説明

肥料散布装置

【課題】 大きく腕を遥動させることなく、広範囲に、且つ均一に肥料散布が可能であり、散布者に対する負担が少ない肥料散布装置を提供する。
【解決手段】 粒状及び粉状の肥料が収納され、背負可能に形成された袋体収納部と、上記袋体収納部の底面近傍に設けられた排出口と、上記排出口に一端部が接続され、所定の長さ寸法を有する筒体と、上記筒体の他端部に接続された散布ヘッド部とを備える肥料散布装置において、上記筒体の他端部と上記散布ヘッド部とは、可撓性を有する連結部材を介して接続されている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状の収納部に粉体若しくは粒体の肥料を収納し、上記肥料を上記袋体収納部の底面近傍に設けられた排出口と、上記排出口に一端部が接続され、所定の長さ寸法を有する筒体と、上記筒体の他端部に接続された散布ヘッド部とを経由して畑等に散布するための肥料散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、従来の肥料散布装置40は、一般的に、粒状及び粉状の肥料が収納され、背負可能に形成された袋体収納部41と、上記袋体収納部41の底面の近傍に設けられた排出口42と、上記排出口42と可撓性を有するゴム素材で形成された接続部材43を経由して一端部44が接続された筒体45と、上記筒体45の他端部46に接続された散布ヘッド部47とから構成されている。
上記散布ヘッド部47は、上記筒体45の他端部46に接続する円筒部47aと上記円筒部47aの軸方向端部に延設された先端部材47bとから形成されている。
上記先端部材47bは、所定寸法離間し、対向して配置された略円形の板体47c、47dから形成されると共に、上記板体47cと47dの間には、連続して開口する散布口部47fが形成されている。
また、上記散布口部47fには、肥料を均一に流出させるための複数の仕切板47eが上記散布口部47fの開口方向に沿って配設されている。
上記肥料散布装置40を用いて肥料を散布する場合は、図4に示すように、上記袋体収納部41を上記袋体収納部41の外側面部に配設された一対の背負帯48、49を両肩にかけて背負、更に上記筒体45を手で把持して遥動させることによって、上記袋体収納部41に収納されている肥料(図示せず)が自重によって上記排出口42から流出し、上記筒体45の内部を経由して上記散布ヘッド部47に供給され、上記散布ヘッド部47の先端部材47bから流出する。
上記肥料散布装置40の場合、肥料を均等に散布するためには、上記筒体45をすばやく、且つ大きく遥動させる必要があることから、広範囲に肥料を散布する場合は、腕が疲労し、散布者に多大な負荷をかけてしまうという不具合を有していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、大きく腕を遥動させることなく、広範囲に、且つ均一に肥料散布が可能であり、散布者に対する負担が少ない肥料散布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明に係る肥料散布装置は、粒状及び粉状の肥料が収納され、背負可能に形成された袋体収納部と、上記袋体収納部の底面近傍に設けられた排出口と、上記排出口に一端部が接続され、所定の長さ寸法を有する筒体と、上記筒体の他端部に接続された散布ヘッド部とを備える肥料散布装置において、上記筒体の他端部と上記散布ヘッド部とは、可撓性を有する連結部材を介して接続されていることを特徴とする。
【0005】
従って、上記筒体の遥動幅が小さくても、上記連結部材が可撓性を有しているため、上記連結部材が撓むことによって、上記連結部材に接続している散布ヘッド部の遥動幅が増幅される。
【0006】
また、請求項2に記載された発明に係る肥料散布装置は、上記連結部材は軸方向に伸縮可能な蛇腹部を有する円筒体から形成されていることを特徴とする。
従って、蛇腹部の伸縮に連動して、上記散布ヘッド部が遥動する。
【0007】
また、請求項3に記載された発明に係る肥料散布装置は、上記散布ヘッド部は、上記筒体の径方向に沿って連続して開口する散布口部を有し、上記連結部材には、上記連結部の軸方向、及び上記散布口部の開口方向に直交する方向の遥動を規制する遥動制約部を備えることを特徴とする。
従って、上記筒体の軸方向の遥動、及び上記散布口部の開口方向に直交する方向の遥動が、上記遥動制約部によって規制され、上記散布ヘッド部には伝達されない。
一方、上記筒体の遥動要素の内、上記散布口部の開口方向に沿った径方向の遥動は上記散布ヘッド部に伝達される。
【0008】
