説明

脱穀装置の選別構造

【課題】チャフシーブによる篩い選別の前段階において処理物からより多くの稈屑などを除去できるようにして、単粒化穀粒の回収精度が低下する不都合の発生を防止する。
【解決手段】選別揺動することにより脱穀処理後の処理物を篩い選別する揺動選別機構29に、粗選別用のグレンパン61とチャフシーブ63とを、チャフシーブ63がグレンパン61よりも選別処理方向下手側の下方に位置するように配備し、グレンパン61とチャフシーブ63との間に、粗選別用の補助グレンパン62を、グレンパン61に対して選別処理方向下手側の下方に位置し、かつ、チャフシーブ63に対して選別処理方向上手側の直前に位置するように配備し、揺動選別機構29に対して選別処理方向上手側の下方に配備した唐箕30からの選別風を、グレンパン61と補助グレンパン62との間及び補助グレンパン62とチャフシーブ63との間に供給する風路Raを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀処理後の処理物を篩い選別する揺動選別機構に、粗選別用のグレンパンとチャフシーブとを、前記チャフシーブが前記グレンパンよりも選別処理方向下手側の下方に位置するように配備し、前記揺動選別機構に対して選別処理方向上手側の下方に配備した唐箕からの選別風を前記グレンパンと前記チャフシーブとの間に供給する風路を備えた脱穀装置の選別構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような脱穀装置の選別構造では、粗選別用のグレンパンにより、比重の大きい単粒化穀粒などが下層に位置し、比重の小さい稈屑などが上層に位置するように層分けした処理物を、グレンパンからチャフシーブに流下供給し、かつ、揺動選別機構に対する選別処理方向上手側の下方の位置に配備した唐箕からの選別風の一部をグレンパンとチャフシーブとの間に供給して、前述した層分け状態でグレンパンからチャフシーブに流下する処理物に唐箕からの選別風が適切に作用するように構成することで、唐箕からの選別風の一部を利用する構成でありながら、グレンパンからチャフシーブに流下する処理物に含まれる比重の小さい稈屑などを効率良く選別処理方向下手側に風力搬送できるようにして、処理物から稈屑などを精度良く取り除くようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−167686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では収穫作業の高速化によって処理量が増大する傾向にあり、そのため、例えば長粒米などのように単粒化し易い作物を収穫する場合には、粗選別用のグレンパンが位置する選別処理方向上手側の領域に、単粒化穀粒と枝梗などの稈屑とを多く含んだ大量の処理物が供給されるようになる。これに対し、前述した脱穀装置の選別構造では、チャフシーブで処理物を篩い選別する前に処理物から稈屑などを取り除くための前処理としては、グレンパンからチャフシーブに流下する処理物に唐箕からの選別風の一部を作用させるだけであることから、単粒化し易い作物を収穫する場合には、チャフシーブによる篩い選別の前段階において処理物から稈屑などを十分に取り除いておくことが難しくなる。その結果、チャフシーブによる篩い選別の際に単粒化穀粒とともに多くの稈屑などがチャフシーブを流下する確率が高くなり、単粒化穀粒の回収精度が低下する不都合を招く虞が高くなっていた。
【0005】
本発明の目的は、チャフシーブによる篩い選別の前段階において処理物からより多くの稈屑などを除去できるようにして、単粒化穀粒の回収精度が低下する不都合の発生を防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段では、選別揺動することにより脱穀処理後の処理物を篩い選別する揺動選別機構に、粗選別用のグレンパンとチャフシーブとを、前記チャフシーブが前記グレンパンよりも選別処理方向下手側の下方に位置するように配備し、前記揺動選別機構に対して選別処理方向上手側の下方に配備した唐箕からの選別風を前記グレンパンと前記チャフシーブとの間に供給する風路を備えた脱穀装置の選別構造において、
前記グレンパンと前記チャフシーブとの間に、粗選別用の補助グレンパンを、前記グレンパンに対して選別処理方向下手側の下方に位置し、かつ、前記チャフシーブに対して選別処理方向上手側の直前に位置するように配備して、前記処理物を前記グレンパンから前記補助グレンパンを経由して前記チャフシーブに受け渡すように構成し、
前記風路を、前記唐箕からの選別風を前記グレンパンと前記補助グレンパンとの間及び前記補助グレンパンと前記チャフシーブとの間に供給するように形成してある。
【0007】
この課題解決手段によると、揺動選別機構の選別揺動に伴って、脱穀処理後の処理物を、グレンパンが、比重の大きい単粒化穀粒などが下層に位置し、比重の小さい稈屑などが上層に位置するように比重差選別しながら選別処理方向下手側に移送する。そして、このように層分けした状態の処理物を補助グレンパンに流下供給する。このとき、グレンパンから流下する処理物には、グレンパンと補助グレンパンとの間に供給した唐箕からの選別風が作用する。これにより、グレンパンから流下する処理物の上層側に多く含まれている比重の小さい稈屑などを効率良く選別処理方向下手側に風力搬送することができ、補助グレンパンに流下する処理物から多くの稈屑などを効率良く取り除くことができる。
【0008】
次に、揺動選別機構の選別揺動に伴って、多くの稈屑などが取り除かれた後のグレンパンからの処理物を、補助グレンパンが、比重の大きい単粒化穀粒などが下層に位置し、比重の小さい稈屑などが上層に位置するように比重差選別しながら選別処理方向下手側に移送する。そして、このように層分けした状態の処理物をチャフシーブに移送供給する。このとき、チャフシーブに移送供給する処理物には、補助グレンパンとチャフシーブとの間に供給した唐箕からの選別風が作用する。これにより、チャフシーブに移送供給する処理物の上層側に多く含まれている比重の小さい稈屑などを効率良く選別処理方向下手側に風力搬送することができ、チャフシーブに移送供給する処理物から多くの稈屑などを効率良く取り除くことができる。
