脱穀装置の副選別風ファン
【課題】従来のコンバインは、選別室の上部、すなわち、揺動選別棚上に主唐箕の選別風が届かないことと、併せて、入口漏斗の下方には必然的に空間部ができて、限られた狭い走行フレーム上が有効に利用されていない課題があった。
【解決手段】この発明は、コンバイン(2)の走行フレーム(3)上に脱穀装置(5)を搭載し、この脱穀装置(5)の前側にある入口漏斗(7)の下方と刈取懸架台(1)との間にできる空間部(6)に副選別風ファン(9)を載置して設け、この副選別風ファン(9)によって選別室(8)で主唐箕の選別風が届かない死角の部分に副選別風を吹き込む構成とした脱穀装置の副選別風ファンである。
【解決手段】この発明は、コンバイン(2)の走行フレーム(3)上に脱穀装置(5)を搭載し、この脱穀装置(5)の前側にある入口漏斗(7)の下方と刈取懸架台(1)との間にできる空間部(6)に副選別風ファン(9)を載置して設け、この副選別風ファン(9)によって選別室(8)で主唐箕の選別風が届かない死角の部分に副選別風を吹き込む構成とした脱穀装置の副選別風ファンである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの走行フレーム上に搭載した脱穀装置において、選別室に副選別風を吹き込むファンを設けた脱穀装置の副選別風ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の脱穀装置における選別装置は、主唐箕となる圧風唐箕の他に、セカンドファンと称して、選別室内に主選別風を補助するために、副選別風を吹き込む副選別風ファンを設けて選別の精度を高める構成が知られている。たとえば、圧風唐箕の上側にセカンドファンを設けて、主選別風が届かない揺動選別棚上に副選別風を吹き込む構成や、一番と二番との移送螺旋の間に装置して、主として二番物の選別効果を高めるための装置等が知られている。
【0003】
その一例として、例えば、公開実用新案公報、昭62−33243号には、添付図面の第2図、及び第3図に示されているように、主唐箕である圧風唐箕の上側で選別方向の最も上手側に副選別風ファンを装備して、主唐箕の選別風が届かない揺動選別棚上に副選別風を吹き込んで、選別室上部の選別精度を大幅に向上する技術が開示されている。
【特許文献1】実開昭62−33243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、コンバインの走行フレーム上に脱穀装置を搭載する場合、フレームの前部にある刈取懸架台の後方位置に、穀稈供給口を前側にして脱穀装置を載置すると、穀稈供給口の前側に連続して設けられている入口漏斗の下方に空間部ができる配置構成になっていた。したがって、従来のコンバインは、この空間部をエンジンから出る熱風の排風通路に利用するのが一般的であり、限られた狭いコンバインの走行フレーム上が有効に利用されていない課題があった。
【0005】
この出願に係る発明は、上記空間部を有効に活用して、コンバインの前後長を長くすることなく、副選別風ファンを装備して、主唐箕の選別風が届かない主唐箕の上方位置の揺動選別棚上に副選別風を吹き込んで選別室全体の選別精度を向上するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、前部に、上方前方側に突出させた刈取懸架台(1)を装備したコンバイン(2)の走行フレーム(3)上に、穀稈供給口(4)を前側にして脱穀装置(5)を搭載し、該脱穀装置(5)と前記刈取懸架台(1)との間に形成される空間部(6)で、前記穀稈供給口(4)の前にある入口漏斗(7)の下方位置に、前記脱穀装置(5)の選別室(8)上部に副選別風を吹き込む副選別風ファン(9)を軸装して設けたことを特徴とする脱穀装置の副選別風ファンであって、前側にある刈取懸架台(1)とその背後に搭載した脱穀装置(5)との間にできる入口漏斗(7)の下方空間部(6)を有効に活用して、コンバインの前後長さを長くすることなく副選別風ファン(9)を載置して、主唐箕から選別風が届かない部位にある揺動選別棚上に副選別風を吹き込んで選別精度を向上することができるものとなっている。
【0007】
つぎに、請求項2に記載した発明は、前記副選別風ファン(9)は、前記空間部(6)内に装置するにあたり、可及的大径に構成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の副選別風ファンであって、限られた狭いスペース内において、ファン容量を最大限に大きく構成できて、充分な副選別風を選別室上部に供給できると共に、防塵網を通してエンジンの熱風を吸引して選別室に吹き込むことができる。したがって、この発明は、濡れ扱ぎ等に適する副選別風を吹き込むことができる。
【0008】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記走行フレーム(3)は、前記副選別風ファン(3)を装備した前部フレーム(3a)を高く、前記脱穀装置(5)を搭載した中間後部フレーム(3b)を低くした段差を有する連続フレームに構成し、前記副選別風ファン(9)は、前記脱穀装置(5)の圧風唐箕(10)と前記刈取懸架台(1)との間に形成される前記空間部(6)内に装置するにあたり、可及的大径に構成したことを特徴とする請求項1、又は2記載の脱穀装置の副選別風ファンであって、走行フレーム(3)の下方には、クローラが装備されており、前部フレーム(3a)の下側には駆動スプロケットが配置されている。したがって、クローラは、前部フレーム(3a)の地上高が高いために装着や取り外し作業が比較的楽でやり易くなり、その上に泥はけのよい装置となっている。そして、脱穀装置は、地上高さの低い中間後部フレーム(3b)上に搭載したから、上部の高さ位置を保持したまま、上下方向の容積を拡大できて選別能力を大幅に向上することが可能になった。
【発明の効果】
【0009】
