説明

脱穀機

【課題】チャフシーブ上における寄せ板の配置を工夫することで、材料適応性を向上させることが可能な脱穀機の揺動選別装置を提供する。
【解決手段】揺動選別装置2は、チャフシーブ12の上方に、落下してくる選別物を受けて後方側に向けて流動させるサブフィードパン13と、該サブフィードパン13の下方で、チャフシーブ12の上面との間に隙間hを有し、チャフシーブ12上の選別物を分散させる寄せ板25を設けている。これにより、寄せ板25は、該寄せ板25上に選別物が堆積することを防ぐことができると共に、チャフシーブ12上面との間の隙間hから選別物を通過させることができ、選別物を分散させ層厚を一定にすることができて、材料適応性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載される脱穀機に係り、詳しくは、選別物を後方側に流動させるフィードパンと該フィードパンの後端に達した選別物を篩選別するチャフシーブとを有し、前後方向に揺動可能に支持された揺動選別装置を備えた脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等に搭載される脱穀機においては、扱胴を収納する扱室の下方に、前後方向に揺動可能に支持された揺動選別装置を備えたものがある。該揺動選別装置は、扱胴によって脱穀された穀粒及び藁屑等の選別物を比重選別しつつ後方側へ流動させるフィードパンと、該フィードパンの後端に達した選別物を篩選別するチャフシーブとを有して構成されている。
【0003】
このような揺動選別装置では、扱胴によって脱穀された選別物がフィードパン上に落下する際、扱胴の回転方向下手側となる一側方に偏ってしまう。このため、この一側方に集中した選別物を後方側へ流動させつつ分散させる寄せ板を設けたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、寄せ板を配置したフィードパン上の所定位置に、横移送装置を用いて2番還元物を放出するように構成し、寄せ板による選別物の分散を安定させ、選別性能の向上を図ったものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−9640号公報
【特許文献2】特開2005−328736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、比較的小型の脱穀機においては、2番還元筒の配置できるスペースの関係から、2番還元物をフィードパン上に放出する放出口を充分に前方側に配置することができず、フィードパン上で分散しきれないため、チャフシーブ上にも上記特許文献1または2に示すような寄せ板を配置することが考えられる。
【0006】
しかし、例えば材料が異なることにより2番還元物の量が変動した際には、選別物の分散が充分に行えず、チャフシーブ上に放出される選別物に偏りが生じ、穀粒が選別風により機外飛散となる、いわゆる穀粒ロスになってしまうという問題があった。また、このような脱穀機では、搬送されて扱室から出てきた排藁より落ちる穀粒及び藁屑を揺動選別装置上に放出する4番口からの選別物や、扱室から落下してくる切れ藁等の落下物があるため、これら落下物が寄せ板上に堆積し充分な分散を行うことができず、切れ藁等が混入することによる選別性能の悪化や穀粒ロスとなる虞があった。
【0007】
そこで本発明は、チャフシーブ上における寄せ板の配置を工夫することで、材料適応性を向上させることが可能な脱穀機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図6参照)、扱胴(3a)を収納する扱室(3)の下方に配置され、選別物を後方に向けて流動させる第1フィードパン(11)と該第1フィードパンの後端に達した選別物を篩選別するチャフシーブ(12)とを有し、前後方向に揺動可能に支持された揺動選別装置(2)を備え、
前記揺動選別装置(2)が前記扱胴(3a)により脱穀された選別物及び前記揺動選別装置(2)上に供給された選別物を後方側へ移送しつつ選別する脱穀機(1)において、
前記揺動選別装置(2)は、前記チャフシーブ(12)の上方に配置され、落下してくる選別物を受け、後方に向けて流動させる第2フィードパン(13)を有し、
前記第2フィードパン(13)の下方に配置され、前記チャフシーブ(12)の上面との間に隙間(h)を有し、前記チャフシーブ(12)上の選別物を分散させる寄せ板(25)を設けてなる、
ことを特徴とする脱穀機(1)にある。
【0009】
