説明

脚立

【課題】両脚体を閉じるためシャフトを持ち上げるときに、そのシャフトの持ち上げが容易に行える脚立を提供する。
【解決手段】脚立における両脚体1,2の夫々上部両端に、一部重なり合って両脚体1,2の開閉により互いに回転するように回転金具6,7が固定され、両支軸部14aと両立上部14bと操作軸部14cとからなるシャフト14の両支軸部14aが、脚体1,2両端の回転金具6,7の重なり合った部分に形成された長孔12,13に挿通され、支軸部14aが下に移動したときに両回転金具6,7の重なりが小さくなって両脚体1,2が開き、このとき操作軸部14cは、立上部14bが自重で倒れることで何れか一方の脚体1又は2の天板4の内側端部4oに天板4と略面一状態で支持され、両天板4,4の隙間Sに上方から入れた手で操作軸部14cを持ち上げて支軸部14aを上に移動させることにより両回転金具6,7の重なりが大きくなって両脚体1,2が閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚体が開閉できる脚立に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の脚立として、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1の脚立は、一対の梯子状脚体の上端部が回動自在に連結されて両脚体が開閉可能とされ、両脚体の夫々上端に天板が互いに間隔をおいて配設された脚立であって、両脚体の夫々上部両端に、一部重なり合って両脚体の開閉により互いに回転するように回転金具が夫々固定され、棒状の開き止め用シャフトの両端部が脚両端の回転部材の重なり合った部分に形成された長孔に通され、シャフトが下に移動したときに両回転部材の重なりが小さくなって両脚体が開き、シャフトが上に移動したときには回転部材の重なりが大きくなって両脚体が閉じるように構成されている。
【0003】
この脚立によると、使用する場合には、片手又は両手で脚立を持って床等に置き、その手で脚体を持って開くだけでよい。また、両脚体を閉じるきには、何れかの脚立の側面側から一方の手を天板の下方側へ突っ込んで棒状の開き止め用シャフトを押し上げながら、このシャフトを上方より両天板の隙間に入れた他方の手で掴んで持ち上げることにより、シャフトが回転部材の長孔内を上に移動し、回転部材の重なりが大きくなって両脚体を閉じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平5−47279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の脚立は、直線状の開き止め用シャフトの両端部が両回転部材の重なり合った部分に形成された長孔に挿通されるようになっていて、シャフトが下に移動して両脚体が開いた状態では、シャフト全体が、両脚体の上端にある両天板の隙間の下方側に位置するから、両脚立を閉じるためシャフトを持ち上げるときには、両天板の隙間にその上方から手を差し入れにくく、従って一方の手を脚立の側面側から天板の下方へ突っ込んでシャフトを押し上げながら、両天板の隙間にその上方から入れた他方の手でシャフトを掴んで持ち上げる、と言うような面倒な操作が必要となり、また両脚体を閉じた状態での脚立の持ち運びが不便となる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、両脚体を閉じるためシャフトを持ち上げるときに、そのシャフトの持ち上げが容易且つ安全に行えると共に、持ち運びに便利な脚立を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、一対の梯子状脚体1,2の上端部が回動自在に連結されて両脚体1,2が開閉可能とされ、両脚体1,2の夫々上端に天板4が互いに間隔をおいて配設された脚立において、両脚体1,2の夫々上部両端に、一部重なり合って両脚体1,2の開閉により互いに回転するように回転金具6,7が夫々固定され、両端側の支軸部14a,4aと両支軸部4a,4aの夫々内端から立ち上がる立上部14b,14bと両立上部14b,14bの上端どうしをつなぐ操作軸部14cとからなる支軸兼操作軸用シャフト14の前記両支軸部14a,4aが、脚体1,2両端の回転金具6,7の重なり合った部分に形成された長孔12,13に挿通され、シャフト14の支軸部14aが下に移動したときに両回転金具6,7の重なりが小さくなって両脚体1,2が開き、このとき操作軸部14cは、自重で立上部14bが倒れることによって何れか一方の脚体