説明

耕耘播種整地装置

【課題】軽く飛びやすい種子等の取り扱いにくい種子であっても、圃場の地面から所望の深さに確実に種子を播く耕耘播種整地装置の提供。
【解決手段】圃場を走行する走行体1に設けられ、圃場を所望の深さで耕耘する耕耘ロータリ2と、前記走行体1に設けられ、耕耘ロータリ2の後を移動して耕耘された圃場を平坦に均す整地板9と、この整地板9の下に固定され、圃場に種子20を播く位置に土がかぶるのを防止するカバー8と、種子20をバルク状に収納した供給ホッパ3から走行体1の走行に同期して1個以上の種子を取り出して播種シュート6に送り出すフィーダ4とを有し、播種シュート6の下端の種子排出口7が前記カバー8の下に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を耕耘した後、平坦に整地すると共に種子を圃場の所望の深さに列をなして一定間隔で播く耕耘播種整地装置に関し、取り扱いにくい種子でも確実に圃場の所望の深さに播き込む耕耘播種整地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場に種子を播く作業では、予め圃場を耕耘し、圃場の土壌を柔らかくしたり、さらには土壌の消毒、改良、施肥等を行った後に種子を播いて覆土する。従来、圃場の耕耘と播種を同時進行で行うために耕耘機に種子を収納したホッパを積み、耕耘機の走行と耕耘に同期して、その後から種子を播いて覆土する方式の播種が提案され、使用されている。このような播種装置は例えば、特開2002−272208号公報や特開2000−139107号公報に記載されたものが知られている。
【0003】
これらの播種装置では、耕耘爪を回転させながら圃場を進行させて圃場を耕耘する耕耘ロータリの後に圃場に播種溝を掘るディスクや爪状の溝掘手段を設け、これにより圃場の地面に耕耘機の進行方向に長い溝を掘り、その後から溝の中に1個以上の種子を順次落とし込んで種子を播いていくものである。種子はホッパ内にバルク状に収納し、耕耘機の進行に同期して回転するドラムやディスク等のエスケープメント機構により、1個以上の種子を圃場に掘った溝にほぼ一定間隔で落とし込んでいき、その後に覆土する。
【0004】
しかしながら、このように圃場に溝を設けた後、それに続いて溝の中に種子を落とし込む方式の播種装置では、大豆や小豆等のように球形に近い形態を有する種子であれば兎も角、細長い形や不定形な種子、或いは軽く飛びやすい種子等では、落とし込んだ種子が溝の底に収まりにくい。このため、播種深さが一定でなくなってしまう。また、 このような種子では、回転するドラムやディスク等のエスケープメント機構を用いてホッパから確実に種子を取り出すことは出来ない。そのため、播種の間隔、播種量にバラツキが生じやすい。
【0005】
近年の水稲栽培の分野において、水田に育苗器で育てた稲苗を植えるのではなく、例えば特開2000−333511号公報に記載されたように、水を張っていない圃場に稲籾を直に播き、その後圃場に水を張らないかあるいは浅く水を張って発芽させ、稲が或る程度育った後水を張って水田にする方式の、いわゆる直播水稲栽培法が開発されている。このような直播方式に使用される稲籾は、表皮に起毛があって軽いため、ホッパからの取り出し難く、溝の底に落とし込むことも難しい。
【0006】
【特許文献1】特開2004−298028号公報
【特許文献2】特開2004−73021号公報
【特許文献3】特開2002−325506号公報
【特許文献4】特開2002−272208号公報
【特許文献5】特開2000−333511号公報
【特許文献6】特開2000−139107号公報
【特許文献7】特開平8−308319号公報
【特許文献8】特開平6−209614号公報
【特許文献9】特開平6−2号公報
【特許文献10】特開平5−15209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の耕耘播種整地装置における課題に鑑み、その第一の目的は、不定形の種子、軽く飛びやすい種子等の取り扱いにくい種子であっても、圃場の地面から所望の深さに確実に種子を播くことである。その第二の目的は、これらの取り扱いにくい種子であっても、走行体の走行に同期してホッパから種子を確実に取り出してほぼ一定の間隔で圃場に播くことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、前記の目的を達成するため、供給ホッパ3側からフィーダ4を通して種子が分配、供給される播種シュート6の下端の種子排出口7を、耕耘された圃場を平坦に均す整地板9の下に配置した。そして、その播種シュート6の種子排出口7の部分が土で埋まらないように、同種子排出口7を整地板9の下に設けたカバー8で覆った。またフィーダ4では、回転する軸15に放射状に設けられた可撓性を有するピックアップノズル16の先端を負圧として供給ホッパ3のシュート14上で種子を取り上げ、播種シュート6の上端の分配ホッパ5に種子20を放出して分配、供給するようにした。