まず、請求項1に記載した発明は、前側にある刈取懸架台(1)とその背後に搭載した脱穀装置(5)との間であって、入口漏斗(7)の下方に形成される空間部(6)を有効に活用して、副選別風ファン(9)を設けた特徴がある。そして、この発明は、コンバインの全長を長くすることなく副選別風ファン(9)を載置して、主唐箕から選別風が届かない部位にある揺動選別棚上に副選別風を吹き込んで選別精度を向上することができる特有の効果を奏する。
【0010】
そして、請求項2に記載した発明は、請求項1の有する効果を奏するものでありながら、限られた狭いスペース内において、ファン容量を最大限に大きく構成できて、充分な副選別風を選別室上部に供給できると共に、防塵網を通してエンジンの熱風を吸引して、熱が停滞するのを防止して選別室に吹き込むことができる特徴を有する。
【0011】
そして、この発明は、エンジンからの熱風を副選別風として揺動選別棚上に吹き込むことができるから、濡れ扱ぎ等に適する選別風となり、効果的に選別精度を向上できる特徴がある。
【0012】
そして、請求項3に記載した発明は、走行フレーム(3)の下方には、クローラが装備されており、しかも、高い前部フレーム(3a)の下側には走行ミッションに軸架した駆動スプロケットが配置されているから、クローラの装着や取り外しのメンテナンス作業が楽にできる効果がある。そして、上記構成は、泥はけ(泥土が後方側に抜け易い)の良好な装置となって、湿田の走行性が大幅に向上した利点がある。
【0013】
そして、脱穀装置(5)は、地上高さの低い中間後部フレーム(3b)上に搭載したから、上部の高さ位置を保持したまま、上下方向の容積を拡大(脱穀装置を高くしないで下側に延長、拡大した)して選別能力を向上した特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、この発明に係る実施例の主要部は、上方前方側に斜めに突出させた刈取懸架台1を前端部に設けた走行フレーム3上に、穀稈供給口4を前側にして脱穀装置5を搭載し、該脱穀装置5の穀稈供給口4に連続する入口漏斗7の下方で、前記刈取懸架台1と脱穀装置5との間に形成される空間部6に、副選別風ファン9を装備し、該ファン9の風を、前記脱穀装置5の選別室8上部で、主唐箕(圧風唐箕10)の選別風が届かない揺動選別棚11側に吹き込む構成としている。
【0015】
このように、実施例は、限られた狭い走行フレーム3上を有効に利用して、コンバイン2の全長を長くしないで副選別風ファン9を装置した点に特徴があり、更に、圧風唐箕10から送られる選別風が届かない死角部分に副選別風を吹き込んで選別精度を向上する特徴もある。
【0016】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
コンバイン2の走行フレーム3は、図1に示すように、副選別風ファン9を装備した前部フレーム3aを高く形成し、脱穀装置5を搭載した中間後部フレーム3bを低くして段差をつけ、連続したフレームに構成している。そして、刈取懸架台1は、図面に示すように、走行フレーム3の前部フレーム3aの前端部に、上方前方側に向けて斜めに突出させて設け、刈取フレーム12の後部上端を上下回動自由に枢着して支持した構成としている。
【0017】
そして、上記刈取フレーム12は、図5、及び図6に示すコンバイン2の全体図から解るように、前部に分草杆13、穀稈引起し装置14を設け、更に、刈取装置15を下側に装備し、刈取穀稈を脱穀装置5まで搬送する上下の穀稈搬送装置16を設けて刈取前処理装置を構成している。
【0018】
つぎに、脱穀装置5は、図1に示すように、前記走行フレーム3の段差をつけて低くした中間後部フレーム3b上に、穀稈供給口4を前側にして搭載しているが、実施例の場合、脱穀装置5の下部底面が、前側の刈取懸架台1の下端より低い位置まで下げて搭載している。そして、脱穀装置5は、穀稈供給口4の前側に連続して設けた入口漏斗7を刈取懸架台1側に延長し、前記刈取フレーム12側の穀稈搬送装置16の終端部から搬送穀稈を受け継ぐように臨ませて設けている。
【0019】
そして、該入口漏斗7の下方には、前記刈取懸架台1と脱穀装置5との間に必然的に空間部6が形成されることになる。この場合、空間部6は、前側の刈取懸架第1と、後側の脱穀装置5の圧風唐箕10と、上側の上記入口漏斗7との三つの部材に囲まれた状態に形成され、その部位に、副選別風ファン9を位置させて走行フレーム3上に装置して構成している。そして、副選別風ファン9は、図1、乃至図3に示すように、横断流ファンを使用して下側に張設している防塵網17の部分を吸気口として外気を吸引するが、エンジン18と同位相(前後方向の位置を略同位置に装置した意味)に配置し、脱穀装置5の選別室8上部に揺動自由に支架している揺動選別棚11側に副選別風を吹き込むように軸装して構成している。そして、この場合、副選別風ファン9は、図3、及び図7に示すように、後述するケーシング35の右側板35bを選別室8の右側板8bより左側にオフセットして設け、エンジンプーリ18aや、後述する関連の伝動装置(ファン入力プーリー67等)を設けるスペースを確保した構成としている。
【0020】
そして、副選別風ファン9は、前記空間部6内に装置するにあたり、周囲から制限された狭いスペースの中において、できる限り容量を大きくして多量の副選別風を起風できるように横幅と直径とを可能な限り大きく構成している。
【0021】
このように、副選別風ファン9は、横断流ファンの特性を利用して選別風を幅方向にむらなく起風し、全幅で均等に起風した風を揺動選別棚11側に副選別風として吹き込むことにより、選別むらの発生がほとんどなく、しかも、隣接するエンジン18の排気(熱気)を防塵網17の全面から吸引して選別室8側に吹込み濡れ扱ぎ等に対応できる特徴がある。
【0022】
つぎに、脱穀装置5は、図1、乃至図4に示すように、扱胴19を軸架した扱室20を上側に配置し、その下方に選別室8を設けて構成している。そして、二番処理室21と排塵処理室22は、前記扱室20の背後に配置して設け、選別室8から還元されてきた二番物を二番処理胴21aで処理し、前記扱室20から受け継いだ排塵物を排塵処理胴22aで処理する構成としている。そして、選別室8は、上側に前記揺動選別棚11が揺動自由に設けられ、その下方に、選別方向上手側から前記圧風唐箕10、一番移送螺旋23、二番移送螺旋24の順に軸架して構成している。そして、圧風唐箕10は、既に説明した副選別風ファン9に対する主唐箕であって、従来公知の脱穀装置と同様に、選別室8に選別風を送り込む構成としている。なお、26は排塵ファンを示している。