1又は2の天板4の内側端部4oに天板4上面と略面一状態に支持され、しかして両天板4,4の隙間Sに上方から入れた手で操作軸部14cを持ち上げて支軸部14aを上に移動させることにより両回転金具6,7の重なりが大きくなって両脚体1,2が閉じるように構成されてなることを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載の脚立において、両脚体1,2の夫々上部両端に夫々固定されて、一部重なり合った一対の回転金具6,7の長孔12,13は、夫々下部孔12a,13aと、この下部孔12a,13aから夫々斜め上方へ且つ互いに離れる方向に延びる上部孔12b,13bとからなるもので、少なくとも一方の回転金具6,7の長孔12,13の下部孔12a,13aは、上端側の幅Wbがその下部側の幅Waより僅かに狭く且つシャフト14の支軸部14aの径Dより僅かに大きくなっていることを特徴としている。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2に記載の脚立において、支軸兼操作軸用シャフト14の立上部14bは、両支軸部14a,14aの夫々内端から、直角に立ち上がるのではなく、外向き傾斜状に立ち上がって支軸部14a及び操作軸部14cに対し鋭角をなすように形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、両端側の支軸部14a,4aと両支軸部4a,4aの夫々内端から立ち上がる立上部14b,14bと両立上部14b,14bの上端どうしをつなぐ操作軸部14cとからなる支軸兼操作軸用のシャフト14の両支軸部14a,4aが、両回転金具6,7の重なり合った部分に形成された長孔12,13に挿通され、シャフト14の支軸部14aが下に移動したときに両回転金具6,7の重なりが小さくなって両脚体1,2が開き、このとき操作軸部14cはシャフト14の自重で立上部14bが倒れることによって何れか一方の脚体1又は2の天板4の内側端部4oに天板4上面と略面一状態に支持され、しかして操作軸部14cを持ち上げて支軸部14aを上に移動させることにより両回転金具6,7の重なりが大きくなって両脚体1,2が閉じるようになっているから、脚立の使用時には、脚立を床などに置いて、手で両脚体1,2を開けばよい。また脚立使用時は、シャフト14の操作軸部14cは、何れか一方の脚体1又は2の天板4の内側端部4oに天板4上面と略面一状態に支持されるので、作業者が操作軸部14cに足を引っ掛けるなどの障害物とはならず、作業の安全性が確保される。
【0011】
そして、脚立を閉脚するときは、天板4,4の隙間Sに上方より手を入れて支軸兼操作軸用シャフト14の操作軸部14cを掴み、持ち上げると、支軸部14aが回転金具6,7の長孔12,13内を上動して、両回転金具6,7の重なりが大きくなるから、両脚体1,2が閉じて、両脚体1,2を閉じることができる。こうして開脚した両脚体1,2を閉脚するときは、シャフト14の操作軸部14cが、両天板4,4の隙間Sの上部側位置、即ち天板4の上面と略面一状態に位置しているから、隙間S内に手を深く突っ込む必要がなく、その隙間Sの入口側に手を少し入れれば、操作軸部14cを簡単に掴めるため、閉脚操作を迅速容易に行えると共に、隙間S内で手指を損傷するような危険性がなく、操作上の安全性を確保できる。
【0012】
また、シャフト14の操作軸部14cは、上記のように常に隙間Sの入口側の掴み易い位置にあるから、脚立を持ち運ぶ場合には、この操作軸部14cを掴むことによって持ち易くなり、しかも持ち運び中は、支軸部14aが回転金具6,7の長孔12,13の上限位置にあって、下動することがなく、両脚体1,2を閉じた位置にロックした状態で持ち運びできるから、持ち運びが非常に便利で楽となる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、回転金具6,7の長孔12,13は、夫々下部孔12a,13aと、この下部孔12a,13aから夫々斜め上方へ互いに離れる方向に延びる上部孔12b,13bとからなるもので、回転金具6,7の長孔12,13の下部孔12a,13aは、上端側の幅Wbがその下部側の幅Waより僅かに狭く且つシャフト14の支軸部14aの径Dよりも僅かに大きくなっているから、脚体1,2が開脚されたロック状態での脚立使用時に、振動などによってシャフト14の支軸部14aに上向きの力が働いて、下部孔12a,13a内の支軸部14が持ち上がろうとしても、その支軸部14aが幅の狭くなった下部孔12a,13aの上部側に引っ掛かって、持ち上がりを阻止され、脚体1,2が不測にロック解除されるのを防止することができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、支軸兼操作軸用シャフト14の立上部14bが、両支軸部14a,14aの夫々内端から、直角に立ち上がるのではなく、外向き傾斜状に立ち上がって支軸部14a及び操作軸部14cに対して鋭角をなすように形成されているから、図7の(a) に示すように各立上部14bの外側面上端部を回転金具6,7に対しわずかに点接触しうるような状態に配設することにより、シャフト14の軸方向移動を制限して、脚立運搬時などにおけるシャフト14のガタつき、それに伴う金属音の発生を防止できると共に、立上部14bはシャフト14の自重で倒れることができるので、操作軸部14cを何れか一方の脚体1又は2の天板4の内側端部4oに支持させておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a) は本発明に係る脚立の両脚体が開いた状態での正面図、(b) は側面図である。
【図2】(a) は同脚立の両脚体が閉じた状態での平面図、(b) は同状態の正面図である。
【図3】図1の(a) の一部拡大図である。
【図4】(a) は両回転金具の長孔にシャフトの支軸部が挿通された状態の正面図であり、(b) はその平面図である。
【図5】(a-1) は一方の回転金具の正面図、(a-2) は平面図、(b-1) は他方の回転金具の正面図、(b-2) は平面図である。
【図6】(a) は両回転金具の長孔に挿通されたシャフトの支軸部が長孔の下位に位置して両脚体が最大限開いた状態の正面図、(b) は支軸部が長孔の中位に位置して両脚体が閉じ始めた状態の正面図、(c) は支軸部が長孔の上限位置に位置して両脚体が最大限閉じた状態の正面図である。
【図7】(a) は両脚立を閉じるため両天板の隙間にその上方から入れた手でシャフトを掴んだ状態の縦断側面図、(b) は(a) のX−X線断面図であるが、シャフトの立上部は自重で倒れた状態にある。
【図8】(a) は一方の回転金具の拡大図、(b) は他方の回転金具の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、脚立は、図1及び図2に示すように、一対の脚体1,2によって構成される。各脚体1,2は、両側一対の脚柱3,3と、両脚柱3,3の上端部どうしを連結する天板4と、両脚柱3,3の中間部どうしを連結する踏桟5と、両脚柱3,3の夫々上端部に固定された回転金具6,7とからなるもので、両脚体1,2の対応する脚柱3,3の回転金具6,7どうしが回転自在に連結されており、両脚体1,2の天板4,4間には図2の(a) に示すように所定幅の隙間Sが設けられている。また、両脚体1,2の対応する脚柱3,3間には可撓性の開き止めバンド8が介装され、各脚体1,2の天板4には両端部に樹脂製の端部キャップ9a取り付けられ、踏桟5の両端部にも樹脂製の端部キャップ9b取り付けられ、また各脚柱3の下端部には樹脂製の脚柱端具9cが取り付けられている。
【0017】
各脚体1,2の脚柱3、天板4及び踏桟5は、夫々アルミ押出形材製のもので、脚柱3は角筒状に形成され、踏桟5は、三角筒状に形成されている。また、天板4は、同じくアルミ押出形材製であるが、図3に破線で示すように、水平板状の上壁部4aと、この水平板状上壁部4aを下方から受けるように一体に形成された略々V字状の枠部4bとからなるもので、上壁部4aはV字状枠部4bを越えて突出し、その突出端部4oが断面下向きアール状に形成されている。しかして、両脚体1,2の天板4,4は、図3に示すように上壁部4a,4aの対向する断面下向きアール状内側端部4o,4o間に隙間Sを形成している。
【0018】
回転金具6,7は、鋼板等の金属板によって図3〜図5に示すような形状に形成され、一部重なり合って両脚体1,2の開閉により互いに回転するように両脚体1,2の上部両端に固定されたもので、具体的に、一方の回転金具6は、その一端部側が一方の脚体1の各脚柱3の内側面上端部に端部キャップ9aを介してビス10により固定され、他方の回転金具7も、その一端部側が他方の脚体2の各脚柱3の内側面上端部に端部キャップ9aを介してビス10により固定されている。両回転金具6,7の上縁6a,7aは、天板4の上壁部4aとほぼ同じ高さにあって(図3及び図7参照)、両回転金具6,7は、天板上壁部4a,4aの対向突出部分と同じ方向にこれより長く張り出している。そして、対応する一対の回転金具6,7の張り出し部分が互いに重ね合わせられ、この重ね合わせ部分の上部が、枢着ピン11で回転可能に連結されている。また一対の回転金具6,7は、図3に示すように天板4,4の上壁部4a,4aに対しビス10で固定されている。
