説明

脱穀機の脱穀部構造

【課題】 前部扱胴20を脱穀機体に装着したままで後部扱胴30を脱着できるようにする。
【解決手段】 後部扱胴30を、筒支軸31とリム部材35とドラム板33とに分割自在に構成してある。リム部材35を、筒支軸31に対して脱着自在に構成するとともに後部扱胴30の周方向に複数個の分割リム部材に分割自在に構成してある。ドラム板33を、リム部材35に対して脱着自在に構成するとともに後部扱胴30の周方向に複数個の分割ドラム板に分割自在に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前部扱胴と、この前部扱胴の回転支軸の後端部に相対回動自在に支持された後部扱胴とを、扱室に駆動回動自在に設けた脱穀機の脱穀部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記脱穀部構造として、従来、たとえば特許文献1に示されるように、第1扱胴3A(前部扱胴に相当)、第1扱胴3Aを支持する回転軸23の後部に回転筒軸24を介して相対回転自在に支持された第2扱胴3B(後部扱胴に相当)を備えたものがあった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−75508号公報(〔0013〕,〔0015〕段、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の脱穀機は、たとえば扱き残しやささりロス、ワラ切れやワラ屑の発生を抑制するように、後部扱胴を前部扱胴よりも高速で駆動したり、後部扱胴のドラム外径を調整したりすることを可能にしたものである。このため、後部扱胴が変形や破損したり、脱穀対象穀稈に対して不適合なものになったりして後部扱胴を修理や交換、調整する必要が比較的生じやすくなっている。
後部扱胴を脱着するのに、後部扱胴の脱着操作が可能となるように前部扱胴も後部扱胴と共に脱穀機体から取り外した状態にして、後部扱胴を前部扱胴の回転支軸に対して脱着せねばならないものであると、前部扱胴を脱穀機体に対して脱着する作業のために手間や労力が必要になる問題がある。
【0005】
本発明の目的は、後部扱胴を迅速かつ楽に脱着することができる脱穀機の脱穀部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、前部扱胴と、この前部扱胴の回転支軸の後端部に相対回転自在に支持された後部扱胴とを、扱室に駆動回動自在に設けた脱穀機の脱穀部構造において、
前記後部扱胴を、前記回転支軸に相対回転自在に外嵌された筒支軸と、この筒支軸に対して内周部が脱着自在なリム部材と、このリム部材の外周部に対して脱着自在なドラム板とに分割自在に構成し、
前記リム部材を、後部扱胴の周方向に複数個の分割リム部材に分割自在に構成し、
前記ドラム板を、後部扱胴の周方向に複数枚の分割ドラム板に分割自在に構成してある。
【0007】
すなわち、筒支軸に対して各分割リム部材を組み付けることにより、リム部材が完成状態になるとともに筒支軸に装着された状態になり、このリム部材に対して各分割ドラム板を組み付けることにより、ドラム板が完成状態になるとともにリム部材に装着された状態になり、この結果、後部扱胴が完成状態になるとともに前部扱胴の回転支軸の後端部に相対回転自在に装着された状態になる。各分割ドラム板をリム部材から取り外し、各分割リム部材を筒支軸から取り外すことにより、後部扱胴が複数枚の分割ドラム板と複数個の分割リム部材と筒支軸とに分解した状態になって回転支軸から外れた状態になる。これにより、後部扱胴を、筒支軸と分割ドラム板と分割リム部材に分解しながら回転支軸から取り外したり、分割リム部材及び分割ドラム板に分割して回転支軸に組み付けたりすることができ、前部扱胴を脱穀機体に装着したままにしても、後部扱胴だけを前部扱胴の回転支軸の後端部に相対回転自在に支持された所定の装着状態に装着したり、この装着状態から取り外したりすることができる。
【0008】
従って、本第1発明によれば、後部扱胴を修理や交換、調整する作業を行なうに当たり、前部扱胴を脱穀機体から取り外さずに後部扱胴だけを脱着して能率よくかつ楽に作業することができる。
