説明

耕耘装置

【課題】耕耘爪の上方を覆うロータリカバーと、このロータリカバーの後方で上下回動可能なリヤカバーを備える耕耘装置を農作業用車両の後部に装着し、前記農作業用車両を走行させながら果樹園内の除草や耕耘作業を行う場合、耕耘装置の最後部に設けたリヤカバーに果樹の幹や枝が直接接触し、当該リヤカバーが大きく変形したり破損するといった不具合が発生することを解消する。
【解決手段】リヤカバーの側部を防護するガード体35L,35Rを設けると共に、該ガード体35L,35Rを、耕耘装置12を単独で自立させる支持スタンドとして兼用できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の農作業用車両の後部にリンク機構を介して昇降可能に装着される耕耘装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの後部にリンク機構を介して昇降可能に装着されるサイドドライブ型のロータリ式耕耘装置は、左右中央のギヤケースから左右両側に筒フレームを突出させて、その一方側端に伝動ケースを他方端側にサイドプレートを下方へ向けて取付け、この伝動ケースとサイドプレートとの間にロータリ軸を軸架して、該ロータリ軸に耕耘爪を取付けている。そして、前記耕耘爪の上方を覆うロータリカバーと、このロータリカバーの後方で上下回動可能なリヤカバーと、ロータリカバーの後寄りでリヤカバーの左右両側を覆うサイドカバーを設けている。
【0003】
ところで、前記伝動ケースとサイドプレートはサイドカバーの外側へ突出しており、特に林檎や葡萄等の果樹園内で除草や耕耘作業を行う場合は、伝動ケースまたはサイドプレートに果樹の幹や枝が接触して、これらの果樹の幹や枝が折損したり傷を負う虞があり、その対策として、当該伝動ケースとサイドプレートの外側部分を平面視が弧状をした異物の引っ掛かり防止用のカバー体で被うことによって、伝動ケースまたはサイドプレートに果樹の幹や枝が直接接触することを回避するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−28401号公報(第2−3頁、図1−図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、上述した構成の従来のカバー体によれば、伝動ケースまたはサイドプレートに果樹の幹や枝が直接接触することを回避して、これらの果樹の幹や枝が折損したり傷を負うことを軽減することができるようになっている。しかし、果樹園内で除草や耕耘作業を行う場合は、間隔の狭い果樹の間を頻繁に方向変更しながらトラクタを走行させなければならず、前述のカバー体によって果樹の幹等への伝動ケース等の直接的な接当は防止できても、ロータリ式耕耘装置の最後部に位置するリヤカバーの左右両端部に果樹の幹や枝が接触し易く、それによって当該リヤカバーの左右両端部が大きく変形したり破損するといった不具合が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、農作業用車両の後部にリンク機構を介して昇降可能に装着される耕耘装置であって、前記耕耘装置は、耕耘爪の上方を覆うロータリカバーと、該ロータリカバーの後方で上下回動可能なリヤカバーを備えると共に、該リヤカバーの側部を防護するガード体を設けたことを第1の特徴としている。
【0006】
そして、前記ガード体を、耕耘装置を単独で自立させる支持スタンドとして兼用することを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、耕耘爪の上方を覆うロータリカバーと、該ロータリカバーの後方で上下回動可能なリヤカバーを備える耕耘装置において、リヤカバーの側部を防護するガード体を設けたことによって、特に果樹園内で除草や耕耘作業を行う場合、間隔の狭い果樹の間を頻繁に方向変更しながら農作業用車両を走行させても、当該耕耘装置の最後部に位置するリヤカバーの左右両端部が果樹の幹や枝と直接接触することを防止できるので、当該リヤカバーの左右両端部が大きく変形したり破損するといった不具合の発生が解消される。
【0008】
そして、請求項2の発明によれば、前記ガード体を、耕耘装置を単独で自立させるための支持スタンドとして兼用することができるので、メンテナンス等でリンク機構から取り外した当該耕耘装置を安定して自立させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、農作業用車両であるトラクタ10の後方に2点リンク機構11を介して昇降可能に装着したロータリ耕耘装置12の第一実施例を示す側面図であり、また図2は、同じくロータリ耕耘装置12の平面図である。
【0010】