【0019】
また図3に示すように、一対の回転金具6,7の重ね合わせ部分の枢着ピン11の下側に長孔12,13が形成されている。この一対の回転金具6,7の長孔12,13は常に一部重なっており、この長孔12,13の重なった部分に、支軸兼操作軸用シャフト14の支軸部14aが挿通されている。この支軸兼操作軸用シャフト14は、図7に示すように、鋼製丸棒材を曲げ加工して形成されたもので、両端側の一対の支軸部14a,14aと、両支軸部14a,14aの夫々内端から立ち上がる立上部14b,14bと、両立上部14b,14bの上端どうしをつなぐ操作軸部14cとにより構成される。この場合、両立上部14b,14bは、図7に示すように、両支軸部14a,14aの夫々内端から直角に立ち上がるのではなく、両支軸部14a,14aの夫々内端から外向き傾斜状に立ち上がって、支軸部14a及び操作軸部14cに対し夫々鋭角をなすように形成されている。
【0020】
図4は、対向端部どうしが重なり合った一対の回転金具6,7の長孔12,13に支軸兼操作軸用シャフト14の支軸部14aを挿通させた状態を示すもので、(a) は正面図、(b) は平面図である。また図5の(a-1) は一方の回転金具6の正面図、(a-2) は平面図であり、(b-1) は他方の回転金具7の正面図、(b-2) は平面図である。これらの図から分かるように、一部分が重なり合った一対の回転金具6,7の長孔12,13は、夫々下部孔12a,13aと、この下部孔12a,13aから夫々斜め上方へ且つ互いに離れる方向に延びる上部孔12b,13bとからなる。また、図8の(a) ,(b) は長孔12,13を拡大図示したもので、この図から分かるように、各回転金具6,7の長孔12,13の下部孔12a,13aは、上端側の幅Wbがその下部側の幅Waより僅かに狭く且つ支軸兼操作軸用シャフト14の支軸部14aの径dより僅かに大きくなっている。尚、図4及び図5において、15はビス挿通孔、16はピン挿通孔、17は補強リブを示す。
【0021】
上記のように支軸兼操作軸用のシャフト14は、その両端側の支軸部14a,14aが脚体1,2両端の夫々一対の回転金具6,7の重なり合った部分の長孔12,13に挿通されている。図6の(a) 及び図7の(a) は、シャフト14の支軸部14aが長孔12,13の下部孔12a,13aに位置している状態を示す。このとき、図6の(a) から分かるように両回転金具6,7の重なりが小さくなって、両脚体1,2が図1に示すような開脚状態となる。またこのとき、操作軸部14cは、自重で立上部14bが倒れることによって、図7の(b) の実線図示及び仮想線図示のように何れか一方の脚体1,2の天板4の内側端部4oに支持されると共に、この支持された状態で操作軸部14cが天板4の上壁部4aと略面一状態となるように、シャフト14の立上部14bの立ち上がり高さが設定されている。なお、立上部14bの立ち上がり高さは、図7の(b) に示すように、操作軸部14cが天板4の内側端部4oに支持された状態で操作軸部14cが天板4の上壁部4a上面より僅かに低くなるように設定するのが好ましいが、天板4上で作業者が足を引っ掛けるような障害物とならなければ、操作軸部14cが上壁部4a上面より多少突出してもよい。
【0022】
しかして、図7の(a) に示すように両天板4,4間の隙間Sに上方から手を入れ、操作軸部14cを持ち上げて支軸部14aを上に移動させることにより、図6の(b) から(c) に示すように両回転金具6,7の重なりが大きくなって、両脚体1,2が閉じる。即ち、図7の(a) に示すようにシャフト14の支軸部14aが長孔12,13の下部孔12a,13aに位置する状態からシャフト14の操作軸部14cを持ち上げると、支軸部14aは長孔12,13の下部孔12a,13aを出て上部孔12b,13bの入口部に入った段階で両回転金具6,7の重なりが大きくなり(図6の(b) 参照)、更に支軸部14aが上部孔12b,13bの奥まで入り込むことにより、図6の(c) のように両回転金具6,7の重なりが最大となって、両脚体1,2は図2に示すような完全閉脚状態となる。
【0023】
