ラインのレイアウト設計にしたがって、機器がその設置場所へと、移動される。例えば、天井に敷設された軌道上で移載用に停止する際のビークルの停止位置(言い換えれば、移載用位置)と、処理装置等との間の空間へと、移動される。この移動は、例えば、機器が移動可能なように、その本体の底部又は機器が載置された台車の底部に設けられた車輪、キャスター等の移動手段によって、人力又は動力によって行われる。或いは、人力やリフトにより、持ち上げられた状態で、その設置場所へと運ばれてもよい。
【0015】
この設置場所には先ず、機器を実際に設置する作業に相前後して或いは並行して、床に床側部材が設けられる。平板状床部材には、機器を実際に設置する作業に相前後して或いは並行して、例えば直径数cm、最低でも直径1cm以上の貫通孔が開孔される。床側部材は、その下端側にて、貫通孔に対向する或いは対向することになる位置における土台又は基礎構造体に取り付けられる。床側連結部材は、床側部材の上端側にて、貫通孔に挿入されている又は面している。床側連結部材は、貫通孔の途中まで挿入されてもよいし、貫通孔の入り口まで届かなくてもよいし、或いは、貫通孔を突き抜けるように挿入されてもよい。床側連結部材は、貫通孔と同軸に上側に開口又は突出しており、具体的には、例えば雌ネジが切られた貫通孔と同軸の、貫通孔の内径に等しい又はより小さい細長い穴が開けられてもよい。或いは、貫通孔と同軸の、貫通孔の内径よりも外径が小さい突出形状を有してもよい。加えて、連結部材のネジ径は、地震による負荷に応じて変えることが望ましい。そのため構造的に、床の貫通孔は、ネジ径よりも大きいことが好ましい。
【0016】
他方、機器を実際に設置する作業に相前後して或いは並行して、機器側部材は、機器の本体及び台車の少なくとも一方に設けられる。ここに「本体」は、例えば、バッファストレージの外函、外枠のことであり、底部にキャスターが付いたベース板を備えてなる。即ち、この場合には、ベース板が本体の底板をなす。他方、「台車」は、例えば、バッファストレージが載置された、底部にキャスターが付いたベース板を備えてなる。
【0017】
このように構成された機器側部材は、床上で平面的に見て床側部材と同一位置になるように機器が移動され停止されると、機器側連結部材は、その上端側にてベース板に固定され、その下端側にて貫通孔を介して、床側連結部材と連結される。例えば、機器側連結部材は、下端側に雄ネジが切られており、貫通孔を介して、雌ネジが切られた床側連結部材にネジ締めの要領で係合される。或いは逆に、機器側連結部材は、下端側に雌ネジが切られており、貫通孔を介して、雄ネジが切られた床側連結部材にネジ締めの要領で係合される。いずれの場合にも、両者は強固に連結される。なお、機器側連結部材とベース板との固定は、初回設定時のみに行い、それ以降は、固定されたまま機器を着脱すればよい。
【0018】
この際特に、機器を床上に耐震固定するための機械的な強度は、ベース板、機器側部材、床側部材、並びに、床側部材が取り付けられた床下に存在する土台又は前記基礎構造体に主に依存する。言い換えれば、ここでの強度は、平板状床部材には、あまり或いは殆ど依存しない。即ち、グレーチング等の平板状板部材に比べて、より強固に造られていることが容易であり且つ実際により強固に造られていることが常套であるコンクリート床等である土台や、その上に組まれた鋼材製の根太等の基礎構造体に対し、機器を、当該耐震固定装置を介して一体的に固定する構造が得られる。言い換えれば、本願発明において「機器が床に固定される」とは、見かけ上は床に固定されるものの、実際には、床を介して床下にて、床よりも強固な土台や基礎構造体に固定されると捉えることもできる。このような固定により、固定、即ち耐震固定するための機械的強度を、グレーチング等の平板状板部材の強度にあまり又は殆どよらずに、容易にして顕著に高めることが可能となる。なお、機器を床上に設置後に、機器又はまた台車における平板状板部材の表面との当接部分を、該表面から完全には又は全く上げないことにより、機器の重量を、上述した床下の各部(即ち、機器側部材、床側部材、土台、基礎構造体等)と平板状板部材とに、分散させるようにしてもよい。
【0019】
なお、耐震固定を解除したいときには、例えば、ネジを緩める要領で、床側連結部材と機器側連結部材との係合を解くことで、機器を床側部材から切り離すことができる。よって、連結する場合にも、連結を解く場合にも、比較的簡単に行う構造を採用することが容易となる。
【0020】
しかも、床側部材の下端側を、土台又は基礎構造体に対して一旦取り付けてしまえば、これを取り外さない限りにおいて、床上での水平位置については、それ以降は不動となる。即ち、それ以降は、水平位置についての位置決めについては、基本的に不要となる。
【0021】
加えて、機器側部材と床側部材との連結時における両者の上下方向或いは鉛直方向の長さが不変であることを利用すれば、即ち連結時における当該耐震固定装置の高さが不変であるように構成し、そのように不変である鉛直方向の長さ或いは不変である高さを基準に、耐震固定された際における機器の高さを決めれば、床側部材の下端側を取り外さない限りにおいて、床上での垂直位置についても、それ以降は不動となる。よって、当該耐震固定装置の水平位置を基準とし且つ当該耐震固定装置の高さを基準とすることで、位置について極めて再現性に優れた形で、耐震固定を行える。言い換えれば、当該耐震固定装置を用いて耐震固定すれば、固定の解除と固定とを繰り返して行っても、極めて高い位置精度を出すことが出来、ティーチングなどの較正等の位置決めに関する諸作業も、最初に耐震固定した際に一度だけ行っておけば、以降に行う必要は基本的になくなる。
【0022】
よって、例えば、工場内におけるライン設計・仕様等に応じて或いはメンテナンス・補修を定期又は不定期に実施する際に、著しく有利となる。例えば、背景技術の固定作業において必要であった、位置決め精度を出すための数時間或いは日単位といった長時間の作業時間の発生や、ティーチング等を含む手間のかかる或いは複雑高度な位置決め作業の発生を防げる。
【0023】
以上のように本発明の耐震固定装置によって、法律や規格等で決められた耐震基準を満たすように強固に固定することが比較的簡単且つ迅速に実行可能となる。しかも、比較的容易にして、固定及び固定解除可能としつつ高精度で位置決めを実行可能である。
<2>
本発明に係る耐震固定装置の一態様では、前記床側部材及び前記機器側部材は夫々、前記機器の一つに対して複数設けられ、複数の前記機器側部材は、一の前記床側部材に対し、前記機器側連結部材として、下端側にて、前記貫通孔を介して前記床側連結部材と連結可能な形状を有すると共に、上端側に、前記ベース板に取り付けられた水平位置決め用の受け部材に、受けられる突起部を有する、第1機器側連結部材と、他の前記床側部材に対し、前記機器側連結部材として、(i)前記ベース板における前記貫通孔に対向する位置に開けられた固定用穴内に、上下位置が調整可能に固定されると共に、前記貫通孔と同軸である同軸貫通穴を内部に有する上下位置決め用の固定部材、及び(ii)下端側にて、前記同軸貫通穴及び前記貫通孔を介して前記床側連結部材と連結可能な形状を有すると共に、上端側に、前記固定部材の上面に当接する下面を縁に持つように前記同軸貫通穴より幅広な頭部を有する、第2機器側連結部材とを備える。