また、請求項4に記載された発明に係る肥料散布装置は、上記遥動制約部は、上記連結部材において、上記散布口部に直交する径方向の互いに対向する位置において、上記連結部材の軸方向に沿って上記蛇腹部の谷部を埋めて形成された平滑部によって形成されていることを特徴とする。
従って上記平滑部によって、上記蛇腹部の軸方向の伸縮が制約されると共にに、上記散布口部に直交する方向の遥動が規制される。
【0009】
また、請求項5に記載された発明に係る肥料散布装置は、上記連結部材はゴム素材によって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1、2及び5に記載の発明にあっては、筒体と上記散布ヘッド部とが可撓性を有する連結部材を介して接続されていることから、筒体の遥動幅が小さい場合であっても、上記連結部材の撓りによって上記遥動幅が増幅され、上記散布ヘッド部は大きく遥動する。
特に請求項5の発明にあっては、上記連結部材がゴム素材で形成されていることからより撓りやすい。
従って、大きく腕を遥動させることなく、広範囲に、且つ均一に肥料散布が可能であり、散布者に対する負担が少ない肥料散布装置を提供することが可能となる。
更に、請求項2の発明にあっては、上記連結部材は軸方向に伸縮可能な蛇腹部を有する円筒体から形成されていることから、上記連結部材が更に撓み易く、より上記散布ヘッド部の遥動幅が大きくなるため、より広範囲に肥料を散布することが可能となる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明にあっては、上記散布ヘッド部は、上記筒体の径方向に沿って連続して開口する散布口部を有し、上記連結部材には、上記散布口部の開口方向に直交する方向の遥動を規制する遥動制約部を備え、また、請求項4の発明にあっては、上記遥動制約部は、上記連結部材において、上記散布口部に直交する径方向の互いに対向する位置において、上記連結部材の軸方向に沿って上記蛇腹部の谷部を埋めて形成された平滑部によって形成されていることから、上記筒体を遥動させた場合、上記連結部材に伝達される遥動要素の内、上記連結部材の軸方向の遥動、及び上記散布口部の開口方向と直交する方向の遥動については、上記遥動制約部によって規制され、上記散布ヘッド部に伝達されることがない。
一方、上記散布口部の開口方向の遥動については、上記連結部材に伝達された、上記連結部材が可撓性を有していることから、上記連結部材は、上記筒体の遥動に連動して上記散布口部の開口方向に遥動する。
更に、上記連結部材が上記散布口部の開口方向に沿って遥動して撓った状態において、上記連結部材には撓り方向とは逆方向の復元力が連続して作用するため、上記筒体から伝達される遥動と上記復元力とが相乗し、上記連結部材の径方向の遥動は次第に増大され、この結果、上記連結部材に連動して上記散布ヘッド部が大きく上記散布口部の開口方向に遥動する。
従って、上記筒体の径方向の遥動幅が小さい場合であっても、上記散布ヘッド部を大きく遥動させることが可能である。
従って、請求1及び2の発明の効果に加え、上記散布ヘッド部の径方向に対して、より均一に肥料を散布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、実施例の形態に係る肥料散布装置の全体正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示し、実施例の形態に係る肥料散布装置の連結部材の拡大斜視図である。
【図3】従来の肥料散布装置の全体正面図である。
【図4】従来の肥料散布装置を背負い、肥料を散布する方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下添付図面に記載に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施例の形態における肥料散布装置10は、粒状及び粉状の肥料(図示せず)が収納され、背負可能に形成された袋体収納部11と、上記袋体収納部11の底面12近傍に設けられた排出口13と、上記排出口13に一端部14が接続され、所定の長さ寸法を有する筒体15と、上記筒体15の他端部16に接続された散布ヘッド部17とを備える肥料散布装置において、上記筒体15の他端部16と上記散布ヘッド部17とは、可撓性を有するゴム素材で形成された連結部材18を介して接続されている。
また、上記連結部材18は軸方向に伸縮可能な蛇腹部19を有する円筒体に形成されている。
また、上記散布ヘッド部17は、上記筒体15の径方向に沿って連続して開口する散布口部17fを有し、上記連結部材18には、上記散布口部17fの開口方向に直交する方向の遥動を規制する遥動制約部21を備えている。