また、図6の(c) に示すような状態から、両脚体1,2が開くと、両回転金具6,7の重なりが小さくなるため、シャフト14の支軸部14aが長孔12,13の上部孔12b,13bの奥から手前側へ移動し(図6の(b) 参照)、両脚体1,2が開ききると、図6の(a) に示すように支軸部14aが下部孔12a,13aまで移動して、それ以上回転金具6,7が互いに回転できなくなり、それによって両脚体1,2もそれ以上開かなくなる開き止め状態となり、図1の(a) に示すような開脚状態にロックされる。尚、図1の(a) に示す開き止めバンド8は、そのような開き止め状態を保持するための開き止め補助手段である。
【0024】
以上説明したような脚立によれば、両端側の支軸部14a,4aと両支軸部4a,4aの夫々内端から立ち上がる立上部14b,14bと両立上部14b,14bの上端どうしをつなぐ操作軸部14cとからなる支軸兼操作軸用シャフト14の両支軸部14a,4aが、脚体1,2両端の回転金具6,7の重なり合った部分に形成された長孔12,13に挿通されていて、シャフト14の支軸部14aが下に移動したときに両回転金具6,7の重なりが小さくなって両脚体1,2が開き、このとき操作軸部14cは自重で立上部14bが倒れることによって何れか一方の脚体1又は2の天板4の内側端部4oに天板4上面と略面一状態に支持され、しかして両天板4,4の隙間Sに上方から入れた手で操作軸部14cを持ち上げて支軸部14aを上に移動させることにより両回転金具6,7の重なりが大きくなって両脚体1,2が閉じるようになっているから、脚立を使用するときには、脚立を床などに置いて、手で両脚体1,2を開けばよい。また、脚立使用時は、シャフト14の操作軸部14cは、何れか一方の脚体1又は2の天板4の内側端部4oに天板4上面と略面一状態に支持されるから、作業者が操作軸部14cに足を引っ掛けるなどの障害物とはならず、作業の安全が確保される。
【0025】
そして、脚立を閉脚するときは、図7の(a) に示すように、両天板4,4の隙間Sに上方より手を入れて支軸兼操作軸用シャフト14の操作軸部14cを掴み上げると、支軸部14aが回転金具6,7の長孔12,13内を上動して、両回転金具6,7の重なりが大きくなるから、両脚体1,2が閉じて、両脚体1,2を閉じることができる。このように開脚状態の両脚体1,2を閉脚するときは、シャフト14の操作軸部14cが、両天板4,4の隙間Sの上部側位置、即ち天板4上面と略面一状態に位置しているから、持ち上げる手を隙間S内に深く差し入れる必要がなく、その隙間Sの入口側に手を入れれば、操作軸部14cを簡単に掴めるため、閉脚操作を迅速容易に行えると共に、隙間S内で手指を損傷するような危険性がなく、操作上の安全性を確保できる。
【0026】
また、シャフト14の操作軸部14cは、上記のように常に隙間Sの入口側の掴み易い位置にあるから、脚立を持ち運ぶ場合には、この操作軸部14cを掴むことによって持ち易くなり、しかも持ち運び中は、支軸部14aが回転金具6,7の長孔12,13の上限位置にあって、下動するおそれがなく、両脚体1,2を閉じた位置にロックした状態で持ち運びできるから、持ち運びが非常に楽となる。
【0027】
また、この脚立において、回転金具6,7の長孔12,13は、図8の(a) ,(b) に示すように、夫々下部孔12a,13aと、この下部孔12a,13aから夫々斜め上方へ且つ互いに離れる方向に延びる上部孔12b,13bとからなるもので、回転金具6,7の長孔12,13の下部孔12a,13aは、上端側の幅Wbがその下部側の幅Waより僅かに狭く且つシャフト14の支軸部14aの径Dよりも僅かに大きくなっているから、脚体1,2が開脚されたロック状態での脚立使用時に、例えば振動によってシャフト14の支軸部14aに上向きの力が働いて、下部孔12a,13a内の支軸部14が持ち上がろうとしても、その支軸部14aが幅の狭くなった下部孔12a,13aの上部側に引っ掛かって、持ち上がりを阻止され、脚体1,2が不測にロック解除されるのを防止することができる。
【0028】
この図8の(a) ,(b) に示す実施形態において、回転金具6の長孔12の下部孔12aには上端側の片側に、なだらかな山形状の小凸部18を形成し、回転金具7の長孔13の下部孔13aの上端側には、回転金具6の長孔12の下部孔12aの小凸部18と対応する部位に同じようになだらかな山形状の小凸部19を形成し、これらの小凸部18,19により下部孔12a,13aの上端側の幅Wbがその下部側の幅Waよりも僅かに狭くなるようにしている。
【0029】