【0024】
この態様によれば、機器側部材は、床上で平面的に見て床側部材と同一位置になるように機器が移動され停止されると、第1機器側連結部材は、その上端側にてベース板に固定され、その下端側にて貫通孔を介して、床側連結部材と連結される。この際、ベース板との固定については、例えば水平一方向側が切りかかれた当て止め金具である、受け部材に、突起部が受けられることで実現される。これにより、第1機器側連結部材を受け部材が取り付けられた箇所におけるベース板の水平位置については、床に対して既に固定されている第1機器側連結部材の水平位置によって規定される。
【0025】
他方、第2機器側連結部材は、その下端側にて、固定部材に開けられた同軸貫通穴及び平板状床部材に開孔された貫通孔の両者を直列に介して、床側連結部材と連結される。この際、ベース板の固定は、第1に水平方向について、第2機器側連結部材が同軸貫通穴に挿入或いは勘合されることで実現される。第2に上下方向或いは鉛直方向について、固定部材の上面に、第2機器側連結部材の幅広な頭部が縁に持つ下面が当接することで実現される。これらにより、固定部材が固定される固定用穴が開けられた箇所におけるベース板の水平位置及び垂直位置については、床に対して既に固定されている第2機器側連結部材の水平位置及び垂直位置によって規定される。特に、最初の耐震固定時に、固定部材の上下位置を調整した後、その上下位置を固定しておけば、その後に、固定の解除と固定とを繰り返して行っても、固定部材の上下位置が固定用穴内にて不動である限り、極めて高い位置精度を出すことが出来る。ティーチング等の作業も、最初に固定部材の上下位置を調整する作業と共に一度だけ行っておけば、以降に行う必要は基本的になくなる。
【0026】
特に、第1機器側連結部材は、側方から移動してくる受け部により受けられるので、機器を水平移動させる動作にて、上述の如き、第1機器側連結部材による固定を先ず行える。更に、第2機器側連結部材は、固定部材に開けれた同軸貫通穴に挿入或いは勘合されるので、機器の水平位置を固定したままで、上述の如き、第2機器側連結部材による固定を行える。
【0027】
これらの結果、耐震基準を満たすように強固に固定することが、簡単且つ迅速に実行可能となる。しかも、固定及び固定解除可能としつつ高精度で位置決めを実行可能である。
【0028】
<3>
この態様では、前記固定用穴内に雌ネジが切られており、前記固定部材は、前記雌ネジ内に係合されると共に前記同軸貫通穴を有する雄ネジ部材と、前記雄ネジ部材の前記ベース板の下側から覗く先端側に係合すると共に、前記固定用穴の周囲にて前記ベース板の下面に当接することで前記雄ネジ部材が前記雌ネジ内を前記軸方向に移動するのを阻止する雌ネジが切られたナット部材とを有してよい。
【0029】
このように構成すれば、ベース板に対する固定部材の上下方向位置を、ナット部材に対するネジを締める或いはネジを緩める動作によって、簡単に調整できる。よって、固定部材の調整によって、耐震固定時における機器の高さ方向の調整を、簡単に実施できる。一旦、固定部材の上下位置を調整し、その上下位置を固定用穴に対して固定しておけば、その後に、固定の解除と固定とを繰り返して行っても、極めて高い位置精度を出すことが出来る。
【0030】
<4>
この機器側部材が、第1及び第2機器側連結部材を備える態様では、前記突起部は、くびれを有し、前記受け部材は、側方に切り欠かかれており且つ該切り欠かれた側から前記くびれに嵌る形状を有し、前記受け部材及び前記くびれにおける相互に当接する面のうち少なくとも一方に、前記受け部材が前記くびれに嵌る際に、前記受け部材が前記くびれから鉛直上向きに力を受けるように、テーパが形成されてもよい。
【0031】
このように構成すれば、第1機器側連結部材は、側方から移動してくる受け部により受けられる際に、ベース板を水平方向に移動させる力から、テーパの作用により、例えば当て止め金具である受け部に対して(即ち、ベース板或いは機器に対して)上方への分力が発生する。よって、ベース板の底部に設けられた、例えばキャスター、車輪等のベース板を可動とするための可動手段は、大なり小なり床から浮き上がるか、又は少なくともベース板を介してこのような可動手段にかかる機器等の荷重は、大なり小なり低減される。この結果、キャスター、車輪等の存在にかかわらずに、より高精度で位置決めを実施可能となる。加えて、耐震固定した後における、キャスター、車輪等にかかる負荷や、これを介してグレーチング等の床にかかる負荷を軽減でき、キャスター、車輪等を含めた機器側の寿命や、グレーチング等の床の寿命を長くすることも可能となる。
【0032】
なお、突起部と受け部とは、相互に嵌る限りにおいて、形状が逆の関係であってもよい。即ち、例えば、前記受け部材は、くびれを有する突起の形状を有しており、前記突起部は、受け部側に突出しつつ、側方に切り欠かかれており且つ該切り欠かれた側から前記くびれに嵌る形状を有してもよい。
【0033】
<5>
本発明に係る耐震固定装置の他の態様では、前記床側部材は、上端側の先端における高さが、前記床の表面高さと同じに又はより低くなるように構成されている。
【0034】
この態様によれば、床側部材の上方へ向いた上端、或いは最上面における高さは、床の表面高さと同じとされるか、又は床の表面高さよりも低くされている。このため、機器が取り除かれて、固定装置が固定の役目を果たしていない場合に、床側部材の一部が床から出っ張って残存しないようにできる。よって、工場の使い勝手が向上し、安全上の観点からも望ましい環境を、工場内に構築できる。更に、再びこの床側部材を使おうとする場合には、そのまま使うことが可能となる。
【0035】
<6>
本発明に係る耐震固定装置の他の態様では、前記床側部材は、下端側にて前記基礎構造体の一部をなす複数の根太に交わる方向に前記複数の根太上に渡された、前記基礎構造体の他部をなす棒状構造体に取り付けられており、前記棒状構造体は、前記根太の延在方向における任意位置にて前記根太に対して取り付け可能に構成されており、前記床側部材は、下端側にて、前記棒状構造体の延在方向における任意位置にて前記棒状構造体に対して取り付け可能に構成されている。
【0036】
この態様によれば、棒状構造体を、根太のどこに取り付けるかにより、床側部材における水平第1方向(即ち、根太の延在方向)の位置を決定でき、更に、床側部材を、棒状構造体のどこに取り付けるかにより、床側部材における水平第2方向(即ち、根太の延在方向に交わる或いは直交する方向、言い換えれば水平第1方向に交わる或いは直交する方向)の位置を決定できる。よって、水平面内における二次元位置を、根太及び棒状構造体の存在する限りにおいて、自由に決定できるので、当該耐震固定装置により耐震固定可能な位置についての自由度が格段に高まる。この結果、機器を設置可能な位置についての自由度が格段に高まる。従って、高い自由度を持って、工場内における製造ラインをレイアウト設計でき、実践上きわめて有利である。