また、上記遥動制約部21は、上記連結部材18において、上記散布口部17fに直交する径方向の互いに対向する位置において、上記連結部材18の軸方向に沿って上記蛇腹部19の谷部を埋めて形成された平滑部22によって形成されている。
【実施例1】
【0014】
上記形態の本実施例の構成について以下詳述する。
図1は、本実施例に係る肥料散布装置10の全体正面図である。
図1に示すように、上記肥料散布装置10の袋体収納部11は、布製であり、上部に開口部22を有し、上記開口部22の周縁には、上記開口部22を閉止しうる締紐23が配設されている。
また、上記袋体収納部11の外面部には一対の背負い帯24,25が配設されている。
また、上記袋体収納部11の底面12の近傍に設けられた排出口13と上記筒体15の一端部14とは、蛇腹部26を有する接続部材27を介して接続されている。
また、上記散布ヘッド部17は、上記筒体15の他端部16に接続する円筒部17aと上記円筒部17aの軸方向端部に延設された先端部材17bとから形成されている。
上記先端部材17bは、所定寸法離間し、対向して配置された略円形の板体17c、17dから形成されると共に、上記板体17cと17dの間には、連続して開口する散布口部17fが形成されている。上記散布口部17fには、肥料を均一に流出させるための複数の仕切板17eが上記散布口17fの開口方向に沿って配設されている。
なお、上記仕切り板17eの配設数は散布ヘッド部17の形状、大きさ等によって適宜調整が可能であり、上記仕切り板17eの他に、上記板体17cと17dの対向面上に散布する肥料の塊を砕く為の突起部等(図示せず)を適宜形成させておくことも可能である。
また、図2は本実施例に係る連結部材18の拡大斜視図である。
上記連結部材18は、図1に示すように、上記連結部材18の内径寸法は、上記筒体15の内径寸法と略同一寸法に形成され、図2に示すように、外周部には軸方向に沿って複数の山部19aと谷部19bが連続して形成された蛇腹部19を備え、可撓性を有するゴム素材から形成されている。
上記ゴム素材は、所定の可撓性を有し、且つ散布者の負担とならない程度に軽量であれば、特に天然ゴム、合成ゴム等の種類は問わない。
また、図1に示すように上記蛇腹部19において、上記散布口部17fに直交する径方向対向位置において、周方向の所定幅に亘り上記連続した谷部19bを上記山部19aの頂上部の高さまで埋めて形成された一対の平滑部20からなる一対の遥動制約部21が上記蛇腹部19の軸方向に沿って形成されている。
【0015】
上記構成の実施例の作用及び効果について説明する。
図1に示すように、上記肥料散布装置10を用いて肥料を散布する場合は、上記袋体収納部11の開口部22より、粉体若しくは粒体の肥料を充填し、上記開口部22の締紐23を引くことによって開口部22を閉止し、図4に示した形態と同様に、上記袋体収納部11の外側面部に配設された一対の背負い帯24,25を両肩にかけて背負う。
上記の状態で、図4に示した形態と同様に、上記筒体15を手で把持して、小さく小刻みに遥動させることによって、上記袋体収納部11に収納されている肥料(図示せず)が自重によって上記排出口13から流出し、上記筒体15の内部を経由して上記散布ヘッド部17に供給され、上記散布ヘッド部17の先端部材17bから流出する。
上記の場合において、上記筒体15から上記連結部材18に伝達される遥動要素の内、軸方向の遥動、及び上記散布ヘッド部17の散布口17fの開口方向と直交する方向の遥動については、上記連結部材18において、上記散布口17fの開口方向に直交する径方向の両端部に配設された、平滑部22からなる一対の遥動制約部21によって、上記蛇腹部19の隣接する山部19a位置が固定されることにより、上記蛇腹部19の軸方向への伸縮及び、上記散布ヘッド部17の散布口17fの開口方向と直交する方向の遥動が規制され、上記散布ヘッド部17に上記遥動が伝達されることがない。
一方、上記筒体15から上記連結部材18に伝達される遥動要素の内、上記散布ヘッド部17の散布口17fの開口方向の遥動は、上記連結部材18に伝達され、上記連結部材18は、可撓性を有するゴム素材で形成されていることから、上記筒体15の遥動に連動して上記散布口17fの開口方向に撓ることによって遥動する。
更に、上記連結部材18の遥動時において、上記連結部材18には、撓る方向とは逆方向の復元力が交互に作用するため、上記筒体15から伝達される遥動と上記復元力とが相乗し、上記連結部材18の上記散布口17fの開口方向の遥動は次第に増大され、この結果、上記連結部材18に連動して上記散布ヘッド部17についても大きく上記散布口17fの開口方向に遥動する。