請求項2に係る本発明は(例えば図1及び図3参照)、前記寄せ板(25)は、前方側から後方側に向かうに従って前記寄せ板(25)の下端と前記チャフシーブ(12)の上面との隙間(h)が広くなるように形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の脱穀機(1)にある。
【0010】
請求項3に係る本発明は(例えば図1及び図3参照)、前記寄せ板(25)は、前記第2フィードパン(13)の下面に一体となるように取付けられてなる、
ことを特徴とする請求項1または2記載の脱穀機(1)にある。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、チャフシーブの上方に、落下してくる選別物を受けて後方側に向けて流動させる第2フィードパンと、該第2フィードパンの下方で、チャフシーブの上面との間に隙間を有し、チャフシーブ上の選別物を分散させる寄せ板を設けているので、例えば扱室や4番口からの落下物が第2フィードパンによって受け止められ、寄せ板上に堆積することを防ぐことができ、寄せ板の寄せ性能を良好にすることができて選別性能を向上させることができる。また、寄せ板は、チャフシーブ上面との間の隙間から選別物を通過させることができるので、チャフシーブ上で、例えば2番還元物の量の変動等により選別物の偏りが生じた場合にも、選別物を分散させ、選別物の層厚を極力均一にすることができ、チャフシーブの選別能力の効率を向上させることができて、選別性能を向上させると共に、選別風に基づく機外飛散による穀粒ロスも低減することができ、材料適応性を向上させることができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、寄せ板は、前方側から後方側に向かうに従って該寄せ板の下端とチャフシーブの上面との隙間が広くなるように形成されているので、該寄せ板の下端とチャフシーブの上面との隙間を通過させて選別物を分散させる際に、寄せ板の先端側では通過しやすくすることができて、効率よく分散させることができる。
【0014】
請求項3に係る本発明によると、寄せ板は、第2フィードパンの下面に一体となるように取付けられているので、寄せ板上、つまり第2フィードパンと寄せ板との間に藁屑等が詰まることによる寄せ性能の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に関する実施の形態を図1乃至図6に沿って説明する。
【0016】
小型コンバイン等に搭載される脱穀機1は、図1に示すように、回転自在に配置された扱胴3aと該扱胴3aの下方に配置された受網3bとを有する扱室3と、該扱室3に沿って穀稈を搬送するフィードチェーン5と、該フィードチェーン5の上側に沿って配置される挟持レール5aと、フィードチェーン5の終端部で排藁を受け取り、該排藁を搬送する排藁搬送チェーン6とを備えている。
【0017】
また、脱穀機1は、上記扱室3の下方に、唐箕ファン7及び排塵口40によって形成された選別風路中で前後方向に揺動することで、扱室3より排出された穀粒や藁屑等の選別物を選別する揺動選別装置2を備えている。
【0018】
さらに、該揺動選別装置2の下方には、1番物が搬送される1番ラセン8aを収納する1番樋8が備えられており、該1番ラセン8aの搬送終端部には、揚穀筒(図示せず)が連結され、1番樋8に収容された穀粒が該揚穀筒を介して揚上搬送されて穀粒タンク(図示せず)に貯留されるように構成されている。また、1番樋8の後方側には、2番物を搬送する2番ラセン9aが収納された2番樋9が備えられており、該2番ラセン9aの搬送終端部には、2番還元筒9bが連結され、2番樋9に収容された穀粒が該2番還元筒9bを介して揚上搬送されて、脱穀側板1aに設けられた2番物放出口9cから揺動選別装置2上に還元されるように構成されている。さらに、上記扱室3の後方側には、フィードチェーン5によって搬送されて扱室3から出てきた排藁より落ちる穀粒及び藁屑を傾斜面に沿って流下させ、揺動選別装置2上に放出する4番口41(図1及び図5参照)が設けられている。
【0019】
上記揺動選別装置2は、図2乃至図6に示すように、扱室3の下方側かつ左右の脱穀側板1a,1bの間に配置され、前方側から、選別物を後方側に向けて流動させるメインフィードパン(第1フィードパン)11、該メインフィードパン11から流動してきた選別物を篩選別するチャフシーブ12、及びストローラック15を備えている。
【0020】