【0009】
すなわち、本発明による耕耘播種整地装置は、圃場を走行する走行体1に設けられ、圃場を所望の深さで耕耘する耕耘ロータリ2と、前記走行体1に設けられ、耕耘ロータリ2の後を移動して耕耘された圃場を平坦に均す整地板9と、この整地板9の下に固定され、圃場に種子20を播く位置に土がかぶるのを防止するカバー8と、種子20をバルク状に収納した供給ホッパ3から走行体1の走行に同期して1個以上の種子を取り出して播種シュート6に送り出すフィーダ4とを有し、播種シュート6の下端の種子排出口7が前記カバー8の下に配置されているものである。
【0010】
このような本発明による耕耘播種整地装置では、播種シュート6の下端の種子排出口7が整地板9の下に固定されたカバー8の下に配置されているため、播種シュート6の下端の種子排出口7から排出される種子20は、整地板9により整地される圃場の地面から正確に一定の深さに播かれる。しかも、播種シュート6の下端の種子排出口7が配置されたカバー8は、整地板9の下に固定されて圃場に種子20を播く位置に土がかぶるのを防止するため、整地板9による整地中の土に邪魔されることなく確実に種子20を播くことが可能である。
さらに整地板9の後方に、播種シュート6を通して送られてきた種子20を播いた後の圃場を転圧する転圧ローラ10が設けられており、これにより種子20を播いた後の圃場が転圧されるので、圃場が平坦になると共に、圃場の地面に土が風で飛散しにくくなる。
【0011】
前記のフィーダ4は、走行体1の走行に同期して回転する軸15に放射状に設けられた少なくとも先端が可撓性を有するピックアップノズル16の先端を負圧として供給ホッパ3のシュート14上で種子を取り上げ、播種シュート6の上端の分配ホッパ5に種子20を放出する。このようなフィーダ4では、不定形な種子や表面に起毛がある軽い種子等のように、取り扱い難い種子でも、ピックアップノズル16の先端の負圧により確実に取り上げ、播種シュート6に分配、供給し、播種することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した通り、本発明による耕耘播種整地装置では、耕耘ロータリ2で耕耘した後の圃場を整地板9で平坦に整地しながら、その整地される圃場の地面から所望の深さに正確に種子を播くことが出来る。さらに、先端を負圧とするピックアップノズル16を使用したものでは、不定形の種子やその他取り扱いが難しい種子でも確実に分配、供給して圃場に播くことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、供給ホッパ3側から種子が分配、供給されれる播種シュート6の下端の種子排出口7を、耕耘された圃場を平坦に均す整地板9の下に配置すると共に、その播種シュート6の種子排出口7を整地板9の下に設けたカバー8で覆い、同種子排出口7が土で埋まらないようにした。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明による耕耘播種整地装置の一実施例を示す概略側面図であり、図2はその要部縦断側面図、図3は走行体側を省略して示した播種シュートの部分の縦断背面図である。
走行体1は例えば耕耘ロータリ2を取り付けたトラクタや耕耘機等であり、図1は人が搭乗して運転走行する形式のトラクタである。この他に、走行体はエンジンにより自走するが、オペレータは自ら歩行しながら運転操作する形式のものであってもよい。
【0015】
この走行体1の後部に取り付けた前記耕耘ロータリ2は走行体1の幅方向に複数組のロータリ爪を備え、これらロータリ爪が走行体1に搭載したエンジンの駆動系に連結操作されることにより回転し、圃場を耕耘する。
この耕耘ロータリ2の後方には走行体1の幅方向にわたって長い整地板9が取り付けられている。この整地板9は円柱形の棒状のものが先端にあり、これを耕耘ロータリ2で耕耘した圃場の地面に当てて走行することで圃場の地面を平坦に均す。図1〜図3において、「GL」はこの整地板9で整地される圃場の地面を示す。
【0016】