【0037】
<7>
本発明に係る耐震固定装置の他の態様では、前記ベース板には、前記機器側部材を取り付け可能に構成された部位が、前記機器が当該耐震固定装置により固定された場合に、前記床上で平面的に見て、前記平板状床部材の各々における四辺から所定距離だけ離れた、前記貫通孔を開孔可能な領域内に少なくとも一つ位置するように、一つの前記貫通孔に対して四つずつ相互から離間して設けられている。
【0038】
本発明によれば、機器を設置する際に、四つずつ設けられる「機器側部材を取り付け可能に構成された部位」のうち、いずれか一つについては必ず、平板状床部材における開孔可能な領域内に位置する。よって、四隅や縁にも開孔する事態が発生しグレーチング等の平板状床部材の強度低下を招くことを未然防止しつつ、グレーチング等の平板状床部材に対して、機器を工場主の要望に沿う所望位置に固定する用の貫通孔を開孔可能となる。しかも、リブ等の存在により開孔作業が困難となる事態をも回避できる。言い換えれば、平坦且つ一様なコンクリートの床面或いは土台面に対し固定することなく、グレーチング等の平板状床部材に貫通孔を開孔することで固定するのであっても、グレーチング等の平板状床部材の特殊な造りとの関係によらずに、任意位置で固定することが容易にして可能となる。しかも、機器を任意位置にて固定しても、肝心の床の強度に支障を来たす事態を未然防止できる。
【0039】
<8>
この態様では、前記平板状板部材は夫々、前記床上で平面的に見て、矩形をなし、各辺から所定長さL以上離れた領域として、前記開孔可能な領域が規定されており、前記貫通孔は、前記床上で平面的に見て、直径Rの円形をなし、前記四つずつ設けられた部位は、前記床上で平面的に見て、一辺が2L+R以上の長さの矩形の各頂点に位置するように設けられてよい。
【0040】
このように構成すれば、四つずつ設けられる「機器側部材を取り付け可能に構成された部位」のうち、いずれか一つについては、幾何学的に必ず、平板状床部材における開孔可能な領域内に位置するようにできる。即ち、数学的なルールに従って、このような状況を確実且つ簡単に担保できる。特に、前記矩形の一辺の長さを2L+Rに等しい値に又は若干のマージンを含めて2L+Rとほぼ等しい値に設定することで、無闇に前記矩形を広げる必要がなくなる。即ち、四つの部位の水平位置を相互に近接配置することが可能となる、言い換えれば、比較的狭いエリア内にこれら四つの部位を配置できる。ベース板が限られた面積を有することを考慮すれば、このような四つの部位がベース板に設けられる構成は、実践上大変有利となる。
【0041】
なお、このような四つの部位は、一つの機器側部材に対して設けられるので、機器側部材がm個(但し、mは二以上の自然数)あれば(即ち、床側部材がm個あれば)、このような四つの部位は、四つの部位を一セットとして、mセット設けられることになる。
【0042】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施形態の耐震固定装置により固定されたバッファ装置を、ビークル及び製造装置と共に示す、製造システムの全体構成を示す図式的な斜視図である。
【図2】図1の製造システムの図式的な断面図である。
【図3】実施形態の床の構造を示す図式的な平面図である。
【図4】実施形態における、床を構成する1枚のグレーチングを、これを支持する支柱と共に示す図式的な斜視図である。
【図5】実施形態における、耐震固定装置を、バッファ装置が載置された台車のベース板、並びに床及び土台と共に示す図式的な断面図である。
【図6】実施形態の床下が構成される様子を示す図式的な斜視図である。
【図7】実施形態の第1機器側部材を拡大して示す斜視図である。
【図8】実施形態において、第1機器側部材と床側部材とが連結される様子を示す図式的な断面図である。
【図9】実施形態の第2機器側部材を拡大して示す斜視図である。
【図10】実施形態において、第2機器側部材で上下位置が調整され、更に第2機器側部材と床側部材とが連結される様子を示す図式的な断面図である。
【図11】実施形態のベース板における、固定される4つの機器側部材の配置等を図式的に示す下面図である。
【図12】図11の4つの機器側部材のうちの一つについて、機器側部材が実際に取り付けられた一つの取付可能な部位と、実際には取り付けられなかった三つの取付可能な部位(即ち、合計四つの取付可能な部位)を拡大して示す、部分拡大下面図である。
【図13】図12の四つの取付可能な部位の位置が、グレーチングにおける開孔可能な領域との関係で、どこに設定されるかを示す図式的な平面図である。
【図14】図12の当て止め金具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0045】
<実施形態>
<製造システムの構成>
先ず、実施形態に係る耐震固定装置により耐震固定された、本発明に係る「機器」の一例であるバッファ装置を備える製造システムの構成について図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、製造システムの外観を模式的に示す斜視図であり、図2は、それを図1における前後方向で切断した場合の断面を概略的に示す断面図である。
【0046】
図1及び図2に示すように、製造システム100は、レール1と、ビークル10と、製造装置20と、バッファ装置30とを備える。製造システム100は、レール1に沿ってビークル10を走行させると共に、複数のウェハを収容可能なFOUP(即ち、本発明に係る「被搬送物」の一例)3を製造装置20へ搬送する搬送機能と、製造装置20にてFOUP3内のウェハに各種処理を施すことにより半導体素子を製造する製造機能とを有する。
【0047】
レール1は、本発明に係る「軌道」の一例として、ビークル10が走行するための軌道の役割を果たす。レール1は、製造システム100が設置される施設の天井に敷設されている。
【0048】
ビークル10は、本発明に係る「搬送車」の一例として、リニアモータを動力として駆動されるOHT(Overhead Hoist Transport:天井走行車)であって、レール1に吊り下げられる形で取り付けられている。ビークル10は、レール1に沿って走行すると共に、製造装置20の他、不図示のストッカ、OHTバッファ及び大型ストッカ等にFOUP3を搬送する。ビークル10における走行及び搬送等の動作は、製造システム100における不図示のコントローラにより制御される。尚、ここでは説明の便宜上、レール1上には、1台のビークル10しか図示しないが、典型的に、より多く(例えば数十台或いは数百台)のビークル10が備えられている。
【0049】