【0023】
つぎに、フィードチエン27は、図面に示すように、上記扱室20の外側に扱口に沿わせて設けられているが、図2、乃至図4に示すように、前記刈取懸架台1の外側に固定した支持金具28に斜めに支持した回動支点ピン29に回動金具30を介して回動支持枠31を回動自由に連結し、この回動支持枠31に連結固定したチエンレール32に設けて脱穀穀稈を挟持して搬送する構成としている。そして、フードチエン27は、図8の作用図で解るように、回動支点ピン29を支点にして回動金具30、回動支持枠31、チエンレール32と一体の状態で脱穀装置5から離れて外側へオープン回動ができる構成となっている。
【0024】
このように、フィードチエン27は、脱穀装置5から外側に遠く離れた位置にオープン回動すると、脱穀装置5の各部(フィードチエン27側)のメンテナンスは勿論のこと、副選別風ファン9の着脱(具体構成は後述する)、メンテナンスが楽にできるものとなっている。この場合、オープン機構(支持金具28、回動支点ピン29、回動金具30)は、刈取懸架台1とフィードチエン27との間に設けているから、副変速風ファン9の伝動装置の妨げにはならないと同時に、回動支点ピン29を斜めに設けて、これを軸芯に回動するから穀稈搬送装置16を避けて衝突しない経路で回動できる構成にしている。
【0025】
つぎに、副選別風ファン9は、図9に示すように、ケーシング35の内部に軸受け支持して収納しており、ケーシング35と一体に空間部6に着脱可能に構成している。そして、ケーシング35は、図9に示す実施例の場合、連結部材42によって連結した左右両側板35a、35bと、ケーシング胴35cとで構成している。そして、上記ケーシング胴35cは、副選別風路60の構成に関して後述するが、図15、及び図17に示すように、円弧形状にして上側に配置し、下方の吸気側(防塵網17に対応する部位)と吹出し側(副選別風路60については後述する)とを開口して構成している。
【0026】
そして、中空軸38は、図10、及び図12に示すように、支持メタル36により脱穀装置5の前板45に軸受け支持した入力軸37に対して、カップリング式にして挿脱自由に形成し、軸端から挿し込んで駆動できる構成にして、ファン9を取り付け支持している。
【0027】
そして、実施例の場合、ケーシング35は、図9、乃至図11に示すように、左側板35aの外側に伝動ケース39を設け、その外側にフレーム側板40を設け、更に、その外側にフィードチエンギヤケース41を設け、これらを一体の構成として、一体の状態で着脱自由に構成している。そして、伝動ケース39は、図12に示すように、副選別風ファン9の横幅を可及的に広くするために、ケーシング左側板35aとフレーム側板40(平面視で選別室8の左側板8aと幅方向に同一位置)との間に納めたコンパクト構成をとっている。
【0028】
そして、ケーシング35は、図9、及び図10に示すように、ケーシング胴35cと共に左右の両側板35a,35bを接続する上下連結部材42に数個のローラ43を軸架して設け、このローラ43を選別室8の前板45に設けたスライドレール46上を転動させてスライド可能に構成している。そして、スライドレール46は、図10に示すように、下側のレールを上側より左側方(フィードチエン27側)に長く形成して、着脱作業時にケーシング35の端部を引っ掛けて着脱作業を楽にする工夫を施している。
【0029】
そして、ロック機構は、図11、及び図12に示すように、刈取懸架台1側に係合ピン47を設け、脱穀装置5の前板45側にロックプレート48を設け、対応するケーシング35の左側板35a側に係合孔49を設け、外側のフレーム側板40にロックハンドル装置50を設けてケーシング35を収納した後、係合とロックにより保持する構成としている。実施例の場合、ロックハンドル装置50は、図面のように、前記ロックプレート48に押し当てたとき、ロックプレート48の奥側(裏側)に挿入される部位にロック具があり、図11の上向き(実線位置)でロック解除、横向き(仮想線位置)でロック状態に切替操作を可能に構成している。このように、ロックハンドル装置50は、脱穀装置5に固定されているロックプレート48に対して、着脱作業時にロック状態とロック解除の状態に切換できる構成としている。
【0030】
そして、フレーム側板40は、図9、及び図11に示すように、選別室8の揺動選別棚11の摺動ベアリング51を案内するベヤリングガイド52を取り付けて構成している。このように、選別室8は、上記フレーム側板40に対応させて塞がれる部位には、脱穀装置5の選別室8の側板8aを部分的に切欠いで作業者が手を挿入できる程度の空洞54を形成し、内部の清掃やメンテナンスができる構成にしている。
【0031】
したがって、上記空洞54は、副選別風ファン9をケーシング35ごと取り外すと、フレーム側板40が開放されるから、手を差し込んで、風路(後述する副選別風路60)の残米の清掃や揺動選別棚11前部の清掃等が比較的簡単にできる特徴がある。
【0032】
このように、副選別風ファン9は、図13に示すように、フィードチエン27を外側にオープン回動させた後、ケーシング35を副選別風ファン9とともに外側へ外すと、何もない元の空間部6になるから、走行フレーム3の前部フレーム3aの左側から右側に位置するエンジン18のメンテナンスを行うことも可能になる特徴がある。
【0033】
そして、ケーシング35は、上記実施例の如く、着脱方向を走行フレーム3の左側方向にのみ拘ることはなく、図14に示すように、走行フレーム3の前方で上方に取出す着脱構成にすることも可能である。この場合、ケーシング35は、まず、先に、穀稈搬送装置16を取外して、刈取懸架台1と入口漏斗7との間に取り出し通路を作った後、前方、上方に取り出すことが考えられる。
【0034】
つぎに、副選別風ファン9から選別室8の上部に副選別風を吹き込む副選別風路60について、図15、乃至図17に基づいて説明する。