そして、ロータリ耕耘装置12の中央部にはギヤケース13が設けてあり、このギヤケース13の上部に一対のトップマスト14,14を固設すると共に、このトップマスト14,14の後側上部には、尾輪や畦立器等を装着するツールバー15の上下調節を行うネジ式調節装置16を軸支している。
【0011】
また、ギヤケース13の左右両側には、ロータリ耕耘装置12の横伝動筒を兼ねる左側筒状アーム17Lと、この左側筒状アーム17Lと略同寸法の右側筒状アーム17Rを配設すると共に、左側筒状アーム17Lの外端(左端側)にはロータリ耕耘装置12の伝動ケースであるチェンケース18、一方右側筒状アーム17Rの外端(右端側)にはサイドプレート19を固設してある。そして、チェンケース18とサイドプレート19の下部に耕耘軸21を軸支すると共に、この耕耘軸21に耕耘用の複数本の耕耘爪22を取り付けている。尚、図3に示すものは、前記耕耘軸21の両端に備える図示しないフランジに除草用のロータ23を一体的に固着した構成のものである。
【0012】
上述した耕耘爪22、またはロータ23の上方には、これら耕耘爪22、またはロータ23を覆う側面視で円弧状に形成したロータリカバー24を設けてあり、このロータリカバー24後部の支点Pを回動中心として上下回動可能にリヤカバー25を左右一対の吊り下げロッド26,26を介して軸支すると共に、当該リヤカバー25の左右両側を覆うサイドカバー27L,27Rを、前記ロータリカバー24の左右両端に固設した側板24a,24aに螺設している。
【0013】
尚、耕耘軸21の駆動方法は、トラクタ10の後部PTO軸31からヨークジョイント32を介してギヤケース1に入力された動力を、このギヤケース13内の図示しないベベルギヤを介して左側筒状アーム17Lに内装した駆動軸に伝動し、更にチェンケース18
内の図示しないチェン伝動機構を介して、当該耕耘軸21を回転駆動させるように構成した所謂サイドドライブ方式の伝動機構を採用している。
【0014】
また、角パイプからなるツールバー15の左右両端には、リヤカバー25とサイドカバー27L,27Rの側部を防護する側面視で略L字状のガード体35L,35Rを取り付けている。更に詳しくは、前記左右一対のガード体35L,35Rの基端部は、角パイプからなるツールバー15の左右両端に外嵌可能な支持(丸)パイプ36を備え、更に該支持パイプ36の外側寄りに配置した二枚のプレート37,37に側面視で略L字状に形成した丸パイプ38の基端部を挟持した状態で、これら支持パイプ36、プレート37,37、及び丸パイプ38を一体に固着することによって、当該ガード体35L,35Rを形成している。
【0015】
そして、図1に示すように耕耘軸21に耕耘爪(ナタ爪)22を取り付けて標準耕耘を行う場合は、ガード体35L,35Rを上方に回動させて固定した退避姿勢Aと、図2及び図3に示すように耕耘軸21に除草用のロータ23を取り付けて果樹園内で除草作業を行う場合には、ガード体35L,35Rでリヤカバー25とサイドカバー27L,27Rの側部を防護する作用姿勢Bとに切り換えて固定できる構成になっている。
【0016】
即ち、図4に示す断面図のように、ツールバー15の左右両端の上下面中央には、上下方向に貫通する孔15aを設ける一方、このツールバー15に設けた孔15aに対応するガード体35L,35Rの支持パイプ36側には、当該ガード体35L,35Rを前記退避姿勢Aと作用姿勢Bとに切り換えて固定するための頭付ピン41を嵌挿可能な二つの貫通孔41a,41bを設けている。尚、図中の符号42は、頭付ピン41の抜けを防止するスナップピンである。
【0017】
上述の如く構成したガード体35L,35Rを作用姿勢Bの状態に固定することによって、当該ガード体35L,35Rを構成する丸パイプ38の下部は地面と略平行となり、且つその終端部は、リヤカバー25の後端よりも延出しており、特に果樹園内で除草や耕耘作業を行う場合、間隔の狭い果樹の間を頻繁に方向変更しながらトラクタ10を走行させても、当該耕耘装置12の最後部に位置するリヤカバー25の左右両端部や、左右のサイドカバー27L,27Rが果樹の幹T1,T2や枝と直接接触することを防止できるので、当該リヤカバー25の左右両端部や左右のサイドカバー27L,27Rが大きく変形したり破損するといった不具合の発生が解消される。
【0018】
更に、別の作業機を付け替えるために2点リンク機構11から耕耘装置12を取り外す際には、ツールバー15の上下調節を行うネジ式調節装置16を操作して、図5に示すように、両ガード体35L,35Rを作用姿勢Bの状態から一段低い位置に降下させておけば、両ガード体35L,35Rを、耕耘装置12を単独で自立させるための支持スタンドとして兼用することができるので、当該耕耘装置12を安定して自立させることが可能になる。
【0019】