【0009】
つまり、チャフシーブによる篩い選別の前に、比重の小さい稈屑などを上層に位置させた状態の処理物に選別風を作用させて稈屑などを効率良く除去する前処理を2段階で行うことから、単粒化し易い作物を収穫する場合であっても、チャフシーブによる篩い選別の前段階において処理物から稈屑などを十分に取り除いておくことができる。
【0010】
その結果、単粒化し易い作物を収穫することなどに起因して粗選別用のグレンパンに供給される処理物量が増大する場合であっても、チャフシーブによる篩い選別の際に単粒化穀粒とともに多くの稈屑などがチャフシーブを流下する確率を低くすることができ、単粒化穀粒の回収精度が低下する不都合の発生を防止することができる。
【0011】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記補助グレンパンの高さ位置を、前記補助グレンパンの選別作用面が前記チャフシーブの選別作用面よりも低くなるように設定してある。
【0012】
この課題解決手段によると、グレンパンから補助グレンパンに処理物を供給する際の落差を、グレンパンからチャフシーブに供給する場合に比較して大きくすることができ、グレンパンから流下する処理物に唐箕からの選別風をより長く作用させることができる。
【0013】
これにより、グレンパンから流下する処理物の上層側に多く含まれている比重の小さい稈屑などをより効率良く選別処理方向下手側に風力搬送することができ、補助グレンパンに流下する処理物からより多くの稈屑などを効率良く取り除くことができる。
【0014】
その結果、単粒化し易い作物を収穫する場合などにおいて単粒化穀粒の回収精度が低下する不都合の発生をより確実に防止することができる。
【0015】
本発明の第3の課題解決手段では、上記第1又は2の課題解決手段において、
前記補助グレンパンの選別処理方向上手側の端部に、前記グレンパンに向けて起立する縦壁部を形成してある。
【0016】
この課題解決手段によると、縦壁部によりグレンパンと補助グレンパンとの上下間隔を小さくすることができ、グレンパンと補助グレンパンとの間に供給する選別風の流速を高めることができる。
【0017】
これにより、グレンパンから流下する処理物量の多い場合であっても、グレンパンと補助グレンパンとの間に供給する選別風を処理物に好適に作用させることができ、補助グレンパンに流下する処理物から多くの稈屑などをより効率良くより確実に取り除くことができる。
【0018】
その結果、単粒化し易い作物を収穫する場合などにおいて単粒化穀粒の回収精度が低下する不都合の発生をより確実に防止することができる。
【0019】
本発明の第4の課題解決手段では、上記第1〜3の課題解決手段のいずれか一つにおいて、
前記チャフシーブを、上端部に備えた支軸を支点して上下揺動する複数のチャフリップ板を選別処理方向に一定間隔をあけて一体揺動可能に整列配備した開度調節式に構成し、
前記チャフシーブの選別処理方向下手側にストローラックを前記処理物の受け渡しが可能となるように近接配備し、前記ストローラックから選別処理方向最下手側に位置するチャフリップ板の支軸に向けて、前記チャフシーブと前記ストローラックとの隙間を塞ぐように板状部材を延設してある。
【0020】
この課題解決手段によると、チャフシーブの開度を最小にした状態と最大にした状態とにかかわらず、選別処理方向最下手側のチャフリップ板とストローラックとの間に形成された隙間を良好に塞ぐことができる。
【0021】
その結果、選別処理方向最下手側のチャフリップ板とストローラックとの隙間から稈屑などが流下することに起因した穀粒回収精度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】全稈投入型コンバインの全体左側面図である。
【図2】全稈投入型コンバインの全体平面図である。
【図3】脱穀装置の縦断左側面図である。
【図4】選別部及び回収部の選別処理方向上手側の縦断左側面図である。
【図5】選別部及び回収部の選別処理方向下手側の縦断左側面図である。
【図6】揺動選別機構における要部の一部縦断左側面図である。
【図7】チャフシーブの開度調節構造を示す要部の縦断正面図である。
【図8】チャフシーブとストローラックとの間の構成を示す要部の縦断左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る脱穀装置の選別構造を、コンバインの一例である全稈投入型のコンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1及び図2に示すように、全稈投入型のコンバインは、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して車体フレーム1を構成し、車体フレーム1における前部の右側領域に搭乗運転部2を形成してある。車体フレーム1の下部には左右一対のクローラ式走行装置3を装備してある。車体フレーム1における左側の前端部には、作業走行時に車体の前方に位置する水稲や麦あるいは菜種などの作物の穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送部4を、左右向きの第1軸心P1を支点にした昇降揺動が可能となるように連結してある。車体フレーム1の左半部には、刈取搬送部4が搬送する刈り取り後の穀稈(以下、刈取穀稈と称する)を受け入れて脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置5を搭載してある。車体フレーム1の右後部には、揚送スクリュー6により脱穀装置5から搬出した単粒化穀粒を貯留して籾袋への詰め込みを可能にする袋詰装置7を搭載してある。
【0025】
