説明

脱穀機

【課題】送風ファンからの選別風を効率よく吹かせることにより、吸引排塵ファンを設けることなく、安価かつ軽量化し、しかもきれいな選別を行えるようにした脱穀機を提供する。
【解決手段】扱室10で脱穀した脱穀物を、揺動選別体21と送風ファン50により選別し、選別された排塵物を前記送風ファン50の空気流により排塵口33から排出するようにした脱穀機1において、前記揺動選別体21は、無孔移送板23と、チャフシーブ25とを有し、前記送風ファン50から前記チャフシーブ25を通った空気流を前記排塵口33に導く排塵室32を備え、前記無孔移送板23は、その後端が、前記送風ファン50の吹出口51と前記排塵室32の天板31の前端とを結ぶ直線Cと略々交差する位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の収穫機に搭載され、扱室で脱穀された脱穀物を、扱室の下方に配置された揺動選別体の揺動と送風ファンからの選別風により選別する脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
扱室内で回転駆動される扱胴で穀稈の穂先部の穀粒を脱穀すると共に、その下方の受網を漏下した脱穀物を、揺動選別体の揺動と、その下方に配置された送風(唐箕)ファンからの選別風により一番物(穀粒)、二番物(穀粒と藁屑等の混合物)、排塵物(藁屑等)に選別し、前記一番物を穀粒タンクに揚上搬送し、前記二番物を前記揺動選別体上に還元し、前記選別風に巻き上げられた排塵物を吸引排塵ファンで吸引して排塵口から機外に放出するようにした脱穀機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−95360号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記脱穀機においては、扱室で脱穀された脱穀物の一部は受網を漏下して揺動選別体の無孔移送板上に落下する。また、前記受網に引っ掛かった脱穀物は、前記フィードチェーンで搬送される穀稈に押されて前記扱室の後部に移送され、前記扱室の後部からまとまった状態でチャフシーブ上に落下する。このため、前記チャフシーブを構成するフィン間の選別風の通風量が低下して、排塵物が前記一番物内に混入しやすくなる。
【0005】
また、前記扱室の後方に形成された開口部(四番口)から選別風が吹出すため、選別風と共に排塵室に流入する藁屑の量が減少する。このため、排塵口に吸引排塵ファンを設け、該吸引排塵ファンで選別風と藁屑とを吸引して強制的に排塵室へ導く必要がある。吸引排塵ファンを設置するため、脱穀機が高価になるだけでなくその重量も大きくなる。
【0006】
前記の事情に鑑み、本発明は、送風ファンからの選別風を効率よく吹かせることにより、吸引排塵ファンを設けることなく、安価かつ軽量化し、しかもきれいな選別が行えるようにした脱穀機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、扱室(10)で脱穀した脱穀物を、前記扱室(10)の下方に設けた揺動選別体(21)と送風ファン(50)により選別し、選別された排塵物を前記送風ファン(50)の空気流により直接排塵口(33)から排出してなる、脱穀機(1)において、
前記揺動選別体(21)は、前記扱室(10)下方に配置される無孔移送板(23)と、該無孔移送板(23)の後端から前記排塵口(33)側である後方に向けて延びているチャフシーブ(25)と、を有し、
前記送風ファン(50)から前記チャフシーブ(25)を通った空気流を前記排塵口(33)に導く排塵室(32)を備え、
前記無孔移送板(23)は、前記扱室(10)の後端下方より更に後方に延びて、その後端が、前記送風ファン(50)の吹出口(51)と前記排塵室(32)の天板(31)の前端とを結ぶ直線(C)の近傍位置まで延設される、
ことを特徴とする脱穀機にある。
【0008】
請求項2に係る本発明は、前記揺動選別体(21)は、前記チャフシーブ(25)の下方に配置されたグレンシーブ(27)を有し、