また、図6は、ロータリ耕耘装置12の第二実施例を示す側面図であり、また図7は、同じくロータリ耕耘装置12の第二実施例を示す平面図であって、この第二実施例では、ロータリカバー24の左右両端に固設した側板24a,24aに、リヤカバー25とサイドカバー27L,27Rの側部を防護する側面視で略L字状のガード体45L,45Rを取り付けている。
【0020】
前記ガード体45L,45Rは、側面視で略L字状に形成した丸パイプからなり、図8及び図9に示すように、ロータリカバー24の左右両端に固設した側板24a,24aの後部に後下がりの傾斜姿勢で固着してなる支持部材46に、当該ガード体45L,45Rの基端部を取り付けることができるようなっている。更に詳しくは、この支持部材46は、断面をコの字状に形成してあって、その開口側46aからガード体45L,45Rの基端部を嵌め込んで、二つの頭付ピン47,47を介して取り付け固定できる構成になっている。
【0021】
そして、図6に示すように耕耘軸21に耕耘爪(ナタ爪)22を取り付けて標準耕耘を行う場合は、ガード体45L,45Rを上方に持ち上げて固定した退避姿勢Aと、図7及び図8に示すように耕耘軸21に除草用のロータ23を取り付けて果樹園内で除草作業を行う場合には、ガード体45L,45Rを下げ降ろしてリヤカバー25とサイドカバー27L,27Rの側部を防護する作用姿勢Bとに切り換えて固定することができるようになっている。尚、前記作用姿勢Bにおいては、ガード体45L,45Rの下部は地面と略平行で、且つその終端部は、リヤカバー25の後端よりも延出するようになっている。
【0022】
上述の如く構成した第二実施例におけるガード体45L,45Rを作用姿勢Bの状態に固定することによって、特に果樹園内で除草や耕耘作業を行う場合、間隔の狭い果樹の間を頻繁に方向変更しながらトラクタ10を走行させても、当該耕耘装置12の最後部に位置するリヤカバー25の左右両端部や、左右のサイドカバー27L,27Rが果樹の幹T1,T2や枝と直接接触することを防止できるので、当該リヤカバー25の左右両端部や左右のサイドカバー27L,27Rが大きく変形したり破損するといった不具合の発生が第一実施例と同様に解消される。
【0023】
また、別の作業機を付け替えるために2点リンク機構11から耕耘装置12を取り外す際には、図10に示すように、両ガード体45L,45Rを上述の作用姿勢Bの状態から一段低い位置に下げ、しかる後に二つの頭付ピン47,47を介して取り付け固定しておけば、両ガード体45L,5Rを、耕耘装置12を単独で自立させるための支持スタンドとして兼用することができるので、当該耕耘装置12を安定して自立させることが第一実施例と同様に可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ロータリ耕耘装置の第一実施例を示す側面図。
【図2】ロータリ耕耘装置の第一実施例を示す平面図。
【図3】第一実施例におけるガード体の作用姿勢を示す側面図。
【図4】図2におけるCC断面図。
【図5】第一実施例のガード体を支持スタンドとして兼用した状態を示す側面図。
【図6】ロータリ耕耘装置の第二実施例を示す側面図。
【図7】ロータリ耕耘装置の第二実施例を示す平面図。
【図8】第二実施例におけるガード体の作用姿勢を示す側面図。
【図9】図8におけるD矢視図。
【図10】第二実施例のガード体を支持スタンドとして兼用した状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0025】
10 農作業用車両
11 リンク機構
12 耕耘装置
22 耕耘爪
24 ロータリカバー
25 リヤカバー
35L ガード体(左)
35R ガード体(右)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業用車両(10)の後部にリンク機構(11)を介して昇降可能に装着される耕耘装置(12)であって、前記耕耘装置(12)は、耕耘爪(22)の上方を覆うロータリカバー(24)と、該ロータリカバー(24)の後方で上下回動可能なリヤカバー(25)を備えると共に、該リヤカバー(25)の側部を防護するガード体(35L,35R)を設けたことを特徴とする耕耘装置。
【請求項2】
前記ガード体(35L,35R)を、耕耘装置(12)を単独で自立させる支持スタンドとして兼用することを特徴とする請求項1に記載の耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−280293(P2006−280293A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105659(P2005−105659)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】