搭乗運転部2は、その前端部位に立設したフロントパネル8に操縦レバー9などを備えている。搭乗運転部2の左端部位に立設したサイドパネル10に主変速レバー11や副変速レバー12などを備えている。搭乗運転部2の後側部位に運転座席13を配備してある。操縦レバー9は、左右方向への揺動操作により車体操向用の操作具として機能し、前後方向への揺動操作により刈取搬送部昇降用の操作具として機能する。
【0026】
左右のクローラ式走行装置3は、操縦レバー9の左右方向への揺動操作に基づいて、それらが等速作動する直進状態と差動する旋回状態とに切り換わるように構成してある。
【0027】
刈取搬送部4は、車体の走行に伴って、その前部の左右両端に配備したデバイダ14によって未刈り穀稈を収穫対象の穀稈と収穫対象外の穀稈とに梳き分ける。又、刈取搬送部4の前部上方に配備した回転リール15によって収穫対象穀稈の穂先側を後方に向けて掻き込み、刈取搬送部4の底部に装備したバリカン型の切断装置16によって収穫対象穀稈の株元側を切断して、収穫対象の穀稈を刈り取る。そして、切断機構16の後方に配備したオーガ17によって刈取穀稈を左右方向の所定箇所に寄せ集めて後方に送り出し、その所定箇所から脱穀装置5にわたるように架設した掻き上げ搬送式のフィーダ18によって刈取穀稈を脱穀装置5に供給する。
【0028】
刈取搬送部4の昇降揺動は、車体フレーム1とフィーダ18とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ19の伸縮作動で行う。昇降シリンダ19は、操縦レバー9の前後方向への揺動操作に基づいて伸縮作動するように構成してある。つまり、操縦レバー9を前後方向に揺動操作して昇降シリンダ19を伸縮作動させることにより、未刈り穀稈に対する切断機構16の高さ位置を変更する刈り高さ調節などを行うことができる。
【0029】
図1〜3に示すように、脱穀装置5には、フィーダ18が供給する刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀部5A、脱穀処理で得た選別対象の処理物に選別処理を施す選別部5B、及び、選別処理で得た回収対象の処理物を回収する回収部5Cを備えてある。この脱穀装置5においては、脱穀部5Aの脱穀処理方向及び選別部5Bの選別処理方向が車体の前後方向と一致し、脱穀処理方向の上手側及び選別処理方向の上手側が車体の前側に位置するように設定してある。
【0030】
脱穀部5Aは、脱穀装置5の上部に形成した扱室20にバータイプの扱胴21を前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転するように配備して構成してある。扱室20の前下部には、フィーダ18が掻き上げ搬送した刈取穀稈の扱室20への供給を可能にする供給口22を形成してある。扱室20の後下部には、脱穀処理後の刈取穀稈(以下、脱粒穀稈と称する)の扱室20からの排出を可能にする排稈口23を形成してある。扱室20は、扱胴21を支持する前支持板24と後支持板25、扱胴21の上部を上方から覆う上部カバー26、及び、扱胴21を下方から覆う前後方向視U字状の受網27などによって区画形成してある。
【0031】
選別部5Bは、後端部に備えた偏心カム式の駆動機構28が作動することで前後方向に選別揺動する揺動選別機構29を受網27の下方に配備してある。又、左右向きの第3軸心P3を支点にして左側面視左回りに回転することで選別風を発生させる主唐箕30を揺動選別機構29の前下方に配備してある。左右向きの第4軸心P4を支点にして左側面視左回りに回転することで選別風を発生させる副唐箕31を揺動選別機構29の前後中間部の下方に配備してある。揺動選別機構29は、選別揺動しながら受網27から漏下した処理物などを受け止めることで、受け止めた処理物を選別対象の処理物として選別処理方向下手側に移送しながら篩い選別する。主唐箕30は、その回転で発生させた選別風を受網27から漏下した処理物や揺動選別機構29による選別処理中の処理物に選別処理方向上手側から供給することで、それらの処理物を選別対象の処理物として風力選別する。副唐箕31は、その回転で発生させた選別風を揺動選別機構29の後部から流下する処理物に選別処理方向上手側から供給することで、それらの処理物を選別対象の処理物として風力選別する。
【0032】
回収部5Cは、揺動選別機構29の選別処理方向上手側の下方に1番回収部32を形成してある。又、揺動選別機構29の選別処理方向下手側の下方に2番回収部33を形成してある。1番回収部32は、側面視底窄まり形状に形成してあり、揺動選別機構29の選別処理方向上手側から流下した単粒化穀粒を1番物として底部に流下案内する。1番回収部32の底部には、1番物搬出用の1番スクリュー34を左右向きに配備してある。1番スクリュー34は、1番回収部32の底部に流下した1番物を、1番スクリュー34の右端部に連通接続した揚送スクリュー6に搬送する。2番回収部33は、側面視底窄まり形状に形成してあり、揺動選別機構29の選別処理方向下手側から流下した枝梗付き穀粒などを2番物として底部に流下案内する。2番回収部33の底部には、2番物搬出用の2番スクリュー35を左右向きに配備してある。2番スクリュー35は、2番回収部33の底部に流下した2番物を、2番スクリュー35の右端部に連通接続した2番還元機構36に搬送する。
【0033】
2番還元機構36は、2番スクリュー35が搬送した2番物に再び脱穀処理を施す再処理部(図示せず)を備え、この再処理部による脱穀処理後の2番物を揚送して揺動選別機構29に還元する。
【0034】
図3に示すように、扱胴21は、その中心軸37に掻込部38と扱き処理部39とを中心軸37の軸心である第2軸心P2を中心にして一体回転するように備えて構成してある。中心軸37は、前支持板24と後支持板25とにわたって第2軸心P2を中心にして回転するように架設してある。
【0035】