【0009】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記リム部材において前記分割リム部材どうしが隣り合う部位と、前記ドラム板において前記分割ドラム板どうしが隣り合う部位とが後部扱胴の周方向に位置ずれした状態に前記リム部材と前記ドラム板とが連結されるように構成してある。
【0010】
すなわち、分割ドラム板が隣り合う一対の分割リム部材の一方と他方にわたって連結し、隣り合う一対の分割リム部材が分離しにくいように分割ドラム板によって連結された状態になる。
【0011】
従って、本第2発明によれば、後部扱胴を隣り合う一対の分割リム部材が脱穀負荷などによって分離しにくいように連結された強固な状態に得ることができ、しかも、分割ドラム板を連結手段に利用して構造面などでも有利に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、脱穀機体1の外部に駆動回動自在に位置する脱穀フィードチェーン2によって刈取り穀稈の株元側を脱穀機体後方向きに挟持搬送して、その刈取穀稈の穂先側を扱室3に供給して脱穀機体前後方向に並んで回動する前部扱胴20と後部扱胴30とによって脱穀処理し、脱穀排ワラを脱穀フィードチェーン2によって扱室3の後端部に位置する送塵口4から搬出し、扱室3から搬出された脱穀排ワラを排ワラ搬送チェーン5によって脱穀フィードチェーン2から受け継いで脱穀機体後方側に挟持搬送して脱穀機体1の外部に排出するように脱穀部を構成してある。扱室3の受網6から落下した脱穀処理物を、脱穀部の下方に駆動揺動自在に位置する揺動選別装置7によって受け止めて脱穀機体後方向きに搬送しながら、この揺動選別装置7と、唐箕8が供給する選別風とによって穀粒と塵埃とに選別し、穀粒を揺動選別装置7から落下させ、塵埃を排塵ファン9によって選別風と共に吸引させて脱穀機体1の外部に排出するように選別部を構成してある。揺動選別装置7から落下した精粒を1番スクリューコンベヤ11によって受け止めて脱穀機体1の横外側に搬送し、揺動選別装置7から落下した未処理粒を2番スクリューコンベヤ12によって受け止めて脱穀機体1の横外側に搬送し、2番スクリューコンベヤ12からの未処理粒を還元搬送装置(図示せず)によって脱穀機体内に吐出して揺動選別装置7の始端側に還元するように構成し、もって、コンバイン用の脱穀機を構成してある。
【0013】
脱穀部についてさらに詳述すると、図1,2に示すように、前記前部扱胴20は、扱室3の前記送塵口4よりも脱穀機体前方側に位置するように配置してある。この前部扱胴20は、前部扱胴20を貫通するとともに前部扱胴20に対して一体回転自在に連結されている脱穀機体前後向きの回転支軸21を介して扱室3の前側板15と後側板16に回転自在に支持されている。前記後部扱胴30は、扱室3の前記送塵口4の上方側に位置するように配置してある。この後部扱胴30は、後部扱胴30の軸芯部に位置する筒支軸31を介して前部扱胴20の前記回転支軸21の後端部に相対回転自在に支持されている。
【0014】
後部扱胴30の脱穀機体前後方向での長さLを、送塵口4の脱穀機体前後方向での長さに等しい又はそれに近い長さにしてある。後部扱胴30のドラム外径D1を前部扱胴20のドラム外径D2よりも小にし(たとえば、前部扱胴20のドラム外径D2を約424.6mmにし、後部扱胴30のドラム外径D1を約324.6mmにし)、後部扱胴30の扱歯先端での外径が前部扱胴20の扱歯先端での外径と等しく又はほぼ等しくなるように、後部扱胴30の扱歯32の後部扱胴周面から突出する長さを、前部扱胴20の扱歯22の前部扱胴周面から突出する長さよりも大にしてある。
【0015】