従って、上記筒体15を把持した手を身体の左右方向に大きく遥動させない場合であっても、上記散布ヘッド部17を上記散布口17fの開口方向に大きく遥動させることが可能となり、先端部材17bから流出する肥料は広範囲に、且つ均一に散布され、身体に負担をかけることなく、広域に肥料を散布することが可能となる。
また、上記のように、連結部材18には平滑部20からなる一対の遥動制約部21が配設されていることから、上記連結部材18の軸方向の振動が制約され、上記散布ヘッド部17に軸方向の遥動は伝達されず、上記散布ヘッド部17は径方向にのみ遥動する。
従って、一定の範囲に、より均一に肥料を散布することが可能となる。
【0016】
なお、本実施例においては、袋体収納部11は布製の袋体であるが、上記袋体を立てた状態で載置しうるように、上記袋体の周囲に、上記袋体を支持する金属等のパイプによって形成されたフレーム部を形成することもできる。
また散布ヘッド部17の形状及び、先端部材17b等の構造は、肥料の種類、粒径等に合わせて適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本製品は、袋状の収納部に粉体若しくは粒体の肥料を収納し、上記肥料を上記袋体収納部の底面近傍に設けられた排出口と、上記排出口に一端部が接続され、所定の長さ寸法を有する筒体と、上記筒体の他端部に接続された散布ヘッド部とを経由して畑等に散布するための肥料散布装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0018】
10 肥料散布装置
11 袋体収納部
12 袋体収納部の底面
13 排出口
14 筒体の一端部
15 筒体
16 筒体の他端部
17 散布ヘッド部
17a散布ヘッド部の円筒部
17b散布ヘッド部の先端部材
17c板体
17d板体
17e仕切り板
17f散布口部
18 連結部材
19 蛇腹部
19a蛇腹部の山部
19b蛇腹部の谷部
20 平滑部
21 遥動制約部
22 開口部
23 締紐
24 背負い帯
25 背負い帯
26 接続部材の蛇腹部
27 接続部材
40 肥料散布装置
41 袋体収納
42 排出口
43 接続部材
44 筒体の一端部
45 筒体
46 筒体の他端部
47 散布ヘッド部
47a円筒部
47b先端部材
47c板体
47d板体
47e仕切り板
47f散布口部
48 背負い帯
49 背負い帯
50 散布口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状及び粉状の肥料が収納され、背負可能に形成された袋体収納部と、上記袋体収納部の底面近傍に設けられた排出口と、上記排出口に一端部が接続され、所定の長さ寸法を有する筒体と、上記筒体の他端部に接続された散布ヘッド部とを備える肥料散布装置において、
上記筒体の他端部と上記散布ヘッド部とは、可撓性を有する連結部材を介して接続されていることを特徴とする肥料散布装置。
【請求項2】
上記連結部材は軸方向に伸縮可能な蛇腹部を有する円筒体から形成されていることを特徴とする請求項1記載の肥料散布装置。
【請求項3】
上記散布ヘッド部は、上記筒体の径方向に沿って連続して開口する散布口部を有し、上記連結部材には、上記散布口部の開口方向に直交する方向の遥動を規制する遥動制約部を備えることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項に記載の肥料散布装置。
【請求項4】
上記遥動制約部は、上記連結部材において、上記散布口部に直交する径方向の互いに対向する位置において、上記連結部材の軸方向に沿って上記蛇腹部の谷部を埋めて形成された平滑部によって形成されていることを特徴とする請求項3記載の肥料散布装置。
【請求項5】
上記連結部材はゴム素材によって形成されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の肥料散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−268776(P2010−268776A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130572(P2009−130572)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願変更の表示】意願2009−3415(D2009−3415)の変更
【原出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000142399)株式会社金子製作所 (9)
【Fターム(参考)】