前記無孔移送板(23)の後端と前記グレンシーブ(27)の前端に亘って風向板(35)を設け、該風向板(35)が、前記直線(C)に略々沿うように配置されてなる、
請求項1記載の脱穀機にある。
【0009】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、脱穀機の揺動選別体は、扱室及び送風ファンの上下方向間側である前方側に配置される無孔移送板と、該無孔移送板の後端から排塵口側である後方に向けて延びているチャフシーブとを有し、前記送風ファンから前記チャフシーブを通った空気流を前記排塵口に導く排塵室を備え、前記無孔移送板は、前記扱室の後端下方より更に後方に延びて、その後端が、前記送風ファンの吹出口と前記排塵室の天板の前端とを結ぶ直線と略々交差する位置に配置されるように構成したので、扱室から一度に大量の藁屑等がチャフシーブ上に落下することがなく、かつ四番口からの選別風の吹出しを防止して選別風を前記送風ファンの吹出口から前記排塵口まで効率よく吹かすことができ、前記チャフシーブ全域に選別風があたり一番物への藁屑の混入を防止して精度の高い選別を行うことができる。また、吸引排塵ファンを用いることなく選別できるので、脱穀機を安価に、かつ軽量化することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、前記揺動選別体は、前記チャフシーブの下方に配置されたグレンシーブを有し、前記無孔移送板の後端と前記グレンシーブの前端に亘って風向板を設け、該風向板が、前記直線に略々沿うように配置されているので、前記排塵室に向けて前記送風ファンからの選別風を更に効率よく吹かせることができ、より精度の高い選別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。図1乃至図3は、本発明の実施の形態を示すもので、図1は、脱穀機の側面断面図、図2は、図1のA−A断面図、図3は、図1のB−B断面図である。
【0013】
図1乃至図2に示すように、脱穀機1は、扱室10と、選別室20と、排藁処理装置60を備えている。前記扱室10には、扱胴11が回転自在に配置されている。前記扱胴11は、円筒状の胴本体12に複数の扱歯(並歯、補強歯、整梳歯等)13が植設されている。また、前記扱室10には、フィードチェーン(図示せず)によって移送される穀稈の搬入口10aと搬出口10bが形成されている。前記扱室10の下部には、扱室10と選別室20を隔てる受網15が配置され、穀稈から脱穀された脱穀物を漏下させるようになっている。
【0014】
前記選別室20には、前記扱室10の下方から後方に延びる揺動選別体21と、前記扱室10の下方に配置され後方に向けて吹出し口51が形成された送風ファン(唐箕ファン)50と、前記揺動選別体21と前記送風ファン50からの選別風とにより選別された一番物(穀粒)を受入れる一番樋41と、該一番樋41に収容された一番物を揚穀筒(図示せず)を介してグレンタンク(図示せず)に向けて搬送する一番ラセン42と、二番物を受入れる二番樋43と、該二番樋43に収容された二番物を二番還元筒(図示せず)を介して前記揺動選別体21上に還流させる二番ラセン45とを備えている。
【0015】
前記揺動選別体21は、前記脱穀機1の側板2間に所定の間隔で揺動自在に配置された一対の揺動選別体側板22と、波形に形成され、前記扱室10の下方から後方に向けて延びるように前記揺動選別体側板22の間に固定された無孔移送板(揺動流板)23と、該無孔移送板23の後端から排塵口側である後方に向けて前後方向に所定の間隔で前記揺動選別体側板22の間に揺動自在に支持された複数のフィンで構成されたチャフシーブ25とを備えている。
【0016】
また、前記揺動選別体21には、前記該チャフシーブ25の後端に前記排塵口側である後方に向けて延びるように左右方向に所定の間隔で配置された複数の板で構成されたストローラック26と、前記チャフシーブ25の下方に配置され、該チャフシーブ25を漏下した脱穀物から穀粒を漏下させるグレンシーブ27と、前記チャフシーブ25を漏下した穀粒を前記一番樋41に導くガイド板(一番流板)28と、前記ストローラック26を漏下した脱穀物を前記二番樋43に導くガイド板30とを備えている。