ビークル10は、内部に、不図示の巻き取り軸を有する巻き取り部12と、巻き取りベルト13と、グリッパ14とから成るホイスト機構11を備える。巻き取りベルト13の一端は、巻き取り軸に固定されており、その他端は、グリッパ14に固定されている。巻き取り部12は、不図示のモータを動力として巻き取り軸を回転させ、巻き取りベルト13を一端から巻き取り又は巻き出し可能に構成されている。グリッパ14は、内側に屈曲された両端部にてFOUP3の上部(即ち、フランジ)3aを把持する把持状態、又はFOUP3のフランジ3aを解放する解放状態に変位可能に構成されている。このような構成を有するホイスト機構11は、巻き取りベルト13が巻き取られる又は巻き出されることにより、レール1の下方にてグリッパ14を鉛直方向に昇降させると共に、鉛直位置にてグリッパ14を変位させることにより、FOUP3をビークル10側からバッファ装置30側へ移載する、又はバッファ装置30側からビークル10側へ移載可能である。このように本実施形態では、ビークル10による移載進路が、ビークル10の移載位置(即ち、図1に示される停止位置)から鉛直下方に延びており、FOUP3を縦移載するように構成されている。
【0050】
製造装置20は、本発明に係る「処理装置」の一例として、FOUP3、実際には、FOUP3に収容されているウェハに対して所定種類の処理(例えば、露光処理、成膜処理、熱処理等)を行う。製造装置20は、内部に、ウェハに対して所定種類の処理を施す不図示の処理部を備えており、その処理部に処理すべきウェハを出し入れ可能である2つの開口H1,H2を設けている。製造装置20は、2つの開口H1,H2に夫々隣接する外部に且つレール1の下方に、バッファ装置30との間でFOUP3を移載するためのポートとして機能する2つのロードポートLP1,LP2を備える。製造装置20は、2つのロードポートLP1,LP2の各々に移載されたFOUP3内部のウェハを、開口H1又はH2を介して処理部に出し入れする不図示の内外移載機構を備える。製造装置20における所定の処理、ウェハの出し入れ等の動作は、製造システム100のコントローラにより制御される。尚、ここでは説明の便宜上、レール1の下方には、1機の製造装置20しか図示しないが、典型的に、FOUP3に対して相異なる処理を行う、より多く(例えば数台或いは数百台)の製造装置20が備えられる。また、開口及びロードポートの個数についても夫々、2個に限られず、3個以上あってもよく、それらの配置についても各種の態様が有り得る。
【0051】
バッファ装置30は、例えばSAFL(Stand Alone Front Loader:商品名)と称され、ビークル10と製造装置20との間でFOUP3が効率的に受け渡されるように、ビークル10との間及び製造装置20との間で夫々FOUP3を移載する。尚、ここでは説明の便宜上、2つのロードポートLP1,LP2を備える製造装置20には、一方のロードポートLP1に対応する、1機のバッファ装置30しか図示しないが、他の実施形態として、両方のロードポートLP1,LP2に夫々対応する、2機のバッファ装置30が備えられてもよい。
【0052】
バッファ装置30は、本体部31と、OHTポートP1と、バッファP2と、移載機構32とを備える。図2において、本体部31は、ロードポートLP1にその前面側(即ち、図2における左側)から組み付け可能に逆L字形に構成されている筐体である。本体部31は、その組み付け時に、長手方向がレール1の方位に直交する方向(即ち、本発明に係る「水平一方向」の一例であって、図2におけるX方向)に沿うように配置される。本体部31は、X方向に少なくとも2つのFOUP3を配置可能である長さ(即ち、図2における長さLx)を有しており、レール1の方位に少なくとも1つのFOUP3を配置可能である長さを有する。尚、ここでは説明の便宜上、本体部31がロードポートLP1に組み付けられた状態にあるバッファ装置30の構成について説明する。
【0053】
本体部31内部には、OHTポートP1と、バッファP2と、移載機構32とが設置されている。本体部31は、レール1の鉛直方向(即ち、図2における一点鎖線G1で示される)に対応する上面に、OHTポートP1とビークル10との間でFOUP3を受け渡し可能である開口H11を設けている。また、ロードポートLP1上に載置されるFOUP3に隣接する側面に、ロードポートLP1(即ち、製造装置20)との間でFOUP3を受け渡し可能である開口H12を設けている。
【0054】
OHTポートP1は、製造装置20において所定の処理が行われる或いは行われたFOUP3を、開口H11を介してビークル10との間で移載するための、バッファ装置30におけるポートとして機能する。OHTポートP1は、ビークル10が縦移載(即ち、移載時にFOUP3が鉛直方向のみ移動される移載)により短時間でFOUP3を移載可能に、レール1の鉛直方向におけるロードポートLP1より上方に設置されている。図1及び図2から明らかなように、OHTポートP1は、仮にバッファ装置30を取り去った場合に、ビークル10が製造装置20のロードポートLP1に対してFOUP3を縦移載する際における、移載進路を遮る位置に存在している。よって、ビークル10から見ると、バッファ装置30の存否に拘わらず、平面視して同一位置にある、即ち、移載位置の鉛直下方にあるポートに対して移載動作を行えば足りる。即ち、ビークル10から見てポートの高さが異なるだけの違いであれば、ビークル10が移載動作を行うことに対する制御は、バッファ装置30の存否に拘わらず、殆ど同一で済むので実践上大変有利である。
【0055】
バッファP2は、製造装置20において所定種類の処理が行われる或いは行われたFOUP3を少なくとも一時的に載置するための一時載置棚として機能する。バッファP2は、後述する移載機構32によるFOUP3の移載を妨げないように、レール1の鉛直方向におけるロードポートLP1より下方で且つそのX方向に設置されている。
【0056】
移載機構32は、ロードポートLP1と、OHTポートP1と、バッファP2との間を移動すると共に、それらの間でFOUP3を移載する。移載機構32は、把持部33と、水平移動機構及び昇降機構とを備えており、本体部31における最も前面側(即ち、図2における左側)に設置されている。把持部33は、一対の平板状の部位を有しており、この部位がフランジ3aの下方にX方向から入り込むと共にフランジ3aの両端部を下方から支持することにより、FOUP3を把持する。図2に示すように、水平移動機構は、長手方向がX方向と平行になるように設置されているレール部34aと、そのレール部に沿ってX方向にスライド可能なスライド部34bとを備える。水平移動機構の先端部(即ち、スライド部34bにおける製造装置20側の端部)には、把持部33が固定されている。昇降機構は、不図示のモータを動力源として鉛直方向に回動可能である回動帯35aと、その回動帯に固定されており、回動帯の回動に伴って鉛直方向に移動する昇降部35bとを備える。昇降部35bには、レール部34aの一端部が固定されている。
【0057】
移載機構32は、上述した水平移動機構及び昇降機構による相互動作により、把持部33を、ロードポートLP1、OHTポートP1及びバッファP2間でX方向及び鉛直方向に移動させると共に、把持部33にてFOUP3を把持又は解放することにより、それらの間でFOUP3を移載する。移載機構32における移動、FOUP3の移載等の動作は、製造システム100のコントローラにより制御される。