まず、副選別風路60は、図16に平面視で示すように、副選別風ファン9の全横幅に渡って設けられるが、図15で解るように、前記ケーシング35の上端部分(ケーシング胴35cの端縁)を選別室8の前板45にまで延長し、上下幅Hを隔てた下側には風ガイド板61をファン9側に設けて風路60の入口を構成している。そして、上記風ガイド板61は、ケーシング35の左右両側板35a,35bに左右両端部が取り付けられ、副選別風ファン9と一体のまま着脱できる構成にしている。
【0035】
一方、選別室8側の風路構成は、図15に示すように、上記風路60の入口に対応する部位に上側風ガイド板62と下側風ガイド板63とを、hの間隔にして選別室8の前板45に端縁部を合わせて一体に設け、上記ケーシング胴35cの端縁と下側の風ガイド板61の端縁とにそれぞれ突き合わせて連通状態になる構成としている。
【0036】
このように、副選別風路60は、図15、及び図16に示すように、副選別風ファン9側のケーシング胴35cの先端縁、及び下側の風ガイド板61と、他方の選別室8側に設けた上下の風ガイド板62,63とは、横幅、上下間隔(H、h)、及び角度(絞り角)とを略同一に形成して、連通状態に接合したときぴったり合致して段差がなく、副選別風がなんらの抵抗もなくスムースに選別室8側に吹き込まれることができる構成としている。
【0037】
つぎに、図17に示す別実施例の副選別風路60は、図面から解るように、副選別風ファン9のケーシング胴35cと下側のファン9側の風ガイド板61とを脱穀装置5の選別室8内まで挿入するように長く延長した構成としている。この実施例は、既に説明した選別室8の空洞54内に、ファン9側に設けた副選別風路60が挿入された状態になる構成である。
【0038】
このように構成すると、副選別風路60は、これを構成する全ての風ガイド板が副選別風ファン9のケーシング35と一体になるから、構成が簡潔になって、一体に着脱するから、清掃やメンテナンスが楽になり、一方、選別室8側でも、副選別風ファン9を取り外すと、風ガイド板が残らないから邪魔物が少なくなって清掃が楽になる優れた効果がある。
【0039】
なお、本明細書中に記載した「左・右」の表現は、全てコンバイン2の前進方向に向かって見た状態を基準として説明した。
つぎに、実施例に係るコンバイン2の伝動機構を、図18に基づいて説明する。
【0040】
まず、エンジン18は、回転動力を脱穀装置5と走行系の静油圧式無段変速装置65とに分岐して両側に伝動する構成としている。そして、副選別風ファン9は、上記静油圧式無段変速装置65から走行ミッション装置66を経由してファン入力プーリ67に入力される伝動経路に構成している。そして、上記ファン入力プーリ67は、既に説明した入力軸37に軸着して設け、軸側にワンウエイクラッチ68を装備し、逆回転(例えば、走行ミッション装置66から後進回転動力が伝動されたとき)の伝動が不能となる構成としている。
【0041】
そして、フィードチエン27は、図面に示すように、副選別風ファン9を経由して、既に説明している伝動ケース39からフードチエンギヤケース41を経由して、走行速度にシンクロされた回転動力が伝動される構成としている。
【0042】
そして、副選別風ファン9は、図18に示すように、脱穀装置5の圧風唐箕10側から入力される伝動経路70を構成している。この伝動経路70は、走行ミッション装置66側を停止した状態で脱穀装置5のみを駆動しながら脱穀作業を行なうときに使用する伝動装置である。
【0043】
実施例の場合、脱穀装置5のクラッチ機構は、脱穀装置5のみを伝動する位置と、刈取装置15側と同時に伝動する位置に切換操作を可能に構成されている。
したがって、コンバイン2は、既に広く知られているように、枕地の稲を手刈り作業で刈り取って枕扱ぎを行うときには、コンバイン2の走行を停止し、脱穀装置5側のみを駆動し、前記伝動経路70を利用して副選別風ファン9とフィードチエン27とを脱穀装置5と共に伝動しながら脱穀作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】内部を示す脱穀装置の左側面図
【図2】内部を示す脱穀装置の平面図
【図3】内部を示す脱穀装置の平面図
【図4】コンバインの一部の側面図
【図5】コンバインの平面図
【図6】コンバインの側面図
【図7】コンバインの一部の平面図
【図8】フィードチエンオープンの作用図
【図9】副選別風ファンの断面した平面図
【図10】分解状態を示す脱穀装置の正面図
【図11】副選別風ファンを走行フレームから取り外した側面図
【図12】副選別風ファンの内部を示す平面図
【図13】副選別風ファンを側方に取り外した分解状態を示す平面図
【図14】副選別風ファンを前方上方に取り出した分解状態の平面図
【図15】副選別風路の側面図
【図16】副選別風路の平面図
【図17】副選別風路の別実施例を示す側面図
【図18】伝動機構図
【符号の説明】
【0045】
1 刈取懸架台 2 コンバイン
3 走行フレーム 3a 前部フレーム
3b 中間後部フレーム 4 穀稈供給口
5 脱穀装置 6 空間部
7 入口漏斗 8 選別室
9 副選別風ファン 10 圧風唐箕
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの走行フレーム上に搭載した脱穀装置において、選別室に副選別風を吹き込むファンを設けた脱穀装置の副選別風ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の脱穀装置における選別装置は、主唐箕となる圧風唐箕の他に、セカンドファンと称して、選別室内に主選別風を補助するために、副選別風を吹き込む副選別風ファンを設けて選別の精度を高める構成が知られている。たとえば、圧風唐箕の上側にセカンドファンを設けて、主選別風が届かない揺動選別棚上に副選別風を吹き込む構成や、一番と二番との移送螺旋の間に装置して、主として二番物の選別効果を高めるための装置等が知られている。
【0003】