掻込部38は、円錐台状に形成した胴部分40を備えており、この胴部分40の外周面に2枚の螺旋歯41を溶接してある。これにより、掻込部38は、前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転することにより、フィーダ18が搬送した刈取穀稈の全体を、2枚の螺旋歯41により供給口22から扱室20の内部に掻き入れて扱き処理部39と受網27との間の扱き処理空間S1に供給するように構成してある。胴部分40における短径側の端部には、円盤状の前壁部材42を中心が一致するように溶接してある。
【0036】
扱き処理部39は、円盤状に形成した第1中壁部材43と第2中壁部材44と後壁部材45とを備えている。これらの壁部材43〜45は、第2軸心P2を中心にして前後方向に設定間隔をあけて並べた状態で中心軸37に溶接してある。これらの壁部材43〜45の外周部には、複数(例えば6本)の扱歯支持部材46を、中心軸37に沿う前後向きの姿勢で、かつ、中心軸37からの距離が等距離になる状態で、扱胴21の周方向に一定間隔をあけて並ぶように連結してある。各扱歯支持部材46には、複数の扱歯47を、扱歯支持部材46から扱胴21の外方に向けて突出する姿勢で、前後方向に設定間隔をあけて並ぶように配備してある。扱歯支持部材46には、丸棒鋼材、角棒鋼材、角パイプ鋼材、アングル材、又はチャンネル材などの棒状部材を採用することができる。各扱歯47には、丸棒鋼材、角棒鋼材、丸パイプ材、又は角パイプ材などの棒状部材を採用することができる。
【0037】
つまり、扱き処理部39は、受網27との間の扱き処理空間S1に連通する内部空間S2を備えた籠状で、かつ、外方に向けて突出する複数の扱歯47を扱き処理部39の周方向と前後方向とに設定間隔をあけて整列した状態で装備するように構成してある。
【0038】
これにより、扱き処理部39は、前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転することにより、受網27との間の扱き処理空間S1に位置する刈取穀稈に扱歯支持部材46及び扱歯47の打撃や扱歯47の梳き込みなどによる脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物の内部空間S2への入り込みを許容し、扱き処理空間S1の処理物と内部空間S2の処理物とを攪拌しながら、これらの処理物に扱歯支持部材46及び扱歯47の打撃や扱歯47の梳き込みなどによる脱穀処理を施すようになる。
【0039】
そして、内部空間S2を備えることにより、大量の刈取穀稈を扱室20に供給した場合であっても、その内部空間S2を脱穀処理用の処理空間に使用できることから、処理空間での処理物の滞留や処理空間の飽和を回避することができる。これにより、処理物の滞留や処理空間の飽和に起因して十分な脱穀処理が行われないまま処理物が受網27から漏下する、あるいは、脱穀処理に要する負荷が増大して扱胴21に対する伝動系が損傷する、などの不都合の発生を未然に回避することができる。
【0040】
又、複数の扱歯47だけでなく複数の扱歯支持部材46までもが、扱室内の処理物に作用する扱き処理部材として機能することから、脱穀性能や脱穀効率の向上を図ることができる。
【0041】
第1中壁部材43は、扱き処理部39の前端に位置するように中心軸37に溶接してあり、第1中壁部材43の外周部に、各扱歯支持部材46の一端部とともに掻込部38の後端をボルト連結してある。第2中壁部材44は、扱き処理部39の前後中間部に位置するように中心軸37に溶接してあり、第2中壁部材44の外周部に各扱歯支持部材46の前後中間部をボルト連結してある。後壁部材45は、扱き処理部39の後端に位置するように中心軸37に溶接してあり、第2中壁部材44の外周部に各扱歯支持部材46の他端部をボルト連結してある。
【0042】
各扱歯支持部材46は、その前後方向を扱胴21の前後方向と一致させた通常姿勢と、その前後方向を扱胴21の前後方向と逆にした反転姿勢とに向き変更可能に構成してある。そして、隣り合う扱歯支持部材46の前後向きが逆になるように、第1及び第2中壁部材42,43並びに後壁部材45にボルト連結してある。
【0043】
各扱歯47は、隣り合う扱歯支持部材46の前後向きを逆にした場合に、隣り合う扱歯支持部材46の扱歯47と前後方向に半ピッチ分だけ位置ずれした状態で位置するように配置設定してある。
【0044】
扱室20の前下部には、供給口22に供給された刈取穀稈を受け止めて、掻込部38による刈取穀稈の扱き処理空間S1への掻き入れ供給を補助する補助板48を配備してある。
【0045】
受網27は、格子状に形成したコンケーブ受網であり、扱胴21との間の扱き処理空間S1に供給された刈取穀稈を受け止めて扱胴21の回転による脱穀処理を補助し、この脱穀処理で得た単粒化穀粒や枝梗付き穀粒、あるいは、脱穀処理で発生した稈屑などを下方の揺動選別機構29に向けて漏下させる一方で、脱粒穀稈などの揺動選別機構29への漏下を防止する。
【0046】
上部カバー26の内部には、扱胴21が前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転するのに伴って、扱室20の上部に移動した処理物や脱粒穀稈を脱穀処理方向の下手側に案内する複数の送塵弁49を、前後方向に設定間隔をあけて並ぶように配備してある。
【0047】
前支持板24には、中心軸37を支持するベアリング(図示せず)や中心軸37への伝動用のベベルギア(図示せず)などを内蔵した伝動ケース50と、扱胴21の前壁部材42に外嵌して刈取穀稈の中心軸37への巻き付きを防止する円盤状の巻付防止部材51とを共締め連結してある。
【0048】
後支持板25には、ベアリング(図示せず)を介して中心軸37を支持するベアリングホルダ52と、扱胴21の後壁部材45に外嵌して脱粒穀稈の中心軸37への巻き付きを防止する円盤状の巻付防止部材53とを共締め連結してある。
【0049】
供給口22は、扱室20の前下部における受網27の前端部を支持する前支持部材54と前支持板24との間に扱胴21の掻込部38が臨むように形成してある。排稈口23は、扱室20の後下部における受網27の後端部を支持する後支持部材55と後支持板25との間に扱胴21における扱き処理部39の後端部分が臨むように形成してある。