さらに整地板9の後方には走行体1の幅方向にわたって長い円筒ローラ状の転圧ローラ10が回転自在に支持されている。この転圧ローラ10は走行体1の走行に伴い、前記整地板9で整地した圃場の地面を転圧し、適当な圧力で踏み堅める。
以上が、走行体1による耕耘、整地、転圧の基本的な機能である。図示の装置では、この走行体1の基本機能に加え、走行体1に播種機能を果たす部分を搭載している。以下、これについて説明する。
【0017】
前述した耕耘ロータリ2と整地板9との間の上方に種子をバルク状に搭載した供給ホッパ3が備えられている。この供給ホッパ3の後方には、同供給ホッパ3に収納した種子を取り出すためのフィーダ4が設けられている。さらに、このフィーダ4の後方には上端に分配ホッパ5を有する播種シュート6が設けられている。図3に示すように、この播種シュート6は走行体1の幅方向に4本分かれて搭載されたパイプ状のものである。図示の例では播種シュート6が4本あり、従って種子は4条播きとなる。しかし、何条播きにするかは必要に応じて適宜選択されるべき事項である。
【0018】
図2に示すように、供給ホッパ3は、種子をバルク状に収納したホッパ本体13の部分から、その中の種子を底側から少しずつ後方へ排出するための緩傾斜したシュート14を有している。このシュート14にはホッパ本体13の部分から少しずつ種子が送られてくる。このシュート14の先端側は上方が開いており、その上にフィーダ4が配置されている。
【0019】
図2と図3に示すように、フィーダ4はホッパ3のシュート14の幅方向にわたって軸15を有し、この軸15はその両端が軸受18、18により回転自在に支持されている。この軸15は中空ダクト状のもので、その一端には変換継手19を介して真空ブロア11が接続されている。この真空ブロア11の駆動により、軸15内から空気が排出され、その軸15内が負圧に維持される。変換継手19は回転する軸19を真空ブロア11側の固定されたダクトには伝達せず、ダクトとしての接続だけを維持する機能を有するものである。この軸15には前述した転圧ローラ10の回転がベルト12を介して伝達されるようになっている。その軸15の回転方向は、図2に矢印で示すように図2において反時針方向である。
【0020】
中空ダクト状の軸15の外周には放射状にピックアップノズル16が設けられている。このピックアップノズル16は少なくとも先端が可撓性を有するチューブ状のもので、前記真空ブロア11の駆動により軸15の中が負圧とされることにより、その先端が負圧となる。このピックアップノズル16は軸15の下方にあるとき、その先端が前記ホッパ3のシュート14の真上にあり、且つそのシュート14に送り出されてきた種子20に接触する。図示の例では、ピックアップノズル16が軸15に90゜間隔で4本放射状に設けられている。但し、このピックアップノズル16の本数は圃場に種子を播く間隔により決定される。転圧ローラ10と軸15の回転比も同様である。また、ピックアップノズル16の径は種子の大きさ等の各要素により適宜決定すべき事項である。
【0021】
播種シュート6の上端には前記フィーダ4のピックアップノズル16の先端から放出される種子を受ける分配ホッパ5が設けられている。分配ホッパ5の開口部は、軸15の回転によりピックアップノズル16の先端が走行体1の最も後方に移動したとき、その先端の真下にある。走行体1の幅方向に並んだ分配ホッパ5の開口部の上には針金、ナイロン線等の線材17が張られている。この線材17は軸15の回転によりピックアップノズル16の先端が走行体1の最も後方に移動したとき、そのピックアップノズル16の先端が当たる位置に張られている。
【0022】
播種シュート6の下端の種子排出口7は前記整地板9の下に導かれている。整地板9にはブラケットを介して金属製のカバー8が取り付けられており、このカバー8は整地板9の真下にある。カバー8は先端が細く尖った形状をしており、両側及び底面は閉じられ、後面のみが開いている。播種シュート6の下端はこのカバー8の後面からその中に挿入され、カバー8の内側に固定されている。従って播種シュート6の種子排出口7はこのカバー8の中に位置する。
【0023】
前述したように、まず走行体1を圃場の上で走行させながら、耕耘ロータリ2で圃場を耕耘し、整地板9で均し、転圧ローラ10で転圧しながら、播種を行う。この動作をより詳しく説明する。
図1と図3に示すブロア11を駆動し、図2に示す中空ダクト状の軸15の中を減圧し、この軸15に放射状に設けられたピックアップノズル16の先端を負圧とする。この軸15はベルト12を介して転圧ローラ10の回転が伝達されるので、走行体1の走行に同期してその走行速度に対して一定の速度で図2に矢印で示す方向に回転する。