【0017】
前記チャフシーブ25及びストローラック26の上方には、天板31で覆われた排塵室32が形成され、その後端に形成された排塵口33が形成されている。前記排塵室32の高さを確保することにより選別風の流れを良くすることができる。前記無孔移送板23の後端23aは、前記送風ファン50の吹出し口51の開口端51aと排塵室32を形成する前記天板31の前端31aとを結ぶ直線C(図1では、破線で表示)と略々交差する位置に配置される。なお、本実施の形態では、前記揺動選別体が揺動しても前記無孔移送板23の後端位置23aが前記直線Cより後方に位置するように構成されている。また、前記排塵口33は、前記送風ファン50の吹出し口51より大きくなるように形成され、選別風のとおりを良くするようになっている。
【0018】
また、前記無孔移送板23の後端部23aと前記グレンシーブ27の先端部27aに亘って風向板35が前記直線Cに略々沿うように配置されている。前記ガイド板28と前記風向板35の間に位置するように風向板34が配置され、前記風向板35と風向板34により前記送風ファン50からの選別風を強い状態で前記チャフシーブ25の前部25aに確実に当て、選別効率を向上させるようになっている。
【0019】
前記揺動選別体側板22には、前記脱穀機1の側板2との隙間を塞ぎ、選別風の漏洩を防止するための塞ぎプレート36が配置されている。前記ガイド板28には、前記脱穀機1の側枠2の幅に合せて形成され、選別風の漏洩を防止するための塞ぎプレート37が固定されている。また、前記ガイド板30の先端部30aには、前記脱穀機1の側枠2の幅に合せて形成され、選別風の漏洩を防止するための塞ぎプレート38が固定されている。さらに、前記ガイド板30の後端部30bには、前記脱穀機1の側枠2の幅に合せて形成され、選別風の漏洩を防止するための塞ぎプレート40が固定されている。前記各塞ぎプレート36、37、38、40は、例えば、ゴム等の可撓性を有する材料で形成され、前記脱穀機1の側板2と接して、選別風の漏洩を防止できるようになっている。
【0020】
前記脱穀機1の前記側板2、2には、前記送風ファン50の吸入口となる孔2a、2aが形成され、前記送風ファン50のファンケーシング50aが前記孔2a、2aと連通するように前記送風ファン50が設置されている。即ち、前記側板2、2は、前記ファンケーシング50aの一部を兼ねている。前記側板2、2の外側面には、前記孔2a、2aの下側(圧力が高くなる位置)に半円形のプレート52が固定され、前記送風ファン50の吸入口(孔2a、2a)からの空気の抜けを防止して、前記吹出し口51から吹出す選別風を十分に確保することができるようになっている。
【0021】
前記排藁処理装置60は、各々回転軸に所定の間隔で複数の切断刃を備えたカッタ61、62を有し、上方から投入される排藁を所定の長さに切断して圃場に排出するようになっている。なお、前記天板31が排藁処理装置60側へ突出することで、切断された藁屑が前記二番樋43に飛び込むのを防止することができる。
【0022】
前記の構成で、前記扱胴11を回転させ、前記揺動選別体21を揺動させると共に、前記送風ファン50を作動させる。すると、前記送風ファン50の吹出し口51から吹出された選別風は、前記ガイド板28及び前記風向板35の間を通り前記チャフシーブ25のフィンの間と前記ストローラック26のフィンの間を抜けて前記排塵室32へ流入し前記排塵口33から排出される。このとき、前記塞ぎプレート36、37、38、40で、前記脱穀機1の側板2と前記揺動選別体21の揺動選別体側板22との隙間が塞がれているので、選別風の漏れを無くし前記送風ファン50から吹出された選別風を効率よく流すことができる。
【0023】
フィードチェーンで前記扱室10の搬入口10aから穀稈を搬入する。前記扱歯13によって穀稈から脱穀された脱穀物の一部は、前記受網15を漏下して前記無孔移送板23上に落下する。また、前記受網15上に滞留した脱穀物は、穀稈に押されて前記扱室10の搬出口10bから前記無孔移送板23上に落下する。
【0024】