また、チャフシーブ12の上方側には、上記扱室3の後部に開口した排稈口3cや4番口41から落下してくる藁屑及びささり粒等の選別物がチャフシーブ12に直接落下することを規制すると共に、これら落下した選別物を後方側へ流動させるサブフィードパン(第2フィードパン)13が備えられており、該チャフシーブ12の下方側には、1番選別網16が備えられると共に、該1番選別網16の下方には1番樋8に1番物を流下させる1番流板17が備えられている。さらに、ストローラック15の下方側には、2番樋9に2番物を流下させる2番流板18が備えられている。そして、揺動選別装置2は、これらが固定配置された枠体2aが支持リンクと駆動機構とからなる揺動支持機構(図示せず)により前後方向に揺動自在に支持されて構成されている。
【0021】
該枠体2aは、左右両側端部が外側に向かって屈曲するように形成されており、この側端部の上面に、ゴム又はプラスチック材によって形成される可撓性を有する帯状のシール部材31と、押さえプレート32とが複数のボルトによって固定されている。該シール部材31の外側端部は、脱穀側板1a,1bに上向き傾斜となるように摺接させて配置されており、枠体2aと脱穀側板1a,1bとの間に形成される隙間から選別物等の漏下を防止するように構成されている。
【0022】
また、枠体2aの脱穀側板1b側の後方部分には、図4乃至図6に示すように、シール部材31及び押さえプレート32上に乗って後方側に搬送されてきた選別物を選別可能な内側部分に誘導するガイドプレート26が設けられている。該ガイドプレート26は、プレート部26aと取付部26bとからなり、該取付部26bがストローラック15の側方部分においてボルトによって固定されている。
【0023】
メインフィードパン11には、漏下してきた選別物の層厚を均一にする寄せ板21,22,23が設けられている。また、寄せ板22は、前方側で量が多くなる扱室3からの漏下物と、後方側から漏下してくる2番物放出口9cからの2番物を区分けするため、他の寄せ板21,23よりも高さが高くなるように形成されている。なお、これら寄せ板21,22,23は、扱室3及び2番放出口9cからの漏下物が脱穀側板1a側に集中するため、脱穀側板1a側の側端部を始点として後方側に延びるにしたがって脱穀側板1b側に延びる傾斜状に形成されている。
【0024】
上記サブフィードパン13は、脱穀側板1a側に切欠き部を有しており、この切欠き部によって形成される空間Aより、2番物放出口9cから放出される2番物がチャフシーブ12上に落下するように構成されている。また、サブフィードパン13は、脱穀側板1b側に配置された支持側板13Aと、脱穀側板1a側に配置された支持取付部13Bとによって揺動選別装置2の枠体2aに固定されている。該支持取付部13Bは、前方側が前取付部13cによって、上記寄せ板23の先端部に固定されており、後方側が規制板部13aを介した後取付部13bによって、枠体2aに固定されている。該規制板部13aは、上記空間Aの後方側を閉塞するように板状に形成され、2番物放出口9cから放出された2番物がすぐに後方側に移送され、機外飛散になってしまうことを防止するように構成されている。
【0025】
サブフィードパン13の下方には、チャフシーブ12上の選別物の層厚を均一にする寄せ板25が配置されている。該寄せ板25は、図1及び図3に示すように、該寄せ板25の下端部とチャフシーブ12の上面との間に隙間hを有しており、選別物が通過できるように構成されている。また、特に、寄せ板25は基端側(前方側)よりも先端側(後方側)の方がチャフシーブ12の上面との隙間hが広くなるように構成されており、先端側に行くにしたがって選別物が通過しやすくなっている。さらに、寄せ板25は、サブフィードパン13の下面に一体となるように溶着して取付けられており、例えば、寄せ板25上に藁屑等が堆積してしまうこと、つまりサブフィードパン13と寄せ板25との間に藁屑等が詰まってしまうことを防止している。
【0026】
また、寄せ板25は、図2及び図6に示すように、基端部が上記サブフィードパン13の前取付部13c及び寄せ板23の先端部と共にボルト45,45及びナット46,46によって固定されている。これにより、サブフィードパン13の取付部13c、寄せ板23、及び寄せ板25の強度の向上を図ることができると共に、取付けの構造の簡素化を図ることができる。
【0027】
また、寄せ板25は、該寄せ板25の基端部と寄せ板23の先端部とが隙間のないように接続され、後方側に延びるにしたがって脱穀側板1b側に延びる傾斜状に形成されている。これにより、寄せ板25の基端部と寄せ板23の先端部との間に隙間がある場合に比して、選別物が隙間を介して出入りしてしまうことを防ぐことができ、例えば2番物の量が増加した際にも、寄せ板23より前方側に落下した選別物を寄せ板23,25によって脱穀側板1b側に寄せることができて選別のロスを低減することができる。つまり2番還元量が変動した場合でも、選別性能の変化をなくすことができ、材料適応性を向上させることができる。