その一例として、例えば、公開実用新案公報、昭62−33243号には、添付図面の第2図、及び第3図に示されているように、主唐箕である圧風唐箕の上側で選別方向の最も上手側に副選別風ファンを装備して、主唐箕の選別風が届かない揺動選別棚上に副選別風を吹き込んで、選別室上部の選別精度を大幅に向上する技術が開示されている。
【特許文献1】実開昭62−33243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、コンバインの走行フレーム上に脱穀装置を搭載する場合、フレームの前部にある刈取懸架台の後方位置に、穀稈供給口を前側にして脱穀装置を載置すると、穀稈供給口の前側に連続して設けられている入口漏斗の下方に空間部ができる配置構成になっていた。したがって、従来のコンバインは、この空間部をエンジンから出る熱風の排風通路に利用するのが一般的であり、限られた狭いコンバインの走行フレーム上が有効に利用されていない課題があった。
【0005】
この出願に係る発明は、上記空間部を有効に活用して、コンバインの前後長を長くすることなく、副選別風ファンを装備して、主唐箕の選別風が届かない主唐箕の上方位置の揺動選別棚上に副選別風を吹き込んで選別室全体の選別精度を向上するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、前部に、上方前方側に突出させた刈取懸架台(1)を装備したコンバイン(2)の走行フレーム(3)上に、穀稈供給口(4)を前側にして脱穀装置(5)を搭載し、該脱穀装置(5)と前記刈取懸架台(1)との間に形成される空間部(6)で、前記穀稈供給口(4)の前にある入口漏斗(7)の下方位置に、前記脱穀装置(5)の選別室(8)上部に副選別風を吹き込む副選別風ファン(9)を軸装して設けたことを特徴とする脱穀装置の副選別風ファンであって、前側にある刈取懸架台(1)とその背後に搭載した脱穀装置(5)との間にできる入口漏斗(7)の下方空間部(6)を有効に活用して、コンバインの前後長さを長くすることなく副選別風ファン(9)を載置して、主唐箕から選別風が届かない部位にある揺動選別棚上に副選別風を吹き込んで選別精度を向上することができるものとなっている。
【0007】
つぎに、請求項2に記載した発明は、前記副選別風ファン(9)は、前記空間部(6)内に装置するにあたり、可及的大径に構成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の副選別風ファンであって、限られた狭いスペース内において、ファン容量を最大限に大きく構成できて、充分な副選別風を選別室上部に供給できると共に、防塵網を通してエンジンの熱風を吸引して選別室に吹き込むことができる。したがって、この発明は、濡れ扱ぎ等に適する副選別風を吹き込むことができる。
【0008】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記走行フレーム(3)は、前記副選別風ファン(3)を装備した前部フレーム(3a)を高く、前記脱穀装置(5)を搭載した中間後部フレーム(3b)を低くした段差を有する連続フレームに構成し、前記副選別風ファン(9)は、前記脱穀装置(5)の圧風唐箕(10)と前記刈取懸架台(1)との間に形成される前記空間部(6)内に装置するにあたり、可及的大径に構成したことを特徴とする請求項1、又は2記載の脱穀装置の副選別風ファンであって、走行フレーム(3)の下方には、クローラが装備されており、前部フレーム(3a)の下側には駆動スプロケットが配置されている。したがって、クローラは、前部フレーム(3a)の地上高が高いために装着や取り外し作業が比較的楽でやり易くなり、その上に泥はけのよい装置となっている。そして、脱穀装置は、地上高さの低い中間後部フレーム(3b)上に搭載したから、上部の高さ位置を保持したまま、上下方向の容積を拡大できて選別能力を大幅に向上することが可能になった。
【発明の効果】
【0009】
まず、請求項1に記載した発明は、前側にある刈取懸架台(1)とその背後に搭載した脱穀装置(5)との間であって、入口漏斗(7)の下方に形成される空間部(6)を有効に活用して、副選別風ファン(9)を設けた特徴がある。そして、この発明は、コンバインの全長を長くすることなく副選別風ファン(9)を載置して、主唐箕から選別風が届かない部位にある揺動選別棚上に副選別風を吹き込んで選別精度を向上することができる特有の効果を奏する。
【0010】
そして、請求項2に記載した発明は、請求項1の有する効果を奏するものでありながら、限られた狭いスペース内において、ファン容量を最大限に大きく構成できて、充分な副選別風を選別室上部に供給できると共に、防塵網を通してエンジンの熱風を吸引して、熱が停滞するのを防止して選別室に吹き込むことができる特徴を有する。
【0011】
そして、この発明は、エンジンからの熱風を副選別風として揺動選別棚上に吹き込むことができるから、濡れ扱ぎ等に適する選別風となり、効果的に選別精度を向上できる特徴がある。
【0012】
そして、請求項3に記載した発明は、走行フレーム(3)の下方には、クローラが装備されており、しかも、高い前部フレーム(3a)の下側には走行ミッションに軸架した駆動スプロケットが配置されているから、クローラの装着や取り外しのメンテナンス作業が楽にできる効果がある。そして、上記構成は、泥はけ(泥土が後方側に抜け易い)の良好な装置となって、湿田の走行性が大幅に向上した利点がある。
【0013】
そして、脱穀装置(5)は、地上高さの低い中間後部フレーム(3b)上に搭載したから、上部の高さ位置を保持したまま、上下方向の容積を拡大(脱穀装置を高くしないで下側に延長、拡大した)して選別能力を向上した特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、この発明に係る実施例の主要部は、上方前方側に斜めに突出させた刈取懸架台1を前端部に設けた走行フレーム3上に、穀稈供給口4を前側にして脱穀装置5を搭載し、該脱穀装置5の穀稈供給口4に連続する入口漏斗7の下方で、前記刈取懸架台1と脱穀装置5との間に形成される空間部6に、副選別風ファン9を装備し、該ファン9の風を、前記脱穀装置5の選別室8上部で、主唐箕(圧風唐箕10)の選別風が届かない揺動選別棚11側に吹き込む構成としている。