【0058】
バッファ装置30は、開口H11を介して、OHTポートP1を用いて、ビークル10との間で、FOUP3の受け渡しを行う。バッファ装置30は、開口H12を介して、ロードポートLP1を用いて、製造装置20との間で、FOUP3の受け渡しを行う。更に、バッファ装置30は、その内部にて、把持部33、スライド部34b及び昇降部35bを動作させることで、OHTポートP1及びロードポートLP1間における、FOUP3の移動を、直接又はバッファP2を介して行う。
【0059】
上述のような移載動作を実行するために、バッファ装置30は、初期導入の際には、工場内外の他の場所から運ばれてきた後、製造装置20の設置位置及びビークル10の停車位置に対して、正確に位置決めされる形で設置される。或いは、バッファ装置30は、定期又は不定期にメンテナンスされたり、修理されたりする。このため、バッファ装置30は、四つのキャスター38を底部に有してなる台車の本体をなすベース板50上に載置されている。バッファ装置30は、キャスター38の転動を利用して、人力又は動力により、向上の床上を移動可能とされている。
【0060】
例えば、バッファ装置30は、その本体部31が、ベース板50に対してネジ止め、リベット止め、接着剤止めされたり、溶接されたりにより、両者間における位置関係が不変となるように、強固に載置或いは固定されている。なお、バッファ装置30の本体部31の底板が、ベース板50を兼ねていてもよい。いずれの場合にも、ベース板50に載置されたバッファ装置30は、床に対して単に設置されるのみでは足りず、法定基準或いは規格基準を満足するように、ベース板50或いは台車と共に、耐震固定される必要がある。
【0061】
このため、本実施形態では特に、ベース板50には、本発明に係る「耐震固定装置」の一例として、二種類の第1耐震固定装置51及び第2耐震固定装置52が設けられている。第1耐震固定装置51は、ベース板50における製造装置20に近い側の二隅に設けられ、第2耐震固定装置52は、ベース板50における製造装置20から遠い側の二隅に設けられる。第1耐震固定装置51及び第2耐震固定装置52は、床上部分における構造は、後で詳述するように相異なり、床下部分、即ち床側に固定された部分における構造は、相互に同一である。
【0062】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態に係る耐震固定装置を適用可能な床及び床下の構造について説明する。ここに図3は、床の構造を平面的に示し、図4は、床を構成する1枚のグレーチングの裏側を見たもので、これを支持する支柱と共に示されている。
【0063】
図3に示すように、床は、本発明に係る「平板状床部材」の一例であるグレーチング201が、マトリクス状に敷き詰められてなる。複数のグレーチング201は、コンクリート床である土台200上に設置された、本発明に係る「基礎構造体」の一例である根太211の上に、鉛直に立設された複数の支柱201Cを介して、敷き詰められている。即ち、グレーチング201と土台200との間には、根太211及び支柱201Cの高さに応じた空間が広がっており、二重床構造が構築されている。なお、支柱201Cは、グレーチング201の四隅に位置するように立設されており、一本の支柱201Cの支柱本体よりも幅広に形成された上面にて、相隣接する4枚のグレーチング201の隅を支持している。
【0064】
相隣接する二本の根太211間には、棒状構造体212が渡されている。1本の棒状構造体212のみが図示されているが、後述のように、棒状構造体212は、複数の耐震固定装置が固定される箇所に対応する位置に複数配設される。棒状構造体212は、図中、根太211上における矢印AR1及び矢印AR2で示した方向の任意の位置に、取り付け可能である。
【0065】
図4に示すように、グレーチング201は、その四辺の縁にリブ201Rを有する。支柱201Cは、グレーチング201の四隅にてグレーチングのリブ201Rの下面を支持するように配置される。なお、グレーチング201の主面には、全域に渡って直径コンマ数cm〜2cm程度の小径の空気孔201hが空気流通用に多数開孔されている。
【0066】
次に、図5及び図6を参照して、耐震固定装置の構成について説明する。ここに図5は、第1耐震固定装置51及び第2耐震固定装置52を、ベース板50、グレーチング201及び土台200等と共に示し、図6は、根太211等から床下が構成される様子を示す。
【0067】
図5に示すように、第1耐震固定装置51は、根太211に渡された棒状構造体212から立設された床側部材701と、ベース板50に設けられた第1機器側部材501とを含む。第2耐震固定装置52は、床側部材701と、ベース板50に設けられた第2機器側部材601とを含む。床側部材701は、第1耐震固定装置51及び第2耐震固定装置52間で共通である。
【0068】
床側部材701は、下端側にて、棒状構造体212に取り付けられ、上端側にて、グレーチング201に開孔された貫通孔201Hに挿入されている。床側部材701は、本発明に係る「床側連結部材」の一例として機能する。床側部材701は、一の貫通孔201H内にて、本発明の「第1機器側連結部材」の一例として機能する第1機器側部材501の下端側に連結可能に構成されており、同様に、他の貫通孔201H内にて、本発明の「第2機器側連結部材」の一例として機能する第2機器側部材601の下端側に連結可能に構成されている。
【0069】
図6に示すように、床下には予め、根太211が、図中点線で示した支柱201cを立設するために、耐震固定装置の要否・有無に拘わらずに、土台200上に強固に取り付けられている(図6上段参照)。
【0070】
次に、バッファ装置30を実際に設置する作業に相前後して或いは並行して、第1耐震固定装置51及び第2耐震固定装置52で固定すべき場所における床下には夫々、棒状構造体212が、根太211上に取り付けられる(図6中段参照)。根太211に沿った方向の位置調整は、棒状構造体212を、根太211の何処に取り付けるかにより、なされる。即ち、矢印AR1及びAR2で示したように、この方向の位置調整については、棒状構造体212を根太211の任意箇所に取り付け可能であることから容易である。
【0071】
次に、第1耐震固定装置51及び第2耐震固定装置52で固定すべき場所における床下には夫々、床側部材701が、既に根太211に対して強固に取り付けられている棒状構造体212上に取り付けられる(図6下段参照)。ここでの取り付けは、例えば、床側部材701の下端側における幅広に形成された部分の周囲4箇所にて、棒状構造体212にネジ止めされる。棒状構造体212に沿った方向の位置調整は、床側部材701を、棒状構造体212の何処に取り付けるかにより、なされる。即ち、矢印AR3及びAR4で示したように、この方向の位置調整については、床側部材701を棒状構造体212の任意箇所に取り付け可能であることから容易である。なお、床側部材701には、上側に向って開口していると共に、貫通孔201Hと同軸に鉛直方向に延在する雌ネジが切られた、細長いネジ穴701nが開けられている。
