説明

脱穀装置

【課題】 扱室の下方に揺動選別部を設け、この揺動選別部5の前端部に選別風供給用の唐箕を配備するとともに、横送りスクリューを備えた1番回収部および2番回収部を揺動選別部の下部に配備した脱穀装置において、1番回収部の簡単な改造によって1番物に含まれる枝梗付き穀粒から枝梗を効率良く分離除去できるようにする。
【解決手段】 1番回収部14に備えられた横送りスクリュー16にスクリュー回転方向に面する揉み処理用の羽根体21を設けるとともに、1番回収部14の揺動選別部後方側の位相でのスクリュー回転方向が上方に向かうように前記横送りスクリュー16の回転方向を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室の下方に揺動選別部を設け、この揺動選別部の前端部に選別風供給用の唐箕を配備するとともに、横送りスクリューを備えた1番回収部および2番回収部を揺動選別部の下部に配備した脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の脱穀装置においては、2番回収部に回収した2番物を横送りスクリューによって装置外方に送り出した後、2番還元装置によって揺動選別部の前部に還元搬送して再選別処理するよう構成されており、この2番還元装置の基部に、横送りスクリューと同軸に駆動される回転歯を、固定歯を備えた処理ケース内で回転させるよう構成した再処理機構を設け、2番回収部に回収されて横送りされてきた2番物に打撃や揉み作用を与えて、枝梗付き穀粒から枝梗を分離するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−217632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
回収した2番物にはワラ屑や枝梗付き穀粒が多く含まれており、上記のような再処理機構を導入することで穀粒回収効率および選別精度を高めことができるのであるが、1番回収部に回収した1番物は横送りスクリューで横送り搬出されて穀粒タンクなどに回収されるものであったため、1番物に枝梗付き穀粒が含まれていてもそのまま回収されることになっており、その後の穀粒処理の弊害になるものであった。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、1番回収部の簡単な改造によって1番物に含まれる枝梗付き穀粒から枝梗を効率良く分離除去できるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、扱室の下方に揺動選別部を設け、この揺動選別部の前端部に選別風供給用の唐箕を配備するとともに、横送りスクリューを備えた1番回収部および2番回収部を揺動選別部の下部に配備した脱穀装置において、
前記1番回収部に備えられた横送りスクリューにスクリュー回転方向に面する揉み処理用の羽根体を設けてある。
【0006】
上記構成によると、1番回収部に回収されて横送りスクリューで横送りされる1番物は、羽根体の設置部位において送り作用が低下して滞留気味になって揉み作用を受け、1番物に含まれる枝梗付き穀粒から枝梗が分離される。そして、1番物は羽根体の回転によって掻き揚げられ、穀粒から分離された軽い枝梗は選別風路中に浮き上げられ、選別風に乗って1番回収部から流出し、揺動選別部の下手側に搬送されてゆく。
【0007】
従って、第1の発明によると、1番回収部に簡単な改造を加えることによって、1番物に含まれる枝梗付き穀粒から枝梗を分離して選別風路に排出除去することができる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記1番回収部の揺動選別部後方側の位相でのスクリュー回転方向が上方に向かうように前記横送りスクリューの回転方向を設定してあるものである。
【0009】
上記構成によると、1番物は1番回収部の揺動選別部後方側において羽根体の回転によって掻き揚げられるので、選別風路中に浮き上げられた枝梗は1番回収部に戻されること少なく選別風に乗って効率よく揺動選別部の下手側に搬送されることになり、第1の発明の上記効果を助長する。
【0010】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記1番回収部の底面に、前記羽根体に対向して処理歯を突設してあるものである。
【0011】
上記構成によると、羽根体と処理歯との相対回転によって強い揉み作用が発揮され、枝梗の分離が一層確実に行われることになり、第1または2の発明を好適に実施することができる。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、
前記羽根体に前記処理歯の通過を許容する切欠き凹部を形成してあるものである。
【0013】