図2に示すように、前部扱胴20の回転支軸21の前記前側板15から扱室外に突出する端部に一体回転自在に設けた入力プーリ40に伝動ベルト41を介して自走機体の原動部(図示せず)からエンジン出力が伝達されて回転支軸21が駆動されるように構成することにより、前部扱胴20が回転支軸21の脱穀機体前後向きの軸芯P1まわりで回転駆動されるようになっている。前部扱胴20の横側方に回転支軸21と平行に位置して前側板15と後側板16に回転自在に支持されている回転伝動軸42の前端部に一体回転自在に設けた入力プーリ43に前記伝動ベルト41を介してエンジン出力が伝達されるように構成するとともに、前記回転伝動軸42の後端部に一体回転自在に設けた伝動プーリ44の駆動力が伝動ベルト45を介して、後部扱胴30の前記筒支軸31の後端部に連結している入力プーリ46に伝達されて筒支軸31が駆動されるように構成することにより、後部扱胴30が前部扱胴20の回転軸芯と同一の軸芯P1のまわりで前部扱胴20と同一の回転方向に、前部扱胴20よりも高速で回転駆動されるようになっている。たとえば前部扱胴20が507rpmで回転駆動され、後部扱胴30が700rpmで回転駆動されるようになっている。図3に示されるように、前記筒支軸31の入力プーリ46は、筒支軸31に対してネジ式の連結手段47によって一体回転自在に連結されている。この連結手段47には、伝動による弛みが生じないように左ネジを利用してある。
尚、前部扱胴20の前記回転支軸21の後端部に一体回転自在に連結している出力プーリ48は、回転支軸21の駆動力を前記排ワラ搬送チェーン5に伝達するものである。
【0016】
これにより、脱穀部は、刈取穀稈の株元側を脱穀フィードチェーン2によって脱穀機体後方向きに挟持搬送することにより、刈取穀稈の穂先側を扱室3の前部扱胴20と受網6の間に供給して前部扱胴20と受網6とによって脱穀処理し、次に後部扱胴30の下側に供給して後部扱胴30によって排ワラにささり込んでいる穀粒をほぐし出すように(ささりロスを抑制するように)、かつ、未脱粒を脱粒させるように(扱き残しを抑制するように)脱穀処理し、後部扱胴30からの脱穀排ワラを送塵口4から扱室外に搬出する。
【0017】
図3,4などに示すように、前記後部扱胴30は、後部扱胴30の回転軸芯方向及び周方向に並ぶ複数本の前記扱歯32が設けられているドラム板33と、前部扱胴20の前記回転支軸21に対してベアリング34を介して相対回転自在に外嵌されている前記筒支軸31と、後部扱胴30の回転軸芯方向での2箇所でドラム板33と筒支軸31とを連結しているリム部材35とを備えて構成してある。各リム部材35は、後部扱胴30の内部にワラ屑が入り込むことを防止するようにドラム板33と筒支軸31との間を閉じる蓋部材になるように円板状に形成してある。
【0018】
図5,6に示すように、前記各リム部材35は、分割リム部材35aの2個によって構成し、前記ドラム板33は、半円弧形の分割ドラム板33aの2枚によって構成してある。
【0019】
各分割リム部材35aは、半円形の板状体によって構成してある。各分割リム部材35aの内周部に、半円形の切欠き36aと、この切欠き36aの周囲に並ぶ複数個のボルト孔36bとを有した連結部36を設けてある。各分割リム部材35aの外周部に、フランジ37aと、このフランジ37aのリム部材周方向に並ぶ複数箇所に位置するメネジ部材37bとを有したドラム支持部37を設けてある。
【0020】
すなわち、各リム部材35は、前記分割リム部材35aの2個を、各分割リム部材35aの前記切欠き36aに筒支軸31が入り込むようにして筒支軸31の周囲に筒支軸31の周方向に並べ、前記連結部36の前記ボルト孔36bと筒支軸31のフランジ31aとに装着した連結ネジ38によって各分割リム部材35aの内周部を筒支軸31のフランジ31aに対して締め付け連結することによって構成してある。
【0021】
ドラム板33は、分割ドラム板33aの2枚を、各分割ドラム板33aの内面側が各リム部材35の分割リム部材35aのフランジ37aに対して当接した状態にして、かつ、分割ドラム板33aどうしが隣り合う部位Aが、分割リム部材35aどうしが隣り合う部位Bに対して後部扱胴30の周方向に位置ずれした状態にしてリム部材35の周方向に並べて、分割ドラム板33aのボルト孔33bと分割リム部材35aのメネジ部材37bとに装着した連結ネジ39によって分割ドラム板33aを各分割リム部材35aの外周部のフランジ37aに対して締め付け連結することによって構成してある。
【0022】