【0072】
図6に示した床下の造作作業中には、第1耐震固定装置51又は第2耐震固定装置52で固定すべき場所におけるグレーチング201が一個又は周辺複数個だけ、一旦取り除かれるので、床下部材701の取り付け作業は、比較的容易である。
【0073】
このような床下の造作作業に相前後して或いは並行して、第1耐震固定装置51又は第2耐震固定装置52で固定すべき場所におけるグレーチング201には、例えば直径2〜3cmなどの貫通孔201Hが開孔される。この際、既存の空気孔201hは、貫通孔201Hに比べて小径であるので、殆ど考慮しなくてよい。
【0074】
他方、バッファ装置30を実際に設置する作業に相前後して或いは並行して、第1機器側部材501は、床側部材701に対向する床上に設けられ、第2機器側部材601は、床側部材701に対向するベース板50及び床上に設けられる。
【0075】
以上のように構成されているので、耐震固定を行う際には、キャスター38によりバッファ装置30が、製造装置20に面する設置位置まで移動され、第1機器側部材501及び第2機器側部材601が床側部材701と同一水平位置になるように停止される。すると、第1機器側部材501及び第2機器側部材601は、それらの上端側にて夫々ベース板50に固定され、それらの下端側にて夫々、貫通孔201Hを介して、床側部材701と連結される。
【0076】
この際、バッファ装置30を床上に耐震固定するための機械的な強度は、ベース板50、第1機器側部材501及び第2機器側部材601、床側部材701、棒状構造体212、根太211及び土台200に主に依存する。言い換えれば、ここでの強度は、グレーチング201に殆ど依存しない。特に、既存の空気孔201hに加えて貫通孔201Hが開孔されるので、グレーチング201の強度自体は多少低下するものの、本実施形態に係る耐震固定は、グレーチング201を介して或いはグレーチング201を素通りして、ベース板50及び棒状構造体212間で直接行われる。このため、仮にグレーチング201の強度が、空気孔201hや特に貫通孔201Hを開孔することにより無視し得ない程度に落ちたとしても、耐震固定に関する限り問題は生じないようにすることも可能である。なお、バッファ装置30を床上に設置後に、キャスター38をグレーチング201の表面から完全には又は全く上げないことにより、バッファ装置30の重量を、上述した床下の各部(即ち、第1機器側部材501、第2機器側部材601、棒状構造体212、根太211等)とグレーチング201とに、分散させるようにしてもよい。
【0077】
次に、図7〜図10を参照して、図5及び図6に示した耐震固定装置の構成について、より詳細に説明する。ここに、図7は、第1耐震固定装置51を拡大して示し、図8は、第1耐震固定装置51が床下部材701に連結される様子を示す。図9は、第2耐震固定装置52を拡大して示し、図10は、第2耐震固定装置52がベース板50に上下位置調整された後に、床側部材701に連結される様子を示す。
【0078】
図7及び図8に示すように、第1耐震固定装置51を構成する第1機器側部材501は、その下端側にて、貫通孔201Hを介して、床側部材701のネジ穴701nに連結可能な雄ネジ501Sが切られている。第1機器側部材501の上端側には、ベース板50に取り付けられた受け部材801(図7参照)に受けられる括れ501nを持つ突起部が形成されている。
【0079】
図8に示すように、耐震固定の際にはバッファ装置30が移動されて来るのに先んじて、第1機器側部材501は、図8中の左部分にて矢印AR11で示したように鉛直下方へと、貫通孔201Hを介して挿入される。更に、第1機器側部材501は、図8中の右部分にて示したように、床側部材701のネジ穴701n内に、雄ネジ501Sにてネジ込められる。なお、床側部材701は、予めネジ711にて棒状構造体212へと強固に取り付けられている。
【0080】
図7に示すように、第1機器側部材501及びベース板50間の固定については、水平一方向側が切り欠かれた当て止め金具8に、第1機器側部材501の上端の括れ501nが受けられることで実現される。特に、第1耐震固定装置51は、側方から移動してくる受け部801により受けられるので、バッファ装置30を水平移動させる動作にて、上述の如き、大まかな固定を先ず行える。
【0081】
これらの結果、第1耐震固定部材51については、水平二方向の位置について、一義的に且つ再現性を持って決められる。言い換えれば、ベース板50は、第1耐震固定部材51によって、第1機器側部材501に対する水平二方向位置が概ね固定されることになる。
【0082】
図9及び図10に示すように、第2耐震固定装置52を構成する第2機器側部材601は、一対の上下方向調整用のネジ部材602及びナット603により、ベース板50に対して上下方向調節後に、ベース板50に対して固定可能に構成されている。ネジ部材602は、ベース板50における貫通孔201Hに対向する位置に開けられ且つ雌ネジが切られた固定用穴50H内にて、上下位置が調整可能である。ネジ部材602は、ナット603により、その上下位置が固定される。これら一対のネジ部材602及びナット603から、本発明に係る「固定部材」の一例を構成されている。
【0083】
更に、ネジ部材602は、貫通孔201Hと同軸である同軸貫通穴602Hを内部に有する。第2機器側部材601は、その下端側にて、同軸貫通穴602H及び貫通孔201Hを介して、床側部材701のネジ穴701nに連結可能な雄ネジ601Sが切られている。
【0084】
図10に示すように、耐震固定の際には、ベース板50に対して、ネジ部材602及びナット603は、図10中の左部分にて矢印AR12、AR13で示したように固定用穴50H内で鉛直上下方向について調節される。調節が終わると、図10中、中央部分に示すように、第2機器側部材601は、ベース板50に対してナット603により上下位置が固定されたネジ部材602の同軸貫通穴602H内に、矢印AR11で示したように鉛直下方へと挿入される。更に、第2機器側部材601は、貫通孔201Hを介して、挿入される。更に、第2機器側部材601は、図10中の右部分にて示したように、床側部材701のネジ穴701n内に、雄ネジ601Sにてネジ込められる。この際、第2機器側部材601は、その幅広頭部の周囲にある下面が、ネジ部材602の上面に当接することで、その上下位置がベース板50に対して規定される。
【0085】
これらの結果、第2耐震固定部材52については、水平二方向の位置だけではなく、上下方向位置或いは鉛直方向位置についても、一義的に且つ再現性を持って決められる。製造装置20やビークル10の停止位置との関係で、位置決めに調整が必要であれば、例えば、図10に示した作業を再度或いは繰り返して行えばよい。或いは、図6に示した床側部材701の位置調整から再度或いは繰り返し行えばよい。
【0086】