上記構成によると、羽根体と処理歯との相対回転による揉み作用が更に強力なものとなって枝梗の分離が一層確実に行われることになり、第3の発明を好適に実施することができる。
【0014】
第5の発明に係るは、上記第3または4の発明において、
前記1番回収部の底面にカバー板によって開閉される掃除口を設け、このカバー板に前記処理歯を備えてあるものである。
【0015】
上記構成によると、掃除口の開閉操作で処理歯の脱着が行われることになり、メンテナンス時に取り扱い性に優れたものとなる。
【0016】
第6の発明に係るは、上記第1〜5のいずれか一つの発明において、
前記羽根体に、前記横送りスクリューによる処理物搬送方向と同方向の処理物搬送を行う送り角をつけてあるものである。
【0017】
上記構成によると、羽根体に多少の送り機能が与えられることで、揉み処理箇所で必要以上の滞留が抑制され、処理量が多い場合でも詰まりの発生なく連続処理することができる。
【0018】
第7の発明に係るは、上記第1〜6のいずれか一つの発明において、
前記羽根体を、横送り搬送方向の複数箇所に設けるとともに、これら羽根体をスクリュー回転方向に等位相で配備してあるものである。
【0019】
記構成によると、各羽根体に作用する揉み処理反力がスクリュー回転方向で均等に横送りスクリューに働くことになり、横送りスクリューを振れの発生なく円滑に回転作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に、自脱型コンバインに搭載される脱穀装置の縦断した側面図が示されている。この脱穀装置は、図1中の図外左方の刈取り部からで搬送されてきた横倒れ姿勢の刈取り穀稈をフィードチェーン1で受取り、その穂部を扱室2に挿入した状態で図中左方から右方に通過搬送することで、扱室2に前後水平に軸支した扱胴3によって脱穀処理し、穀稈から分離した処理物を扱室下部に沿って張設した受網4で選別し、受網4を漏下した処理物を扱室2の下方に配備された揺動選別部5の前半部に落下供給するとともに、受網4を漏下しなかった処理物を扱室終端の送塵口6から搬出して揺動選別部5の前後中間部に落下供給し、揺動選別部5に落下供給された処理物を前後に長いシーブケース7で受け止め、載置した処理物を後方(図1では右方)に向けて揺動搬送しながら波板状のグレンパン8、粗選別用のチャフシーブ9、精選別用のグレンシーブ10、ほぐし用ラック11、ストローラック12、などを利用して篩い選別するとともに、揺動選別部5の前端部に備えた唐箕13から後方上方に向けて供給された選別風を吹き付けて風選処理し、グレンシーブ10から漏下した1番物を1番回収部14に、また、チャフシーブ9の後部やストローラッ12から漏下した2番物を2番回収部15にそれぞれ選別回収し、1番回収部14に回収した1番物を横スクリュー16によって機外にまで横送りした後、穀粒タンクなどの回収部に供給し、2番回収部15に回収した2番物を横スクリュー17によって横送りした後、スクリュー式の還元装置18によってシーブケース7の前部に還元供給して再選別処理を行うように構成されている。
【0021】
また、扱室2の後方で揺動選別部5の後部上方箇所には、排ワラ搬送経路の下側に位置させて横断流ファンからなる排塵ファン19が横架されており、送塵口6から吹き出てきた浮塵やワラ屑、選別風によって揺動選別部5の後部上方に吹き上げられた浮塵やワラ屑が排塵ファン19に吸引されて強制的に機体後方に排出されるようになっている。
【0022】
以上の構成は従来と特に変わるところはなく、本発明では前記1番回収部14に以下に示すような改造が施されている。
【0023】
つまり、図4に示すように、1番回収部14に装備された横スクリュー16は、1番回収部14の揺動選別部後方側の位相でのスクリュー回転方向が上方に向かうようにその回転方向が設定されるとともに、搬送方向中間の二箇所には揉み処理用の羽根体21がスクリュー回転方向に180°位相を異ならせて設けられている。この羽根体21はスクリュー回転方向に面し、かつ、横送りスクリュー16による処理物搬送方向と同方向の処理物搬送を行う小さい送り角αをつけて設けられている。
【0024】
また、1番回収部14の底面には、横長の掃除口22が形成されるとともに、この掃除口22を開閉するカバー板23が支点p周りに揺動自在に配備されている。そして、このカバー板23の内面には前記羽根体21に対向する処理歯24が突設されており、カバー板23を閉じた状態において処理歯24が掃除口22から1番回収部内に突入されるようになっている。また、羽根体21には処理歯24の相対通過を許容する切欠き凹部25が形成されている。
【0025】
上記構造によると、1番回収部14に回収されて横送りされる1番物は、羽根体21の接地部位において送り作用が低下して滞留気味になるとともに、羽根体21と処理歯24との相対回転によって強制的に揉まれ、1番物に含まれる枝梗付き穀粒から枝梗が分離される。そして、1番物は1番回収部14の揺動選別部後方側において羽根体21の回転によって掻き揚げられる。この場合、上記のような揉み作用によって穀粒から分離された軽い枝梗は羽根体21によって選別風路中に浮き上げられ、選別風に乗って下手側に流出される。