【0050】
図1〜3に示すように、脱穀装置5の後端下部には、板金製の排稈カバー56を排稈口23を後方から覆うように配備してある。排稈カバー56は、排稈口23から流出した脱粒穀稈などを、篩い選別及び風力選別により揺動選別機構29の後方に搬出した稈屑などとともに下方に案内し、下部に形成した排出口57から外部に排出するように形成してある。
【0051】
図3〜7に示すように、揺動選別機構29は、その左右の横側板58における前端部の外側にそれぞれローラ59を備えている。これらのローラ59は、駆動機構28の作動に伴って、脱穀装置5に前下がり姿勢で固定装備した左右のガイド部材60に沿って移動する。これにより、揺動選別機構29が駆動機構28の作動に伴って所定の揺動軌跡を描きながら前後方向に選別揺動するように構成してある。
【0052】
揺動選別機構29の上部には、粗選別用のグレンパン61と補助グレンパン62とチャフシーブ63とストローラック64とをその順に選別処理方向の上手側から配備して粗選別部29Aを形成してある。揺動選別機構29の下部には、精選別用のグレンパン65とグレンシーブ66とをその順に選別処理方向の上手側から配備して精選別部29Bを形成してある。揺動選別機構29の後端部には、ストローラック64から流下した処理物を2番回収部33に流下案内する後側板67と流下案内板68とを配備してある。
【0053】
粗選別用のグレンパン61は、縦断側面形状が鋸刃状になるように屈曲形成した板金材などで構成してある。そして、揺動選別機構29の前端上部に位置するように左右の横側板58にわたって架設してある。グレンパン61の前端には、揺動選別機構29の前側板として機能する前壁部61Aを左右の横側板58にわたって起立形成してある。グレンパン61の後端には、その底面から後方に向けて延出する複数の篩い線69を左右方向に一定間隔をあけて整列配備してある。グレンパン61の下側には、グレンパン61の後部を支持する第1支持板70を左右の横側板58にわたって架設してある。
【0054】
粗選別用の補助グレンパン62は、縦断側面形状が鋸刃状になるように屈曲形成した板金材などで構成してある。そして、上下方向では複数の篩い線69と所定の上下間隔をあけたグレンパン61よりも低い位置に位置し、前後方向では、補助グレンパン62の前端がグレンパン61の後端に備えた篩い線取付部の真下に位置し、かつ、補助グレンパン62の後端が各篩い線69の後端の前後位置と一致又は略一致してチャフシーブ63の直前に位置するように配置設定した状態で、左右の横側板58にわたって架設してある。補助グレンパン62の前下方には選別風路Raを形成する風向板71を配備してある。風向板71は、第1支持板70との間に第1経路Ra1を形成し、補助グレンパン62との間に第2経路Ra2を形成し、精選別用のグレンパン65との間に第3経路Ra3を形成する。
【0055】
チャフシーブ63は、補助グレンパン62の後方に前後方向に一定間隔をあけて整列配備した複数のチャフリップ板72などで構成してある。そして、チャフシーブ63の前端位置が精選別用のグレンパン65の前端位置と前後方向で同じ又は略同じになるように配置設定してある。各チャフリップ板72は、それらの上端部に備えた左右向きの支軸73を支点にした上下揺動が可能となるように、各支軸73を、左右の横側板58にボルト連結した左右の第2支持板74にわたって相対回転可能に架設してある。又、各チャフリップ板72が各支軸73を支点にして一体揺動するように、各チャフリップ板72の遊端部を左右の連係ピン75と左右の連係板76とを介して連結してある。各連係ピン75のうちの所定の連係ピン75は、左側の横側板58に形成した長孔58Aを挿通して、所定のチャフリップ板72と左側の横側板58の横外側に上下揺動可能に装備した板状の操作具77とを連結する長さに設定してある。操作具77は、所定のチャフリップ板72の支軸73と同じ軸心上に位置するように配置設定したボルト78を介して、左側の横側板58に所定のチャフリップ板72と一体揺動するように取り付けてある。又、ボルト79による左側の横側板58に対する固定姿勢を変更することで、各チャフリップ板72の姿勢を4通りの後傾姿勢に設定変更できるように構成してある。長孔58Aは、所定のチャフリップ板72の支軸73を中心とする円弧状で、操作具77による各チャフリップ板72の各支軸73を支点にした所定範囲での上下揺動操作を許容する長さに形成してある。
【0056】
つまり、粗選別用のチャフシーブ63には、操作具77を揺動操作することにより、その操作に連動して複数のチャフリップ板72が各支軸73を支点にして上下方向に一体揺動して、前後に隣接するチャフリップ板72が形成する処理物流下経路63aの開度を一律に変更するように構成した開度調節式のものを採用してある。
【0057】
ストローラック64は、チャフシーブ63の後方箇所において左右の横側板58にわたって後傾姿勢で架設した支持部材80に、鋸刃状に形成した複数のラック板81を、左右方向に一定間隔をあけて整列する状態で支持部材80から後上方に向けて延出するようにボルト連結することで構成してある。
【0058】
精選別用のグレンパン65は、縦断側面形状が鋸刃状になるように屈曲形成した板金材などで構成してある。そして、第1支持板70との間に主唐箕30からの選別風の受け入れを可能にする通風口82を形成するように、補助グレンパン62の下方の位置に左右の横側板58にわたって架設してある。
【0059】
グレンシーブ66は、所定の大きさの矩形状の目合いを有するように形成したクリンプ金網で構成してある。そして、精選別用のグレンパン65に連なる状態でチャフシーブ63の下方に位置するように左右の横側板58にわたって架設してある。尚、グレンシーブ66は、収穫する作物の種類などに応じて、複数の漏下孔を整列形成した多孔板で構成したものなどに変更することができる。
【0060】