なお、第2機器側部材601による位置決め・固定は、図7及び図8に示した第1耐震固定装置51による大まかな位置決め・固定の後に、同軸貫通穴602Hに挿入或いは勘合されること実施される。即ち、第1耐震固定装置51によってベース板50の水平位置を概ね固定したままで、上述の如き、第2機器側連結部材601による固定を行える。よって、耐震固定に係る作業の手順としては、図7及び図8に示した第1耐震固定装置51による固定を先ず行い、その後に、図9及び図10に示した、第2機器側部材601を同軸貫通穴602Hに挿入する作業或いは少なくとも同軸貫通穴602Hを介して貫通孔201Hに挿入する作業以降を行うとよい。このようにすれば、先ず、ベース板50に搭載されたバッファ装置30を、製造装置20に対面する設置位置までキャスター38を利用して移動させて、第1耐震固定装置51による水平二方向位置の大まかな決定を行い、その後に、第2耐震固定装置52による水平二方向位置及び上下方向位置の決定を高精度で行うことが容易にできるので、実践上大変便利である。
【0087】
特に、最初の耐震固定時に、ネジ部材602及びナット603の調節も含めた第2耐震固定装置52の上下位置を調整した後、その上下位置を固定しておけば、その後に、固定の解除と固定とを繰り返して行っても、第2耐震固定装置52のベース板50に対する上下位置が不動である限り、極めて高い位置精度を出すことが出来る。ティーチング等の作業も、最初に第1耐震固定装置51の水平位置並びに第2耐震固定装置52の水平位置及び上下位置を調整する作業と共に一度だけ行っておけば、以降に行う必要は基本的になくなる。
【0088】
以上のように本実施形態の第1耐震固定装置51及び第1耐震固定装置52によって、法律や規格等で決められた耐震基準を満たすように、バッファ装置30を、床に対して強固に固定することが比較的簡単且つ迅速に実行できる。しかも、比較的容易にして、固定及び固定解除可能としつつ高精度で位置決めを実行可能である。例えば、工場内におけるライン設計・仕様等に応じて、或いはバッファ装置30等のメンテナンス・補修を定期又は不定期に実施する際に、著しく有利となる。
【0089】
加えて、図7〜図10に示したように、床側部材701は、その上端面の高さが、グレーチング201からなる床の表面高さより低くなるように構成されている。よって、バッファ装置30が取り除かれた場合に、床側部材701の一部が床から出っ張って邪魔になることを未然防止できる。
【0090】
次に、図11〜図13を参照して、第1耐震固定装置51及び第2耐震固定装置52のベース板50の底部への取り付け位置について説明する。ここに、図11は、ベース板50における、固定される二つの第1耐震固定装置51及び二つの第2耐震固定装置52の配置を示し、図12は、図11の固定装置のうちの一つの第1耐震固定装置51について、第1耐震固定装置51が実際に取り付けられた一つの取付可能な部位と、実際には取り付けられなかった三つの取付可能な部位(即ち、合計四つの取付可能な部位)を拡大して示す。図13は、図12の四つの取付可能な部位の位置が、グレーチング201における開孔可能な領域との関係で、どこに用意されるかを示す(斜線エリアは、開孔不可能な領域を示す)。
【0091】
図11に示すように、二つの第1耐震固定装置51及び二つの第2耐震固定装置52は夫々、ベース板50の四隅に設けられたキャスター38の付近に円により図示されたエリア内に配置されている。以下、これらのうち特に、図11の左上の隅に位置する第1耐震固定装置51を例にとって、説明を続ける。
【0092】
図12に示すように、キャスター38の付近において、第1耐震固定装置51を取付可能な部位は、部位51a、51b、51c及び51dの4つ用意されている。これら4つの部位は、図12中横方向に距離Dxだけ離間しており、図12中縦方向に距離Dyだけ離間している。更に、図12は、部位51dに、実際の第1耐震固定装置51が取り付けられた様子を示している。即ち、部位51b、51c及び51dについては、取り付ける部位の候補ではあったものの、以下に説明するグレーチング201との関係で、実際には取り付けられなかった場合を示している。このような候補となる取り付け可能な部位には、金具801取付用の穴や孔が予め開けられていてもよいし、取付位置マークが付されていてもよい。
【0093】
このように四つの取り付け可能な部位を予め用意することで、実際の設置位置に応じて決められたグレーチング201(図4参照)の四辺や四隅との関係において、グレーチング201の貫通孔201Hを開けてはならないエリアに、実際に貫通孔201Hを開けなければならない(即ち、開けなければ第1耐震固定装置51を取り付けられない)事態を回避できる可能性が、格段に高められる。即ち、グレーチング201における開孔してはならないエリアとの関係で、距離Dx及びDyを決めておけば、このような可能性を格段に高められる。
【0094】
なお、図11に示したように、第1耐震固定装置51に限らず、第2耐震固定装置52を取り付け可能な部位についても、部位52a、52b、52c及び52dの4つ用意しておくことで、同様の効果が得られる。
【0095】
図13に示すように、より具体的には、ベース板50には、第1機器側部材501(又は第2機器側部材601)を取り付け可能に構成された部位が、床上で平面的に見て、グレーチング201の各々における四辺から所定距離だけ離れた、貫通孔201Hを開孔可能な領域内(図中、未ハッチングの領域内)に少なくとも一つ位置するように、一つの貫通孔201Hに対して四つずつ相互から離間して設けられている。即ち、この場合には、グレーチング201は夫々、床上で平面的に見て、例えば一辺が50〜60cm程度の正方形をなし、図中黒くハッチングされた開孔すべきでない領域を避けるように、各辺から所定長さL以上離れた開孔可能な領域(即ち、図中未ハッチングの領域)が規定されている。貫通孔201Hは、直径Rの円形をなし、四つずつ設けられた第1耐震固定装置51(又は第2耐震固定装置)を取り付け可能な部位は、一辺が2L+R以上の長さの正方形の各頂点に位置するように用意されている。
【0096】
よって、図11及び図12に示した四つずつ設けられる、取り付け可能な部位のうち、いずれか一つについては、幾何学的に必ず、グレーチング201における開孔可能な領域内(図13中で、未ハッチングの領域)に位置するようにできる。即ち、数学的なルールに従って、このような状況を確実且つ簡単に担保できる。特に、正方形の一辺の長さを2L+Rに等しい値に又は若干のマージンを含めて2L+Rとほぼ等しい値に設定することで、無闇に正方形を広げる必要がなくなる。即ち、四つの部位の水平位置を相互に近接配置することが可能となる、
【0097】
このように図13に示した如き配置を採用すれば、グレーチング201の四隅や縁に貫通孔201Hを開孔する事態が発生することで、グレーチング201の強度低下を招くことを確実に未然防止できる。しかも、グレーチング201に対して、バッファ装置30を工場主の要望に沿う所望位置に固定する用の貫通孔201Hを、いずれかの位置(即ち、上述の四つの部位のうちのいずれか一つに対応する平面位置)に開孔できる。バッファ装置30を任意位置にて固定しても、グレーチング201の強度に支障を来たす事態を未然防止できる。