【0026】
なお、処理歯24を備えたカバー板23は、ねじりバネ26を介して天秤アーム27の一端に連係されており、操作レバー28によって天秤アーム27を回動することで、ねじりバネ26が死点を越えて回動変形してカバー板23が閉塞位置と開放位置とに切換え保持されるようになっている。また、2番回収部15の底面にもカバー板29で開閉される掃除口30が備えられており、このカバー板29もねじりバネ31を介して前記天秤アーム27の他端に連係され、操作レバー28によって両カバー板23,29を同時に開閉操作することができるようになっている。
【0027】
〔他の実施例〕
【0028】
(1)図7に示すように、送り角のない羽根体21を設けて実施することもできる。
【0029】
(2)前記羽根体21を横送りスクリュー16の搬送方向3箇所に設けて実施するもよい。この場合、各羽根体21をスクリュー回転方向に120°づつずらして等位相に設置することで、横送りスクリュー16が揉み処理反力によって振れることを抑制して駆動することができる。
【0030】
〔比較例〕
【0031】
図8に示すように、横スクリュー16の搬送方向の適所に小径スクリュー部16aを形成するとともに、この小径スクリュー部16aに対向する処理歯24を1番回収部14の底面に設けることによっても1番物に揉み作用を与えて枝梗の分離を行うことも可能であるが、この構造によると、分離した枝梗を選別風路に浮き上げる機能がほとんどなく、分離した枝梗を除去することができる本発明の構造が実用上有利である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】1番回収部の縦断背面図
【図3】1番回収部における要部の縦断背面図
【図4】1番回収部における要部の縦断側面図
【図5】1番回収部および2番回収部の側面図
【図6】掃除口を開放した状態の1番回収部および2番回収部を示す側面図
【図7】別実施例の1番回収部の要部を示す縦断背面図
【図8】比較例の1番回収部の一部を示す縦断背面図
【符号の説明】
【0033】
2 扱室
5 揺動選別部
13 唐箕
14 1番回収部
15 2番回収部
16 横スクリュー
17 横スクリュー
21 羽根体
22 掃除口
23 カバー板
24 処理歯
25 切欠き凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室の下方に揺動選別部を設け、この揺動選別部の前端部に選別風供給用の唐箕を配備するとともに、横送りスクリューを備えた1番回収部および2番回収部を揺動選別部の下部に配備した脱穀装置において、
前記1番回収部に備えられた横送りスクリューにスクリュー回転方向に面する揉み処理用の羽根体を設けてあることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記1番回収部の揺動選別部後方側の位相でのスクリュー回転方向が上方に向かうように前記横送りスクリューの回転方向を設定してある請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記1番回収部の底面に、前記羽根体に対向して処理歯を突設してある請求項1または2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記羽根体に前記処理歯の通過を許容する切欠き凹部を形成してある請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記1番回収部の底面にカバー板によって開閉される掃除口を設け、このカバー板に前記処理歯を備えてある請求項3または4記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記羽根体に、前記横送りスクリューによる処理物搬送方向と同方向の処理物搬送を行う送り角をつけてある請求項1〜5のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項7】
前記羽根体を、横送り搬送方向の複数箇所に設けるとともに、これら羽根体をスクリュー回転方向に等位相で配備してある請求項1〜6のいずれか一項に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−55088(P2006−55088A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241027(P2004−241027)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】