【0015】
このように、実施例は、限られた狭い走行フレーム3上を有効に利用して、コンバイン2の全長を長くしないで副選別風ファン9を装置した点に特徴があり、更に、圧風唐箕10から送られる選別風が届かない死角部分に副選別風を吹き込んで選別精度を向上する特徴もある。
【0016】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
コンバイン2の走行フレーム3は、図1に示すように、副選別風ファン9を装備した前部フレーム3aを高く形成し、脱穀装置5を搭載した中間後部フレーム3bを低くして段差をつけ、連続したフレームに構成している。そして、刈取懸架台1は、図面に示すように、走行フレーム3の前部フレーム3aの前端部に、上方前方側に向けて斜めに突出させて設け、刈取フレーム12の後部上端を上下回動自由に枢着して支持した構成としている。
【0017】
そして、上記刈取フレーム12は、図5、及び図6に示すコンバイン2の全体図から解るように、前部に分草杆13、穀稈引起し装置14を設け、更に、刈取装置15を下側に装備し、刈取穀稈を脱穀装置5まで搬送する上下の穀稈搬送装置16を設けて刈取前処理装置を構成している。
【0018】
つぎに、脱穀装置5は、図1に示すように、前記走行フレーム3の段差をつけて低くした中間後部フレーム3b上に、穀稈供給口4を前側にして搭載しているが、実施例の場合、脱穀装置5の下部底面が、前側の刈取懸架台1の下端より低い位置まで下げて搭載している。そして、脱穀装置5は、穀稈供給口4の前側に連続して設けた入口漏斗7を刈取懸架台1側に延長し、前記刈取フレーム12側の穀稈搬送装置16の終端部から搬送穀稈を受け継ぐように臨ませて設けている。
【0019】
そして、該入口漏斗7の下方には、前記刈取懸架台1と脱穀装置5との間に必然的に空間部6が形成されることになる。この場合、空間部6は、前側の刈取懸架第1と、後側の脱穀装置5の圧風唐箕10と、上側の上記入口漏斗7との三つの部材に囲まれた状態に形成され、その部位に、副選別風ファン9を位置させて走行フレーム3上に装置して構成している。そして、副選別風ファン9は、図1、乃至図3に示すように、横断流ファンを使用して下側に張設している防塵網17の部分を吸気口として外気を吸引するが、エンジン18と同位相(前後方向の位置を略同位置に装置した意味)に配置し、脱穀装置5の選別室8上部に揺動自由に支架している揺動選別棚11側に副選別風を吹き込むように軸装して構成している。そして、この場合、副選別風ファン9は、図3、及び図7に示すように、後述するケーシング35の右側板35bを選別室8の右側板8bより左側にオフセットして設け、エンジンプーリ18aや、後述する関連の伝動装置(ファン入力プーリー67等)を設けるスペースを確保した構成としている。
【0020】
そして、副選別風ファン9は、前記空間部6内に装置するにあたり、周囲から制限された狭いスペースの中において、できる限り容量を大きくして多量の副選別風を起風できるように横幅と直径とを可能な限り大きく構成している。
【0021】
このように、副選別風ファン9は、横断流ファンの特性を利用して選別風を幅方向にむらなく起風し、全幅で均等に起風した風を揺動選別棚11側に副選別風として吹き込むことにより、選別むらの発生がほとんどなく、しかも、隣接するエンジン18の排気(熱気)を防塵網17の全面から吸引して選別室8側に吹込み濡れ扱ぎ等に対応できる特徴がある。
【0022】
つぎに、脱穀装置5は、図1、乃至図4に示すように、扱胴19を軸架した扱室20を上側に配置し、その下方に選別室8を設けて構成している。そして、二番処理室21と排塵処理室22は、前記扱室20の背後に配置して設け、選別室8から還元されてきた二番物を二番処理胴21aで処理し、前記扱室20から受け継いだ排塵物を排塵処理胴22aで処理する構成としている。そして、選別室8は、上側に前記揺動選別棚11が揺動自由に設けられ、その下方に、選別方向上手側から前記圧風唐箕10、一番移送螺旋23、二番移送螺旋24の順に軸架して構成している。そして、圧風唐箕10は、既に説明した副選別風ファン9に対する主唐箕であって、従来公知の脱穀装置と同様に、選別室8に選別風を送り込む構成としている。なお、26は排塵ファンを示している。
【0023】
つぎに、フィードチエン27は、図面に示すように、上記扱室20の外側に扱口に沿わせて設けられているが、図2、乃至図4に示すように、前記刈取懸架台1の外側に固定した支持金具28に斜めに支持した回動支点ピン29に回動金具30を介して回動支持枠31を回動自由に連結し、この回動支持枠31に連結固定したチエンレール32に設けて脱穀穀稈を挟持して搬送する構成としている。そして、フードチエン27は、図8の作用図で解るように、回動支点ピン29を支点にして回動金具30、回動支持枠31、チエンレール32と一体の状態で脱穀装置5から離れて外側へオープン回動ができる構成となっている。
【0024】
このように、フィードチエン27は、脱穀装置5から外側に遠く離れた位置にオープン回動すると、脱穀装置5の各部(フィードチエン27側)のメンテナンスは勿論のこと、副選別風ファン9の着脱(具体構成は後述する)、メンテナンスが楽にできるものとなっている。この場合、オープン機構(支持金具28、回動支点ピン29、回動金具30)は、刈取懸架台1とフィードチエン27との間に設けているから、副変速風ファン9の伝動装置の妨げにはならないと同時に、回動支点ピン29を斜めに設けて、これを軸芯に回動するから穀稈搬送装置16を避けて衝突しない経路で回動できる構成にしている。
【0025】
つぎに、副選別風ファン9は、図9に示すように、ケーシング35の内部に軸受け支持して収納しており、ケーシング35と一体に空間部6に着脱可能に構成している。そして、ケーシング35は、図9に示す実施例の場合、連結部材42によって連結した左右両側板35a、35bと、ケーシング胴35cとで構成している。そして、上記ケーシング胴35cは、副選別風路60の構成に関して後述するが、図15、及び図17に示すように、円弧形状にして上側に配置し、下方の吸気側(防塵網17に対応する部位)と吹出し側(副選別風路60については後述する)とを開口して構成している。