【0098】
次に図14を参照して、本発明の「受け部」の一例としての当て止め金具801の構成について説明を加える。図14は、図12に示した金具801の外観斜視図である。
【0099】
図14に示すように、金具801には、ベース板50をキャスター38で水平に移動させた結果、金具801がくびれ501n(図7及び図8参照)に嵌る際に、受け部材801がくびれ501nから鉛直上向きに力を受けるように、テーパ801tが形成されている。よって、テーパ801tにくびれ501nが乗り上げる際に発生する鉛直上向きの分力の作用により、金具801がくびれ501n(図7及び図8参照)に嵌る際に、バッファ装置30は、ベース板50ごと、大なり小なり床から浮き上がるか、又は少なくともキャスター38を介して床にかかる荷重は、大なり小なり低減される。この結果、キャスター38の存在にかかわらずに、より高精度で位置決めを実施可能となる。加えて、耐震固定した後における、過重軽減によって、キャスター38を含めた製造システム全体の装置寿命や、グレーチング201の寿命を長くすることも可能となる。
【0100】
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う耐震固定装置もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
3…FOUP、10…ビークル、20…製造装置、30…バッファ装置、50…ベース板、51…第1耐震固定装置、52…第2耐震固定装置、201…グレーチング、201H…貫通孔、501…第1機器側部材、601…第2機器側部材、701…床側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平板状床部材が土台及び該土台上の基礎構造体の少なくとも一方から立設された複数の支柱を介することで前記土台から距離を隔てて敷き詰められてなる床に設けられた床側部材と、前記床上を移動可能な機器の本体及び該機器が載置される台車の少なくとも一方に設けられた機器側部材とを含む、前記機器を前記床上に耐震固定するための耐震固定装置であって、
前記床側部材は、下端側にて、前記平板状床部材に開けられた貫通孔に対向する位置における前記床の床下で前記土台又は前記基礎構造体に取り付けられ、上端側にて、前記貫通孔に挿入されている又は面している前記貫通孔と同軸に上側に開口又は突出した床側連結部材を備え、
前記機器側部材は、下端側にて、前記貫通孔を介して前記床側連結部材と連結可能であり、上端側にて、前記本体又は前記台車のベース板に固定される機器側連結部材を備える
ことを特徴とする耐震固定装置。
【請求項2】
前記床側部材及び前記機器側部材は夫々、前記機器の一つに対して複数設けられ、
複数の前記機器側部材は、
一の前記床側部材に対し、前記機器側連結部材として、下端側にて、前記貫通孔を介して前記床側連結部材と連結可能な形状を有すると共に、上端側に、前記ベース板に取り付けられた水平位置決め用の受け部材に、受けられる突起部を有する、第1機器側連結部材と、
他の前記床側部材に対し、前記機器側連結部材として、(i)前記ベース板における前記貫通孔に対向する位置に開けられた固定用穴内に、上下位置が調整可能に固定されると共に、前記貫通孔と同軸である同軸貫通穴を内部に有する上下位置決め用の固定部材、及び(ii)下端側にて、前記同軸貫通穴及び前記貫通孔を介して前記床側連結部材と連結可能な形状を有すると共に、上端側に、前記固定部材の上面に当接する下面を縁に持つように前記同軸貫通穴より幅広な頭部を有する、第2機器側連結部材と
を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の耐震固定装置。
【請求項3】
前記固定用穴内に雌ネジが切られており、
前記固定部材は、
前記雌ネジ内に係合されると共に前記同軸貫通穴を有する雄ネジ部材と、
前記雄ネジ部材の前記ベース板の下側から覗く先端側に係合すると共に、前記固定用穴の周囲にて前記ベース板の下面に当接することで前記雄ネジ部材が前記雌ネジ内を前記軸方向に移動するのを阻止する雌ネジが切られたナット部材と
を有することを特徴とする請求項2に記載の耐震固定装置。
【請求項4】
前記突起部は、くびれを有し、
前記受け部材は、側方に切り欠かかれており且つ該切り欠かれた側から前記くびれに嵌る形状を有し、
前記受け部材及び前記くびれにおける相互に当接する面のうち少なくとも一方に、前記受け部材が前記くびれに嵌る際に、前記受け部材が前記くびれから鉛直上向きに力を受けるように、テーパが形成されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の耐震固定装置。
【請求項5】
前記床側部材は、上端側の先端における高さが、前記床の表面高さと同じに又はより低くなるように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の耐震固定装置。
【請求項6】
前記床側部材は、下端側にて前記基礎構造体の一部をなす複数の根太に交わる方向に前記複数の根太上に渡された、前記基礎構造体の他部をなす棒状構造体に取り付けられており、
前記棒状構造体は、前記根太の延在方向における任意位置にて前記根太に対して取り付け可能に構成されており、
前記床側部材は、下端側にて、前記棒状構造体の延在方向における任意位置にて前記棒状構造体に対して取り付け可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の耐震固定装置。
【請求項7】
前記ベース板には、前記機器側部材を取り付け可能に構成された部位が、前記機器が当該耐震固定装置により固定された場合に、前記床上で平面的に見て、前記平板状床部材の各々における四辺から所定距離だけ離れた、前記貫通孔を開孔可能な領域内に少なくとも一つ位置するように、一つの前記貫通孔に対して四つずつ相互から離間して設けられている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の耐震固定装置。
【請求項8】
前記平板状板部材は夫々、前記床上で平面的に見て、矩形をなし、各辺から所定長さL以上離れた領域として、前記開孔可能な領域が規定されており、
前記貫通孔は、前記床上で平面的に見て、直径Rの円形をなし、
前記四つずつ設けられた部位は、前記床上で平面的に見て、一辺が2L+R以上の長さの矩形の各頂点に位置するように設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の耐震固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−149421(P2012−149421A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8052(P2011−8052)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】