後側板67には、穀粒が揺動選別機構29の後端から稈屑などとともに揺動選別機構29の後方に流出する3番ロスの発生を収穫する作物の種類などに応じた高さ調節によって防止する排塵調節板83を上下方向に位置調節可能にボルト連結してある。左右の横側板58には、グレンシーブ66から流下した処理物などを1番回収部32に流下案内する第1案内板84を支持部材85を介して取り付けてある。流下案内板68の下端には、ストローラック64から流下した処理物などを2番回収部33に流下案内する第2案内板86を取り付けてある。第1案内板84及び第2案内板86には可撓性を有するゴム板などを採用してある。
【0061】
図3〜5に示すように、主唐箕30からの選別風を供給案内する第1供給風路Rbは、その風路部に上下2段に配備した風向板87,88により上下3段の経路Rb1〜Rb3に分けてある。上段の第1経路Rb1は、第1経路Rb1を通る選別風が主に揺動選別機構29の通風口82に向かうように形成してある。中段の第2経路Rb2は、第2経路Rb2を通る選別風が主にグレンシーブ66に向かうように形成してある。下段の第3経路Rb3は、第3経路Rb3を通る選別風が主にグレンシーブ66と1番回収部32との間を通ってストローラック64に向かうように形成してある。副唐箕31からの選別風は、1番回収部32と2番回収部33との間に形成した第2供給風路Rcを通り、第2供給風路Rcから2番回収部33とストローラック64との間を通って流下案内板68に向かった後、流下案内板68に沿って吹き上がるように設定してある。
【0062】
以上の構成から、脱穀処理方向上手側での脱穀処理によって穀粒含有率の高い大量の処理物が得られると、その多くが脱穀処理方向の上手側に位置する受網27の前部からグレンパン61に向けて漏下するようになる。脱穀処理方向の上下中間側での脱穀処理によって穀粒含有率の比較的高い処理物が得られると、その多くが脱穀処理方向の上下中間側に位置する受網27の前後中間部から篩い線69やチャフシーブ63に向けて漏下するようになる。脱穀処理方向下手側での脱穀処理によって穀粒含有率の低い処理物が得られると、その多くが脱穀処理方向の下手側に位置する受網27の後部からストローラック64に向けて漏下するようになる。
【0063】
そして、粗選別用のグレンパン61は、駆動機構28の作動による選別揺動により、受網27の前部から漏下した処理物を比重差選別しながら選別処理方向下手側に移送する。これにより、処理物を、比重の大きい単粒化穀粒などが下層に位置し、比重の小さい稈屑などが上層に位置するように層分けした状態で篩い線69に供給することができる。その結果、グレンパン61から各篩い線69に供給する処理物に多く含まれている穀粒の各篩い線69の間からの流下を促進させることができる。
【0064】
各篩い線69は、グレンパン61が層分けした処理物とともに受網27から漏下した処理物を受け取る。そして、駆動機構28の作動による選別揺動に伴って振れ動くことで、受け取った処理物にほぐし作用を施して各篩い線69の間からの処理物の流下を促進させる。各篩い線69のほぐし作用を受ける処理物や各篩い線69から流下する処理物には、第1供給風路Rbの第1経路Rb1と選別風路Raの第1経路Ra1とを通ってグレンパン61と補助グレンパン62との間から吹き出す主唐箕30からの選別風が作用する。これにより、各篩い線69で処理する処理物の上層側に多く含まれている比重の小さい稈屑などを効率良く選別処理方向下手側に風力搬送することができ、補助グレンパン62に流下した処理物の穀粒含有率を高めることができる。
【0065】
粗選別用の補助グレンパン62は、駆動機構28の作動による選別揺動により、各篩い線69の間から流下した処理物を比重差選別しながら選別処理方向下手側に移送する。これにより、処理物を、比重の大きい単粒化穀粒などが下層に位置し、比重の小さい稈屑などが上層に位置するように層分けした状態でチャフシーブ63に供給することができる。その結果、補助グレンパン62からチャフシーブ63に供給する処理物に多く含まれている穀粒のチャフシーブ63からの流下を促進させることができる。補助グレンパン62からチャフシーブ63に供給する処理物には、第1供給風路Rbの第1経路Rb1と選別風路Raの第2経路Ra2とを通って補助グレンパン62とチャフシーブ63との間から最前のチャフリップ板72に沿って吹き上がる主唐箕30からの選別風が作用する。これにより、チャフシーブ63に供給する処理物の上層側に多く含まれている比重の小さい稈屑などを効率良く選別処理方向下手側に風力搬送することができる。その結果、チャフシーブ63に供給する処理物の穀粒含有率を高めることができ、チャフシーブ63からの穀粒の流下を更に促進させることができる。
【0066】
チャフシーブ63は、補助グレンパン62が層分けした穀粒含有率の高い処理物とともに受網27の前後中間部から漏下した処理物を受け取る。受網27の前後中間部から漏下した処理物には、グレンパン61と補助グレンパン62との間や補助グレンパン62とチャフシーブ63との間などを吹き抜けた主唐箕30からの選別風が作用する。これにより、受網27の前後中間部から漏下した処理物を、比重の小さい稈屑などの多くが選別処理方向下手側に風力搬送された穀粒含有率の高いものにすることができる。そして、チャフシーブ63は、駆動機構28の作動による選別揺動により、受け取った処理物に篩い選別を施して、各処理物流下経路63aに流れ込み易い単粒化穀粒や短い稈屑などを前下方に向けて流下させながら、各処理物流下経路63aに流れ込み難い枝梗付き穀粒や長い稈屑などを選別処理方向下手側に移送する。チャフシーブ63が篩い選別する処理物には、第1供給風路Rbの第1経路Rb1と選別風路Raの第3経路Ra3とを通る主唐箕30からの選別風、第1供給風路Rbの第2経路Rb2とグレンシーブ66とを通る主唐箕30からの選別風、及び、第1供給風路Rbの第3経路Rb3とグレンシーブ66とを通る主唐箕30からの選別風が作用する。これにより、チャフシーブ63から流下する処理物に含まれる比重の小さい稈屑などを選別処理方向下手側に風力搬送することができ、チャフシーブ63から流下する処理物の穀粒含有率を高めることができる。
【0067】