従って、後部扱胴30は、筒支軸31と、複数個のリム部材35と、一つのドラム板33とに分割自在になっている。後部扱胴30の各リム部材35は、筒支軸31に対して脱着することができるようになり、かつ、後部扱胴30の回転軸芯P1に直交する分割線B(図4参照)1で後部扱胴30の周方向に2個の分割リム部材35aに分割することできるようになっている。後部扱胴30のドラム板33は、各リム部材35に対して脱着することができるようになり、かつ、後部扱胴30の周方向に分割線A1(図4参照)で2枚の分割ドラム板33aに分割することができるようになっている。
これにより、後部扱胴30を変形や破損して修理や交換する場合、脱穀対象とする刈取穀稈の性状が異なるなどのために、図8に示す如く後部扱胴30を前部扱胴20と等しいドラム外径のものに変更する場合など、後部扱胴30を筒支軸31と分割ドラム板33aと分割リム部材35aに分解しながら回転支軸21から取り外したり、後部扱胴30を分割ドラム板33a及び分割リム部材35aに分割して回転支軸21に組み付けたりすることができ、前部扱胴20を脱穀機体に取り付けたままにして後部扱胴30のみを脱着することができる。
【0023】
脱穀機体1のうち、前部扱胴20及び後部扱胴30を支持している上部機体部分1aを、前記回転伝動軸42の軸芯まわりで、受網6を備えた下部機体部分に対して上下に揺動開閉できるように構成し、後部扱胴30を修理や交換などする際、上部機体部分1aを上昇開放して扱室3を開放するようになっている。
尚、前記回転伝動軸42は、ワラ屑の巻きつきなどが発生しないようにパイプ材49に収容してある。
【0024】
〔別実施形態〕
図7は、別の実施形態を備えて扱胴伝動構造を示し、この扱胴伝動構造にあっては、回転伝動軸42の伝動プーリ44を割りプーリ利用の変速プーリに構成し、この伝動プーリ44のベルト巻回径を変更することにより、後部扱胴30を変速駆動するようになっている。すなわち、後部扱胴30による切れワラの発生が多い場合、伝動プーリ44によって後部扱胴30を低速駆動されるように減速調節することにより、切れワラ発生を抑制できるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】コンバイン用脱穀機の断面図
【図2】脱穀部の平面図
【図3】後部扱胴取付け部の断面図
【図4】後部扱胴の縦断面図
【図5】後部扱胴の分解状態での正面図
【図6】後部扱胴の分解状態での斜視図
【図7】別の実施形態を備えた後部扱胴伝動構造の概略図
【図8】後部扱胴の調整状態を示す概略図
【符号の説明】
【0026】
3 扱室
20 前部扱胴
21 前部扱胴の回転支軸
30 後部扱胴
31 筒支軸
33 ドラム板
33a 分割ドラム板
35 リム部材
35a 分割リム部材
A 分割ドラム板の隣り合う部位
B 分割リム部材の隣り合う部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部扱胴と、この前部扱胴の回転支軸の後端部に相対回転自在に支持された後部扱胴とを、扱室に駆動回動自在に設けた脱穀機の脱穀部構造であって、
前記後部扱胴を、前記回転支軸に相対回転自在に外嵌された筒支軸と、この筒支軸に対して内周部が脱着自在なリム部材と、このリム部材の外周部に対して脱着自在なドラム板とに分割自在に構成し、
前記リム部材を、後部扱胴の周方向に複数個の分割リム部材に分割自在に構成し、
前記ドラム板を、後部扱胴の周方向に複数枚の分割ドラム板に分割自在に構成してある脱穀機の脱穀部構造。
【請求項2】
前記リム部材において前記分割リム部材どうしが隣り合う部位と、前記ドラム板において前記分割ドラム板どうしが隣り合う部位とが後部扱胴の周方向に位置ずれした状態に前記リム部材と前記ドラム板とが連結されるように構成してある請求項1記載の脱穀機の脱穀部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−75128(P2006−75128A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265588(P2004−265588)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】