【0024】
他方ホッパ3からはホッパ本体13に収納された種子20が徐々に緩勾配のシュート14に送り出される。前記軸15の回転によりピックアップノズル16の先端がシュート14の上に来ると負圧によりピックアップノズル16の先端にシュート14上の種子が吸引、保持される。その後、軸15の回転によりピックアップノズル16が回転し、その先端が線材17に当たると、種子がピックアップノズル16の先端から離脱し、分配ホッパ5に放出される。
【0025】
分配ホッパ5に放出された種子20は播種シュート6を通ってその下端の種子放出口7から放出される。種子放出口7は前記カバー8により覆われていることにより、土が被らず、整地板9で均される圃場の地面から所望の深さに正確に種子20を放出出来る。またカバー8は先が尖った形状になっており、土中での推進抵抗を最小限にすることが出来る。 種子放出口7とカバー8の深さを整地板9に対して適宜選択することにより、圃場の地面から任意の深さに種子20を播くことが可能となる。その後転圧ローラ10が圃場の地面を転圧することにより、カバー8で掻いた土が埋め戻されると共に、圃場の地面が適当な圧力で締め堅められる。
【0026】
このようにして走行体1の走行により、圃場の耕耘、均し、播種、転圧という一連の作業が連続して行われる。種子20は整地板9で均される圃場の地面から所望の深さに正確に播くことが出来る。溝に落とし込む場合のように、種子を圃場に播く深さがばらつかない。また、真空吸引によるピックアップノズル16を使用することにより、ディスクやローラを使用したエスケープメント機構を用いたものでは扱いにくかった種子でも容易に取り出し、分配、搬送出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による耕耘播種整地装置の一実施例を示す概略側面図である。
【図2】本発明による耕耘播種整地装置の前記実施例を示す要部縦断側面図である。
【図3】本発明による耕耘播種整地装置の前記実施例を示す走行体側を省略して示した播種シュートの部分の縦断背面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 走行体
2 耕耘ロータリ
3 供給ホッパ
4 フィーダ
5 播種シュートの上端の分配ホッパ
6 播種シュート
7 播種シュートの下端の種子排出口
8 カバー
9 整地板
10 転圧ローラ
14 供給ホッパのシュート
15 フィーダの軸
16 フィーダのピックアップノズル
20 種子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を耕耘し、平坦に均し、その圃場にほぼ一定の間隔で種子(20)を播く装置において、圃場を走行する走行体(1)に設けられ、圃場を所望の深さで耕耘する耕耘ロータリ(2)と、前記走行体(1)に設けられ、耕耘ロータリ(2)の後を移動して耕耘された圃場を平坦に均す整地板(9)と、この整地板(9)の下に固定され、圃場に種子(20)を播く位置に土がかぶるのを防止するカバー(8)と、種子(20)をバルク状に収納した供給ホッパ(3)から走行体(1)の走行に同期して1個以上の種子を取り出して播種シュート(6)に送り出すフィーダ(4)とを有し、播種シュート(6)の下端の種子排出口(7)が前記カバー(8)の下に配置されていることを特徴とする耕耘播種整地装置。
【請求項2】
フィーダ(4)は、走行体(1)の走行に同期して回転する軸(15)に放射状に設けられた少なくとも先端が可撓性を有するピックアップノズル(16)の先端を負圧として供給ホッパ(3)のシュート(14)上で種子を取り上げ、播種シュート(6)の上端の分配ホッパ(5)に種子(20)を放出するものであることを特徴とする請求項1に記載の耕耘播種整地装置。
【請求項3】
整地板(9)の後方に、播種シュート(6)を通して送られてきた種子(20)を播いた後の圃場を転圧する転圧ローラ(10)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の耕耘播種整地装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−6706(P2007−6706A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187547(P2005−187547)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000178435)
【Fターム(参考)】