ストローラック64は、チャフシーブ63から流下しなかった処理物とともに受網27の後部から漏下した処理物を受け取る。そして、駆動機構28の作動による選別揺動により、受け取った処理物を選別処理方向下手側に移送しながら各ラック板81が左右に振れ動いて処理物にほぐし作用を施す。これにより、各ラック板81の間からの処理物の流下を促進させながら、各ラック板81が受け止めた長い稈屑などを揺動選別機構29の後方に搬出して排出口57から外部に排出することができる。ストローラック64が移送する処理物やストローラック64から流下する処理物には、第1供給風路Rbの第3経路Rb3を通る主唐箕30からの選別風や副唐箕31からの選別風が作用する。これにより、ストローラック64で処理する処理物に多く含まれている比重の小さい稈屑などを確実に揺動選別機構29の後方に風力搬送して排出口57から外部に排出することができ、枝梗付き穀粒などを効率良く2番回収部33に流下させることができる。
【0068】
精選別用のグレンパン65は、補助グレンパン62とチャフシーブ63の間やチャフシーブ63の前部から流下した穀粒含有率の高い処理物を受け取る。そして、駆動機構28の作動による選別揺動により、受け取った処理物を比重差選別しながら選別処理方向下手側に移送する。これにより、処理物を、比重の大きい単粒化穀粒などが下層に位置し、比重の小さい稈屑などが上層に位置するように層分けした状態でグレンシーブ66に供給することができる。その結果、グレンパン65からグレンシーブ66に供給する処理物に多く含まれている単粒化穀粒のグレンシーブ66からの流下を促進させることができる。
【0069】
グレンシーブ66は、グレンパン65が層分けした処理物とともにチャフシーブ63から流下した穀粒含有率の高い処理物を受け取る。そして、駆動機構28の作動による選別揺動により、受け取った処理物に篩い選別を施して、目合いを通る単粒化穀粒などを流下させながら目合いを通らない枝梗付き穀粒などを選別処理方向下手側に移送する。チャフシーブ63から流下する処理物やチャフシーブ63が移送する処理物には、第1供給風路Rbの第2経路Rb2や第3経路Rb3を通る主唐箕30からの選別風が作用する。これにより、グレンシーブ66から単粒化穀粒とともに流下する比重の小さい稈屑などを選別処理方向下手側に風力搬送することができ、単粒化穀粒を精度良く1番回収部32に流下させることができる。
【0070】
つまり、この選別構造では、粗選別用のグレンパン61とチャフシーブ63との間に、粗選別用の補助グレンパン62を、グレンパン61に対して選別処理方向下手側の下方に位置し、かつ、チャフシーブ63に対して選別処理方向上手側の直前に位置するように配備して、受網27からの処理物をグレンパン61から補助グレンパン62を経由してチャフシーブ63に受け渡すとともに、主唐箕30からの選別風を、第1供給風路Rbの第1経路Rb1と選別風路Raの第1経路Ra1又は第2経路Ra2とを介して、グレンパン61と補助グレンパン62との間及び補助グレンパン62とチャフシーブ63との間に供給するように構成したことにより、グレンパン61とチャフシーブ63との間に補助グレンパン62を配備せずに処理物をグレンパン61からチャフシーブ63に受け渡すように構成する場合に比較して、主唐箕30からの選別風の一部をチャフシーブ63よりも選別処理方向上手側の粗選別に利用する構成でありながら、チャフシーブ63に供給する処理物から比重の小さい稈屑などをより効率良く効果的に取り除くことができる。その結果、チャフシーブ63に供給する処理物の穀粒含有率を効果的に高めることができ、穀粒回収精度の向上を図ることができる。
【0071】
図3、図4及び図6に示すように、補助グレンパン62は、その鋸刃状の複数の突曲端で形成する選別作用面62Aの高さ位置が、チャフシーブ63における各チャフリップ板72の上端で形成する選別作用面63Aの高さ位置よりも低くなるように配置設定してある。これにより、グレンパン61から補助グレンパン62に処理物を供給する際の落差を、グレンパン61からチャフシーブ63に供給する場合に比較して大きくすることができ、グレンパン61から流下する処理物に主唐箕30からの選別風をより長く作用させることができる。
【0072】
又、補助グレンパン62の前端には、グレンパン61に向けて起立することによりグレンパン61の後端部との上下間隔を小さくする縦壁部62Bを形成してある。そして、その縦壁部62Bが、グレンパン61と補助グレンパン62との間を通る選別風を複数の篩い線69に向けて案内する風向板として機能するように、縦壁部62Bの上端部分62aを後傾姿勢に屈曲させてある。これにより、グレンパン61と補助グレンパン62との間を通る選別風の流速を高めることができ、この選別風を、グレンパン61からの流下量の多い処理物に対して好適に作用させることができる。又、グレンパン61と補助グレンパン62との間を通る選別風が後上方の各篩い線69に向けて吹き上がることから、この選別風を、グレンパン61から上下に層分けされた状態で流下する処理物の上層側に多く含まれている比重の小さい稈屑などに対して好適に作用させることができる。
【0073】
その結果、チャフシーブ63に供給する処理物から比重の小さい稈屑などを更に効率良く効果的に取り除くことができ、穀粒回収精度の向上を更に図ることができる。
【0074】
尚、縦壁部62Bの上端部分62aを後傾姿勢に屈曲させるのではなく、縦壁部62B自体を後傾姿勢で立設する構成を採用してもよい。
【0075】
図3、図5及び図8に示すように、チャフシーブ63とストローラック64との間においては、ストローラック64からチャフシーブ63の最後尾に位置するチャフリップ板72の支軸73に向けて、最後尾のチャフリップ板72とストローラック64の支持部材80との間に形成された隙間Saを塞ぐように板状部材89を延設してある。これにより、チャフシーブ63における処理物流下経路63aの開度を最小にした状態〔図8の(a)参照〕と最大にした状態〔図8の(b)参照〕とにかかわらず、最後尾のチャフリップ板72とストローラック64の支持部材80との間に形成された隙間Saを良好に塞ぐことができ、この隙間Sから稈屑などが流下して1番回収部32に混入することに起因した穀粒回収精度の低下を防止することができる。