前記揺動選別体21の無孔移送板23上に落下した脱穀物は、前記無孔移送板23の揺動により穀粒と藁屑がその比重差で上下に選別されると共に、前記無孔移送板23の幅方向に略々均一な厚さに均されながら、前記チャフシーブ25上に送り込まれる。
【0025】
前記チャフシーブ25上に送り込まれた脱穀物のうち、比較的重い穀粒はチャフシーブ25のフィンの間を漏下して前記グレンシーブ27上に落下し、該グレンシーブ27を漏下して前記一番樋41に収容される。また、比較的軽い藁屑は、前記チャフシーブ25を通り抜けた選別風に乗って前記排塵室32に送り込まれ、前記排塵口33から選別風と共に機外に排出される。前記チャフシーブ25から前記グレンシーブ27上に漏下した藁屑は、選別風に巻き上げられて前記ストローラック26から前記排塵室32へ送られる。
【0026】
前記チャフシーブ25で漏下しきれず、前記ストローラック26に送り込まれた藁屑交じりの脱穀物は、該ストローラック26を漏下する間に選別風により更に藁屑が吹き飛ばされた状態で前記二番樋43に収容され、前記二番ラセン45で前記無孔移送板23上に還流され、再び選別が繰返される。
【0027】
前記のように、無孔移送板23を後方へ延設することにより、扱室10からの藁屑等が一度にまとまって(ドサット)チャフシーブ25上に落下することがなく、かつ前記扱室10の後部に開口する四番口からの選別風の吹出しを防止して、前記送風ファン50からの選別風を前記グレンシーブ27、前記チャフシーブ25から前記排塵室32を通して前記排塵口33へ効率よく吹かすことができる。従って、吸引排塵ファンを設けることなく、前記チャフシーブ25全域に選別風が当たり、前記一番樋41に藁屑が混入するのを防止して、きれいな選別を行うことができる。
【0028】
また、吸引排塵ファンを用いることなく藁屑等の排塵物の排出を行うことができるので、脱穀機を安価に、かつ軽量化することができる。
【0029】
また、前記無孔移送板23の後端部23aと前記グレンシーブ27の先端部27aとの間に風向板35を設けることにより、前記送風ファン50から吹出される選別風を整流させ前記排塵室32に向けて効率よく吹かせることができるので、より一層きれいな選別を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】脱穀機の側面断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 脱穀機
10 扱室
21 揺動選別体
23 無孔移送板
25 チャフシーブ
27 グレンシーブ
31 天板
32 排塵室
33 排塵口
35 風向板
50 送風ファン
C 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室で脱穀した脱穀物を、前記扱室の下方に設けた揺動選別体と送風ファンにより選別し、選別された排塵物を前記送風ファンの空気流により直接排塵口から排出してなる、脱穀機において、
前記揺動選別体は、前記扱室下方に配置される無孔移送板と、該無孔移送板の後端から前記排塵口側である後方に向けて延びているチャフシーブと、を有し、
前記送風ファンから前記チャフシーブを通った空気流を前記排塵口に導く排塵室を備え、
前記無孔移送板は、前記扱室の後端下方より更に後方に延びて、その後端が、前記送風ファンの吹出口と前記排塵室の天板の前端とを結ぶ直線の近傍位置まで延設される、
ことを特徴とする脱穀機。
【請求項2】
前記揺動選別体は、前記チャフシーブの下方に配置されたグレンシーブを有し、
前記無孔移送板の後端と前記グレンシーブの前端に亘って風向板を設け、該風向板が、前記直線に略々沿うように配置されてなる、
請求項1記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−228649(P2008−228649A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72588(P2007−72588)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】