この実施形態では、両回転金具6,7の長孔12,13について夫々の下部孔12a,13aの上端側幅Wbを狭くしているが、いずれか片方の回転金具6,7の長孔12,13について、その下部孔12a,13aの上端側幅Wbを狭くしてもよい。また、この実施形態では、各下部孔12a,13aの上端側の片側に小凸部18を形成しているが、片側ではなく両側に形成してもよい。いずれにしても、振動等によってシャフト14の支軸部14aに上向きの力が働いて、下部孔12a,13a内の支軸部14が真上に持ち上がろうとしても、その支軸部14aが幅の狭くなった下部孔12a,13aの上部側に引っ掛かって、持ち上がりを阻止するが、シャフト14の操作軸部14cを持ち上げる時は、支軸部14aが下部孔12a,13aを通過して上部孔12b,13bに入れるようにする必要がある。
【0030】
また、この脚立においては、支軸兼操作軸用シャフト14の立上部14bが、両支軸部14a,14aの夫々内端から、直角に立ち上がるのではなく、外向き傾斜状に立ち上がって支軸部14a及び操作軸部14cに対して鋭角をなすように形成されているから、図7の(a) に示すように、各立上部14bの外側面上端部を回転金具6,7に対しわずかに点接触しうるような状態に配置することにより、シャフト14の軸方向移動を制限して、脚立運搬時などにおけるシャフト14のガタつきを防止し、それに伴う金属音の発生を防止できると共に、立上部14bはシャフト14の自重で倒れるので、操作軸部14cを何れか一方の脚体1又は2の天板4の内側端部4oに支持させておくことができる。因に、立上部14bを両支軸部14a,14aの夫々内端から直角に立ち上がるように形成した場合には、シャフト14の軸方向移動を制限するためには、各立上部14bの外側面全体を回転金具6,7に対し線接触させるような配置にするか、あるいは各立上部14bの外側面と回転金具6,7との間にスペーサを介在させる必要があるが、そうすると、立上部14bが常に回転金具6,7に対し接触する状態となるため、シャフト14の自重で操作軸部14cを天板4の内側端部4oに支持させることが難しく、操作軸部14cが天板4の上面から不都合に突出した状態となり、作業者がいちいち操作軸部14cを回転操作して天板4の内側端部4oに支持させる必要がある。
【符号の説明】
【0031】
1,2 脚体
3 脚柱
4 天板
4o 天板の内側端部
S 天板間の隙間
5 踏桟
6 回転金具
7 回転金具
12 長孔
13 長孔
12a 下部孔
12b 上部孔
13a 下部孔
13b 上部孔
14 支軸兼操作軸用シャフト
14a 支軸部
14b 立上部
14c 操作軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の梯子状脚体の上端部が回動自在に連結されて両脚体が開閉可能とされ、両脚体の夫々上端に天板が互いに間隔をおいて配設された脚立において、両脚体の夫々上部両端に、一部重なり合って両脚体の開閉により互いに回転するように回転金具が夫々固定され、両端側の支軸部と両支軸部の夫々内端から立ち上がる立上部と両立上部の上端どうしをつなぐ操作軸部とからなる支軸兼操作軸用シャフトの前記両支軸部が、脚体両端の回転金具の重なり合った部分に形成された長孔に挿通され、シャフトの支軸部が下に移動したときに両回転金具の重なりが小さくなって両脚体が開き、このとき操作軸部は、自重で立上部が倒れることによって何れか一方の脚体の天板の内側端部に天板上面と略面一状態に支持され、しかして両天板の隙間に上方から入れた手で操作軸部を持ち上げて支軸部を上に移動させることにより両回転金具の重なりが大きくなって両脚体が閉じるように構成されてなる脚立。
【請求項2】
両脚体の夫々上部両端に夫々固定されて、一部重なり合った一対の回転金具の長孔は、夫々下部孔と、この下部孔から夫々斜め上方へ且つ互いに離れる方向に延びる上部孔とからなるもので、少なくとも一方の回転金具の長孔の下部孔は、上端側の幅がその下部側の幅より僅かに狭く且つシャフトの支軸部の径より僅かに大きくなっている請求項1に記載の脚立。
【請求項3】
支軸兼操作軸用シャフトの立上部は、両支軸部の夫々内端から、直角に立ち上がるのではなく、外向き傾斜状に立ち上がって支軸部及び操作軸部に対し鋭角をなすように形成されてなる請求項1又は2に記載の脚立。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−219589(P2012−219589A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89760(P2011−89760)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000101662)アルインコ株式会社 (218)
【Fターム(参考)】