【0076】
ストローラック64における支持部材80の上部には、上方に向けて突出する突出部80Aを支持部材80の左右両端にわたるように形成してある。又、板状部材89の後部には、支持部材80の突出部80Aに上方から係合する係合部89Aを板状部材89の左右両端にわたるように屈曲形成してある。そして、支持部材80の突出部80Aに板状部材89の係合部89Aを係合することにより、支持部材80に対する板状部材89の前後方向への位置ズレを防止することができ、板状部材89の前端を最後尾のチャフリップ板72の支軸73に近接させた適正な状態を維持できるように構成してある。
【0077】
図5に示すように、チャフシーブ63は、前後に隣接するチャフリップ板72の間隔Gが、駆動機構28の作動で揺動選別機構29が前後方向に移動する距離Lと同じ又は略同じになるように構成してある。これにより、駆動機構28の作動で選別揺動する揺動選別機構29による処理物の移送量と各チャフリップ板72の配置間隔Gが同じ又は略同じになることから、チャフシーブ63による処理物の移送を適切に行うことができ、チャフシーブ63での処理物の滞留を防止することができる。
【0078】
図3及び図5に示すように、副唐箕31からの選別風が通る第2供給風路Rcは、その吹出口Rcaの形状が選別風の供給方向下手側ほど狭くなる先窄まり形状に形成してある。これにより、2番回収部33とストローラック64との間を通る副唐箕31からの選別風の流速を高めることができ、ストローラック64から流下する比重の小さい稈屑などの含有率の高い処理物から稈屑などを効率良く確実に取り除くことができる。その結果、2番回収部33での穀粒の回収精度を高めることができ、2番還元機構36での再処理や選別部5Bでの選別にかかる負担を軽減することができ、穀粒回収効率の向上を図ることができる。
【0079】
尚、副唐箕31は着脱可能に構成してあり、例えば、長粒米のように単粒化し易く枝梗などの稈屑が大量に発生する作物を収穫することの多い地域で使用する場合に装備することで、穀粒回収効率を格段に向上させることができる。
【0080】
〔別実施形態〕
【0081】
〔1〕脱穀装置5としては、複数のチャフリップ板72を選別処理方向に一定間隔をあけて固定した状態で整列配備した固定式のチャフシーブ63を備えるように構成したものであってもよい。
【0082】
〔2〕脱穀装置5としては、複数の漏下孔を選別処理方向上手側に整列形成し、起立する選別片を備えた複数の漏下孔を選別処理方向下手側に整列形成した選別プレートをチャフシーブ63として備えるように構成したものであってもよい。
【0083】
〔3〕脱穀装置5としては、複数のチャフリップ板72が処理物の重量に応じて一体揺動して開度を自動的に調節するように構成した重量感知式のチャフシーブ63を備えるように構成したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る脱穀装置の選別構造は、全稈投入型のコンバインや自脱型のコンバインあるいはハーベスタなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
29 揺動選別機構
30 唐箕
61 グレンパン
62 補助グレンパン
62A 選別作用面
62B 縦壁部
63 チャフシーブ
63A 選別作用面
64 ストローラック
72 チャフリップ板
73 支軸
89 板状部材
Ra 風路
Sa 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別揺動することにより脱穀処理後の処理物を篩い選別する揺動選別機構に、粗選別用のグレンパンとチャフシーブとを、前記チャフシーブが前記グレンパンよりも選別処理方向下手側の下方に位置するように配備し、前記揺動選別機構に対して選別処理方向上手側の下方に配備した唐箕からの選別風を前記グレンパンと前記チャフシーブとの間に供給する風路を備えた脱穀装置の選別構造であって、
前記グレンパンと前記チャフシーブとの間に、粗選別用の補助グレンパンを、前記グレンパンに対して選別処理方向下手側の下方に位置し、かつ、前記チャフシーブに対して選別処理方向上手側の直前に位置するように配備して、前記処理物を前記グレンパンから前記補助グレンパンを経由して前記チャフシーブに受け渡すように構成し、
前記風路を、前記唐箕からの選別風を前記グレンパンと前記補助グレンパンとの間及び前記補助グレンパンと前記チャフシーブとの間に供給するように形成してある脱穀装置の選別構造。
【請求項2】
前記補助グレンパンの高さ位置を、前記補助グレンパンの選別作用面が前記チャフシーブの選別作用面よりも低くなるように設定してある請求項1に記載の脱穀装置の選別構造。
【請求項3】
前記補助グレンパンの選別処理方向上手側の端部に、前記グレンパンに向けて起立する縦壁部を形成してある請求項1又は2に記載の脱穀装置の選別構造。
【請求項4】
前記チャフシーブを、上端部に備えた支軸を支点して上下揺動する複数のチャフリップ板を選別処理方向に一定間隔をあけて一体揺動可能に整列配備した開度調節式に構成し、
前記チャフシーブの選別処理方向下手側にストローラックを前記処理物の受け渡しが可能となるように近接配備し、前記ストローラックから選別処理方向最下手側に位置するチャフリップ板の支軸に向けて、前記チャフシーブと前記ストローラックとの隙間を塞ぐように板状部材を延設してある請求項1〜3のいずれか一つに記載の脱穀装置の選別構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−177076(P2011−177076A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43086(P2010−43086)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】