【0028】
以上のように構成された本発明に係る脱穀機1は、扱室3で脱穀された穀粒や藁屑等の選別物を揺動選別装置2の揺動運動及び唐箕ファン7による風選別によって選別作用を行い、1番物は1番流板17から1番樋8、1番ラセン8a及び揚穀筒を介して穀粒タンクに収容すると共に、ストローラック15から切藁等の長い屑類を選別風路に向けて送出選別した後の2番物を、2番流板18から2番樋9、2番ラセン9a及び2番還元筒9bを介して揺動選別装置2上に還元して再選別を行い穀粒を回収する。また、機体内で発生する藁屑等の排塵物は唐箕ファン7によって形成される選別風によって排塵口40から機外に向けて排出される。
【0029】
以上のように、本発明に係る脱穀機1の揺動選別装置2によると、チャフシーブ12の上方に、落下してくる選別物を受けて後方側に向けて流動させるサブフィードパン13と、該サブフィードパン13の下方で、チャフシーブ12の上面との間に隙間hを有し、チャフシーブ12上の選別物を分散させる寄せ板25を設けているので、例えば扱室3の排稈口3cや4番口41からの落下物がサブフィードパン13によって受け止められ、寄せ板25上に堆積することを防ぐことができ、寄せ板25の寄せ性能を良好にすることができて選別性能を向上させることができる。また、寄せ板25は、チャフシーブ12上面との間の隙間hから選別物を通過させることができるので、チャフシーブ12上で、例えば2番還元物の量の変動等により選別物の偏りが生じた場合にも、選別物を分散させ、選別物の層厚を極力均一にすることができ、チャフシーブ12の選別能力の効率を向上させることができて、選別性能を向上させると共に、選別風に基づく機外飛散による穀粒ロスも低減することができ、材料適応性を向上させることができる。
【0030】
また、寄せ板25は、前方側から後方側に向かうに従って該寄せ板25の下端とチャフシーブ12の上面との隙間hが広くなるように形成されているので、該寄せ板25の下端とチャフシーブ12の上面との隙間hを通過させて選別物を分散させる際に、寄せ板の先端側では通過しやすくすることができて、効率よく分散させることができる。
【0031】
さらに、寄せ板25は、サブフィードパン13の下面に一体となるように取付けられているので、寄せ板25上、つまりサブフィードパン13と寄せ板25との間に藁屑等が詰まることによる寄せ性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る脱穀機を示す側面図。
【図2】脱穀機の一部を示す斜視図。
【図3】揺動選別装置を示す側面図。
【図4】揺動選別装置を示す斜視図。
【図5】脱穀機を示す斜視図。
【図6】揺動選別装置を示す平面図。
【符号の説明】
【0033】
1 脱穀機
2 揺動選別装置
3 扱室
3a 扱胴
11 第1フィードパン(メインフィードパン)
12 チャフシーブ
13 第2フィードパン(サブフィードパン)
25 寄せ板
h 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴を収納する扱室の下方に配置され、選別物を後方に向けて流動させる第1フィードパンと該第1フィードパンの後端に達した選別物を篩選別するチャフシーブとを有し、前後方向に揺動可能に支持された揺動選別装置を備え、
前記揺動選別装置が前記扱胴により脱穀された選別物及び前記揺動選別装置上に供給された選別物を後方側へ移送しつつ選別する脱穀機において、
前記揺動選別装置は、前記チャフシーブの上方に配置され、落下してくる選別物を受け、後方に向けて流動させる第2フィードパンを有し、
前記第2フィードパンの下方に配置され、前記チャフシーブの上面との間に隙間を有し、前記チャフシーブ上の選別物を分散させる寄せ板を設けてなる、
ことを特徴とする脱穀機。
【請求項2】
前記寄せ板は、前方側から後方側に向かうに従って前記寄せ板の下端と前記チャフシーブの上面との隙間が広くなるように形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の脱穀機。
【請求項3】
前記寄せ板は、前記第2フィードパンの下面に一体となるように取付けられてなる、
ことを特徴とする請求項1または2記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−17157(P2010−17157A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182546(P2008−182546)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】