【0026】
そして、中空軸38は、図10、及び図12に示すように、支持メタル36により脱穀装置5の前板45に軸受け支持した入力軸37に対して、カップリング式にして挿脱自由に形成し、軸端から挿し込んで駆動できる構成にして、ファン9を取り付け支持している。
【0027】
そして、実施例の場合、ケーシング35は、図9、乃至図11に示すように、左側板35aの外側に伝動ケース39を設け、その外側にフレーム側板40を設け、更に、その外側にフィードチエンギヤケース41を設け、これらを一体の構成として、一体の状態で着脱自由に構成している。そして、伝動ケース39は、図12に示すように、副選別風ファン9の横幅を可及的に広くするために、ケーシング左側板35aとフレーム側板40(平面視で選別室8の左側板8aと幅方向に同一位置)との間に納めたコンパクト構成をとっている。
【0028】
そして、ケーシング35は、図9、及び図10に示すように、ケーシング胴35cと共に左右の両側板35a,35bを接続する上下連結部材42に数個のローラ43を軸架して設け、このローラ43を選別室8の前板45に設けたスライドレール46上を転動させてスライド可能に構成している。そして、スライドレール46は、図10に示すように、下側のレールを上側より左側方(フィードチエン27側)に長く形成して、着脱作業時にケーシング35の端部を引っ掛けて着脱作業を楽にする工夫を施している。
【0029】
そして、ロック機構は、図11、及び図12に示すように、刈取懸架台1側に係合ピン47を設け、脱穀装置5の前板45側にロックプレート48を設け、対応するケーシング35の左側板35a側に係合孔49を設け、外側のフレーム側板40にロックハンドル装置50を設けてケーシング35を収納した後、係合とロックにより保持する構成としている。実施例の場合、ロックハンドル装置50は、図面のように、前記ロックプレート48に押し当てたとき、ロックプレート48の奥側(裏側)に挿入される部位にロック具があり、図11の上向き(実線位置)でロック解除、横向き(仮想線位置)でロック状態に切替操作を可能に構成している。このように、ロックハンドル装置50は、脱穀装置5に固定されているロックプレート48に対して、着脱作業時にロック状態とロック解除の状態に切換できる構成としている。
【0030】
そして、フレーム側板40は、図9、及び図11に示すように、選別室8の揺動選別棚11の摺動ベアリング51を案内するベヤリングガイド52を取り付けて構成している。このように、選別室8は、上記フレーム側板40に対応させて塞がれる部位には、脱穀装置5の選別室8の側板8aを部分的に切欠いで作業者が手を挿入できる程度の空洞54を形成し、内部の清掃やメンテナンスができる構成にしている。
【0031】
したがって、上記空洞54は、副選別風ファン9をケーシング35ごと取り外すと、フレーム側板40が開放されるから、手を差し込んで、風路(後述する副選別風路60)の残米の清掃や揺動選別棚11前部の清掃等が比較的簡単にできる特徴がある。
【0032】
このように、副選別風ファン9は、図13に示すように、フィードチエン27を外側にオープン回動させた後、ケーシング35を副選別風ファン9とともに外側へ外すと、何もない元の空間部6になるから、走行フレーム3の前部フレーム3aの左側から右側に位置するエンジン18のメンテナンスを行うことも可能になる特徴がある。
【0033】
そして、ケーシング35は、上記実施例の如く、着脱方向を走行フレーム3の左側方向にのみ拘ることはなく、図14に示すように、走行フレーム3の前方で上方に取出す着脱構成にすることも可能である。この場合、ケーシング35は、まず、先に、穀稈搬送装置16を取外して、刈取懸架台1と入口漏斗7との間に取り出し通路を作った後、前方、上方に取り出すことが考えられる。
【0034】
つぎに、副選別風ファン9から選別室8の上部に副選別風を吹き込む副選別風路60について、図15、乃至図17に基づいて説明する。
まず、副選別風路60は、図16に平面視で示すように、副選別風ファン9の全横幅に渡って設けられるが、図15で解るように、前記ケーシング35の上端部分(ケーシング胴35cの端縁)を選別室8の前板45にまで延長し、上下幅Hを隔てた下側には風ガイド板61をファン9側に設けて風路60の入口を構成している。そして、上記風ガイド板61は、ケーシング35の左右両側板35a,35bに左右両端部が取り付けられ、副選別風ファン9と一体のまま着脱できる構成にしている。
【0035】
一方、選別室8側の風路構成は、図15に示すように、上記風路60の入口に対応する部位に上側風ガイド板62と下側風ガイド板63とを、hの間隔にして選別室8の前板45に端縁部を合わせて一体に設け、上記ケーシング胴35cの端縁と下側の風ガイド板61の端縁とにそれぞれ突き合わせて連通状態になる構成としている。
【0036】
このように、副選別風路60は、図15、及び図16に示すように、副選別風ファン9側のケーシング胴35cの先端縁、及び下側の風ガイド板61と、他方の選別室8側に設けた上下の風ガイド板62,63とは、横幅、上下間隔(H、h)、及び角度(絞り角)とを略同一に形成して、連通状態に接合したときぴったり合致して段差がなく、副選別風がなんらの抵抗もなくスムースに選別室8側に吹き込まれることができる構成としている。
【0037】
つぎに、図17に示す別実施例の副選別風路60は、図面から解るように、副選別風ファン9のケーシング胴35cと下側のファン9側の風ガイド板61とを脱穀装置5の選別室8内まで挿入するように長く延長した構成としている。この実施例は、既に説明した選別室8の空洞54内に、ファン9側に設けた副選別風路60が挿入された状態になる構成である。
【0038】
このように構成すると、副選別風路60は、これを構成する全ての風ガイド板が副選別風ファン9のケーシング35と一体になるから、構成が簡潔になって、一体に着脱するから、清掃やメンテナンスが楽になり、一方、選別室8側でも、副選別風ファン9を取り外すと、風ガイド板が残らないから邪魔物が少なくなって清掃が楽になる優れた効果がある。
【0039】
なお、本明細書中に記載した「左・右」の表現は、全てコンバイン2の前進方向に向かって見た状態を基準として説明した。
つぎに、実施例に係るコンバイン2の伝動機構を、図18に基づいて説明する。
【0040】
まず、エンジン18は、回転動力を脱穀装置5と走行系の静油圧式無段変速装置65とに分岐して両側に伝動する構成としている。そして、副選別風ファン9は、上記静油圧式無段変速装置65から走行ミッション装置66を経由してファン入力プーリ67に入力される伝動経路に構成している。そして、上記ファン入力プーリ67は、既に説明した入力軸37に軸着して設け、軸側にワンウエイクラッチ68を装備し、逆回転(例えば、走行ミッション装置66から後進回転動力が伝動されたとき)の伝動が不能となる構成としている。
【0041】
そして、フィードチエン27は、図面に示すように、副選別風ファン9を経由して、既に説明している伝動ケース39からフードチエンギヤケース41を経由して、走行速度にシンクロされた回転動力が伝動される構成としている。
【0042】
そして、副選別風ファン9は、図18に示すように、脱穀装置5の圧風唐箕10側から入力される伝動経路70を構成している。この伝動経路70は、走行ミッション装置66側を停止した状態で脱穀装置5のみを駆動しながら脱穀作業を行なうときに使用する伝動装置である。
【0043】
実施例の場合、脱穀装置5のクラッチ機構は、脱穀装置5のみを伝動する位置と、刈取装置15側と同時に伝動する位置に切換操作を可能に構成されている。
したがって、コンバイン2は、既に広く知られているように、枕地の稲を手刈り作業で刈り取って枕扱ぎを行うときには、コンバイン2の走行を停止し、脱穀装置5側のみを駆動し、前記伝動経路70を利用して副選別風ファン9とフィードチエン27とを脱穀装置5と共に伝動しながら脱穀作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】内部を示す脱穀装置の左側面図
【図2】内部を示す脱穀装置の平面図
【図3】内部を示す脱穀装置の平面図
【図4】コンバインの一部の側面図
【図5】コンバインの平面図
【図6】コンバインの側面図
【図7】コンバインの一部の平面図
【図8】フィードチエンオープンの作用図
【図9】副選別風ファンの断面した平面図
【図10】分解状態を示す脱穀装置の正面図
【図11】副選別風ファンを走行フレームから取り外した側面図
【図12】副選別風ファンの内部を示す平面図
【図13】副選別風ファンを側方に取り外した分解状態を示す平面図
【図14】副選別風ファンを前方上方に取り出した分解状態の平面図
【図15】副選別風路の側面図
【図16】副選別風路の平面図
【図17】副選別風路の別実施例を示す側面図
【図18】伝動機構図
【符号の説明】
【0045】
1 刈取懸架台 2 コンバイン
3 走行フレーム 3a 前部フレーム
3b 中間後部フレーム 4 穀稈供給口
5 脱穀装置 6 空間部
7 入口漏斗 8 選別室
9 副選別風ファン 10 圧風唐箕
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部に、上方前方側に突出させた刈取懸架台(1)を装備したコンバイン(2)の走行フレーム(3)上に、穀稈供給口(4)を前側にして脱穀装置(5)を搭載し、該脱穀装置(5)と前記刈取懸架台(1)との間に形成される空間部(6)で、前記穀稈供給口(4)の前にある入口漏斗(7)の下方位置に、前記脱穀装置(5)の選別室(8)上部に副選別風を吹き込む副選別風ファン(9)を軸装して設けたことを特徴とする脱穀装置の副選別風ファン。
【請求項2】
前記副選別風ファン(9)は、前記空間部(6)内に装置するにあたり、可及的大径に構成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の副選別風ファン。
【請求項3】
前記走行フレーム(3)は、前記副選別風ファン(9)を装備した前部フレーム(3a)を高く、前記脱穀装置(5)を搭載した中間後部フレーム(3b)を低くした段差を有する連続フレームに構成し、前記副選別風ファン(3)は、前記脱穀装置(5)の圧風唐箕(10)と前記刈取懸架台(1)との間に形成される前記空間部(6)内に装置するにあたり、可及的大径に構成したことを特徴とする請求項1、又は2記載の脱穀装置の副選別風ファン。
【請求項1】
前部に、上方前方側に突出させた刈取懸架台(1)を装備したコンバイン(2)の走行フレーム(3)上に、穀稈供給口(4)を前側にして脱穀装置(5)を搭載し、該脱穀装置(5)と前記刈取懸架台(1)との間に形成される空間部(6)で、前記穀稈供給口(4)の前にある入口漏斗(7)の下方位置に、前記脱穀装置(5)の選別室(8)上部に副選別風を吹き込む副選別風ファン(9)を軸装して設けたことを特徴とする脱穀装置の副選別風ファン。
【請求項2】
前記副選別風ファン(9)は、前記空間部(6)内に装置するにあたり、可及的大径に構成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の副選別風ファン。
【請求項3】
前記走行フレーム(3)は、前記副選別風ファン(9)を装備した前部フレーム(3a)を高く、前記脱穀装置(5)を搭載した中間後部フレーム(3b)を低くした段差を有する連続フレームに構成し、前記副選別風ファン(3)は、前記脱穀装置(5)の圧風唐箕(10)と前記刈取懸架台(1)との間に形成される前記空間部(6)内に装置するにあたり、可及的大径に構成したことを特徴とする請求項1、又は2記載の脱穀装置の副選別風ファン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−204138(P2006−204138A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18511(P2005−18511)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]